特許第6864345号(P6864345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 栄組の特許一覧

<>
  • 特許6864345-コンクリートクラックの補修用ノズル 図000002
  • 特許6864345-コンクリートクラックの補修用ノズル 図000003
  • 特許6864345-コンクリートクラックの補修用ノズル 図000004
  • 特許6864345-コンクリートクラックの補修用ノズル 図000005
  • 特許6864345-コンクリートクラックの補修用ノズル 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864345
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】コンクリートクラックの補修用ノズル
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20210419BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   E04G23/02 B
   B05C5/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-27217(P2017-27217)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-131842(P2018-131842A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】507175821
【氏名又は名称】株式会社 栄組
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 栄洋
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−001728(JP,A)
【文献】 特開2002−070319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00−23/08
B05C 5/00− 5/04
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートクラックに穿設した穴に流動状の充填材を吐出するコンクリートクラックの補修用ノズルにおいて、
穴に差し込まれて充填材を吐出する吐出パイプと、上記吐出パイプの先端側に外嵌され外側に膨出させられて上記穴に弾接可能な弾性リングと、上記吐出パイプの先端部に設けられ上記弾性リングを押えるストッパと、上記弾性リングより上記吐出パイプの基端側に設けられるとともに該吐出パイプにその軸方向に移動可能に外嵌される外パイプとを備え、該外パイプの先端部を、該外パイプの上記吐出パイプの先端部側への移動により上記弾性リング内に挿入されて上記弾性リングを膨出させるように基端側外側面から先端側に向けて漸次細くなるテーパ状に形成し、
上記吐出パイプの基端部を支持するとともに内側に上記吐出パイプ内に連通し充填材を送給する連通路を有し外側に上記吐出パイプの軸線を軸とする雄ネジが形成された支持部を備え、上記外パイプの基端部を保持するとともに内側に該外パイプの軸線を軸とし上記雄ネジに螺合する雌ネジが形成された保持部を備え、該保持部をその雌ネジ及び上記支持部の雄ネジを介して回転させることにより上記外パイプを軸方向に移動可能にし、
上記ストッパを上記吐出パイプの先端部に対して着脱可能にし、
上記吐出パイプの先端部に雄ネジ部を形成し、上記ストッパに該雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を形成し、該雄ネジ部及び雌ネジ部を、上記支持部の雄ネジ及び上記保持部の雌ネジとは、逆ネジに形成したことを特徴とするコンクリートクラックの補修用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の建物の壁等に生じたコンクリートクラックに充填材を充填して補修するコンクリートクラックの補修用ノズルに係り、特に、予めコンクリートクラックに穿設した穴に流動状充填材を吐出するコンクリートクラックの補修用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンクリートクラックの補修用ノズルとしては、例えば、特許第3340977号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。
図5に示すように、このコンクリートクラックの補修用ノズルNaは、コンクリートクラックに穿設した穴Hに装着されるとともに、図示外の注入ガン等の充填材送給装置に接続され、この充填材送給装置からの充填材を穴H内に吐出するものである。
【0003】
この従来の補修用ノズルNaは、穴Hに差し込まれて充填材を吐出する吐出パイプ100と、吐出パイプ100の途中に外嵌され外側に膨出させられて穴Hに弾接可能な弾性リング101と、吐出パイプ100の弾性リング101より先端側に設けられ弾性リング101を押えるストッパ102と、吐出パイプ100の基端側に形成された雄ネジに螺合して吐出パイプ100の軸方向に移動可能に設けられ先端側への移動により弾性リング101を軸方向に押圧して外側に膨出させるナット103とを備えている。また、ナット103と弾性リング101の後端部との間には、弾性リング101に入り込むテーパ状の先端部104と弾性リング101の端面に当接する鍔部105を有した座金106が介装されている。
【0004】
そして、この補修用ノズルNaを用いて、壁の内壁に生じたコンクリートクラックに充填材を充填して補修を行なうときは、図5(a)に示すように、予め、コンクリートクラックの所要箇所に穴Hを穿設する。そして、この穴Hに、ナット103の基端部が穴Hから外側に突出するように吐出パイプ100の先端側を穴Hに挿入する。この状態で、図5(b)に示すように、ナット103を締める。これにより、座金106が先端側に移動させられてその先端部104が弾性リング101内に入るとともに鍔部105が弾性リング101の後端を押圧するので、弾性リング101が外側に膨出させられて穴Hに弾接する。そのため、補修用ノズルNaが穴Hに強固に固定され、抜けが防止される。
【0005】
この状態で、例えば、吐出パイプ100の基端に図示外の注入ガン等の充填材送給装置を接続し、充填材送給装置から吐出パイプ100内に充填材を供給して、吐出パイプ100から充填材を穴H内に吐出する。この場合、弾性リング101が膨出して穴Hに弾接しているので、吐出パイプ100と穴Hとがシールされ、穴Hの開口から充填材が漏れ出てくる事態が防止され、充填材が穴H内に充分に浸入していき、充填が確実に行なわれる。
充填材の充填が終わったならば、図5(c)に示すように、ナット103を緩めて、吐出パイプ100を穴Hから引き抜く。尚、吐出パイプ100を抜いた後の穴Hには、別の注入ガンなどを用いて充填材を注入して塞ぐ。このようにして、予め穿設した複数の穴Hに順次補修用ノズルNaを挿入して上記と同様の手順によって充填材を充填していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3340977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来のコンクリートクラックの補修用ノズルにあっては、図5(c)に示すように、充填材の充填が終わった後、ナット103を緩めて吐出パイプ100を穴Hから引き抜く際、弾性リング101が元に戻らずに、弾性リング101が穴Hに弾接したままになって、引き抜きが困難になるという問題があった。その理由は、ナット103を緩めても、ナット103と座金106が分離しているので、座金106が弾性リング101側に嵌った状態になるからである。また、弾性リング101の膨出は弾性リング101が座金106の鍔部105で押されることにより軸方向に撓むことにより膨出するので、一端穴Hに密着すると、その戻り力では戻りきれないことがあるからである。
弾性リング101が膨出したまま、吐出パイプ100を引き抜くと、引き抜きの抵抗が大きくなって作業性が悪くなり、また、弾性リング101が損傷し易くなり、交換の頻度が増す等の支障が生じ、この点でも作業性を損ねるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、吐出パイプを穴から引き抜く際、弾性リングが確実に縮径して元に戻ることができるようにし、引き抜を容易にして作業性の向上を図ったコンクリートクラックの補修用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のコンクリートクラックの補修用ノズルは、コンクリートクラックに穿設した穴に流動状の充填材を吐出するコンクリートクラックの補修用ノズルにおいて、
穴に差し込まれて充填材を吐出する吐出パイプと、上記吐出パイプの先端側に外嵌され外側に膨出させられて上記穴に弾接可能な弾性リングと、上記吐出パイプの先端部に設けられ上記弾性リングを押えるストッパと、上記弾性リングより上記吐出パイプの基端側に設けられるとともに該吐出パイプにその軸方向に移動可能に外嵌される外パイプとを備え、該外パイプの先端部を、該外パイプの上記吐出パイプの先端部側への移動により上記弾性リング内に挿入されて上記弾性リングを膨出させるように基端側外側面から先端側に向けて漸次細くなるテーパ状に形成した構成としている。
【0010】
これにより、この補修用ノズルを用いて、壁の内壁に生じたコンクリートクラックに充填材を充填して補修を行なうときは、予め、コンクリートクラックの所要箇所に穴を穿設する。そして、この穴に、吐出パイプの先端側を穴に挿入する。この状態で、外パイプを吐出パイプの先端部側に移動させる。これにより、外パイプの先端部が弾性リング内に挿入されるとともに、外パイプはテーパ状に形成されているので、弾性リングを拡径させていく。このため、弾性リングが外側に膨出させられて穴に弾接し、吐出パイプが穴に固定され、抜けが防止される。
【0011】
この状態で、例えば、吐出パイプに接続した充填材送給装置から吐出パイプ内に充填材を供給して、吐出パイプから充填材を穴内に吐出する。この場合、弾性リングが膨出して穴に弾接しているので、吐出パイプと穴とがシールされ、穴の開口から漏れ出てくる事態が防止され、充填材が穴内に充分に浸入していき、充填が確実に行なわれる。
充填材の充填が終わったならば、外パイプを吐出パイプの基端部側に移動させる。これにより、外パイプの先端部が弾性リングから抜けていき、弾性リングが縮径して、弾性リングと穴との間に隙間が生じる。この状態で、吐出パイプを穴から引き抜く。この場合、外パイプの移動し始め時においては、弾性リングが穴に押えられた状態で外パイプが直接移動するので、弾性リングが動くことなく外パイプが移動し、外パイプはテーパ状に形成されているので外パイプが少しでも移動すると、弾性リングがその弾性力によりすぐに縮径していく。そのため、従来のように、弾性リングが穴に弾接したままになってしまう事態を防止することができる。その結果、吐出パイプの引き抜きを容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。また、弾性リングが損傷しにくくなり、交換の頻度も少なくなるので、この点でも作業性を向上せることができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記吐出パイプの基端部を支持するとともに内側に上記吐出パイプ内に連通し充填材を送給する連通路を有し外側に上記吐出パイプの軸線を軸とする雄ネジが形成された支持部を備え、上記外パイプの基端部を保持するとともに内側に該外パイプの軸線を軸とし上記雄ネジに螺合する雌ネジが形成された保持部を備え、該保持部をその雌ネジ及び上記支持部の雄ネジを介して回転させることにより上記外パイプを軸方向に移動可能にした構成としている。これにより、保持部をその雌ネジ及び支持部の雄ネジを介して回転させることにより外パイプを軸方向に移動させるので、操作性が向上させられるとともに、所望の位置で停止させておくことができ、停止精度を向上させることができる。
【0013】
また、必要に応じ、上記ストッパを上記吐出パイプの先端部に対して着脱可能にした構成としている。この場合、外パイプ及び保持部を吐出パイプ及び支持部に装着する際、また、弾性リングを吐出パイプに装着する際に、ストッパを取外し、それから、吐出パイプが外パイプに挿入されるように、外パイプの保持部を吐出パイプの支持部にネジ込んでいき、吐出パイプの先端部が露出するネジ込み端までネジ込む。次に、弾性リングを吐出パイプの先端から挿入する。その後、再び、ストッパを吐出パイプの先端部に取り付ける。この場合、ストッパが吐出パイプの先端部に固着されている場合には、全体の組み立てが極めて難しくなるが、ストッパを取外して組み立てができるので、それだけ組み立てを容易にすることができる。また、弾性リングの交換作業も極めて楽になることから、装着作業性を向上させることができる。
【0014】
この場合、上記吐出パイプの先端部に雄ネジ部を形成し、上記ストッパに該雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を形成し、該雄ネジ部及び雌ネジ部を、上記支持部の雄ネジ及び上記保持部の雌ネジとは、逆ネジに形成したことが有効である。ストッパの取付け取り外しが容易になる。また、保持部を回転させる際には、弾性リングを介してストッパにも回転力が伝達されようとするが、逆ネジなので、ストッパが締まる方向に力が作用することになることから、ストッパの脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、充填材の充填が終わったならば、外パイプを吐出パイプの基端部側に移動させるが、この場合、外パイプの移動し始め時においては、弾性リングが穴に押えられた状態で外パイプが直接移動するので、弾性リングが動くことなく外パイプが移動し、外パイプはテーパ状に形成されているので外パイプが少しでも移動すると、弾性リングがその弾性力によりすぐに縮径していく。そのため、従来のように、弾性リングが穴に弾接したままになってしまう事態を防止することができる。その結果、吐出パイプの引き抜きを容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。また、弾性リングが損傷しにくくなり、交換の頻度も少なくなるので、この点でも作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るコンクリートクラックの補修用ノズルを示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るコンクリートクラックの補修用ノズルを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るコンクリートクラックの補修用ノズルを穴に挿入したときの状態で示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るコンクリートクラックの補修用ノズルを穴に挿入して弾性リングを膨出させたときの状態で示す断面図である。
図5】従来のコンクリートクラックの補修用ノズルの一例を示し、(a)は補修用ノズルを穴に挿入したときの状態で示す断面図、(b)は補修用ノズルを穴に挿入して弾性リングを膨出させたときの状態で示す断面図、(c)は補修ノズルを穴から取り出すときの状態をその不具合とともに示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るコンクリートクラックの補修用ノズルについて詳細に説明する。図1乃至図4に示すように、実施の形態に係る補修用ノズルNは、充填材(図示せず)の充填材送給装置(図示せず)にあらかじめ装着されて用いられ、コンクリートクラックに穿設した穴Hに流動状の充填材を吐出するものである。
【0018】
図1乃至図4に示すように、実施の形態に係る補修用ノズルNは、穴Hに差し込まれて充填材を吐出する円筒状の吐出パイプ1と、吐出パイプ1の先端側に外嵌され外側に膨出させられて穴Hに弾接可能なゴムなどで形成された円筒状の弾性リング2と、吐出パイプ1の先端部に設けられ弾性リング2を押えるストッパ3と、弾性リング2より吐出パイプ1の基端側に設けられるとともに、吐出パイプ1にその軸方向に移動可能に外嵌される外パイプ4とを備えて構成されている。
【0019】
吐出パイプ1の基端部は、内側に吐出パイプ1内に連通し充填材を送給する連通路5を有し外側に吐出パイプ1の軸線を軸とする雄ネジ6が形成された支持部7に支持されている。吐出パイプ1及び支持部7は、硬質の樹脂などで一体形成されている。支持部7は、吐出パイプ1よりも大径に形成されており、その基端には、充填材送給装置(図示せず)に装着するための装着用雄ネジ8が形成されている。
【0020】
吐出パイプ1は、例えば、その直径が3.3mm、長さが32mmに設定され、支持部7は、例えば、雄ネジの外径が18mm、全長が35mmに設定されている。
【0021】
また、外パイプ4の基端部は、内側に外パイプ4の軸線を軸とし雄ネジ6に螺合する雌ネジ11が形成されたカップ状の保持部10に保持されている。保持部10は、外パイプ4よりも大径に形成されている。外パイプ4及び保持部10は、吐出パイプ1と同様に、硬質の樹脂などで一体形成されている。これにより、保持部10は、その雌ネジ11及び支持部7の雄ネジ6を介して手動で回転させることにより、外パイプ4を軸方向に移動可能にしている。
【0022】
そして、外パイプ4の先端部12は、外パイプ4の吐出パイプ1の先端部側への移動により、弾性リング2内に挿入されて弾性リング2を膨出させるように基端側外側面から先端側に向けて漸次細くなるテーパ状に形成されている。即ち、外パイプ4は、円筒状で直状の一般部13と、一般部13に連続するテーパ状の先端部12とから構成されている。
【0023】
外パイプ4は、例えば、その一般部の直径が4.1mm、内径が3.4mm、長さが20mmに設定され、保持部10は、例えば、外径が24mm、全長が25mmに設定されている。テーパ状の先端部(テーパ部)12の長さは8mmに設定されている。弾性リング2は、ゴムなどで円筒状に形成されており、例えば、直径が4.1mm、長さが7mmに設定されている。
【0024】
更に、ストッパ3は、円筒状に形成され、その外径は、吐出パイプ1に外嵌された弾性リング2の外径と略同じに設定されている。また、ストッパ3は、吐出パイプ1の先端部に対して着脱可能に形成されている。具体的には、吐出パイプ1の先端部に雄ネジ部14を形成し、ストッパ3に、雄ネジ部14に螺合する雌ネジ部15を形成している。更に、この雄ネジ部14及び雌ネジ部15は、支持部7の雄ネジ6及び上記保持部10の雌ネジ11とは、逆ネジに形成されている。ストッパ3は、例えば、外径が4.1mm、長さが5mmに設定されている。
【0025】
従って、この実施の形態に係る補修用ノズルNを組み立てるときは、先ず、ストッパ3を取外し、それから、吐出パイプ1が外パイプ4に挿入されるように、外パイプ4の保持部10を吐出パイプ1の支持部7にネジ込んでいき、吐出パイプ1の先端部の雄ネジ部14が露出するネジ込み端までネジ込む。次に、弾性リング2を吐出パイプ1の先端から挿入する。その後、再び、ストッパ3を吐出パイプ1の先端部の雄ネジ部14に取り付ける。この場合、ストッパ3が吐出パイプ1の先端部に固着されている場合には、全体の組み立てが極めて難しくなるが、ストッパ3を取外して組み立てができるので、それだけ組み立てを容易にすることができる。また、弾性リング2の交換作業も極めて楽になることから、装着作業性を向上させることができる。
【0026】
そして、この補修用ノズルNを用いて、壁の内壁に生じたコンクリートクラックに充填材を充填して補修を行なうときは、以下のようにする。予め、コンクリートクラックの所要箇所に穴Hを穿設する。そして、図3に示すように、この穴Hに、吐出パイプ1の先端側を穴Hに挿入する。この状態で、図4に示すように、外パイプ4を吐出パイプ1の先端部側に移動させる。この場合、保持部10をその雌ネジ11及び支持部7の雄ネジ6を介して回転させることにより、外パイプ4を軸方向に移動させる。保持部10を回転させるだけの操作なので、操作性が向上させられるとともに、所望の位置で停止させておくことができ、停止精度を向上させることができる。
【0027】
また、この場合、保持部10を回転させる際には、弾性リング2を介してストッパ3にも回転力が伝達されようとするが、雄ネジ部14及び雌ネジ部15は、支持部7の雄ネジ6及び保持部10の雌ネジ11と逆ネジになっているので、ストッパ3が締まる方向に力が作用することになることから、ストッパ3の脱落を防止することができる。
【0028】
これにより、図4に示すように、外パイプ4の先端部12が弾性リング2内に挿入されるとともに、外パイプ4はテーパ状に形成されているので、弾性リング2を拡径させていく。このため、弾性リング2が外側に膨出させられて穴Hに弾接し、吐出パイプ1が穴Hに固定され、抜けが防止される。
【0029】
この状態で、吐出パイプ1に接続した充填材送給装置から吐出パイプ1内に充填材を供給して、吐出パイプ1から充填材を穴H内に吐出する。この場合、弾性リング2が膨出して穴Hに弾接しているので、吐出パイプ1と穴Hとがシールされ、穴Hの開口から漏れ出てくる事態が防止され、充填材が穴H内に充分に浸入していき、充填が確実に行なわれる。
【0030】
充填材の充填が終わったならば、図3に示すように、外パイプ4を吐出パイプ1の基端部側に移動させる。この場合、保持部10をその雌ネジ11及び支持部7の雄ネジ6を介して回転させることにより、外パイプ4を軸方向に移動させる。保持部10を回転させるだけの操作なので、操作性が向上させられる。
【0031】
これにより、図3に示すように、外パイプ4の先端部12が弾性リング2から抜けていき、弾性リング2が縮径して、弾性リング2と穴Hとの間に隙間が生じる。この状態で、吐出パイプ1を穴Hから引き抜く。この場合、外パイプ4の移動し始め時においては、弾性リング2が穴Hに押えられた状態で外パイプ4が直接移動するので、弾性リング2が動くことなく外パイプ4が移動し、外パイプ4はテーパ状に形成されているので外パイプ4が少しでも移動すると、弾性リング2がその弾性力によりすぐに縮径していく。そのため、従来のように、弾性リング2が穴Hに弾接したままになってしまう事態を防止することができる。その結果、吐出パイプ1の引き抜きを容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。また、弾性リング2が損傷しにくくなり、交換の頻度も少なくなるので、この点でも作業性を向上させることができる。
【0032】
吐出パイプ1を抜いた後の穴Hには、別の注入ガンなどを用いて充填材を注入して塞ぐ。このようにして、予め穿設した複数の穴Hに順次補修用ノズルNを挿入して上記と同様の手順によって充填材を充填していく。
【0033】
また、弾性リング2を交換するときは、ストッパ3を取外して行う。この場合、ストッパ3が吐出パイプ1の先端部に固着されている場合には、弾性リング2を拡径してストッパ3を通過させて装着しなければならないが、ストッパ3がない状態で着脱できるので、弾性リング2の交換作業も極めて楽になり、装着作業性を向上させることができる。
【0034】
尚、上記実施の形態において、各部の形状や大きさは上述したものに限定されるものではなく、宜変更して差支えない。
【符号の説明】
【0035】
N 補修用ノズル
H 穴
1 吐出パイプ
2 弾性リング
3 ストッパ
4 外パイプ
5 連通路
6 雄ネジ
7 支持部
8 装着用雄ネジ
10 保持部
11 雌ネジ
12 先端部
13 一般部
14 雄ネジ部
15 雌ネジ部
図1
図2
図3
図4
図5