(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電池セルを一方向に積層させて接続した電池群と、該電池群を前記一方向の両側から挟持する一対のエンドプレートと、前記電池群を外部接続用の端子に接続するためのバスバーと、該バスバーに前記端子を締結するための締結部材と、備えた電池モジュールであって、
前記エンドプレートは、前記締結部材の一部を前記一方向に相対移動可能に収容する凹部を有し、
前記一方向において、前記凹部の内側壁と前記締結部材との間に間隙を有することを特徴とする電池モジュール。
前記凹部に収容された前記締結部材の一部は、前記一方向に沿う前記凹部の内側壁に隣接しかつ該内側壁に対向する回転防止壁を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【背景技術】
【0002】
従来から主としてハイブリッドカーや電気自動車に使用されるバッテリシステムに関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された従来のバッテリシステムは、電池ブロックと、一対のエンドプレートと、連結具と、出力ラインとを備える(同文献、請求項1等を参照)。前記電池ブロックは、複数の電池セルが積層されたものである。前記一対のエンドプレートは、前記電池ブロックの対向面にあって、積層された電池セルを積層方向に挟着して固定する。前記連結具は、前記一対のエンドプレートを連結する。前記出力ラインは、前記電池ブロックを構成する電池セルの電極端子に接続される。
【0003】
この従来のバッテリシステムは、次の構成を特徴としている。前記出力ラインは、電池セルの電極端子に接続された中継バスバーを介して電池セルの電極端子に接続される。前記出力ラインの接続端子は、止ネジとこの止ネジにねじ込まれてなるナットとを介して中継バスバーに接続される。また、前記ナットは、前記エンドプレートに非回転状態に固定されている。このナットに前記止ネジがねじ込まれて止ネジがエンドプレートに固定され、止ネジとナットとで、中継バスバーと出力ラインの接続端子とを接続してエンドプレートに固定している。
【0004】
この構成により、前記従来のバッテリシステムは、電池セルの電極端子の損傷を防止しながら、出力ラインの接続端子を小さい接触抵抗で確実に安定して接続することで、出力ラインの理想的な接続状態を実現できる。これは、この従来のバッテリシステムにおいて、出力ラインを接続する止ネジやナットの締め付けトルクが電極端子に無理な回転トルクを作用させないからである(同文献、段落0008等を参照)。
【0005】
また、前記従来のバッテリシステムは、中継バスバーを電極端子に接続しているが、この中継バスバーは、止ネジを介してエンドプレートに固定される状態で電池セルの電極端子に接続できる。そのため、中継バスバーを電極端子に接続するときに、回転トルクで電極端子を損傷させることもない。中継バスバーを回転しない状態に固定して、電極端子に接続できるからである(同文献、段落0008等を参照)。
【0006】
また、前記従来のバッテリシステムは、ナットを回転しないようにエンドプレートに固定しているので、止ネジをねじ込む回転トルクで中継バスバーが回転されず、中継バスバーが電極端子に無理な力を作用させることがない(同文献、段落0009等を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の電池モジュールの実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る電池モジュール100の分解斜視図である。
図2は、
図1に示す電池モジュール100の電池群10を構成する電池セル1とセルホルダ2の斜視図である。本実施形態の電池モジュール100は、主に、電池群10と、一対のエンドプレート20と、バスバー30と、締結部材40と、備えている。さらに、図示の例において、電池モジュール100は、一対のサイドプレート50と、バスバーケース60とを備えている。
【0015】
各図面には、電池群10を構成する複数の電池セル1の積層方向である一方向をX方向、電池セル1の幅方向をY方向、電池セル1の高さ方向をZ方向とする直交座標系を示している。以下の説明では、このXYZ直交座標系を用いて、本実施形態の電池モジュール100の各部の構成を説明する場合がある。
【0016】
詳細については後述するが、本実施形態の電池モジュール100は、次の構成を特徴としている。エンドプレート20は、締結部材40の一部を、電池群10を構成する電池セル1の積層方向である一方向(X方向)に相対移動可能に収容する凹部21を有している。この一方向(X方向)において、凹部21の内側壁21aと締結部材40との間に間隙Sが形成されている(
図3等を参照)。以下、本実施形態の電池モジュール100の各部の構成について、詳細に説明する。
【0017】
電池群10は、複数の電池セル1を一方向(X方向)に積層させて接続させることによって構成されている。より詳細には、電池群10は、たとえば、偏平な角形の電池セル1を、セルホルダ2と交互に厚さ方向(X方向)に繰り返し積層させることによって構成されている。
【0018】
電池セル1は、たとえば、矩形箱形の形状を有する角形リチウムイオン二次電池である。電池セル1は、おおむね直方体形状で薄型の電池容器1aと、この電池容器1aの外面に配置された正負のセル端子1p,1nとを備えている。電池容器1aは、厚さ方向の両側に相対的に面積の大きい一対の広側面を有し、幅方向(Y方向)の両側に相対的に面積の小さい一対の狭側面を有し、高さ方向(Z方向)の上下に細長い長方形の上面と底面を有している。
【0019】
電池容器1aは、たとえば、アルミニウムやアルミニウム合金を素材として製作され、上部に開口を有する矩形箱形の電池缶1cと、この電池缶1cの開口を閉塞する矩形平板状の電池蓋1bとによって構成されている。電池蓋1bは、たとえば、レーザ溶接によって電池缶1cの開口の全周にわたって接合され、電池缶1cの開口を封止している。正負のセル端子1p,1nは、電池蓋1bの外面の長手方向の両端部すなわち電池容器1aの幅方向の両端部に、互いに離隔して設けられている。
【0020】
図示を省略するが、電池容器1aの内部には、たとえばセパレータを介在させて積層させた正負の電極を捲回した充放電要素が、絶縁性を有する樹脂製のケースまたはシートに覆われた状態で収容されている。充放電要素の正負の電極は、それぞれ、正負の集電板を介して、正負のセル端子1p,1nに接続されている。正負の集電板は、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂製の絶縁部材を介して、電池蓋1bに固定されている。
【0021】
また、図示を省略するが、電池容器1aの内部には、電解液が充填されている。電池蓋1bは、正負のセル端子1p,1nの間に、電解液を注入するための注液孔1dが穿設されている。注液孔1dは、電池容器1aの内部への電解液の注入後に、たとえば注液栓1eをレーザ溶接によって接合することで、密閉されて封止されている。電池容器1aの内部に収容される電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を用いることができる。
【0022】
また、電池容器1aは、たとえば電池蓋1bの長手方向の中央部にガス排出弁1fを有している。ガス排出弁1fは、たとえば、平板状の電池蓋1bの一部をプレス加工によって薄肉化することによって形成することができる。ガス排出弁1fは、過充電等、何らかの異常によって電池容器1aの内部の圧力が規定の圧力を超えたときに開裂して、電池容器1aの内部のガスを外部へ放出することで、電池容器1aの内部の圧力を低減させる。
【0023】
セルホルダ2は、たとえば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリカーボネート(PC)などのエンジニアリングプラスチックやゴムなど、絶縁性および耐熱性を有する樹脂を素材とする部材である。セルホルダ2は、個々の電池セル1の厚さ方向の両側に配置され、個々の電池セル1を保持するとともに、隣り合う電池セル1の間を電気的に絶縁している。
【0024】
セルホルダ2は、たとえば、電池容器1aの広側面に対向する隔離部2aと、電池容器1aの狭側面に対向する連結部2bとを有している。隔離部2aは、互いに隣接する電池セル1において、電池容器1aの広側面が当接することを防止する。連結部2bは、互いに隣接するセルホルダ2を連結するための凸部と凹部を有している。
【0025】
電池群10は、たとえば、前述のように、隣接する電池セル1の間にセルホルダ2を介在させ、隣接する電池セル1の電池容器1aの広側面が対向するように、複数の電池セル1を厚さ方向(X方向)に積層させることによって構成されている。なお、セルホルダ2は、複数の電池セル1の積層方向(X方向)の両端にも配置される。図示は省略するが、電池群10の両端部のセルホルダ2は、たとえば、一対のエンドプレート20に対向する面が、平坦な面になっている。また、積層方向(X方向)に互いに隣接する電池セル1は、一方の電池セル1の正極のセル端子1pと他方の電池セル1の負極のセル端子1nとが積層方向(X方向)に隣り合うように、正負のセル端子1p,1nの位置を交互に反転させて配置されている。
【0026】
一対のエンドプレート20は、電池群10を複数の電池セル1の積層方向である一方向(X方向)の両側から挟持している。エンドプレート20は、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)や繊維強化プラスチックなどの樹脂を素材とする矩形平板状の部材である。電極群の電池セル1に対向するエンドプレート20の面の形状および寸法は、たとえば、電池容器1aの広側面の形状および寸法とおおむね等しい。図示を省略するが、一対のエンドプレート20は、たとえば電池セル1の積層方向である一方向(X方向)に沿う両側面に、サイドプレート50を締結するためのナットを有している。ナットは、たとえば、一対のエンドプレート20にインサート成形によって埋め込まれている。
【0027】
一対のサイドプレート50は、電池群10の電池セル1の幅方向(Y方向)の両側に配置され、電池セル1の積層方向である一方向(X方向)を長手方向とするおおむね長方形の板状の部材である。サイドプレート50は、たとえば、ステンレス板や鋼鈑の細部を折り曲げ加工することによって製作され、長手方向(X方向)の一端と他端にボルト51を挿通させる図示を省略するボルト孔を有している。一対のサイドプレート50は、ボルト孔に挿通させたボルト51を、一対のエンドプレート20の側面に埋め込まれたナットに締結することで、長手方向(X方向)の両端が一対のエンドプレート20に締結されている。これにより、一対のサイドプレート50は、電池セル1の積層方向である一方向(X方向)から電池群10を挟持する一対のエンドプレート20を、その一方向(X方向)において拘束している。
【0028】
バスバー30は、たとえば、電池群10の複数の電池セル1を接続する中間バスバー31と、電池群10を外部接続用の端子Tに接続するための端部バスバー32とを含んでいる。中間バスバー31は、たとえば銅やアルミなどの導電性を有する金属製の部材であり、長方形の板状の形状を有している。中間バスバー31の一端と他端は、それぞれ、電池群10の互いに隣接する一方の電池セル1の正極のセル端子1pと、他方の電池セル1の負極のセル端子1nに、たとえばレーザ溶接によって接合されて接続される。
【0029】
前述のように、電池群10の複数の電池セル1は、積層方向である一方向(X方向)において、正負のセル端子1p,1nが交互に並ぶように、交互に反転させて配置されている。そのため、電池群10の複数の電池セル1は、積層方向である一方向(X方向)において、互いに隣接する一方の電池セル1の正極のセル端子1pと、他方の電池セル1の負極のセル端子1nとを、中間バスバー31によって、順次、接続していくことで、直列に接続されている。
【0030】
端部バスバー32は、中間バスバー31と同様に、たとえば銅やアルミなどの導電性を有する金属製の部材であり、長方形の板状の形状を有している。端部バスバー32は、たとえば、長手方向の寸法が中間バスバー31よりも大きくされ、一方の端部に締結部材40を挿通させるための長孔状の貫通孔32aを有している。長孔状の貫通孔32aは、上記一方向(X方向)に延びている。中間バスバー31によって直列に接続された電池群10の複数の電池セル1は、たとえばレーザ溶接によって、積層方向の一方の端部の電池セル1の正極のセル端子1pに正極の端部バスバー32が接合され、積層方向の他方の端部の電池セル1の負極のセル端子1nに負極の端部バスバー32が接合されている。
【0031】
図3は、
図1に示す電池モジュール100の分解斜視図の拡大図である。
図4は、
図3に示す電池モジュール100が備えるバスバーケース60とバスバー30の分解斜視図である。バスバーケース60は、たとえばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのエンジニアリングプラスチックのように、絶縁性および耐熱性を有する樹脂を素材とする矩形板状の部材である。バスバーケース60は、電池群10およびその両側の一対のエンドプレート20を覆うように、電池群10を構成する複数の電池セル1のセル端子1p,1nに対向して配置されている。
【0032】
すなわち、電池モジュール100は、電池セル1の上面に対向して設けられてバスバー30を保持するバスバーケース60を備えている。そして、締結部材40は、バスバーケース60およびバスバー30を貫通して設けられている。バスバーケース60は、たとえば、締結部材40によって、一対のエンドプレート20に連結されている。換言すると、電池セル1の積層方向の両側にエンドプレート20が配置され、これら一対のエンドプレート20をバスバーケース60が繋いでいる。
【0033】
バスバーケース60の両端部は、締結部材40の一部を収容するエンドプレート20の凹部21に隣接して配置されている。バスバーケース60は、中間バスバー31と端部バスバー32を含む複数のバスバー30を保持している。バスバーケース60は、複数のバスバー30を収容する複数の開口部61を有し、各開口部61に各バスバー30を保持する支持部62を有している。図示の例において、開口部61の形状および寸法は、開口部61に収容されるバスバー30の外形および寸法におおむね等しくなっている。支持部62は、各バスバー30を締結部材40によるバスバー30と外部接続用の端子Tの締結方向(Z方向)における両側から支持している。
【0034】
より具体的には、支持部62は、たとえば、バスバー30を締結部材40によるバスバー30と外部接続用の端子Tの締結方向(Z方向)における両側から支持する梁状部62aと、複数の突起部62bとを有している。梁状部62aは、電池セル1の積層方向である一方向(X方向)における開口部61の中央部の電池群10側(−Z方向側)に開口部61を横断するように設けられている。複数の突起部62bは、その一方向(X方向)における開口部61の両端部の電池群10と反対側(+Z方向側)に、開口部61の内側へ突出するように設けられている。
【0035】
図5は、
図1に示す電池モジュール100の拡大断面図である。締結部材40は、バスバー30に外部接続用の端子Tを締結するための部材である。締結部材40は、たとえば、金属製のボルト41とナット42を含んでいる。図示の例において、ボルト41は、頭部がナベ頭またはトラス頭であるが、これらに限定されず、頭部が六角形の六角ボルトであってもよく、四角形やその他の形状の頭部を有していてもよい。また、図示の例において、ナット42は四角形であるが、六角形やその他の形状であってもよい。なお、締結部材40は、ボルト41とナット42に限定されず、たとえばリベット、かしめ部、溶接部など、他の締結手段であってもよい。
【0036】
前述のように、一対のエンドプレート20の少なくとも一方は、締結部材40の一部を電池セル1の積層方向である一方向(X方向)に相対移動可能に収容する凹部21を有している。すなわち、凹部21は、一対のエンドプレート20の両方に設けられていてもよいが、一対のエンドプレート20のいずれか一方のみに設けられていてもよい。図示の例において、締結部材40は、エンドプレート20の凹部21に収容されたナット42と、このナット42に締結されるボルト41とを有している。すなわち、エンドプレート20の凹部21は、締結部材40の一部であるナット42を一方向(X方向)に相対移動可能に収容している。この一方向(X方向)において、エンドプレート20の凹部21の内側壁21aとナット42との間に間隙Sを有している。
【0037】
図示の例において、エンドプレート20の凹部21の寸法と、締結部材40のナット42の寸法との関係は、次のとおりである。電池群10の複数の電池セル1の積層方向である一方向(X方向)において、凹部21の寸法L1Xは、締結部材40のナット42の寸法L2Xよりも大きい(L1X>L2X)。電池セル1の幅方向(Y方向)において、凹部21の寸法L1Yは、締結部材40のナット42の寸法L2Yと等しいかそれよりも大きい(L1Y≧L2Y)。電池セル1の高さ方向(Z方向)において、凹部21の寸法L1Zは、締結部材40のナット42の寸法L2Zよりも小さい(L1Z<L2Z)。すなわち、締結部材40のナット42は、凹部21の寸法L1Zとナット42の寸法L2Zの差分ΔLZ(=L2Z−L1Z)だけ、凹部21の外側に突出する。
【0038】
また、上記一方向(X方向)において、凹部21と締結部材40のナット42との間のクリアランスは、凹部21の寸法L1Xとナット42の寸法L2Xとの差分ΔLX(=L1X−L2X)である。また、電池セル1の幅方向(Y方向)において、締結部材40のナット42と凹部21との間のクリアランスは、凹部21の寸法L1Yとナット42の寸法L2Yとの差分ΔLY(=L1Y−L2Y)である。上記一方向(X方向)における凹部21とナット42のクリアランスである差分ΔLXは、電池セル1の幅方向(Y方向)における凹部21とナット42のクリアランスである差分ΔLYよりも大きい(ΔLX>ΔLY)。なお、電池セル1の幅方向(Y方向)における凹部21とナット42のクリアランスである差分ΔLYは、たとえば最大でも数百μmである。
【0039】
また、本実施形態の電池モジュール100は、エンドプレート20の凹部21に収容された締結部材40の一部が、電池群10の複数の電池セル1の積層方向である一方向(X方向)に沿う凹部21の内側壁21bに隣接しかつこの内側壁21bに対向する回転防止壁43を有している。より具体的には、エンドプレート20の凹部21に収容された締結部材40のナット42が回転防止壁43を有している。ナット42は、回転防止壁43が上記一方向(X方向)に沿う凹部21の内側壁21bにおおむね平行になり、かつ内側壁21bに接するかまたは微小な隙間をあけて対向した状態で、凹部21に収容される。
【0040】
以下、本実施形態の電池モジュール100の作用について説明する。
【0041】
本実施形態の電池モジュール100は、前述のように、複数の電池セル1を一方向に積層させて接続した電池群10と、この電池群10をその一方向の両側から挟持する一対のエンドプレート20とを備えている。また、本実施形態の電池モジュール100は、電池群10を外部接続用の端子Tに接続するためのバスバー30である端部バスバー32と、この端部バスバー32に外部接続用の端子Tを締結するための締結部材40と、備えている。
【0042】
電池群10は、一対のエンドプレート20の間で複数の電池セル1を積層方向に加圧した状態で、たとえば一対のエンドプレート20に一対のサイドプレート50をボルト51によって締結することで、複数の電池セル1が積層方向である一方向(X方向)において拘束される。これにより、電池群10は、その一方向(X方向)に所定の圧縮量だけ圧縮された状態で、一対のエンドプレート20の間に保持される。
【0043】
本実施形態の電池モジュール100は、たとえば、ハイブリット自動車の電源装置などの大電流で充放電される用途に使用される。この場合、電池モジュール100の電池群10を外部接続用の端子Tに接続するためのバスバー30である端部バスバー32を、比較的に径の大きい大電流用のケーブルの端部の外部接続用の端子Tに、可能な限り電気抵抗を低減させた状態で接続する必要がある。そのためには、外部接続用の端子Tを、電池群10の外部接続用の端部バスバー32に、締結部材40によって強い力で締結する必要がある。
【0044】
ここで、特許文献1に記載された従来のバッテリシステムは、電池ブロックを構成する複数の電池セルが充電や温度上昇などによって積層方向に膨張すると、積層された電池セルを積層方向に挟着して固定する一対のエンドプレートがたわむ。前記出力ラインの接続端子は、止ネジとこの止ネジにねじ込まれてなるナットとを介して中継バスバーに接続されている。そのため、一対のエンドプレートがたわむと、この一対のエンドプレートに止ネジを介して固定された中継バスバーを介して、止ネジに軸方向に垂直なせん断方向の応力が繰り返し作用し、止ネジのナットに対する締結が緩むおそれがある。すると、出力ラインと電池ブロックを構成する電池セルのセル端子との間の電気抵抗が増大するおそれがある。
【0045】
これに対し、本実施形態の電池モジュール100は、前述のように、エンドプレート20が締結部材40の一部を複数の電池セル1の積層方向である一方向(X方向)に相対移動可能に収容する凹部21を有している。この一方向(X方向)において、本実施形態の電池モジュール100は、凹部21の内側壁21aと締結部材40との間に間隙Sを有している。そのため、電池群10を構成する複数の電池セル1が、積層方向である一方向(X方向)に膨張して一対のエンドプレート20がこの一方向(X方向)にたわむと、締結部材40がエンドプレート20に対して一方向(X方向)に相対的に移動する。
【0046】
これにより、端部バスバー32や外部接続用の端子Tを介して締結部材40に作用する応力が緩和され、締結部材40の緩みが防止される。したがって、本実施形態の電池モジュール100によれば、電池群10に接続されたバスバー30と外部接続用の端子Tとの間の接触抵抗が増大することを防止することができる。また、電池モジュール100の製造時に、端部バスバー32と外部接続用の端子Tを締結部材40によって締結する際に、締結部材40をエンドプレート20に対して上記一方向(X方向)に相対的に移動させることができるので、端部バスバー32と締結部材40の正確な位置合わせが不要になる。したがって、電池モジュール100の生産性を向上させることができる。
【0047】
より具体的には、本実施形態の電池モジュール100において、締結部材40は、前述のように、エンドプレート20の凹部21に収容されたナット42と、このナット42に締結されるボルト41とを有し、上記一方向(X方向)において、凹部21の内側壁21aとナット42との間に間隙Sを有している。これにより、一対のエンドプレート20がこの一方向(X方向)にたわむと、ナット42がエンドプレート20に対して一方向(X方向)に相対的に移動し、端部バスバー32や外部電極用端子を介して締結部材40に作用する応力が緩和され、締結部材40の緩みが防止される。
【0048】
また、本実施形態の電池モジュール100は、エンドプレート20の凹部21に隣接して配置されてバスバー30を保持するバスバーケース60を備えている。バスバーケース60は、締結部材40によるバスバー30と外部接続用の端子Tの締結方向における両側から、バスバー30を支持する支持部62を有している。これにより、バスバーケース60の支持部62によってバスバー30を保持することができる。したがって、たとえば電池モジュール100が車両に搭載される場合など、電池モジュール100に振動が加わる場合に、バスバー30の振動を防止して、電池モジュール100の耐振動性を向上させることができる。
【0049】
前記特許文献1に記載された従来のバッテリシステムは、エンドプレートに設けたナットに端子を固定している。しかし、この従来のバッテリシステムは、バスバーケースを設けてこれを貫通させて端子を設ける場合、バスバーケースの穴とナットとの位置合わせが困難である。これは、電池セルを積層させているので、個々の電池セルの寸法公差がバスバーケースの穴とナットとの位置に影響を与えるためである。
【0050】
これに対し、本実施形態の電池モジュール100は、電池セル1の上面に対向して設けられてバスバー30を保持するバスバーケース60を備え、締結部材40がバスバーケース60およびバスバー30を貫通して設けられている。また、バスバーケース60は、一対のエンドプレート20に連結されている。換言すると、電池セル1の積層方向の両側にエンドプレート20が配置され、これら一対のエンドプレート20をバスバーケース60が繋いでいる。そのため、凹部21の内側壁21aと締結部材40との間に間隙Sを設けることで、個々の電池セル1の寸法公差があっても、バスバーケース60の穴と締結部材40との位置を合わせることができる。
【0051】
また、本実施形態の電池モジュール100は、エンドプレート20の凹部21に収容された締結部材40の一部であるナット42が、上記一方向(X方向)に沿う凹部21の内側壁21bに隣接しかつこの内側壁21bに対向する回転防止壁43を有している。これにより、締結部材40の一部であるナット42の回転が防止され、ボルト41をナット42にねじ込んで端部バスバー32に外部接続用の端子Tを締結する際に、凹部21の内側壁21bからナット42の回転防止壁43へ締結部材40に作用するトルクに対する反力を作用させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の電池モジュール100によれば、締結部材40の緩みを防止して、外部接続用の端子Tとバスバー30との接触抵抗を低減し、外部接続用の端子Tと電池群10を構成する電池セル1のセル端子1p,1nとの間の電気抵抗の増大を防止することができる。
【0053】
(変形例1)
図6は、
図1に示す電池モジュール100の変形例1を示す拡大断面図である。本変形例の電池モジュール100Aは、バスバーケース60の支持部62の構成が、前述の電池モジュール100と異なっている。本変形例の電池モジュール100Aのその他の構成は、前述の電池モジュール100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
本変形例の電池モジュール100Aは、バスバーケース60の支持部62にバスバー30が支持されていない状態で、締結部材40によるバスバー30の締結方向(Z方向)における支持部62の間隔が、締結方向(Z方向)におけるバスバー30の寸法よりも狭くされている。また、バスバーケース60の支持部62にバスバー30が支持された状態で、支持部62が締結方向(Z方向)に弾性変形してバスバー30を締結方向(Z方向)に付勢して挟持している。
【0055】
より具体的には、図示の例において、バスバーケース60の支持部62は、ばね性を有する突起部62bを有し、バスバーケース60の支持部62にバスバー30が支持されていない状態で、突起部62bと梁状部62aとの締結方向(Z方向)における距離がバスバー30の厚さよりも小さくされている。これにより、また、バスバーケース60の支持部62にバスバー30が支持された状態で、突起部62bが締結方向(Z方向)に弾性変形して、バスバー30を締結方向(Z方向)に梁状部62aに向けて付勢し、突起部62bと梁状部62aとの間にバスバー30が挟持されている。これにより、たとえば電池モジュール100Aが車両に搭載される場合など、電池モジュール100Aに振動が加わる場合に、バスバー30の振動をより効果的に防止して、電池モジュール100Aの耐振動性をさらに向上させることができる。
【0056】
(変形例2)
図7は、
図1に示す電池モジュール100の変形例2を示す拡大断面図である。
図8は、
図7に示す電池モジュール100Bの拡大断面図である。本変形例の電池モジュール100Bは、バスバーケース60の構成が、
図1に示す電池モジュール100と異なっている。本変形例の電池モジュール100Bのその他の構成は、
図1に示す電池モジュール100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本変形例の電池モジュール100Bにおいて、バスバーケース60は、一対のエンドプレート20に係合する係合部63を有している。また、一対のエンドプレート20は、バスバーケース60の係合部63を係合させる凹部22を有してもよい。バスバーケース60の係合部63は、たとえば、バスバーケース60の端部において、締結部材40の締結方向(Z方向)にエンドプレート20に向けて延び、先端に電池セル1の積層方向である一方向(X方向)に突出してエンドプレート20の凹部22に係合する爪部63aを有している。このような構成により、たとえば電池モジュール100Bが車両に搭載される場合など、電池モジュール100Bに振動が加わる場合に、バスバーケース60の振動を防止して締結部材40に作用する応力を低減し、電池モジュール100Bの耐振動性をさらに向上させることができる。
【0058】
(変形例3)
図9は、
図1に示す電池モジュール100の変形例3を示す拡大分解斜視図である。本変形例の電池モジュール100Cは、締結部材40の構成が、
図1に示す電池モジュール100と異なっている。本変形例の電池モジュール100Cのその他の構成は、
図1に示す電池モジュール100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本変形例の電池モジュール100Cにおいて、締結部材40は、エンドプレート20の凹部21に部分的に収容されたボルト41とこのボルト41に締結されるナット42とを有している。より具体的には、エンドプレート20の凹部21にボルト41の頭部が収容されている。また、本変形例の電池モジュール100Cは、上記一方向(X方向)において、エンドプレート20の凹部21の内側壁21aとボルト41との間に間隙Sを有している。この場合にも、ボルト41の頭部の寸法とエンドプレート20の凹部21の寸法との間には、
図3および
図5に示すナット42の寸法とエンドプレート20の凹部21の寸法と同様の関係が成立する。本変形例の電池モジュール100Cにおいても、
図1に示す電池モジュール100と同様の効果を奏することができる。
【0060】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。