特許第6863945号(P6863945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863945
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20210412BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B25J19/06
   B25J9/22 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-199860(P2018-199860)
(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公開番号】特開2020-66092(P2020-66092A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2020年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岩山 貴敏
【審査官】 岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01901150(EP,A1)
【文献】 特開2015−208789(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/190936(WO,A1)
【文献】 特開平05−345286(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102016200455(DE,A1)
【文献】 特開2011−125975(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/092860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に取り付けたツールを含むロボットおよび該ロボットの周辺に配置されている周辺物体の形状情報の少なくとも一部を記憶し、
前記ロボットを教示プログラムに従って動作させる際に、動作の各位置において、前記形状情報に基づいて、前記ロボットと前記周辺物体との距離の変化を算出し、
前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、
算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ前記教示プログラムに設定されている速度を低下させるよう制御するとともに前記外力の基準値が小さくなるよう制御するロボットの制御方法。
【請求項2】
先端に取り付けたツールを含むロボットおよび該ロボットの周辺に配置されている周辺物体の形状情報の少なくとも一部を記憶し、
前記ロボットをジョグ動作させる際に、動作の各位置において、前記形状情報に基づいて、前記ロボットと前記周辺物体との距離の変化を算出し、
前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、
算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみジョグ動作の速度を低下させるよう制御するとともに前記外力の基準値が小さくなるよう制御するロボットの制御方法。
【請求項3】
先端に取り付けたツールを含むロボットの形状情報の少なくとも一部を記憶し、
前記ロボットを教示プログラムに従って動作させる際に、動作の各位置において、前記形状情報に基づいて、前記ロボット自体の各部の距離の変化を算出し、
前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、
算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ前記教示プログラムに設定されている速度を低下させるよう制御するとともに前記外力の基準値が小さくなるよう制御するロボットの制御方法。
【請求項4】
前記ロボットと前記周辺物体との前記距離が所定の閾値よりも小さい場合に、前記速度を低下させるよう制御する請求項1または請求項2に記載のロボットの制御方法。
【請求項5】
前記ツールと前記周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ前記速度を低下させるよう制御する請求項1、請求項2および請求項4のいずれかに記載のロボットの制御方法。
【請求項6】
前記ロボットおよび前記周辺物体の少なくとも一方の各部分の硬度または尖鋭度の情報を記憶し、
前記距離が小さくなる方向に変化している前記部分の硬度または尖鋭度に応じて前記速度の低下の度合いを調整する請求項1、請求項2、請求項4および請求項のいずれかに記載のロボットの制御方法。
【請求項7】
前記部分の硬度が高いほど前記速度の低下の度合いを高くする請求項に記載のロボットの制御方法。
【請求項8】
前記部分の尖鋭度が高いほど前記速度の低下の度合いを高くする請求項に記載のロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットが作業を行う作業エリアに作業者が立ち入った場合に、作業者を検出し、作業者とロボットとの距離を算出し、作業者とロボットとの距離が近づくほどロボットの動作速度を低下させるシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、ロボットを備えるシステムにおいては、ロボットがワークを把持する場合など、ロボットが作業者以外の周辺物体に接近する場合には、作業者の一部をロボットと周辺物体との間に挟み込むリスクを解消するために、作業者の有無に関わらずロボットの動作速度を低下させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−223831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロボットと周辺物体との距離が近い場合であっても、必ずしも作業者の一部の挟み込みが発生するとは限らない。
本発明は、ロボットの動作効率の不必要な低下を防止しつつ、ロボットと周辺物体との間に作業者の一部を挟み込むリスクを低減することができるロボットの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、先端に取り付けたツールを含むロボットおよび該ロボットの周辺に配置されている周辺物体の形状情報の少なくとも一部を記憶し、前記ロボットを教示プログラムに従って動作させる際に、動作の各位置において、前記形状情報に基づいて、前記ロボットと前記周辺物体との距離の変化を算出し、前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ前記教示プログラムに設定されている速度を低下させるよう制御するとともに前記外力の基準値が小さくなるよう制御するロボットの制御方法である。
【0007】
本態様によれば、先端に取り付けたツールを含むロボットの形状情報およびロボットの周辺に配置されている周辺物体の形状情報が記憶されていて、教示プログラムに従ってロボットを動作させる際に、動作の各位置において、記憶されている形状情報に基づいてロボットと周辺物体との距離の変化が算出される。算出された距離が変化しない場合または大きくなる方向に変化している場合には、教示プログラムに設定されている速度を低下させず、距離が小さくなる方向に変化している場合には、教示プログラムに設定されている速度を低下させるよう制御される。これにより、ツールを含むロボットと周辺物体との間に作業者の一部が挟み込まれる可能性のある場合の動作速度を低減してリスクを低減し、挟み込みの可能性のない場合の動作速度を維持してロボットの動作効率の不必要な低下を防止することができる。
【0008】
本発明の他の態様は、先端に取り付けたツールを含むロボットおよび該ロボットの周辺に配置されている周辺物体の形状情報の少なくとも一部を記憶し、前記ロボットをジョグ動作させる際に、動作の各位置において、前記形状情報に基づいて、前記ロボットと前記周辺物体との距離の変化を算出し、前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみジョグ動作の速度を低下させるよう制御するとともに前記外力の基準値が小さくなるよう制御するロボットの制御方法である。
【0009】
上記態様においては、前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ、前記外力の基準値が小さくなるよう制御する
【0010】
また、本発明の他の態様は、先端に取り付けたツールを含むロボットの形状情報の少なくとも一部を記憶し、前記ロボットを教示プログラムに従って動作させる際に、動作の各位置において、前記形状情報に基づいて、前記ロボット自体の各部の距離の変化を算出し、前記ロボットが受けた外力が基準値を超える場合には前記ロボットを停止させ、算出された前記距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ前記教示プログラムに設定されている速度を低下させるよう制御するとともに前記外力の基準値が小さくなるよう制御するロボットの制御方法である。
【0011】
また、上記態様においては、前記ロボットと前記周辺物体との前記距離が所定の閾値よりも小さい場合に、前記速度を低下させるよう制御してもよい。
この構成により、算出されたロボットと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化しかつ所定の閾値よりも小さい場合に、教示プログラムに設定されている速度が低下させられる。すなわち、ロボットと周辺物体との距離が大きい場合には、距離が小さくなる方向に変化していても挟み込みが発生しないので、そのような場合に速度が制限されて動作効率が低下することを防止することができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記ツールと前記周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合にのみ前記速度を低下させるよう制御してもよい。
この構成により、算出されたツールと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合に、教示プログラムに設定されている速度が低下させられる。
【0013】
また、上記態様においては、前記ロボットおよび前記周辺物体の少なくとも一方の各部分の硬度または尖鋭度の情報を記憶し、前記距離が小さくなる方向に変化している前記部分の硬度または尖鋭度に応じて前記速度の低下の度合いを調整してもよい。
この構成により、算出されたツールと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合であってもロボットおよび周辺物体の少なくとも一方の部分の硬度または尖鋭度に応じて、教示プログラムに設定されている速度の低下の度合いが調整される。すなわち、相互に近接する方向に移動しているロボットおよび周辺物体の少なくとも一方の部分の硬度または尖鋭度が十分に低い場合には、挟み込みが発生しても作業者に与えるダメージが少ないため、速度を大きく低下させなくて済み、動作効率の低下を防止することができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記部分の硬度が高いほど前記速度の低下の度合いを高くしてもよい。
この構成により、算出されたロボットと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合であってもロボットおよび周辺物体の少なくとも一方の部分の硬度が低い場合には、速度の低下の度合いを低くして作業効率の低下を防止することができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記部分の尖鋭度が高いほど前記速度の低下の度合いを高くしてもよい。
この構成により、算出されたロボットと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合であってもロボットおよび周辺物体の少なくとも一方の部分の尖鋭度が低い場合には、速度の低下の度合いを低くして作業効率の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、動作効率の不必要な低下を防止しつつ、ロボットと周辺物体との間に作業者の一部を挟み込むリスクを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る協働ロボットの制御方法を実施するロボットシステムを示す全体構成図である。
図2図1の協働ロボットの制御方法を示すフローチャートである。
図3図1のロボットシステムにおいて、協働ロボットと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化している場合を示す拡大正面図である。
図4図1のロボットシステムにおいて、協働ロボットと周辺物体との距離が大きくなる方向に変化している場合を示す拡大正面図である。
図5図1のロボットシステムにおいて、協働ロボットと周辺物体との距離が変化していない場合を示す拡大正面図である。
図6図1のロボットシステムにおいて、協働ロボットと周辺物体との距離が小さくなる方向に変化しており、かつ所定の閾値よりも大きい場合を示す拡大正面図である。
図7図1のロボットシステムにおいて、協働ロボットが周辺物体の近傍を通過する場合を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る協働ロボットの制御方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る協働ロボット1の制御方法は、図1に示されるロボットシステム100において実施される。
【0019】
このロボットシステム100は、図1に示されるように、協働ロボット(ロボット)1と、協働ロボット1の周辺に設置されている周辺物体10と、協働ロボット1を制御する制御装置20とを備えている。
協働ロボット1は、例えば、6軸多関節型の協働ロボットである。協働ロボット1は、先端に、ワークWを処理するツールSを固定している。ツールSは、例えば、ワークWを把持するハンド2あるいはワークWに対して任意の作業を行う工具である。周辺物体10は、例えば、協働ロボット1によって処理されるワークWを載置するテーブルあるいはワークWを加工する工作機械等である。
【0020】
制御装置20は、予め教示された教示プログラムおよび形状情報を記憶する記憶部21と、記憶部21から読み出された教示プログラムを実行する処理部22とを備えている。記憶部21はメモリであり、処理部22はプロセッサである。
【0021】
教示プログラムは、協働ロボット1を手動で動作させることにより、あるいは、オフラインにより教示された複数の教示点の座標、教示点の動作順序、教示点間の移動速度および教示点間の動作方法等を記憶している。処理部22は教示プログラムを実行する場合には、原則として動作順序に従って、一の教示点から他の教示点に、記憶されている動作速度および動作方法で、協働ロボット1を動作させる。動作方法としては、直線補間あるいは円弧補間等を挙げることができる。
【0022】
記憶部21に記憶されている形状情報は、先端にツールSを含む協働ロボット1および周辺物体10の形状モデルである。また、形状情報としては、2次元形状情報を採用してもよいし、3次元形状情報を採用してもよい。処理部22は、教示プログラムに設定されている各教示点、あるいは、教示点間の各補間点等の動作軌跡上の各位置において、記憶部21に記憶されている形状情報に基づいて、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lを算出する。
【0023】
すなわち、処理部22は、まず、図2に示されるように、協働ロボット1の初期位置において、記憶部21に記憶されている形状情報を読み出し、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lを算出する(ステップS1)。初期位置は、協働ロボット1が動作を開始する直前の位置でよい。距離Lの算出は、ツールSを含む協働ロボット1の外表面の予め設定された複数の測定点と、周辺物体10の外表面に予め設定された複数の測定点との間で算出される。算出された距離Lは記憶部21に記憶される(ステップS2)。
【0024】
次いで、処理部22は、協働ロボット1を教示プログラムに従って動作させ(ステップS3)、距離Lの算出を行う位置であるか否かを判定し(ステップS4)、距離Lの算出を行う位置ではない場合には、ステップS3からの工程を繰り返す。距離Lの算出を行う位置である場合には、記憶部21に記憶されている形状情報を読み出し、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lを算出する(ステップS5)。例えば、周辺物体10の形状は変化しないが、協働ロボット1の形状は協働ロボット1の各軸の位置に応じて変化する。
【0025】
処理部22は、記憶されている形状情報に基づいて、各位置における協働ロボット1の形状を算出し、協働ロボット1と周辺物体10との複数の測定点間の距離Lを算出する。そして算出された測定点間の距離Lが記憶部21に記憶され(ステップS6)、記憶部21に記憶されている1つ前の距離Lに対する変化量ΔLが算出され(ステップS7)、変化量ΔLの符号が負であるか否かが判定される(ステップS8)。
【0026】
図3に示されるように、距離Lが小さくなる方向に変化している測定点対がある場合には、その測定点間の距離Lが所定の閾値Th以下であるか否かが判定される(ステップS9)。そして、その測定点対の距離Lが所定の閾値Th以下である場合には、処理部22は、教示プログラムに設定されている動作速度に1より小さい定数αを乗算して協働ロボット1を動作させる。すなわち、協働ロボット1は、教示プログラムに設定されている動作速度よりも低い動作速度で動作させられる(ステップS10)。
また、ステップS8において距離Lが大きくなる方向に変化している測定点対がある場合、およびステップS9において測定点対の距離Lが所定の閾値Thよりも大きい場合には、後述するステップS11の工程を実行する。
【0027】
処理部22が乗算する定数αは、測定点間の距離Lの大きさに応じて選択されてもよい。すなわち、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lが近づいている場合には、距離Lが近いほど、乗算する定数αを小さくして、動作速度を大きく低下させればよい。
そして、動作終了か否かを判定し(ステップS11)、終了していない場合には、ステップS3からの工程を繰り返す。
【0028】
このように、本実施形態に係る協働ロボット1の制御方法によれば、協働ロボット1の各測定点と周辺物体10の各測定点との距離が、協働ロボット1の動作の各位置において算出され、距離Lが所定の閾値Th以下に近接し、かつ、距離Lが小さくなる方向に変化している場合に、協働ロボット1の動作速度が制限される。
【0029】
一方、距離Lが所定の閾値Th以下であっても、図4および図5に示されるように、距離Lが変化していない場合あるいは距離Lが大きくなる方向に変化している場合には速度制限は行われない。
また、距離Lが小さくなる方向に変化していても、図6に示されるように距離Lが所定の閾値Thよりも大きい場合には速度制限は行われない。
【0030】
また、例えば、図7に示されるように、協働ロボット1が周辺物体10の近傍を通過する場合において、協働ロボット1が周辺物体10に近接していくフェーズでは距離Lに応じて速度制限が大きくなっていき、協働ロボット1が周辺物体10を通過して離れていくフェーズになった場合には速度制限が解除されて教示プログラムに設定されている動作速度に回復される。
【0031】
これにより、本実施形態に係る協働ロボット1の制御方法によれば、挟み込みが発生する可能性の高い場合に、動作速度を制限して挟み込みを防止し、挟み込みが発生する可能性が低い場合には、動作速度の不必要な制限を防止して動作効率の低下を防止することができるという利点がある。
【0032】
すなわち、協働ロボット1が周辺物体10に近接していく場合にのみ動作速度が制限され、協働ロボット1と周辺物体10が離れていく場合には動作速度は制限されない。また、協働ロボット1が周辺物体10に近接していく場合であっても距離Lが離れている場合には速度制限は行われない。さらに、距離Lが所定の閾値Th以下まで近接している場合であっても、近接の度合いが増していくほど動作速度が大きく制限されるようになる。
【0033】
特に、本実施形態においては、協働ロボット1および周辺物体10の形状情報を記憶していて、記憶されている形状情報に基づいて、速度制限を自動的に実施するので、作業者は、協働ロボット1の教示操作において、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lに応じた動作速度の設定を行う必要がない。すなわち、作業者は、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lを考慮せずに教示操作を行うことができ、教示操作を簡易化して、教示にかかる時間を短縮することができるという利点がある。
【0034】
また、本実施形態においては、ツールSのみならず協働ロボット1自体の形状情報をも考慮するので、ツールSと周辺物体10との間の挟み込みのみならず、協働ロボット1自体と周辺物体10との間の挟み込みをも確実に防止することができる。そして、ツールSあるいは協働ロボット1が、周辺物体10の狭い隙間を通過するような動作を行う場合、ツールSあるいは協働ロボット1と周辺物体10との距離Lが極めて近くても、距離Lが近接していかない限り動作速度は制限されず、動作効率の低下を防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、ツールSおよび協働ロボット1自体と周辺物体10との距離Lおよび距離Lの変化に応じて速度制限を実施したが、ツールSと周辺物体10との距離Lおよび距離Lの変化のみに応じて速度制限を実施してもよい。距離Lの判定の対象をツールSと周辺物体10とのみに制限することにより、計算量を減らすことができる。
またツールSを含む協働ロボット1と周辺物体10との距離Lおよび距離Lの変化に応じて速度制限を実施したが、距離Lの変化のみに応じて速度制限を実施してもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、記憶部21に記憶する形状情報として協働ロボット1および周辺物体10の少なくとも一方の各部の硬度あるいは尖鋭度を含めてもよい。そして、処理部22は、協働ロボット1と周辺物体10の距離Lが小さくなっていく部分の硬度あるいは尖鋭度が低いほど、速度制限を緩和すればよい。
【0037】
すなわち、硬度あるいは尖鋭度が高い部分どうしの間で挟み込みが発生する場合には作業者に与えるダメージが大きくなるが、硬度あるいは尖鋭度が低い部分どうしの間で挟み込みが発生してもダメージは低くて済む。したがって、協働ロボット1の表面および周辺物体10の表面の少なくとも一方が柔らかい場合および尖っていない場合には、速度の過度の低下を防止して動作効率を向上することができる。逆に、協働ロボット1の表面および周辺物体10の表面が硬い場合あるいは尖っている場合には、速度を十分に低下させて作業者に与えるダメージを低減することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、ロボットシステム100として、協働ロボット1を教示プログラムに従って動作させるものを例示したが、これに限られるものではなく、例えば、協働ロボット1をジョグ動作させるものを採用してもよい。この場合、処理部22によって算出された距離Lが小さくなる方向に変化している場合にのみジョグ動作の速度を低下させるよう制御する。
【0039】
また、本実施形態においては、協働ロボット1は、協働ロボット1が受けた外力が基準値を超えると停止する停止手段を備えていてもよい。この場合、協働ロボット1の停止手段によって、協働ロボット1が受けた外力が基準値を超える場合には、協働ロボットを停止させる。そして、処理部22によって算出された距離Lが小さくなる方向に変化している場合にのみ、協働ロボット1が受けた外力の基準値を小さくするように制御することが好ましい。
【0040】
また、本実施形態においては、処理部22が、協働ロボット1と周辺物体10との距離Lの変化を算出するものを例示したが、これに代えて、ツールSを含む協働ロボット1自体の各部の距離の変化を算出するものを採用してもよい。これにより、協働ロボット1を構成する部品どうし、例えば、協働ロボット1のアームどうし、またはツールSと協働ロボット1のベースとが衝突することを抑制することができる。
また、協働ロボット1として6軸多関節型のものを例示したが、これに限定されるものではなく、任意の形態の協働ロボット1を有するロボットシステム100に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 協働ロボット(ロボット)
10 周辺物体
L 距離
Th 閾値
S ツール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7