特許第6863942号(P6863942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000002
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000003
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000004
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000005
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000006
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000007
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000008
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000009
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000010
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000011
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000012
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000013
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000014
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000015
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000016
  • 特許6863942-送り装置を備えるロボットシステム 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863942
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】送り装置を備えるロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20210412BHJP
   B23Q 7/10 20060101ALI20210412BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
   B23Q7/10
   B23Q7/04 M
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-188511(P2018-188511)
(22)【出願日】2018年10月3日
(65)【公開番号】特開2020-55087(P2020-55087A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2020年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 拓郎
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−113396(JP,A)
【文献】 特開平3−238232(JP,A)
【文献】 特開昭60−15327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
B23Q 7/00 − 7/18
B65G 1/00 − 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
前記ロボットが作業を行う第1のテーブルと、
前記ロボットが作業を行う第2のテーブルと、
前記第1のテーブルを送り動作させる第1の送り装置と、
前記第2のテーブルを送り動作させる第2の送り装置と、
前記第1の送り装置と前記第2の送り装置とを連動させる連動部材と、
前記作業のための前記ロボットの第1の動作を制御するとともに、前記第1の動作とは別の動作であって、前記連動部材を操作するための前記ロボットの第2の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記ロボットは、前記第2の動作で前記連動部材を操作することにより、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルを前記作業に応じた位置に各々配置する、ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1の送り装置による前記第1のテーブルの移動量と、前記第2の送り装置による前記第2のテーブルの移動量と、前記ロボットによる前記連動部材の操作量との間の関係に基づき、前記第2の動作を制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記第1のテーブル又は前記第2のテーブルの位置を検出する位置センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記位置センサの検出結果に基づいて、前記第2の動作を制御する、請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記連動部材は、前記ロボットの前記第2の動作に従い、前記第1のテーブルと前記第2のテーブルとを互いに反対の方向へ移動させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記連動部材は、前記ロボットの前記第2の動作に従い、前記第1のテーブルと前記第2のテーブルとを同じ距離だけ移動させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記第1の送り装置は、第1のねじ軸を有し、前記第2の送り装置は、第2のねじ軸を有し、
前記連動部材は、前記第1のねじ軸と前記第2のねじ軸との間に配置される歯車列を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り装置を備えるロボットシステム、及び送りテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークテーブルを昇降させる送りテーブル装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−31950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、送りテーブル装置の構造及び制御シーケンスを簡単化する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様において、ロボットシステムは、ロボットと、ロボットが作業を行う第1のテーブルと、ロボットが作業を行う第2のテーブルと、第1のテーブルを送り動作させる第1の送り装置と、第2のテーブルを送り動作させる第2の送り装置と、第1の送り装置と第2の送り装置とを連動させる連動部材と、作業のためのロボットの第1の動作を制御するとともに、第1の動作とは別の動作であって、連動部材を操作するためのロボットの第2の動作を制御する制御装置とを備え、ロボットは、第2の動作で連動部材を操作することにより、第1のテーブル及び第2のテーブルを作業に応じた位置に各々配置する。
【0006】
本開示の他の態様において、送りテーブル装置は、第1のテーブルと、第2のテーブルと、第1のテーブルを移動させる第1の送りねじ装置と、第2のテーブルを移動させる第2の送りねじ装置と、外部からの駆動力を受けて第1の送りねじ装置と第2の送りねじ装置とに互いに連動した送り動作を生じさせる連動部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、従来のように複数の送り装置毎に駆動装置を設けていた場合と比べて、それぞれの駆動装置のために制御シーケンスを作成する必要がなくなり、また、駆動装置の数を削減することができる。したがって、送りテーブル装置の構造及び制御シーケンスを簡単化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る送りテーブル装置の図である。
図2図1に示す送りテーブル装置を上方から見た図である。
図3】一実施形態に係るロボットシステムの図である。
図4図3に示すロボットシステムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
図5図4のフローの開始時の状態を示す。
図6図5中の第1回目のステップS10が終了したときの状態を示す。
図7】ステップS6でYESと判定したときの、第1及び第2のテーブルへのパレットの設置状態を説明するための図である。
図8】他の実施形態に係る送りテーブル装置を上方から見た図である。
図9】さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置を上方から見た図である。
図10】さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置を上方から見た図である。
図11】さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置を後方から見た図である。
図12】さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置を後方から見た図である。
図13図12に示すテーブル装置を図1に示すロボットシステムに適用した場合の動作フローの一例を示すフローチャートである。
図14】さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置を上方から見た図であって、1つの連動部材が係合位置に配置された状態を示す。
図15図14に示す送りテーブル装置を後方から見た図である。
図16図14に示す送りテーブル装置において、1つの連動部材が脱離位置に配置された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明においては、図中の直交座標系を方向の基準とし、便宜上、x軸プラス方向を右方、y軸プラス方向を前方、z軸プラス方向を上方とする。
【0010】
図1及び図2を参照して、一実施形態に係る送りテーブル装置10について説明する。送りテーブル装置10は、ワークがセットされるパレットを昇降させるためのものである。なお、ワーク及びパレットに関しては、後述する。送りテーブル装置10は、第1のテーブル12、第1の送り装置14、第2のテーブル16、第2の送り装置18、第1のハウジング20、第2のハウジング22、天板24、位置センサ26、及び連動機構28を備える。
【0011】
第1のハウジング20は、中空であって、その後面20aには、z軸方向に延びる貫通孔20bが形成されている。第1のテーブル12は、z軸方向へ移動可能となるように、第1のハウジング20の後面20aの後側に配置されている。本実施形態においては、第1のテーブル12は、x−y平面に略平行に配置された、略矩形の外形を有する平板部材である。
【0012】
第2のハウジング22は、第1のハウジング20の右側に隣接して配置され、第1のハウジング20と同じ構成を有している。具体的には、第2のハウジング22は、中空であって、その後面22aには、z軸方向に延びる貫通孔22bが形成されている。
【0013】
第2のテーブル16は、第1のテーブル12の右側に隣接した位置でz軸方向へ移動可能となるように、第2のハウジング22の後面22aの後側に配置されている。本実施形態においては、第2のテーブル16は、第1のテーブル12と同じ外形の平板部材である。
【0014】
第1の送り装置14は、第1のテーブル12をz軸方向へ送り動作させる。具体的には、第1の送り装置14は、ボールねじ装置であって、ねじ軸30及びナット部材32を有する。ねじ軸30は、その外周面に螺旋状のねじ部が形成された、中心軸線Aを有する円柱状の部材である。ねじ軸30は、その中心軸線Aがz軸と略平行となるようにz軸方向へ延在し、中心軸線A周りに回転可能となるように第1のハウジング20に支持されている。
【0015】
ナット部材32は、第1のハウジング20の内部に配置され、その後端部32bが、第1のハウジング20の貫通孔20bを通して、第1のテーブル12の前端部12aに固定されている。ナット部材32の中央部には、ねじ孔32aが形成されている。ねじ軸30は、ねじ孔32aに挿通され、該ねじ孔32aと螺合する。
【0016】
本実施形態においては、ねじ軸30が、上側から見て時計回り方向へ回転されるにつれて、ナット部材32及び該ナット部材32に固定されている第1のテーブル12は、下方へ送り動作される。反対に、ねじ軸30が上側から見て反時計回り方向へ回転されるにつれて、ナット部材32及び第1のテーブル12は上方へ送り動作される。こうして、第1の送り装置14は、ねじ軸30の回転動作を、第1のテーブル12のz軸方向の送り動作に変換する。
【0017】
第2の送り装置18は、第2のテーブル16をz軸方向へ送り動作させる。具体的には、第2の送り装置18は、第1の送り装置14と同様のボールねじ装置であって、ねじ軸34及びナット部材36を有する。ねじ軸34は、その外周面に螺旋状のねじ部が形成された、中心軸線Aを有する円柱状の部材である。ねじ軸34は、その中心軸線Aがz軸と略平行となるようにz軸方向へ延在し、中心軸線A周りに回転可能となるように第2のハウジング22に支持されている。
【0018】
ナット部材36は、第2のハウジング22の内部に配置され、その後端部36bが、第2のハウジング22の貫通孔22bを通して、第2のテーブル16の前端部16aに固定されている。ナット部材36の中央部には、ねじ孔36aが形成されている。ねじ軸34は、ねじ孔36aに挿通され、該ねじ孔36aと螺合する。
【0019】
本実施形態においては、ねじ軸34が、上側から見て時計回り方向へ回転されるにつれて、ナット部材36及び該ナット部材36に固定されている第2のテーブル16は、下方へ移動される。反対に、ねじ軸34が上側から見て反時計回り方向へ回転されるにつれて、ナット部材36及び第2のテーブル16は上方へ移動される。こうして、第2の送り装置18は、ねじ軸34の回転動作を、第2のテーブル16のz軸方向の送り動作に変換する。
【0020】
天板24は、第1のハウジング20の上面20c、及び第2のハウジング22の上面22cの上に固定されている。天板24には、第1の貫通孔24a及び第2の貫通孔24bが形成されている。第1の貫通孔24aには、第1の送り装置14のねじ軸30が挿通される一方、第2の貫通孔24bには、第2の送り装置18のねじ軸34が挿通される。
【0021】
本実施形態においては、位置センサ26は、近接スイッチ等であって、その下側近傍の位置(具体的には、位置センサ26から下方へ所定の距離の位置)に在る物体を非接触で検出する。位置センサ26は、第1のハウジング20の後面20aの上端部に設置されている。位置センサ26は、その下側近傍の位置に物体が配置されたことを検出したときに、検出信号を出力する(すなわち、検出信号をONとする)。
【0022】
連動機構28は、計4個の連動部材38、40、42、及び44を有する。連動部材38、40、42、及び44の各々は、その外周面に歯部が形成された円柱状の歯車である。これら連動部材38、40、42、及び44は、第1の送り装置14のねじ軸30と、第2の送り装置18のねじ軸34との間に配置された歯車列を構成する。
【0023】
連動部材38は、中心軸線Aを基準として、第1の送り装置14のねじ軸30と略同心に配置されている。ねじ軸30は、天板24に形成された第1の貫通孔24aを通過し、その上端部が連動部材38に固定されており、連動部材38とねじ軸30とは、一体となって回転する。
【0024】
一方、連動部材44は、中心軸線Aを基準として、第2の送り装置18のねじ軸34と略同心に配置されている。ねじ軸34は、天板24に形成された第2の貫通孔24bを通過し、その上端部が連動部材44に固定されており、連動部材44とねじ軸34とは、一体となって回転する。
【0025】
連動部材40は、連動部材38の右側に隣接して配置され、該連動部材38と係合する。連動部材40は、中心孔を有し、該中心孔にピン48が挿通されている。ピン48は、天板24の上面24cから突出するように、天板24に設けられている。連動部材38は、ピン48の周りに回転可能である。
【0026】
本実施形態においては、連動部材40に操作部46が設けられている。操作部46は、略四角柱状の部材であって、連動部材40と一体となって回転するように該連動部材40の上面に固設されている。操作部46は、ピン48(すなわち、連動部材40)と略同心に配置されている。
【0027】
連動部材42は、連動部材40と連動部材44との間に介挿され、連動部材40及び44と係合する。連動部材42は、中心孔を有し、該中心孔にピン50が挿通されている。ピン50は、天板24の上面24cから突出するように、天板24に設けられている。連動部材42は、ピン50の周りに回転可能である。
【0028】
本実施形態においては、連動部材38、40、42、及び44の歯数は、互いに同じである。したがって、互いに係合する2つの連動部材38及び40、40及び42、並びに、42及び44の歯数比(すなわち、減速比)は、1である。また、第1の送り装置14のねじ軸30の1回転当たりの第1のテーブル12の移動量(すなわち、z軸方向の移動距離)と、第2の送り装置18のねじ軸34の1回転当たりの第2のテーブル16の移動量とは、互いに同じである。
【0029】
次に、送りテーブル装置10の動作について説明する。送りテーブル装置10は、外部(例えばロボット)からの駆動力を受けて動作する。具体的には、操作部46に外部から駆動力が与えられて該操作部46を上側から見て時計回り方向に回転させると、連動部材40が、操作部46とともに上側から見て時計回り方向に回転される。
【0030】
この連動部材40の回転に従って、連動部材38及び42が、上側から見て反時計回り方向へ回転される。連動部材38の回転とともに、第1の送り装置14のねじ軸30が、上側から見て反時計回り方向へ回転され、これにより、第1のテーブル12は、上方へ移動される。
【0031】
また、連動部材42が上側から見て反時計回り方向へ回転されるのに従って、連動部材44が、上側から見て時計回り方向へ回転される。この連動部材44の回転とともに、第2の送り装置18のねじ軸34が、上側から見て時計回り方向へ回転され、これにより、第2のテーブル16は、下方へ移動される。
【0032】
反対に、外部からの駆動力によって操作部46(すなわち連動部材40)が、上側から見て反時計回り方向へ回転されると、連動部材38及び42が、上側から見て時計回り方向へ回転し、第1のテーブル12は、下方へ移動される一方、連動部材44が上側から見て反時計回り方向へ回転して、第2のテーブル16は、上方へ移動される。
【0033】
このように、連動部材38、40、42、及び44は、外部からの駆動力を受けて第1の送り装置14と第2の送り装置18とを連動させ、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを互いに反対の方向へ移動させる。また、連動部材38、40、42、及び44が互いに係合して同時に回転することから、第1のテーブル12と第2のテーブル16とは、互いに同期して移動する。
【0034】
また、上述したように、連動部材38、40、42、及び44の歯数が同じであり、且つ、ねじ軸30の1回転当たりの第1のテーブル12の移動量と、ねじ軸34の1回転当たりの第2のテーブル16の移動量とは、互いに同じである。したがって、連動機構28が動作されたとき、第1のテーブル12と第2のテーブル16とは、同じ距離だけz軸方向へ移動することになる。
【0035】
このように、本実施形態においては、1つの連動部材40(操作部46)に駆動力を与えるだけで、複数の送り装置14及び18を連動して動作させることができる。この構成によれば、従来のように複数の送り装置毎に駆動装置(典型的には、サーボモータ)を設けていた場合と比べて、それぞれの駆動装置のための制御シーケンスを準備する必要がなくなり、また、駆動装置の数を削減することができる。
【0036】
したがって、送りテーブル装置10の構造及び制御シーケンスを簡単化できる。また、連動機構28を、歯車である連動部材38、40、42、及び44によって構成していることから、連動機構28の構造を簡単化することができ、製造コストを低減できる。
【0037】
なお、本実施形態においては、4個の連動部材38、40、42、及び44が設けられている場合について述べたが、連動機構28は、2n(nは、1以上の整数)個の連動部材を有してもよい。この場合、1つの連動部材を回転させることで、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを互いに反対の方向へ連動して移動させることができる。
【0038】
次に、図3を参照して、一実施形態に係るロボットシステム60について説明する。ロボットシステム60は、ロボット62、制御装置64、及び送りテーブル装置10を備える。ロボット62は、垂直多関節ロボットであって、ロボットベース66、旋回胴68、ロボットアーム70、手首部72、及びエンドエフェクタ74を有する。
【0039】
ロボットベース66は、作業セルの床の上に固定されている。旋回胴68は、ロボットベース66に鉛直軸周りに旋回可能に設けられている。ロボットアーム70は、旋回胴68に回転可能に取り付けられた下腕部76と、該下腕部76の先端に回転可能に取り付けられた上腕部78とを有する。
【0040】
手首部72は、上腕部78の先端に連結されている。エンドエフェクタ74は、手首部72に取り付けられ、手首部72は、エンドエフェクタ74を回転可能に支持する。本実施形態においては、エンドエフェクタ74は、ロボットハンドであって、開閉可能な複数の指部80を有する。
【0041】
ロボット62の各コンポーネント(ロボットベース66、旋回胴68、ロボットアーム70、手首部72)には、サーボモータ(図示せず)がそれぞれ内蔵されている。また、ロボット62には、ロボット座標系Cが設定されている。本実施形態においては、ロボット座標系Cは、その原点がロボットベース66に配置され、z軸が鉛直方向と平行であり、旋回胴68がz軸周りに旋回するように、設定されている。
【0042】
制御装置64は、プロセッサ(CPU、GPU等)及びメモリ(ROM、RAM等)を有し、ロボット62を制御する。具体的には、制御装置64は、ロボット座標系Cを基準としてロボット62の各サーボモータへの指令を生成し、各サーボモータを駆動して、エンドエフェクタ74を目標とする位置及び姿勢に配置させる。また、制御装置64は、位置センサ26に通信可能に接続され、該位置センサ26から上述の検出信号を受信する。
【0043】
次に、図4図7を参照して、ロボットシステム60の動作について説明する。図4に示すフローは、制御装置64が、オペレータ、上位コントローラ、又はロボットプログラムから作業開始指令を受け付けたときに、開始する。本実施形態においては、図4に示すフローの開始時において、図5に示すように、第1のテーブル12に、未加工ワーク(図示せず)がセットされた計6個のパレットPが設置されている。また、第1のテーブル12上の6個のパレットPの各々には、計nMAX個のワークがセットされている。
【0044】
一方、第2のテーブル16には、ワークがセットされていない空のパレットPが1つ設置されている。図4に示すフローの開始時点での第1のテーブル12上の最上段のパレットPの上面と、第2のテーブル16上の最上段のパレットPの上面とは、略同じ平面上に配置される。また、パレットPは、互いに同じ形状を有し、把持部Gを具備する。把持部Gは、エンドエフェクタ74によって把持可能な形状を有する。
【0045】
ステップS1において、制御装置64は、第1のテーブル12上の最上段のパレットPにセットされた未加工ワークをロボット62によって取り出した総数(すなわち、後述のステップS2及びS3を実行した回数)「n」を、ゼロにセットする(n=0)。
【0046】
ステップS2において、制御装置64は、ロボット62を動作させて、第1のテーブル12に設置されたパレットPのうちの最上段のパレットPから未加工ワークを1個取り出す。ここで、制御装置64は、第1のテーブル12上の最上段のパレットPにセットされた各々の未加工ワークのロボット座標系Cにおける位置データを予め取得する。
【0047】
第1のテーブル12上の最上段のパレットPの位置は、位置センサ26によって検出される位置(例えば、位置センサ26から下方へ1mmの距離内の位置)として規定される。また、各々のパレットPは、第1のテーブル12上の予め定められた位置に配置される。例えば、第1のテーブル12に治具(図示せず)が設けられ、該第1のテーブル12に設置される最下段のパレットPは、該治具によって、第1のテーブル12上の予め定められた位置に位置決めされる。
【0048】
また、1つのパレットPの上面には、位置決め突起(図示せず)が形成され、該1つのパレットPの上に設置される他のパレットPの下面には、該位置決め突起を受容する位置決め孔(図示せず)が形成される。この位置決め突起と位置決め孔との係合により、該他のパレットPは、該1つのパレットPと同じx−y平面内の位置に配置される。
【0049】
また、各々のパレットPの内部には、パレット治具(図示せず)が形成され、未加工ワークは、該パレット治具によって、それぞれのパレットPにおける所定の位置にそれぞれセットされる。こうして、それぞれのパレットPにセットされた未加工ワークのx−y平面内の位置を揃えることができ、第1のテーブル12上の最上段のパレットPにセットされた未加工ワークは、ロボット座標系Cにおける所定の位置にそれぞれ配置されることになる。制御装置64は、該最上段のパレットPにセットされた未加工ワークのロボット座標系Cにおける位置を取得し、メモリに記憶する。
【0050】
制御装置64は、このステップS2において、第1のテーブル12上の最上段のパレットP内の未加工ワークの位置データを用いてロボット62を制御し、エンドエフェクタ74で該未加工ワークを把持し、該未加工ワークを、ロボットシステム60の外部に設置された加工機(図示せず)の内部へ運搬してセットする。こうして、ロボット62によって未加工ワークが加工機にロードされ、該加工機は、該未加工ワークを加工する。このように、ステップS2において、ロボット62は、第1のテーブル12上のパレットPからワークを取り出して加工機にロードするローディング作業を行う。
【0051】
ステップS3において、制御装置64は、ロボット62を動作させて、加工機から加工済みワークを取り出し、第2のテーブル16に設置されたパレットPにセットする。ここで、制御装置64は、第2のテーブル16上の最上段のパレットPに加工済みワークをセットすべきセット位置のロボット座標系Cにおける位置データを予め取得する。
【0052】
制御装置64は、加工機にセットされた加工済みワークをエンドエフェクタ74で把持して取り出し、セット位置データを用いてロボット62を制御して、該加工済みワークを第2のテーブル16上の最上段のパレットP内のセット位置にセットする。こうして、ロボット62によって加工機から加工済みワークがアンローディングされる。このように、ステップS3において、ロボット62は、加工機から加工済みワークをアンローディングして第2のテーブル16上のパレットPにセットするアンローディング作業を行う。
【0053】
ステップS4において、制御装置64は、上記の総数「n」を、1だけインクリメントする(すなわち、n=n+1)。ステップS5において、制御装置64は、上記の総数「n」が、nMAXに達した(すなわち、n=nMAX)か否かを判定する。このnMAXは、第1のテーブル12上の各々のパレットPにセットされた未加工ワークの総数である。
【0054】
制御装置64は、n=nMAXとなった(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS6へ進む一方、n<nMAXである(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS2へ戻る。こうして、制御装置64は、ステップS5でYESと判定するまでステップS2〜S5のループを繰り返し実行し、第1のテーブル12上の最上段のパレットPにセットされた計nMAX個の未加工ワークに対してローディング作業及びアンローディング作業を行う。
【0055】
ステップS6において、制御装置64は、図4のフローの開始時点で第1のテーブル12上に設置された全ての未加工ワーク(すなわち、6×nMAX個の未加工ワーク)の加工が完了したか否かを判定する。例えば、制御装置64は、ステップS5でYESと判定した回数「m」をカウントし、このステップS6において、回数「m」が、図4のフローの開始時点で第1のテーブル12上に設置されていたパレットPの総数「6」に達したか否かを判定する。
【0056】
制御装置64は、m=6となった場合に、全ての未加工ワークの加工が完了した(すなわち、YES)と判定し、図4のフローを終了する。一方、制御装置64は、m<6である場合は、第1のテーブル12上に未加工ワークが残存している(すなわち、NO)と判定し、ステップS7へ進む。
【0057】
ステップS7において、制御装置64は、ロボット62を動作させて、第1のテーブル12上の最上段のパレットPを、第2のテーブル16上の最上段のパレットPの上に移送する。このステップS7の開始時点では、第1のテーブル12上の最上段のパレットPは、未加工ワークがセットされていない空の状態となっている。ここで、制御装置64は、第1のテーブル12上の最上段のパレットPの把持部Gのロボット座標系Cにおける位置データを予め取得する。
【0058】
制御装置64は、把持部Gの位置データを用いてロボット62を制御して、エンドエフェクタ74で該把持部Gを把持して持ち上げ、該最上段のパレットPを、第2のテーブル16上の最上段のパレットPの上に設置する。こうして、ロボット62によって、第1のテーブル12上の最上段の空のパレットPが、第2のテーブル16上の最上段の位置に移送される。このように、ステップS7において、ロボット62は、第1のテーブル12上のパレットPを第2のテーブル16に移送するパレット移送作業を行う。
【0059】
上述したように、ロボット62は、第1のテーブル12及び第2のテーブル16において、ステップS2のローディング作業、ステップS3のアンローディング作業、及びステップS6のパレット移送作業を行う。本実施形態において、これら作業を行うためのロボット62の動作を、通常動作(第1の動作)として言及する。
【0060】
ステップS8において、制御装置64は、ロボット62に連動部材38、40、42、及び44を操作させて、第1のテーブル12と第2のテーブル16を送り動作させる。ここで、制御装置64は、操作部46(例えば、中心軸)のロボット座標系Cにおける位置データを予め取得する。
【0061】
制御装置64は、このステップS8において、操作部46の位置データを用いてロボット62を制御し、エンドエフェクタ74によって操作部46を把持するための把持位置へ、エンドエフェクタ74を配置する。この把持位置に配置されたとき、エンドエフェクタ74の指部80の間に、操作部46が配置される。このとき、2つの指部80が、四角形の操作部46の対向する2つの側面にそれぞれ面するように、エンドエフェクタ74が操作部46に対して配置されてもよい。
【0062】
次いで、制御装置64は、エンドエフェクタ74を動作させて、指部80を閉じる。これにより、エンドエフェクタ74は、指部80で操作部46を把持する。次いで、制御装置64は、ロボット62を動作させて、エンドエフェクタ74で把持した操作部46を、上側から見て時計回り方向へ回転させる。
【0063】
そうすると、連動部材38、40、42、及び44は、上述したように、第1の送り装置14と第2の送り装置18とに互いに連動した送り動作を生じさせ、第1のテーブル12を上方へ移動させるのと同期して、第2のテーブル16を下方へ移動させる。このように、制御装置64は、ロボット62を制御して、該ロボット62の通常動作とは別の動作として、連動部材38、40、42、及び44を操作する連動動作(第2の動作)を該ロボット62に行わせている。
【0064】
ステップS9において、制御装置64は、第1のテーブル12及び第2のテーブル16が、ロボット62による次の作業(ローディング作業及びアンローディング作業)のための位置に配置したか否かを判定する。具体的には、制御装置64は、位置センサ26から検出信号を受信したか否かを判定する。
【0065】
ここで、上述のステップS7の終了時点での第1のテーブル12上の最上段のパレットPは、図5に示す第1のテーブル12上のパレットPのうち、上から2番目のものとなる。よって、ステップS7の終了時点での第1のテーブル12上の最上段のパレットPは、位置センサ26の検出位置から下方へ離れているので、ステップS7の終了時点で位置センサ26からの検出信号はOFFとなっている。
【0066】
この状態から、ステップS8で第1のテーブル12が上方へ移動され、第1のテーブル12上の最上段のパレットPが位置センサ26の下側近傍の位置に到達すると、位置センサ26は、検出信号をONとし、制御装置64に送信する。制御装置64は、位置センサ26からの検出信号がONとなった場合に、YESと判定し、ステップS10へ進む一方、位置センサ26からの検出信号がOFFである場合、ステップS9をループする。
【0067】
このように、位置センサ26は、第1のテーブル12上の最上段のパレットPの位置を検出することで、第1のテーブル12及び第2のテーブルの位置を検出し、制御装置64は、位置センサ26の検出結果(すなわち、検出信号ON/OFF)に基づいて、ロボット62の連動動作を制御している。
【0068】
ステップS10において、制御装置64は、ロボット62による操作部46の回転動作を停止する。これにより、連動機構28、第1のテーブル12、及び第2のテーブル16の動作が停止する。このときの状態を図6に示す。図6に示す状態においては、第1のテーブル12上の最上段のパレットPの上面と、第2のテーブル16上の最上段のパレットPの上面とは、略同じ平面上に配置される。
【0069】
ステップS10の終了後、制御装置64は、ステップS1に戻り、ステップS6でYESと判定するまで、ステップS1〜S10をループする。ステップS6でYESと判定したときの状態を、図7に示す。図7に示す状態においては、第1のテーブル12上に、未加工ワークがセットされていない空のパレットPが1つ設置されている一方、第1のテーブル12上に、加工済みワークがそれぞれセットされた6個のパレットPが設置されている。
【0070】
このように、ロボット62による連動動作で連動部材38、40、42、及び44を操作することにより、第1のテーブル12及び第2のテーブル16を、作業(ローディング作業及びアンローディング作業)に応じた位置に、各々配置している。この構成によれば、ローディング作業及びアンローディング作業を行うロボット62を、送りテーブル装置10へ駆動力を与える駆動装置として利用することができるので、ロボットシステム60の制御シーケンス及び構造を簡単化できる。
【0071】
また、本実施形態においては、位置センサ26によって、第1のテーブル12に設置された最上段のパレットPが所定位置(すなわち、位置センサ26の下側近傍の位置)に配置されたことを検出し、以って、第1のテーブル12が作業(ローディング作業及びアンローディング作業)に応じた位置に配置されたことを検出している。そして、制御装置64は、位置センサ26の検出結果に基づいて、ロボット62の連動動作を制御している。この構成によれば、制御装置64は、第1のテーブル12及び第2のテーブル16を作業に応じた位置に高精度に配置できる。
【0072】
また、本実施形態においては、連動部材38、40、42、及び44は、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを、反対の方向へ同じ距離だけ移動させている。この構成によれば、上述のステップS10の終了時に、第1のテーブル12上の最上段のパレットPの上面と、第2のテーブル16上の最上段のパレットPの上面とを略同じ平面上に配置することができる。
【0073】
これにより、ロボット62が次のステップS2(ローディング作業)を行うときのロボット62の目標位置(すなわち、第1のテーブル12上の最上段のパレットPにセットされた未加工ワークの位置)と、次のステップS3(アンローディング作業)を行うときのロボット62の目標位置(すなわち、第2のテーブル16上の最上段のパレットPにおける、加工済みワークのセット位置)とを、一定とすることができる。したがって、ロボット62によって確実にステップS2及びS3を実行できる。
【0074】
なお、ロボットシステム60から位置センサ26を省略することもできる。この場合、第1の送り装置14による第1のテーブル12の移動量と、第2の送り装置18による第2のテーブル16の移動量と、ロボット62による操作部46(すなわち、連動部材40)の操作量との間の関係が、予め取得される。
【0075】
例えば、この関係は、操作部46を上から見て所定の角度θ(例えば、1°)だけ回転させたときの、第1のテーブル12及び第2のテーブル16のz軸方向の移動量xを示す。この関係を基に、ステップS8でロボット62が操作部46を回転するときの目標回転数(目標回転角度)が予め決定される。制御装置64は、目標回転数をメモリに予め記憶する。
【0076】
そして、制御装置64は、ステップS9において、ステップS8でロボット62に操作部46を回転させた回転数が目標回転数に達したか否かを判定する。制御装置64は、操作部46の回転数が目標回転数に達した(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS10へ進む。
【0077】
一方、制御装置64は、操作部46の回転数が目標回転数に達していない(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS9をループする。この構成によれば、制御装置64は、位置センサ26を用いることなく、ステップS8〜S7の一連の動作を実行できるので、製造コストを低減できる。
【0078】
次に、図8を参照して、他の実施形態に係る送りテーブル装置90について説明する。送りテーブル装置90は、上述の送りテーブル装置10と、連動機構92の構成において、相違する。連動機構92は、連動部材38、42、44及び94を有する。連動部材94は、例えば、輪状のタイミングベルトであって、その内周面に歯部が形成されている。
【0079】
連動部材94は、連動部材38及び42の外周面に張り渡され、該連動部材94の内周面に形成された歯部は、連動部材38及び42の外周面に形成された歯部と係合する。これにより、連動部材38の回転は、連動部材94を介して、連動部材42及び44に伝達される。本実施形態においては、連動部材38の回転数と連動部材42の回転数との減速比は、1である。
【0080】
操作部46は、軸線Aを基準として連動部材38と略同心となるように、該連動部材38の上面に固設されている。外部(例えば、ロボット62)からの駆動力を受けて操作部46が軸線A周りに回転された場合、連動機構92は、上述の連動機構28と同様に、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを、互いに反対の方向へ同期して移動させる。
【0081】
次に、図9を参照して、さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置100について説明する。送りテーブル装置100は、上述の送りテーブル装置10と、連動機構102の構成において、相違する。連動機構102は、連動部材38、44及び104を有する。連動部材104は、中心孔を有する円柱状の歯車であって、連動部材38と連動部材44との間に介挿され、連動部材38及び44と係合する。
【0082】
連動部材104は、中心孔を有し、中心孔にピン106が挿通されている。ピン106は、天板24の上面24cから突出するように、天板24に設けられている。連動部材104は、ピン106の周りに回転可能である。本実施形態においては、連動部材104の歯数は、連動部材38及び44よりも大きい。しかしながら、連動部材104の歯数は、連動部材38及び44と同じ、又はそれよりも小さくてもよい。連動部材38及び44の歯数が同じであるので、連動部材38の回転数と連動部材42の回転数との減速比は、1である。
【0083】
操作部46は、連動部材104と略同心となるように、該連動部材104の上面に固設されている。外部(例えば、ロボット62)からの駆動力を受けて操作部46が上側から見て時計回り方向へ回転された場合、連動部材104と係合する連動部材38及び44は、上側から見て反時計回り方向へそれぞれ回転される。
【0084】
したがって、この場合、第1のテーブル12及び第2のテーブル16は、互いに同期して上方へ移動される。反対に、操作部46が上側から見て反時計回り方向へ回転された場合は、第1のテーブル12及び第2のテーブル16は、互いに同期して下方へ移動される。このように、本実施形態においては、連動機構102は、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを、互いに同じ方向へ同期して移動させる。
【0085】
次に、図10を参照して、さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置110について説明する。送りテーブル装置110は、上述の送りテーブル装置10と、連動機構112の構成において、相違する。連動機構112は、連動部材38、44及び94を有する。連動部材94は、連動部材38及び44の外周面に張り渡され、該連動部材94の内周面に形成された歯部は、連動部材38及び44の外周面に形成された歯部と係合する。これにより、連動部材38の回転は、連動部材94を介して、連動部材44に伝達される。
【0086】
操作部46は、軸線Aを基準として連動部材38と同心となるように、該連動部材38の上面に固設されている。外部(例えば、ロボット62)からの駆動力を受けて操作部46が軸線A周りに回転された場合、連動機構112は、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを、互いに同じ方向へ同期して移動させる。
【0087】
次に、図11を参照して、さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置120について説明する。送りテーブル装置120は、上述の送りテーブル装置10と、連動機構122の構成において、相違する。連動機構122は、連動部材38、40、42、及び44と、減速機124とを有する。
【0088】
減速機124は、取付部材126を介して、天板24に対して固定され、軸線Aを基準として連動部材38と略同心となるように、該連動部材38の上方に配置されている。操作部46は、減速機124の入力シャフトに固定されている。一方、減速機124の出力シャフト124aは、連動部材38に固定されている。
【0089】
減速機124は、操作部46(すなわち、入力シャフト)の回転数を減速しつつ、回転力を出力シャフト124a及び連動部材38に伝達する。このときに連動部材38(出力シャフト124a)に生じるトルクは、減速機124によって、操作部46(入力シャフト)のトルクよりも増大される。
【0090】
以下、本実施形態に係る送りテーブル装置120を、送りテーブル装置10の代わりに、図3に示すロボットシステム60に適用した場合について説明する。この場合、制御装置64は、図4中のステップS8において、ロボット62のエンドエフェクタ74で連動機構122の操作部46を把持し、軸線A周りに回動させる。
【0091】
このとき、ロボット62が操作部46を、図3に示す連動機構28の操作部46を回転させたときと同じトルクで回転させたとすると、連動部材38、40、42、及び44に生じるトルクは、連動機構28のときよりも大きくなる。このようにトルクを増大させることによって、第1のテーブル12及び第2のテーブル16に、より重量のあるパレットP又はワークを設置したとしても、第1のテーブル12及び第2のテーブル16を安定して移動させることができる。
【0092】
一方、図3に示す連動機構28で操作部46を操作したときに連動部材38に生じるトルクと同じ大きさのトルクを、連動機構132の連動部材38に生じさせる場合は、該連動機構122の操作部46を回転させるためのトルクを小さくすることができる。この場合、ロボット62が操作部46に与える駆動力を小さくできるので、ロボット62の小型化又は省電力化を実現できる。
【0093】
このように、本実施形態においては、減速機124は、連動部材38、40、42、及び44へ入力される駆動力(トルク)を増大させる駆動力強化機構として機能する。この構成によれば、ロボット62がエンドエフェクタ74を回転させるトルクを大きく確保できない場合においても、ロボット62の連動動作によって、第1のテーブル12及び第2のテーブル16を送り動作させて、作業に応じた位置に各々配置することが可能となる。
【0094】
次に、図12を参照して、さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置130について説明する。送りテーブル装置130は、上述の送りテーブル装置10と、連動機構132の構成において、相違する。連動機構132は、連動部材38、40、42、及び44と、アシスト装置134とを有する。
【0095】
本実施形態においては、操作部46は、連動部材38の上面に固設されている。また、連動部材38の下面には、該下面から下方へ延出する力受け部材142が固設されている。力受け部材142は、円柱状であって、軸線Aを基準として連動部材38と略同心となるように配置されている。
【0096】
アシスト装置134は、電動モータ136及びトルクセンサ138を有する。電動モータ136は、天板24の上面24cに固定されている。電動モータ136の出力シャフトには、円柱状のアシスト部材140が固設されている。電動モータ136は、アシスト部材140を、軸線Aと平行な軸線周りに回転させる。
【0097】
トルクセンサ138は、第1の送り装置14のねじ軸30の上端30aと力受け部材142との間に介挿されており、操作部46、連動部材38及び力受け部材142とねじ軸30とは、一体となって回転する。操作部46に駆動力としてトルクが与えられると、該トルクは、連動部材38及び力受け部材142を介して、トルクセンサ138に加わる。トルクセンサ138は、自身に作用する軸線A周りのトルクを検出する。
【0098】
アシスト部材140と力受け部材142とは、該アシスト部材140の回転力が該力受け部材142に伝達されるように、互いに当接(例えば、係合)している。アシスト部材140及び力受け部材142は、例えば、歯車であってもよいし、又は、高摩擦係数を有する材料(例えば、ゴム、樹脂等)から構成された円柱部材であってもよい。
【0099】
電動モータ136は、トルクセンサ138が検出したトルクが、予め定められた閾値を超えたときに、アシスト部材140を回転させ、該アシスト部材140から力受け部材142に追加トルクを加える。このときに力受け部材142に加えられる追加トルクの方向が、トルクセンサ138が検出したトルクの方向に一致するように、電動モータ136がアシスト部材140を回転させる方向が決定される。
【0100】
具体的には、トルクセンサ138が、上側から見て時計回り方向のトルクを検出したとする。この場合、電動モータ136は、アシスト部材140を、上側から見て反時計回りの方向へ回転させ、該アシスト部材140からら力受け部材142に追加トルクを加える。その結果、力受け部材142に、上側から見て時計回り方向の追加トルクが加えられることになる。このようにして、アシスト装置134は、連動部材38に加えられる駆動力(すなわち、トルク)を補強する。
【0101】
次に、送りテーブル装置130を、送りテーブル装置10の代わりに図3に示すロボットシステム60に適用した場合の動作について、図13を参照して説明する。なお、図13に示すフローにおいて、図4と同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。送りテーブル装置130がロボットシステム60に適用された場合、送りテーブル装置130の電動モータ136及びトルクセンサ138は、制御装置64に通信可能に接続される。
【0102】
ステップS8を開始した後、ステップS21において、制御装置64は、トルクセンサ138によるトルクτの検出を開始する。具体的には、制御装置64は、トルクセンサ138にトルク検出指令を送信する。トルクセンサ138は、制御装置64からトルク検出指令を受信すると、自身に掛かるトルクτを連続的(例えば、周期的)に検出し、制御装置64へ送信する。こうして、制御装置64は、トルクセンサ138を介して、操作部46に与えられた駆動力(トルクτ)を取得する。
【0103】
ステップS22において、制御装置64は、直近にトルクセンサ138によって検出されたトルクτが閾値τth以上となったか否かを判定する。この閾値τthは、オペレータによって予め定められ、制御装置64のメモリに記憶される。制御装置64は、τ≧τthとなった(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS23へ進む。一方、制御装置64は、τ<τthである(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS24へ進む。
【0104】
ステップS23において、制御装置64は、電動モータ136を作動させる。具体的には、制御装置64は、直近にトルクセンサ138によって検出されたトルクτの方向に基づいて、電動モータ136の回転方向を決定する。そして、制御装置64は、電動モータ136に作動指令を送り、該作動指令を受けて電動モータ136は、アシスト部材140を、決定された回転方向へ回転させて、該アシスト部材140から力受け部材142に追加トルクτを加える。
【0105】
このときに力受け部材142に加えられる追加トルクτの方向は、トルクセンサ138が直近に検出したトルクτの方向に一致する。こうして、連動部材38に、ロボットが操作部46に加えるトルクτと、電動モータ136による追加トルクτの合力が加えられる。
【0106】
一方、ステップS22でNOと判定した場合、ステップS24において、制御装置64は、電動モータ136の動作を停止し、ステップS9へ進む。なお、このステップS24の開始時点で電動モータ136が停止されていた場合、制御装置64は、電動モータ136の停止状態を維持して、ステップS9へ進む。
【0107】
上述したように、本実施形態によれば、アシスト装置134によって、ロボット62から連動部材38、40、42、及び44に与えられた駆動力(トルク)を補強することができる。したがって、アシスト装置134は、連動部材38、40、42、及び44へ入力される駆動力(トルク)を増大させる駆動力強化機構として機能する。この駆動力強化機構によって、ロボット62がエンドエフェクタ74を回転させるトルクを大きく確保できない場合においても、ロボット62の連動動作によって、第1のテーブル12及び第2のテーブル16を送り動作させて、作業に応じた位置に各々配置することが可能となる。
【0108】
次に、図14図16を参照して、さらに他の実施形態に係る送りテーブル装置150について説明する。送りテーブル装置150は、上述の送りテーブル装置10と、連動機構152の構成において、相違する。連動機構152は、連動部材38、40、42、及び44と、駆動部154と、ガイド機構158とを有する。
【0109】
本実施形態においては、連動部材42は、y軸方向へ移動可能となるように設けられ、ガイド機構158は、連動部材42のy軸方向への移動を案内する。具体的には、連動部材42は、ピン156に回転可能に嵌め込まれている。ピン156は、本体部156aと、該本体部156aから外方へ延出するフランジ部156bとを有する。本体部156aは、円柱状であって、z軸方向に延在する。フランジ部156bは、本体部156aから左右両側へ延出している。
【0110】
天板24には、上面24cから下方へ凹む凹部24dが形成されている。凹部24dは、y軸方向から見て略T字状の断面形状を有し、y軸方向に延在している。ピン156の本体部156aの下端部とフランジ部156bとは、凹部24dに受容される。
【0111】
凹部24dは、ピン156のz軸方向への摺動を案内する一方、ピン156が本体部156aの中心軸線周りに回転するのを規制する。連動部材42は、その中心孔にピン156の本体部156aの上端部が挿通され、本体部156aの周りに回転可能である。また、連動部材42は、ピン156とともにy軸方向へ移動可能である。このように、本実施形態においては、連動部材42は、ピン156のフランジ部156bと凹部24dとの係合によって、y軸方向へ移動するように案内される。したがって、フランジ部156bと凹部24dとは、ガイド機構158を構成する。
【0112】
駆動部154は、例えば油圧式又は空圧式のシリンダであって、駆動軸154aを有する。駆動軸154aの先端は、ピン156の本体部156aに固定されている。駆動部154は、駆動軸154aを進退させることによって、連動部材42を、図14に示す係合位置と、図16に示す脱離位置との間で、z軸方向へ進退させる。
【0113】
連動部材42は、図14に示す係合位置に配置されているとき、隣接する連動部材40及び44と係合し、連動部材40の回転を、連動部材44へ伝達する。一方、連動部材42は、図16に示す脱離位置に配置されているとき、連動部材40及び44から脱離し、連動部材40の回転は連動部材44へ伝達されない。このように、本実施形態においては、連動部材42は、連動部材40及び44と選択的に係合する。
【0114】
本実施形態に係る送りテーブル装置150を、送りテーブル装置10の代わりに、図3に示すロボットシステム60に適用した場合、制御装置64は、駆動部154を制御して、作業に応じて、連動部材42を連動部材38及び42に選択的に係合させる。連動部材42を係合位置に配置させた場合は、第1のテーブル12と第2のテーブル16の双方を移動させることができる一方、連動部材42を脱離位置に配置させた場合は、第1のテーブル12のみを移動させることができる。この構成によれば、より多様な作業に柔軟に対応することが可能となる。
【0115】
なお、上述の送りテーブル装置10においては、ねじ軸34が上側から見て時計回り方向へ回転されるにつれて第2のテーブル16が下方へ移動されるように、第2の送り装置が構成されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、第2の送り装置は、ねじ軸34が上側から見て時計回り方向へ回転されるにつれて第2のテーブル16が上方へ移動されるように、構成されてもよい。
【0116】
この場合、連動機構28は、(2n−1)個の連動部材を有する。例えば、図1に示す連動部材42を省略し、連動部材40及び44を係合させる。この場合において、連動部材40が回転されると、ねじ軸30及び34は、上側から見て同じ方向へ回転され、その結果、第1のテーブル12と第2のテーブル16とを互いに反対の方向へ移動させることができる。
【0117】
上述のロボットシステム60に視覚センサを適用してもよい。この場合、制御装置64は、上述のステップS2において、視覚センサによって、第1のテーブル12上の最上段のパレットPにセットされた未加工ワークを撮像し、該未加工ワークのロボット座標系Cにおける位置データを取得してもよい。
【0118】
また、ステップS3において、制御装置64は、視覚センサによって第2のテーブル16上の最上段のパレットPを撮像し、該最上段のパレットに加工済みワークをセットすべきセット位置のロボット座標系Cにおける位置データを取得してもよい。この場合、パレットP及びワークを、テーブル12及び16上の任意の位置に設置できるので、パレットP及びワークを位置決めするための治具を不要とできる。
【0119】
また、ステップS7において、制御装置64は、視覚センサによって第1のテーブル12上の最上段のパレットPを撮像し、該最上段のパレットPの把持部Gのロボット座標系Cにおける位置データを取得してもよい。また、ステップS8において、制御装置64は、視覚センサによって操作部46を撮像し、該操作部46のロボット座標系Cにおける位置データを取得してもよい。この場合、ステップS8の開始時点で操作部46が如何なる回転角度に配置されていたとしても、エンドエフェクタ74によって操作部46を確実に把持できる。
【0120】
送りテーブル装置10において、連動部材38と40、40と42、及び、42と44との歯数比(減速比)は、任意であってもよい。また、送りテーブル装置90において、連動部材38と42、及び、42と44との歯数比(減速比)は、任意であってもよい。また、送りテーブル装置100又は110において、連動部材38と44との歯数比(減速比)は、任意であってもよい。また、連動部材38、40、42、44、又は104は、歯車に限らず、高摩擦係数を有する材料(ゴム、樹脂等)から構成された部材でもよい。
【0121】
操作部46の設置位置は、上述の実施形態の位置に限定されない。例えば、送りテーブル装置10において、操作部46は、連動部材38、42、及び44のいずれに固設されてもよい。また、送りテーブル装置120において、操作部46及び減速機124は、連動部材40、42、及び44のいずれに設けられてもよい。また、送りテーブル装置130において、操作部46、力受け部材142、及びアシスト装置134は、連動部材40、42、及び44のいずれに設けられてもよい。
【0122】
送りテーブル装置150において、連動部材40をy軸方向へ移動可能に設けて、駆動部154は、連動部材40を進退させるように構成されてもよい。上述の実施形態において、パレットPを設けることなく、ワークをテーブル12又は16上の所定位置に直接置いてもよい。また、テーブル12又は16は、その上にパレットP又はワークを載置可能であれば、如何なる形状を有してもよい。
【0123】
位置センサ26は、近接スイッチに限らず、変位計又はリニアスケール等、第1のテーブル12(第1のテーブル12上のパレット)又は第2のテーブル16(第2のテーブル上のパレット)の位置(z軸座標、位置センサ26からの距離)を検出可能なものであってもよい。この場合、制御装置64は、上述のステップS9において、位置センサ26の検出結果(z軸座標、距離)が所定の許容範囲内になったか否かを判定し、許容範囲内になった場合にYESと判定してもよい。
【0124】
ロボットシステム60における送り装置14又は18は、ボールねじ装置でなくてもよい。例えば、送り装置14及び18は、ベルトコンベアのようなパレットP又はワークを搬送可能な装置でもよい。この場合、連動部材は、2つのベルトコンベアの間に介挿され、該2つのベルトコンベアの連動させるように構成される。また、送り装置14及び18は、テーブル12及び16を、x−y平面(例えば、x軸)に沿って移動するように構成されてもよい。
【0125】
また、ロボットシステム60においては、ロボット62が、加工機に対してワークをロード及びアンロードする場合について述べたが、これに限らず、例えば、ロボット62は、例えばウェハを半導体処理装置にロード及びアンロードするものであってもよいし、又は、他の如何なる装置に部材を搬送するものであってもよい。
【0126】
また、ロボット62は、垂直多関節ロボットに限らず、水平多関節ロボット、パラレルリンクロボット等、如何なるタイプのロボットであってもよい。また、エンドエフェクタ74は、開閉可能な指部80の代わりに、例えば、物体を吸着可能な吸着部を有するものであってもよい。また、エンドエフェクタ74に、操作部46を操作可能なチャック部を、指部80(吸着部)に加えて(又は、指部80の代わりに)設けてもよい。例えば、このチャック部は、操作部46を受容して該操作部46と係合する穴を有してもよい。
【0127】
上述した種々の実施形態の特徴の組み合わせることもできる。例えば、図12に示すアシスト装置134を図11に示す連動機構122に適用してもよい。この場合、駆動力強化機構は、減速機124及びアシスト装置134を有することになる。又は、図8に示す連動機構92において連動部材42を可動とし、図14に示す駆動部154を該連動機構92に適用して、連動部材42を連動部材44に選択的に係合させてもよい。
【0128】
以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0129】
10,90,100,120,130,150 送りテーブル装置
12,16 テーブル
14,18 送り装置
30,34 ねじ軸
38,40,42,44,94,104 連動部材
26 位置センサ
60 ロボットシステム
62 ロボット
64 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16