(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864035
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】気化器集成部品
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20200101AFI20210412BHJP
A24F 40/44 20200101ALI20210412BHJP
【FI】
A24F47/00
A24F40/44
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-94523(P2019-94523)
(22)【出願日】2019年5月20日
(62)【分割の表示】特願2016-575451(P2016-575451)の分割
【原出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2019-162132(P2019-162132A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年5月27日
(31)【優先権主張番号】1411483.9
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ブッフベルガー、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ディケンズ、コリン ジョン
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/116561(WO,A1)
【文献】
特表2012−506263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24F 40/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化器を含み、この気化器はその長手方向軸に実質的に垂直な方向に気化性液が供給されるように構成され、気化器は、
共通の縁部を形成する第1および第2面を含み、
第1面は第2面より大きな表面積を有し、
気化器は第2面を介して気化性液が供給され、気化器が毛管構造を含む材料から形成されている気化器集成部品。
【請求項2】
気化器はシート状であることを特徴とする請求項1記載の気化器集成部品。
【請求項3】
気化器は実質的に平面であることを特徴とする請求項2記載の気化器集成部品。
【請求項4】
気化器は実質的に均一な厚さを有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の気化器集成部品。
【請求項5】
集成部品が2つ以上の気化器、好ましくは2つ、3つまたは4つの請求項1乃至4いずれか1項記載の気化器を含むことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の気化器集成部品。
【請求項6】
複数の気化器が積み重ねられていることを特徴とする請求項5記載の気化器集成部品。
【請求項7】
複数の気化器が実質的に同じ面に配向されていることを特徴とする請求項5記載の気化器集成部品。
【請求項8】
前記または各気化器が第1面と共に独立した共通の縁部を形成する第3面を有し、第3面は気化性液が供給されることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の気化器集成部品。
【請求項9】
第3面が第2面の反対に位置することを特徴とする請求項8記載の気化器集成部品。
【請求項10】
第3面が第2面に対して直交して位置することを特徴とする請求項8記載の気化器集成部品。
【請求項11】
第3面および第2面が共通の縁部を形成することを特徴とする請求項10記載の気化器集成部品。
【請求項12】
毛管構造が気化器の全ての面で露出されていることを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の気化器集成部品。
【請求項13】
毛管構造が気化器の少なくとも1つの面で露出されていないことを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の気化器集成部品。
【請求項14】
気化性液はニコチン、水、および/またはグリセロールを含むことを特徴とする請求項1乃至13いずれか1項記載の気化器集成部品。
【請求項15】
請求項1乃至14いずれか1項記載の気化器集成部品を含む装置。
【請求項16】
ハウジングと、
請求項1乃至14いずれか1項記載の気化器集成部品と、
電力源と、
1つ以上のセンサーと、
任意の1つ以上のLEDとを含む請求項15記載の装置。
【請求項17】
ハウジングが第1部分と第2部分とで構成され、気化器集成部品が第1部分に含まれることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項18】
装置が、
マウスピースを含むハウジングと、
請求項1乃至14いずれか1項記載の気化器集成部品と、
電力源を含むハウジングなどの別の部品との機械的および電気的な接続を構築するためのコネクターとを含むことを特徴とする請求項15記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は気化器集成部品および当該気化器集成部品を組み入れた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコのような装置はユーザーによって吸引されるエアロゾルを生じさせることに関与する集成部品を含んでもよい。そのエアロゾルは好適な液体を気化する(蒸発させる)ことによって形成してもよい。気化した液体は、ユーザーにその後吸引されるエアロゾルを形成する。エアロゾルは機械的手段を介して、例えば圧電噴霧器を使用してまたはヒーターを介して生成してもよい。
【0003】
気化器を含む装置の一例が下記特許文献1に記載されている。この装置では気化器は気化器の上部主要面を介して液体容器に接触する。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では気化器と気化性液の保持に好適なマトリックスとを含み、気化器は共通の縁部を形成する第1および第2面を含み、第1面は第2面より大きな表面積を有し、気化器は第2面を介してマトリックスと接触する気化器集成部品が開示されている。
【0005】
第2の態様では第1の態様による気化器集成部品を含む電子タバコなどの装置が開示されている。
【0006】
さらなる一般的な態様では気化器を含み、この気化器はその長手方向軸に実質的に垂直な方向に気化性液が供給されるように構成されている気化器集成部品が開示されている。
【0007】
本開示の以下の説明は上記態様のいずれかに適用され、あらゆる開示はその特定の項目下で論じられる態様または実施態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0008】
気化器集成部品
本明細書で開示されているように気化器集成部品は、気化器と気化性液の保持に好適なマトリックスとを含む。
【0009】
気化器はマトリックスに保持された液体を蒸発させることによって蒸気を生成する。この蒸発は加熱によって行われる。従って、気化器はヒーターまたは蒸留器として同じ意味で称される場合がある。当然のことながら蒸気の形成に追随してエアロゾルがその後に蒸気の凝集の結果として形成される。その結果、気化器をエアロゾル形成部品と称することもある。
【0010】
気化器は、通常は少なくとも第1および第2面を有する三次元構造である。第1および第2面は共通の縁部を有する。言い換えれば、第1面と第2面はそれらが共通の縁部を共有するように配置されている。第1および第2面は互いに対して実質的に直交してもよいが、これら2つの面の間で形成される角度は90°より大きいまたは小さくてもよい。
【0011】
本開示において面と言った場合は、1つ以上の縁部によって囲まれている気化器の領域に関する。例えば、気化器の形状が実質的に矩形である場合、その気化器は共通の縁部を形成する第1面および第2面を有し、第1および第2面は互いに直交する。気化器が実質的に円形(円盤状)である場合、その気化器は円形の縁部によって囲まれた第1面を有し、この縁部は第1面から離れるように角度(例えば90°)を付けて盤の周囲で延びる第2面と共通である。
【0012】
「縁部」なる用語に関し、この用語は丸められたまたは面取りされた縁部並びに2つの面が推移する他の外形を包含することが指摘される。
【0013】
第1面は第2面の表面積より大きい表面積を有する。その結果、当然のことながら第1面が気化器の上面(または向きによっては下面)を通常形成し、第2面は気化器の側面または端面のいずれかを形成する。しかしながら、気化器は特定の形状に限定されず、第1面および第2面が共通の縁部を形成し、第1面の表面積が第2面の表面積より大きければ種々の形状のものが可能である。1つの実施態様では気化器はシート状である。1つの実施態様では気化器は平面である。好適な気化器の形状および構造のさらなる例を以下に説明する。
【0014】
気化器自体を毛管構造を有する材料から形成してもよい。この点に関しそして気化性液を含むマトリックスと接触する結果として、毛管構造は気化器によって気化される液体を分配する役割を果たす。従って、毛管構造は気化器全体を通って延びてもよい。これとは別に毛管構造を気化器の特定の領域に限定することも可能である。
【0015】
気化器の毛管構造は気化器の少なくとも1つの面に露出させてもよい。言い換えれば、毛管構造は気化器の表面の外部に延びている。毛管構造が気化器の面に露出されていて、マトリックスと接触している場合、毛管構造はマトリックスから気化器内に液体を引き込む役割を果たす。従って、1つの実施態様では気化器の毛管構造は第2面などの気化器の少なくとも1つの面または第1面と共通の縁部を形成するあらゆる面に露出されている。気化器の毛管構造は気化器の全ての面に露出させてもよい。1つの実施態様では気化器の毛管構造は気化器の少なくとも第2面に露出されている。好ましい実施態様では気化器の毛管構造は少なくとも気化器の第1および第2面に露出されている。さらに好ましい実施態様では気化器の毛管構造は気化器の全ての面に露出されている。
【0016】
毛管構造が気化器の第1および第2面などの複数の面に露出している場合、液体は毛管作用によってマトリックスから引き込まれ、気化器によって気化される。この点に関し当然のことながら気化器の毛管孔隙の寸法は、マトリックスから液体を引き込むことができるような寸法になっている。気化された液体は露出した毛管構造の部分を介して気化器から出る。この点に関し当然のことながら第2面の毛管構造は、露出させたとしてもマトリックスと接触している。その結果、気化された液体は毛管構造が露出し、気化器集成部品が組み込まれる装置内のチェンバーなどの局所環境に開口した領域を介して気化器から出る。従って、本文脈において「露出させた」と言った場合、露出させた毛管構造を含む面がマトリックスなどの気化器以外の部品と接触できないということを意味しない。むしろ「露出させた」は、液体が外部ソース(例えば、マトリックス)から毛管構造を介して気化器内に引き込まれるように気化器の外周に毛管構造が延びていることを意味する。毛管構造が気化器の面の外部に延びている場合(気化器だけを考慮した場合)、毛管構造がその表面に露出したと言える。
【0017】
特定の状況において気化器の面の少なくとも1つは露出した毛管構造を持たない。これは当該面が毛管構造を含まないからである、またはこの面の毛管構造が完全にまたは部分的に気化器の別の部品によって覆われているからである。毛管構造(またはその一部)の露出を気化器の個別の面に限定することによって気化した液体の配分を特定の領域に集中させることが可能になり、蒸気密度が高い領域となり、それが有利になる場合がある。
【0018】
気化器は次に示す構成のいずれか1つを有する、織物構造、メッシュ構造、織物構造、多孔質繊維構造、多孔質焼結構造、多孔質発泡体または多孔質堆積物。これらの構造は高い多孔率を有する気化器本体を供するのに特に適している。高い多孔率によって気化器によって発せられる熱が確実に主として液体を気化させるために使用され、高い効率が得られる。50%超の多孔率が上記構造によって予想される。1つの実施態様では気化器の多孔率は50%以上、60%以上、70%以上である。多孔質繊維構造は、例えば任意に小型化することができ、凝集性を向上させるためにさらに焼成すことが可能な不織布から構成することができる。多孔質焼結構造は、例えば製膜処理によって製せられる粒状、繊維性または綿状焼結複合体から構成することができる。多孔質堆積構造は、例えばCVD処理、PVD処理またはフレーム溶射によって作製することができる。多孔質発泡体は一般には市販されており、薄く微細孔設計のものが入手可能である。多孔質発泡体の一例として発泡セラミックが挙げられる。
【0019】
1つの実施態様では気化器は少なくとも2つの層を有し、これらの層は、プレート、箔、紙、メッシュ、織り構造、織りもの、多孔質繊維構造、多孔質焼結構造、多孔質発泡体または多孔質堆積構造の少なくとも1つを含む。例えば、気化器は毛管構造を含む構造と組み合わされる金属箔からなる電気加熱抵抗によって形成することができる。このような構造は、気化器の面の1つが露出しない(金属箔があることによって)気化器を供する場合がある。気化器が単一層から形成されていると考えられる場合、そのような層は第1にその電気抵抗により、加熱に貢献する、そして第2に液体材料に毛管効果を作用させるという理由から不織金属繊維布から形成してもよい。個々の層は、焼結または溶接などの加熱処理によって互いに接続されると有利であるが必ずしも接続される必要はない。例えば、気化器はステンレススチール箔と1つ以上のステンレススチール金網からなる焼結複合体(例えばAISI304またはAISI316などの材料)として設計することができる。これとは別に気化器をステンレススチール金網の少なくとも2つの層からなる焼結複合体として設計することができる。焼結の代わりに層はスポット溶接または抵抗溶接によって互いに接続されてもよい。また個々の層は機械的に互いに接続されてもよい。例えば、二層金網は単一層をただ折り曲げることによって作製することも可能である。ステンレススチールの代わりにステンレススチールよりさらに高い特定の電気抵抗を有する例えば加熱導体合金、特にNiCr合金およびCrFeAl合金("Kanthal")を使用してもよい。層間の材料による接続は熱処理によって得られ、その結果、例えば気化器による加熱中およびその結果誘発される熱膨張などの不利な条件下であっても層が互いの接触を維持する。
【0020】
気化器は例えば、プラチナ、ニッケル、モリブデン、タングステンまたはタンタルの導電性の薄層を含んでもよく、この薄層は気化器の表面にPVDまたはCVD処理によって塗布される。この場合、気化器は非導電性の材料、例えば石英ガラスを含んでもよい。これとは別に気化器は電気抵抗材料、例えばカーボンまたは導電性または半導電性セラミックまたはPTC材料を含む。これは電気抵抗材料が金属である場合に特に有利である。金属は上述の材料より大きな延性を有する。この特性は気化器が作動中に熱的に交互に与える負荷に晒され、従って熱膨張を誘発させる限り有利であることが証明されている。金属はこのような熱膨張を良好に補うことができる。さらに金属は比較的高い衝撃靱性を有する。この特性は吸入具部品が衝撃に晒されるときは常に有利であることが証明されている。好適な金属耐性材料の例としては、AISI 304またはAISI 316などのステンレススチールlおよび加熱導体合金、特にDIN材料番号2,4658、2,486
7、2,4869、2,4872、1,4843、1,4860、1,4725、1,4765および1,4767などのNiCr合金およびCrFeAl合金("Kantha
l")が挙げられる。好適な気化器は複合体として特許文献1にも触れられており、その
全内容を本明細書に引用したものとする。
【0021】
気化器の厚さは、1.0mm以下、例えば0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mmまたは0.5mmであってもよい。1つの実施態様では気化器の厚さは50〜300μmであってもよい。気化器の幅は約1mm〜約10mmであってもよい。1つの実施態様では気化器の幅は、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mmまたは10mmから選択される。この寸法によって気化器の内部に誘導される熱が熱伝導によって、即ち低温度勾配で気化器が液体材料を蒸発させる露出させた気化器の面へと効率良く流れることができる。さらに気化器の内部に既に形成された蒸気が露出させた気化器の面により簡単に到達することができる。これらの条件は蒸発容量をさらに増加させる。一部の実施態様では気化器の厚さは実質的に第2面の厚さに対応する。1つの実施態様では気化器は実質的に均一な厚さを有する。
【0022】
1つの実施態様では気化器は第2面から第1面内に延びた1つ以上のスロット形状の凹部を含んでもよい。これら1つ以上のスロットは第1面の幅の半分を延びてもよい。これとは別にこれら1つ以上のスロットはさらに延びてもよい。
【0023】
1つの実施態様では気化器に沿って複数のスロットが配置されている。これらスロットは気化器に切り欠きとして形成してもよく、打ち抜き/押し抜きされてもよい。またスロットが設けられた好適な気化器は特許文献2に開示されており、その全内容を本明細書に引用したものとする。この点に関し1つ以上のスロット形状の凹部が存在することによって気化器を通る電流の流れを制限する効果が得られる。このように制限することはこれら1つ以上のスロットの内部頂点の周囲に熱が多く発生する領域に繋がる。このように局所的に熱を多く発生させることは気化器に亘って温度勾配を生じさせることに貢献する。また異なる寸法の凹部(スロット形状である必要はない)であって気化器を通る電流の流れを制限する効果を有し、局所的温度勾配を生じさせるのであればそのような凹部を採用することによっても同様な効果が得られる。また同じような効果が1つ以上のスロット/1つ以上の凹部を断熱性材に変えることによって得られる。
【0024】
気化器の縦および横寸法は特に限定されない。特に気化器の縦寸法は集成部品を組み込む装置の大きさおよび/またはその集成部品内の気化器の向きによって決めてもよい。誤解を避けるために気化器の縦寸法/軸は最も長い長さを有し、装置内の気化器の向きに対応する必要はないものである。例えば、気化器集成部品は気化器の縦寸法が装置の縦寸法に対して直交するように装置内に配向されてもよい。これとは別に気化器の縦寸法は装置の縦寸法と実質的に平行であってもよい。
【0025】
マトリックス
本開示のマトリックスは気化性液の保持に好適であることが要求される。例えば、気化性液は必要であればグリセロール、水または他の成分などの1つ以上の他の成分と組み合わされるニコチンなどの物質を含んでもよい。
【0026】
マトリックスの構造は、通常の環境条件下で、例えば大気圧で気化性液を保持するが、気化器の第2面と接触する領域で気化性液を放出するような構造である。この点に関しマトリックスは、毛管構造を有してもよく、この毛管構造は気化器の毛管構造がマトリックスの毛管構造と接触したとき気化器の毛管構造に対して気化性液を放出させるものである。
【0027】
マトリックスに好適な材料としては、不織布(例えば、Kuraray社製のKuraflex登録商標、DuPont社製のSontara登録商標)、熱可塑性ポリウレタン(例えば、Lubrizol社製のTecophilic TPU)、熱可塑性共重合ポリエステル(例えばDSM社製のArnitel登録商標)、メラミン発泡体、オープンセルポリエーテルおよびポリエステル発泡体、ポリオレフィンベースのオープンセル多孔質材料、プリント発泡体、ホウケイ酸塩ミクロファイバーガラスフィルター、天然コットン芯、シリカ芯、ビスコースフェルト芯、カーボンフェルト、グラファイトフェルト、ポリアクリロニトリル繊維(例えば、Zoltek社製のPyron登録商標)、セラミック繊維(例えば、3M社製のNextel登録商標)、親水性ポリエーテルブロックアミド(例えば、Arkema社製のPebax登録商標)、多孔質セラミックおよびポリエステルコットン芯またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0028】
マトリックスは種々の度合いの毛管現象性を有するように構成してもよい。例えば、マトリックスが管状構造である場合、マトリックスの外方部分がマトリックスの内方部分と比較して大きな毛管路を有する毛管構造を有してもよい。このような構造は毛管路を介した液体の内方の進行に好ましい。従って、1つの実施態様ではマトリックスは管状であり、毛管構造を有し、その毛管路は内方方向に次第に小さくなる。例えばマトリックスが円筒状である場合、マトリックスの同心部分は比較的大きいおよび小さい路を有してもよく、小さい毛管路を有する部分は大きな毛管路を有する部分の内方に配置される。
【0029】
上述したようにマトリックスは気化器とその第2面を介して接触する。しかしながら、マトリックスは気化器と他の追加の面で接触してもよい。また、2つ以上のマトリックスが少なくとも1つのマトリックスが気化器の第2面と接触し、1つ以上の他のマトリックスが他の面と接触するように存在してもよい。
【0030】
上述のようにマトリックスは、上述の状況下で気化性液を保持する毛管構造を含むことになる。気化性液が気化器に送られるようにマトリックスの毛管構造は、少なくとも気化器の第2面と接触する領域で露出される必要がある。気化器と接触しないマトリックスの部分は、全て露出した面を有する必要がない。しかしながら、当然のことながらマトリックスの第2面は一般に気化器に供給された液体の量に代わる空気をマトリックスの毛管構造に入らせるための換気目的で露出させる。1つの実施態様ではマトリックスは気化器と接触しない領域で露出させた毛管面を有する。上述のように本文脈において「露出させた」は、マトリックスの露出させた面がマトリックスの一部を形成しない別の部品、例えば気化器と接触できないということを意味しない。
【0031】
マトリックスは特定の形に限定されない。しかしながら、当然のことながら気化器とマトリックスが電子タバコなどの装置内に組み込まれる場合、マトリックスの形および寸法は、装置が小型になるようなものであるべきである。従って、マトリックスは装置の他の部品の周囲に分配してもよく、装置の必要とされる外部または内部輪郭に適合する形状にしてもよく、唯一必要とされることはマトリックスの少なくとも一部が気化器と第2面を介して接触するということである。また当然のことながら単独のマトリックスを勿論それが少なくとも上述のように第2面と接触するのであれば気化器の複数の面と接触させることができる。1つの実施態様ではマトリックスは第1面と共通の縁部を形成する全ての面を介して気化器と接触する。1つの実施態様では気化器は側面、即ち第1面と共通の縁部を形成する面を介してのみマトリックスと接触する。
【0032】
1つの実施態様ではマトリックスは管状、例えば円筒状である。この点に関しマトリックスが管状である場合、その長手方向軸はそれが配置されるあらゆる装置の長手方向軸に平行であってもよい。1つの実施態様では管状マトリックスの長手方向軸と関連する装置は、実質的に位置合わせされる。マトリックスが管状である場合、当然のことながら気化器はマトリックスの対向面と接触するようにマトリックスを横断して延びてもよい。従って、気化器は管状のマトリックスを横断するブリッジを形成してもよい。
【0033】
上述したように2つ以上のマトリックスが気化器 と接触してもよく、または単独のマ
トリックスが気化器の2つ以上の面と接触してもよい。例えば、複数のマトリックスが存在する場合、各マトリックスは第1面と共通の縁部を形成する面と接触してもよい。例えば、気化器が矩形(3次元)であり、よって6つの面(上、下、第1側部、第2側部、第1端部、第2端部)を含む場合、気化器の第1面は上または下面(向きによるが)に対応し、そして第2面が第1または第2側部または第1または第2端部のいずれか1つであってもよく、1つ以上のマトリックスが気化器の残りの5つの面のいずれかと接触する。言い換えれば、少なくとも1つのマトリックスが少なくとも第2面と接触し、1つ以上の追加のマトリックスが残りの面と接触することができる。しかしながら、通常は少なくとも一部、好ましくは第1面全体、例えば上または下面(矩形の気化器の場合)がマトリックスと接触しないことが想定される。実際、上記面は実質的にあらゆる他の面(電気的および固定するための接触以外)と接触せずに気化したら液体の効率的な蒸発および配分できるようにするのが好ましい。1つの実施態様では第1面はマトリックスと接触しない。1つの実施態様では気化器の第1面とマトリックス間のあらゆる接触を最小限にする。この点に関しマトリックスが弾性材で形成されている場合、気化器と接触する領域が僅かに圧縮されるかもしれない。この僅かな圧縮によって表面上接触する程度にマトリックスの表面が第1面に覆い被さる。このような接触は、気化器とマトリックス間の効率的な毛管リンクを構築するには充分だと言える。従って、1つの実施態様では気化器の第1面は実質的にマトリックスとは接触しない。実質的に第1面と同等の表面領域の対向する面がある場合(例えば、上面が第1面に対応する矩形の気化器の下面)、その対向する面もまたマトリックスと接触しない(または上述したように実質的に接触しない)。マトリックスが第1面と接触する場合、第1面の一部はマトリックスまたは当然のことながら気化器集成部品のあらゆる他の部材と接触しないと有利であると考えられている。このような構成により気化した液体は毛管構造を介して第1面から吐き出される。
【0034】
その結果1つの実施態様では気化器集成部品は気化器の第2面と接触する第1マトリックスと気化器のさらなる面と接触する第2マトリックスとを含み、そのさらなる面も第1面と共通の縁部を形成する。1つの実施態様では気化器は第2面と第3面を有し、それぞれが独立して第1面と共に共通の縁部を形成する。1つの実施態様では第3面は第2面の反対に配向される。1つの実施態様では気化器は第2、第3、第4および第5面を含み、これらは全て第1面と共に独立した共通の縁部を形成する。1つの実施態様では気化器は、第1面と独立した共通の縁部を形成する1つ以上の面を含む。1つの実施態様では気化器は、第1面と共に独立した共通の縁部を形成する2つ以上の面を含む。1つの実施態様では気化器は、それぞれが第1面と共に独立した共通の縁部を形成する2つの面を含む。1つの実施態様では気化器は、それぞれが第1面と共に独立した共通の縁部を形成する3つの面を含む。1つの実施態様では気化器は、それぞれ第1面と共に独立した共通の縁部を形成する5つ以上の面を含む。1つの実施態様では気化器は2、3、4、5、6、7、8、9または10個の面を含み、それぞれが第1面と共に独立した共通の縁部を形成する。
【0035】
1つの実施態様では第1面と共に共通の縁部を形成する気化器の複数の面は、実質的に平行な面を形成する。言い換えれば、第1面とこの第1面と共に共通の縁部を形成する複数の面との間で形成された角度は同じまたは実質的に同じである。
【0036】
当然のことながら多くの気化器およびマトリックス構造が可能である。勿論、複数の気化器が同じまたは異なる形/構造のいずれかの集成部品に存在してもよい。
【0037】
1つの実施態様では気化器集成部品は2、3、4つまたはそれ以上の気化器を含む。
【0038】
集成部品が複数の気化器を含む場合、それらは積層構造であってもよく(互いに上下に/異なる面に)、またはそれらは実質的に同じ面で配向されてもよい。複数の気化器がある場合、各気化器は1つ以上のマトリックスによって分離されてもよい(例えば垂直または水平に挟まれる)。
【0039】
1つの実施態様では気化器集成部品は1つの気化器を含む。1つの実施態様では気化器集成部品は2つの気化器を含む。1つの実施態様では気化器集成部品は3つの気化器を含む。1つの実施態様では気化器集成部品は4つの気化器を含む。説明したように各気化器は少なくとも第1および第2面を含み、少なくともこの第2面を介して少なくとも1つのマトリックスと接触する。
【0040】
集成部品に存在する1つ以上の気化器は集成部品に存在する1つ以上のマトリックスを支持するように作用する。これは特に集成部品が装置に存在するときの事例である。例えば、気化器集成部品が装置内に存在する場合、マトリックスを装置の面に対して保持するように気化器を構成してもよい。複数の気化器が存在する場合、これら気化器はその間で1つ以上のマトリックスを挟んで、これらマトリックスを装置内に支持してもよい。同様にマトリックスが1つ以上の気化器を支持していると言える。従って、1つの実施態様では1つ以上の気化器が1つ以上のマトリックスによって支持されてもよい。特にマトリックスが管状である場合、それは弾性材で形成してもよく、気化器の長さ/幅(向きによって)より僅かに小さい内方直径を有し、これにより気化器はマトリックスの対向する面を橋渡しし、さらにマトリックス(マトリックスの弾力性により)によって支持される。これとは別にマトリックスが特に弾性でない場合、気化器を他の好適な方法でマトリックスに取り付けてもよいことからマトリックスはそれを橋渡しする気化器を支持するように機能してもよい。
【0041】
気化器はマトリックスに存在する液体を気化させる役割を果たす。従って、気化器は電気抵抗性材料で作製され、/電気抵抗性材料を含み、これは電気回路に接続されているとき、温度が上昇し、その面と接触するあらゆる気化性物質を蒸発させる。この点に関し気化器の対向する端部を電力源(バッテリー)の対応する正極および負極に取り付けてもよい。複数の気化器が存在する場合、それぞれを電力源(バッテリー)に個別に接続してもよく、または1つ以上の導電性ブリッジがそれぞれの気化器を接合してもよく、これらのブリッジはバッテリーなどの関連する端子と電気的に接触してもよい。電子タバコのような装置などに使用するのに好適なバッテリーは当業者には周知である。例えば、充電可能なバッテリーなどが想定される.
【0042】
当然のことながら本開示の文脈において気化器とマトリックスとの気化器の第2面を介した「接触する」は、充分な毛管結合をマトリックスおよび気化器の間に構築するために充分に接触することとして理解されたい。従って、このような結合を構築するために充分に「接触する」は、本発明の文脈での「接触する」とは考慮されない。
【0043】
上述のように別の態様では本明細書中で説明する気化器集成部品を含む装置が開示される。1つの実施態様では装置は電子タバコであってもよく、ハウジングと、電力源(バッテリー)と、気化器集成部品と、1つ以上のLEDと、装置が使用中であって気化器集成部品の気化器を作動させているときを検出する1つ以上のセンサーとを含む。ハウジングは、通常は装置の他の部材を収容し、これらを所定の位置に保持する。
【0044】
ハウジングは通常は装置の他の部品を収容し、装置を通り、装置に存在する1つ以上の気化器の少なくとも一面に亘る空気路を供するように設計されている。これとは別にハウジングによって収容される他の部品は、装置を通り、装置に存在する1つ以上の気化器の少なくとも一面に亘る空気路を供するように構成してもよい。勿論、マトリックスが管状である場合、管状マトリックスの内壁が空気路を形成する役割を果たしてもよい。通常は空気路は装置に存在するあらゆる気化器の少なくとも第1面に亘って配置されてもよいが、ハウジング/他の部品の設計を空気の流れが装置に存在するあらゆる気化器の複数の面に亘って案内されるようにしてもよい。
【0045】
ハウジングは2つ以上の部分に分離できるものであってよい。例えば、ハウジングが2つの部分に分離できるものである場合、気化器集成部品およびマウスピースは第1の部分に含まれ、電源、LEDおよびセンサーは第2の部分に含まれてもよい。ハウジングの各部分は空気が装置を介して流れ、マウスピースから出られるようにする好適な開口部の流れを含んでもよい。これとは別に装置をハウジングの部分の1つだけ、例えば第1部分が好適な開口部を有するように構成してもよい。1つの実施態様ではハウジングは3つの部分に分離可能であってもよく、この場合気化器集成部品は、気化器集成部品を形成するために接合することができるハウジングの2つの異なる部分に含まれてもよい。
【0046】
1つの実施態様では気化器集成部品は第1ハウジングの一部であり、このハウジングはマウスピースと、別のハウジング部と機械的および電気的接続を構築するコネクターとを含む。例えば、この実施態様において第1ハウジングは本開示による気化器集成部品を含むカートマイザーを形成してもよい。
【0047】
本開示の気化器集成部品を含む装置および特に電子タバコの種々の構造が想定される。
【0048】
本開示の種々の態様を以下の実施態様を参照して説明する。しかしながら、当然のことながら本開示は各具体的な実施態様に限定されず、当然に各実施態様の特徴は適宜他の実施態様に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本開示による気化器の部分100の斜視図である。
【
図3A】本開示による気化器100の平面図である。
【
図3B】本開示による気化器100の端面図である。
【
図3C】本開示による気化器100の端面図である。
【
図4】気化器100とマトリックス150間の接触領域の例を示す。
【
図5】気化器100とマトリックス150間の接触領域のさらなる例を示す。
【
図7】気化器100に形成される温度勾配を表すグラフである。
【
図8】スロットを含まない(左)、7つのスロットを含む(真ん中)および4つのスロットを含む(右)本開示による気化器に亘って放出される電力の分布を示す。
【
図9】
図8に示す気化器の相対的な温度分布および勾配を示す。
【
図10】本開示による気化器集成部品を組み込んだ装置7の平面図である。
【
図12】本開示によるさらなる気化器集成部品の長手方向断面図である。
【0050】
図1は本開示による第1の気化器100の一部を示している。気化器100は第1面101と第2面102を有する。第1面と第2面は共通の縁部110を形成する。
図1は第1面101と共に独立した共通の縁部111を形成し、第2面102と共に共通の縁部112も形成するさらに別の面103を示している。
図1から分かるように第1面101の表面積は第2面の表面積より大きい。
【0051】
図2は気化器100を示し、この例では気化器100は矩形の外形を有する。当然のことながら
図2の気化器100は第1面101と共にそれぞれ独立した共通の縁部を形成する4つの面を有する。この点に関し第2面102および第4および第5面104、105を
図3A、3Bおよび3Cに示す。
【0052】
気化器100とマトリックス150間の相互作用を
図4に示す。特にマトリックス150は、第2面102を介して気化器と接触している。より正確には気化器100の第2面はマトリックス150の面151と接触している。
【0053】
上述のように一部の例ではマトリックス150は、気化器の2つ以上の面と接触してもよい。そのような構成を
図5に示し、マトリックス150は気化器100とその第2面を介して接触する面151並びに気化器100とその第3面を介して接触する面153を有する。
【0054】
図6は別の気化器200を示し、これは複数のさらなる面202、203、204、205、206を有し、これらの面はそれぞれ独立して第1面201と共通の縁部210、211、213、214、215を形成する。当然のことながら
図6に示したこれら複数の面のいずれも第2面として考慮することができる。その結果、1つ以上のマトリックスを面202、203、204、205、206のいずれか1つを介して気化器と接触させてもよい。上述のように単独のマトリックスをこれらの面の2つ以上と接触させてもよく、および/または2つ以上のマトリックスがあって、それぞれが1つ以上のこれらの面と接触させてもよい。
図6には示していないが、面203に対向し、平行な面がマトリックスと接触してもよい.
【0055】
ここで注目すべきことはマトリックスは気化器集成部品の第2面全体と接触する必要がないということである。しかしながら、これはマトリックと気化器の間に高度な接触(および潜在的に液体の流れ)を構築するために有利な場合がある。
【0056】
上記から当然のことながら1つ以上のマトリックスが1つ以上の気化器と「側」面、即ち第1面と共通の縁部を形成する面の内の1つ以上に沿って接触する。この接触面を第2面の表面積より大きい表面積を有する第1面に起因する構造のおかげで「側部」面と言う。このような構造は、気化器が作動可能な状態にあるとき、マトリックスから引き込まれる液体が気化器の気化効率を損なうことなく実質的に気化器の全長に沿って配分することができるので特に有利である場合がある。さらに気化器とマトリックス間の接触がここで言うところの第2面を介して確実に生じさせることによって、気化器によって気化されたすべての液体が気化器から自由に出られるように第1面を接触しないままにすることができる。これは気化器100、200の集成部品が電子タバコなどの装置内に組み込まれ、装置を通る空気の流れが気化器100、200の第1面101、201上を通過する場合に特に有利であり、従って気化器100、201によって製せられた蒸気がより効率的にエアロゾルを形成することができる。
【0057】
本発明の集成部品の気化器およびマトリックスのこの特定の配向は、気化器全体に亘って段階的な気化分布(profile)を供するという点で有利である。液体が気化器の「側」
面を介して気化器に送られることにより気化または温度勾配が気化器100、200の幅に亘って構築される。特定の理論に縛られるものではないが、この勾配は気化器の中央と比較して気化器の第2(側)面がマトリックスにはるかに近いことにより少なくとも部分的に形成される。気化器のこの部分を通る液体の相対流れは、従って気化器の中央の方への流れより多くなり、従ってこれらの領域の気化器の温度をかなり低下させる。さらに加熱されない通常より多くのマトリックスは加熱された気化器のための放熱板を形成する。この気化勾配は、気化される液体が異なる沸点の複数の物質を含む場合特に有利である。気化器100、200に形成された毛管構造の自然の作用がマトリックス150から内方に側面(ここで定義された第2面)を介して液体を引き込み、そして気化勾配の結果、気化器は異なる沸点の複数の物質を同時に蒸発させる。例えば、気化される液体が各々異なる沸点を有するニコチン、水およびグリセロールを含んでいる場合、各物質を実質的に同時に気化させることができ、よりバランスの取れた分布のエアロゾルが得られる。気化器101に亘って設定される勾配の例を
図7に示す。当然のことながらこの勾配は、気化器が気化器の長手方向軸に実質的に直交する方向に気化性液が供給されるように構成されている場合に通常構築される。
【0058】
上述のように本開示の気化器は気化器の第2面から第1面内に延びた1つ以上のスロットを含んでもよい。そのようなスロットを有する気化器をスロットの無い気化器と一緒に
図8および9に示す。
図8および9から分かるように電力(電力分布)はスロットの存在によって影響される。スロットが無いと、装置/気化器面101に亘って発生する電力と放出されるエネルギーは、実質的に一定である。このような均一な電力の発生/エネルギーの放出は、しかしながら、上述したようにそして
図7に示すよう気化器およびマトリックスの向きの結果として一定の温度分布にはならない。気化器に生じる温度分布を再度
図9に示す。
【0059】
しかしながら、1つ以上のスロットが
図8および9に示すように気化器に含まれる場合、電力の発生/エネルギーの放出は気化器に亘って一定ではなく、代わりにスロットの先端の周囲でピークになる。電力の発生/エネルギーの放出のこれらのピークは、気化器を介して長手方向に流れる電流の崩壊により生じ、それらは上昇した温度の領域になる。このことは
図9から明らかであり、気化器およびマトリックスの配置によって生じる温度分布に加えて、さらに強化温度勾配が誘発される。スロットを設けることによって電力の
発生/エネルギーの放出を第2面から離れて維持しやすくなり、エネルギーは(スロットが無いと)マトリックスによってすぐに吸収されてしまうので、よってスロットは上述したように放熱器として考慮してもよい。その結果、スロットは蒸発効率を上昇させる。
【0060】
上述のように気化器集成部品は2つ以上のマトリックスを含んでもよい。特に
図10は電子タバコなどの装置7を示し、これは第1および第2気化器2A、2Bを含む気化器を含み、各気化器はその複数の面を介して対応するマトリックス3a、3b、3cと接触し、各面は各気化器の対応する第1面と独立した縁部を形成する。より正確に言えばマトリックス2Aは気化器2Aの第2面を介して気化器3aと接触し、第2面は気化器2Aの第1面と共通の縁部を形成する。さらにマトリックス3bは別の面を介して気化器2Aとも接触し、この別の面は気化器2Aの第1面と独立した共通の面を形成する。加えてマトリックス3bは、気化器2Bと気化器2Bの第2の面を介して接触し、第2面は気化器2Bの第1面と共に共通の縁部を形成する。さらに気化器2Bはマトリック3cと別の面を介して接触し、この別の面は気化器の第1面2Bと独立した共通の縁部を形成する。このようにして複数の気化器が気化器集成部品において複数のマトリックスと協働して、相互に支持し、気化器に液体を効率よく供給することができる。
【0061】
上述のように、気化器100、2A、2B、200は、その遠位および近位端に電気接触部となる部分を含んでもよい。気化器のこれらの部分を
図10にU+およびU−として示す。さらに一部の実施態様では複数の気化器の間で電気通信するブリッジ6が存在し、必要とされるあらゆる電気的接続を簡単に供する。
【0062】
図11は装置7の断面形状(装置の長手方向に対して横手方向)を示している。上述したように装置7は気化器2Aおよび2B、マトリックス3a、3b、3c、および気化器2Aの上下に形成された流路4’、4’’および気化器2Bの上下に形成された流路5’、5’’を含む。これらの流路は気化器の上方および下方主要面、マトリックス3a、3b,および3cの側面並びにハウジング1の内壁によって形成されている。
【0063】
上述のようにこのような構成により気化器が気化器集成部品内で複数のマトリックスと協働し、相互に支持し、気化器に液体を効率よく供給できるようにし、各気化器に亘って気化勾配を形成できるようにし、同時に確実に第1面(
図11においての上面)が実質的にまたは完全に接触しない状態にしている。これにより確実に気化器上に形成されたすべての空気流路への蒸気の効率的な供給を確実にする。当然のことながら同じことが面(図
11の下面)にも当てはまる。
【0064】
装置7は気化器およびマトリックスを装置壁1で囲んでいる。ハウジングとも言われる装置壁1は、マウスピース、流路4’、4’’、5’、5’’によって相互に接続される空気入り口および空気出口、バッテリー、装置の使用(例えば、マウスピースを介した吸入)に応じて作動させるために使用される装置PCB、種々のセンサーおよびマイクロプロセッサー、および1つ以上のLEDなどの電子タバコに通常見られる他の特徴/部材を囲んでもよい/画定してもよい。
図11に示す装置7は、限定的なものではなく、本明細書中で説明した気化器およびマトリックスのあらゆる組み合わせを好適な装置内に組み込むことができる。
【0065】
一般に装置7は次のように操作される。ユーザーは自分の口に装置のマウスピースを入れ、吸入し、これにより空気が装置を通って流れるようになる。この空気の流れ(または減圧)は装置内のセンサーによって検知され、このセンサーは装置が使用中であるとの情報をマイクロプロセッサーに伝える。そして電力が気化器に供給され、気化器の電気抵抗により気化器の温度が上昇する。気化器およびマトリックスの毛管構造によって誘発される毛細管効果によりそして気化器およびマトリックス(気化される液体を含む)間の接触により液体がマトリックスから気化器へ毛細管力によって引き込まれる。その結果、気化器の温度が上昇すると、気化性液内に含まれている種々の物質が気化される。
図7に関し上述のように気化器が第2面を介してマトリックスと接触することにより温度分布が気化器に亘って発生する。特に気化器の温度は一般にマトリックスと接触する面から離れて上昇する。従って、装置7に関し各気化器2Aおよび2Bは、対応するマトリックス3a、3bおよび3cと接触する面の温度と比較してその中央でより高い温度を示す。装置の操作中、蒸気が気化器2Aおよび2Bから流路4’、4’’、5’および5’’内に放出される。装置7を介して流れる空気も流路4’、4’’、5’および5’’を介して移動し、その結果放出された蒸気と混ざる。蒸気は冷めて、凝集してエアロゾルを形成し、これは装置7を介してマウスピースへと移動し、ユーザーによって吸入される。蒸気が気化器2Aおよび2Bから放出されると、さらに液体がマトリックス3a、3bおよび3cから引き込まれ、気化器の内部の液体の量が満たされる。ユーザーが吸入を止めると、装置内のセンサーが流れ(または圧力)の相対的な変化を検知し、それをマイクロプロセッサーに伝え、その後気化器への給電が停止され、気化器の温度は降下し、液体は気化されなくなる(少なくとも操作中と同じ程度には)。これとは別に気化器への給電を特定の時間が経過した後(例えば吸入開始後2秒)に終了させてもよい。装置7が使用中であるというセンサーからの信号の後、マイクロプロセッサーは1つ以上のLED等の操作などの他の機能を作動させるようにしてもよい。
【0066】
本開示による気化器集成部品のさらなる実施態様を
図12に示す。
図12に示す気化器集成部品は管状であり、
図2に示したような寸法のマトリックス100であるマトリックス250を含む。特に気化器100は第1面101と第2面102および104を有する。第2面102および104は、マトリックス250の面251および252と接触する。管状のマトリックス250内の気化器100の向きは、空気路300が気化器100の上下に形成されるような向きになっている。マトリックス250は弾性材で作製してもよい。さらにマトリックス250の内径は、気化器100がマトリックス250によって支持されるように(例えば、摩擦式嵌合/マトリックス250の弾力性によって)気化器100の幅より僅かに小さくてもよい。
【0067】
上記で触れた全ての公報を参照することによって本明細書に引用する。上述の気化器集成部品およびこれを組み込んだ装置の種々の変更例および変形例は、本開示の範囲および精神を逸脱することなしに当業者には明らかである。本発明を具体的な実施態様に関連づけて説明したが、当然のことながら特許請求の範囲に記載の本発明は、このような具体的な実施態様に不当に限定されるべきものではない。勿論、当業者または関連する技術分野にとって明らかな本発明を実施するための上述の方法の種々の変更例は、以下の特許請求の範囲の範囲に内に含まれるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】国際公開第2010/045671号
【特許文献2】国際公開第2011/109849号