【文献】
薯蕷饅頭「千代重(ちよかさね)」:リブラン/ゆり邑:富山県富山市,薯蕷饅頭「千代重(ちよかさね)」:リブラン/ゆり邑:富山県富山市,2009年 1月 1日,https://wagashi.okaimono-review.jp/lisblanc-chiyokasane.html
【文献】
ザ・おはぎパン,cookpad,日本,2011年 3月27日,https://cookpad.com/recipe/1105214
【文献】
さつまいも入り!3層おはぎの作り方,nanapi ナナピ さつまいも入り!3層おはぎの作り方,日本,2013年 3月14日,https://nanapi.jp/ja/83870
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1層の食材が、流動性を有する餡であって、かつ前記第3層の餡が、前記第1層の食材よりも粘度の高いペースト状の餡であることを特徴とする請求項1に記載の餡団子パン。
【背景技術】
【0002】
餡等の食材を餅状の生地によって被覆してなる団子は、我が国の伝統的な和菓子であり、今なお、様々なトッピングやアレンジが加えられ、人々に愛されている。団子のアレンジとしては、例えば、団子をさらに他の生地によって被覆して、積層構造を有する団子等が様々に提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、餡等の具を餅状の第1の生地で被覆し、さらに加熱して潰したイモ類等を主材料とする第2の生地で第1の生地を被覆して、加熱調理することで得られる米芋生地パイが提案されている。特許文献1の米芋生地パイは、加熱して潰したイモ類等を揚げて調理した、いわゆる「揚げイモ」であって、塩辛や肉類、海鮮等の食材を餡として、餅状の生地で被覆してなる団子を揚げイモの中に入れることにより、餡そのものや餡由来の水分が染み出してくることがなく、しかも風味豊かな揚げイモを提供することができるとされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された米芋生地パイでは、表面の層である第2の生地にバター等の油脂類、牛乳、鶏卵、および生クリーム等が添加されており、加熱調理したとしても、第2の生地の表面に油分が多量に存在するため、手づかみで喫食すると手指に油分が付着して食べにくいという問題があった。
【0005】
一方、本発明者は、流動性を有する甘酒餡を餅状の生地で被覆してなる甘酒団子を製造している。この甘酒団子では、うるち米を製粉することで得られる「うるち粉」に水、砂糖や水飴等を加えて練り、加熱調理することで得られる求肥を餅状の生地として用いている。甘酒団子は、製造直後には求肥が柔らかく、しかも求肥の中に包餡された甘酒餡がみずみずしく、消費者に新しい食感と美味しさを提供することができる。
【0006】
しかしながら、この甘酒団子では、製造後に餅状の生地が硬くなるのが比較的早く、食感が悪くなりやすいという問題があった。
【0007】
そこで、上記の問題を解決するために、本発明者は、上記のうるち粉に、もち米を製粉することで得られる「もち粉」を混合した求肥で甘酒餡を被覆した甘酒団子も製造している。うるち粉ともち粉を併用した求肥によって甘酒餡を被覆した甘酒団子では、製造後時間が経過しても餅状の生地が硬くなりにくいが、一方で、うるち粉を用いた求肥と比較して、喫食時に餅状の生地が歯に粘着しやすくなるという課題があった。このため、甘酒団子の食感や風味には改善の余地が残されていた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の餡団子パンについて詳細に説明する。
【0021】
本発明の餡団子パンは、少なくとも以下の4層構造を有する餡団子パンであって、第1層の食材と、第1層の食材を被覆するアルファ化デンプンを含有する餅状の第2層と、餅状の第2層を被覆する第3層の餡と、第3層の餡を被覆する第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地の加熱処理層を有している。
【0022】
「団子」とは、餅または餅状の生地を略球形に丸めて、成形することで得られる和菓子の一種であり、単に餅を丸めたものであってもよいし、丸めた餅の表面に餡がかけられていたり、餅の内部に餡が包餡されているものを意味する。特に、餡をかけられていたり、餅の内部に餡が包餡されているものを餡団子と呼称する。
【0023】
「アルファ化デンプン」とは、水分を含んだデンプンが加熱されることによってデンプン粒が吸水して膨張し、粘性が増大、糊化したデンプンを意味する。また、餅状の第2層は、時間経過とともに冷却され、餅状の第2層の中に含まれるアルファ化デンプンが次第に加熱調理前の状態に戻って硬くなる。これを「アルファ化」に対して「ベータ化」あるいは「老化」と呼称する。
【0024】
本発明の餡団子パンでは、まず、第1層の食材が、アルファ化デンプンを含有する餅状の第2層によって被覆されている。すなわち、第1層の食材は、一般的な餡入り餅でいう餡に相当し、アルファ化デンプンを含有する餅状の第2層は、餡を被覆する餅に相当する。本発明の餡団子パンにおいては、第1層の食材が、流動性を有する餡であることも好ましく考慮される。
【0025】
第1層の食材において、「流動性」の用語は、液状またはゲル状であって、側壁を備えた容器上に載置しておいたり、何らかの生地で被覆、封入しなければ、滴下、流失してしまうような物理的特徴を意味する。
【0026】
第1層の食材としては、種子、果肉、黒蜜および甘酒のうちの少なくとも1種以上を含んでいることが好ましく考慮される。
【0027】
種子としては、例えば、胡麻や胡桃、ピーナッツ、アーモンド等のナッツ類等が例示される。これらのナッツ類等は、すりつぶしてペースト状に加工しておくことが好ましい。ここで、「ペースト状」の用語は、水分含量が少なく、皿のように周囲を囲う壁面を有していない食器上に載置していても、滴下、流失することのない半固形状の物理状態を意味する。
【0028】
また、ナッツ類等の一部は、すりつぶさずに固形感を残した状態で、上記のペースト状に加工したナッツ類等の餡に混ぜ合わせることで食感の変化をもたらすことができる。
【0029】
果肉としては、果実をカットしたもの、フードミキサー等を用いて果実をピューレ状にしたもの、果実をジャムに加工したもの等様々な調理加工状態のものを好適に用いることができる。果実としては、例えば、例えば、イチゴ、マンゴー、リンゴ、モモ、オレンジ、カキ等が例示される。これらの果実は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
このような果実は、例えば、台風等で落果して表面に傷がつき、生食用として販売することができなくなった場合であっても、加工して餡団子パンの餡として活用することができる。
【0031】
黒蜜としては、例えば、黒砂糖を水に溶かして煮詰め、とろみをつけたものや、精糖の途中段階で得られる糖蜜等が例示される。また、メープルシロップ等の樹木由来の蜜や蜂蜜も用いることができる。
【0032】
甘酒としては、アルファ化したデンプンを米麹と混合し約60℃の温度下に約8時間保温してアルファ化したデンプンを糖化発酵させて製造した甘酒および酒造工程で生じる酒粕をお湯で溶かし、砂糖等を加えて製造する甘酒のいずれについても好適に用いることができる。また、甘酒の原料となるデンプンは米に限らず、ニンジン、カボチャ、サツマイモ、クリ等野菜や種子由来のデンプンを用いることも考慮される。米以外の野菜や種子等由来のデンプンを糖化発酵させて作った甘酒は、野菜や種子等由来の濃厚な旨みがあるため、新規の風味・食感を消費者に提供することができる。
【0033】
このような甘酒の原料として用いられる野菜は、規格外の形状や軽微な傷により出荷できない場合であっても、加工して餡団子パンの餡として活用することができる。
【0034】
これらの第1層の食材としての流動性を有する餡については、ゼラチンや寒天、増粘多糖類等を添加してゼリー状にすることも好ましく考慮される。流動性を有する餡を一旦ゼリー状とすることにより、餡団子パンの製造工程における流動性を有する餡の取り扱いを容易にすることができる。また、後述のパン生地の焼成時やドーナッツ生地の油ちょう時には、一旦ゼリー状となった第1層の食材が加熱されて、流動性を有する状態に戻ることも好ましく考慮される。
【0035】
このような第1層の食材および第1層の食材としての流動性を有する餡は、アルファ化デンプンを含有する餅状の第2層によって被覆されている。
【0036】
餅状の第2層は、例えば、うるち米、もち米等の米を主要な材料とし、炊飯した米や蒸かした米を搗くことで得られる。また、餅状の第2層としては、例えば、白玉粉や上新粉等の米粉に水またはお湯、砂糖、水飴等を加えて加熱調理することで得られる求肥であってもよい。本発明においては、餅状の第2層が求肥であることが好ましく考慮される。求肥の原料として用いる米粉としては、例えば、もち米由来のもち粉や白玉粉、あるいはうるち米由来の上新粉や上用粉等が好ましく用いられる。また、上記の米粉や砂糖等が予め混合された求肥用のミックス粉や市販の求肥生地を用いることも可能である。これらの求肥の原料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、うるち粉の含有量が高い求肥を用いることが考慮される。具体的には、例えば、うるち粉:もち粉=2:1〜4:1程度の配合比率が例示されるが、この限りではない。
【0037】
また、餅状の第2層には、あらかじめ食紅やクチナシ色素等の食用色素を添加していてもよい。このような食用色素を用いて着色した餅状の第2層を内包している餡団子パンでは、喫食時や複数人で餡団子パンを分ける際にその断面が鮮やかであり、見た目にも美しく、食欲を増進させることが期待される。
【0038】
求肥の作成方法は、各種公知の方法を適用することができる。例えば、本発明の実施形態においては、うるち粉、もち粉、上白糖、食塩を混合し蒸練機にて撹拌後餅つき機でつき上げて求肥を得ることが例示される。
【0039】
餅状の第2層による、第1の食材の被覆(包餡)方法は特に限定されず、手包み成形や各種の自動包餡機を使用した方法等が例示される。第1層の食材がペースト状に加工された場合や、第1の食材としての流動性を有する餡があらかじめゼリー状に加工されている場合に限らず、自動包餡機を用いて、製造工程の省力化、自動化を図ることができる。
【0040】
なお、餅状の第2層としてもち粉の含有量の高い求肥や、搗き餅を用いた場合、自動包餡機による包餡が困難となるため、うるち粉の含有量が高い求肥を用いることが好ましく考慮される。
【0041】
餅状の第2層によって第1層の食材を被覆する際には、餅状の第2層を窄めて閉じ口が形成されることが考慮される。この閉じ口は、餡団子の鉛直上向きに配置されることが好ましく考慮される。閉じ口を鉛直下向きに配置して加熱調理した場合、前記閉じ口より、加熱された第1層の食材が漏出し流失するおそれがある。
【0042】
次いで、第1層の食材を被覆した餅状の第2層の外側表面を第3層の餡で被覆する。
【0043】
第3層の餡は、第1層の食材よりも粘度の高いペースト状の餡であることが好ましく考慮される。なお、第1層の食材および第3層の餡の粘度については、例えば、通常の食品加工現場、食品製造工程において使用される粘度計等の測定機器を用いて測定することが例示される。
【0044】
第3層の餡は、穀物または野菜由来の餡であることが好ましく考慮される。
【0045】
第3層の餡としては、例えば、小豆や黒豆、赤福豆等の豆類、ヒエ、キビ、アワ、アマランサス等の雑穀類をはじめとする穀物由来の餡が例示される。第3層の餡として小豆餡を用いる場合には、つぶあんであってもよいし、こしあんであってもよい。
【0046】
また、第3層の餡としては、例えば、サツマイモ、カボチャ、ニンジン等の野菜由来の餡も例示される。この他、クリ等の種子由来の餡も好適に使用することができる。中でも、サツマイモ餡やクリ餡は食味が良好であって、しかも粘度調整が容易であるため、第3層の餡として好ましく用いられる。
【0047】
また、第3層の餡中においては、例えば、野菜や果実を完全にペースト状にはせず、一部原形をとどめる状態で混合してあってもよい。
【0048】
これらの穀物または野菜由来の餡は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、上記のサツマイモ餡と一部原形をとどめたクリ餡とを混ぜ合わせると、栗金団のような食感および食味となり、大変に美味である。
【0049】
このような第3層の餡で、第1層の食材および餅状の第2層を被覆することにより、後述の第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地の加熱処理層の調理時に、第1層の食材および餅状の第2層から水分が抜けることを抑制し、第1層の食材のみずみずしさを保つことができる。
【0050】
また、本発明の餡団子パンにおいては、第3層の餡が、第1層の食材を被覆する餅状の第2層の表面積の少なくとも3分の2を被覆することが好ましく考慮される。第3層の餡が餅状の第2層の表面積の少なくとも3分の2をすれば、第3の餡の量が比較的少なく、餅上の第2層の表面全体を被覆していない場合であっても、第1層の食材を漏出させることなく餡団子パンを製造することができる。一方、第3層の餡が餅状の第2層の表面積の3分の2未満しか被覆できない場合、加熱調理時に、第3層の餡によって被覆されていない餅状の第2層の一部から、第1層の食材が漏出、流失するおそれがある。
【0051】
第3層の餡による第1層の食材および餅状の第2層の被覆方法は、特に限定されず、手包み成形や各種の自動成形機を使用した方法等が例示される。
【0052】
第3層の餡は、餅状の第2層を窄めて形成された閉じ口を被覆していることが好ましく考慮される。これにより、加熱調理時に閉じ口から第1の食材が漏出、流失することを確実に防ぐことが可能となる。
【0053】
なお、餅状の第2層の表面全体を第3層の餡で被覆する場合も、閉じ口を鉛直上向きに配置することが、第1の食材を被覆した餅状の第2層、すなわち餡団子の安定性等の面から好ましく考慮される。
【0054】
次いで、第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地の加熱処理層によって、第1層の食材、餅状の第2層および第3層の餡を被覆する。ここで、「加熱処理」の用語には、焼成や油で揚げる油ちょう等が含まれている。
【0055】
本発明の餡団子パンに用いるパン生地としては、一部の例外を除いて、製パンに通常使用されるパン生地であれば、特に制限されることなく使用することができる。例えば、食パン生地、菓子パン生地、米粉パン生地等が例示される。
【0056】
このようなパン生地を用いて、第1層の食材、餅状の第2層および第3層の餡を被覆し、焼成することで本発明の餡団子パンが得られる。餡団子パンにおいては、最外層である第4層が焼成されたパン生地であることから、喫食時に手指が油脂でべたつくことがなく、しかも餅状の生地に被覆された餡がこぼれて手指を汚すことがなく非常に食べやすい。また、餡団子パンにおいては、最外層である第4層が焼成されたパン生地である場合、冷めても餅状の生地としての求肥が歯に粘着する感覚がほとんどないレベルまで抑制されており、しかも第1層の食材のみずみずしさが保持されており消費者に新規の食感を備えた餡団子パンを提供することができる。さらにまた、餡団子パンにおいては、常温での保管によって2、3日経過した場合であっても、餅状の生地としての求肥中のデンプンが老化して硬化することがない。
【0057】
なお、第4層のパン生地またはドーナッツ生地の加熱処理層としてドーナッツ生地を用いた場合には、加熱した油で揚げたり、表面に油を塗布して焼成することにより、一般の餡ドーナッツ風に仕上げることが可能である。この場合には、手づかみでの喫食時には油脂や砂糖等によって手指を汚してしまうことがあるものの、一方で、風味や食感については、パン生地を用いた場合と同様に極めて良好である。
【0058】
また、本発明の餡団子パンでは、パン生地またはドーナッツ生地の食感と内部の餅状の生地の食感、さらには餅状の生地に被覆された流動性を有する餡のみずみずしさとの相乗効果が得られ、消費者に新規な美味しさを提案することができる。
【0059】
パン生地またはドーナッツ生地の加熱処理の条件としては、通常のベーカリー製品と同様に、例えば、170℃〜240℃の範囲内で焼成や油ちょうすることが例示される。加熱処理温度が上記範囲内であれば、パン生地またはドーナッツ生地への火のとおりが良く、しかも焦げの発生も抑えられるため、食味の低下を抑制することができる。なお、加熱処理時間に関しては、加熱処理温度に応じて適宜変更することが可能である。
【0060】
加熱処理された餡団子パンの表面には、小麦粉等の穀粉や、コーンスターチなどのデンプン類等を散布することも考慮される。また、一般的なアンパンのように、焼成したパンの表面略中央部にゴマやケシの実を載せてトッピングすることも考慮される。また、一般的な餡ドーナツのように、粉砂糖をまぶすことも考慮される。
【0061】
このようにして得られる餡団子パンについて、
図1に図示する。すなわち、餡団子パン1の中心部には、第1層の食材2がアルファ化デンプンを含有する餅状の第2層3によって被覆されて存在している。さらに、餅状の第2層3は第3層の餡4によって被覆されており、第3層の餡4は第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地の加熱処理層5によって被覆されている。
【0062】
図2は、本発明の餡団子パン1の別の態様を示した概要図である。
図2(a)(b)(c)に示すように、餡団子パン1の製造工程において、餅状の第2層3によって第1層の食材2を被覆する際には、餅状の第2層3を窄めて閉じ口3aを形成する。そして、
図2(a)に示すように、第3層の餡4が、餅状の第2層3の表面積の少なくとも3分の2を被覆し、しかも、第1層の食材を被覆する餅状の第2層の閉じ口3aを被覆する。次いで、
図2(b)に示すように、第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地5を用いて、餅状の第2層3ごと第3層の餡4を被覆する。これを、第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地5内部において、閉じ口3aが鉛直上向きとなるように配置して、焼成や油ちょう等の加熱処理を行うことにより、餡団子パン1が得られる。
【0063】
上記のとおり、餅状の第2層3として、低アミロース米であるうるち米を原料とする、デンプンのアルファ化が不十分な求肥を用いて第1の食材2が被覆された団子様食品を、第3層の餡4および第4層としてのパン生地またはドーナッツ生地5で被覆して、加熱処理することにより、求肥で被覆された団子様食品の形状を損なうことなく、求肥中のデンプンがアルファ化されると考えられる。
【0064】
また、水分含量が高く、流動性を有する第1の食材としての餡を、餅状の第2層としての求肥で被覆し、さらに第3層の餡4で包むことにより、団子様食品の破裂を抑制し、しかも流動性を有する餡由来の水分とパン生地またはドーナッツ生地5の焼成時の加熱により、求肥のアルファ化が促進されると考えられる。
【0065】
したがって、餅状の生地が硬くなりにくく、しかも喫食時に餅状の生地が歯に粘着することがなく、餅状の生地に被覆された餡のみずみずしさが保たれて、美味しさと新しい食感とを兼ね備えた餡団子パンが実現される。
【0066】
以下に本発明の餡団子パンの製造例を実施例として示すが、本発明の4層構造を有する餡団子パンは実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例)
還元水飴20g、食用油10g、水300gを混合し、蒸練機に注ぎ込んで97℃に加熱し、うるち粉300g、もち粉100g、上白糖150g、トレハロース100gをあらかじめ混合した原料粉を蒸練機に投入し撹拌後、70℃に冷却して、餅つき機でつき上げて求肥生地を得た。
【0068】
第1層の餡として、米を粥状に炊飯してアルファ化したデンプンを、米麹を用いて糖化発酵させた甘酒を加熱して、加工でん粉を加えて粘度調整し、室温まで冷却した後、さらに冷蔵庫内で冷却して甘酒餡を得た。得られた甘酒餡約8gを、上記の求肥生地で包餡機を用いて被覆して直径4センチ、高さ2.5センチ、重さ25gの甘酒団子を製造した。
【0069】
次いで、小豆あん(こしあん)10gで甘酒団子を被覆し、さらに菓子パン生地35gを用いて被覆、成形した。これを、クッキングシートを敷いた天板の上に間隔を開けて並べて、180〜190℃に加熱したオーブン内で9〜10分間焼成して4層構造を有する餡団子パンを得た。
【0070】
(比較例)
比較例として、甘酒団子の表面に小豆あんを被覆しなかったこと以外は、実施例と同様にして、3層構造を有する餡団子パンを得た。
【0071】
(餡団子パンの官能評価)
実施例および比較例の餡団子パンについて、モニターの男女に試食してもらい、以下の基準で餡団子パンの食感および食味を評価した。
【0072】
モニターとして、30代の男性5名、女性5名、40代の男性5名、女性5名、50代の男性5名、女性5名の合計30名に試食してもらい、以下の基準で餡団子パンの食感および食味を評価した。
【0073】
[餅状の生地の硬さの評価]
A:各世代のモニター10名中8名以上が求肥の歯切れが良好であり、歯に粘着する感覚がなかったと評価した。
B:各世代のモニター10名中5名〜7名が求肥の歯切れが良好であり、歯に粘着する感覚がなかったと評価した。
C:各世代のモニター10名中4名以下が求肥の歯切れが良好であり、歯に粘着する感覚がなかったと評価した。
【0074】
[求肥の歯切れの評価]
A:求肥の歯切れが良好であり、歯に粘着する感覚が全くなかった。
B:求肥の歯切れが良好であり、歯に粘着する感覚がほとんどなかった。
C:求肥の歯切れが良好とは言えず、歯に粘着する感覚があった。
【0075】
[餡のみずみずしさの評価]
A:各世代のモニター10名中8名以上が求肥に被覆された餡がみずみずしく、美味しいと評価した。
B:各世代のモニター10名中5名〜7名が求肥に被覆された餡がみずみずしく、美味しいと評価した。
C:各世代のモニター10名中4名以下が求肥に被覆された餡がみずみずしく、美味しいと評価した。
【0076】
結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示したように、実施例の4層構造を有する餡団子パンについては、各世代のモニター10名中8名以上が、餅状の生地が硬くなりにくく、しかも試食時に求肥が歯に粘着することがなく、求肥に被覆された餡のみずみずしさが保たれていて美味しいと評価した。
【0079】
しかしながら、比較例の3層構造を有する餡団子パンについては、餅状の生地が硬くなりにくく、しかも試食時に求肥が歯に粘着することがないと評価したのは、各世代のモニター10名中4名以下であった。