特許第6864275号(P6864275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6864275-燃料電池システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864275
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20210419BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20210419BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210419BHJP
   H01M 8/04044 20160101ALI20210419BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20210419BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20210419BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20210419BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210419BHJP
【FI】
   F24H1/00 631A
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 J
   H01M8/04044
   H01M8/04029
   H01M8/04014
   H01M8/04 N
   !H01M8/12 101
   !H01M8/10 101
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-46277(P2020-46277)
(22)【出願日】2020年3月17日
(62)【分割の表示】特願2016-127489(P2016-127489)の分割
【原出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2020-101359(P2020-101359A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真典
(72)【発明者】
【氏名】徳永 幸博
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−99073(JP,A)
【文献】 特開2015−75256(JP,A)
【文献】 特開2013−63364(JP,A)
【文献】 特開2011−242039(JP,A)
【文献】 特開2008−157517(JP,A)
【文献】 特開2007−242491(JP,A)
【文献】 特開2007−66833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/04014
H01M 8/04029
H01M 8/04044
H01M 8/10
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のオフガスとその冷却水とを熱交換するオフガス熱交換器と、
このオフガス熱交換器で加熱された冷却水で貯湯タンク内の貯留水を加熱する加熱用熱交換器と、
前記オフガス熱交換器と前記加熱用熱交換器との間で冷却水を循環させる循環回路とを備え、
前記循環回路を循環する冷却水として、ナトリウム型陽イオン交換樹脂を用いた硬水軟化装置により水中の硬度成分を除去した軟水を用いる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記硬水軟化装置は、前記貯湯タンクへの給水路に設けられ、
前記硬水軟化装置の下流側の前記給水路には、分岐路が設けられ、当該分岐路は、逆止弁を介して前記循環回路に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の廃熱を用いて温水を製造する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示される加熱装置(2)が知られている。この加熱装置(2)は、燃料電池セル(60)を備えた発電機(4)と、この発電機(4)のオフガス(排ガス)の廃熱を回収して第2熱交換器(14)および第1熱交換器(12)に供給する冷却水循環路(34)と、内部に給湯用水を蓄える蓄熱槽(16)と、この蓄熱槽(16)内の給湯用水を前記各熱交換器(12,14)との間で循環させて加熱する給湯用水循環路(8)と、蓄熱槽(16)に給湯用水として水道水を供給する給水路(39)と、蓄熱槽(16)からの出湯路(蓄熱槽出水路44,第1給湯路46,第2給湯路54など)と、この出湯路に設けられてガスの燃焼によって給湯用水を加熱する補助熱源機(51)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−165176号公報(段落[0019]−[0035]、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、給水路(39)からの給湯用水として水道水が用いられる。そのため、貯湯タンク(蓄熱槽16)からの出湯路に設けた加熱装置(補助熱源機51)に、スケール(水中の硬度成分が炭酸イオンやシリカなどと結合して析出したもの)を付着させて伝熱阻害や流路閉塞などのトラブルを生じさせるおそれがある。
【0005】
また、このようなスケールトラブルは、加熱装置に限らず、次に述べるような循環路の循環ポンプや、燃料電池の廃熱回収用の熱交換器においても生じ得る。
【0006】
すなわち、まず、温水のユースポイントにて即座に出湯できるように、ユースポイント付近(ユースポイントへの温水取出部)を通る循環路を設けておき、その循環路への給水として前記貯湯タンクからの温水を用いたい場合がある。この場合も、貯湯タンクへの給水が水道水であると、循環路に設けた循環ポンプにスケールを付着させてトラブルを生じさせるおそれがある。
【0007】
また、燃料電池の廃熱回収用の熱交換器において、燃料電池のオフガスと貯湯タンクからの通水とを熱交換する場合、オフガスが高温のため熱交換器において局所的な沸騰が起こり得るので、スケールトラブルを生じさせるおそれがある。このことは、貯湯タンク内の貯留水自体を前記廃熱回収用の熱交換器(つまりオフガスとの熱交換器)に循環させる場合に限らず、従来技術のように、貯湯タンク内の貯留水(給湯用水循環路8の水)と燃料電池のオフガスとの熱交換を、循環回路(冷却水循環路34)を介して行う場合にも起こり得る。つまり、燃料電池のオフガスとその冷却水とを熱交換するオフガス熱交換器と、このオフガス熱交換器で加熱された冷却水で貯湯タンク内の貯留水を加熱する加熱用熱交換器(第1熱交換器12,第2熱交換器14)との間で冷却水を循環させる循環回路(冷却水循環路34)を備える場合も、その循環冷却水が水道水である場合、特にオフガス熱交換器にスケールを付着させてトラブルを生じさせるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、貯湯タンク内の貯留水を加熱するための熱交換器、つまり燃料電池の廃熱回収用の熱交換器へのスケールの付着を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃料電池のオフガスとその冷却水とを熱交換するオフガス熱交換器と、このオフガス熱交換器で加熱された冷却水で貯湯タンク内の貯留水を加熱する加熱用熱交換器と、前記オフガス熱交換器と前記加熱用熱交換器との間で冷却水を循環させる循環回路とを備え、前記循環回路を循環する冷却水として、ナトリウム型陽イオン交換樹脂を用いた硬水軟化装置により水中の硬度成分を除去した軟水を用いることを特徴とする燃料電池システムである。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、循環回路の循環水(オフガス熱交換器と加熱用熱交換器との間の循環水)を介して、燃料電池のオフガス廃熱で貯湯タンク内の貯留水を加熱することができる。その際、循環回路の循環水として軟水を用いるので、オフガス熱交換器や加熱用熱交換器へのスケールの付着を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記硬水軟化装置は、前記貯湯タンクへの給水路に設けられ、前記硬水軟化装置の下流側の前記給水路には、分岐路が設けられ、当該分岐路は、逆止弁を介して前記循環回路に接続されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料電池システムによれば、貯湯タンク内の貯留水を加熱するための熱交換器、つまり燃料電池の廃熱回収用の熱交換器へのスケールの付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の燃料電池システムの実施例1を示す概略図である。
図2】本発明の燃料電池システムの実施例2を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の燃料電池システムの実施例1を示す概略図である。
本実施例の燃料電池システム1は、温水を循環させると共にユースポイントへの温水取出部2を有する循環路3と、この循環路3への給水を貯留すると共に燃料電池4の廃熱を用いて貯留水が加熱される貯湯タンク5と、この貯湯タンク5への給水路6に設けられる硬水軟化装置7とを備える。
【0016】
循環路3は、循環ポンプ8により温水を循環させる流路である。循環路3には、ユースポイントへの温水取出部2が設けられている。循環ポンプ8を作動させると、循環ポンプ8の吐出口から吐出された温水は、循環路3を介して循環ポンプ8の吸込口へ戻される。また、循環路3の中途に設けた一または複数の温水取出部2から、所望により適宜の配管を介して、各種のユースポイントへ温水を取り出すことができる。すなわち、ユースポイントの出湯口が開けられると、その出湯口から外部へ出湯することができる。
【0017】
温水のユースポイントは、特に問わないが、たとえば、家庭用の燃料電池システム1の場合、カラン、シャワーまたは浴槽などとされ、業務用の燃料電池システム1の場合、各種温水利用機器(たとえば厨房での出湯部)とされる。
【0018】
循環ポンプ8は、典型的には、常時運転を継続する。但し、循環ポンプ8は、場合により、温水取出部2での出湯時に、出湯を検知(たとえば出湯に伴う循環路3内の圧力低下を検知)して作動してもよい。
【0019】
循環路3内の循環水を加熱するために、循環路3には加熱装置9が設けられる。加熱装置9は、その構成を特に問わないが、たとえば、バーナ、電気ヒータまたは蒸気ヒータから構成される。本実施例では、加熱装置9は、循環ポンプ8の作動中(つまり循環路3に循環水を循環中)に作動する。また、加熱装置9は、その出口側水温を設定温度に維持するように制御される。これにより、温水取出部2において、設定温度の温水を取り出すことができる。
【0020】
なお、循環路3には、貯湯タンク5からの温水路10が接続されるが、加熱装置9は、循環路3の内、温水路10との接続部よりも下流で温水取出部2よりも上流に設けられるのが好ましい。図示例では、加熱装置9は、循環ポンプ8から温水取出部2への温水送り路3aに設けられている。但し、場合により、加熱装置9は、温水取出部2から循環ポンプ8への温水戻し路3bに設けられてもよい。
【0021】
循環路3には、好ましくはさらに、膨張タンク(図示省略)が設けられる。膨張タンクは、周知のとおり、循環路3内の循環水の体積変化を吸収する装置であり、循環水を大気開放する開放式でもよいし、大気開放することなく循環水の体積変化を吸収する機構を内蔵した密閉式でもよい。循環路3に膨張タンクを設けることで、循環水の温度変化に伴う体積変化を、膨張タンクで吸収することができる。
【0022】
貯湯タンク5は、循環路3への給水を貯留する。貯湯タンク5内の貯留水は、燃料電池4の廃熱を用いて加熱される。なお、貯湯タンク5は、本実施例では、密閉型タンク(つまり大気開放されないタンク)とされる。
【0023】
貯湯タンク5には、給水路6と温水路10とが接続されている。給水路6は、貯湯タンク5の下部に接続され、温水路10は、貯湯タンク5の上部に接続されるのが好ましい。そして、貯湯タンク5からの温水路10は、循環路3に接続される。その際、温水路10は、循環路3の内、温水取出部2よりも下流で加熱装置9よりも上流に接続されるのが好ましい。
【0024】
貯湯タンク5への給水路6には、硬水軟化装置7が設けられる。硬水軟化装置7は、周知のとおり、陽イオン交換樹脂などを用いて、水中の硬度成分(カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン)を除去する装置である。硬度成分を吸着した陽イオン交換樹脂は、その除去能力が喪失する前に、再生剤(たとえば塩化ナトリウム水溶液)を通液して再生される。また、貯湯タンク5への給水路6には、硬水軟化装置7の入口側または出口側に、給水ポンプ(図示省略)が設けられる。給水ポンプを作動させることで、貯湯タンク5ひいては循環路3へ給水することができる。
【0025】
前述したとおり、本実施例では、貯湯タンク5は、密閉型タンクとされる。この場合、貯湯タンク5内は水で満たされ、給水ポンプの作動により、貯湯タンク5から温水路10へ出湯しつつ、その出湯分の水を給水路6から貯湯タンク5へ給水することができる。つまり、循環路3の温水取出部2での出湯に伴い、貯湯タンク5から循環路3へ出湯されると、その出湯分と対応した量の水が、給水路6から貯湯タンク5へ供給される。そのために、給水ポンプを、常時作動させておけばよい。その場合でも、貯湯タンク5から循環路3への出湯がない限り、給水路6から貯湯タンク5への実際の給水はなされない。
【0026】
但し、給水ポンプは、場合により、貯湯タンク5への給水必要時にのみ作動するよう制御されてもよい。たとえば、給水ポンプは、二次側(出口側つまり貯湯タンク5側)の圧力を所定圧力に維持するように、オンオフ制御またはインバータ制御されてもよい。この場合、温水取出部2での出湯が開始されると、貯湯タンク5内の圧力が下がるので、それを検知して給水ポンプを作動させる。そして、温水取出部2での出湯が停止されると、給水ポンプの二次側の圧力が高まるので、それを検知して給水ポンプを停止させる。
【0027】
燃料電池4は、燃料電池本体11を備え、この燃料電池本体11は、図示しないが改質器やセルスタックなどを備える。燃料電池本体11には、原燃料(都市ガス)G、空気A、および水(改質水)Wが供給される。そして、周知のとおり、原燃料(メタンガスを主成分とする都市ガス)と水(水蒸気)とを改質器において水蒸気改質反応させることにより水素を生成し、その水素と空気中の酸素とをセルスタックにおいて化学反応させて発電する。発電した電気は、インバータで交流電流に変換され、各種の電気機器へ供給される。なお、燃料電池4の種類は、特に問わない。本実施例では、固体酸化物形(SOFC)が用いられるが、たとえば固体高分子形(PEFC)などを用いてもよい。
【0028】
燃料電池4の廃熱を用いて、貯湯タンク5内の貯留水が加熱される。典型的には、燃料電池4のオフガス廃熱を用いて、貯湯タンク5内の貯留水が加熱される。つまり、燃料電池4における発電時、セルスタックや改質器からはオフガス(排ガス)が排出されるが、そのオフガス廃熱を用いて、貯湯タンク5内の貯留水を加熱する。あるいは、これに代えてまたはこれに加えて、セルスタックの冷却器において、セルスタックからの廃熱を回収して、貯湯タンク5内の貯留水を加熱する。
【0029】
燃料電池4のオフガス廃熱で貯湯タンク5内の貯留水を加熱するために、本実施例では、燃料電池4のオフガス熱交換器12と、貯湯タンク5の加熱用熱交換器13とが、循環回路14で接続されている。
【0030】
オフガス熱交換器12は、燃料電池本体11からのオフガスとその冷却水とを混ぜることなく熱交換する。そのために、オフガス熱交換器12には、燃料電池本体11からオフガス路15を介してオフガスが通されると共に、循環回路14の循環水がオフガスの冷却水として通される。これにより、オフガス熱交換器12において、オフガスは循環冷却水により冷却され、オフガス中の水分の凝縮が図られる。一方、循環回路14の循環冷却水は、オフガス熱交換器12において、オフガスと熱交換することで加熱される。
【0031】
オフガス熱交換器12からのオフガスの出口側には、セパレータ16が設けられており、オフガス熱交換器12に通されたオフガスの気液分離が図られる。そして、気体は、外部へ排出され、凝縮水は、燃料電池本体11への給水として、供給ポンプ17を介して燃料電池本体11へ再供給可能とされる。
【0032】
加熱用熱交換器13は、図示例では貯湯タンク5内に配置され、貯湯タンク5内の貯留水とオフガス熱交換器12からの循環冷却水とを混ぜることなく熱交換する。これにより、加熱用熱交換器13において、貯湯タンク5内の貯留水が加熱される一方、循環回路14の循環冷却水は冷却される。
【0033】
循環回路14は、オフガス熱交換器12と加熱用熱交換器13との間で、水を循環させる。具体的には、加熱用熱交換器13からオフガス熱交換器12へは、冷却水送り路14aを介して冷却水が供給され、オフガス熱交換器12から加熱用熱交換器13へは、冷却水戻し路14bを介して冷却水が戻される。そして、冷却水送り路14a(または冷却水戻し路14b)に設けた循環用ポンプ18を作動させることで、加熱用熱交換器13とオフガス熱交換器12との間で冷却水を循環させることができる。なお、前述したとおり、オフガス熱交換器12は、燃料電池4のオフガスと循環回路14の循環冷却水との熱交換器であり、加熱用熱交換器13は、循環回路14の循環冷却水と貯湯タンク5内の貯留水との熱交換器である。
【0034】
本実施例では、冷却水送り路14aには、加熱用熱交換器13からオフガス熱交換器12へ向けて順に、ラジエータ19および循環用ポンプ18が設けられる。なお、循環用ポンプ18は、本実施例では冷却水送り路14aに設けられているが、場合により冷却水戻し路14bに設けられてもよい。
【0035】
ラジエータ19は、冷却ファン20を備え、所望時に冷却ファン20を作動させることで、オフガス熱交換器12へ供給する冷却水を空冷することができる。これは、燃料電池4において、いわゆる水自立を実現するためである。
【0036】
つまり、オフガス熱交換器12においてオフガスを露点温度以下に冷却して、オフガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水を前記改質器へ再供給(つまり水自立)するには、オフガス熱交換器12への供給水温が高まり過ぎるのを防止する必要がある。そこで、本実施例では、ラジエータ19を設けて、オフガス熱交換器12へ供給する循環冷却水の温度を第一目標温度以下に維持するのがよい。具体的には、冷却水送り路14aには、ラジエータ19の出口側に第一温度センサ21が設けられ、その検出温度を第一目標温度(たとえば40℃)に維持するように、ラジエータ19の通風量を調整する。ここでは、冷却ファン20のモータの駆動周波数ひいては回転数をインバータで制御することで、ラジエータ19の通風量を調整する。このようにして、循環回路14内の循環冷却水の熱余り時(オフガス熱交換器12への水温が所定以上の際)には、ラジエータ19の冷却ファン20を作動させて冷却水の水温を下げることで、燃料電池4の水自立を確実に図ることができる。
【0037】
さらに、循環回路14には、循環冷却水の循環流量調整手段が設けられる。本実施例では、循環流量調整手段として、流量調整弁22が、オフガス熱交換器12から加熱用熱交換器13への冷却水戻し路14bに設けられる。循環用ポンプ18の作動中、流量調整弁22の開度を調整することで、循環回路14内の循環流量を調整することができる。なお、流量調整弁22は、本実施例では、オフガス熱交換器12から加熱用熱交換器13への冷却水戻し路14bに設けられるが、場合により、加熱用熱交換器13からオフガス熱交換器12への冷却水送り路14aに設けられてもよい。また、循環流量調整手段は、循環用ポンプ18の駆動周波数ひいては回転数を変更するためのインバータから構成されてもよい。つまり、循環用ポンプ18をインバータ制御して、循環回路14内の循環流量を調整してもよい。
【0038】
貯湯タンク5内の貯留水を加熱用熱交換器13で安定して加熱するために、加熱用熱交換器13へ供給する循環冷却水の温度を第二目標温度に維持するのがよい。具体的には、冷却水戻し路14bには第二温度センサ23が設けられ、その検出温度を第二目標温度(たとえ60〜75℃)に維持するように、流量調整弁22の開度を調整して、循環回路14の循環流量を調整するのが好ましい。なお、循環流量調整手段を冷却水送り路14aに設ける場合でも、第二温度センサ23は冷却水戻し路14bに設けられて、加熱用熱交換器13への供給水温を所望に維持するよう制御される。
【0039】
ところで、循環回路14の循環水として、本実施例では、硬水軟化装置7からの軟水が用いられる。そのために、循環回路14には、給水路6からの分岐路24が接続されている。具体的には、給水路6には、硬水軟化装置7よりも下流において、分岐路24が分岐して設けられており、その分岐路24の先端部が、循環回路14に接続されている。この分岐路24には、逆止弁25を設けておくことが好ましい。基本的には、予め循環回路14内に硬水軟化装置7からの軟水が充填され、蒸発等による減少分が分岐路24から補給される。循環回路14に対する分岐路24の接続位置は、特に問わないが、図示例では、循環用ポンプ18の入口側に接続されている。
【0040】
次に、本実施例の燃料電池システム1の制御(運転方法)について説明する。以下に説明する一連の制御は、図示しない制御器を用いて自動でなされる。
【0041】
燃料電池4の運転に伴い、燃料電池システム1を稼働させる。これにより、循環回路14の循環用ポンプ18が作動すると共に、循環路3の循環ポンプ8が作動する。
【0042】
循環用ポンプ18の作動により、燃料電池4のオフガス熱交換器12と貯湯タンク5の加熱用熱交換器13との間で冷却水が循環される。これにより、オフガス熱交換器12において燃料電池本体11からのオフガスが冷却される一方、加熱用熱交換器13において貯湯タンク5内の貯留水が加熱される。この際、燃料電池4において水自立を実現するために、第一温度センサ21の検出温度を第一目標温度に維持するように、ラジエータ19の冷却ファン20のモータがインバータ制御される。また、貯湯タンク5内の貯留水を安定して加熱するために、第二温度センサ23の検出温度を第二目標温度に維持するように、流量調整弁22の開度が制御される。
【0043】
循環ポンプ8の作動により、循環路3に温水が循環されるが、この際、加熱装置9は、その出口側水温を目標温度に維持するように制御される。従って、温水取出部2には目標温度の温水が供給され、その温水は所望により温水取出部2からユースポイントへ出湯可能とされる。温水取出部2での出湯に伴い、それと対応した量の水が貯湯タンク5から循環路3へ補給され、その貯湯タンク5には給水路6から水が補給される。
【0044】
本実施例の燃料電池システム1によれば、貯湯タンク5や循環路3への給水として軟水を用いるので、循環路3の循環ポンプ8、加熱装置9(たとえば加熱装置9がバーナの場合にはその燃焼ガスと循環路3の通水との熱交換器)の他、貯湯タンク5の加熱用熱交換器13などに、スケールが付着するのが防止される。また、循環回路14の循環水にも軟水を用いるので、循環回路14の循環用ポンプ18の他、オフガス熱交換器12や加熱用熱交換器13などに、スケールが付着するのが防止される。特に、局所的な沸騰が起こり得るオフガス熱交換器12におけるスケールの付着を防止して、通水不良や伝熱不良などによるトラブルを未然に防止することができる。
【0045】
なお、硬水軟化装置7は、陽イオン交換樹脂の再生タイミングなどで、流路切替バルブ(再生剤の通液、押出、リンス等の工程を切替えるバルブ機構)の駆動のために電力を必要とする。そこで、硬水軟化装置7は、燃料電池4により発電された電力で駆動されるのが好ましい。このことは、硬水軟化装置7に限らず、たとえば、循環ポンプ8や循環用ポンプ18などについても同様である。いずれにしても、燃料電池4により稼働させることで、別途電源を用意する必要がない。また、商用電源に代えて、安価な都市ガスを使って燃料電池4により発電された電力を用いることで、低コストに運転することができる。
【実施例2】
【0046】
図2は、本発明の燃料電池システムの実施例2を示す概略図である。本実施例2の燃料電池システム1は、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0047】
前記実施例1では、貯湯タンク5からの温水は、循環路3を介して外部へ出湯可能とされたが、本実施例2では、循環路3は設けられない。すなわち、貯湯タンク5からの温水路10が、そのまま(つまり一方通行の状態で)ユースポイントに接続されている。そして、その温水路10に加熱装置9が設けられる。加熱装置9により、ユースポイントへの出湯温度を所望に維持することができる。その他の構成および制御は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【0048】
本発明の燃料電池システム1は、前記各実施例の構成(制御を含む)に限らず、適宜変更可能である。特に、燃料電池4の廃熱を用いて貯留水が加熱される貯湯タンク5と、この貯湯タンク5への給水路6に設けられる硬水軟化装置7と、前記貯湯タンク5からユースポイントへの水を加熱する加熱装置9とを備えるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0049】
たとえば、前記各実施例では、貯湯タンク5内に加熱用熱交換器13を設置して、循環回路14の循環水と貯湯タンク5内の貯留水とを間接熱交換したが、場合により、加熱用熱交換器13の設置を省略して、貯湯タンク5内の貯留水自体をオフガス熱交換器12との間で循環させてもよい。つまり、貯湯タンク5内の貯留水を、冷却水送り路14aを介してオフガス熱交換器12に供給して、オフガス熱交換器12においてオフガス廃熱を用いて加熱し、冷却水戻し路14bを介して貯湯タンク5へ戻す循環を繰り返してもよい。あるいは、場合により、加熱用熱交換器13を貯湯タンク5外に設置して、その加熱用熱交換器13に貯湯タンク5内の貯留水を循環させ、その循環水と循環回路14の循環冷却水とを間接熱交換してもよい。
【0050】
また、前記各実施例では、貯湯タンク5への給水は、給水路6に設けた給水ポンプにより制御する例を説明したが、給水路6に設けた給水弁の開閉により制御してもよい。たとえば、硬水軟化装置7の入口側に給水弁を設けて、その開閉により貯湯タンク5への給水を制御してもよい。
【0051】
さらに、前記各実施例では、貯湯タンク5は、密閉型タンクにより構成されたが、場合により、開放型タンクにより構成されてもよい。その場合、貯湯タンク5内の水位を設定水位に維持するように、給水路6からの給水を制御すればよい。たとえば、貯湯タンク5内の水位に基づき、給水路6に設けた給水ポンプを制御すればよい。そして、温水路10に送水ポンプを設け、温水取出部2での出湯時、その出湯分の水を補給するように、送水ポンプを作動させればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 燃料電池システム
2 温水取出部
3 循環路(3a:温水送り路、3b:温水戻し路)
4 燃料電池
5 貯湯タンク
6 給水路
7 硬水軟化装置
8 循環ポンプ
9 加熱装置
10 温水路
11 燃料電池本体
12 オフガス熱交換器
13 加熱用熱交換器
14 循環回路(14a:冷却水送り路、14b:冷却水戻し路)
15 オフガス路
16 セパレータ
17 供給ポンプ
18 循環用ポンプ
19 ラジエータ
20 冷却ファン
21 第一温度センサ
22 流量調整弁
23 第二温度センサ
24 分岐路
25 逆止弁
A 空気
G 原燃料
W 水
図1
図2