【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (その1) 発行年月日 2016年9月6日 刊行物名 2016年度日本冷凍空調学会年次大会講演論文集 (CD−ROM) 発行者名 公益社団法人日本冷凍空調学会 (その2) 開催日 2016年9月6日から2016年9月9日(公開日は2016年9月9日) 集会名 2016年度日本冷凍空調学会年次大会 主催者 公益社団法人日本冷凍空調学会
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、科学技術振興機構、研究成果展開事業 マッチングプランナー プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明は、機械加工や鋳造加工では製造することが困難な複雑形状を有するヒートシンク及び当該ヒートシンクを製造可能な積層造形技術に関する。本発明のヒートシンクは、例えば自動車(電動車両)、電車、鉄道車両、航空機、航空エンジン、各種産業機械、電子機器、電力設備などに用いられる電子制御機器における発熱体・素子の冷却に好適に使用される。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係るヒートシンク1の外観を示しており、
図2は
図1のヒートシンク1の一部分を拡大して示している。ヒートシンク1は、ベース2と、ベース2上に一体に形成されたフィンユニット10とを備えている。なお、以後、ベース2に対してフィンユニット10が取り付けられた側(Z方向)を上方向として説明する。また、外気がY方向に流れるものとし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向として説明する。
【0023】
ベース2は、所定の厚みを有する矩形板状に形成されており、上面がフィンユニット10の取付面とされるとともに下面が受熱面とされる。ベース2が発熱源上に固定されることで、発熱源において発生した熱がベース2を介してフィンユニット10へと伝わる。ベース2の幅W、長さL、厚みtは、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。
【0024】
フィンユニット10は、ベース2の上面に対して鉛直に設けられる複数の棒状フィン3と、ベース2の上方で一方向(左右方向)に延びる複数の第1横架材4と、ベース2の上方で前記一方向(X方向)と直交する他方向(Y方向)に延びる複数の第2横架材5とで構成されている。
【0025】
棒状フィン3は、ベース2上の一方向(左右方向)に間隔をあけて複数が整列することで列をなすとともに、前記他方向(Y方向)に間隔をあけて複数の列をなすようにして、配置されている。本実施形態では、棒状フィン3は、
図3に示すように、ベース2の上面に、上方向から視て格子状(並列配列)となるように配置されている。つまり、上方向から視て前記他方向(Y方向)に並ぶ各列の近接する棒状フィン3が前記一方向(X方向)に位置ずれすることなく一列に並んで整列している。なお、「近接」とは、最も近くに位置することを意味する。また、本実施形態では、
図3(a)に示すように、前記一方向(X方向)の間隔P´と前記他方向(Y方向)の間隔Pとが同一で棒状フィン3が均一に並んでいるが、
図3(b)に示すように、前記一方向(X方向)の間隔P´と前記他方向(Y方向)の間隔Pとが相違して棒状フィン3が均一に並んでいてもよい。また、棒状フィン3は、本実施形態では円柱状に形成されている。棒状フィン3の直径や高さH、間隔P,P´は、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。
【0026】
第1横架材4は、前記一方向(X方向)に直線状に延びており、前記一方向(X方向)に整列する複数の棒状フィン3を連結している。第1横架材4は、前記一方向(X方向)から視て格子状(並列配列)となるように上下方向及び前記他方向(Y方向)に複数が並行配置されており、前記他方向(Y方向)に並ぶ各列の複数の棒状フィン3と直交して格子をなしている。第1横架材4は、本実施形態では円柱状に形成されている。第1横架材4の直径や長さ、間隔は、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。本実施形態では、第1横架材4の直径は、棒状フィン3の直径と同じである。
【0027】
第2横架材5は、前記他方向(Y方向)に直線状に延びており、前記他方向(Y方向)に整列する複数の棒状フィン3を連結している。第2横架材5は、前記他方向(Y方向)から視て格子状(並列配列)となるように上下方向及び前記一方向(X方向)に複数が並行配置されており、前記一方向(X方向)に並ぶ各行の複数の棒状フィン3と直交して格子をなしている。第2横架材5は、本実施形態では円柱状に形成されている。第2横架材5の直径や長さ、間隔は、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。本実施形態では、第2横架材5の直径は、棒状フィン3の直径と同じである。
【0028】
複数の第2横架材5は、複数の第1横架材4と互いに交差しており、各第2横架材5は、棒状フィン3及び第1横架材4の交差部を順次連結するように直線状に延びている。なお、複数の第2横架材5は、複数の第1横架材4と必ずしも互いに交差している必要はなく、複数の第1横架材4に対して、上下方向に位置ずれしていてもよい。
【0029】
上記構成の第1実施形態のヒートシンク1においては、複数の棒状フィン3、複数の第1横架材4及び複数の第2横架材5が格子構造のような複雑形状で組み立てられているため、ヒートシンク1の伝熱面積が従来の板状フィンや棒状フィンを間隔をあけて複数設けた構造と比較して大きくなる。また、詳細は後述するが、ヒートシンク1の圧力損失の大幅な増大を抑えたまま、後述する有効熱伝達率を高めることができるので、伝熱性能の高いヒートシンク1とすることができる。
【0030】
ここで、上述した第1実施形態のヒートシンク1において、棒状フィン3、第1横架材4及び第2横架材5は、いずれも円柱状に形成されているが、角柱状の他、種々の断面形状を有する棒状体とすることができる。例えば、
図4及び
図5に示すように、棒状フィン3、第1横架材4及び第2横架材5のうちの少なくともいずれかは、流線形の断面形状を有することができる。なお、流線形とは、一端が丸くかつ他端が尖った全体として細長く先細った形である。
図4及び
図5に示すように、棒状フィン3、第1横架材4及び第2横架材5のうちの少なくともいずれかを断面視流線形状に形成し、外気の流れる前後方向(Y方向)において、後側に向けて先細るように向きを設定することで、ヒートシンク1を通過する外気の圧力損失を低減することが可能である。
【0031】
また、上述した第1実施形態のヒートシンク1において、外気の流れる前後方向(Y方向)に延びる第2横架材5は、軸方向(長さ方向)の全長にわたり断面形状(直径)が一定であるが、軸方向に一端から他端に向けて次第に断面形状(直径)を大きくすることができる。例えば、
図6及び
図7に示すように、第2横架材5は、上流側は小さい断面形状を有し、下流側(外気が流れる方向)に向かって次第に大きくなる断面形状を有することができる。これにより、開放系の使用環境(開放系空間)ではヒートシンク1を通過する外気の流量が多くなるので、ヒートシンク1の有効熱伝達率をより高めることができ、伝熱性能をさらに向上させることが可能である。なお、この場合には、
図6及び
図7に示すように、棒状フィン3及び第1横架材4は、第2横架材5の断面形状に合わせて、下流側(外気が流れる方向)に向かうに連れて断面形状(直径)を大きくすることが好ましい。これにより、ヒートシンク1の有効熱伝達率をさらに高めることができる。
【0032】
また、上述した第1実施形態のヒートシンク1において、棒状フィン3は、軸方向(高さ方向)の全長にわたり断面形状(直径)が一定であるが、軸方向に一端から他端に向けて次第に断面形状(直径)を大きくすることができる。例えば、
図8及び
図9に示すように、棒状フィン3は、上端側は小さい断面形状を有し、ベース側2(下方向)に向かって次第に大きくなる断面形状を有することができる。これにより、発熱源からベース2を介して伝達される熱が棒状フィン3の下端から上端まで良好に伝わるので、ヒートシンク1のフィン効率が高められ、棒状フィン3の全表面で効率よく放熱させることが可能である。その結果、ヒートシンク1の熱伝導性を高めることができ、伝熱性能をさらに向上させることが可能である。なお、この場合には、
図8及び
図9に示すように、第1横架材4及び第2横架材5は、棒状フィン3の断面形状に合わせて、ベース2側(下方向)に向かうに連れて断面形状(直径)を大きくすることが好ましい。これにより、ヒートシンク1のフィン効率をさらに高めることができる。
【0033】
また、上述した第1実施形態のヒートシンク1において、第1横架材4及び第2横架材5のいずれか一方を省いてヒートシンクを形作ることも可能である。
【0034】
次に、
図10は、本発明の第2実施形態に係るヒートシンク1の外観を示しており、
図11は
図10のヒートシンク1の一部分を拡大して示している。第2実施形態のヒートシンク1も、ベース2と、ベース2上に一体に形成されたフィンユニット10とを備えている。ベース2は、第1実施形態のヒートシンク1のベース2と同構成であるので、ここでは説明を省略する。
【0035】
フィンユニット10は、ベース2の上面に対して鉛直に設けられる複数の棒状フィン3と、ベース2の上方で前記一方向(左右方向)に延びる複数の第1横架材4と、ベース2の上方で前記他方向(Y方向)に延びる複数の第2横架材5とで構成されている。
【0036】
棒状フィン3は、ベース2上の一方向(左右方向)に間隔をあけて複数が整列することで列をなすとともに、前記他方向(Y方向)に間隔をあけて複数の列をなすようにして、配置されている。本実施形態では、棒状フィン3は、ベース2の上面に、上方向から視て千鳥状(千鳥配列)となるように配置されている。つまり、上方向から視て前記他方向(Y方向)に並ぶ各列の近接する棒状フィン3が前記一方向(X方向)に位置ずれした状態、例えば
図12に示すように、前記一方向(X方向)に隣り合う棒状フィン3の間隔の半分の位置に隣り合う列の棒状フィン3が位置するように、互い違いにずれた状態で並んでいる。なお、「近接」とは、最も近くに位置することを意味する。また、千鳥配列としては、いわゆる45度千鳥配列(棒状フィン3の中心間を線で結ぶと二等辺三角形を描く)、60度千鳥配列(棒状フィン3の中心間を線で結ぶと正三角形を描く)などを例示することができるが、特に限定されるものではない。また、棒状フィン3は、本実施形態では円柱状に形成されている。棒状フィン3の直径や高さ、間隔は、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。
【0037】
第1横架材4は、前記一方向(X方向)に直線状に延びており、前記一方向(X方向)に整列する複数の棒状フィン3を連結している。第1横架材4は、前記一方向(X方向)から視て千鳥状(千鳥配列)となるようよう上下方向及び前記他方向(Y方向)に複数が並行配置されており、前記他方向(Y方向)に並ぶ各列の複数の棒状フィン3と直交して格子をなしている。第1横架材4は、本実施形態では円柱状に形成されている。第1横架材4の直径や長さ、間隔は、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。本実施形態では、第1横架材4の直径は、棒状フィン3の直径と同じである。
【0038】
第2横架材5は、前記他方向(Y方向)にジグザグ状に延びており、前記他方向(Y方向)に並ぶ各列の近接する棒状フィン3を交互に向きを変えながら斜めに延びることで順次連結して、複数の前記第1横架材とトラスを形作っている。具体的には、第2横架材5は、前記他方向(Y方向)に並ぶ各列の近接する棒状フィン3の第1横架材4との交差部同士を順次連結するように延びており、棒状フィン3の第1横架材4との各交差部においては、前列の近接する上下それぞれ2つ(計4つ)の交差部よりそれぞれ第2横架材5が放射状に集束するとともに、後列の近接する上下それぞれ2つ(計4つ)の交差部に向けてそれぞれ第2横架材5が放射状に発散している。これにより、複数の第2横架材5は、前記他方向(Y方向)に延びながら前記一方向(X方向)に隣り合う第2横架材5と各列の第1横架材4とで複数の三角形を組むことで、トラスが形成される。
【0039】
第2横架材5は、本実施形態では円柱状に形成されている。第2横架材5の直径や長さ、間隔は、放熱に用いられる対象に応じて適宜変更可能であり、特に限定されるものではない。本実施形態では、第2横架材5の直径は、棒状フィン3の直径と同じである。
【0040】
上述した第2実施形態のヒートシンク1においては、第1実施形態のヒートシンク1と同様、複数の棒状フィン3、複数の第1横架材4及び複数の第2横架材5がトラス構造のような複雑形状で組み立てられているため、ヒートシンク1の伝熱面積が従来の板状フィンや棒状フィンを間隔をあけて複数設けた構造と比較して大きくなるうえ、外気が迂回するように流れるため熱伝達特性が高くなる。また、詳細は後述するが、ヒートシンク1の圧力損失の大幅な増大を抑えたまま有効熱伝達率を高めることができるので、伝熱性能の高いヒートシンク1とすることができる。
【0041】
上述した第2実施形態のヒートシンク1においても、棒状フィン3、第1横架材4及び第2横架材5は、いずれも円柱状に形成されているが、第1実施形態と同様に、角柱状の他、種々の断面形状を有する棒状体とすることができる。例えば、図示は省略するが、棒状フィン3、第1横架材4及び第2横架材5のうちの少なくともいずれかを断面視流線形状に形成し、外気の流れる前後方向(Y方向)において、後側に向けて先細るように向きを設定することで、ヒートシンク1を通過する外気の圧力損失を低減することが可能である。
【0042】
また、上述した第2実施形態のヒートシンク2においても、外気の流れる前後方向(Y方向)に延びる第2横架材5は、軸方向(長さ方向)の全長にわたり断面形状(直径)が一定であるが、第1実施形態と同様に、軸方向に一端から他端に向けて次第に断面形状(直径)を大きくすることができる。例えば、図示は省略するが、第2横架材5は、上流側は小さい断面形状を有し、下流側(外気が流れる方向)に向かって次第に大きくなる断面形状を有することができる。これにより、開放系の使用環境(開放系空間)ではヒートシンク1を通過する外気の流量が多くなるので、ヒートシンク1の有効熱伝達率をより高めることができ、伝熱性能をさらに向上させることが可能である。なお、この場合には、棒状フィン3及び第1横架材4は、第2横架材5の断面形状に合わせて、下流側(外気が流れる方向)に向かうに連れて断面形状(直径)を大きくすることが好ましい。これにより、ヒートシンク1の有効熱伝達率をさらに高めることができる。
【0043】
また、上述した第2実施形態のヒートシンク1においても、棒状フィン3は、軸方向(高さ方向)の全長にわたり断面形状(直径)が一定であるが、軸方向に一端から他端に向けて次第に断面形状(直径)を大きくすることができる。例えば、
図13及び
図14に示すように、棒状フィン3は、上端側は小さい断面形状を有し、ベース側2(下方向)に向かって次第に大きくなる断面形状を有することができる。これにより、発熱源からベース2を介して伝達される熱が棒状フィン3の下端から上端まで良好に伝わるので、ヒートシンク1のフィン効率が高められ、棒状フィン3の全表面で効率よく放熱させることが可能である。その結果、ヒートシンク1の熱伝導性を高めることができ、伝熱性能をさらに向上させることが可能である。なお、この場合には、第1横架材4及び第2横架材5は、
図13及び
図14に示すように、棒状フィン3の断面形状に合わせて、ベース2側(下方向)に向かうに連れて断面形状(直径)を大きくすることが好ましい。これにより、ヒートシンク1のフィン効率をさらに高めることができる。
【0044】
また、上述した第2実施形態のヒートシンク1において、第1横架材4及び棒状フィン3のいずれか一方を省いてヒートシンクを形作ることも可能であり、さらには両方を省いて第2横架材のみでヒートシンクを形作ることも可能である。
【0045】
上述した第1実施形態及び第2実施形態のヒートシンク1は、熱伝達性及び圧力損失を考慮して、空隙率εが50%以上95%以下であることが好ましく、60%以上95%以下であることがより好ましい。また、ヒートシンク1の熱伝達性をより高めたい場合には、空隙率εは60%〜80%であることが好ましく、ヒートシンク1の圧力損失をより減少させたい場合には、空隙率εは80%〜95%であることが好ましく、88%〜95%であることがより好ましい。
【0046】
なお、ヒートシンク1の空隙率εは、フィンユニット10を含む仮想空間中の空隙の占める割合であり、ε(%)={1−(V/V´)}×100で表される。なお、Vは、フィンユニット10の体積であり、V´は前記仮想空間の体積(フィンユニット10の最大幅W×長さL×高さH)である。
【0047】
次に、上述した第1実施形態及び第2実施形態のヒートシンク1の製造方法について、
図15〜
図23を用いて説明する。なお、以下の説明では、
図1に示される形態のヒートシンク1を例にして製造方法を説明しているが、製造方法の各工程はいずれの形態のヒートシンクであっても同じである。
【0048】
本発明に係るヒートシンク1の製造方法は、ヒートシンク1の構成材料となる材料粉末を、例えば基材102上に敷き詰めて所定厚みの材料粉末層Mを形成する第1工程と、材料粉末層Mの所定領域の材料粉末を溶融及び凝固、又は焼結させることでブロック体Bを造形する第2工程とを備え、このブロック体B上に、新たな材料粉末層Mの形成及びブロック体Bの造形を繰り返して行うことにより、複数のブロック体Bを上下方向に積層一体化させて、ヒートシンク1を製造するものである。
【0049】
ヒートシンク1の製造装置は、例えば、周囲が囲まれたチャンバ100の内部に平板状の基材102を備えている。この基材102上に材料粉末が供給される。基材102の素材としては、鉄、炭素鋼・合金鋼・ステンレス鋼などの鋼、アルミニウム、チタン、銅などの汎用金属材料、又は、ガラス、ポリイミドなどの耐熱性を有するプラスチック材料、セラミックス材料などを用いることができるが、特に、アルミニウム、チタン、銅、鉄、鋼、ステンレス鋼など、耐熱性、熱容量、熱伝導性、耐食性の高い金属材料を好ましく用いることができる。基材102には、必要に応じてヒーターなどの加熱装置(図示せず)、水冷ヒートシンクやペルチェ素子などの冷却装置(図示せず)を接続し、基材102を常時加熱又は冷却してもよい。また、基材102の表面は、造形されるヒートシンク1との接合性を高めるために、ブラスト処理などの公知の方法により粗面化処理が施されていることが好ましい。なお、基材102を必要としない材料を用いる場合は、基材102を使用しなくてもよい。また、基材102上に放熱対象の発熱体・素子などを設置しておき、この発熱体・素子上に材料粉末を敷き詰めてヒートシンク1を一体に造形するようにしてもよい。さらに、基材102をそのままヒートシンク1のベース2として用い、基材102にフィンユニット10のみを造形してもよい。
【0050】
チャンバ100の内部には、基材102の上方にチャンバ100内を水平方向に往復動可能な幅板状のスキージ103が配備されている。スキージ103は、基材102の表面よりも所定の高さ上方でスライド移動することにより、基材102上に供給された材料粉末を均して、全体の厚みがほぼ一定の平坦な材料粉末の層(材料粉末層M)を形成する。
【0051】
チャンバ100の内部には、チャンバ100内を上下方向に往復動可能なステージ101が配備されている。基材102はステージ101上に取り付けられており、ステージ101の上下動により基材102の上下位置を調整可能である。基材102の上下位置を調整することで、材料粉末層Mの厚みを適宜変更できる。材料粉末層Mの厚みは、製造されるヒートシンク1の寸法精度を向上させるには、薄い方が好ましい。
【0052】
また、製造装置は、材料粉末層Mにレーザ光を照射するレーザ光走査装置104を備えている。材料粉末層Mにレーザ光を照射すると、照射部分の材料粉末が加熱されて溶融する。これを急冷して固化させることにより、照射部分の材料粉末がブロック体Bに造形される。レーザ光走査装置104は、図示は省略するが、レーザ光を出射するレーザ光源とガルバノミラーなどの光学機器とを有しており、ガルバノミラーなどによってレーザ光を材料粉末層M上の任意の領域に所定のパターン形状で走査可能である。よって、材料粉末層Mの特定領域だけを選択して局所的に材料粉末をレーザ光により加熱できるので、レーザ光の照射部分の材料粉末だけを固化させて所望の形状及び大きさのブロック体Bを造形可能である。レーザ光源から出射するレーザ光としては、ファイバーレーザ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、グリーンレーザ、UVレーザなどの種々のレーザを使用することが可能である。
【0053】
なお、本実施形態では、材料粉末を溶融して固化させる方法として、粉末床溶融結合法を利用し、材料粉末を固化させる手段としてレーザ光を用いているが、当該手段としては、レーザ光に限定されるものではなく、例えば電子ビームやプラズマなどを用いてもよい。また、材料粉末を固化させる方法としては、粉末床溶融結合法以外の3Dプリンティング法(付加製造法)を利用してもよく、例えば、指向性エネルギー堆積法を利用することができる。さらに、造形中に切削加工やレーザトリミングを実施してもよく、造形中や造形後にレーザや電子ビーム、化学エッチング、物理エッチングによる表面改質を行ってもよい。
【0054】
また、製造装置は、図示は省略するが、チャンバ100に雰囲気ガスを供給するガスタンクを備えている。チャンバ100内が雰囲気ガスによって満たされることにより、材料粉末層M及びブロック体Bの酸化などが防止される。雰囲気ガスとしては、例えば、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどを例示することができる。また、雰囲気ガスに代えて還元性ガスを用いてもよい。また、材料粉末層M及びブロック体Bの酸化などを防止するためには、チャンバ100内を真空ポンプなどにより減圧するようにしてもよい。
【0055】
上述した構成の製造装置において、まず、
図15に示すように、材料粉末を貯蔵する材料粉末供給部(図示せず)から材料粉末を基材102上に供給した後、スキージ103を水平方向(矢印方向)に移動させることで、基材102上に材料粉末が敷き詰められて材料粉末層Mが形成される(第1工程)。このとき、基材102の上下位置を調整することで、材料粉末層Mの厚さを所望の厚さとすることができる。
【0056】
次に、
図16に示すように、レーザ光走査装置104により、材料粉末層M表面の任意の領域にレーザ光を照射し、この照射部分の材料粉末を加熱する。これにより、レーザ光照射部分の材料粉末が溶融固化し、
図17に示すように、レーザ光を所望の走査経路に沿って照射することによりブロック体Bが造形される(第2工程)。
【0057】
ブロック体Bは、例えば、ヒートシンク1の3次元CADによる立体形状データから変換されたSTLデータのスライスデータに基づき造形される。スライスデータは、ヒートシンク1の立体形状データを等ピッチで上下複数の層に分割した各断面の輪郭形状データであり、スライスデータに基づいて基材102を上下動させるとともに、上下方向に複数積層される各材料粉末層Mに対してレーザ光が所定領域に照射されることで、局所的に材料粉末が溶融固化し、所望の形状を有するブロック体Bが造形される。
【0058】
そして、
図18に示すように、先に形成されたブロック体B及び残存する材料粉末層Mの上に、スキージ103を水平方向に移動させて新たに材料粉末を供給し、所望の厚さからなる新たな材料粉末層Mを形成する(第1工程)。
【0059】
次いで、同様に、新たな材料粉末層Mの表面にレーザ光を走査して、材料粉末層Mの所望の範囲にレーザ光を照射する。これにより、
図19及び
図20に示すように、照射部分の材料粉末が局所的に加熱され、該材料粉末が溶融固化することで、新たなブロック体Bが造形される(第2工程)。材料粉末が溶融固化してブロック体Bが造形される際には、先に造形された下層のブロック体Bと接合されるので、新たに造形されるブロック体Bは下層のブロック体Bと一体化することになる。
【0060】
そして、
図21及び
図22に示すように、上述した第1工程と第2工程とを繰り返し行ってブロック体Bを積み重ねていき、ブロック体Bの層数が所定の層数に達することで、
図23に示すように、所望の三次元形状を有するヒートシンク1が得られる。
【0061】
なお、第2工程において、材料粉末層Mにレーザ光を照射する際の照射条件、つまりは、レーザ光の出力、走査速度、走査ピッチなどは、例えば、出力であれば1000W以下の範囲内で、走査速度であれば7000mm/s以下の範囲内で、走査ピッチであれば0.30mm以下の範囲内で、それぞれ適宜調整可能であり、レーザ光の出力を適宜選択した上で、走査速度、走査ピッチなどを材料粉末の種類や粒径などに応じて適宜調整することにより、欠陥の少ない緻密な構成部材からなるヒートシンク1を製造することができる。
【0062】
次に、上述したヒートシンク1の構成材料である材料粉末について説明する。
【0063】
材料粉末は、通常の2次元プリンタにおけるトナー、インクに相当する。材料粉末は、本実施形態では金属粉末であり、その中でも、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる少なくとも1つを主成分として含有する金属粉末である。金属粉末は、主成分以外にその他の成分として、金属、炭素、セラミックス、樹脂などのその他の材料を含有する合金粉末、複合粉末又は混合粉末であってもよい。
【0064】
アルミニウム(Al)を主成分として含有する場合、材料粉末は、アルミニウム(Al)を60質量%以上含有し、その他の成分としては、珪素(Si)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、リン(P)、バナジウム(V)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)、スカンジウム(Sc)、ホウ素(B)、酸素(O)などから1種又は2種以上を挙げることができるが、珪素(Si)を第2成分として含有することが好ましく、さらにマグネシウム(Mg)を第3成分として好ましく含有させることができる。これらの成分は、製造時に意図的に添加される場合もあれば、不純物として不可避的に混入する場合もある。
【0065】
銅(Cu)を主成分として含有する場合、材料粉末は、銅(Cu)を50質量%以上含有し、その他の成分としては、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ベリリウム(Be)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、珪素(Si)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、テルル(Te)、リン(P)、炭素(C)、酸素(O)などから1種又は2種以上を挙げることができる。これらの成分は、製造時に意図的に添加される場合もあれば、不純物として不可避的に混入する場合もある。
【0066】
鉄(Fe)を主成分として含有する場合、材料粉末は、鉄(Fe)を60質量%以上含有し、その他の成分としては、炭素(C)、珪素(Si)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、銅(Cu)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、ホウ素(B)、酸素(O)などから1種又は2種以上を挙げることができる。これらの成分は、製造時に意図的に添加される場合もあれば、不純物として不可避的に混入する場合もある。
【0067】
チタン(Ti)を主成分として含有する場合、材料粉末は、チタン(Ti)を70質量%以上含有し、その他の成分としては、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、珪素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、パラジウム(Pd)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)などから1種又は2種以上を挙げることができる。これらの成分は、製造時に意図的に添加される場合もあれば、不純物として不可避的に混入する場合もある。
【0068】
さらに、これらの系以外の材料粉末として、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、ジルコニウム(Zr)系、タングステン(W系)などが例示される。
【0069】
なお、材料粉末は、必ずしも金属を主成分として含有する金属粉末(合金粉末、複合粉末又は混合粉末を含む)に限定されるものではなく、セラミックスや樹脂を主成分として含有していてもよく、さらには、セラミックスや樹脂以外にその他の成分としてその他の材料を含有する複合粉末又は混合粉末であってもよい。
【0070】
上述した材料粉末の粒径は、粉末製造条件、分級、篩分けなどにより適宜調整される。材料粉末の平均粒径は、特に限定されるものではなく、ヒートシンク1の製造する際の材料粉末層Mの高さに応じて調整することができ、例えば100μm〜200μmとすることができ、さらには50μm〜100μmとすることができ、さらには5μm〜50μmとすることができる。また、材料粉末の粒子形状は特に限定されるものではなく、略球状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0071】
上述した材料粉末は、例えばガスアトマイズ法や水アトマイズ法によって製造することができるが、その他、回転電極法、遠心力アトマイズ法、メルトスピニング法、メカニカルアロイング法などの機械的プロセス、酸化物還元法やイオン反応法などの化学的プロセスによっても製造することもできる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、上述した実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないため、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものであり、よって、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【実施例1】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0074】
実施例1〜6として、材料粉末に平均粒径が約25μmのアルミニウム系合金粉末(Al−Si−Mg合金粉末)を用いた積層造形により、
図1(Cube)、
図4(Cube-Td)、
図6(Cube-G)、
図8(Cube-C)、
図10(Truss)及び
図13(Truss-C)に示す各構造のヒートシンクを製造した。また、比較例として、材料粉末に同じアルミニウム系合金粉末(Al−Si−Mg合金粉末)を用いた積層造形により、
図24(Pin)に示すように、ベース110上に棒状フィン111が間隔をあけて複数設けられた構造のヒートシンクを製造した。アルミニウム系合金粉末(Al−Si−Mg合金粉末)は、ガスアトマイズ法により作製した。積層造形には、金属粉末積層造形装置(EOS社製のEOSINT M280)を用いた。
【0075】
積層造形時のアルミニウム合金粉末に対するレーザ光走査装置によるレーザ光の照射条件は以下の通りである。
・レーザの種類:Ybファイバーレーザ
・レーザの出力:400W以下
・走査速度:200mm/s〜3000mm/s
・走査ピッチ:0.08mm〜0.18mm
・積層ピッチ:0.02mm〜0.10mm
・基材:アルミニウム合金(A5083)
・雰囲気:アルゴンガス雰囲気
【0076】
各実施例1〜6及び比較例のヒートシンクの寸法は以下の表1に示す通りである。なお、各実施例1〜6及び比較例は、棒状フィンのX方向の間隔P´については5mmとし、棒状フィンのY方向の間隔Pについては、各実施例1,2,4〜6及び比較例では5mmとし、実施例3では1.5mm〜7mmとして、各フィンユニットの表面積がほぼ一定(0.0039m
2、0.0027m
2程度の二水準)になるように棒状フィン、第1横架材及び第2横架材の直径を調整した。また、各実施例1〜6及び比較例について、棒状フィン、第1横架材及び第2横架材の直径を半分にした空隙率の高い例も合わせて検討した。比較例は、角柱断面の一辺の長さを実施例1の直径と同じにして、表面積を実施例1〜6と同等にするために、ベースのY方向の長さLを長くして(0.05m→0.07m)、ベース面積を大きくした。
【0077】
【表1】
【0078】
各実施例1〜6及び比較例の伝熱性能について数値解析により調べた結果を以下に示す。伝熱性能の数値解析には、非構造格子系熱流体解析ソフトSCRYU/Tetra(ソフトウェアクレイドル製)を用いた。乱流モデルには、壁近傍領域での強い粘性応力作用と乱れの減衰作用を再現できる線形低レイノルズ数型乱流モデルのAKNk-εモデルを使用し、流体及び固体内格子総数は約400万点にした。解析条件及び境界条件を
図25及び表2に示す。なお、空気の温度変化に伴う浮力の影響は考慮していない。なお、数値解析では、各ヒートシンクの伝熱性能について、ヒートシンクの全幅W(=50mm)ではなく、
図2、
図5、
図7、
図9、
図11及び
図14などで示されるように、列幅W´を5mmとして一列でモデル化して計算している。
【0079】
【表2】
【0080】
各実施例1〜6及び比較例の伝熱量Q及び圧力損失Δpについて、
図26及び
図27にそれぞれ示す。なお、いずれの図も(a)が低空隙率の場合、(b)が高空隙率を示している。
図26より、入口風速が高いほど各例とも伝熱量Qが大きいことが分かる。また、(a)低空隙率では、実施例6(Truss-C)の伝熱量Qが最も大きく、次いで実施例5(Truss)、実施例3(Cube-G)が大きく、全ての実施例1〜6で比較例(Pin)よりも大きいことが分かった。一方で、(b)高空隙率でも、実施例6(Truss-C)の伝熱量Qが最も大きく、次いで実施例6(Cube-C)、実施例5(Truss)、実施例3(Cube-G)が大きい。なお、比較例(Pin)との比較では、フィンユニットの表面積を各実施例1〜6及び比較例でほぼ一定としたため、実施例6(Truss-C)以外の各実施例1〜5では伝熱量Qが比較例よりも小さいが、比較例のベース面積を各実施例1〜6のベース面積に合わせると、伝熱量Qは5/7程度になると予想される。そうすると、全ての実施例1〜6で比較例(Pin)よりも伝熱量Qが大きくなることが分かる。このように、各実施例1〜6では、比較例(Pin)よりも、伝熱性能が高いことが確認された。
【0081】
また、
図27より、入口風速が高いほど圧力損失Δpは大きくなり、また、比較例(Pin)と比較して各実施例1〜6とも圧力損失Δpは大きいが、実施例1(Cube)、実施例2(Cube-Td)、実施例4(Cube-C)では圧力損失Δpの大幅な増大を抑制でき、実施例2(Cube-Td)では比較例(Pin)と同程度の圧力損失Δpに抑えられることが確認された。
【0082】
次に、各実施例1〜6及び比較例のフィン効率ηについて調べた結果を
図28に示す。
図28より、(a)低空隙率及び(b)高空隙率ともに、比較例(Pin)のフィン効率ηが最も高いが、実施例1〜4についてはフィン効率ηの大幅な低下を抑制でき、実施例4(Cube-C)では比較例(Pin)に近いフィン効率ηとすることができる。
【0083】
最後に、各実施例1〜6及び比較例のベース面積基準の有効熱伝達率hに関して、圧力損失との関係を
図29に示す。なお、当該有効熱伝達率hは、h=q/(T
w−T
in)で算出され、qは、q=Q/(W´×L)で表される。(a)低空隙率では、圧力損失に対して、実施例3(Cube-G)以外のいずれの実施例1,2,4〜6についても良好な有効熱伝達率が得られ、特に実施例6(Truss-C)の有効熱伝導率が最も高く、実施例2(Cube-Td)、実施例5(Truss)、実施例6(Truss-C)についても有効熱伝導率が比較例(Pin)よりも高いことが分かった。これは、
図25及び
図26に示したように、実施例2(Cube-Td)では伝熱性能を下げることなく圧力損失を抑えられたこと、また、実施例5(Truss)、実施例6(Truss-C)では圧力損失は大きいものの、三次元的な千鳥配列特有の高い熱伝達性を得られたことが理由として考えられる。一方、(b)高空隙率では、圧力損失に対して、いずれの実施例1〜6についても良好な有効熱伝達率が得られ、特に実施例6(Truss-C)の有効熱伝導率が最も高く、実施例4(Cube-C)、実施例6(Truss-C)についても有効熱伝導率が比較例(Pin)よりも高いことが分かった。実施例4(Cube-C)については、
図28に示したように、実施例4(Cube-C)のフィン効率が高いことが理由として考えられる。また、実施例3(Cube-G)は、(a)低空隙率よりも(b)高空隙率の場合において、圧力損失に対する有効熱伝達率が向上していることが分かった。なお、実施例3(Cube-G)については、気流方向(Y方向)に対して、下流側に向かって棒状フィン、第1横架材及び第2横架材が太くなる構造であるため、上述した非開放系空間で用いられる場合では、圧力損失の影響で有効熱伝達率が大きく低減したと考えられるが、開放系空間で用いられる場合には、ヒートシンク内での静圧は上流と下流で大きく異なる、つまり、上流側では静圧が低く下流側で高いため、流量は上流側で大きく、下流に向かうに従って流れと直角方向にベクトルが変化する。よって、ヒートシンク内での流量は比較的大きくなり、有効熱伝達率が高められると想定されるため、伝熱量が大きくなると考えられる。
【0084】
このように、本発明によると、圧力損失の大幅な増大を抑えつつ伝熱性能の高いヒートシンクを提供できることが確認された。
【0085】
最後に、材料粉末に平均粒径が約25μmのアルミニウム系合金粉末(Al−Si−Mg合金粉末)を用い、材料粉末積層造形装置(EOS社製のEOSINT M280)による積層造形により、幅50mm、長さ50mm、高さ30mmの寸法の
図1(Cube)及び
図10(Truss)に示す各構造のヒートシンクを製造した。そして、Cube及びTrussの各ヒートシンクの伝熱性能について実験装置(
図30に示す)により実験した結果を
図31に示す。実験は、室温が20℃で一定の非開放系空間で行った。送風機で吸い込まれた空気はテストセクション内でヒートシンクと熱交換して大気へ放出される。気流の流量を非開放系空間の出口で測定し風速に換算するとともに、確認のため非開放系空間の入口にて風速も測定した。ラバーヒータの制御は、ヒートシンクのベース底面の温度が373K(100℃)になるように投入電力を調整し、その時の電力が伝熱量と等しいとして結果を評価した。
【0086】
図31は、Cube及びTrussの各ヒートシンクの伝熱量及び圧力損失について、上述した解析結果と実験結果とを比較するグラフである。
図31によると、解析値と実験値とはほぼ一致しており、解析結果が妥当であることが確認された。