(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対する前記(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)のモル比(A2/A3)が、0.01〜0.07である、請求項1に記載のポリウレタン系シーリング材用水系プライマー組成物。
  前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対する前記(メタ)アクリル酸モノマー(A4)のモル比(A4/A3)が、0.05〜0.2である、請求項1又は2に記載のポリウレタン系シーリング材用水系プライマー組成物。
  前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対する前記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)のモル比(A5/A3)が、0.08〜0.18である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン系シーリング材用水系プライマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
  本発明について以下詳細に説明する。
  なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを表す。
  また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
  本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
  本明細書において、耐水性により優れることを本発明の効果により優れるということがある。
  本明細書において、エポキシ基含有重合性モノマー(A1)をモノマー(A1)ということがある。エポキシ基含有重合性モノマー(A1)以外の、(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)、(メタ)アクリル酸モノマー(A4)、ヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)についても同様である。
 
【0010】
[シーリング材用水系プライマー組成物]
  本発明のシーリング材用水系プライマー組成物(本発明の組成物)は、
  (メタ)アクリル粒子を含む(メタ)アクリル系エマルジョンと、第3級アミン類(B)とを含有し、
  前記(メタ)アクリル粒子が(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)を重合させて得られるポリマーの粒子であり、
  前記重合性モノマー(A)が、エポキシ基を有するエポキシ基含有重合性モノマー(A1)と、(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)と、(メタ)アクリル酸モノマー(A4)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)とを含み、
  前記(メタ)アクリル粒子の含有量が、15〜60質量%である、シーリング材用水系プライマー組成物である。
 
【0011】
  本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
  本発明の組成物がプライマーとして使用されると、(メタ)アクリル粒子が有するエポキシ基が第3級アミン類(B)によって開環してヒドロキシ基を生成し、上記ヒドロキシ基が少なくともシーリング材と相互作用することによって、水の浸入を抑制し、耐水性に優れると考えられる。
  また、シーリング材が付与される基材が例えばモルタルのような無機素材である場合、上記ヒドロキシ基は上記無機素材と相互作用することができ、更に耐水性に優れると考えられる。
  また、(メタ)アクリル粒子を形成するポリマーにおいて、上記ポリマーはエポキシ基を有し、第3級アミン類(B)の触媒的作用により一部のエポキシ基同士が開環結合することで、ポリマー主鎖が架橋するため、エポキシ基等を有する低分子化合物を含有する組成物と比較して、エマルジョン乾燥後に生成するプライマー膜の耐水性が優れると考えられる。
  以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
 
【0012】
<(メタ)アクリル系エマルジョン>
  本発明の組成物に含有される(メタ)アクリル系エマルジョンは、分散質としての(メタ)アクリル粒子と水等の分散媒とを含み、(メタ)アクリル粒子が分散媒中に分散(懸濁)しているものである。
  なお、本発明において、分散質である(メタ)アクリル粒子の相は、液相であっても固相であってもよい。
  すなわち、一般的には、液相である分散媒に液相である分散質が分散した系を「エマルジョン」といい、液相である分散媒に固相である分散質が分散した系を「サスペンション」というが、本発明においては、「エマルジョン」は「サスペンション」を含む概念とする。
 
【0013】
  分散媒は少なくとも水を含む。分散媒は水以外に更に例えばアルコールのような水溶性の有機溶媒を含んでもよい。分散媒は蒸留水が好ましい態様の1つとして挙げられる。
 
【0014】
  本発明において、(メタ)アクリル粒子の含有量は本発明の組成物全体に対して15〜60質量%である。(メタ)アクリル粒子の含有量は、本発明の効果がより優れ、乾燥性に優れる点で、本発明の組成物全体に対して、20〜60質量%であることが好ましく、25〜60質量%であることがより好ましい。
  本発明において、(メタ)アクリル粒子の含有量は、(メタ)アクリル系エマルジョンの製造に使用される重合性モノマー(A)の使用量がそのまま反映されたものとする。(メタ)アクリル粒子は未反応の重合性モノマー(A)を含んでもよい。(メタ)アクリル粒子の含有量に、(メタ)アクリル粒子を製造する際に使用される重合開始剤、及び、本発明の組成物に含有される第3級アミン類は含まれない。
  また、(メタ)アクリル粒子は(メタ)アクリル系エマルジョンの固形分となる。
 
【0015】
<(メタ)アクリル粒子>
  (メタ)アクリル系エマルジョンに含まれる(メタ)アクリル粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)を重合させて得られるポリマーの粒子である。
  上記ポリマーの主鎖は、(メタ)アクリロイル基に由来する繰り返し単位を含むものであれば特に制限されない。
 
【0016】
  (メタ)アクリル粒子は、エポキシ基と、加水分解性シリル基と、アルキルエステルと、カルボキシ基と、ヒドロキシ基(以下これらをエポキシ基等ということがある。)とを有する。加水分解性シリル基はシラノール基を有してもよい。
 
【0017】
  (メタ)アクリル粒子において、(メタ)アクリロイル基に由来する繰り返し単位が有するカルボニル基と、エポキシ基等とは直接又は有機基を介して結合してもよい。上記カルボニル基が上記カルボキシ基又は上記アルキルエステルを形成してもよい。
 
【0018】
  有機基は特に制限されない。例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
  炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む)、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。炭化水素基は不飽和結合を有してもよい。
  ヘテロ原子は特に制限されない。例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲンが挙げられる。ヘテロ原子は、ヘテロ原子同士、又は、ヘテロ原子と炭素原子及び/若しくは水素原子とが組み合わされて官能基を形成してもよい。ヘテロ原子は炭化水素基を形成する炭素原子と置き換わってもよい。
 
【0019】
  (メタ)アクリル粒子の重量平均分子量は、本発明の効果がより優れ、被着体に対する濡れや低粘度等の観点から、50,000〜400,000が好ましく、70,000〜300,000がより好ましい。
  なお、アクリル粒子の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる重量平均分子量である。
 
【0020】
  (メタ)アクリル粒子の平均粒子径は、例えば0.6μm以下とすることができ、被着体に対する濡れの観点から、0.58μm以下が好ましく、0.55μm以下がより好ましい。
  一方、(メタ)アクリル粒子の平均粒子径の下限値としては、本発明の効果がより優れる点で、0.01μm超が好ましく、0.015μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましい。
  なお、(メタ)アクリル粒子の平均粒子径は、粒度径分布測定機(Nanotrac  UPA−EX150、日機装社製)を用いて測定した値である。
 
【0021】
<重合性モノマー(A)>
  (メタ)アクリル系エマルジョンの製造に使用される重合性モノマー(A)は、エポキシ基を有するエポキシ基含有重合性モノマー(A1)と、(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)と、(メタ)アクリル酸モノマー(A4)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)とを含む。
 
【0022】
<エポキシ基含有重合性モノマー(A1)>
  重合性モノマー(A)としてのエポキシ基含有重合性モノマー(A1)は、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物である。
 
【0023】
  (メタ)アクリロイル基とエポキシ基とは有機基を介して結合することができる。有機基は上記と同様である。
 
【0024】
  エポキシ基含有重合性モノマー(A1)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
  式(1)中、R
11はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であり、R
12は水素原子又はメチル基である。
  ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は上記と同様である。ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基はエーテル結合を有してもよいアルキレン基であることが好ましい。
 
【0025】
  具体的なエポキシ基含有重合性モノマー(A1)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
 
【0026】
  モノマー(A1)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。後述する、モノマー(A2)、(A3)、(A4)、(A5)も同様である。
 
【0027】
<(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)>
  重合性モノマー(A)としての(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)は、(メタ)アクリロイル基と加水分解性シリル基とを有する化合物である。
  加水分解性シリル基が有する加水分解性基としては、例えば、アルコキシシリル基、フェノキシ基が挙げられる。
  アルコキシシリル基が有するアルコキシ基は特に制限されない。例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
 
【0028】
  1個の加水分解性シリル基が有する加水分解性基は1〜3個とできる。
  1個の加水分解性シリル基が有する加水分解性基が1〜2個である場合、上記加水分解性シリル基に結合する、加水分解性基以外の基は特に制限されない。例えば、炭化水素基とすることができる。炭化水素基は特に制限されない。例えば、上記と同様のものが挙げられる。炭化水素基はメチル基、エチル基のようなアルキル基であることが好ましい。
 
【0029】
  モノマー(A2)1分子が有する(メタ)アクリロイル基は1個又は複数とできる。
  モノマー(A2)1分子が有する加水分解性シリル基は1個又は複数とできる。
  モノマー(A2)において(メタ)アクリロイル基と加水分解性シリル基とは有機基を介して結合することができる。有機基は上記と同様である。
 
【0030】
  (メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)としては、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
 
【0031】
  なかでも、本発明の効果がより優れ、貯蔵安定性に優れる点で、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。
 
【0032】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)>
  重合性モノマー(A)としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであれば特に制限されない。
  アルキルエステルを形成するアルキル基は特に制限されない。アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
 
【0033】
  (メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
 
【0034】
<(メタ)アクリル酸モノマー(A4)>
  重合性モノマー(A)としての(メタ)アクリル酸モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
 
【0035】
<ヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)>
  重合性モノマー(A)としてのヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)は、(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とを有する化合物であれば特に制限されない。
 
【0036】
  (メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とは有機基を介して結合することができる。
  有機基は特に制限されない。有機基は上記と同様である。
 
【0037】
  ヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
  式(2)中、R
21はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であり、R
22は水素原子又はメチル基である。
  ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は上記と同様である。ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基はアルキレン基であることが好ましい。
 
【0038】
  具体的なヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
 
【0039】
(モノマーの量比)
・A1/A3
  (メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対するエポキシ基含有重合性モノマ−(A1)のモル比(A1/A3)は、本発明の効果がより優れ、貯蔵安定性(安定性ともいう。以下同様。)に優れる点で、0.02〜0.12であることが好ましく、0.04〜0.12がより好ましい。
 
【0040】
・A2/A3
  (メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対する(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)のモル比(A2/A3)は、本発明の効果がより優れ、安定性に優れる点で、0.01〜0.07であることが好ましく、0.014〜0.07がより好ましい。
 
【0041】
・A4/A3
  (メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対する(メタ)アクリル酸モノマー(A4)のモル比(A4/A3)は、本発明の効果がより優れ、安定性に優れる点で、0.05〜0.2であることが好ましく、0.1〜0.2がより好ましい。
 
【0042】
・A5/A3
  (メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に対するヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)のモル比(A5/A3)は、0.08〜0.18であることが好ましく、0.08〜0.15がより好ましい。
 
【0043】
・モノマー(A1)の含有量
  モノマー(A1)の含有量は、本発明の効果がより優れ、安定性に優れる点で、モノマー(A1)、(A2)、(A3)、(A4)及び(A5)の合計モル数に対して、1〜10モル%であることが好ましく、2〜9モル%であることがより好ましい。
 
【0044】
・モノマー(A1)及びモノマー(A2)の合計含有量
  モノマー(A1)及びモノマー(A2)の合計含有量は、本発明の効果がより優れ、安定性に優れ、耐水性と安定性のバランスに優れる点で、モノマー(A1)、(A2)、(A3)、(A4)及び(A5)の合計モル数に対して、1.5〜10.5モル%であることが好ましく、1.5〜10モル%であることがより好ましい。
 
【0045】
((メタ)アクリル系エマルジョンの製造方法)
  (メタ)アクリル系エマルジョンの製造方法は、特に限定されない。例えば、水等の分散媒中において、重合開始剤の存在下で重合性モノマー(A)を重合させることによって、(メタ)アクリル粒子が分散質として分散した(メタ)アクリル系エマルジョンを得る方法が挙げられる。
 
【0046】
  上記製造方法に使用される重合開始剤は、(メタ)アクリロイル基のようなビニル系官能基を有するモノマーをラジカル重合させることができる化合物であれば特に制限されない。例えば、2,2′−アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物;過酸化ベンゾイル(BPO)のような過酸化物が挙げられる。
  重合開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
 
【0047】
  重合開始剤の使用量は、モノマー(A1)〜(A5)の合計モル数に対して、0.002〜1モル%が好ましい。
 
【0048】
  上記製造方法に使用される分散媒は上記と同様である。分散媒の使用量は、重合性モノマー(A)100質量部に対して、60〜700質量部とすることができる。
上記製造方法における反応温度は60〜80℃とすることができる。
  重合は撹拌しながら行うことができる。
 
【0049】
  上記製造方法には、更に、中和剤を用いてよい。
  中和剤としては、例えば、カルボキシ基のような酸性基を中和できるものであれば特に限定されない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム;アンモニア水;後述する第3級アミン類(B)等が挙げられる。
  中和剤は、例えば、中和後のエマルジョンのpHが7〜10程度となる量で用いるのが好ましい。
 
【0050】
  上記製造方法には、更に、例えば、重合性モノマー(A)以外のビニル系モノマー;還元剤、連鎖移動剤を用いてもよい。
 
【0051】
<第3級アミン類(B)>
  本発明の組成物に含有される第3級アミン類(B)は、窒素原子に、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が3個結合する化合物であれば特に制限されない。
  第3級アミン類(B)は、水系プライマー組成物中において、(メタ)アクリル粒子が有するカルボキシ基と反応してカルボン酸塩を形成してもよい。
  第3級アミン類(B)は、本発明の組成物がプライマーとして使用された際、(メタ)アクリル粒子が有するエポキシ基と反応してヒドロキシ基を生成させることができる。
 
【0052】
  ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は特に制限されない。例えば、上記と同様のものが挙げられる。具体的には例えば、ヒドロキシ基を有してもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。
 
【0053】
  第3級アミン類(B)としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
  第3級アミン類(B)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
 
【0054】
(第3級アミン類(B)の含有量)
・B/A4
  第3級アミン類(B)の含有量は、本発明の効果がより優れ、安定性優れる点で、(メタ)アクリル系エマルジョンの製造に使用された(メタ)アクリル酸モノマー(A4)に対する第3級アミン類(B)のモル比(B/A4)が、0.2〜1.0となる量が好ましく、0.3〜1.0がより好ましい。
 
【0055】
(任意成分)
  本発明の組成物は本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、所定の(メタ)アクリル系エマルジョン以外のエマルジョン;第3級アミン類以外のアミン;充填剤、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、難燃剤、触媒、消泡剤、増粘剤、分散剤、有機溶剤が挙げられる。各添加剤の種類、使用量は、適宜選択することができる。
 
【0056】
(製造方法)
  本発明の組成物の製造方法は特に制限されない。
  例えば、(メタ)アクリル系エマルジョンと第3級アミン(B)と必要に応じて使用することができる添加剤とを混合することによって製造することができる。
  第3級アミン類(B)を(メタ)アクリル系エマルジョンを製造する際に使用し、本発明の組成物を製造してもよい。この場合、得られた(メタ)アクリル系エマルジョンを本発明の組成物としてそのまま使用することができる。
  また、第3級アミン類(B)を(メタ)アクリル系エマルジョンを製造する際に使用した場合、得られた(メタ)アクリル系エマルジョンに更に必要に応じて使用することができる添加剤を混合することによって本発明の組成物を製造することができる。
 
【0057】
(用途)
  本発明の組成物はシーリング材用のプライマー組成物として使用することができる。
 
【0058】
  本発明の組成物を適用できる被着体としては、例えば、ガラス;アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレスなどの金属;モルタル、石材などの無機系硬質素材(下地);モルタルのような多孔質部材;フッ素電着、アクリル電着、フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装された部材;シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系などのシーリング材の硬化物(例えば、防水材);塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂;NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)などのゴム類等が挙げられる。
 
【0059】
(使用方法)
  本発明の組成物の使用方法としては、例えば、上述した被着体に本発明の組成物を塗布し、任意で乾燥し、その上にシーリング材組成物を塗布した後、本発明の組成物およびシーリング材組成物を硬化させる方法が挙げられる。
 
【0060】
  本発明の組成物を乾燥させる温度は、本発明の効果がより優れ、作業性に優れる点で、20℃以上が好ましい。
 
【0061】
  使用されるシーリング材としては、特に限定されない。例えば、建築用、自動車用シーリング材が挙げられる。具体的には、例えば、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、ポリイソブチレン系シーリング材等が挙げられる。なかでも、ポリウレタン系シーリング材、特に、建築用ポリウレタン系シーリング材(ウレタン防水材)を好適に用いることができる。
 
【実施例】
【0062】
  以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<(メタ)アクリル系エマルジョンの製造>
  反応容器に下記第1表の(メタ)アクリル系エマルジョンの製造の欄に示す各成分を同表に示すモル比で投入し、蒸留水を添加して、80℃まで加温した後、5時間攪拌することで重合を行ない、(メタ)アクリル系エマルジョンEm1〜6を得た。
【0063】
<水系プライマー組成物の製造>
  上記のとおり得られた各(メタ)アクリル系エマルジョンに、下記第1表の第3級アミン類(B)を同表に示すモル比で加えて撹拌し、水系プライマー組成物を製造した。
  なお、第1表において、固形分は、水系プライマー組成物全量に対する、(メタ)アクリル系エマルジョンの製造に使用されたモノマーの合計量(質量%)である。
【0064】
<評価>
  上記のとおり製造された各水系プライマー組成物の耐水性を評価するため、下記試験を行なった。結果を下記第1表に示す。
・初期試験片の調製
  各水系プライマー組成物を、被着体であるモルタル(縦50mm×横50mm、パルテック社製)上に、刷毛を用いて、50g/m
2の膜厚となるように塗布し、25℃で3時間乾燥させてプライマー層とした。次に、上記プライマー層の上にウレタン防水材(商品名ハマタイト  アーバンルーフ  U−8000、横浜ゴム株式会社製、ウレタン防水材)を厚さ5mmとなるように流し込み、25℃、45%相対湿度の条件下で3日間ウレタン防水材を硬化させ、初期試験片を得た。
【0065】
・常態剥離試験
(常態剥離試験)
  上記のとおり得られた初期試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、初期試験片からウレタン防水材を180℃の角度で剥離する常態剥離試験を行った。上記常態剥離試験の結果を下記の評価基準で評価した。
【0066】
(常態剥離試験の評価基準)
  常態剥離試験後の接着界面の破壊形態が全部プライマーの凝集破壊であった場合(以下、これをCF100とも称する。)、接着性に優れると評価してこれを「A」と表示した。なお「CF」の後の数値は、接着が破壊した面積全体に対する凝集破壊(CF)が占める面積の百分率である(以下同様)。
  常態剥離試験後の接着界面の破壊形態が、プライマーの凝集破壊と部分的な界面剥離(破壊した全面積の20%以下)とを有した場合、接着性が悪いと評価してこれを「B」と表示した。以下、上記の破壊状態を「CF80以上100未満」と称する。
【0067】
・耐水剥離試験
  上記と同様に作製した初期試験片を、25℃の水に一週間浸漬させ、試験片を水中から取り出し、これを耐水性評価用試験片として使用した。
(耐水剥離試験)
  上記のとおり得られた耐水性評価用試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、耐水性試験片からウレタン防水材を180℃の角度で剥離する耐水剥離試験を行った。上記耐水剥離試験の結果を下記の評価基準で評価した。
【0068】
(耐水剥離試験の評価基準)
  耐水試験後の接着界面の破壊形態が全てプライマーの凝集破壊(CF100)であった場合、耐水性に非常に優れると評価してこれを「A」と表示した。
  破壊形態がCF80以上100未満であった場合、耐水性にやや優れると評価してこれを「B」と表示した。
  破壊形態がCF60以上80未満であった場合、耐水性がやや劣ると評価してこれを「C」と表示した。
  ウレタン防水材が耐水性評価用試験片から容易に剥がれた、又は、破壊形態がCF60未満であった場合、耐水性が悪いと評価してこれを「D」と表示した。
【0069】
・安定性試験
(安定性試験評価用試験片の調製)
  まず、上記のとおり製造された水系プライマー組成物を50℃、45%相対湿度の条件下で5日間保存した。保存後の水系プライマー組成物を目視で観察した。
  次に、保存後の水系プライマー組成物を用いる他は、上記の初期試験片の調製と同様にして試験片を調製し、得られた試験片を安定性試験評価用試験片とした。
  なお、保存後の水系プライマー組成物を目視で観察し、組成物中に沈殿がない組成物だけを安定性試験評価用試験片の調製に用いた。
【0070】
(剥離試験)
  上記のとおり得られた安定性試験評価用試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、初期試験片からウレタン防水材を180℃の角度で剥離する剥離試験を行った。上記剥離試験の結果を下記の評価基準で評価した。
【0071】
(剥離試験の評価基準)
  ウレタン防水材が安定性試験評価用試験片から剥がれなかった場合、安定性に非常に優れると評価してこれを「A」と表示した。
  CF100又はCF80以上100未満の場合、安定性にやや優れると評価してこれを「B」と表示した。
  破壊形態がCF60以上80未満の場合、安定性がやや劣ると評価してこれを「C」と表示した。
  ウレタン防水材が耐水性評価用試験片から容易に剥がれた、又は、破壊形態がCF60未満である場合、安定性が悪いと評価してこれを「D」と表示した。
  保存後の水系プライマー組成物を目視で観察し、組成物中に沈殿があった場合、安定性が非常に悪いと評価してこれを「E」と表示した。
【0072】
【表1】
【0073】
  第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
((メタ)アクリル系エマルジョンの製造)
  ・モノマー(A1−1):GMA(グリシジルメタクリレート、下記構造)、東京化成工業株式会社製。モノマー(A1−1)はエポキシ基含有重合性モノマー(A1)に該当する。
【化3】
  ・モノマー(A2−1):γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(下記構造)、KBE−502、信越化学工業社製。モノマー(A2−1)は(メタ)アクリル系シランカップリング剤(A2)に該当する。
【化4】
  ・モノマー(A3−1):MMA(メチルメタクリレート)。モノマー(A3−1)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に該当する。
  ・モノマー(A3−2):2EHA(2−エチルヘキシルアクリレート)。モノマー(A3−2)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)に該当する。
  ・モノマー(A4−1):MAA(メタクリル酸)。モノマー(A4−1)は(メタ)アクリル酸モノマー(A4)に該当する。
  ・モノマー(A5−1):HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)。モノマー(A5−1)はヒドロキシ基含有重合性モノマー(A5)に該当する。
  ・重合開始剤:AIBN(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)
【0074】
(水系プライマー組成物の製造)
  ・組成物の製造に使用された(メタ)アクリル系エマルジョン  Em1〜6:上記のとおり製造されたEm1〜6
  ・第3級アミン類(B−1):TEA(トリエチルアミン)
【0075】
  第1表に示す結果から明らかなように、重合性モノマー(A)がエポキシ基含有重合性モノマー(A1)を含まない比較例1は、耐水性が悪かった。
【0076】
  これに対して、本発明の組成物は、所望の効果が得られることが確認された。
  実施例2、3と実施例1とを比較すると、A2/A3が0.02より大きい場合、耐水性により優れることが明らかとなった。
  実施例1、2と実施例3とを比較すると、A2/A3が0.08未満である場合、安定性に優れることが明らかとなった。
  実施例4と実施例1、5とを比較すると、A1/A3が0.060未満である場合、安定性に優れることが明らかとなった。