特許第6863944号(P6863944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863944
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】教示位置補正方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/127 20060101AFI20210412BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20210412BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20210412BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B23K9/127 501B
   B23K9/12 331F
   B25J9/22 A
   G05B19/42 P
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-195554(P2018-195554)
(22)【出願日】2018年10月17日
(65)【公開番号】特開2020-62659(P2020-62659A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】本門 智之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 一弘
【審査官】 永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−300724(JP,A)
【文献】 特開平01−181977(JP,A)
【文献】 特開2011−088177(JP,A)
【文献】 特開2013−056353(JP,A)
【文献】 特開2016−010810(JP,A)
【文献】 特開昭54−162649(JP,A)
【文献】 特開2014−000600(JP,A)
【文献】 特開2013−202673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/127
B23K 9/12
B25J 9/22
G05B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接母材の溶接経路に沿って設定された複数の教示位置をそれぞれ前記溶接経路に交差する方向に挟む位置に、補正開始点および補正終了点を生成し、
生成された各前記補正開始点から各前記補正終了点に向かう検出経路に沿って、溶接ワイヤを突出させた溶接トーチを移動させながら、タッチセンシングを行うことにより、前記検出経路に沿う前記溶接母材のプロファイルを検出し、
検出された該プロファイルに基づいて、前記教示位置を補正し、
前記プロファイルの検出において、
前記溶接トーチの先端から所定量突出させた前記溶接ワイヤの先端位置をツール先端点として設定し、
前記タッチセンシングは、前記溶接ワイヤと前記溶接母材との接触が検出されていないときには前記溶接ワイヤを突出させ、前記溶接ワイヤと前記溶接母材との接触が検出されたときには前記溶接ワイヤを引っ込める動作を繰り返し、
前記溶接ワイヤと前記溶接母材との接触が検出された時点での前記ツール先端点の座標およびツール先端点からの前記溶接ワイヤの移動量を記録する教示位置補正方法。
【請求項2】
前記タッチセンシングにより記録された前記溶接ワイヤの移動量の絶対値が、第1閾値よりも大きいときには、その旨を報知する請求項に記載の教示位置補正方法。
【請求項3】
前記タッチセンシングにより記録された前記溶接ワイヤの移動量の絶対値が、前記第1閾値以下であり第2閾値よりも大きいときに、前記溶接経路を検出したものと判定し、その時点での前記ツール先端点の座標および該ツール先端点からの前記溶接ワイヤの移動量に基づいて、前記教示位置を補正する請求項に記載の教示位置補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教示位置補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接トーチの先端から突出させた溶接ワイヤを溶接母材に接触させることにより、溶接トーチの先端位置を検出するタッチセンシングが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1においては、溶接母材の外面に溶接ワイヤを接触させて行うタッチセンシングにより、溶接母材のずれを検出し、検出されたずれを補償する変換マトリクスを生成して教示位置を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−225288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の補正方法では、溶接母材全体のずれによる教示位置のずれを補正することはできるが、溶接母材自体の誤差による教示位置のずれを補正することができないという不都合がある。
本発明は、溶接母材自体の誤差による教示位置のずれを補正することができる教示位置補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、溶接母材の溶接経路に沿って設定された複数の教示位置をそれぞれ前記溶接経路に交差する方向に挟む位置に、補正開始点および補正終了点を生成し、生成された各前記補正開始点から各前記補正終了点に向かう検出経路に沿って、溶接ワイヤを突出させた溶接トーチを移動させながら、タッチセンシングを行うことにより、前記検出経路に沿う前記溶接母材のプロファイルを検出し、検出された該プロファイルに基づいて、前記教示位置を補正する教示位置補正方法である。
【0006】
本態様によれば、溶接母材の溶接経路に沿って設定された複数の教示位置に対して、各教示位置を溶接経路に交差する方向に挟む位置に、補正開始点および補正終了点が生成される。そして、生成された補正開始点から補正終了点に向かう検出経路に沿って、溶接ワイヤを突出させた溶接トーチを移動させながらタッチセンシングを行うことにより、検出経路に沿う溶接母材のプロファイルが検出される。
【0007】
プロファイルは溶接母材の表面形状の変化を示すので、表面形状が急激に変化する部分に段差、すなわち、溶接経路が存在することを検出できる。したがって、実際の溶接経路を示すプロファイルに基づいて教示位置を補正することにより、溶接母材全体のずれによる教示位置のずれのみならず、溶接母材自体の誤差による教示位置のずれを補正することができる。
【0008】
上記態様においては、前記プロファイルの検出において、前記溶接トーチの先端から所定量突出させた前記溶接ワイヤの先端位置をツール先端点として設定し、前記タッチセンシングは、前記溶接ワイヤと前記溶接母材との接触が検出されていないときには前記溶接ワイヤを突出させ、前記溶接ワイヤと前記溶接母材との接触が検出されたときには前記溶接ワイヤを引っ込める動作を繰り返し、前記溶接ワイヤと前記溶接母材との接触が検出された時点での前記ツール先端点の座標および該ツール先端点からの前記溶接ワイヤの移動量を記録する
【0009】
この構成により、溶接トーチを検出経路に沿って移動させながら、溶接ワイヤを長さ方向に移動させて溶接ワイヤと溶接母材との接触および離間が繰り返される。そして、溶接ワイヤが溶接母材に接触した時点でツール先端点の座標と溶接ワイヤの移動量が記録されることにより、検出経路に沿う溶接母材のプロファイルを容易に検出することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記タッチセンシングにより記録された前記溶接ワイヤの移動量の絶対値が、第1閾値よりも大きいときには、その旨を報知してもよい。
この構成により、タッチセンシングにおける溶接ワイヤの移動量の絶対値が第1閾値よりも大きいときには、教示位置のずれが大き過ぎるので、その旨を報知することにより、操作者に異常を知らせることができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記タッチセンシングにより記録された前記溶接ワイヤの移動量の絶対値が、前記第1閾値以下であり第2閾値よりも大きいときに、前記溶接経路を検出したものと判定し、その時点での前記ツール先端点の座標および該ツール先端点からの前記溶接ワイヤの移動量に基づいて、前記教示位置を補正してもよい。
【0012】
この構成により、タッチセンシングにおける溶接ワイヤの移動量の絶対値が、第1閾値以下の範囲で大きく変化したときに、溶接母材の表面形状が急激に変化する溶接経路を検出したものと容易に判定することができる。その時点でのツール先端点の座標および溶接ワイヤの移動量を用いることにより、実際の溶接経路の位置を用いて、溶接母材全体のずれによる教示位置のずれのみならず、溶接母材自体の誤差による教示位置のずれを補正することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶接母材自体の誤差による教示位置のずれを補正することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る教示位置補正方法を実施するロボットシステムを示す全体構成図である。
図2図1の教示位置補正方法を適用する溶接母材の一例を示す斜視図である。
図3図1のロボットシステムに備えられる溶接トーチと溶接母材との関係を示す正面図である。
図4図1の教示位置補正方法を示すフローチャートである。
図5図4の教示位置補正方法において各教示位置に設定される検出経路の一例を示す図である。
図6図1のロボットシステムにおいて、溶接ワイヤを補正開始点に配置した状態を示す正面図である。
図7図6の補正開始点から検出経路に沿って溶接ワイヤを移動させつつ行うタッチセンシングを説明する正面図である。
図8図7の溶接ワイヤが溶接母材の段差に配置された状態を示す正面図である。
図9図8の状態から溶接終了点まで検出経路に沿って溶接ワイヤを移動させつつ行うタッチセンシングを説明する正面図である。
図10図2の溶接母材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る教示位置補正方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る教示位置補正方法は、ロボット1の先端に装着した溶接トーチ2の先端から溶接ワイヤ3を突出させてアーク溶接を行う場合のロボット1の教示位置を補正する方法である。ロボット1は、図1に示されるように、例えば、6軸多関節型ロボットである。
【0016】
ロボット1には、図1に示されるように、教示プログラムに従ってロボット1を制御する制御装置10と、タッチセンシング機能を備える溶接電源20とが接続されている。
タッチセンシング機能は、溶接母材Xに溶接ワイヤ3が接触したことを検出する機能であり、溶接トーチ2に設けられたサーボモータ4によって、溶接ワイヤ3を駆動する。
【0017】
具体的には、タッチセンシング機能は、溶接母材Xに溶接ワイヤ3が接触していないときにはサーボモータ4の作動により溶接ワイヤ3を前方に繰り出して突出量を増大させ、溶接母材Xに溶接ワイヤ3が接触したときには、接触が解消される位置まで溶接ワイヤ3を基端側に引き込んで突出量を低減させる。そして、溶接電源20は、溶接ワイヤ3を基端側に引き込んだ各位置において、溶接ワイヤ3の突出量を制御装置10に出力する。
【0018】
本実施形態に係る教示位置補正方法は、例えば、図2に示されるように、2枚の平板状の溶接母材Xを重ねて、図示しない固定治具によりテーブル上に固定し、図3に示されるように、一方の溶接母材Xの端縁に沿って隅肉溶接を行う場合の溶接経路に沿って、複数の教示位置が教示されていることを前提としている。ロボット1の作動により複数の教示位置を辿るように溶接トーチ2を移動させつつアーク溶接を行う場合において、同様の溶接母材Xを同一の固定治具によって固定しても、固定の際の溶接母材Xの位置ずれや溶接母材X自体の寸法誤差等によって、溶接経路がずれる場合がある。
【0019】
本実施形態に係る教示位置補正方法は、溶接母材Xが固定治具に固定された状態で、実際の溶接に先だって実施されるものであり、例えば、溶接経路に沿って設定された複数の教示位置の全てについて、それぞれ補正動作を行わせる。補正動作は、まず、図4に示されるように、nを初期化し(ステップS1)、第1教示位置に対して、溶接経路に交差する方向に教示位置を挟んだ両側に、補正開始点と補正終了点とを生成する(ステップS2)。補正開始点および補正終了点は、図5に示されるように、教示位置を通過する直線(検出経路)上に、所定の距離をあけて設定される。
【0020】
溶接トーチ2の先端から所定量、例えば、15mmだけ突出させた溶接ワイヤ3の先端位置をロボット1の動作の基準となるツール先端点として設定しておく。
制御装置10は、図6から図9に示されるように、溶接ワイヤ3が溶接母材Xの表面に直交する方向となる溶接トーチ2の姿勢を維持しながら、生成された補正開始点から検出経路に沿って補正終了点まで溶接トーチ2を移動させ、その間に、溶接電源20はタッチセンシング機能により、溶接ワイヤ3を出没させて、図6に示されるように、ツール先端点からの溶接ワイヤ3の移動量Lの検出により表面位置の検出を行う。
【0021】
すなわち、まず、補正開始点へ移動し(ステップS3)、補正終了点に向かって検出経路に沿ってツール先端点を移動させながらタッチセンシングを行う(ステップS4)。これにより、検出経路上において、溶接ワイヤ3が溶接母材Xに接触していない位置では溶接ワイヤ3が突出させられる一方、溶接ワイヤ3が溶接母材Xに接触したときには、接触しない位置まで溶接ワイヤ3が引っ込められる。
【0022】
溶接母材Xの表面形状が平坦な部分では、溶接ワイヤ3の移動量Lの変化量(絶対値)ΔLは極めて小さく、溶接母材Xに段差がある部分では、図8に示されるように、溶接ワイヤ3の移動量Lの変化量ΔLは大きくなる。そして、溶接ワイヤ3を引っ込めたときの溶接ワイヤ3のツール先端点からの移動量Lが制御装置10に送られる(ステップS5)。
【0023】
制御装置10は、溶接ワイヤ3の移動量Lが溶接電源20から送られてきたときには、その時点でのツール先端点の座標と送られてきた移動量Lとを対応づけて記憶し(ステップS6)、移動量Lの絶対値が第1閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。第1閾値はツール先端点からの溶接ワイヤ3の許容移動量である。許容移動量は、例えば±15mmである。
【0024】
ステップS6における判定の結果、移動量Lが第1閾値よりも大きい場合には、制御装置10は、異常である旨を報知し(ステップS8)、処理を終了する。報知方法は、移動量を画面に表示する、あるいはアラームを鳴らす等の任意の方法でよい。
【0025】
ステップS6における判定の結果、移動量Lが第1閾値以下である場合には、ツール先端点が補正終了点に位置するか否かを判定し(ステップS9)、補正終了点に位置しない場合にはステップS4からの工程を繰り返す。
【0026】
ステップS8において補正終了点に位置した場合には、検出経路に沿う溶接母材Xのプロファイルの検出が終了したことになる。
そこで、制御装置10は、検出されたプロファイルに基づいて、溶接母材Xの段差位置を検出する。すなわち、補正開始点からの検出経路における溶接ワイヤ3の移動量Lの変化量ΔLが第2閾値を超えるか否かを判定する(ステップS10)。変化量ΔLの最大値が第2閾値以下である場合には、溶接母材Xの表面は検出経路に沿ってほぼ平坦であることがわかる。
【0027】
一方、検出経路の途中において、溶接ワイヤ3の移動量Lが第2閾値を超える場合には、その位置において溶接母材Xの表面には溶接母材Xの板厚以上の段差が存在することがわかる。この位置に対応して記憶されているツール先端点の座標と溶接ワイヤの移動量Lとに基づいて、教示位置の補正が行われる(ステップS11)。
【0028】
すなわち、検出経路に沿う溶接母材Xのプロファイルを検出することにより、溶接母材Xにおける段差位置、すなわち、一方の溶接母材Xの表面に重ねられた他方の溶接母材Xの端縁であって、隅肉溶接が施される溶接経路が精度よく検出される。そして、予め教示された教示位置が検出された溶接経路に基づいて算出される新たな教示位置に置き換えられる。
【0029】
そして、全ての教示位置について補正処理が行われたか否かが判定され(ステップS12)、全ての教示位置について補正処理が行われた場合には処理を終了し、全ての教示位置について補正処理が終了していない場合には、nをインクリメントして(ステップS13)、ステップS2からの工程が繰り返される。
【0030】
このように、本実施形態に係る教示位置補正方法によれば、溶接母材Xが固定治具に固定された状態で、実際の溶接に先だって検出された溶接母材Xのプロファイルに基づいて教示位置を補正するので、溶接母材Xが全体として回転した状態で固定治具により固定されている場合、あるいは、溶接母材X自体の形状の誤差によって、溶接母材Xの端縁と教示された溶接経路との間にずれが発生している場合であっても、実際の溶接母材Xの端縁の位置に合わせて溶接経路上の各教示位置を精度よく補正することができるという利点がある。
【0031】
また、本実施形態によれば、プロファイルの検出時に、溶接ワイヤ3が溶接母材Xの表面に直交する方向に維持されるので、検出されたツール先端点の溶接母材Xの表面に沿う方向の座標は、溶接ワイヤ3の先端の座標とほぼ一致している。また、ツール先端位置からの溶接ワイヤ3の移動量Lに基づいて教示位置を補正するので、検出されたツール先端点の溶接母材Xの表面に直交する方向の座標と、溶接ワイヤの移動量Lとに基づいて、溶接ワイヤ3の先端の溶接母材Xの表面に直交する方向の座標を容易に算出することができる。
【0032】
すなわち、本実施形態によれば、溶接母材Xの位置ずれおよび形状誤差によるずれを3次元的に精度よく検出することができて、教示位置を3次元的に精度よく補正することができるという利点がある。特に、溶接母材Xの形状の誤差が部分的に大きくなっている場合にも、現実の溶接母材Xの形状に倣って、精度よく溶接することができる。
【0033】
また、溶接ワイヤ3の移動量Lが第1閾値を超えている場合に、その旨が報知され、処理が終了するので、溶接母材Xが、大きくずれて固定されていたり、溶接母材Xの形状誤差が大きすぎたりする場合に、溶接対象から除外することができる。
【0034】
また、第2閾値として、溶接母材Xの板厚寸法を設定しているので、タッチセンシング機能により検出された段差の大きさΔLが板厚寸法Tを超えている場合には、図10に示されるように、2つの溶接母材Xの間に隙間が存在することを検出することもできる。そのような場合には、アーク溶接の際の溶接条件として、隙間を有する溶接母材Xの隅肉溶接に適したものを設定することもできる。
【0035】
なお、本実施形態に係る教示位置補正方法においては、検出経路に沿って補正開始点から補正終了点まで検出したプロファイルに基づいて教示位置を補正しているが、これに代えて、補正開始点からプロファイルを検出して、段差が検出された時点でプロファイルの検出処理を終了してもよい。これにより、プロファイルを検出する時間を短縮することができる。
【0036】
また、検出経路を溶接経路に直交する方向に設定したが、これに代えて、溶接経路に任意の角度で交差する方向に検出経路を設定してもよい。
また、ツール先端点および移動許容量は15mm以外の任意の値を採用してもよい。
【0037】
また、溶接電源20がタッチセンシング機能を備え、溶接トーチ2に備えられたサーボモータ4を制御して溶接ワイヤ3を移動させることとしたが、溶接ワイヤ3を移動させるサーボモータ4をロボット1の付加軸により構成し、溶接電源20のタッチセンシング機能による溶接ワイヤ3の溶接母材Xへの接触検知信号に基づいて、制御装置10がサーボモータ4を制御することにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態においては、溶接経路に沿って教示された全ての教示位置について、検出経路を設定して補正することとしたが、これに代えて、溶接母材X全体の角度ずれを補正するだけの場合には、溶接経路に沿って離れた2箇所についてプロファイルの検出により正しい教示位置を求め、求められた教示位置間の角度に基づいて、溶接母材Xの角度ずれを補正してもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 溶接トーチ
3 溶接ワイヤ
L 移動量
ΔL 変化量(絶対値)
X 溶接母材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10