(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864146
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】金型、及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 7/38 20060101AFI20210419BHJP
C04B 35/624 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
B28B7/38
C04B35/624
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-150299(P2020-150299)
(22)【出願日】2020年9月8日
(65)【公開番号】特開2021-54058(P2021-54058A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-175512(P2019-175512)
(32)【優先日】2019年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水木 一博
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−248108(JP,A)
【文献】
特開平10−264168(JP,A)
【文献】
特開昭62−278012(JP,A)
【文献】
特開2004−082461(JP,A)
【文献】
特開平02−062216(JP,A)
【文献】
特開2005−343131(JP,A)
【文献】
特開平09−052257(JP,A)
【文献】
特開2001−335371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00−7/46
B29C 33/56−33/60
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用スラリーを固化させることによって成形体を成形するために用いられる金型であって、
前記成形用スラリーが注入される第1凹部、前記第1凹部を画定する第1内壁面、及び前記第1凹部の周囲に配置される環状の第1合わせ面、を有する第1金型本体と、
前記第1内壁面上を被覆するとともに、前記第1合わせ面上を環状に延びる第1離型層と、
前記第1合わせ面と合わさる環状の第2合わせ面、を有する第2金型本体と、
を備え、
前記第1離型層は、前記第1内壁面から前記第1合わせ面まで連続して延び、
前記第1金型本体は、前記第1内壁面と前記第1合わせ面との間において面取り加工された第1角部を有しており、
前記第1離型層は、前記第1角部上を被覆しており、
前記第1角部上の第1離型層は、前記第1合わせ面上の第1離型層よりも厚い、
金型。
【請求項2】
前記第1合わせ面上の第1離型層の厚さは、前記第1内壁面上の第1離型層よりも薄い、
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記第1合わせ面上の第1離型層は、前記第1内壁面上の第1離型層よりも表面粗さが大きい、
請求項1又は2に記載の金型。
【請求項4】
前記第1合わせ面上の第1離型層は、前記第1内壁面上の第1離型層よりも表面粗さが小さい、
請求項1又は2に記載の金型。
【請求項5】
前記第2金型本体は、前記第1凹部と連通する第2凹部、及び前記第2凹部を画定する第2内壁面、を有し、
前記第2合わせ面は、前記第2凹部の周囲に配置される、
請求項1から4のいずれかに記載の金型。
【請求項6】
前記第2内壁面上を被覆するとともに、前記第2合わせ面上を環状に延びる第2離型層をさらに備える、
請求項5に記載の金型。
【請求項7】
前記第2離型層は、前記第2内壁面から前記第2合わせ面まで連続して延びる、
請求項6に記載の金型。
【請求項8】
前記第2金型本体は、前記第2内壁面と前記第2合わせ面との間において面取り加工された第2角部を有しており、
前記第2離型層は、前記第2角部上を被覆している、
請求項6又は7に記載の金型。
【請求項9】
前記第2角部上の第2離型層は、前記第2合わせ面上の第2離型層よりも厚い、
請求項8に記載の金型。
【請求項10】
前記第2合わせ面上の第2離型層の厚さは、前記第2内壁面上の第2離型層よりも薄い、
請求項6から9のいずれかに記載の金型。
【請求項11】
前記第2合わせ面上の第2離型層は、前記第2内壁面上の第2離型層よりも表面粗さが大きい、
請求項6から10のいずれかに記載の金型。
【請求項12】
前記第2合わせ面上の第2離型層は、前記第2内壁面上の第2離型層よりも表面粗さが小さい、
請求項6から10のいずれかに記載の金型。
【請求項13】
前記第2金型本体は、前記金型内部と外部とを連通する注入口及び排出口を有し、
前記第2離型層は、前記注入口及び前記排出口の内壁面上を被覆する、
請求項6から12のいずれかに記載の金型。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の金型に前記成形用スラリーを注入する工程と、
注入された前記成形用スラリーを固化させることによって前記成形体を成形する工程と、
を備える成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型、及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミックス部材は、例えば、電気化学素子用の支持体、フィルター、センサ、触媒担体、断熱材、防音材、防震材、及び生体材などの幅広い用途に利用されている。セラミックス部材は、所定形状のセラミックス成形体を焼成することによって作製される。
【0003】
セラミックス成形体の製造方法としては、鋳込み成形法の一つであるモールドキャスト法が知られている(例えば、特許文献1参照)。モールドキャスト法は、成形用スラリーを金型内に注入した後、成形用スラリーを固化(ゲル化)させることによってセラミックス成形体を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−335371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形体を取り出すことができるように、金型は2つ以上の金型本体に分割されている。このため、金型内に注入された成形用スラリーが金型本体同士の合わせ面から外部へ漏出するおそれがある。そこで、本発明は、成形用スラリーの漏出を抑制可能な金型、及び成形体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る金型は、成形用スラリーを固化させることによって成形体を成形するために用いられる。金型は、第1金型本体、第1離型層、及び第2金型本体を備えている。第1金型本体は、第1凹部、第1内壁面、及び第1合わせ面を有する。第1凹部は、成形用スラリーが注入される。第1内壁面は、第1凹部を画定する。第1合わせ面は、第1凹部の周囲に配置される。第1合わせ面は環状である。第1離型層は、第1内壁面上を被覆する。また、第1離型層は、第1合わせ面上を環状に延びる。第2金型本体は、第1合わせ面と合わさる環状の第2合わせ面を有する。
【0007】
この構成によれば、第1合わせ面に第1離型層が形成されている。このため、第1合わせ面と第2合わせ面との隙間を第1離型層によってより小さくすることができ、この結果、成形用スラリーの漏出を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、第1離型層は、第1内壁面から第1合わせ面まで連続して延びる。この構成によれば、第1内壁面と第1合わせ面との間の角部が面取り加工されている場合において、成形体のバリの発生を抑制することができる。
【0009】
好ましくは、第1金型本体は、第1角部を有している。第1角部は、第1内壁面と第1合わせ面との間において面取り加工された部分である。第1離型層は、第1角部上を被覆している。
【0010】
好ましくは、第1角部上の第1離型層は、第1合わせ面上の第1離型層よりも厚い。
【0011】
好ましくは、第1合わせ面上の第1離型層の厚さは、第1内壁面上の第1離型層よりも薄い。
【0012】
好ましくは、第1合わせ面上の第1離型層は、第1内壁面上の第1離型層よりも表面粗さが大きい。詳細には、第1合わせ面上の第1離型層は、第1内壁面上の第1離型層よりも算術平均粗さが大きい。
【0013】
好ましくは、第1合わせ面上の第1離型層は、第1内壁面上の第1離型層よりも表面粗さが小さい。詳細には、第1合わせ面上の第1離型層は、第1内壁面上の第1離型層よりも算術平均粗さが小さい。
【0014】
好ましくは、第2金型本体は、第2凹部及び第2内壁面を有する。第2凹部は、第1凹部と連通する。第2内壁面は、第2凹部を画定する。第2合わせ面は、第2凹部の周囲に配置される。
【0015】
好ましくは、金型は、第2離型層をさらに備える。第2離型層は、第2内壁面上を被覆する。また、第2離型層は、第2合わせ面上を環状に延びる。
【0016】
好ましくは、第2離型層は、第2内壁面から第2合わせ面まで連続して延びる。この構成によれば、第2内壁面と第2合わせ面との間の角部が面取り加工されている場合において、成形体のバリの発生を抑制することができる。
【0017】
好ましくは、第2金型本体は、第2角部を有している。第2角部は、第2内壁面と第2合わせ面との間において面取り加工された部分である。第2離型層は、第2角部上を被覆している。
【0018】
好ましくは、第2角部上の第2離型層は、第2合わせ面上の第2離型層よりも厚い。
【0019】
好ましくは、第2合わせ面上の第2離型層の厚さは、第2内壁面上の第2離型層よりも薄い。
【0020】
好ましくは、第2合わせ面上の第2離型層は、第2内壁面上の第2離型層よりも表面粗さが大きい。詳細には、第2合わせ面上の第2離型層は、第2内壁面上の第2離型層よりも算術平均粗さが大きい。
【0021】
好ましくは、第2合わせ面上の第2離型層は、第2内壁面上の第2離型層よりも表面粗さが小さい。詳細には、第2合わせ面上の第2離型層は、第2内壁面上の第2離型層よりも算術平均粗さが小さい。
【0022】
好ましくは、第2金型本体は、金型内部と外部とを連通する注入口及び排出口を有する。第2離型層は、注入口及び排出口の内壁面上を被覆する。
【0023】
本発明の第2側面に係る成形体の製造方法は、上記いずれかの金型に成形用スラリーを注入する工程と、注入された成形用スラリーを固化させることによって成形体を成形する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、成形用スラリーの漏出を抑制可能な金型及び成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態に係る金型100の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、金型100の断面図である。
【0027】
[金型100の構成]
図1に示すように、金型100は、鋳込み成形法の一つであるモールドキャスト法によって、成形用スラリーを固化(ゲル化)してセラミック成形体を成形するために用いられる。セラミック成形体は、焼成によりセラミックス部材となる。セラミックス部材としては、電気化学素子(例えば、燃料電池セル、電解セルなど)の支持体が挙げられるが、これに限らず幅広い用途に利用され得る。セラミック成形体の製造方法については後述する。金型100は、第1金型本体2a、第2金型本体2b、第1離型層3a、及び第2離型層3bを備える。
【0028】
[第1及び第2金型本体2a、2b]
第1金型本体2aは、第1凹部21a、第1内壁面22a、及び第1合わせ面23aを有する。第1凹部21a内には、成形用スラリーが注入される。第1凹部21aは、第1内壁面22aによって画定されている。第1内壁面22aは、第1底面221a及び第1側面222aを有している。第1側面222aは、第1底面221aの外周部から延びている。
【0029】
第2金型本体2bは、第2凹部21b、第2内壁面22b、及び第2合わせ面23bを有する。第2凹部21b内には、成形用スラリーが注入される。第2凹部21bは、第1凹部21aと連通している。第1金型本体2aと第2金型本体2bとは、第1凹部21aと第2凹部21bとが合わさるように連結される。この第1凹部21a及び第2凹部21bによって、金型100の内部空間が構成される。
【0030】
第2凹部21bは、第2内壁面22bによって画定されている。第2内壁面22bは、第2底面221b及び第2側面222bを有している。第2底面221bは、第1底面221aと対向している。第2側面222bは、第2底面221bの外周部から延びている。
【0031】
第2金型本体2bは、第1金型本体2a上に配置される。第2金型本体2bには、成形用スラリーを注入するための注入口24と、成形用スラリーの注入時に空気及び余剰の成形用スラリーを排出するための排出口25とが形成されている。第1金型本体2a及び第2金型本体2bは、例えば、金属(アルミニウム、アルミニウム合金、SUS鋼、ニッケル合金など)などによって形成されている。
【0032】
図2は、第1金型本体2aの平面図である。第1合わせ面23aは、環状である。第1合わせ面23aは、第1凹部21aの周囲に配置されている。すなわち、第1合わせ面23aは、第1凹部21aを囲むように配置されている。第1合わせ面23aは、第1凹部21aが開口する側に配置されている。本実施形態では、第1合わせ面23aは、第1金型本体2aの上面を構成している。
【0033】
図3は、第2金型本体2bの底面図である。第2合わせ面23bは、環状である。第2合わせ面23bは、第2凹部21bの周囲に配置されている。すなわち、第2合わせ面23bは、第2凹部21bを囲むように配置されている。第2合わせ面23bは、第2凹部21bが開口する側に配置されている。本実施形態では、第2合わせ面23bは、第2金型本体2bの下面を構成している。第2合わせ面23bは、第1合わせ面23aと合わさる。すなわち、第1及び第2離型層3a、3bが形成されていない状態では、第1合わせ面23aと第2合わせ面23bとは、対向している。
【0034】
[第1及び第2離型層3a、3b]
図1に示すように、第1離型層3aは、第1凹部21aの第1内壁面22a上を被覆している。また、第1離型層3aは、第1合わせ面23a上を被覆している。第1離型層3aは、第1合わせ面23a上を環状に延びている。すなわち、第1離型層3aは、第1凹部21aを囲むように配置されている。なお、第1離型層3aは、第1合わせ面23aの全体に形成されていてもよいし、第1合わせ面23aの内周端部のみに形成されていてもよいし、第1合わせ面23aの外周端部のみに形成されていてもよい。
【0035】
第1内壁面22a上に形成された第1離型層3aと第1合わせ面23a上に形成された第1離型層3aとは、互いに繋がっていることが好ましい。すなわち、第1離型層3aは、第1内壁面22aの第1側面222aから第1合わせ面23aまで連続して延びている。
【0036】
第1離型層3aの厚さは、例えば、それぞれ0.1〜100μm程度とすることができる。第1離型層3aは、第1内壁面22a上に離型剤を塗布することによって形成されている。第1離型層3aを構成する離型剤としては、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系などの被膜剤を用いることができる。
【0037】
第1離型層3aは、第1内壁面22a上に形成された第1離型層3aよりも、第1合わせ面23a上に形成された第1離型層3aの方が薄くなるように構成することができる。なお、第1内壁面22a上に形成された第1離型層3aと、第1合わせ面23a上に形成された第1離型層3aとは、実質的に互いに同じ厚さとすることもできる。
【0038】
第1離型層3aの弾性率は、第1金型本体2aの弾性率よりも小さい。第1離型層3aの算術平均粗さは、第1金型本体2aの算術平均粗さよりも小さい。
【0039】
第1合わせ面23a上の第1離型層3aは、第1内壁面22a上の第1離型層3aよりも表面粗さが大きい。なお、表面粗さとは、具体的には算術平均粗さである。第1合わせ面23a上、及び第1内壁面22a上の第1離型層3aの算術平均粗さは、触針式表面粗さ測定機(例えば、ACCRETECH社のSURFCOM 480A)によって測定することができる。
【0040】
詳細には、第1合わせ面23a上の第1離型層3aの算術平均粗さは、第1合わせ面23aの中央部を第1合わせ面23aが延びる方向に沿って全周に亘って10回測定し、その平均値とすることができる。
【0041】
また、第1内壁面22a上の第1離型層3aの算術平均粗さは、第1内壁面22aの第1底面221aの中央部を長手方向に沿って10回測定し、その平均値とすることができる。
【0042】
第2離型層3bは、第2凹部21bの第2内壁面22b上を被覆している。また、第2離型層3bは、第2合わせ面23b上を被覆している。第2離型層3bは、第2合わせ面23b上を環状に延びている。すなわち、第2離型層3bは、第2凹部21bを囲むように配置されている。なお、第2離型層3bは、第2合わせ面23bの全体に形成されていてもよいし、第2合わせ面23bの内周端部のみに形成されていてもよいし、第2合わせ面23bの外周端部のみに形成されていてもよい。
【0043】
第2内壁面22b上に形成された第2離型層3bと第2合わせ面23b上に形成された第2離型層3bとは、互いに繋がっていることが好ましい。すなわち、第2離型層3bは、第2内壁面22bの第2側面222bから第2合わせ面23bまで連続して延びている。
【0044】
第2離型層3bの弾性率は、第2金型本体2bの弾性率よりも小さい。第2離型層3bの算術平均粗さは、第2金型本体2bの算術平均粗さよりも小さい。なお、第2離型層3bの厚さ、材質、及び製造方法は、第1離型層3aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
第2合わせ面23b上の第2離型層3bは、第2内壁面22b上の第2離型層3bよりも表面粗さが大きい。なお、表面粗さとは、具体的には算術平均粗さである。第2合わせ面23b上、及び第2内壁面22b上の第2離型層3bの算術平均粗さは、触針式表面粗さ測定機(例えば、ACCRETECH社のSURFCOM 480A)によって測定することができる。
【0046】
詳細には、第2合わせ面23b上の第2離型層3bの算術平均粗さは、第2合わせ面23bの中央部を第2合わせ面23bが延びる方向に沿って全周に亘って10回測定し、その平均値とすることができる。
【0047】
また、第2内壁面22b上の第2離型層3bの算術平均粗さは、第2内壁面22bの第2底面221bの中央部を長手方向に沿って10回測定し、その平均値とすることができる。
【0048】
図4に示すように、第1金型本体2aの第1側面222aと第1合わせ面23aとの間の第1角部26aは、面取り加工されている。同様に、第2金型本体2bの第2側面222bと第2合わせ面23bとの間の第2角部26bも、面取り加工されている。
【0049】
ここで、第1離型層3aは、第1角部26aを覆っている。また、第2離型層3bは、第2角部26bを覆っている。このため、第1離型層3a及び第2離型層3bによって、第1角部26aと第2角部26bとの隙間を小さくすることができる。この結果、第1角部26aと第2角部26bとの隙間に起因して発生する成形体のバリを抑制することができる。
【0050】
図5に示すように、第1角部26a上の第1離型層3aは、第1合わせ面23a上の第1離型層3aよりも厚い。例えば、第1合わせ面23a上の第1離型層3aの厚さt1に対する、第1角部26a上の第1離型層3aの厚さt2の割合(t2/t1)は、1.01〜1.3程度である。
【0051】
なお、第1合わせ面23a上の第1離型層3aの厚さt1、及び第1角部26a上の第1離型層3aの厚さt2は、第1金型本体2aを切断し、その切断面において測定することができる。なお、第1金型本体2aを5カ所において切断し、各切断面において厚さt1、t2をそれぞれ測定し、その平均値を厚さt1、t2とする。
【0052】
第2角部26b上の第2離型層3bは、第2合わせ面23b上の第2離型層3bよりも厚い。例えば、第2合わせ面23b上の第2離型層3bの厚さt3に対する、第2角部26b上の第2離型層3bの厚さt4の割合(t4/t3)は、1.01〜1.3程度である。
【0053】
なお、第2合わせ面23b上の第2離型層3bの厚さt3、及び第2角部26b上の第2離型層3bの厚さt4は、上記第1合わせ面23a上の第1離型層3aの厚さt1、及び第1角部26a上の第1離型層3aの厚さt2の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
【0054】
(セラミックス成形体の製造方法)
次に、セラミックス成形体の製造方法について説明する。
【0055】
まず、第1金型本体2aの第1内壁面22a及び第1合わせ面23a上に離型剤を塗布する。また、第2金型本体2bの第2内壁面22b及び第2合わせ面23b上にも離型剤を塗布する。離型剤の塗布方法は特に制限されず、例えば、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法などを用いることができる。以上により、第1及び第2離型層3a、3bが形成される。
【0056】
次に、セラミックス粉末、分散媒、及びゲル化剤を混合して成形用スラリーを調製する。セラミックス粉末は、セラミックス部材に必要とされる特性に応じて適宜選択される。
【0057】
次に、第1及び第2離型層3a、3bを介して、第1合わせ面23aと第2合わせ面23bとが合わさるように第1金型本体2aと第2金型本体2bとを連結する。そして、第2金型本体2bの注入口24から第1及び第2凹部21a、21b内に成形用スラリーを注入する。
【0058】
次に、一定時間(例えば、0.1〜24時間)放置して、成形用スラリーを固化(ゲル化)させることによって、セラミックス成形体を形成する。そして、第1金型本体2aから第2金型本体2bを取り外して、セラミックス成形体を取り出す。
【0059】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0060】
上記実施形態では、第2金型本体2bは第2凹部21bを有しているが、第2金型本体2bの構成はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、第2金型本体2bは、第2凹部21bを有していなくてもよい。この場合、第1及び第2離型層3a、3bを介して第1合わせ面23aと対向する面が第2合わせ面23bとなる。
【0061】
上記実施形態では、第1金型本体2aは1つの部材で構成されていたが、第1金型本体2aは、複数の部材に分割されていてもよい。また、第2金型本体2bも複数の部材に分割されていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、第1金型本体2aが下に配置されて、第2金型本体2bが上に配置されていたが、この配置は特に限定されない。例えば、第1金型本体2aが上に配置されて、第2金型本体2bが下に配置されていてもよい。また、第1金型本体2aに注入口24及び排出口25が形成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、第2金型本体2bの第2内壁面22b及び第2合わせ面23b上に第2離型層3bが形成されていたが、第2離型層3bの構成はこれに限定されない。例えば、第2離型層3bは、第2合わせ面23b上に形成されていなくてもよい。また、第2離型層3bは、第2内壁面22b上に形成されていなくてもよい。
【0064】
図7に示すように、注入口24及び排出口25の内壁面上を第2離型層3bが被覆していてもよい。
【0065】
上記実施形態では、第1合わせ面23a上の第1離型層3aは、第1内壁面22a上の第1離型層3aよりも表面粗さが大きくなるように形成されているが、これに限定されない。すなわち、第1合わせ面23a上の第1離型層3aは、第1内壁面22a上の第1離型層3aよりも表面粗さが小さくてもよい。
【0066】
上記実施形態では、第2合わせ面23b上の第2離型層3bは、第2内壁面22b上の第2離型層3bよりも表面粗さが大きくなるように形成されているが、これに限定されない。すなわち、第2合わせ面23b上の第2離型層3bは、第2内壁面22b上の第2離型層3bよりも表面粗さが小さくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 金型
2a 第1金型本体
21a 第1凹部
22a 第1内壁面
23a 第1合わせ面
2b 第2金型本体
21b 第2凹部
22b 第2内壁面
23b 第2合わせ面
3a 第1離型層
3b 第2離型層