特許第6863984号(P6863984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863984
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】結晶多形とプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/056 20060101AFI20210412BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C07H19/056CSP
   A61K31/7056
   A61P11/00
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-528313(P2018-528313)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-537469(P2018-537469A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016081432
(87)【国際公開番号】WO2017103109
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】15201223.3
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514162852
【氏名又は名称】ガレクト・バイオテック・エイビイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】グラヴェル,リーズ
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン,アナス
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−535233(JP,A)
【文献】 AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE,2012年,Vol.185,pp.537-546
【文献】 平山令明編著,有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−,丸善株式会社,2008年 7月25日,p.17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
の多形であって、前記多形が3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドであり、かつ
前記多形が、XRPDディフラクトグラムピークリスト
【表1】
で確認される多形形態1を有する、多形。
【請求項2】
前記多形が、XRPDディフラクトグラムピークリスト
【表2】
で確認される多形形態1を有する、請求項1に記載の多形。
【請求項3】
前記多形は水和物である、請求項1または2に記載の多形。
【請求項4】
前記水和物は含水率3〜5重量%である、請求項に記載の多形。
【請求項5】
前記多形は微粉化されている、請求項1または2に記載の多形。
【請求項6】
前記多形は、ヒトの細気管支および/または肺胞に到達可能な大きさに微粉化されている、請求項に記載の多形。
【請求項7】
請求項1または2に記載の多形と、任意選択で薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項8】
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを有機溶媒に懸濁または溶解させるステップと、次いで温度サイクル、急速冷却、蒸発、またはその組み合わせによって多形形態1を作製するステップとを含み、そして最後に乾燥して、多形形態1を得るステップを含む、請求項1または2に記載の多形を作製するプロセス。
【請求項9】
ヒトの肺線維症の治療のための、請求項1または2に記載の多形を含む薬剤であって、
ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項1または2に記載の多形の一定量がヒトの肺組織に投与される、前記肺線維症の治療用薬剤。
【請求項10】
前記投与は乾燥粉末吸入器によって行われる、請求項に記載の薬剤。
【請求項11】
前記投与は、単回投与乾燥粉末吸入器によって行われる、請求項10に記載の薬剤。
【請求項12】
前記多形は、ヒトの細気管支および/または肺胞に投与される、請求項に記載の薬剤。
【請求項13】
前記一定量は0.15〜50mgの1日1回用量である、請求項に記載の薬剤。
【請求項14】
前記一定量は、0.15〜0.50mg、0.50〜0.75mg、0.75〜1.25mg、1.25〜1.5mg、1.5〜1.75mg、1.75〜2mg、2〜2.25mg、2.25〜2.5mg、2.5〜2.75mg、2.75〜3mg、3〜5mg、5〜7mg、7〜8mg、8〜10mg、10〜20mg、および20〜50mgの群から選択される1日1回用量である、請求項13に記載の薬剤。
【請求項15】
ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形を含む薬剤であって、ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形の一定量がヒトの肺組織に投与される、前記肺線維症の治療用薬剤。
【請求項16】
ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形を含む薬剤であって、ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形の一定量がヒトの肺組織に投与される、前記肺線維症の治療用薬剤。
【請求項17】
ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形を含む薬剤であって、ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形の一定量がヒトの肺組織に投与される、前記肺線維症の治療用薬剤。
【請求項18】
ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形を含む薬剤であって、ヒトの肺線維症の治療に有効な、請求項に記載の多形の一定量がヒトの肺組織に投与される、前記肺線維症の治療用薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの結晶多形に関する。
【背景技術】
【0002】
特発性肺線維症(IPF)は世界的に健康に対する重大な負担となっている。これは原因不明の慢性疾患で、急性肺損傷をくり返すことで進行性線維症が引き起こされ、肺構造の破壊、肺機能の低下につながり、最終的に呼吸不全や死に至る。特発性肺線維症(IPF)は肺の線維症の典型的かつ最も一般的な原因であるものの、数多くの呼吸器疾患が肺線維症に進行する可能性があり、肺線維症は通常、予後が悪い。診断から死亡までの期間の中央値は2.5年で、IPFの発症率と有病率は増え続けている。効果的な治療が存在しない数少ない呼吸器状態のひとつであり、また疾患の進行を予測する信頼できるバイオマーカーが存在しない。肺線維症に至る機序は不明だが、未知の原因による反復性上皮損傷の結果として生じる異常な創傷治癒が軸となっている。IPFは、形質転換増殖因子β1(TGF−β1)などの線維形成サイトカインに高い活性化反応を示す、線維芽細胞/筋線維芽細胞を含む線維芽細胞の病巣を特徴とする。特発性肺線維症の治療薬に対しては、大きなアンメットニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0121179号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/067986号
【特許文献3】米国特許第5,503,144号明細書
【特許文献4】米国特許第5,458,135号明細書
【特許文献5】米国特許第6,065,472号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20040089295号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第20050056274号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20060054166号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20060097068号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第20060102172号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20080060640号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第20110155768号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第20120167877号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Controlled Pulmonary Drug Delivery,Smith and Hickey,Editors,Springer 2011
【発明の概要】
【0005】
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドは白色から灰色がかった白色の結晶性固体で、6つの結晶多形と1つの非晶形が確認されている。
【0006】
1つの態様において、本発明は式(I)の化合物の結晶多形に関する。
【0007】
【化1】
【0008】
式(I)の化合物は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドであり、XRPD(粉末X線回折)ディフラクトグラムピークリストで確認される結晶多形の形態1を有する。
【0009】
【表1】
【0010】
さらに、3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの結晶多形の形態1は図1または図2のXRPDディフラクトグラムで確認できる。
【0011】
本発明のさらなる態様において、3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの結晶多形は特定の形態1であり、水和結晶形である。この水和物は化学量論的水和物でなく、むしろチャネル水和物である。形態1は合成時には乾燥しているが、のちに水分を取り込み、約3〜5%の水分量で平衡化する。形態1は安定しており、時間の経過とともに他の形態に変化しない。加えて形態1は微粉化によってさらに処理を行うことができ、これは、肺、特に肺組織の最狭部、すなわち細気管支や肺胞への乾燥粉末送達に使用する組成物を調整する際に非常に役立つ。
【0012】
さらなる態様において、本発明は本発明の結晶多形と、任意選択で、薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0013】
またさらなる態様において、本発明は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを有機溶媒に懸濁または溶解させるステップと、次いで温度サイクル、急速冷却、もしくは蒸発、またはその組み合わせによって形態1を作製するステップとを含む本発明の結晶多形を作製するプロセスに関する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、有機溶媒中の3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの溶液を噴霧乾燥させるステップと、式(I)の非晶質化合物を回収するステップとを含む、式(I)
【0015】
【化2】
【0016】
の化合物の非晶形を調製するプロセスに関する。
【0017】
またさらなる態様において、本発明は、肺線維症の治療に効果的な本発明の結晶多形の一定量をヒトの肺組織の最狭部に投与するステップを含む、ヒトにおける肺線維症の治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】形態1のXRPDディフラクトグラムである。
図2】形態1のXRPDディフラクトグラムである。
図3】形態2のXRPDディフラクトグラムである。
図4】形態3のXRPDディフラクトグラムである。
図5】形態4のXRPDディフラクトグラムである。
図6】形態5のXRPDディフラクトグラムである。
図7】形態6のXRPDディフラクトグラムである。
図8】微粉化した形態1のXRPDディフラクトグラムである。
図9】微粉化した形態1のXRPDディフラクトグラムである。
図10】微粉化した形態1のXRPDディフラクトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
式(I)の化合物は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドという化学名(IUPAC)を有する。
【0020】
式(I)の化合物は、特許文献1または特許文献2に記載のように調製することができ、この場合、非晶質固体が生成される。
【0021】
本発明は次の式(I)の化合物の結晶多形に関する。
【0022】
【化3】
【0023】
一実施形態において、式(I)の化合物は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドであり、XRPDディフラクトグラムピークリストで確認される結晶多形の形態1を有する。
【0024】
【表2】
【0025】
式(I)の化合物は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドであり、図1のXRPDディフラクトグラムで確認される結晶多形の形態1を有する。
【0026】
式(I)の化合物は3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドであり、図2のXRPDディフラクトグラムで確認される結晶多形の形態1を有する。
【0027】
さらなる実施形態において、式(I)の化合物は水和物としての3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドである。
【0028】
さらなる実施形態において、3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド水和物は3〜5%の水分(重量%)を含む。
【0029】
さらなる実施形態において、式(I)の化合物は、それぞれ図3〜7のXRPDディフラクトグラムで確認される形態2、3、4、5、または6から選択される3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドである。形態5(図6)は、安定しており、肺内投与用ネブライザーに使用するのに好適であるため、とりわけ興味深い。
【0030】
またさらなる実施形態において、結晶多形は微粉化結晶多形などの乾燥粉末である。これは例えば微粉化した形態1である。
【0031】
さらなる実施形態において、形態1などの結晶多形は、ヒトの肺組織の最狭部、例えば細気管支や肺胞に到達可能な大きさに微粉化されている。
【0032】
さらなる態様において、本発明はヒトの肺線維症の治療方法に使用する本発明の結晶多形に関する。好ましくは、肺線維症の治療に使用する結晶多形は形態1および5から選択され、通常は形態1である。
【0033】
またさらなる態様において、本発明は、本発明の結晶多形と、任意選択で、薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物に関する。通常、化合物に用いられる結晶多形は、微粉化乾燥粉末などの乾燥粉末としての形態1のみ、またはラクトースなどの添加剤と混合した形態1である。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、形態1などの本発明の結晶多形を含むDPIに関する。ある実施形態において、形態1などの結晶多形は、ヒトの肺組織の最狭部、例えば細気管支や肺胞に到達可能な大きさに微粉化されている。さらなる実施形態において、DPIはヒトの肺線維症の治療方法に使用する形態1の結晶多形を含む。またさらなる実施形態において、DPIは単回投与または複数回投与のDPI吸入器である。特定の一実施形態において、乾燥粉末吸入器はRS01 Monodose Dry Powder Inhaler(Plastiape)である。
【0035】
別の態様は、3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを有機溶媒に懸濁または溶解させるステップと、次いで温度サイクル、急速冷却、もしくは蒸発、またはその組み合わせによって形態1を作製するステップとを含む本発明の結晶多形の形態1を作製するプロセスに関する。出発物質として用いられる化合物3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドは、上記プロセスで形態1を生成するため、非晶形または任意の結晶形であってよい。さらなる実施形態において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、tert−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、およびジイソプロピルエーテル、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0036】
さらなる態様は、有機溶媒中の3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの溶液を噴霧乾燥させるステップと式(I)の非晶質化合物を回収するステップとを含む、式(I)
【0037】
【化4】
【0038】
の化合物の非晶形を調製するプロセスに関する。出発物質として用いられる化合物3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドは、上記プロセスで溶解化合物から非晶形を生成するため、任意の結晶形であってよい。さらなる実施形態において、有機溶媒は、アセトン:水が50:50〜80:20などのアセトンと水の混合物から選択される。またさらなる実施形態において、溶解化合物は、0.5〜20重量%の供給濃度、例えば1〜10重量%、例えば2〜7重量%、例えば約3.5重量%の供給濃度で乾燥チャンバーに導入される。さらなる実施形態において、乾燥チャンバーの流入口の乾燥ガス温度は120〜160℃、例えば140〜150℃、例えば約144℃の乾燥ガスである。またさらなる実施形態において、乾燥チャンバーの流出口の乾燥ガス温度は60〜90℃、例えば70〜80℃、例えば約75℃である。さらなる実施形態において、乾燥チャンバーでの乾燥時間は30〜120分間、例えば45〜75分間、例えば約50分間である。
【0039】
またさらなる態様において、本発明は、肺線維症の治療に効果的な本発明の結晶多形、例えば形態1または5の一定量をヒトの肺組織の最狭部に投与するステップを含む、ヒトにおける肺線維症の治療方法に関する。
【0040】
さらなる実施形態において、肺線維症は特発性肺線維症(IPF)である。
【0041】
さらなる実施形態において、投与は乾燥粉末吸入器によって行う。通常、単回投与または複数回投与のDPI吸入器を用いる。特定の一実施形態において、乾燥粉末吸入器はRS01 Monodose Dry Powder Inhaler(Plastiape)である。
【0042】
式(I)の化合物の結晶多形、通常は形態1を乾燥粉末として製剤化する場合、これは0.1〜20μmの平均質量空気動力学径(MMAD)、例えば0.5〜10μm、例えば1〜5μm、通常は2〜3μmのMMADから選択される好適な粒径であってよい。選択された範囲は、これらの範囲外の粒径の存在を排除するものではないが、選択された範囲は、本明細書に記載の所望の効果をもたらす範囲となる。
【0043】
またさらなる実施形態において、肺組織の最狭部は細気管支や肺胞である。
【0044】
さらなる実施形態において、1日1回用量は0.15〜50mg、例えば0.15〜0.50mg、0.50〜0.75mg、0.75〜1.25mg、1.25〜1.5mg、1.5〜1.75mg、1.75〜2mg、2〜2.25mg、2.25〜2.5mg、2.5〜2.75mg、2.75〜3mg、3〜5mg、5〜7mg、7〜8mg、8〜10mg、10〜20mg、および20〜50mgである。1.5〜20mgの1日1回用量であれば、BAL(気管支肺胞洗浄)液もしくはマクロファージ、またはその両方における式(I)の活性化合物の濃度が1nM〜500μMとなる。特に、1.5〜20mgの1日1回用量であれば、BAL(気管支肺胞洗浄)液もしくはマクロファージ、またはその両方における式(I)の活性化合物の濃度が1nM〜100μMとなる。より好ましくは10nM〜10μM、またはさらに好ましくは100nM〜1μMの濃度であれば、1〜10mg、例えば1〜3mgまたは3〜10mg、例えば1〜3mgの1日1回用量で提供できる。これ以外にBAL液における式(I)の活性化合物の好ましい濃度は、10nM〜10μM、例えば100nM〜10μM、通常は500nM〜10μM、例えば最大4μMである。これ以外にマクロファージにおける式(I)の活性化合物の好ましい濃度は、1〜500μM、例えば10〜250μM、通常は50〜200μM、例えば最大100μMである。
【0045】
またさらなる実施形態において、治療は長期治療である。
【0046】
本明細書で使用する「治療」および「治療すること」は、疾患または障害などの状態と闘うことを目的とした患者の管理およびケアを意味する。この用語は、患者が苦しんでいる特定の状態に対するあらゆる種類の治療、例えば、症状もしくは合併症を軽減するため、疾患、障害、もしくは状態の進行を遅延させるため、症状および合併症を軽減もしくは緩和するため、ならびに/または疾患、障害、もしくは状態を癒すもしくは排除するため、ならびに状態を予防するための活性化合物の投与を含むものであり、予防は、疾患、状態、または障害と闘うことを目的とした患者の管理およびケアとして理解され、症状または合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含むことを意図する。治療は長期的に行われる。治療対象は、肺線維症などの肺の線維症と診断されたヒトである。
【0047】
本明細書で使用する本発明の式(I)の化合物の「肺線維症の治療に効果的な一定量」という用語は、肺線維症およびその合併症の臨床症状を癒す、軽減する、または部分的に抑止するのに十分な量を意味する。各目的に対する効果的な量は、疾患または損傷の重症度、および対象者の体重や全身状態によって異なる。適切な投与量の決定は、値のマトリックスを作成し、マトリックス中の異なる点を試験することにより、日常的な実験を用いて実現でき、これはすべて、訓練を受けた医師または獣医師の通常の技能の範囲内であることが理解されよう。
【0048】
本明細書で使用する「薬学的に許容可能な添加剤」は、当業者が本発明の化合物を製剤化して医薬組成物を形成する際に使用することを検討するであろう担体、賦形剤、希釈剤、補助剤、着色料、香料、防腐剤などを含むことを意図するがこれに限定されない。
【0049】
本発明の組成物中で使用できる補助剤、希釈剤、賦形剤、および/または担体は、式(I)の化合物および医薬組成物の他の成分と適合性があるという意味において薬学的に許容可能であり、その受領者にとって有害でないはずである。好ましくは、組成物はアレルギー反応などの有害反応を引き起こす可能性のある物質を含有しないものとする。本発明の医薬組成物に使用できる補助剤、希釈剤、賦形剤、および担体は当業者に周知である。
【0050】
上述のように、本明細書で開示する組成物、特に医薬組成物は、本明細書で開示する化合物に加え、少なくとも1つの薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤、および/または担体をさらに含む。一実施形態において、医薬組成物は式(I)の化合物のみを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、上記少なくとも1つの薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤、および/または担体を1〜99重量%と、本明細書で開示する式(I)の化合物1〜99重量%とを含む。活性成分と薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤、および/または担体とを合わせた量は、組成物、特に医薬組成物の100重量%(100w/w%)を超えることはできない。本発明に従って、医薬組成物は式(I)の化合物のみ(すなわち式(I)の化合物が100w/w%)で構成されるか、または式(I)の化合物の1〜90w/w%、例えば2〜20w/w%、例えば3w/w%混合物、もしくは式(I)の化合物の10w/w%混合物を含んでよい。通常、3w/w%混合物は、3w/w%の式(I)の化合物と97w/w%のラクトース担体を含む医薬組成物である。通常、10w/w%混合物は、10w/w%の式(I)の化合物と90w/w%のラクトース担体を含む医薬組成物である。
【0051】
平均質量空気動力学径(MMAD)が0.1〜20μm(マイクロメートル)である粒子は末端気管支や肺胞領域に付着する可能性が高いことが、当業者には周知である。この粒径範囲は、物質の一部分が上気道にも付着するため、多くの適応症で肺への薬物送達に理想的である(非特許文献1第13章参照)。
【0052】
非特許文献1、特に第13、14、および15章によれば、式(I)の化合物などの化合物を肺への薬物送達用に製剤化する方法は当業者に周知である。
【0053】
乾燥粉末吸入器(DPI)は患者の肺に投薬するものとして周知である。本発明で使用するのに好ましいDPIはPlastiape(本社:イタリア・オズナーゴ)製単回投与乾燥粉末吸入器、具体的にはRS01 Monodose Dry Powder Inhalerである。
【0054】
現在のDPIデザインには事前計量式吸入器と装置計量式吸入器があり、いずれも、患者の吸気のみによって、または何らかの動力補助によって駆動できる。事前計量式DPIは、事前に計量した用量または何らかのユニット(例えば、ブリスターやカプセルなどの空洞に入った単回または複数回分)の用量分画を含み、これを後から製造中に、または使用前に患者が装置に挿入する。その後、患者は事前計量されたユニットからその用量を直接吸入しても、またはチャンバーに移してから吸入してもよい。装置計量式DPIは、複数回投与に十分な製剤を収容する内部リザーバーを有し、患者が作動させると装置自体が計量する。DPIデザインは多様で、その多くがデザインに特有の特徴を有しており、使用を助ける情報を作成するうえで課題がある。DPIデザインにかかわらず最も重要な特性は、用量の再現性と粒径分布である。使用期限までこうした品質を維持し、患者使用条件下での使用期間を通じて装置の機能性を保証することは、おそらく最も大変な課題であろう。
【0055】
加圧式定量吸入器(pMDI)は本発明の式(I)の化合物を送達するのに好適な装置である可能性もあり、非特許文献1の第8章に記載されている。
【0056】
したがって、非エアロゾルの呼吸作動式乾燥粉末吸入器が何種類か提供されている。例えば、Baconの特許文献3は呼吸作動式乾燥粉末吸入器を提示している。この装置は、乾燥粉末薬剤を収容するための乾燥粉末リザーバーと、リザーバーから個別の量で粉末薬剤を取り出すための計量チャンバーと、患者が吸入した時に、取り出した粉末薬剤をマウスピースを介して同伴する吸入口とを含む。
【0057】
特許文献4は、患者が連続的に吸入する薬剤のエアロゾル化用量を製造する方法および装置を開示している。この方法は、まず、あらかじめ選択した量の薬剤を所定量のガス、通常は空気中に分散させるステップを含む。分散は液体または乾燥粉末を用いて行うことができる。方法は、実質的にエアロゾル化用量全体をチャンバーに流入させるやり方であり、このチャンバーは最初に空気で満されており、マウスピースを介して周囲に開放されている。エアロゾル化薬剤がチャンバーに移った後に、患者は1回の呼吸で用量全体を吸入する。
【0058】
特許文献5は、薬理学的に活性な化合物を収容するハウジングと、ハウジングに延びる流出口を有し、使用者が吸入して気流を生成できる導管と、化合物の用量を導管に送達する投与ユニットと、上記気流に同伴される粉末凝集体の分散を助ける上記導管内に配置されたバッフルとを備える粉体吸入装置を開示している。
【0059】
使用する吸入器がエアロゾルか非エアロゾルかにかかわらず、投与した乾燥粉末薬剤の粒子が、吸入時に患者の肺の気管支領域に薬剤が適切に浸透できるよう十分に小さいことが最も重要である。しかしながら、乾燥粉末薬剤は非常に小さな粒子からなり、ラクトースなどの担体を含む組成物に含有させることが多いため、投与する前に、薬剤の規定外の凝集体または凝塊が無作為に生じる。そのため、好ましくは、呼吸作動式乾燥粉末吸入器に、薬剤の吸入前に薬剤または薬剤および担体の凝集体を崩壊させる手段を提供することが見いだされている。
【0060】
Boehringer Ingelheim社は1997年に、ソフトミスト吸入器型の機械式ネブライザーであるRespimatという名称の新技術を提供した。この機械式ネブライザーはガス噴霧剤も電力も不要で、手で操作する。もうひとつの機械式ネブライザーは、マーケット大学(Marquette University)のチームが開発した人力ネブライザーである。このネブライザーは、電気コンプレッサーで作動させることができるが、患者の肺にミストを供給する単純な機械式ポンプにも適している。電動式のこの他のネブライザーに、とりわけPARI社、Respironics社、オムロン社、Beurer社、Aerogen社が開発した振動メッシュ技術に基づく超音波式ネブライザー、またはとりわけオムロン社およびBeurer社が開発した高周波超音波を発生する電子発振器に基づく超音波式ネブライザーがある。その他の電動として、噴霧器としても知られるジェットネブライザーがある。
【0061】
さらなる実施形態において、ネブライザーは、機械式ネブライザー、例えばソフトミスト吸入器または人力ネブライザーから選択される。別の実施形態において、ネブライザーは、電動式ネブライザー、例えば超音波振動メッシュ技術に基づくネブライザー、ジェットネブライザー、または超音波式ネブライザーから選択される。特に好適なネブライザーは、振動メッシュ技術に基づくネブライザー、例えばPARI社製のeFlowである。肺線維症、特にIPFを治療する際、細気管支や肺胞などの肺組織の最狭部において、治療薬の十分に高い局所濃度を得ることが重要である。さらに、治療薬が肺組織の作用部位において適切な滞留時間を得ることが重要である。とはいえ、肺線維症、特にIPFの患者にとって咳は主要な症状であり、この症状は刺激物が肺に入り込むと悪化しやすい。しかしながら、電動式ネブライザーなどのネブライザーを用いて化合物を送達すると、肺にいかなる刺激も与えることなく、肺の最小区画に化合物を送達できるため、特に有益である。これらのような関連するネブライザーシステムは、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、および特許文献13に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に援用される。その他の好適なネブライザーは、United Therapeutics社製Tyvaso吸入システム、Gilead社製Alleraネブライザーシステム、Pharmaxis社製Bronchitol吸入器、GSK社製Diskhaler、Actelion社製およびProfile Phama社製のジェットネブライザーおよび超音波式ネブライザーである。
【0062】
プロセスのさらなる実施形態を、本明細書の実験の項で説明する。個々のプロセスおよび各出発物質は実施形態を構成し、これら実施形態は実施形態の一部を形成し得る。
【0063】
上記実施形態は、本明細書に記載する態様のいずれか1つ(例えば、「治療方法」、「医薬組成物」、「薬剤として使用する化合物」、または「方法で使用する化合物」)、および本明細書に記載する実施形態のいずれか1つを指すものとして理解されるが、ある実施形態が本発明の1つまたは複数の特定の態様に関するものであることが明記されていない場合はこの限りではない。
【0064】
本明細書に引用する刊行物、特許出願、および特許を含むすべての引用文献は、各引用文献が参照によって本明細書に個別にかつ具体的に援用されており、なおかつ本明細書にその全体が記載されている場合と同程度に、参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0065】
本明細書で使用するすべての見出しおよび小見出しは、便宜的に本明細書で使用しているにすぎず、いかなる形でも本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【0066】
あらゆる可能なバリエーションでの上記要素のいかなる組み合わせも、本明細書に別途記載がない限り、または文脈から別途明らかに否定されない限り、本発明に包含される。
【0067】
本発明を説明する文脈で使用する用語「ある(a、an)」、「その(the)」および同様の指示対象は、本明細書に別途記載がない限り、または文脈から明らかに否定されない限り、単数と複数の両方を包含するものと解釈されるものとする。
【0068】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別途記載がない限り、その範囲に入る別個の値について個々に言及するのを簡略化した方法として用いており、別個の値は、本明細書に個々に列挙するのと同じように、本明細書に援用される。別途記載がない限り、本明細書で提供するすべての正確な値は、対応する近似値を表す(例えば、特定の因子または測定に対して与えられたすべての正確な例示的値は、必要に応じて、「約(about)」で修飾された対応する近似値も提供するとみなし得る)。
【0069】
本明細書に記載するすべての方法は、本明細書に別途記載がない限り、または文脈から別途明らかに否定されない限り、任意の好適な順序で実施できる。
【0070】
本明細書におけるあらゆる例示、または例示を意味する語句(例えば「〜など(such as)」の使用は、単に本発明をより明瞭にすることを意図しており、別途記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる語句も、明示的に述べられていない限り、本発明の実施にいずれかの要素が必須であることを示すものと解釈してはならない。
【0071】
本明細書における特許文献の引用および援用は、便宜的に行っているにすぎず、そうした特許文献の有効性、特許性、および/または執行力に対するいかなる見解も反映していない。
【0072】
1つまたは複数の要素に関して「備える、含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、または「含有する(containing)」などの用語を使用する、本発明の任意の態様または実施形態に関する本明細書における説明は、別途記載がない限り、または文脈から明らかに否定されない限り、上記特定の1つまたは複数の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」または「を実質的に備える(substantially comprises)」発明の同様の態様または実施形態のための土台を提供することを意図している(例えば、特定の要素を含むと本明細書に説明されている組成物は、別途記載がない限り、または文脈から明らかに否定されない限り、上記要素からなる組成物も説明していると理解されるものとする)。
【0073】
本発明は、適用法で許容される最大限の範囲で、本明細書に提示する態様または請求項に列挙する主題のすべての改変および均等物を含む。
【0074】
以下に、実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの実施例は保護の範囲を限定すると解釈してはならない。前述の説明および以下の実施例に開示する特徴は、別々におよびそれらの任意の組み合わせの両方で、その多様な形態で本発明を実現するための材料となり得る。
【0075】
実験
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの結晶多形の形態1を製造する現在のプロセスは、エタノールから形態1を生成する粉砕または結晶化を伴う最終精製ステップを含む。
【0076】
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの形態1は、次のステップの後に粉砕によって調製できる。
・結晶質または非晶質の3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドをエタノール(3.6vol)に懸濁させる。
・懸濁液を70±5℃に加熱する。
・混合物を30分間、70±5℃で撹拌する。
・混合物を20±5℃に冷却する。
・8部のエタノール(8×0.75vol)をろ過し、すすぐ。
・ろ過ケーキを最低15分間空気吸引する。
・ろ過ケーキを真空、70℃で空気ブリードを用いて乾燥させ、精製3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを得る。
【0077】
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの形態1は、次のステップの後に結晶化によって調製できる。
・結晶質または非晶質の3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドをエタノール(3.5vol)および水(1.5vol)と混合する。
・混合物を60〜90分間かけて45〜50℃に加熱する。
・1μmのフィルターを通して18〜23℃で混合物を浄化する。
・温度を30〜40℃(目標38℃)に調節し、減圧下で混合物を約5volに濃縮する。
・30〜40℃(目標38℃)で混合物にエタノール(10vol)を添加する。
・混合物を約5volに再濃縮する。
・混合物を65〜75℃(目標70℃)に加熱し、30〜40分間撹拌する。
・少なくとも90分間かけて、混合物を18〜23℃(目標20℃)に冷却する。
・混合物を少なくとも45分間、18〜23℃(目標20℃)で撹拌する。
・ろ過ケーキをエタノールで、18〜23℃(目標20℃)でろ過し、洗浄する。
・ろ過ケーキを18〜23℃で乾燥させ、精製3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを得る。
【0078】
最終精製ステップとして粉砕によって生成した形態1材料を用いて多形スクリーンを実施した。多形スクリーンの結果から、3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドについて6つの潜在的な結晶多形があることが示された。各結晶多形(形態1〜6)を生成した条件を表2に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
・形態1は水和物形態であり、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、tert−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、およびジイソプロピルエーテルを含む8種類の溶媒で、温度サイクル、急速冷却、および蒸発の実験から作製できる。
【0081】
・形態2はチャネル水和物または吸湿性形態であり、アセトン、アセトン:水(20%)、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドを含む7種類の溶媒で、温度サイクル、急速冷却、貧溶媒添加、および蒸発実験から作製できる。
【0082】
・形態3は溶媒和物であり、ジクロロメタン、ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトン:水(20%)、およびジメチルアセトアミド含む9種類の溶媒で、温度サイクル、貧溶媒添加、および蒸発から作製できる。
【0083】
・形態4は溶媒和物であり、2−プロパノールで温度サイクルから作製できる。
【0084】
・形態5は水和物であり、ジメチルスルホキシド、水、水:プロピレングリコール(75:25)、および水:PEG400:エタノール(65:25:10)で温度サイクルから作製できる。
【0085】
・形態6は水和物/溶媒和物であり、ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンで、温度サイクルおよび蒸発実験から作製できる。
【0086】
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの形態5も、貧溶媒として水を用いて顕微溶液化(湿式研磨)で調製した。
【0087】
3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドの非晶形は、アセトン:水の溶液から噴霧乾燥で調製した。
【0088】
吸入製品で使用するさまざまな形態のin vitro性能を比較するために、顕微溶液化によって作製した形態5材料と噴霧乾燥によって作製した非晶形について、New Generation Impactor(NGI)を用いて空気動力学的粒径分布測定(APSD)を行った。これらを、微粉化した形態1材料から得たAPSDと比較した。各APSD試験のために、20mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを3号のHPMCカプセルに充填し、Plastiape社製Monodose吸入器を用いて作動させた。NGIの結果を表3に示す。ここから、3つの形態(形態1、形態5、および非晶質)のすべてが、60%を上回る微細粒子画分(FPF)と呼吸可能な範囲のMMAD値とを有する許容可能なin vitroエアロゾル性能を有することがわかる。
【0089】
【表4】
【0090】
微粉化した形態1はICH条件下で安定しており、表3Aの結果は、形態1が化学的にも物理的にも安定していることを示している。不純物の増加はなく、粒径も結晶形も変化がない。
【0091】
【表5】
【0092】
図8は最初の時点でのXRPDスキャンを示す。
図9は40℃/75RHで6ヵ月時点でのXRPDスキャンを示す。
図10は25℃/60RHで12ヵ月時点でのXRPDスキャンを示す。
【0093】
実施例
形態1の調製
3mLのメタノールを300mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加、または代わりに900μLのメタノールを100mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加し、スラリーを作製した。スラリーは室温と40℃を4時間サイクルでくり返す温度サイクルを約6日間または7日間実施した。試料はろ過し、周囲温度で乾燥させ、次いで約2時間、真空下で乾燥させた。
【0094】
形態1は、乾燥粉末吸入器(DPI)での使用が妥当であることを示す好適な特性を有することがわかった。
【0095】
形態2の調製
3mLのアセトン:水(20%)を300mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加、または代わりに300μLのアセトン:水(20%)を100mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加し、スラリーを作製した。スラリーは室温と40℃を4時間サイクルでくり返す温度サイクルを約6〜7日間実施した。試料はろ過し、周囲温度で乾燥させ、次いで約2時間、真空下で乾燥させた。
【0096】
形態3の調製
2.5mLのメチルイソブチルケトン(MIBK)を300mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加、または代わりに900μLのMIBKを100mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加し、スラリーを作製した。スラリーは室温と40℃を4時間サイクルでくり返す温度サイクルを約6〜7日間実施した。試料はろ過し、周囲温度で乾燥させ、次いで約2〜3時間、真空下で乾燥させた。
【0097】
形態4の調製
2mLの2−プロパノールを300mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加、または代わりに500μLの2−プロパノールを100mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加し、スラリーを作製した。スラリーは室温と40℃を4時間サイクルでくり返す温度サイクルを約6〜7日間実施した。試料はろ過し、周囲温度で乾燥させ、次いで約2〜3時間、真空下で乾燥させた。
【0098】
形態5の調製
2.5mLの水を300mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加、または代わりに800μLの水を100mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加し、スラリーを作製した。スラリーは室温と40℃を4時間サイクルでくり返す温度サイクルを約6〜7日間実施した。試料はろ過し、周囲温度で乾燥させ、次いで約2〜3時間、真空下で乾燥させた。
【0099】
形態5は、顕微溶液化によって調製し、呼吸可能な範囲の粒径を有する材料を作製することもできる。10gの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)を190gの水に懸濁した。懸濁液は、200μmの補助処理モジュールと100μmの相互作用チャンバーとを備えたMicrofluidics社製の高圧ホモジナイザーを用いて処理した。ユニットを約750barの圧力で操作した。最終ステップとして、材料を噴霧乾燥して、乾燥した形態5材料を単離した。
【0100】
形態5は安定しており、ネブライザーによる投与に特に好適である。
【0101】
形態6の調製
1mLのジメチルホルムアミド(DMF)を300mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加、または代わりに200μLのDMFを100mgの3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシド(例えば非晶形)に添加し、スラリーを作製した。スラリーは室温と40℃を4時間サイクルでくり返す温度サイクルを約0.5〜1日間実施した。溶液となった試料を蒸発させた。試料は真空下で約2時間乾燥させた。あるいは、蒸発ステップ中に沈殿が認められた場合、さらに約1日間温度サイクルを実施し、真空下で約1日間乾燥させた。
【0102】
非結晶質の調製
非晶質の3,3’−デオキシ−3,3’−ビス−[4−(3−フルオロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]−1,1’−スルファンジイル−ジ−β−D−ガラクトピラノシドを調製するのに用いた噴霧乾燥条件の試料を表4に示す。あるいは、噴霧乾燥溶媒は50:50〜80:20の別の比率でアセトン:水を含むことができる。
【0103】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10