(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記光触媒材料は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、及び表面に金属化合物を担持した材料のうちの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
本実施形態の化粧シートは、
図1や
図2などのように、原反(基材層)を構成する基材シート2の一方の面側(表面側)の表層に、樹脂層からなる表面保護層5を有する化粧シート1である。
表面保護層5及び基材シート2の少なくとも一方には、光触媒材料が添加されている。
【0021】
<光触媒材料について>
添加される光触媒材料は、光触媒に対して不活性な材料、例えば光触媒に対して不活性な無機材料によって、部分的に被覆されて被覆光触媒材料となり、更にその被覆光触媒材料がベシクルに内包された状態で、原反(基材層)や表面保護層を構成する樹脂内に添加されている。
【0022】
ここで、本明細書における光触媒とは、結晶の価電子帯と伝導帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(波長で言うと短波長)の光を照射したときに価電子帯にある電子が伝導帯へ励起されて、伝導帯に伝導電子を、価電子帯に正孔を生成する作用のことである。このうち電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドイオン(O2−)を生成し、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)などの活性種を生成する。これら活性種により、VOCやウイルス、菌などの汚染物質を酸化還元分解する物質である光触媒材料としては、紫外線や可視光線の照射によって光触媒活性を示すものであれば特に限定はされないが、可視光線により光触媒機能を示すものが好ましく、特に波長約430nm〜約830nmの光に対して光触媒機能を示す材料が好ましい。
【0023】
光触媒材料としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の1種もしくは2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物などがある(特開2007−268523号公報に開示)。特に酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化錫、酸化バナジウム等の酸化物が好ましい。さらに、上記酸化物に上記金属元素から選ばれる1種類以上の金属元素を担持して用いることもできる。上記酸化物のうち、酸化チタン、酸化タングステンがさらに好ましい。酸化チタンにおいては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンに上記金属元素を1種類以上担持したものが好ましい。なお、光触媒材料は、単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。光触媒材料の粒径は、光触媒作用の観点から1nm〜200nm範囲内のナノサイズのものを用いることが好ましい。以下の例示では、光触媒材料の粒径がナノサイズとして説明する。
【0024】
なお、光触媒を励起するための光源としては、光触媒を励起できる波長を出すものであれば特に限定されないが、太陽光、蛍光灯、白熱灯、水銀灯、UVライト、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ケミカルライト、殺菌ランプ、ブラックライト等が挙げられる。
光触媒材料を部分的に被覆する無機材料は、光触媒材料に光を照射したときの光触媒機能に対して変化しない(不活性)ものであれば特に限定されない。
【0025】
上記無機材料として、ゼオライト、アパタイト、アミン系化合物などの多孔質材料を用いた場合、その無機材料が吸着剤としても機能するので好ましい。
アパタイトは、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、弗化アパタイト、リン酸三カルシウム、または、リン酸八カルシウムのいずれか1種類もしくはこれらから選んだ2種類以上の混合物でも構わない。
【0026】
アパタイト、ゼオライトは多孔質であり、特にアパタイトは菌やカビ、ウイルスなどの構成物質である蛋白質や糖質などと親和性(生体親和性)が大きいため、菌やカビ、ウイルスを、より効率的に吸着できる。
無機材料による被覆は、光触媒材料の表面全面を被覆すると、汚染物質(分解対象物質)が光触媒材料と接触できない。そのため、光触媒材料の表面の一部が露出するように被覆する。ここで、露出した光触媒材料の表面は、樹脂や有機膜と接触することもある。接触した部分に光が照射されると、その部分の樹脂や有機膜は分解されてしまうが、無機材料が被覆している部分は分解されることは無く、樹脂中に光触媒材料が剥離することなく固定される。一方、光触媒材料が露出しすぎると樹脂や有機膜が光触媒材料と接触する部分が増え、樹脂中に光触媒材料が固定されにくくなる。逆に、被覆率が高すぎると光触媒機能が十分に発揮されない。このような観点から、被覆率は20%以上90%以下が好ましい。さらに好ましくは、30〜70%であり、45〜60%が最適である。光触媒材料に対する不活性な材料による部分的な被覆位置は、被覆位置が対称的に配置されるような被覆や、被覆が連続している形態が好ましい。
【0027】
無機材料で部分被覆した光触媒材料である被覆光触媒材料の製造方法は、例えば、特許第3550652号公報に開示されている方法を用いれば良い。または、光触媒材料が酸化チタンの場合、酸化チタン材料を水酸化カルシウムとリン酸イオンの両方を含有する擬似体液中に浸漬し、静置することで酸化チタン材料の表面に水酸化カルシウムとリン酸イオンとの反応で生成するアパタイトを析出させることもできる。
【0028】
更に、本実施形態の被覆光触媒材料は、ベシクルで内包されてベシクル化することで、光触媒ベシクルの状態とする。ベシクルとしては、リン脂質からなる外膜を具備するリポソームが例示出来る。
ここで、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞であり、内部に液相を含むものを指す。そして、外膜がリン脂質のような生体脂質から構成されるベシクルをリポソームと称する。
【0029】
被覆光触媒材料をベシクルで内包、すなわちベシクルを構成する有機膜等の外膜形成物質で、被覆光触媒材料を被覆してカプセル化する方法は、特に限定されないが、例えばBangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法によって被覆する方法や、超臨界逆相蒸発法によって被覆する方法などがある。
Bangham法は、フラスコなどの容器にクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解する。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、光触媒粒子を含んだ分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させてベシクルを得る方法である。エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代わってフィルタを通過させることによりベシクルを得る方法である。水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌して分散させてベシクルを得る方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、光触媒粒子を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを作り、当該エマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、この冷却・加熱を繰り返すことによってベシクルを得ることが可能である。
【0030】
好ましくは、超臨界逆相蒸発法でベシクル化することが好ましい。超臨界逆相蒸発法を用いると、光触媒材料が他の方法でベシクル化したものよりも凝集が非常に少なく、樹脂中に光触媒材料を均一にしかも高濃度で添加することが可能である。
超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を構成する物質を均一に溶解させた混合物中に、封入物質としての光触媒材料を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての被覆光触媒材料を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。この超臨界逆相蒸発法は、例えば本発明者等が提案している特表2002/032564号公報、特開2003−119120号公報、特開2005−298407号公報および特開2008−063274号公報(以下、「超臨界逆相蒸発法公報類」と称する)に開示されているものであり、当該超臨界逆相蒸発法公報類に記載の方法および装置を用いれば良い。
【0031】
なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。
【0032】
光触媒材料に対して超臨界逆相蒸発法によりベシクル化処理を施すことによって、ナノサイズの光触媒材料がカプセル内に内包させた構造とされており、これによって光触媒材料の粒子同士が凝集することを防いで樹脂材料への高い分散性を実現している。原反(基材層)や表面保護層を構成する樹脂材料内においては、すなわち化粧シート内においては、当該ベシクルのカプセル膜の一部が崩壊して光触媒材料がカプセル膜から露出した状態となっている。
【0033】
ベシクルの外膜を構成するリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0034】
また、リポソームの外膜には、少なくともリン脂質などの生体脂質が含まれていればよいので、生体脂質と下記のようなその他の物質との混合物から外膜を形成するようにしてもよい。
ベシクルの外膜を形成するその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などが挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を使用することができる。上記の物質から適宜選択して用いることにより、例えば、水溶性ではない内包物を水溶性の分散剤で包んだベシクルとすることにより、水溶性の溶媒などに水溶性ではない内包物を均一に分散させることができる。
【0035】
<光触媒材料を添加する基材シートについて>
上記のような光触媒材料を添加する樹脂製の基材シート2は、例えば着色した熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、またポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂、などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。
【0036】
基材シート2を着色する場合には、化粧シート1を貼り合せる基材Bを隠蔽し、また絵柄模様層3の下地色として色相を適宜、選択することができる。例えば熱可塑性樹脂のシーティングに際して、顔料などの着色剤を混合、練りこむなどしておくことで着色ができる。あるいは絵柄模様層3を設ける前にベタインキ層として、コーティングあるいは印刷の手法を用いて絵柄模様層3の下に着色層を設けることもできる。
【0037】
基材シート2の配合する顔料としては無機顔料が好ましい。無機顔料は、難燃性の顔料が好ましく、そのような無機顔料としては、大きく分けて天然無機顔料と合成無機顔料とがある。天然無機顔料としては、土系顔料、焼成土系顔料、鉱物性顔料などが挙げられる。合成無機顔料としては、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、リン酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料などが挙げられる。そして、これらの天然無機顔料および合成無機顔料の中から、1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、有機顔料は、不燃性が損なわれるため好ましくない。
【0038】
上記無機顔料もまた、ベシクル化して熱可塑性樹脂中に配合されることが好ましい。とくに上記ベシクルはリポソームが特に好ましい。
ここで、化粧シート1を貼り付けた裏面側からのVOCやカビ対策としては、光触媒材料は、基材シート2の最下面(裏面)付近に存在していた方が好ましい。基材シート2の上の方(表面側)にあると、分解対象物質と光触媒材料とが接触しづらくなるため、効果がその分悪くなる可能性がある。
【0039】
基材シート2は、そのままでもよいが、延伸加工を施した延伸樹脂シートを用いた方が表面積が大きくなる。このため、より光触媒機能が発揮できるばかりでなく、難燃性もさらに向上する。延伸は、一軸延伸でも二軸延伸でもよい。
ここで、一般的に樹脂シートは、延伸樹脂シートと無延伸樹脂シートに大別される。延伸樹脂シートは、無延伸樹脂シートを融点以下の温度に加熱しながら縦横2方向(二軸延伸)、或いはそのいずれか1方向(一軸延伸)に引き伸ばして配向させたシートである。延伸によるシートの分子鎖は、一軸延伸では1方向に、二軸延伸では面方向に配向し、無延伸樹脂シートの物性改善が可能となる。また、延伸することにより、腰(剛度)、透明性、引張り強さ、耐収縮性は増加し、光沢、防湿性、バリア性は改善するが、伸び、引裂き強度は減少する。
【0040】
例えば、二軸延伸樹脂シートを製造するには、先ず例えば、溶融した樹脂組成物に上記構成の光触媒材料を混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイのダイオリフィスからシート状に押し出して、未延伸樹脂シートを製造する。Tダイのダイオリフィスから押し出されたシートは、静電印加キャスト法などにより、冷却ドラムに密着して巻き付けて冷却する。次に、例えば温度90〜140℃などの延伸可能な温度以上に加熱して、縦横にそれぞれ例えば3.0〜5.0倍の倍率で延伸する。二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法などの同時二軸延伸法でも、ロールとテンターなどによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。一軸延伸樹脂シートを製造する場合には、未延伸樹脂シートを延伸可能な温度に加熱して、ロールとテンターなどによって、縦横の一方の軸方向に例えば3.0〜5.0倍の倍率で延伸する。
【0041】
<光触媒材料を添加する表面保護層について>
表面保護層5の主成分である樹脂組成物としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを用いることができ、光触媒材料(被覆光触媒材料)との密着性を考慮するとアクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物であるアクリルウレタン系樹脂を用いることが好ましい。主成分とは、例えば表面保護層を構成する樹脂の70質量%以上、好ましくは90質量%以上を指す。
【0042】
無機材料で部分的に被覆した光触媒材料(被覆光触媒材料)は、表面保護層の最表面付近に存在していた方がよい。表面保護層の下の方にあると、分解対象物質と光触媒材料とが接触しづらくなるため、十分に効果が発揮できないおそれがある。
被覆光触媒材料の添加量は、化粧シートの耐摩耗性、後加工性、透明性を損なわなければ特に限定されないが、表面保護層5の主成分である樹脂組成物100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下が好ましい。0.1質量部より少ないと、良好な触媒性能が得られないし、30質量部より多いと透明性が損なわれる。より好ましくは、10質量部以上30質量部以下である。
【0043】
表面保護層の膜厚は、好ましくは被覆光触媒材料の平均粒子径の20〜90%の膜厚にすることが好ましく。35〜80%がより好ましく、最も好ましいのは、45〜65%である。平均粒子径に対して薄くし過ぎると、光触媒材料が均一に高分散しているとはいえ、摩擦等により、脱落が発生してしまうおそれがある。
表面保護層が複数層で形成されている場合には、最表層の第1層目の表面保護層には光触媒材料を入れなくても良くて、表面側から第2層目の最表面にのみ光触媒材料を添加し、上記の膜厚になるように形成する。この構成の場合、最表層の第1層目の表面保護層で光触媒が保護されると共に、表面側に光触媒材料が存在するので、光触媒機能を効率的に発揮できる。第2層目に比べて第1層目が薄いことが好ましい。
【0044】
ここで、本願発明は、少なくとも基材シート2若しくは表面保護層5を構成する樹脂に上記構成の光触媒材料を添加すればよく、化粧シート1を構成する他の層、例えば透明樹脂層等に対しても上記構成の光触媒材料を添加しても構わない。
本実施形態の化粧シート1の製造方法は、例えば、光触媒材料の表面が部分的に光触媒に対して不活性な材料で被覆された被覆光触媒材料を準備し、上記被覆光触媒材料がベシクルで内包された光触媒ベシクルを、表面保護層及び基材シートの少なくとも一方を構成する樹脂に添加する工程を有する。
被覆光触媒材料の作製(製造)方法や、光触媒ベシクルの作製(製造)方法は、上述の通りである。
以下に、本発明に基づく、上記のようなベシクル化された光触媒材料を添加した化粧シート1の具体的な構成例を図に従って詳細に説明する。
【0045】
<第1実施形態の化粧シート>
第1実施形態の化粧シート1は、
図1に示すように、複数の樹脂層からなる化粧シート1である。
図1では、化粧シート1が、木質ボード類、無機質系ボード類または金属板などの基材Bに貼り合わされて化粧板となっている状態を例示している。化粧シート1は、
図1に示すように、基材B側から、プライマー層6、原反(基材層)を構成する基材シート2、絵柄模様層3および表面保護層5が、この順に積層された構成となっている。なお、基材シート2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3と表面保護層5との間の接着性に問題があれば、基材シート2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3と表面保護層5との間にプライマー層を適宜設けてもかまわない。
図1は、基材シート2の裏面にプライマー層を設けた場合を例示している。
【0046】
本実施形態は、ベシクル化された被覆光触媒材料(光触媒ベシクル)が、表面保護層5及び基材シート2の少なくとも一方を構成する樹脂に添加され、その光触媒ベシクルが添加された樹脂から、表面保護層5及び基材シート2の少なくとも一方が作製されている。以下の説明では、少なくとも表面保護層5には、ベシクル化された被覆光触媒材料を添加するとして説明する。勿論、基材シート2側だけにベシクル化された被覆光触媒材料を添加する構成でも構わない。
【0047】
[基材シート]
基材シート2に上記構成の光触媒材料を添加しない場合には、基材シート2としては、材質は特に限定されるものではなく、一般的な化粧材用の基材であれば何でも適用することができる。基材シート2の材料としては、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などが挙げられる。特に、基材シート2として紙または熱可塑性樹脂フィルムを適用した場合には、巻取り方式による連続大量生産が可能となり可撓性の化粧シートに対して本発明を好適に適用することができる。
【0048】
基材シート2に上記構成の光触媒材料を添加する場合には、基材シート2の主成分である樹脂は、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、基材シート2は延伸加工が施された延伸樹脂シートであることがさらに好ましい。主成分とは、例えば基材シート2中の樹脂の70質量%以上、好ましくは90質量%以上を指す。
上記のベシクル化した被覆光触媒材料の含有量は、基材シート2を構成する樹脂100質量部に対し、7質量部以上400質量部以下が好ましい。より好ましくは、100質量部以上400質量部以下である。7質量部より少ないと、難燃性が悪くなり、また意匠性(隠蔽性)も悪くなる。また、400質量部より多いと、樹脂の強度が損なわれ、後加工性が悪くなる。
【0049】
[絵柄模様層]
絵柄模様層3は、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。基材シート2が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で絵柄模様層3の形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
【0050】
絵柄模様は、床材や壁材などの使用箇所に応じた意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば大理石などの石材の床をイメージしたものであれば大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
【0051】
絵柄模様層3の材料としては、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
【0052】
[表面保護層]
表面保護層5の材料としては、表面の保護や艶の調整としての役割を果たす樹脂組成物であればよく、熱硬化型樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを用いることができる。
本実施形態の表面保護層5においては、上述のように、当該樹脂組成物に対して、ベシクル化された被覆光触媒材料が添加されている。当該樹脂組成物としては、無機材料を被覆した光触媒材料との密着性を考慮するとアクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物であるアクリルウレタン系樹脂を用いることが好ましい。
【0053】
アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリレートモノマーに、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じてこれらと共重合可能な、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの重合性モノマーとを共重合させてなるアクリル骨格を主鎖とし側鎖に水酸基を有するポリマーが挙げられる。
【0054】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。
これらのアクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物であるアクリルウレタン系樹脂を用いることにより、化粧シートとして必要な硬度と耐後加工性を保持した樹脂組成物とすることができる。さらに、当該樹脂組成物が適度な柔軟性を備えることによって、ベシクル化された無機材料を被覆した光触媒材料との優れた密着性が得られるので、摩耗による無機材料を被覆した光触媒材料の脱落を抑制することを可能とする。
【0055】
[プライマー層]
プライマー層6としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シート1の裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
第1実施形態の化粧シート1においては、基材シート2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は25μm〜200μmの範囲内とすることが好適である。
【0056】
<第2実施形態の化粧シート>
第2実施形態では、化粧シート1として、
図2に示すように、第1実施形態の化粧シート1に対し更に、表面保護層5の下に透明樹脂層4を具備した態様となっている。なお、積層方法および透明樹脂層4の層数は、目的とする化粧シート1の性能などに応じて適宜選択することができる。
【0057】
すなわち、第2実施形態の化粧シート1は、
図2に示すように、基材Bに面する側から、プライマー層6、隠蔽層8、原反(基材層)を構成する基材シート2、絵柄模様層3、接着層7(感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層などで構成)、透明樹脂層4、及び表面保護層5がこの順に積層された構成となっている。また、
図2では、意匠性を向上させるために、透明樹脂層4の表面保護層5側の面にエンボス模様4aを設けた場合を例示している。
【0058】
ここで、基材シート2の材料としてオレフィン系の樹脂を用いる場合には、表面が不活性な状態となっていることが多いので、基材シート2と基材Bとの間に、プライマー層6を設けることが好ましい。この他にも、オレフィン系材料からなる基材シート2と基材Bとの接着性を向上させるために、プライマー層6を設ける代わりに若しくは併用して、基材シート2の表裏面に対し、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の表面改質処理を施しても良い。
第2実施形態における、基材シート2、絵柄模様層3、表面保護層5、及びプライマー層6の材料などは、第1実施形態と同様の構成のものを用いることができる。
【0059】
[透明樹脂層]
透明樹脂層4としては、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4、4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0060】
なお、透明樹脂層4には、必要に応じて熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
【0061】
[造核剤]
透明樹脂層4に、ナノサイズの造核剤が添加されていることが好ましい。特に、ナノサイズの造核剤が、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形で添加されていることが好ましい。造核剤をベシクル化することで、造核剤の分散性を向上でき、造核剤の凝集を抑制して均一に分散できる。
透明樹脂層4を構成する樹脂に対して造核剤ベシクルを添加することにより、樹脂の結晶化度を向上させることで、造核剤の添加による光の散乱を抑制して、極めて高い透明性を有する透明樹脂シートを得ることができる。このようにナノサイズの造核剤を添加することで、透明樹脂シートの表面の耐傷性や後加工性をさらに向上させることが出来る。
【0062】
造核剤ベシクルは、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法がより好ましい。
【0063】
超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または臨界点以上の温度条件下もしくは臨界点以上の圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したナノサイズのベシクル(カプセル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下もしくは臨界点以上の圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0064】
具体的には、超臨界二酸化炭素とリン脂質と内包物質としての造核剤の混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンが生成する。その後、減圧すると二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤ナノ粒子の表面を単層膜で覆ったナノベシクルが生成する。この超臨界逆相蒸発法によれば、単層膜のベシクルを生成することができるので、極めて小さいサイズのベシクルを得ることができる。
【0065】
ナノサイズの造核剤を内包した造核剤ベシクルの平均粒径は、可視光波長(400〜750nm)の1/2以下、より具体的には200nm〜375nm以下とされていることが好ましい。なお、造核剤ベシクルは、樹脂組成物中においてはベシクルの外膜が破れてナノサイズの造核剤が露出している状態で存在している。造核剤の粒径を上記の範囲内のように極小サイズとすることにより、光の散乱を小さくして高い透明性を有する表面保護層5を実現することができる。
【0066】
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルーおよびタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
以上のように、造核剤ベシクルを添加することで、後加工性を向上させつつ、透明性、すなわち化粧シートの意匠性をさらに向上させることができる。
【0067】
[接着層]
接着層7としては、発熱性試験時の熱量を考慮して、可能な限り薄く積層されていることが望ましい。接着剤としては、可能な限り燃焼時の熱量が少ないものが望ましく、それ以外は特に限定されるものではない。
【0068】
[隠蔽層]
化粧シート1に隠蔽性を付与する場合には、基材シート2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、基材シート2などは透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けて隠蔽性を付与したりすることができる。
図2では、隠蔽層8を別途、設けた場合を例示している。
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を保たせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。この隠蔽層8に対して、上述のような、ベシクルで内包したナノサイズの被覆光触媒材料を添加しても良い。
【0069】
本実施形態の化粧シート1を形成するに当たり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート法およびドライラミネート法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。エンボス模様4aを形成する場合には、一旦、上記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法または冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成する方法などを採用することができる。
第2実施形態の化粧シート1においては、基材シート2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μm、接着層7は1μm〜20μm、透明樹脂層4は20μm〜200μm、表面保護層5は3μm〜20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm〜250μmの範囲内とすることが好適である。
【0070】
<作用など>
本実施形態の化粧シート1においては、ベシクル化された無機材料を被覆した光触媒材料を添加した表面保護層5を備えることにより、意匠性、耐後加工性、耐候性および耐摩耗性に優れ、揮発性有機化合物(VOC)やニオイの原因物質などを分解可能な化粧シートを提供することを可能とする。
【0071】
また、表面保護層5をベシクル化された、無機材料を被覆した光触媒材料を添加した樹脂組成物から形成することにより、表面保護層5を形成する当該樹脂組成物の主成分であるアクリルウレタン系樹脂中において光触媒材料が凝集することがなく均一に高分散し、しかも高濃度で樹脂中へ添加することが可能となるので、無機材料を被覆した光触媒材料の数が増え、さらに表面積が増大して光触媒機能を格段に向上させることができる。
さらに、樹脂組成物に対し、ベシクル化され且つ無機材料を被覆した光触媒材料を均一に高分散させることにより、アクリルウレタン系樹脂と無機材料を被覆した光触媒材料との密着性が向上し、摩擦による当該光触媒材料の脱落を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態の化粧シートによれば、上記構成の光触媒材料を基材シートに添加することで、基材シートの主成分である樹脂組成物中において光触媒材料が凝集することがなく高濃度で均一に高分散させることができるので、光触媒の表面積が増大して光触媒機能を向上させることができる。さらに、光触媒材料を高分散させることにより、樹脂組成物と光触媒材料との密着性が向上するので摩擦による脱落が少なくなるとともに、樹脂組成物中の各光触媒材料の粒子が極小サイズとされるので意匠性、後加工性、難燃性に優れた化粧シートを提供することを可能とする。難燃性に優れた化粧シートとなるのは、原反中に添加された無機材料の量が増えるためである。
【0073】
また、本実施形態によれば、上述のように化粧シートの裏面側に位置する基材シートに対し、高密度で光触媒材料を含有させることが出来るため、VOCガスが室内に放出される前に、光触媒作用により効果的に分解させることが出来ると共に、化粧シートと家屋の間から発生するカビ等にも効果を奏するようになる。
【0074】
<本実施形態の効果>
(1)化粧シートは、複数の樹脂層からなる化粧シートにおいて、ベシクル化された光触媒材料が添加された樹脂からなる表面保護層を少なくとも有する。
この構成によれば、表面保護層の主成分である樹脂組成物中において光触媒材料が凝集することがなく高濃度で均一に高分散させることができるので、光触媒の表面積が増大して光触媒機能を向上させることができる。さらに、光触媒材料を高分散させることにより、樹脂組成物と光触媒材料との密着性が向上するので摩擦による脱落が少なくなるとともに、樹脂組成物中の各光触媒材料の粒子が極小サイズとされるので意匠性、後加工性、耐候性に優れた化粧シートを提供することを可能とする。
【0075】
(2)化粧シート1の裏面側の層である基材シート2が、ベシクル化された被覆光触媒材料を添加した樹脂から作製される。
この構成によれば、基材シート2の主成分である樹脂組成物中において光触媒材料が凝集することがなく高濃度で均一に高分散させることができるので、光触媒の表面積が増大して光触媒機能を向上させることができる。さらに、光触媒材料を高分散させることにより、樹脂組成物と光触媒材料との密着性が向上するので摩擦による脱落が少なくなるとともに、樹脂組成物中の各光触媒材料の粒子が極小サイズとされるので意匠性、後加工性に優れた化粧シート1を提供することを可能とする。
【0076】
また、基材シートに高密度で光触媒材料を添加出来るので、基材シート中の無機材料が増える結果、化粧シート1の難燃性(不燃性)も向上させることが出来る。また、基材シート中に添加する無機顔料についてもベシクル化することで、無機顔料も高密度で添加可能となり、更に難燃性を向上させることにも繋がる。
ここで本発明を適用することで、例えば基材シートの樹脂成分100質量部に対して光触媒材料を7質量部以上含有することが可能となる。
【0077】
また、上述のように化粧シート1の裏面側に位置する基材シート2に対し、高密度で光触媒材料を含有させることが出来るため、VOCガスが室内に放出される前に、光触媒作用により効果的に分解させることが出来ると共に、化粧シート1と家屋の間から発生するカビ等にも効果を奏するようになる。
【0078】
(3)ベシクルが、リン脂質からなる外膜を具備するリポソームであることが好ましい。
ベシクルの外膜をリン脂質から構成することによって、添加する層の主成分である樹脂組成物とベシクルとの相溶性を良好なものとすることが出来る。樹脂中に対し、より均一に光触媒材料を分散できるばかりでなく、樹脂中に光触媒材料をより高濃度に添加することが可能となり、光触媒機能の更なる向上が可能となる。
【0079】
(4)光触媒材料を部分被覆する材料が無機材料であり、その無機材料が、多孔質材料であることが好ましい。
この構成によれば、光触媒材料を光触媒機能に対して不活性な無機材料で被覆することにより、上記有機膜もしくは樹脂と光触媒材料が接触しても、直接それらと接触するのは光触媒機能に対して不活性な無機材料であるので、樹脂や有機膜等の劣化が抑えられる。
【0080】
(5)多孔質材料は、ゼオライト、アパタイト、多孔質シリカ、から選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。
この構成とすることで、吸着性能も付与でき、光触媒機能(抗菌、消臭効果など)の性能が向上する。
(6)光触媒材料を可視光下で光触媒活性とすることが好ましい。
この構成によれば、室内などの蛍光灯などの室内照明でも効率よく光触媒機能を発揮することができ、揮発性有機化合物(VOC)やニオイの原因物質、ウイルスや菌などの分解対象物質を分解することができる。
【0081】
(7)表面保護層の主成分である樹脂組成物が、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましい。
この構成とすることで、表面保護層を構成する樹脂組成物中に添加される光触媒材料の粒子との良好な密着性を実現して、当該粒子が脱落するのを抑制することを可能とする。
【0082】
(8)基材シート2は、延伸加工を施した延伸樹脂シートであることが好ましい。
この構成によれば、更に表面積が増え、消臭、抗菌効果が増大するとともに、基材シート2の厚みが薄くなり、さらに樹脂分が抑えられて難燃性が向上する。
ここで、延伸により基材シート2の厚みが薄くなることによって、基材の表面付近に存在する光触媒粒子が表面に位置する割合が増加する結果、光触媒として機能する実効的な表面積は増える。
【0083】
本実施形態の化粧シート1によれば、無機材料で被覆した光触媒材料をさらに有機膜等の外膜形成物質で被覆した、光触媒材料を基材シート2に添加し、延伸加工により、延伸樹脂シートとした場合には、耐後加工性、耐摩耗性、難燃性に優れ、揮発性有機化合物(VOC)やニオイの原因物質などを分解可能な化粧シート1を提供することを可能とする。
【0084】
(9)透明樹脂層4に、ナノ化処理された造核剤が添加されていることが好ましい。
造核剤にナノ化処理を施すことによって、透明樹脂層4に対する造核剤の分散性を著しく向上させることができる。これによって、後加工性を維持したまま、透明性を向上させることができる。
【0085】
(10)表面保護層に光触媒材料が添加され、その光触媒材料の表面が部分的に光触媒に対して不活性な材料で被覆された被覆光触媒材料となっており、表面保護層の主成分である樹脂組成物が、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物であり、表面保護層への光触媒材料の添加量は、上記表面保護層の主成分である樹脂組成物100質量部に対し、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
例えば、上記のように光触媒材料をベシクル化して添加することで、表面保護層に対し、高密度で且つ高い分散性で光触媒材料が添加される。そして、この構成によれば、良好な光触媒性能を有しつつ、表面保護層に対する透明性を確保できる。更に、表面保護層の主成分を規定することで、光触媒材料との密着性を良好として、その分、当該光触媒材料の脱落を抑えることが出来る。
【0086】
(11)基材シートに、光触媒材料が添加され、その光触媒材料の表面が部分的に光触媒に対して不活性な材料で被覆された被覆光触媒材料となっており、基材シートが延伸樹脂シートからなり、且つ該基材シートを構成する樹脂の主成分がポリオレフィン系樹脂であり、光触媒材料の添加量は、上記基材シートを構成する樹脂100質量部に対し、7質量部以上400質量部以下であることが好ましく、100質量部以上400質量部以下であることがさらに好ましい。
例えば、上記のように光触媒材料をベシクル化して添加することで、基材シートに対し、高密度で且つ高い分散性で光触媒材料が添加される。そして、この構成によれば、基材シートがポリオレフィン系樹脂製であっても、難燃性を付与しつつ、後加工性も維持でき、更に、表面積が増え、消臭、抗菌効果を増大させることが可能となる。
【実施例】
【0087】
以下に、本発明の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
以下の例において、化粧シートの基本層構成は第2実施形態で説明した化粧シート(
図2)の層構成とする場合で説明する。
(第1の実施例)
まず、第1の実施例について説明する。
<実施例1-1>
透明樹脂層を形成する樹脂組成物を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしての透明樹脂シート(透明樹脂層4)を製膜し、得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
【0088】
他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(基材シート2)の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層3を設け、また、上記基材シート2の他方の面にプライマー層6を設けた。
【0089】
しかる後、上記絵柄模様層3の一方の面側に、接着層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m
2)を介して透明樹脂シート(透明樹脂層4)をドライラミネート法にて貼り合わせた。
そして、透明樹脂シートの表面にエンボス模様(4a)を施した後、透明樹脂シートの表面に表面保護層5を形成した。
【0090】
表面保護層5は、熱硬化型樹脂に対して、光触媒材料としての酸化チタンを無機材料であるゼオライトで被覆して被覆光触媒材料とし、その被覆光触媒材料を超臨界逆相蒸発法によりリポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルを、上記熱硬化型樹脂100質量部に対し16質量部添加したものである。ゼオライトによる被覆率を20%とした。
【0091】
具体的には、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)100質量部に前述の酸化チタンを内包する上記の光触媒ベシクル16質量部を配合してなるインキを使用し、そのインキを塗布厚4g/m
2にて塗布して表面保護層5を形成し実施例1-1の化粧シートとした。その化粧シートは総厚163μmであった。
ここで、本実施例1-1〜1-5の超臨界逆相蒸発法を用いた、被覆光触媒材料を内包したベシクルの詳しい調製方法を説明する。
【0092】
まず、メタノール100質量部、光触媒70質量部、ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100質量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながらさらに15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことで被覆光触媒材料を内包したリン脂質からなる外膜を具備するリポソーム(ベシクル)が得られた。
【0093】
また、透明樹脂層4としての透明樹脂シートの詳しい調製方法を説明する。
透明樹脂層4としての透明樹脂シートを形成する際には、ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPM、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPM、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPMそれぞれ添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを得る。
【0094】
<実施例1-2>
ゼオライトによる被覆率を30%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-2の化粧シートを得た。
<実施例1-3>
ゼオライトによる被覆率を50%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-3の化粧シートを得た。
<実施例1-4>
実施例1-4の化粧シートでは、ゼオライトによる被覆率を50%と、更に、透明樹脂シートとして、ナノサイズの造核剤を添加した透明樹脂シートを採用した。それ以外は、実施例1-1と同じ製造方法で製造して実施例1-4の化粧シートを得た。
上記のナノサイズの造核剤を添加した透明樹脂シートは、次の樹脂組成物から作製した。
【0095】
すなわち、次のようにして、超臨界逆相蒸発法を用いて透明樹脂シートを形成する樹脂組成物の調製を行った。
【0096】
まず、超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のベシクル化処理方法は、メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−11、ADEKA社製)82質量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100質量部注入する。容器内の温度および圧力を超臨界状態に保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって造核剤を内包したリン脂質からなる外膜を具備する造核剤リポソームを得た。実際に透明樹脂層4としての透明樹脂シートを形成する際には、ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPMと、上記造核剤リポソームを1000PPMと、を添加した樹脂を、溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン樹脂製の透明樹脂シートを製膜して得た。
ここで、外膜がリン脂質のような生体脂質から構成されるベシクルをリポソームと称する。
【0097】
<実施例1-5>
ゼオライトによる被覆率を70%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-5の化粧シートを得た。
<実施例1-6>
ゼオライトによる被覆率を90%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-6の化粧シートを得た。
【0098】
<実施例1-7>
実施例1-7においては、光触媒材料としての酸化チタンを無機材料であるゼオライトで被覆して被覆光触媒材料とし、その被覆光触媒材料をエクストルージョン法により、リポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルを、上記熱硬化型樹脂100質量部に対し16質量部添加した。またゼオライトによる被覆率を20%とした。その他は実施例1-1と同様にして実施例1-7の化粧シートを作製した。
【0099】
<エクストルージョン法によるベシクルの調製>
実施例1-7〜1-10におけるエクストルージョン法を用いた、被覆光触媒材料を内包したベシクルの詳しい調製方法を説明する。
まず、蒸留水100質量部、光触媒粒子としての酸化チタン(昭和電工社製)0.7質量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン0.05質量部を混合したリン脂質懸濁液をガラスシリンジに入れ、当該ガラスシリンジを任意の孔径のメンブレンフィルターを挟んだエクストルーダーの両側にセットする。このエクストルーダーを任意の温度下にて、両側にセットしたガラスシリンジのシリンジを交互に動作させて、任意の回数についてメンブレンフィルターを通過させて被覆光触媒粒子を内包するベシクルを得た。
【0100】
<実施例1-8>
ゼオライトによる被覆率を40%とした以外は実施例1-7と同じ製造方法によって、実施例1-8の化粧シートを得た。
<実施例1-9>
ゼオライトによる被覆率を60%とした以外は実施例1-7と同じ製造方法によって、実施例1-9の化粧シートを得た。
<実施例1-10>
ゼオライトによる被覆率を90%とした以外は実施例1-7と同じ製造方法によって、実施例1-10の化粧シートを得た。
【0101】
<実施例1-11>
熱硬化型樹脂100質量部に対し0.1質量部添加し、ゼオライトによる被覆率を50%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-11の化粧シートを得た。
<実施例1-12>
熱硬化型樹脂100質量部に対し10質量部添加し、ゼオライトによる被覆率を50%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-12の化粧シートを得た。
<実施例1-13>
熱硬化型樹脂100質量部に対し20質量部添加し、ゼオライトによる被覆率を50%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-13の化粧シートを得た。
<実施例1-14>
熱硬化型樹脂100質量部に対し30質量部添加し、ゼオライトによる被覆率を50%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、実施例1-14の化粧シートを得た。
【0102】
<比較例1-1>
比較例1-1においては、光触媒材料として、無機材料での被覆および、ベシクル化処理をしない酸化チタン16質量部を熱硬化型樹脂に添加した以外は、実施例1-1と同様にして比較例1-1の化粧シートを作製した。
【0103】
<比較例1-2>
比較例1-2においては、光触媒材料として、無機材料であるゼオライトで部分被覆し、ベシクル化処理をしない酸化チタン16質量部を熱硬化型樹脂に添加した以外は、実施例1-1と同様にして比較例1-2の化粧シート1を作製した。なお、ゼオライトによる被覆率を20%とした。
【0104】
<比較例1-3>
ゼオライトによる被覆率を60%とした以外は比較例1-2と同じ製造方法によって、比較例1-3の化粧シートを得た。
<比較例1-4>
ゼオライトによる被覆率を90%とした以外は比較例1-2と同じ製造方法によって、比較例1-4の化粧シートを得た。
<比較例1-5>
熱硬化型樹脂100質量部に対し40質量部添加し、ゼオライトによる被覆率を50%とした以外は実施例1-1と同じ製造方法によって、比較例1-5の化粧シートを得た。
【0105】
<評価>
実施例1-1〜1-14、及び比較例1-1〜1-5の各化粧シートについて、下記の評価を実施した。
[光触媒機能の評価(ガス分解の評価)]
光触媒機能の評価は、実施例1-1〜1-14、及び比較例1-1〜1-5の各化粧シートをそれぞれ15×15cm四方にカットして、個別の容器中に設置する。更に各容器内に、アセトアルデヒドを初期濃度100ppmとなるように入れた。さらに白色蛍光灯をN113フィルタにより400nm以下の波長をカットし、照度6000lxで一定時間照射した後、容器からマイクロシリンジにてガスを採取し、ガスクロマトグラフにより、二酸化炭素濃度を測定し、光触媒機能の効果を確認した。
効果は、初期濃度に対して評価後のアセトアルデヒドの濃度の比を常用対数で表した値を分解活性値とした。分解活性値の基準を−2とした(初期の濃度の1/100になったら、分解活性値は−2)。
【0106】
評価は下記の3段階にて行った。
◎:非常に高い分解活性を示した。
○:分解活性の基準値付近を示した。
×:分解活性をほとんど示さなかった。
【0107】
[耐磨耗試験]
スチールウール(ボンスター#0、日本スチールウール(株)製)を1cm角に切り取り、700g重の重さをスチールウールにかけて、各化粧シート上で一定速度で30往復させ、化粧シート表面に出来た傷の程度により耐磨耗試験の評価を実施した。
ここで、光触媒材料と表面保護層を構成する樹脂との密着が良いものほど、耐磨耗試験の結果は良い。凝集していると樹脂との密着が悪いので、耐磨耗試験によって、光触媒材料が樹脂から剥離し、さらに剥離した光触媒材料が樹脂上をスチールウールとともに動くので、傷が付く。
【0108】
評価は下記の3段階にて行った。
◎:傷等が認められなかった。
○:若干の傷はあるものの容認できる。
×:容認できない傷が認められる。
【0109】
[後加工試験:V溝曲げ加工試験]
以下に、V溝曲げ加工適性試験の詳しい方法について述べる。
まず、基材Bを構成する中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法で作製した各化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材Bの他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基材Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基材Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、耐後加工性の優劣の評価を行う。
【0110】
評価は下記の3段階にて行った。
◎:白化・亀裂などが認められなかった
○:白化は認められず・亀裂は表面に一部ある場合もあるが容認できる
×:化粧シートとして容認できない白化・亀裂が認められた
ここで、曲げた箇所の割れの有無を確認すると、光触媒材料が凝集しているほど、その部分から割れる傾向にあり、光触媒材料が均一に分散しているものほど割れ難くなる。
【0111】
[耐候性試験]
耐候性試験機(サンシャインウエザオメーター:スガ試験機(株)製)を用いて、JIS B 7753に準じたカーボンアーク耐候性試験を行った。なお、試験条件は耐候経時2000時間として行った。
評価は、試験前の樹脂表面と比較した場合の変化の有無(光触媒によって樹脂が損傷したかどうか、表面のラフネスなど)を目視で確認して評価した。
【0112】
そして評価は、下記の3段階で行った。
◎:試験前と変わらない(損傷を受けていない)
○:若干の損傷はあるが、容認できるレベル
×:樹脂表面が損傷を受けている
ここで、光触媒材料と直接ふれている樹脂は分解される傾向にあり、分解することで色が変化する。
【0113】
表1にその評価結果を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1から明らかなように、本発明に基づき光触媒材料の表面を無機材料で被覆し、さらにベシクル化処理を施した光触媒材料を添加した表面保護層を具備した実施例1-1〜1-14の化粧シートは、比較例1-1〜1-5の化粧シートに比べて、高い光触媒機能を有し、耐摩耗性および後加工性、耐候性に優れた化粧シートとなることが分かった。
【0116】
また、実施例1-1〜1-6と実施例1-7〜1-10との比較から分かるように、ベシクル化は、超臨界逆相蒸発法を採用することが好ましいことが分かる。ここで、エクストルージョン法は、超臨界逆相蒸発法に比べて分散が若干悪いことから光触媒粒子の凝集が若干あるために、超臨界逆相蒸発法に比べてガス分解が低くなったものと推定される。
なお、比較例1-1では、凝集がひどくて、磨耗試験、後加工とも評価が悪かった。
【0117】
本発明の化粧シートは、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
なおここで、リポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルを、上記熱硬化型樹脂100質量部に対し16質量部添加した例を実施例1-1〜1-10にて示したが、リポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルの添加量を0.1質量部、30質量部としても同等の効果を得たことを確認している。
【0118】
(第2の実施例)
まず、第2の実施例について説明する。
<実施例2-1>
透明樹脂層を形成する樹脂組成物を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしての透明樹脂シート(透明樹脂層4)を製膜し、得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
【0119】
他方、隠蔽性のある70μmのポリオレフィン系樹脂からなる基材シート2の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層3を設け、また、上記基材シート2の他方の面にプライマー層6を設けた。
【0120】
しかる後、上記絵柄模様層3の一方の面側に、接着層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m
2)を介して透明樹脂シート(透明樹脂層4)をドライラミネート法にて貼り合わせた。
そして、透明樹脂シートの表面にエンボス模様(4a)を施した後、透明樹脂シートの表面に表面保護層5を形成した。
【0121】
基材シート2は、シートを構成する熱可塑性樹脂に対して、光触媒材料としての酸化チタンを無機材料であるゼオライトで被覆して被覆光触媒材料とし、その被覆光触媒材料を超臨界逆相蒸発法によりリポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルを、上記熱可塑性樹脂100質量部に対し300質量部添加したものである。またゼオライトによる被覆率を60%とした。なお、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し300質量部添加とは、光触媒材料を熱可塑性樹脂100質量部に対し300質量部添加したことと実質的に同義である。
【0122】
ここで、本実施例2-1の超臨界逆相蒸発法を用いた、被覆光触媒材料を内包したベシクルの詳しい調製方法を説明する。
まず、メタノール100質量部、光触媒70質量部、ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100質量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながらさらに15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことで被覆光触媒材料を内包したリン脂質からなる外膜を具備するリポソーム(ベシクル)が得られた。
【0123】
また、透明樹脂層4としての透明樹脂シートの詳しい調製方法を説明する。
透明樹脂層4としての透明樹脂シートを形成する際には、ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPM、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPM、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPMそれぞれ添加した樹脂を、溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを得た。
【0124】
<実施例2-2>
実施例2-2においては、光触媒材料としての酸化チタンを無機材料であるゼオライトで被覆して被覆光触媒材料とし、その被覆光触媒材料をエクストルージョン法により、リポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルを、上記基材シート2を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対し300質量部添加した。またゼオライトによる被覆率を60%とした。その他は実施例2-1と同様にして実施例2-2の化粧シート1を作製した。
【0125】
<エクストルージョン法によるベシクルの調製>
上記のエクストルージョン法によるベシクルの調製は、次のように実施した。
まず、蒸留水100質量部、光触媒粒子としての酸化チタン(昭和電工社製)0.7質量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン0.05質量部を混合したリン脂質懸濁液をガラスシリンジに入れ、当該ガラスシリンジを任意の孔径のメンブレンフィルターを挟んだエクストルーダーの両側にセットする。このエクストルーダーを任意の温度下にて、両側にセットしたガラスシリンジのシリンジを交互に動作させて、任意の回数についてメンブレンフィルターを通過させて光触媒粒子を内包するベシクルを得た。
【0126】
<実施例2-3>
実施例2-3においては、光触媒材料としての酸化チタンを無機材料であるゼオライトで被覆して被覆光触媒材料とし、その被覆光触媒材料を水和法により、リポソームで内包してカプセル状とした光触媒ベシクルを、上記基材シート2を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対し300質量部添加した。またゼオライトによる被覆率を60%とした。その他は実施例2-1と同様にして実施例2-3の化粧シート1を作製した。
【0127】
<水和法によるベシクルの調製>
上記の水和法によるベシクルの調製は、次のように実施した。
フラスコ容器にクロロホルム溶液10mlと、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン100mgを入れて溶解し、グルコース/メタノール混合溶液5mlをさらに加える。その後、真空乾燥にて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、光触媒粒子を含んだ分散液(蒸留水100質量部に対して、光触媒粒子としての酸化チタン0.7質量部)を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させて光触媒粒子を内包したベシクルを得た。
【0128】
<実施例2-4>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-4の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
<実施例2-5>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し7質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-5の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
【0129】
<実施例2-6>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し30質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-6の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
<実施例2-7>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し50質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-7の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
【0130】
<実施例2-8>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し100質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-8の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
<実施例2-9>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し350質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-9の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
【0131】
<実施例2-10>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し400質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-10の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
<実施例2-11>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工(延伸倍率を4.0に設定した)を施し、また、透明樹脂シートとして、上述の実施例1-4で採用した、ナノサイズの造核剤を添加した透明樹脂シート及び、ベシクル化した光触媒材料が添加された表面保護層を使用した。それ以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-11の化粧シート1を得た。
【0132】
<実施例2-12>
基材シート2に二軸延伸の延伸加工を施した以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-12の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
【0133】
<比較例2-1>
比較例2-1においては、光触媒材料として、無機材料での被覆および、ベシクル化処理をしない酸化チタン6質量部を熱可塑性樹脂に添加した以外は、実施例2-1と同様にして比較例2-1の化粧シート1を作製した。
<比較例2-2>
比較例2-2においては、光触媒材料として、無機材料であるゼオライトで部分被覆し、ベシクル化処理をしない酸化チタン6質量部を熱可塑性樹脂に添加した以外は、実施例2-1と同様にして比較例2-2の化粧シート1を作製した。なお、ゼオライトによる被覆率を60%とした。
【0134】
<比較例2-3>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し5質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして比較例2-3の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
<比較例2-4>
基材シート2に一軸延伸の延伸加工を施し、光触媒ベシクルを熱可塑性樹脂100質量部に対し450質量部添加した以外は、実施例2-1と同様にして比較例2-4の化粧シート1を得た。延伸倍率を4.0に設定した。
【0135】
<比較例2-5、2-6>
比較例2-5、比較例2-6は、比較例2-2と同様であるが、ベシクル化処理をしていない酸化チタンの添加量を10質量部とした。使用する基材シート2に対し一軸延伸の延伸加工又は二軸延伸の延伸加工をそれぞれ施した例である。なお、延伸倍率を4.0に設定した。
この例では、延伸の最中にシートが破断した。破断した基材シート2を観察したところ、添加した酸化チタンが部分的に凝集しており、その凝集位置若しくはその近傍で破断が起きていた。
このため、比較例2-5、2-6については下記の評価は実施していない。
【0136】
<評価>
実施例2-1〜2-12、及び比較例2-1〜2-4の各化粧シート1について、下記の評価を実施した。
[光触媒機能の評価(ガス分解の評価)]
光触媒機能の評価は、実施例2-1〜2-12、及び比較例2-1〜2-4の各化粧シート1をそれぞれ15×15cm四方にカットして、個別の容器中に設置する。更に各容器内に、アセトアルデヒドを初期濃度100ppmとなるように入れた。さらに白色蛍光灯をN113フィルタにより400nm以下の波長をカットし、照度6000lxで一定時間照射した後、容器からマイクロシリンジにてガスを採取し、ガスクロマトグラフにより、二酸化炭素濃度を測定し、光触媒機能の効果を確認した。
効果は、初期濃度に対して評価後のアセトアルデヒドの濃度の比を常用対数で表した値を分解活性値とした。分解活性値の基準を−2とした(初期の濃度の1/100になったら、分解活性値は−2)。
【0137】
評価は下記の3段階にて行った。
◎:非常に高い分解活性を示した。
○:分解活性の基準値付近を示した。
×:分解活性をほとんど示さなかった。
【0138】
[後加工試験:V溝曲げ加工試験]
以下に、V溝曲げ加工適性試験の詳しい方法について述べる。
まず、基材Bを構成する中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法で作製した各化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材Bの他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基材Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基材Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、耐後加工性の優劣の評価を行う。
【0139】
評価は下記の3段階にて行った。
◎:白化・亀裂などが認められなかった
○:白化は認められず・亀裂は基材に一部ある場合もあるが容認できる
×:化粧シート1として容認できない白化・亀裂が認められた
ここで、曲げた箇所の割れの有無を確認すると、光触媒材料が凝集しているほど、その部分から割れる傾向にあり、光触媒材料が均一に分散しているものほど割れ難くなる。
【0140】
[難燃性評価]
建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準においては、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。
本発明の化粧シート1が不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/m
2の輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1〜3の要求項目をすべて満たす必要がある。
【0141】
1.総発熱量が8MJ/m
2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
【0142】
評価は下記の3段階にて行った。
◎:上記の要求項目を大きく上回る。
○:要求項目値付近ではあるが、亀裂および穴の発生は見られない
×:要求項目の内、少なくとも一つ未達
以上の評価結果を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
表2から明らかなように、本発明に基づき光触媒材料の表面を無機材料で被覆し、さらにベシクル化処理を施した光触媒材料を添加した基材シートを具備した実施例2-1〜2-12による化粧シート1は、比較例2-1、2-2による化粧シート1に比べて、高い光触媒機能を有し、後加工性に優れた化粧シート1となることが分かった。
ここで、比較例2-1、2-2では、少量の酸化チタンの添加量であるが、光触媒粒子同士が凝集しており、後加工はそこから裂けていた。
又、実施例2-4〜2-10から分かるように、光触媒ベシクル(光触媒材料)の添加量が熱可塑性樹脂100質量部に対し7質量部以上400質量部以下の範囲とすることで、高い光触媒機能を有し、後加工性に優れた化粧シートとなることが分かった。一方、比較例2-3、2-4から分かるように、光触媒ベシクル(光触媒材料)の添加量が熱可塑性樹脂100質量部に対し7質量部よりも少ないか400質量部よりも多い場合には、光触媒機能又は後加工性において評価が「×」となった。
【0145】
また、本発明に基づく実施例2-1〜2-12の化粧シート1は、上記不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、上記施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料(難燃性)を実現している。ここで、比較例2-1、2-2で難燃性が劣るのは、ベシクル化していないために、無機顔料、光触媒材料を多く添加できないためである。
【0146】
また、実施例2-1に比べて、延伸加工を施し且つ光触媒ベシクル(光触媒材料)を熱可塑性樹脂100質量部に対し300質量部以上400質量部以下の範囲で添加した実施例2-4、実施例2-9,実施例2-10、実施例2-11、実施例2-12の方が、難燃性が向上していた。
また、透明樹脂シートにナノサイズの造核剤を添加した実施例2-11について、別途、耐磨耗性及び耐候性について評価したところ、耐磨耗性及び耐候性が共に良好であったことを確認している。尚、耐磨耗性及び耐候性の評価は、上述の耐摩耗試験および耐候性試験によって評価した。
更に、実施例2-1〜2-3の評価から分かるように、超臨界処理によるベシクル化の方が、他の方法よりもより均一かつ高濃度に分散できるので、後加工性に優れていることも分かった。
ここで、実施例2-11では、表面保護層にも、ベシクル化した光触媒材料を添加する場合で例示したが、表面保護層に対しベシクル化した光触媒材料を添加しない場合であっても、上記の実施例2-11と同等の評価結果を得ることができたことを、確認している。
【0147】
以上、本願が優先権を主張する、特許出願2016−003471号(2016年1月12日出願)及び特許出願2016−003472号(2016年01月12日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
また、各実施形態により本発明を説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。