特許第6864133号(P6864133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864133
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】実装装置および実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20210419BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
   H01L21/60 311Q
   H05K13/04 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-48961(P2020-48961)
(22)【出願日】2020年3月19日
(62)【分割の表示】特願2016-573362(P2016-573362)の分割
【原出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2020-102647(P2020-102647A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-19394(P2015-19394)
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−239170(JP,A)
【文献】 特開2013−012513(JP,A)
【文献】 特開平11−067842(JP,A)
【文献】 特開2006−066767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両面に突出した電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、熱硬化性の接着剤を介した状態で熱圧着する実装装置であって、
前記半導体チップを保持した状態で加熱し、前記被接合物に圧着する機能を有する熱圧着ヘッドを備え、
前記熱圧着ヘッドは、吸着穴を有し、前記半導体チップより大きく実装ピッチサイズより小さい外周サイズの面で前記半導体チップを保持する、アタッチメントを有し、
前記吸着穴と連通し、吸着穴内部を減圧する減圧機構を備え、
前記半導体チップと前記アタッチメントの間に樹脂シートを供給する、樹脂シート供給機構を更に備え、
前記接着剤からアウトガスが発生しない温度で前記半導体チップを保持した前記熱圧着ヘッドを下降して、前記半導体チップに上下両面からの力を加えることで、前記半導体チップ上面に突出した電極を徐々に前記樹脂シートにめり込ませ、
前記半導体チップ上面に突出した電極を前記樹脂シートに埋没させた状態にしててから
前記熱圧着ヘッドを昇温して前記半導体チップを熱圧着することを特徴とする実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の実装装置であって、
前記熱圧着ヘッドの加熱温度を設定する機能を有した制御部を更に備え、
前記減圧機構は前記吸着穴内部の圧力を測定し、測定値を前記制御部に出力する圧力計を有し、
前記制御部が、前記圧力計の測定値に応じて前記熱圧着ヘッドの加熱温度の設定値を変更する機能を有していることを特徴とする実装装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の実装装置であって、
前記樹脂シート供給機構は、前記吸着穴に対応する位置の樹脂シートに貫通穴を形成する、穴開け機能を有することを特徴とする実装装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の実装装置であって、
前記熱圧着後に、前記アタッチメント表面に前記樹脂シートを密着させた状態で、前記樹脂シートを前記半導体チップから離間させる機能を有している実装装置。
【請求項5】
請求項4に記載の実装装置であって、
前記アタッチメントと前記樹脂シートを離間させる移動手段を備えたことを特徴とする実装装置。
【請求項6】
上下両面にに突出した電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、熱硬化性の接着剤を介した状態で熱圧着する実装方法であって、
前記半導体チップを、吸着穴を有し、加圧面が前記半導体チップより大きく実装ピッチサイズより小さい熱圧着ヘッドで、
前記吸着穴と対応する位置に貫通穴が形成された樹脂シートを介して吸着保持する工程と、
前記接着剤からアウトガスが発生しない温度で前記半導体チップを保持した前記熱圧着ヘッドを下降して、前記半導体チップに上下両面からの力を加えることで、前記半導体チップ上面に突出した電極を徐々に前記樹脂シートにめり込ませる工程と
前記半導体チップ上面に突出した電極を前記樹脂シートに埋没させた状態にしててから、前記熱圧着ヘッドの設定温度を上げて、前記半導体チップ下面の電極と被接合物上面の電極を接合するとともに、前記接着剤を熱硬化させる工程とを有することを特徴とする実装方法。
【請求項7】
請求項6に記載の実装方法であって、
前記半導体チップ上面に突出した電極を前記樹脂シートに埋没させる工程において、前記吸着穴内の圧力を監視し、前記圧力が所定の値以下になった後に、前記熱圧着ヘッドの設定温度を、前記半導体チップ下面の電極と被接合物上面の電極を接合するとともに、前記接着剤を熱硬化させる温度に上げることを特徴とする実装方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の実装方法であって、
前記熱圧着後に、前記熱圧着ヘッド表面に前記樹脂シートを密着させた状態で、前記樹脂シートを前記半導体チップから離間させることを特徴とする実装方法。
【請求項9】
請求項6から請求項8の何れかに記載の実装方法であって、
前記樹脂シートを前記半導体チップから離間させた後に、前記熱圧着ヘッドから前記樹脂シートを離間することを特徴とする実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装装置および実装方法に関する。詳しくは、上下両面に電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、接着剤を介した状態で熱圧着する実装装置および実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを基板に実装する方法として、フリップチップ工法が知られている。フリップチップ工法では、図11示す様なフリップチップボンダー50を用いて、半導体チップのバンプ電極と基板の電極を熱圧着して接合させている。図11フリップチップボンダー50では、図12ような構造からなる熱圧着ヘッド57を有し、アタッチメント59の吸着穴590内を減圧することにより吸着保持した半導体チップCをヒーター58で加熱しながら、基板S0に熱圧着する機能を有している。
【0003】
フリップチップ工法では、接合部の信頼性を確保するために、半導体チップと基板の隙間を樹脂で封止している。樹脂封止の方法として、従来は接合後に液状樹脂を隙間に注入して熱硬化する方法が一般的であったが、半導体チップと基板の間に接着性を有する樹脂を未硬化状態で配置した状態で熱圧着を行う工法も多く提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
半導体チップと基板の間に接着剤としての未硬化樹脂を配した状態で行うフリップチップ工法は、電極同士の接合と樹脂封止を同時に行うことが出来る。このため、貫通電極のような上下両面に電極を有する半導体チップを積層する3次元実装にも適した工法でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−315688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貫通電極のような上下両面に電極を有する半導体チップは、一般的な半導体チップと異なり、図13示すように半導体チップC上面にも電極ETによる突起がある。このため、フリップチップボンダー50の熱圧着ヘッド57で吸着保持する場合、熱圧着ヘッド57のアタッチメント59と半導体チップC上面に隙間が生じる。この隙間は僅かであるので、アタッチメントに上下両面に電極(ET、EB)を有する半導体チップCを保持することは可能である。しかし、減圧状態の吸着穴590内部には、半導体チップC周辺の空気が入り込み続けることになる(図14)。
【0007】
このため、未硬化樹脂Rを介して、上下両面に電極を有する半導体チップCを被接合物S(配線基板または配線基板上に上下両面に電極を有する半導体を積層したもの)に熱圧着する場合では、加熱により樹脂からアウトガスGが発生し、吸着穴内部590に吸引されることになる。このアウトガスGの中には有機成分等が含まれており、吸着穴590内部に入り込む過程において、アタッチメント59の吸着面や吸着穴590内部にアウトガス成分が付着する。このアタッチメント59の吸着面や吸着穴590内部へのアウトガス成分の付着は、熱圧着を繰り返すことにより徐々に蓄積され、アタッチメント59の吸着面を汚染したり、吸着穴590を詰まらせて吸着不良に至ることもある。
【0008】
また、加熱を繰り返すことで、付着したアウトガス成分が炭化物となり、この炭化物が吸着穴から半導体チップC上に落下して品質不良を引き起こす懸念もある。
【0009】
そこで、図15ように、半導体チップC上面とアタッチメント59の吸着面との間の隙間をなくすために、アタッチメント59の吸着面に、半導体チップC上面の電極ETを収納するような凹部592を設けることが考えられる。
【0010】
ところが、半導体チップC上面の電極ETを収納するような凹部592を設けようとすると、凹部592は電極ETより容積的に大きくなるので、凹部592と電極ETの間に隙間が生じる。このような隙間が生じると、この凹部592においてアタッチメント59から半導体チップCへの伝熱が阻害され、半導体チップCの加熱が不十分となる。特に、上下両面の電極に貫通電極を用いた半導体チップでは、下面の電極への加熱が不十分となってしまい、接合不良の原因となる。また、圧力が大きい場合は、凹部592の周辺で剪断応力TA(図16が生じて半導体チップにダメージを与えることにもなるので好ましくない。
【0011】
一方、アタッチメント59の吸着面が平坦であれば、半導体チップC上面に突出した電極ETにしか熱と加重が加わらないため、半導体チップC下側の未硬化樹脂Rの流動性が低くなり、半導体チップCと被接合物Sの電極間に樹脂が噛み込んだりボイドが発生して接合不良の原因になる。
【0012】
また、アウトガスGが発生する温度に到達する前に吸着を止めて、アウトガス成分の吸着穴590内への流入を防いでから加熱する方法も考えられるが、吸着穴590の内部と外部の差圧から半導体チップCに向かって気流が逆流するため、加熱時の樹脂の流動により半導体チップCが位置ズレする懸念がある。さらに、加熱開始を遅らせるとタクトタイムが長くなって生産性が低下する。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、上下両面に電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、接着剤を介した状態で熱圧着するのに際して、アウトガスによる弊害もなく、接合品質も確保した実装装置および実装方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
上下両面に突出した電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、熱硬化性の接着剤を介した状態で熱圧着する実装装置であって、
前記半導体チップを保持した状態で加熱し、前記被接合物に圧着する機能を有する熱圧着ヘッドを備え、
前記熱圧着ヘッドは、吸着穴を有し、前記半導体チップより大きく実装ピッチサイズより小さい外周サイズの面で前記半導体チップを保持する、アタッチメントを有し、
前記吸着穴と連通し、吸着穴内部を減圧する減圧機構を備え、
前記半導体チップと前記アタッチメントの間に樹脂シートを供給する、樹脂シート供給機構を更に備え、
前記接着剤からアウトガスが発生しない温度で前記半導体チップを保持した前記熱圧着ヘッドを下降して、前記半導体チップに上下両面からの力を加えることで、前記半導体チップ上面に突出した電極を徐々に前記樹脂シートにめり込ませ、前記半導体チップ上面に突出した電極を前記樹脂シートに埋没させた状態にしててから、前記熱圧着ヘッドを昇温して前記半導体チップを熱圧着することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の実装装置であって、
前記熱圧着ヘッドの加熱温度を設定する機能を有した制御部を更に備え、
前記減圧機構は前記吸着穴内部の圧力を測定し、測定値を前記制御部に出力する圧力計を有し、
前記制御部が、前記圧力計の測定値に応じて前記熱圧着ヘッドの加熱温度の設定値を変更する機能を有していることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の実装装置であって、
前記樹脂シート供給機構は、前記吸着穴に対応する位置の樹脂シートに貫通穴を形成する、穴開け機能を有することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れかに記載の実装装置であって、
前記熱圧着後に、前記アタッチメント表面に前記樹脂シートを密着させた状態で、前記樹脂シートを前記半導体チップから離間させる機能を有している。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の実装装置であって、
前記アタッチメントと前記樹脂シートを離間させる移動手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、
上下両面にに突出した電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、熱硬化性の接着剤を介した状態で熱圧着する実装方法であって、
前記半導体チップを、吸着穴を有し、加圧面が前記半導体チップより大きく実装ピッチサイズより小さい熱圧着ヘッドで、
前記吸着穴と対応する位置に貫通穴が形成された樹脂シートを介して吸着保持する工程と、
前記接着剤からアウトガスが発生しない温度で前記半導体チップを保持した前記熱圧着ヘッドを下降して、前記半導体チップに上下両面からの力を加えることで、前記半導体チップ上面に突出した電極を徐々に前記樹脂シートにめり込ませる工程と
前記半導体チップ上面に突出した電極を前記樹脂シートに埋没させた状態にしててから、前記熱圧着ヘッドの設定温度を上げて、前記半導体チップ下面の電極と被接合物上面の電極を接合するとともに、前記接着剤を熱硬化させる工程とを有することを特徴とする。


【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の実装方法であって、
前記半導体チップ上面に突出した電極を前記樹脂シートに埋没させる工程において、前記吸着穴内の圧力を監視し、前記圧力が所定の値以下になった後に、前記熱圧着ヘッドの設定温度を、前記半導体チップ下面の電極と被接合物上面の電極を接合するとともに、前記接着剤を熱硬化させる温度に上げることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載の実装方法であって、
前記熱圧着後に、前記熱圧着ヘッド表面に前記樹脂シートを密着させた状態で、前記樹脂シートを前記半導体チップから離間させることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項6から請求項8の何れかに記載の実装方法であって、
前記樹脂シートを前記半導体チップから離間させた後に、前記熱圧着ヘッドから前記樹脂シートを離間することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、上下両面に電極を有する半導体チップを、前記半導体チップの下側に配置され、上面に電極を有する被接合物に、接着剤を介した状態で熱圧着するのに際して、半導体チップ上面に突出した電極によって生じる隙間を樹脂シートによって塞げるので、アウトガスが半導体チップ上面側に接触することが防げ、アウトガスによる弊害もなく、接合品質も確保した実装が行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る実装装置の全体構成を示す図である。
図2】本発明で対象とする半導体チップと被接合物について説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る実装装置の熱圧着ヘッドの構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る実装装置の制御構成を示す図である。
図5】(a)本発明の一実施形態に係るアタッチメントに対して樹脂シートが離れた状態を示す図である(b)同アタッチメント表面に樹脂シートが密着した状態を示す図である。
図6】(a)本発明の一実施形態に係る穿孔装置の針部がアタッチメントの吸着穴と位置合わせを行った状態を示す図である(b)同穿孔装置が樹脂シートに開口部を形成する過程を示す図である(c)同穿孔装置が樹脂シートに開口部を形成する過程が進んだ状態を示す図である(d)同穿孔装置により樹脂シートへの開口部が形成された状態を示す図である。
図7】(a)本発明の一実施形態に係る実装装置の熱圧着ヘッド先端部のアタッチメントが樹脂シートを介して半導体チップを吸着している状態を説明する図である(b)同アタッチメントに樹脂シートを介して吸着している半導体チップ上面に突出した電極が樹脂シートに埋没した状態を示す図である。
図8】(a)半導体チップの電極が樹脂シートに埋没したイメージ図である(b)半導体チップの電極が樹脂シートに埋没する一例を示す図である。
図9】(a)本発明の一実施形態に係る実装装置により半導体チップを被接合物に接近させる過程を示す図である(b)同過程において半導体チップ上面に突出した電極が樹脂シートに埋没した状態を示す図である(c)同過程の後の熱圧着工程により半導体チップが被接合物に実装された状態を示す図である(d)熱圧着工程の後に半導体チップから樹脂シートが剥離された状態を示す図である。
図10】(a)本発明の一実施形態に係る熱圧着工程の後に熱圧着ヘッド先端部のアタッチメントに樹脂シートが密着した状態を示す図である(b)同アタッチメントから樹脂シートを離した状態を示す図である(c)同アタッチメント直下の樹脂シートを更新している状態を示す図である。
図11】従来のフリップチップボンダーの構成を示す図である。
図12】下面のみに電極を有する半導体チップを従来のフリップチップボンダーの熱圧着ヘッドが保持している状態を示す図である。
図13】上下両面に電極を有する半導体チップを従来のフリップチップボンダーの熱圧着ヘッドが保持している状態を示す図である。
図14】上下両面に電極を有する半導体チップを従来のフリップチップボンダーで熱圧着する際に発生するアウトガスについて説明する図である。
図15】従来のフリップチップボンダーで熱圧着ヘッドのアタッチメントに凹部を設けて上下両面に電極を有する半導体チップを保持する状態を示す図である。
図16】従来のフリップチップボンダー熱圧着ヘッドのアタッチメントに凹部を設けて上下両面に電極を有する半導体チップを熱圧着する際に生じる問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態である実装装置1である。
【0026】
実装装置1で実装する半導体チップCは、図2のように貫通電極により上下両面に電極を有しており、下面の電極EBは先端部にはんだBSを有するはんだバンプとなっており、上面の電極ETも上面から数μm程度突出している。被接合物Sは、図2(a)に示すような基板S0、または図2(b)に示すような配線基板S0に半導体チップCが積層されたものである。また、本実施形態において、半導体チップCと被接合物Sとを接着する接着剤として、熱硬化性樹脂を主成分とする非導電性フィルム(以下「NCF」と記す)を用いている。NCFは被接合物Sの表面に貼り付けられているものとするが、これに限定されるものではなく、半導体チップCの下面に貼り付けられていてもよい。さらに、接着剤として熱硬化性樹脂を主成分とする非導電性ペースト(以下「NCP」と記す)を用いても良い。
【0027】
図1の実装装置1は、被接合物Sと半導体チップCの間にNCFを介した状態で、半導体チップC下面の電極EBと被接合物S上面の電極ESとをはんだBSの溶着により接合し、半導体チップCを被接合物Sの上に実装するものである。実装装置1は、基台3、ステージ4、支持フレーム5、熱圧着ユニット6、熱圧着ヘッド7、ヒータ8、アタッチメント9、樹脂シート供給機構2、画像認識装置10および制御部11とを備えている。また、樹脂シート供給機構2は、樹脂シート巻出部2Sおよび樹脂シート巻取部2Rを構成要素として含んでいる。
【0028】
以下の説明では、樹脂シート巻出部2Sから樹脂シート巻取部2Rへ樹脂シートPを搬送する方向をX軸方向、これに直交するY軸方向、熱圧着ヘッド7の被接合物Sに垂直な移動方向をZ軸方向、Z軸を中心として回転する方向をθ方向として説明する。
【0029】
基台3は、実装装置1を構成する主な構造体である。基台3は充分な剛性を有するように構成されている。基台3は、ステージ4と支持フレーム5を支持している。
【0030】
ステージ4は、被接合物Sを保持しつつ、任意の位置に移動させるものである。ステージ4は、駆動ユニット4aに被接合物Sを吸着保持できる吸着テーブル4bが取り付けられ構成されている。ステージ4は、基台3に取り付けられ、駆動ユニット4aによって吸着テーブル4bをX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動できるように構成されている。すなわち、ステージ4は、基台3上において吸着テーブル4bに吸着された被接合物SをX軸方向、Y軸方向、θ方向に移動できるように構成されている。なお、本実施形態において、ステージ4は、吸着により被接合物Sを保持しているがこれに限定されるものではない。
【0031】
支持フレーム5は、熱圧着ユニット6を支持するものである。支持フレーム5は、基台3のステージ4の近傍からZ軸方向に向かって延びるように構成されている。
【0032】
加圧ユニットである熱圧着ユニット6は、熱圧着ヘッド7を移動させるものである。熱圧着ユニット6は、図示しないサーボモータとボールねじから構成される。熱圧着ユニット6は、サーボモータによってボールねじを回転させることによりボールねじの軸方向の駆動力を発生するように構成されている。熱圧着ユニット6は、ボールねじの軸方向が被接合物Sに対して垂直なZ軸方向の駆動力(加圧力)を発生するように構成されている。熱圧着ユニット6は、サーボモーターの出力を制御することによりZ軸方向の加圧力である熱圧荷重Fを任意に設定できるように構成されている。なお、本実施形態において、熱圧着ユニット6は、サーボモータとボールねじとの構成としたが、これに限定されるものではなく、空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータやボイスコイルモータから構成してもよい。熱圧着ユニット6の加圧力は、半導体チップCの電極の数や、被接合物Sとの電極同士の接触面積に応じて可変できるよう制御される。
【0033】
熱圧着ヘッド7は、樹脂シートPを介して半導体チップCを吸着保持して、熱圧着ユニット6の駆動力を半導体チップCに伝達するものである。熱圧着ヘッド7は、熱圧着ユニット6を構成している図示しないボールねじナットに取り付けられている。また、熱圧着ユニット6は、ステージ4と対向するように配置されている。また、熱圧着ヘッド7は、熱圧着ユニット6によってZ方向に移動されることでステージ4に近接する。熱圧着ヘッド7の構成は図3に示すが、熱圧着ヘッド7には、ヒータ8およびアタッチメント9が設けられている。
【0034】
図3に示すヒータ8は、半導体チップCを加熱するためのものであり、カートリッジヒータから構成されている。ただし、カートリッジヒータに限定されるものではなく、セラミックヒータ、ラバーヒータ等、半導体チップCを所定の温度まで加熱することが出来るものであればよい。また、ヒータ8は、熱圧着ヘッド7に組み込まれているが、これに限定されるものではなく、ステージ4にも組み込んで、ステージ4側から被接合物Sを介してNCFを加熱する構成でも良い。
【0035】
アタッチメント9は、樹脂シートPを介して半導体チップCを保持するものである。アタッチメント9は、熱圧着ヘッド7にステージ4と対向するように設けられている。アタッチメント9は、半導体チップCを位置決めしながら吸着保持できるように構成されている。また、アタッチメント9は、ヒータ8によって加熱されるように構成されている。つまり、アタッチメント9は、半導体チップCを位置決め保持するとともに、ヒータ8からの伝熱によって半導体チップCを加熱できるように構成されている。なお、アタッチメント9には、半導体チップCを吸着するための吸着穴90が設けられており、吸着穴90は真空ポンプ等からなる減圧機構91に連通されている。減圧機構91を稼働することにより、吸着穴90内部は減圧され、アタッチメント9は、後述の開口部を有する樹脂シートPを介して、半導体チップCを吸着保持する。吸着穴90内部の圧力を測定するための圧力計93も設けられている。図3では、吸着穴90は1箇所のみとなっているが、これに限定されるものではなく、複数であったもよく、吸着する半導体チップCの大きさに応じて増やしてもよい。
【0036】
樹脂シートPにより、本圧着時に半導体チップCからNCFがはみ出してもアタッチメント9に付着することがないので、アタッチメント9は圧着面の外周サイズを半導体チップCよりも大きくすることができる。そのため、半導体チップCの周辺部まで全面に熱を伝えることができ、半導体チップC外周にはみだしたNCFのフィレット形状を安定させ、接合強度を高めることができる。また、半導体チップCを圧着する面の外周サイズを、実装のピッチサイズよりも小さくすることで、隣接半導体チップC間での干渉を抑えて本圧着を行うことができる。なお、アタッチメント9には、効率よく熱を伝えるために50W/mK以上の熱伝導率を有する材料を用いることが好ましい。
【0037】
アタッチメント9は、ヒータ8と分離されていて脱着できる構成であれば、安価であり、交換することで複数品種に対応できて好ましいが、一体型の構造であってもよい。
【0038】
樹脂シート供給機構2は、樹脂シート巻出部2Sおよび樹脂シート巻取部2Rを構成要素として、樹脂シート巻出部2Sに巻かれたテープ状の樹脂シートPをアタッチメント9と半導体チップCの間に供給した後に樹脂シート巻取部2Rで巻取るものである。樹脂シート供給機構2には、樹脂シート巻出部2Sと樹脂シート巻取部2R以外に、樹脂シートPを安定に搬送するためのガイドロール等があっても良い。また、アタッチメント9は、樹脂シートPを介して半導体チップCを吸着保持するので、アタッチメント9の吸着穴90に対応する位置の樹脂シートPにも開口部P0を設ける必要がある。樹脂シートPに開口部P0を設ける方法としては、後述のように、樹脂シート供給部2に穿孔機2H(図6参照)を用いて実施する。ただし、開口部P0を設ける方法はこれに限定されるものではなく、当初より開口部を有する樹脂シートPを用いて、開口部を吸着穴90に位置合わせする方法等であってもよい。ここで、樹脂シートPとしては、柔軟性を有しつつ、耐熱性に優れ、半導体チップに対する防着性にも優れている材料が好ましく、この特性を備えた材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂が好適である。また、厚みとしては、機械的強度を保持しつつも半導体チップへの熱伝導性も考慮して20〜50μm程度が好ましい。
【0039】
画像認識装置10は、画像によって半導体チップCと被接合物Sとの位置情報を取得するものである。画像認識装置10は、ステージ4に保持されている被接合物S上面の位置合わせマークと、アタッチメント9に保持されている半導体チップC下面の位置合わせマークとを画像認識して、被接合物Sと半導体チップCとの位置情報を取得するように構成されている。なお、被接合物Sの位置合わせマークとは、被接合物Sが配線基板S0のみの場合は配線基板S0に記された位置合わせマークを用い、被接合物Sが配線基板S0上に半導体チップCが積層されたものである場合は、配線基板S0に記された位置合わせマークまたは積層された最上層の半導体チップCの位置合わせマークを用いる。
【0040】
図4に示すように、制御部11は、実装装置1の構成要素を制御するものである。制御部11は、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御部11は、実装装置1の構成要素を制御するための種々のプログラムやデータが格納されている。
【0041】
制御部11は、ステージ4に接続され、ステージ4のX軸方向、Y軸方向、θ軸方向の移動量をそれぞれ制御することができる。制御部11は、ヒータ8に接続され、ヒータ8の温度を制御することが出来る。特に、制御部11は、熱圧着ヘッド7の加圧時における平均温度をNCFの硬化温度以上かつはんだの融点以上の温度からなる一定範囲内に維持することが出来る。制御部11は、熱圧着ユニット6に接続され、熱圧着ユニット6のZ軸方向の加圧力を制御することができる。制御部11は、アタッチメント9の吸着穴90に連通した減圧機構91に接続され、アタッチメント9の吸着状態を制御することができる。制御部11は、樹脂シート供給機構2に接続され、アタッチメント9直下の樹脂シートPを搬送することができる。制御部11は、画像認識装置10に接続され、画像認識装置10を制御し、半導体チップCと被接合物Sとの位置情報を取得することができる。
【0042】
以下では、図5から図10用いて、本発明に係る実装装置1による実装工程について説明する。
【0043】
まず、図5に示すように、樹脂シートPを、アタッチメント9の表面から離れた状態(図5(a))から、アタッチメント9表面に密着させる(図5(b))。この操作は、アタッチメント9と樹脂シートPの相対距離を縮めるのであれば、熱圧着ツール6により熱圧着ツール9を下降させても、樹脂シート供給機構2により樹脂シートPを上昇させてもよい。
【0044】
次に、アタッチメント9表面に樹脂シートPが密着した状態で、アタッチメント9の吸着穴90に対応する位置の樹脂シートに開口部P0を設ける過程を図6に示す。すなわち、穿孔機2Hの針部2HNを吸着穴90に位置合わせした状態(図6(a))から、穿孔機2Hを上昇させて(図6(a)〜図6(c))、樹脂シートPに貫通孔を形成してから穿孔機2Hを下降させる。こうすることで、アタッチメント9の吸着穴90に対応する位置の樹脂シートPに開口部P0が形成される(図6(d))。
【0045】
この状態で、図示しない半導体チップ受け渡し機構により、半導体チップCはアタッチメントツール9直下に配置される。この段階で減圧機構91を稼働することにより、半導体チップCはアタッチメントツール9直下の樹脂シートPに吸着する(図7(a))。
【0046】
以上の、樹脂シートPにアタッチメント9を密着させる過程から、樹脂シートPに半導体チップを吸着する過程において、ヒータ8の温度は、NCFからアウトガスが発生しない温度に設定されている。なお、NCFからアウトガスが発生しない温度は、NCFの組成によって異なるが、120℃以下が望ましく、更に望ましくは100℃以下である。
【0047】
この後、図7(b)のように、半導体チップC上面に突出した電極ETが樹脂シートPに埋没した状態になれば、ヒータ8の設定温度をNCFからアウトガスが発生する温度以上にしてもよい。すなわち、ヒータ8の設定温度をNCFからアウトガスが発生する温度としても、アウトガスがアタッチメント9表面や吸着穴90内部に付着することはない。したがって、図7(b)の状態になっていれば、ヒータ8の設定温度を、はんだBSの溶融かつNCFの硬化が生じるような温度にして、半導体チップCを被接合物Sに熱圧着して実装することが出来る。なお、図7(b)のような状態になっているか否かは、吸着穴90内部の圧力で知ることが出来る。図7(b)の状態であれば、減圧機構91の稼働により、吸着穴90内部は密閉状態であるので圧力低下は大(高真空側)となるが、これに対し、半導体チップC上面に突出した電極ETが樹脂シートPに埋没した状態にならなければ吸着穴90内部の圧力低下は小となる。このため、半導体チップCが樹脂シートPに密着した後の、吸着穴90内部の圧力を圧力計93で監視し、その測定値が所定の値以下になったら図7(b)の状態になったと判断することが可能である。なお、圧力計93のかわりに流量計を用いて、流力計の測定値が所定の値以下になったことで図7(b)の状態になったと判断することも可能である。
【0048】
なお、図7(b)において、電極ETが樹脂シートPに埋没する状態を、図8(a)のようなイメージ図で示しているが、実際には図8(b)に一例を示すように電極ETの周囲には隙間PVが形成されている。ただし、隙間PVの周囲で樹脂シートPは半導体チップCの上面に密着しているので、吸着穴90内部の圧力は低下する。
【0049】
図7(a)のような状態から、吸着穴90内部を減圧するのみで、半導体チップC上面に突出した電極ETが樹脂シートPに埋没して図7(b)のような状態になることもあるが、電極ETが樹脂シートPに僅かにめり込む程度の場合もある。このような状態であることは、吸着穴90内部の圧力が所定の値以下になっていないことで判断することが出来る。このような場合、半導体チップC周辺の気体は、アタッチメント9表面や吸着穴90内部に吸収される。このため、この段階で、ヒータ8の設定温度はNCFからアウトガスが発生しない温度にしておく必要がある。
【0050】
吸着穴90内部を減圧するのみで、半導体チップC上面の電極ETが樹脂シートPを埋め込んだ状態にならない場合、半導体チップCと被接合物の位置合わせを行った後、ヒータ8の設定温度をNCFからアウトガスが発生しない温度にした状態で、半導体チップCを熱圧着ユニット6によって技接合物Sに向かってZ軸方向に移動させる。こうすることにより、半導体チップC下面の電極EBはNCFに接触し(図9(a))、さらにZ軸下方向に圧力を加えると半導体チップCは上下両面からの力を受ける。この上下両面からの力により、半導体チップC上面に突出した電極ETは徐々に樹脂シートPにめり込み、樹脂シートPに埋没した状態に至る(図9(b))。ここでも、吸着穴90内部の圧力を圧力計93で監視していれば、その測定値が所定の値以下になったことで、半導体チップC上面に突出した電極が樹脂シートPに埋没したと判定できる。この段階で、ヒータ8の設定温度をNCFからアウトガスが発生する温度としてもアウトガスがアタッチメント9表面や吸着穴90内部に付着することはないので、ヒータ8の設定温度を、はんだBSの溶融かつNCFの硬化が生じるような温度にして、半導体チップCを被接合物Sに熱圧着して実装することが出来る(図9(c))。半導体チップCの被接合物Sへの実装が完了したら、ヒータ8による加熱を止めてアタッチメント9を降温するとともに、熱圧着ユニット6および樹脂シート供給機構2をZ軸方向で被接合物Sとは反対方向に移動させ、半導体チップCから樹脂シートPを剥離する(図9(d))。ここで、樹脂シートPは熱圧着後は半導体チップC上面に突出した電極ETが埋没した状態なので、アタッチメント9のみを上昇させると、樹脂シートPが冷却され、収縮により電極ETから離間できない状態になるので、アタッチメント9を密着した状態で上昇させるのが望ましい。
【0051】
この後、熱圧着ユニット6と樹脂シート供給機構2の相対移動により、樹脂シートPをアタッチメント9表面から離す(図10(a)、図10(b))。この段階で、アタッチメント9直下の樹脂シートPは、高温プロセスを経ていることから、物性的に熱劣化したり変形や汚れが生じている可能性がある。そこで、樹脂シート供給機構2を稼働させて(図10(c))、高温プロセスを経ていない樹脂シートPをアタッチメント9直下に配置する。
【0052】
以後は、アタッチメント9の温度が、NCFからアウトガスが発生する温度未満まで下がったら、実装工程を完了させるか、図5(b)のように樹脂シート供給機構2を稼働させ、樹脂シートPをアタッチメント9表面に密着させてから、次の半導体チップCの実装工程を進める。
【符号の説明】
【0053】
1 実装装置
2 樹脂シート供給機構
2S 樹脂シート巻出部
2R 樹脂シート巻取部
2H 穿孔機
2HN 針部
3 基台
4 ステージ
5 支持フレーム
6 熱圧着ユニット
7 熱圧着ヘッド
8 ヒータ
9 アタッチメント
10 画像認識装置
11 制御部
90 吸着穴
91 減圧機構
93 圧力計
C 半導体チップ
P 樹脂シート
S 被接合物
EB 半導体チップ下面の電極
ET 半導体チップ上面の電極
ES 被接合物上面の電極
NCF 非導電性フィルム(接着剤)
図1
図2
図3
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図5
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