(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864413
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】GSRセンサ素子
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20210419BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
G01R33/02 D
H01L29/82 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-110509(P2017-110509)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2018-205102(P2018-205102A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111523
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 良文
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】菊池 永喜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一恵
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳一
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−151413(JP,A)
【文献】
特開2017−070709(JP,A)
【文献】
特開2005−315812(JP,A)
【文献】
特開2006−300906(JP,A)
【文献】
特開2001−052947(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/044820(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/047637(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0231222(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0338474(US,A1)
【文献】
特許第5747294(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
H01L 29/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極配線基板上に、感磁体である磁性ワイヤとその周りに巻きつけたコイルおよびそれらの端部に外部の集積回路と連結するための4つの端子を形成したGSRセンサ素子において、
前記コイル内に絶縁材料を介して電流の向きが反対方向からなる一対の前記磁性ワイヤを設置し、
前記コイルは、コイル下部とコイル上部および両者を連結するジョイント部とからなり、
前記一対の磁性ワイヤは、前記コイル内の絶縁性壁により分離されていることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁性ワイヤは、複数の対からなることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項3】
請求項1において、
前記磁性ワイヤは、磁性ワイヤの外周が絶縁材料で被覆されていることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項4】
請求項1において、
前記一対の磁性ワイヤは前記コイル下部にコイル下部配線を施して絶縁性材料を塗布した前記基板の溝に埋設されて接着機能およびレジスト機能を有する絶縁性樹脂で固定し、
前記一対の磁性ワイヤは上部を前記絶縁性樹脂で覆われ、前記コイル上部にコイル上部配線を行い、前記ジョイント部は前記コイル下部配線の端部と前記コイル上部配線の端部を電気的接合してコイルを形成していることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項5】
コイルは、凹形状のコイル下部と平坦形状のコイル上部および両者を連結するジョイント部からなり、一対の磁性ワイヤは前記コイル下部にコイル下部配線を施し、絶縁性材料を埋設した基板の溝に介挿され、前記溝上面には前記コイル上部にコイル上部配線を行い、前記ジョイント部は前記コイル下部配線の端部と前記コイル上部配線の端部を電気的接合して前記コイルを形成していることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項6】
コイルは、平坦形状のコイル下部と凸形状のコイル上部および両者を連結するジョイント部からなり、一対の磁性ワイヤは基板の平坦面に施した前記コイル下部に施したコイル下部配線の上面に絶縁性樹脂で固定し、前記一対の磁性ワイヤの側面部および上部は前記絶縁性樹脂により覆われ、前記コイル上部にコイル上部配線を行い、前記ジョイント部は前記コイル下部配線の端部と前記コイル上部配線の端部を電気的接合して前記コイルを形成していることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項7】
電極配線基板上に、感磁体である磁性ワイヤとその周りに巻きつけたコイルおよびそれらの端部に外部の集積回路と連結するための4つの端子を形成したGSRセンサ素子において、
前記コイル内に絶縁材料を介して電流の向きが反対方向からなる一対の前記磁性ワイヤを配設し、
前記コイルは、コイル下部配線とコイル上部配線および両者を連結するジョイント部とからなり、
前記一対の磁性ワイヤは第1の磁性ワイヤと第2の磁性ワイヤとからなり、前記第1の磁性ワイヤと前記第2の磁性ワイヤは平行に配置され、前記電流の向きに応じた前記第1の磁性ワイヤの第1端部と第2端部、前記第2の磁性ワイヤの第1端部と第2端部とを有し、前記第1の磁性ワイヤの前記第1端部と前記第2の磁性ワイヤの前記第2端部とは前記4つの端子の第1及び第2の端子にそれぞれ接続され、前記第1の磁性ワイヤの前記第2端部と前記第2の磁性ワイヤの前記第1端部とが相互に接続され、前記第1の磁性ワイヤと前記第2の磁性ワイヤの間は前記コイル内の絶縁性壁により分離されて、
前記コイルは前記第1の磁性ワイヤと前記第2の磁性ワイヤ、及び前記絶縁隔壁とを内包するように巻回されていることを特徴とするGSRセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つのコイル内に1本の磁性ワイヤのみ有するGSRセンサ素子に対して、電流の向きが反対方向からなる一対の磁性ワイヤを一つのコイル内に設置して高感度化および低消費電力化を可能とするための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療は広く普及しているが、X線被曝や造影剤の過度の投下や医師の熟練度の多少が問題となっている。それを解決する方策として、磁気センサをカテーテルに内蔵してカテーテル先端の位置や方位を測定し、その値を使ってリモートコントロール式のカテーテル治療の確立が望まれている。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されているGSRセンサでは、直線性、感度、小型サイズおよび消費電力の点で十分ではなかった。
つまり、立上がりパルス検波を採用すると直線性に難点があり、立下りパルス検波を採用すると感度、消費電力の点で難点があり、素子のASICの小型化が難しかった。
また、素子のサイズを小さくすると感度が低下するので大幅な小型化は困難であった。
以上の問題の解決が求められていた。
【0004】
本発明は、立上がりパルス検波の採用にもかかわらず、優れた直線性を確保して、感度および消費電力を改善するものである。また、感度を大幅に改善することで素子の小型化を可能にする。消費電力を低減することでASIC内のコンデンサ容量を大幅に小さくしてASICの小型化も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5839527号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GSRセンサにおいて、一つのコイル内に磁性ワイヤを2本設置すると感度は2倍に増加し、立上がりパルス検波を採用するとパルス消費電力を0.4mWから0.04mWへと1/10に低減できることは、従来から知られている。
ここで、GSRセンサとは超高速スピン回転効果(GHz Spin Rotation effect)を基礎にした超高感度マイクロ磁気センサをいう。
しかし、GSRセンサ素子の出力電圧はパルス電流によって誘起される電圧
(以下、誘導電圧という。)と外部磁界の磁界強度に比例して出力する電圧
(以下、磁界電圧という。)の2つの電圧からなっている。しかも厄介なことに磁界によって磁性ワイヤの抵抗が変化し、ワイヤ電圧の変化および誘導電圧に影響を及ぼす。
立下りパルス検波では、磁界電圧のピーク時間t
mと誘導電圧のピーク時間t
iが離れており、時間t
mでは誘導電圧は十分減衰している(
図7)。
一方、立上がりパルス検波では、t
mとt
iが近くて時間t
mでは誘導電圧はかなりの大きさを持っており、
その磁界による変動は無視できない(図8)。GSR素子の出力電圧から誘起電圧を取り除き、そして立上がりパルス検波方式のGSRセンサを実現することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の技術課題を鋭意検討した結果、誘導電圧が磁性ワイヤに流れる電流の向きに対して正負が反対になることを確認した。その上で、一つのコイル内に正負の反対向きの電流が流れる2本の磁性ワイヤを設置すると、誘導電圧はキャンセルされて磁界に比例する電圧のみを検出できるという本発明の技術的思想に至った。
【0008】
1本の磁性ワイヤのGSRセンサ素子の代表的なサイズのコイルは、溝幅が20μm、コイル幅が40μmである。2本の磁性ワイヤのGSRセンサ素子は、その溝幅を40μmとし、中央に分離壁を設けて2本の磁性ワイヤを配置し、コイル幅を50μmとする。GSRセンサ素子のサイズとしては、1本の磁性ワイヤと2本の磁性ワイヤとはほとんど同じである。
【0009】
素子の構造として3種類の構造がある。
一つは磁性ワイヤより深い溝の中に2本の磁性ワイヤを配置するタイプにて下コイルは凹形状で、上コイルは平面形状である。二つめは磁性ワイヤの直径の半分程度の浅い溝に2本の磁性ワイヤを配置するタイプにて下コイルは凹形状で、上コイルは凸形状である。三つめは平面の上にШ形ガイドを形成し、その中に1本ずつ計2本の磁性ワイヤを配置するタイプで、下コイルは平面形状で、上コイルは凸形状である。
いずれの種類の構造においても2本の磁性ワイヤの間には分離壁を設けている。
【0010】
下コイルと上コイルは半ピッチずらして配置され、両者の平面基板上の接合面にて電気的接続して螺旋状のコイルを形成する。二つのコイル端部は、それぞれ二つのコイル電極と接続される。
【0011】
磁性ワイヤとコイルとの間の絶縁は、絶縁性材料で被覆した磁性ワイヤを採用する方法および溝内に埋設した絶縁性レジスト内に磁性ワイヤを介挿する方法、また両者を組み合わせた絶縁方法がある。絶縁を確実にするためには絶縁被覆した磁性ワイヤを用いることが好ましい。
磁性ワイヤの端部は、絶縁性材料から磁性ワイヤの金属部分が露出され、ワイヤ電極と電気的接合する配線が施された。
【0012】
2本の磁性ワイヤを用いるGSRセンサ素子の出力は、磁界に比例する磁界電圧のみのため立上がりパルス検波を採用しても、優れた直線性を維持することができる。
立上がりパルス検波の出力電圧は、立ち下がり検波の出力電圧の2.5倍となる。しかも2本の磁性ワイヤからなるので5倍の出力電圧を得ることができる。このことは、コイルの巻き数Nを1/5とすることができることから素子のコイル長さを1/5と短くなり、素子の小型化することができることを意味している。
【0013】
さらに、パルス電流のパルス幅を立ち上がり検波が必要とする十分長いパルス幅、例えば10nsから1ns以下にすることができる。これによりパルス電流の消費電力を1/10以下にすることができる。
【0014】
GSRセンサ用ASICは、パルス電流発信のための電力蓄積用のコンデンサーを内蔵している。その大きさはASICの50%を占めている。そのコンデンサーサイズを1/10にすることができれば、ASICのサイズをほぼ半減できる。
【発明の効果】
【0015】
1つのコイル内に2本の磁性ワイヤを配置するGSRセンサ素子により、コイル電圧のうちの誘導電圧成分をなくして、立上がりパルス検波の出力電圧の磁界依存性の直線性を改善すると同時に感度(単位磁界の強さ1G当たりの出力電圧)を5倍に増加させ、かつ、パルス電流の消費電力を1/10以下に減少させることができる。これにより、同一出力電圧の条件下では素子サイズ、ASICサイズの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態および実施例のGSRセンサ素子を示す正面の概念図である。
【
図2A】実施形態のGSRセンサ素子を示す
図1のA1−A2線に沿う断面図である。
【
図2B】実施形態のGSRセンサ素子を示す
図1のA3−A4線に沿う断面図である。
【
図2C】実施形態のGSRセンサ素子を示す
図1のA5−A6線に沿う断面図である。
【
図3】実施形態のGSRセンサ素子の他のタイプ(凹形状)の断面図である。
【
図4】実施形態のGSRセンサ素子の他のタイプ(凸形状)の断面図である。
【
図5】実施例におけるGSRセンサの電子回路を示すブロック回路図である。
【
図6】実施例のGSRセンサおよび比較例における磁気センサの外部磁場対出力電圧の特性図である。
【
図7】立下がりパルス検波における磁界電圧と誘導電圧の時間的変化の推移図である。
【
図8】立上がりパルス検波における磁界電圧と誘導電圧の時間的変化の推移図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態のGSRセンサ素子1は、
図1、
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示されるように、電極配線基板10の上に感磁体であるCo合金の絶縁被膜付磁性ワイヤ2(21および22)、磁性ワイヤ2の周りに巻き付けたコイル3(31および32)、4つの端子(23および25ならびに34および36)からなる。
【0018】
磁性ワイヤ2は、基板中央部の溝11内に絶縁性壁41により分離される2本の磁性ワイヤ21および22が配置されている。
図1の右側に図示したワイヤ入力電極26(+)側の磁性ワイヤ21の上部は、ワイヤ端子23およびワイヤ連結部21Aを介してワイヤ入力電極26(+)と接続され(
図2Bの右部分)ている。
磁性ワイヤ21の下部は、ワイヤ接合部21Bおよびワイヤ間連結部23を介して左側に図示したワイヤ接合部22Bを介してワイヤ出力電極27(−)側の磁性ワイヤ22の下部にて接続されている(
図2C)。
磁性ワイヤ22の上部は、ワイヤ端子25を介してワイヤ出力電極27(−)と接続されている(
図2Bの左部分)。
【0019】
次に、コイル3は、
図2Aに示すように下コイル31、上コイル32および両者のコイルを接合するジョイント部33からなる。
下コイル31は溝11内および基板10の上に凹形状に形成され、上コイル32は一対の磁性ワイヤ21および22の上部から側部に絶縁性材料4を介し、さらに基板10の上にかけて形成されている。
下コイル31の端部と上コイル32の端部は、基板10の上でジョイント部33を形成して接続されている。
なお、一対の磁性ワイヤ2(21および22)の間は絶縁性壁41で絶縁され、磁性ワイヤ2とコイル3の間は絶縁性材料4で絶縁されている。
【0020】
よって、右側の磁性ワイヤ21は下方向に電流が流れ、左側の磁性ワイヤ22は上方向に
電流が流れることによって、一つのコイル内に絶縁材料を介して電流の向きが反対方向となり、誘導電圧を相殺することができる
【0021】
本実施形態では、2本の磁性ワイヤからなる一対の磁性ワイヤを一つのコイル内に絶縁性材料を介して電流の向きが反対方向になるように設置しているが、一つのコイル内に複数の対からなる磁性ワイヤを設置してもよい。
【0022】
また、本実施形態では、磁性ワイヤは絶縁性材料であるガラスを被覆した磁性ワイヤを使用しているが、絶縁性材料を被覆していない磁性ワイヤを使用してもよい。
【0023】
素子の構造として本実施形態では、
図2Aに示すように磁性ワイヤ2の直径の半分程度の浅い溝11に2本の磁性ワイヤ(21および22)を配置するタイプにて下コイル31は凹形状で、上コイル32は凸形状である。
【0024】
他の構造としては、
図3に示すように磁性ワイヤ2より深い溝11の中に2本の磁性ワイヤ(21および22)を配置するタイプにて下コイル31は凹形状で、上コイル32は平面形状である。また、
図4に示すように三つめは平面の上にШ形ガイドを形成し、その中に1本ずつ計2本の磁性ワイヤ(21および22)を配置するタイプで、下コイル31は平面形状で、上コイル32は凸形状である。
【0025】
いずれの種類の構造においても2本の磁性ワイヤ(21および22)の間には分離壁を設けている。下コイル31の端部と上コイル32の端部を接合するジョイント部33を設けてコイル3を形成する。
【0026】
次に、GSRセンサ素子の製造方法を説明する。
電極配線基板10は、Si基板にSiN被膜を施しているものを使用する。磁性ワイヤ2は、直径1〜20μm、長さ0.07〜1.0mmのガラス絶縁被膜付のアモルファスワイヤを使用する。
先ず素子1は、その幅を0.25mmとし、その中央部に幅20〜60μm、深さ2〜20μmの溝11を形成する。
【0027】
次に溝11に沿って下コイル31と基板面上に電極配線を行う。その後、溝11の中央部に絶縁性分離壁41を形成して2つの溝形状として、そこに2本の磁性ワイヤ21および22をそれぞれ配置する。その後、基板全面に絶縁性レジストを塗布する。2本の磁性ワイヤ(21および22)の上部は薄く塗布する。そこに上コイル32をフォトリソ技術で形成する。
下コイル31と上コイル32の端部は基板平面上にてたすき掛け的に接合するジョイント部33を形成してコイルピッチ2〜10μmのコイル3とする。コイル端子34はコイル出力電極35(+)に接続され、コイル端子35はコイルグランド電極37(−)に接続される。
【0028】
2本の磁性ワイヤの4つの端部については、絶縁被膜のガラスを除去し、2つの端部の1つには金属蒸着によりワイヤ端子23および接続部21A形成し、ワイヤ入力電極26(+)までの電気的接続を行なうとともに他の1つには金属蒸着によりワイヤ端子25および接続部22Aを形成し、ワイヤグランド電極27(−)までの電気的接続を行なう
そして、他の2つの端部には金属蒸着(21Bおよび22B)を行なうとともに2つの端部を結ぶ連結部23を金属蒸着で形成する。
このようにして、ワイヤ入力電極26(+)からワイヤグランド電極27(−)までパルス電流の通電用の配線とする。
【0029】
本実施形態により、出力電圧は磁場Hに対して正弦波出力特性を示し、測定レンジは±3〜90Gにて直線性は0.3%以下と非常に良好である。
感度は50〜2000mV/Gにて同じ磁性ワイヤの長さからなるGSRセンサ素子の役5倍である。
パルス消費電力は、0.3mW(0.15mA)である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例のGSRセンサ素子について、
図1、
図5および
図6を用いて以下に説明する。
【0031】
基板10は、Si基板からなりSiNによる絶縁被膜されており、その大きさは長さ0.2mm、幅0.2mm、高さ0.2mmである。磁性ワイヤ2は、CoFeSiB系合金を使う直径10μmでガラス被覆されたアモルファスワイヤで、長さ0.20mmである。
【0032】
基板10の溝11の幅は40μm、深さは6μmである。溝11内の絶縁性レジストによる分離壁41の大きさは、幅2μm、高さ6μmである。
【0033】
コイル3は、幅50μm、高さ14μmにて平均内径(高さと幅で形成されるコイル内断面積と同一となる円の直径)は26μm、コイルピッチは5μm、コイル巻き数は28回である。
【0034】
次に、GSRセンサ素子1の特性を
図5に示すMIセンサ用の電子回路を用いて評価した。
電子回路5は、パルス発信器51と前記GSRセンサ素子1とバッファー回路53を有する信号処理回路52とからなる。 信号は、1GHzに相当する100mAの強さのパルス信号で、立上がり時間0.5nsec、パルス幅1nsec、立下がり時間0.5nsecのパルス電流を入力する。
パルス信号はアモルファスワイヤ2に入力され、そのパルス印加中に電磁コイル3には外部磁界に比例した電圧が発生し、立上がりパルス検波を行なう。
【0035】
信号処理回路52は、コイル3に発生したその電圧を、バッファー回路53に入力し、そこからの出力に電子スイッチ55を介してサンプルホールド回路56に入力される。電子スイッチ55の開閉のタイミングは、検波タイミング整回路54で立上がりパルス信号に適切なタイミングで検波するように調整し、その時の電圧をサンプルホールドする。その後その電圧を増幅器57にて所定の電圧に増幅する。
【0036】
前記電子回路からのセンサ出力を
図6に示す。
図6の横軸は外部磁場の大きさ、縦軸はセンサ出力電圧である。
センサ出力は正弦波出力特性を示し、arcsin変換することで±90Gの範囲で直線性を示す。非直線性は0.3%である。感度は210mV/Gである。
【0037】
比較例1として市販製品AMI306に使用されているMI素子(長さ0.6mm、幅0.3mm)、および比較例2として自動車用GSRセンサ素子(長さ0.15mm、幅0.20mm)を同一の電子回路にて測定評価した。その結果を
図6の比較例1および2に示す。
磁界の強さ90 Oeにおけるセンサ出力電圧は、比較例1のMIセンサは0.1V、比較例2のGSRセンサは0.3Vに対して本発明のGSRセンサは1.5Vと非常に優れた感度が得られてる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明のGSRセンサ素子は非常に小型で高感度である。よって、本素子からなるGSRセンサは非常に高感度、小型かつ低消費電力であるためにカテーテルに内臓することができ、またスマートフォンなどの幅広い分野にも適応が可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1:GSRセンサ素子板、10:基板、11:基板上の溝
2:磁性ワイヤ、21:一対の磁性ワイヤの一つ、22:一対の磁性ワイヤの他の一つ、
21A:ワイヤ端子とワイヤ入力電極(+)との連結部、
22A:ワイヤ端子とワイヤ出力電極(−)との連結部、
21B:ワイヤ接合部、22B:ワイヤ接合部、
23:磁性ワイヤの端子、24:ワイヤ間連結部、25:磁性ワイヤの端子
26:ワイヤ入力電極(+)、27:ワイヤ出力電極(−)
3:コイル、31:下コイル、32:上コイル、33:ジョイント部
4:絶縁性材料、41:絶縁壁
5: 電子回路
51:パルス発振器 52:信号処理回路 53:バッファー回路 54:検波タイミング調整回路、55:電子スイッチ、56:サンプルホールド回路、57:増幅器