特許第6864431号(P6864431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6864431Y相六方晶フェライト材料にカリウムをドープするための方法、高周波動作において使用されるアンテナ、およびカリウムがドープされたY相六方晶フェライト材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864431
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】Y相六方晶フェライト材料にカリウムをドープするための方法、高周波動作において使用されるアンテナ、およびカリウムがドープされたY相六方晶フェライト材料
(51)【国際特許分類】
   C01G 51/00 20060101AFI20210419BHJP
   C04B 35/26 20060101ALI20210419BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C01G51/00 B
   C04B35/26
   H01F1/34
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-208998(P2015-208998)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-164111(P2016-164111A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】62/068,139
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/068,146
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/068,147
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/068,151
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503031330
【氏名又は名称】スカイワークス ソリューションズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKYWORKS SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・デビッド・ヒル
【審査官】 中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−039301(JP,A)
【文献】 特開2007−055832(JP,A)
【文献】 特開平02−116632(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183776(WO,A1)
【文献】 特開昭58−41728(JP,A)
【文献】 特開2007−119321(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/064839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/00;51/00
C04B 35/26−35/40
H01F 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y相六方晶フェライト材料にカリウムをドープするための方法であって、前記方法は、
Y相ストロンチウム六方晶フェライト構造を有する高共振周波数六方晶フェライトを形成するために、カリウムおよび三価イオンのScまたはInで置換することとを含み、三価イオンが置換に用いられる場合、前記高共振周波数六方晶フェライト組成はSr2−xCo2−xFe1222であり、Mは三価イオンのScまたはInであり、xは三価置換では0.2<x<0.7である、方法。
【請求項2】
カリウムイオンは、炭酸カリウムから生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、1GHzにおいて1未満の損失係数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.750.25Co1.75Sc0.25Fe1222またはSr1.750.25Co1.75In0.25Fe1222の組成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.50.5Co1.5Sc0.5Fe1222またはSr1.50.5Co1.5In0.5Fe1222の組成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
高周波動作において使用されるアンテナであって、
高共振周波数六方晶フェライトを形成するために、カリウムおよび三価イオンのScまたはInで置換されたY相ストロンチウム六方晶フェライト材料を備え、
三価イオンが置換に用いられる場合は、前記高共振周波数六方晶フェライト組成はSr2−xCo2−xFe1222であり、Mは三価イオンのScまたはInであり、xは三価置換では0.2<x<0.7である、アンテナ。
【請求項7】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、1GHzにおいて1未満の損失係数を有する、請求項に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.750.25Co1.75Sc0.25Fe1222またはSr1.750.25Co1.75In0.25Fe1222またはSr1.50.5Co1.5Sc0.5Fe1222またはSr1.50.5Co1.5In0.5Fe1222の組成を有する、請求項に記載のアンテナ。
【請求項9】
カリウムがドープされたY相六方晶フェライト材料であって、
高共振周波数六方晶フェライトを形成するために、カリウムおよび三価イオンのScまたはInで置換されたY相ストロンチウム六方晶フェライト材料を含み、三価イオンが置換に用いられる場合は、前記高共振周波数六方晶フェライト組成はSr2−xCo2−xFe1222であり、Mは三価イオンのScまたはInであり、xは三価置換では0.2<x<0.7である、Y相六方晶フェライト材料。
【請求項10】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、1GHzにおいて1未満の損失係数を有する、請求項に記載のドープされたY相六方晶フェライト材料。
【請求項11】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.750.25Co1.75Sc0.25Fe1222またはSr1.750.25Co1.75In0.25Fe1222の組成を有する、請求項に記載のドープされたY相六方晶フェライト材料。
【請求項12】
前記材料は、三価イオンで置換される、請求項に記載のドープされたY相六方晶フェライト材料。
【請求項13】
前記高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.50.5Co1.5Sc0.5Fe1222またはSr1.50.5Co1.5In0.5Fe1222の組成を有する、請求項に記載のドープされたY相六方晶フェライト材料。
【請求項14】
前記材料は、三価イオンで置換される、請求項に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願の引用による援用
本願は、2014年10月24日に出願され「INCREASED RESONANT FREQUENCY ALKALI-DOPED Y-PHASE HEXAGONAL FERRITES」と題された米国仮出願番号第62/068,147号、2014年10月24日に出願され「INCREASED RESONANT FREQUENCY POTASSIUM-DOPED HEXAGONAL FERRITE」と題された米国仮出願番号第62/068139号、2014年10月24に出願され「MAGNETODIELECTRIC Y-PHASE STRONTIUM HEXAGONAL FERRITE MATERIALS FORMED BY SODIUM SUBSTITUTION」と題された米国仮出願番号第62/068,146号、および2014年10月24日に出願され「INCORPORATION OF OXIDES INTO FERRITE MATERIAL FOR IMPROVED RADIOFREQUENCY PROPERTIES」と題された米国仮出願番号第62/068,151号に基づく優先権を主張し、その各々の開示全体が引用により本願明細書に援用される。
【0002】
背景
分野
本開示の実施形態は、電子設備に有用な、特に高周波(RF)電子機器に有用な組成物および材料を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
磁気誘電アンテナ用途については、(より良好な小型化係数および自由空間におけるインピーダンス整合のために)可能な限り高い透磁率と、可能な限り大きな共振周波数(最大動作周波数)とを有することが有利であり得る。しかし、透磁率がより高い当該技術において既知の材料は、たとえば共振周波数は1GHzを優に超えるが透磁率はわずか2であるなど、磁気共振周波数が低い傾向にある。
【0004】
いくつかの従来の解決策によって透磁率が上昇してきたが、約500MHzの最大使用可能周波数に制限されている。共振周波数のいくらかの控えめな向上を詳述してきたが、六方晶フェライト材料について使用可能な周波数範囲を著しく拡張していない。
【0005】
さらに、500MHz以上の周波数で動作することができるアンテナシステムを小型化することが有利であり得る。この小型化を実現する1つの方法は、小型化係数が所与の周波数における透磁率および誘電率の積の平方根に比例する磁気誘電アンテナを用いることである。この場合、RF放射との磁気的な相互作用を利用して、誘電体部品と共にアンテナを小型化する。他の検討事項は、材料が絶縁していなければならない点と、インピーダンス不整合および反射損失を最小化するために誘電率および透磁率が可能な限り互いに近いことが有利であるという点とである。向上した材料についての1つの障壁は、透磁率が700MHzを超え明らかに低損失である絶縁磁性材料がないということである。所与の周波数における透磁率を向上させるかまたは磁気Qを上昇させることは、磁気誘電アンテナの使用周波数を、商業的にかつ軍事的に重要なマイクロ波領域に上昇させることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
y相六方晶フェライト材料にカリウムをドープするための方法であって、y相ストロンチウム六方晶フェライト材料を提供することと、高い共振周波数六方晶フェライトを形成するために、ストロンチウムの少なくとも一部を、カリウムを含む三価イオン組成またはカリウムを含む四価イオン組成で置換することとを含み、三価イオンが置換に用いられる場合、組成はSr2−xCo2−xFe1222であり、Mは任意の三価イオンであり、四価イオンが置換に用いられる場合、組成はSr2−2x2xCo2−xFe1222であり、Nは任意の四価イオンである方法の実施形態が本願明細書に開示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、xは三価置換では0〜1.5、四価置換では0〜0.75であり得る。いくつかの実施形態では、y相ストロンチウム六方晶フェライト材料はSrCoFe1222を含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、Mは、Sc、Mn、In、Cr、Ga、Co、Ni、Fe、Yb、またはランタニドイオンのいずれかから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbから成るグループから選択されることができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、ストロンチウムの少なくとも一部をカリウムで置換することは、炭酸カリウムをy相ストロンチウム六方晶フェライト材料に添加することを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、1GhZにおいて1未満の損失係数を有することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.750.25Co1.75Sc0.25Fe1222またはSr1.750.25Co1.75In0.25Fe1222の組成を有することができる。いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.50.5Co1.5Sc0.5Fe1222またはSr1.50.5Co1.5In0.5Fe1222の組成を有することができる。
【0012】
高周波動作において使用されるアンテナであって、高共振周波数六方晶フェライトを形成するためにストロンチウムの少なくとも一部がカリウムを含む三価イオン組成またはカリウムを含む四価イオン組成で置換されたy相ストロンチウム六方晶フェライト材料を備え、三価イオンが置換に用いられる場合は、組成はSr2−xCo2−xFe1222であり、Mは任意の三価イオンであり、四価イオンが置換に用いられる場合は、組成はSr2−2x2xCo2−xFe1222であり、Nは任意の四価イオンであるアンテナの実施形態も本願明細書に開示される。
【0013】
いくつかの実施形態では、xは三価置換では0〜1.5、四価置換では0〜0.75であり得る。いくつかの実施形態では、y相ストロンチウム六方晶フェライト材料はSrCoFe1222を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、Mは、Sc、Mn、In、Cr、Ga、Co、Ni、Fe、Yb、またはランタニドイオンのいずれかから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbから成るグループから選択されることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、カリウムは炭酸カリウムを含むことができる。
いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、1GhZにおいて1未満の損失係数を有することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.750.25Co1.75Sc0.25Fe1222またはSr1.750.25Co1.75In0.25Fe1222の組成を有することができる。いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.50.5Co1.5Sc0.5Fe1222またはSr1.50.5Co1.5In0.5Fe1222の組成を有することができる。
【0017】
カリウムがドープされたy相六方晶フェライト材料であって、高共振周波数六方晶フェライトを形成するためにストロンチウムの少なくとも一部がカリウムを含む三価イオン組成またはカリウムを含む四価イオン組成で置換されたy相ストロンチウム六方晶フェライト材料を含み、三価イオンが置換に用いられる場合は、組成はSr2−xCo2−xFe1222であり、Mは任意の三価イオンであり、四価イオンが置換に用いられる場合は、組成はSr2−2x2xCo2−xFe1222であり、Nは任意の四価イオンであるy相六方晶フェライト材料の実施形態も本願明細書に開示される。
【0018】
いくつかの実施形態では、xは三価置換では0〜1.5、四価置換では0〜0.75であり得る。いくつかの実施形態では、y相ストロンチウム六方晶フェライト材料はSrCoFe1222を含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、Mは、Sc、Mn、In、Cr、Ga、Co、Ni、Fe、Yb、またはランタニドイオンのいずれかから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbから成るグループから選択されることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、カリウムは炭酸カリウムを含むことができる。
いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、1GhZにおいて1未満の損失係数を有することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.750.25Co1.75Sc0.25Fe1222またはSr1.750.25Co1.75In0.25Fe1222の組成を有することができる。いくつかの実施形態では、高共振周波数六方晶フェライトは、Sr1.50.5Co1.5Sc0.5Fe1222またはSr1.50.5Co1.5In0.5Fe1222の組成を有することができる。
【0022】
六方晶フェライト材料の共振周波数を上昇させるための方法であって、組成SrCoFe1222を有するY相六方晶フェライト材料を提供することと、Sr部位上において六方晶フェライトにNa、K、または他の一価アルカリ金属をドープし、コバルト部位上においてスカンジウムまたはインジウムによって電荷補償することとを含む方法の実施形態が本願明細書に開示される。
【0023】
いくつかの実施形態では、六方晶フェライト材料に、シリコン、アルミニウム、マンガン、または3つの任意の組合せをドープすることができる。いくつかの実施形態では、六方晶フェライトにシリコンをドープすることができ、シリコンは結晶粒成長抑制物質として作用する。いくつかの実施形態では、六方晶フェライトにマンガンをドープすることができ、マンガンは組成中の鉄がFe3+に還元するのを防ぐ。
【0024】
いくつかの実施形態では、電荷補償のためにスカンジウムを用いることができる。いくつかの実施形態では、電荷補償のためにインジウムを用いることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、六方晶フェライトは、周波数1GHzにおいて約6未満の損失係数を有することができる。
【0026】
高められた共振周波数を有する六方晶フェライト材料であって、組成SrCoFe1222を有するY相六方晶フェライト材料を備え、材料は、Sr部位上においてNa、Kまたは他の一価アルカリ金属がドープされ、コバルト部位上にスカンジウムまたはインジウムを含む六方晶フェライト材料の実施形態も本願明細書に開示される。
【0027】
いくつかの実施形態では、六方晶フェライト材料に、シリコン、アルミニウム、マンガン、または3つの任意の組合せをドープすることができる。いくつかの実施形態では、六方晶フェライトにシリコンをドープすることができ、シリコンは結晶粒成長抑制物質として作用する。いくつかの実施形態では、六方晶フェライトにマンガンをドープすることができ、マンガンは組成中の鉄がFe3+に還元するのを防ぐ。
【0028】
いくつかの実施形態では、電荷補償のためにスカンジウムを用いることができる。いくつかの実施形態では、電荷補償のためにインジウムを用いることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、六方晶フェライトは、周波数1GHzにおいて約6未満の損失係数を有することができる。
【0030】
組成SrCoFe1222を有するY相六方晶フェライト材料を備える高周波装置であって、材料は、Sr部位上においてNa、Kまたは他の一価アルカリ金属がドープされ、コバルト部位上にスカンジウムまたはインジウムを含む高周波装置の実施形態も本願明細書に開示される。
【0031】
いくつかの実施形態では、六方晶フェライト材料に、シリコン、アルミニウム、マンガン、または3つの任意の組合せをドープすることができる。いくつかの実施形態では、六方晶フェライトにシリコンをドープすることができ、シリコンは結晶粒成長抑制物質として作用する。いくつかの実施形態では、六方晶フェライトにマンガンをドープすることができ、マンガンは組成中の鉄がFe3+に還元するのを防ぐ。
【0032】
いくつかの実施形態では、電荷補償のためにスカンジウムを用いることができる。いくつかの実施形態では、電荷補償のためにインジウムを用いることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、六方晶フェライトは、周波数1GHzにおいて約6未満の損失係数を有することができる。
【0034】
y相ストロンチウム六方晶フェライト材料を備える磁気誘電六方晶フェライトであって、y相ストロンチウム六方晶フェライト材料はストロンチウムを置換したナトリウムを有し、磁気誘電六方晶フェライトを形成するために三価または四価イオンを含み、三価イオンが用いられる場合は、磁気誘電六方晶フェライトの組成はSr2−xNaCo2−xFe1222であり、Mは三価イオンであり、四価イオンが用いられる場合は、磁気誘電六方晶フェライトの組成はSr2−2−2xNa2xCo2xFe1222であり、Nは四価イオンである磁気誘電六方晶フェライトの実施形態が本願明細書に開示される。
【0035】
いくつかの実施形態では、Mは、Al、Ga、Sc、Cr、Mn、In、Yb、Er、Yまたは他のランタニドから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、xは三価置換では0〜約1.5、四価置換では0〜約0.75であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、組成Sr1.75Na0.25Co1.750.25Fe1222を有することができる。いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、組成Sr1.5Na0.5Co1.50.5Fe1222を有することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトの損失係数は、周波数1GhZまで4未満にとどまることができる。いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、1GhZまでおよそ5とおよそ6との間の透磁率を有することができる。
【0038】
六方晶フェライト材料の磁気特性を向上させるための方法であって、ストロンチウムの代わりにy相ストロンチウム六方晶フェライト材料中にナトリウムを置換することと、磁気誘電六方晶フェライトを形成するために三価または四価イオンのいずれかを用いて電荷平衡することとを含み、三価イオンが用いられる場合は、磁気誘電六方晶フェライトの組成はSr2−xNaCo2−xFe1222であり、Mは三価イオンであり、四価イオンが用いられる場合は、磁気誘電六方晶フェライトの組成はSr2−2−2xNa2xCo2xFe1222であり、Nは四価イオンである方法の実施形態も本願明細書に開示される。
【0039】
いくつかの実施形態では、Mは、Al、Ga、Sc、Cr、Mn、In、Yb、Er、Yまたは他のランタニドから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、xは三価置換では0〜約1.5、四価置換では0〜約0.75であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、組成Sr1.75Na0.25Co1.750.25Fe1222を有することができる。いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、組成Sr1.5Na0.5Co1.50.5Fe1222を有することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトの損失係数は、周波数1GhZまで4未満にとどまることができる。いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、1GhZまでおよそ5とおよそ6との間の透磁率を有することができる。
【0042】
ストロンチウムを置換したナトリウムを有し、磁気誘電六方晶フェライトを形成するために三価または四価イオンを含むy相ストロンチウム六方晶フェライト材料を備える磁気誘電アンテナであって、三価イオンが用いられる場合は、磁気誘電六方晶フェライトの組成はSr2−xNaCo2−xFe1222であり、Mは三価イオンであり、四価イオンが用いられる場合は、磁気誘電六方晶フェライトの組成はSr2−2−2xNa2xCo2xFe1222であり、Nは四価イオンである磁気誘電アンテナの実施形態も本願明細書に開示される。
【0043】
いくつかの実施形態では、Mは、Al、Ga、Sc、Cr、Mn、In、Yb、Er、Yまたは他のランタニドから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbから成るグループから選択されることができる。いくつかの実施形態では、xは三価置換では0〜約1.5、四価置換では0〜約0.75であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、組成Sr1.75Na0.25Co1.750.25Fe1222を有することができる。いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、組成Sr1.5Na0.5Co1.50.5Fe1222を有することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトの損失係数は、周波数1GhZまで4未満にとどまることができる。いくつかの実施形態では、磁気誘電六方晶フェライトは、1GhZまでおよそ5とおよそ6との間の透磁率を有することができる。
【0046】
追加的な酸化物を組込んで六方晶フェライトの磁気特性を上昇させるための方法であって、y相六方晶フェライト材料を提供することと、高められた六方晶フェライト材料を形成するためにSrCoFe2441、SrFe1219またはCoFeの化学量論比と一致する酸化物を組込むこととを含む方法の実施形態が本願明細書に開示される。
【0047】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、単一相であり得る。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、2つの別個の相であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、Y相六方晶フェライト材料は、Sr1.6Na0.4Co1.6Sc0.4Fe1122を含むことができる。いくつかの実施形態では、酸化物は、CoFeを含むことができる。いくつかの実施形態では、酸化物は、SrFe1219を含むことができる。いくつかの実施形態では、2重量%の酸化物をy相六方晶フェライト材料に組込むことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、800MHzにおいて約20より大きいQ値を有することができる。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、1GHzにおいて約15より大きいQ値を有することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、800MHz〜1GHzまで6と8との間の透磁率を有することができる。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、約10〜11の誘電率を有することができる。
【0051】
磁気特性が上昇した高められた六方晶フェライトであって、y相六方晶フェライト材料を備え、y相六方晶フェライト材料は、SrCoFe2441、SrFe1219またはCoFeの化学量論比と一致する酸化物が中に組込まれた、高められた六方晶フェライトの実施形態も本願明細書に開示される。
【0052】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、単一相であり得る。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、2つの別個の相であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、Y相六方晶フェライト材料は、Sr1.6Na0.4Co1.6Sc0.4Fe1122を含むことができる。いくつかの実施形態では、酸化物は、CoFeを含むことができる。いくつかの実施形態では、酸化物は、SrFe1219を含むことができる。いくつかの実施形態では、2重量%の酸化物をy相六方晶フェライト材料に組込むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、800MHzにおいて約20より大きいQ値を有することができる。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、1GHzにおいて約15より大きいQ値を有することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、800MHz〜1GHzまで6と8との間の透磁率を有することができる。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は約10〜11の誘電率を有することができる。
【0056】
高周波用途で使用される高周波アンテナであって、y相六方晶フェライト材料を備え、y相六方晶フェライト材料は、高められた六方晶フェライト材料を形成するためにSrCoFe2441、SrFe1219またはCoFeの化学量論比と一致する酸化物が中に組込まれた高周波アンテナの実施形態も本願明細書に開示される。
【0057】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、単一相であり得る。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、2つの別個の相であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、Y相六方晶フェライト材料はSr1.6Na0.4Co1.6Sc0.4Fe1122を含むことができる。いくつかの実施形態では、酸化物は、CoFeを含むことができる。いくつかの実施形態では、酸化物は、SrFe1219を含むことができる。いくつかの実施形態では、2重量%の酸化物をy相六方晶フェライト材料に組込むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、800MHzにおいて約20より大きいQ値を有することができる。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、1GHzにおいて約15より大きいQ値を有することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、800MHz〜1GHzまで6と8との間の透磁率を有することができる。いくつかの実施形態では、高められた六方晶フェライト材料は、約10〜11の誘電率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】スカンジウムを有し、0.25重量%のナトリウムを組込んだY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図2】Y相六方晶フェライトの実施形態の結晶構造を例示する図である。
図3】炭酸カリウムのないY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図4】炭酸カリウムを有するY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図5】Y相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に対する透磁率を例示する図である。
図6】スカンジウムを有し、0.25重量%のカリウムを組込んだY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図7】インジウムを有し、0.25重量%のカリウムを組込んだY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図8】スカンジウムを有し、0.5重量%のカリウムを組込んだY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図9】インジウムを有し、0.5重量%のカリウムを組込んだY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図10】スカンジウムを有し、0.5重量%のナトリウムを組込んだY相六方晶フェライトの実施形態についての周波数に基づく透磁率および損失係数を例示する図である。
図11】Y相六方晶フェライトの実施形態を組込んだセラミック材料を製造するように実施することができるプロセスの実施形態を示す図である。
図12】Y相六方晶フェライトの実施形態を組込んだ粉末材料から成形物を形成するように実施することができるプロセスの実施形態を示す図である。
図13図12のプロセスのさまざまな段階の例を示す図である。
図14図12および図13の例により形成された成形物を焼結するように実施することができるプロセスの実施形態を示す図である。
図15図14のプロセスのさまざまな段階の例を示す図である。
図16】Y相六方晶フェライトの実施形態についての透磁率および損失係数を例示する図である。
図17】Y相六方晶フェライトの実施形態についての透磁率および損失係数を例示する図である。
図18】組込んだ酸化物を有するY相六方晶フェライトの実施形態についての透磁率および磁気Qを例示する図である。
図19】六方晶フェライト材料を形成する方法の実施形態を例示するフローチャートである。
図20】六方晶フェライト材料を形成する方法の実施形態を例示するフローチャートである。
図21】開示される六方晶フェライト材料の実施形態を組込むことができる電力増幅器モジュールの図である。
図22】開示される六方晶フェライト材料の実施形態を組込むことができる無線装置である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
詳細な説明
磁気誘電材料として使用するのに有利であり得る材料の実施形態が本願明細書に開示される。これらの磁気誘電材料は、ある好都合な材料特性により、アンテナ、変圧器、インダクタ、サーキュレータ、および吸収装置などの高周波(RF)装置に特に有用であり得る。たとえば、本願明細書に開示される磁気誘電材料は、良好な品質を維持しつつ高周波レベルにおいて用いることができ、したがって、当該材料が組込まれるアンテナおよび他の装置の周波数上限を上昇させることができる。加えて、開示される磁気誘電材料によって与えられる特性のいくつかは、好都合な小型化係数、場(field)集中の低減、およびより良好なインピーダンス整合であり得、これらはすべて高周波装置に有利である。さらに、図1に示されるように、開示される材料の実施形態は、典型的なY相六方晶フェライト材料に見られる透磁率のほぼ2倍を有し、したがって当該材料をアンテナに有利にすることができる。
【0063】
磁気誘電材料における最近の進歩は、高周波アンテナを小型化したいという要望によって部分的に推進され、したがって所望の帯域幅、インピーダンスおよび低誘電損失を維持しつつ、アンテナの全接地面積を縮小している。向上した共振周波数および低誘電損失を有する材料および磁気誘電材料を作製する方法が本願明細書に開示され、したがって、少なくとも高周波電子機器で使用するのに有利な材料を提供する。アンテナ性能のための2つの性能指数は、小型化係数および帯域幅を含む。第一に、小型化係数は以下の式によって決定される。
【0064】
【数1】
【0065】
ここでdeff/dは小型化係数であり、εはアンテナ材料の誘電率であり、μはアンテナ材料の透磁率である。εおよびμは双方とも、磁性酸化物アンテナの周波数に依存する。第二に、有効帯域幅(または効率)は以下の式によって決定される。
【0066】
【数2】
【0067】
ここでη/ηは材料の効率(または帯域幅)を表す。μが最大化されると、この効率は最大化される。その上、μ=εであれば、自由空間との完全なインピーダンス整合がある。
【0068】
六方晶フェライト
磁気誘電用途について有利な磁気特性を有することができる一種の材料は、六方晶フェライトである。六方晶フェライト、すなわちヘキサフェライトは、それらの結晶構造に直接結合することができる磁気特性を有する。たとえば、六方晶フェライトはすべて結晶磁気異方性を有し、誘起磁場に対する反応は結晶構造によって好ましい方位を有する。加えて、特に六方晶フェライト系は、有用なアンテナ周波数であるマイクロ波(100MHz〜20GHz)周波数における透磁率および吸収性が高いことから望ましい場合がある。
【0069】
六方晶フェライト結晶系は、概してマグネトプラムバイトとストロンチウム(Sr)またはバリウム(Ba)を含有するスピネル構造との連晶、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、またはマンガン(Mn)などの2価カチオン、および三価Feである結晶構造を含むことができる。六方晶フェライトは、マグネトプラムバイトセルに基づく様々な異なる結晶構造で形成され得る。これらの構造は、M相(SrFe1219)、W相(BaMeFe1627)、Y相(SrMeFe1222)、およびZ相(BaMeFe2442)、ならびに当該構造の組合せを含む。図2は、Y相六方晶フェライトの結晶構造を例示する。
【0070】
典型的な六方晶フェライトはバリウムを含有するが、ストロンチウムなどの同様の大きさの原子でバリウム原子を置換することができる。したがって、構造は概して同じ形状を保持するはずであるため、バリウム原子をストロンチウム原子で置換することは、材料の特性に悪影響を及ぼすようなことはない。実際には、以下に示されるように、バリウムの代わりにストロンチウムを使用することにより、六方晶フェライトの磁気誘電特性を向上させる他の処理方法を可能とすることができる。
【0071】
たとえば高周波アンテナまたは他のRF装置で使用される磁気誘電材料として特に有利であり得る一つの例示的な六方晶フェライトは、Y相ストロンチウムコバルトフェライト(SrCoFe1222)であり、一般にCoYと略記される。向上した共振周波数、低い磁気損失、および高いQ係数値といったRF用途に有用な向上した磁気特性を有するこの種のY相六方晶フェライトならびにそれらを製造する方法の実施形態が本願明細書に開示される。
【0072】
本開示の実施形態は、高周波用途で用いられる六方晶フェライト材料の性能特性を向上させるための方法および処理技術を教示する。ある実施形態は、磁歪(magnetorestriction)が低減し、共振周波数が向上し、より高い周波数における透磁率が拡張されたY相六方晶フェライト系SrCoFe1222(CoY)を製造するための向上した方法および処理技術を提供する。
【0073】
磁気誘電特性
材料のある特性は、高周波アンテナなどの磁気誘電用途で使用するのに有利であり得る。これらの特性は、透磁率、誘電率、磁気異方性、磁気損失、および磁気Q値を含むが、これらに限定されない。
【0074】
透磁率は、材料がその内部での磁場の形成を支持する能力の尺度である。換言すると、透磁率は、印加磁場に応じて材料が得る磁化の程度である。したがって、より高い透磁率、すなわちミュー′またはμ′によって、材料がより高い磁場を支持することが可能となる。したがって、高周波用途での使用には高透磁率を有することが有利であり得る。
【0075】
比透磁率および比誘電率は、高周波アンテナ用途における磁性材料の性能を示す特性である。比透磁率は、自由空間のそれに対する、印加磁場に直線的に応答する材料の磁化の程度の尺度である(μ=μ/μ)。比誘電率(ε)は、自由空間の分極率に対する材料の電子分極率の相対的な尺度である(ε=ε/ε)。一般に、透磁率(μ′)は、2つの成分、高い周波数に応じたスピン回転Xspと、マイクロ波周波数において制動される磁壁移動Xdwとに分離することができる。透磁率は、概してμ′=1+Xdw+Xspによって表わされることができる。
【0076】
【数3】
【0077】
磁気誘電アンテナ材料の別の特性は、磁気損失率である。磁気損失正接は、材料中の磁気応答が、ある周波数において(この場合は電磁放射からの)印加磁場の周波数と同相であることができることを示す。これは、tanδ=μ″/μ′と表される。磁気Qは、磁気損失正接の逆数である。Q=1/tanδである。たとえば、ある周波数において損失係数が高い場合、材料はその周波数において動作することができないことになる。したがって、磁気誘電材料が500MHz以上、800MHz以上、または1GHz以上などのより高い周波数まで低い磁気損失正接を有することが有利であり得る。そうすれば当該材料をそれらの高周波における用途で用いることができるからである。20以上の磁気Q係数がいくつかの用途に有利である。これは、選択された範囲前後において他の信号からの干渉のない特定の高周波信号をアンテナが選択するのに特に有用であり得る。
【0078】
カリウム(K)による置換
いくつかの実施形態では、Y相六方晶フェライト材料の結晶構造においてカリウム(K)を置換することによって、六方晶フェライト材料を向上させることができる。この組込みは、本開示全体を通じて述べられる磁気特性を向上させるための他の方法の有無に関わらず行うことができる。
【0079】
Y相六方晶フェライトなどの材料の共振周波数を上昇させるために、少量のアルカリ金属を組成中にドープすることができる。たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムをすべて六方晶フェライトにドープすることができる。その際、アルカリ金属のための場所を空けるためにストロンチウム原子を置換することができる。このアルカリ金属の添加は、鉄がFe2+状態に還元することを防ぐことができる。1+酸化状態を有するアルカリ金属が2+酸化状態を有するSrを置換するため、Fe3+がFe2+に転換する尤度が低下する。なぜならこの場合、平均金属酸化状態が低くなり過ぎるからである。したがって、焼結中の鉄の還元が阻止される。鉄の還元を回避することによって、共振周波数の閾値をあらかじめ取得した値よりも高く押上げることができる。Fe2+は、共振周波数を低下させ、磁気損失正接および誘電損失正接の双方に寄与する。したがって、上昇した共振周波数は、減少した磁気損失正接と共に、磁気Q係数の対応する増大をもたらすことができ、開示される材料の実施形態が、磁気誘電材料としての有利な効用を有することが可能となる。
【0080】
いくつかの実施形態では、カリウム(K)は、たとえば炭酸カリウムの形態でSrCoFe1222に余剰材料として添加され得る。しかし、他のカリウム源を使用することもでき、特定のカリウム組成は限定的なものではない。さらに、いくつかの実施形態では、カリウムは、結晶構造上のストロンチウム部位に置換することができる。炭酸カリウムは、適度の量の酸化物混合物を有する構造に添加することができ、たとえば材料の熱処理中に構造に組込まれることができる。
【0081】
ストロンチウムおよびカリウムは、それらの原子に対して異なる電荷、ストロンチウムについては2+およびカリウム(またはナトリウム)については1+を有し、したがって、何らかの電荷平衡を用いて、Y相六方晶フェライトの結晶構造のいずれかの著しいまたは有害な歪みを回避することができる。いくつかの実施形態では、三価または四価種で(ストロンチウムと同様に2+電荷を有する)コバルトを置換することができ、Sr2+をKで置換することによって生じる電荷不均衡を補償することができ、したがって概ね均衡した化学構造がもたらされる。電荷平衡をもたらすことができることにより、2つの化合物群、すなわち一方はコバルトの三価イオン置換のための化合物群、他方はコバルトの四価イオン置換のための化合物群を用いることができる。
【0082】
三価イオン置換については、以下の例示的な組成をある実施形態において用いることができる。
【0083】
Sr2−xCo2−xFe1222
ここでMは任意の三価イオンであり得る。たとえば、Mは、Sc、Mn、In、Cr、Ga、Co、Ni、Fe、Yb、Er、Y、またはランタニドイオンのいずれかであり得、特定の要素は限定的なものではない。さらに、x値は約0〜約1.5の範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、0.2<x<0.7である。
【0084】
四価イオン置換については、以下の例示的な組成をある実施形態において用いることができる。
【0085】
Sr2−2x2xCo2−xFe1222
ここでNは任意の四価イオンであり得る。たとえば、Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、HfまたはTbであり得、特定の要素は限定的なものではない。ここでも、いくつかの実施形態において、x値は約0〜0.75の範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、0.2<x<0.5である。
【0086】
図3図4は、炭酸カリウムを添加する上記で開示した置換技術を用いたインピーダンススペクトルを示す。典型的に、インピーダンススペクトルは、インピーダンス分光法または電気化学インピーダンス分光法としても知られている誘電分光法を用いて行なわれる。インピーダンススペクトルは、媒体の異なる誘電特性を異なる周波数の関数として有利に示すことができる。
【0087】
図3図4では、インピーダンススペクトルは、周波数範囲全体にわたる透磁率(μ′)および損失係数(μ″)の双方を示す。高周波用途で用いられる磁気誘電材料が、周波数範囲全体にわたる最小の特性変化、特に、それらの特定の周波数において最小のμ″およびしたがって最小損失正接を有することが有利となり得る。損失正接が上昇または急上昇し始めると、材料は、その特定の周波数範囲を用いたアンテナ用途に好適でなくなり得る。
【0088】
損失正接スパイクを最小化すると共に、損失正接におけるスパイク(すなわち急速な上昇)を可能な限り高い周波数に調節することが有利であり得る。言及したように、損失正接が急上昇すると、材料はそれらの特定の周波数においてあまり有用でなくなり得る。したがって、より高い周波数において損失正接スパイクを有することは、最小限の損失で(スパイクまでの)より高い周波数において当該材料を使用することができることを概して意味し得る。
【0089】
特に、図3は、炭酸カリウムの組込みのない透磁率を例示する。したがって、組成は、炭酸カリウムを使用しない純焼結されたSrCoFe1222である。
【0090】
図3に示されるように、材料のμ″(損失係数)は、低周波において大幅に変動することができる。さらに、周波数が上昇するにつれて、μ″は、概して指数成長を開始するまで(より低い周波数の変動の多くを減少させた後)着実に増大する。
【0091】
一方、図4は、炭酸カリウムが添加されるSrCoFe1222についての透磁率および損失係数を例示する。
【0092】
図4に示されるように、Y相六方晶フェライト材料の実施形態の損失係数は、図3に示されるものよりも低くなり得る。さらに、周波数が1〜10MHzの間などのある点まで上昇するにつれ、図4に示される損失係数は実際に低下する。約100MHz〜約800MHzの範囲では、損失係数は、上昇する前に約0.7において比較的安定したままである。しかし、より高い周波数1GHzでも、材料はわずか1前後の損失係数を依然として有する。炭酸カリウムのない前の図3に戻ると、炭酸カリウムの添加がY相六方晶フェライト材料の損失係数を大幅に低減させ、高周波無線周波数用途に有利となることが明らかに示されている。
【0093】
さらに、図5は、炭酸カリウムの組込みのない開示されている材料の実施形態についての周波数に対する透磁率のグラフを示す。図5に示されるように、材料の透磁率は、テストされた周波数範囲全体にわたって比較的一定のままである。テストされた周波数が上昇するにつれていくらかの微増があるものの、概ね材料の透磁率はわずか2.5未満のままである。透磁率は、およそ160MHzにおいて2.5を超えるまで増大する。
【0094】
図6は、MがScであり、x=0.25である場合の、三価置換のある上記の六方晶フェライト材料についての透磁率および損失係数を例示する。
【0095】
図6に示されるように、Y相六方晶フェライト材料の実施形態のμ″(損失係数)は極めて低く、ほぼ0に達する。周波数が1GHzを超えるまで上昇しても、材料は0.5未満の損失係数を維持する。低損失係数を維持しつつ、図6に示される材料はおよそ4の透磁率も含む。
【0096】
さらに、低損失係数を維持しつつ、図6に示される材料は3を超える透磁率も含む。これはY相六方晶フェライト材料についての典型値より大きく、したがって材料に有利な特性をもたらすことができる。
【0097】
したがって、損失係数が低く透磁率が高いことから、上記のY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波アンテナまたは他の高周波用途などにおいて磁気誘電材料として使用されるのに有利であり得る。
【0098】
図7は、MがInであり、x=0.25である場合の、三価置換のある上記の六方晶フェライト材料についての透磁率および損失係数を例示する。
【0099】
図7に示されるように、Y相六方晶フェライト材料の実施形態の損失係数は極めて低く、ほぼ0に達する。周波数が1GHzを超えるまで上昇しても、材料は0.5未満の損失係数を維持する。1GHzを超えて初めて材料の損失係数が急上昇し始め、図示のように、1GHz後に著しく上昇し得る。
【0100】
さらに、低損失係数を維持しつつ、図7に示される材料は3を超える(3.5前後にとどまる)透磁率も含む。これはY相六方晶フェライト材料についての典型値より大きく、したがって材料に有利な特性をもたらすことができる。
【0101】
したがって、損失係数が低く透磁率が高いことから、図7に関して示されたY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波アンテナまたは他の高周波用途などにおいて磁気誘電材料として使用されるのに有利であり得る。
【0102】
図8は、MがScであり、x=0.5である場合の、三価置換を有する六方晶フェライト材料についての透磁率および損失係数を例示する。
【0103】
図8に示されるように、Y相六方晶フェライト材料の実施形態の損失係数は極めて低く、ほぼ0に達する。周波数が1GHzを超えるまで上昇しても、材料は1未満の損失係数を維持する。1GHzを超えて初めて材料の損失係数が急上昇し始め、図示のように、1GHz後に著しく上昇し得る。
【0104】
さらに、低損失係数を維持しつつ、図8に示される材料は約3〜約4の透磁率も含む。これは、Y相六方晶フェライト材料についての典型より大きい。
【0105】
したがって、損失係数が低く透磁率が高いことから、図8に関して示されたY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波アンテナまたは他の高周波用途などにおいて磁気誘電材料として使用されるのに有利であり得る。
【0106】
図9は、MがInであり、x=0.5である場合の、三価置換を有する六方晶フェライト材料についての透磁率および損失係数を例示する。
【0107】
図9に示されるように、Y相六方晶フェライト材料の実施形態の損失係数はここでも極めて低いが、上記の他の図を若干上回る。損失係数が上昇し始めると、損失係数は約100MHz〜約800MHzまでは0付近まで大幅に低下する。しかし、上昇したとしても、Y相六方晶フェライト材料は1GHzにおいて約2の損失係数を維持する。
【0108】
さらに、低損失係数を維持しつつ、図9に示される材料は、4より大きい約4〜5の透磁率も含む。これは、標準的なY相六方晶フェライト材料の透磁率の2倍を超える。また、およそ1GHzにおいて透磁率の大きなスパイクがあり、透磁率が約6まで上昇することが顕著である。したがって、1GHzでは、材料の実施形態は、依然として比較的低損失係数を維持しつつ大きな透磁率を有する。
【0109】
したがって、損失係数が低く透磁率が高いことから、図9に関して示されたY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波アンテナまたは他の高周波用途などにおいて磁気誘電材料として使用されるのに有利であり得る。
【0110】
ナトリウム(Na)による置換
上記の開示は、Y相六方晶フェライト材料の磁気特性を向上させるための1つの方法を示しているが、Y相六方晶フェライト材料の結晶構造中にナトリウムを置換することによって、六方晶フェライト材料に異なる改善を行うことができる。この組込みは、本願の全体にわたって述べられる磁気特性を向上させるための他の方法の有無に関わらず行うことができる。
【0111】
Y相六方晶フェライトなどの材料の共振周波数を上昇させるために、少量のアルカリ金属を組成にドープすることができる。たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムはすべて六方晶フェライトにドープすることができる。その際、アルカリ金属のための場所を空けるためにストロンチウム原子を置換することができる。アルカリ金属のこの添加は、鉄がFe2+状態に還元することを防ぐことができる。1+酸化状態を有するアルカリ金属が2+酸化状態を有するSrを置換するため、Fe3+がFe2+に転換する尤度が低下する。なぜならこの場合、平均金属酸化状態が低くなり過ぎるからである。したがって、焼結中の鉄の還元が阻止される。鉄の還元を回避することによって、共振周波数の閾値を、あらかじめ取得した値より高く押上げることができる。Fe2+は共振周波数を低下させ、磁気損失正接および誘電損失正接の双方に寄与する。したがって、上昇した共振周波数は、減少した磁気損失正接と共に、磁気Q係数の対応する増大をもたらすことができ、開示される材料の実施形態が、磁気誘電材料としての有利な効用を有することが可能となる。
【0112】
いくつかの実施形態では、Y相ストロンチウム六方晶フェライトの結晶構造中に置換するべき原子としてナトリウム(Na)を用いることができる。結晶構造にナトリウムを組込むことによって、高Q値を維持しつつ高透磁率値を実現することができ、それにより、磁気誘電材料として使用するための材料の実施形態を向上させる。
【0113】
いくつかの実施形態では、Y相六方晶フェライトのSr2+原子のいくつかを置換するためにNaを用いることができる。置換は多くの方法によって行なうことができ、ナトリウムを有する多くの組成を含むことができ、置換の方法は限定的なものではない。たとえば、いくつかの実施形態では、格子内のどこにも電荷補償がない状態で、またはSr−Co−Y格子における結合置換による電荷補償がある状態で、ナトリウムからストロンチウムへの置換を行なうことができる。
【0114】
しかし、ストロンチウムおよびナトリウムはそれらの原子に対して異なる電荷、ストロンチウムについては2、ナトリウムについては1を有し、したがって、何らかの電荷平衡を用いて、任意の結晶構造の著しい歪みを回避することができる。いくつかの実施形態では、三価または四価種で(ストロンチウムと同様に2+電荷を有する)コバルトを置換することができ、Sr2+をKで置換することによって生じる電荷不均衡を補償することができ、したがって概ね均衡した化学構造がもたらされる。電荷平衡をもたらすことができることにより、2つの化合物群、すなわち一方はコバルトの三価イオン置換のための化合物群、他方はコバルトの四価イオン置換のための化合物群を用いることができる。
【0115】
三価イオン置換については、以下の例の組成を用いることができる。
Sr2−xNaCo2−xFe1222
Mは、Al、Ga、Sc、Cr、Mn、In、Yb、Er、Yまたは他のランタニドなどの三価カチオンであるが、三価イオンは限定的なものではない。さらに、x値は約0〜約1.5までの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、0.2<x<0.7である。
【0116】
四価イオン置換については、以下の式を用いることができる。
Sr2−2xNa2xCo2xFe1222
Nは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、Ce、Pr、Hf、またはTbであり得るが、四価イオンは限定的なものではない。さらに、x値は約0〜約1.5までの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、0.2<x<0.7である。x=0.4であるいくつかの実施形態では、低損失における極めて高い透磁率値も観察される。
【0117】
図1および図10は、上記で開示した置換技術を用いたインピーダンススペクトルを示す。典型的に、インピーダンススペクトルは、インピーダンス分光法または電気化学インピーダンス分光法としても知られている誘電分光法を用いて行なわれる。インピーダンススペクトルは、媒体の異なる誘電特性を異なる周波数の関数として有利に示すことができる。
【0118】
図1および図10では、インピーダンススペクトルは、周波数範囲全体にわたり透磁率(μ′)および損失係数(μ″)の双方を示す。周波数範囲全体にわたって最小の移動を有することが高周波用途には有利であり得る。これは、それらの特定の周波数において最小損失があることを示す。損失係数が急上昇し始めると、材料は、それらの周波数における使用中に、より多くの損失を被り得る。ある点において、高い損失のせいでその特定の周波数範囲におけるアンテナ用途について材料が使用不可能となり得る。
【0119】
損失係数スパイクを最小化すると共に、損失係数のスパイクを周波数の高い範囲に向かって可能な限り遠くに調節することが有利であり得る。言及したように、損失正接が急上昇すると、材料はそれらの特定の周波数においてあまり有用でなくなり得る。したがって、より高い周波数において損失正接スパイクを有することは、最小限の損失でより高い周波数において当該材料を用いることができることを概して意味し得る。
【0120】
図1は、x=0.25であるである場合のScを用いた六方晶フェライト材料についての透磁率および損失係数を例示する。したがって一般式は、Sr1.75Na0.25Co1.75Sc0.25Fe1222である。
【0121】
図1に示されるように、Y相六方晶フェライト材料の実施形態の損失係数は、1GHzまでは4を超えて上昇しない。実際、六方晶フェライト材料の損失係数は、およそ800MHzまで3前後で比較的一定したままである。
【0122】
低損失係数を維持しつつ、図1に示される材料はおよそ5の透磁率も維持する。これは、典型的なY相六方晶フェライト材料に見られる透磁率の2倍を超える。
【0123】
したがって、損失係数が低く透磁率が高いことから、図1に関して示されたY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波アンテナなどにおいて磁気誘電材料として使用されるのに有利であり得る。
【0124】
図10は、x=0.5である場合のScを用いた六方晶フェライト材料についての透磁率および損失係数を例示する。したがって一般式は、Sr1.5Na0.5Co1.5Sc0.5Fe1222である。
【0125】
図10に示されるように、1GHzを十分に上回るまで、Y相六方晶フェライト材料の実施形態の損失係数は4を超えて上昇しない。実際、六方晶フェライト材料の損失係数は、およそ800MHzまでわずか3未満で比較的一定したままである。周波数1GHzにおいても、材料はわずか3前後の損失係数を有する。したがって、この開示されるY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高共振周波数アンテナ用途に特に適する。
【0126】
加えて、低損失係数を維持しつつ、図10に示される材料は約5〜約6の透磁率も維持する。これは、典型的なY相六方晶フェライト材料に見られる透磁率の2倍〜約3倍である。
【0127】
したがって、損失係数が低く透磁率が高いことから、図10に関して示されたY相六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波アンテナなどにおいて磁気誘電材料として使用されるのに有利であり得る。
【0128】
処理
図11図15は、上記で開示した六方晶フェライト材料の実施形態のうち1つ以上を使用し、かつ本願明細書に記載された1つ以上の特徴を有する高周波アンテナなどのフェライト装置を製造するためのプロセスを示している。図11は、前述した特性の1つ以上を有するセラミック材料を製造するために実施することができるプロセス20を示す。ブロック21において、粉末を作製することができる。ブロック22において、作製した粉末から成形物を形成することができる。ブロック23において、形成された成形物を焼結することができる。ブロック24において、焼結体は、仕上げられ、1つ以上の所望の特性を有するセラミック仕上げ品を得ることができる。
【0129】
セラミック仕上げ品が装置の一部である実現例では、ブロック25において、この装置を組立てることができる。装置またはセラミック仕上げ品が製品の一部である実現例では、ブロック26において、この製品を組立てることができる。
【0130】
図11は、例示プロセス20の一部のステップまたは全てのステップが設計仕様などにより決められてもよいことをさらに示している。同様に、一部のステップまたは全てのステップは、検査、品質管理などを含んでもよく、検査、品質管理などを受けてもよい。
【0131】
作製された粉末は、本願明細書に記載の1つ以上の特性を含むことができ、および/または本願明細書に記載の1つ以上の特性を有するセラミック体の形成を容易にすることができる。
【0132】
いくつかの実現例において、本願明細書に記載したように作製された粉末は、異なる形成技術によって異なる形状に形成されることができる。例として、図12は、本願明細書に記載したように作製された粉末材料を加圧することによって成形物を形成することができる処理50を示している。ブロック52において、所望の量の粉末を成形金型に充填することができる。図13において、配置図60は、成形金型61を示している。金型61は、粉末63を収納しかつ粉末を加圧することを可能にするように寸法された容積62を画定する。ブロック53は、金型内の粉末を加圧することによって、成形物を形成するができる。配置図64は、ピストン65が(矢印66の方向に沿って)金型61によって画定される容積62に押圧することにより、粉末を中間圧縮形態67に形成することを示している。ブロック54において、金型から圧力を解除することができる。ブロック55において、金型61からピストン65を取出すことにより、容積62を開放することができる。配置図68は、開放された金型61の容積62を示している。金型が開放され、金型から成形物69を取出すことを可能にする。ブロック56において、金型61から成形物69を取出すことができる。ブロック57において、今後の処理のために、成形物を保存することができる。当業者が精通している追加的な形成方法は、等方静的加圧、テープ成形、テープカレンダーおよび押出を含むが、これらに限定されない。
【0133】
いくつかの実現例において、本願明細書に記載したように製造された成形物は、セラミック装置として望ましい物理的特性を得るために、焼結することができる。図14は、成形物を焼結するために実施することができる処理70を示している。ブロック71において、成形物を提供することができる。ブロック72において、成形物を窯内に導入することができる。図15は、焼結トレイ80に装入された複数の成形物69を示している。図示の焼結トレイ80は、これらの成形物69を表面82上に支持し、トレイの上縁が成形物69の上部よりも高くなるように寸法された凹部83を画定する。このような構成は、焼結処理の間に、装入済みのトレイを堆積することを可能にする。トレイが堆積された場合においても、凹部83内の高温ガスの循環を改善することを可能にするために、図示のトレイ80は、側壁に切欠き83をさらに画定している。図15は、複数の装入済みトレイ80からなるスタック84を示している。一番上部のトレイに装入された成形物が下部トレイに装入された成形物とほぼ同様の焼結条件を受けるように、一番上部のトレイにトップカバー85を設けることができる。
【0134】
ブロック73において、アンテナなどの焼結物を得るために、成形物に熱を適用することができる。このような熱の適用は、窯を使用することによって達成することができる。ブロック74において、窯から焼結物を取出すことができる。図15は、複数の装入済みトレイを含むスタック84を窯87に導入すること(段階86a)を示している。所望の時間および温度プロファイルに基づいて、スタックを窯の内部で移動させること(段階86bおよび86c)ができる。段階86dは、スタック84を冷却するために窯から取出すことを示している。
【0135】
ブロック75において、焼結物を冷却することができる。冷却は、所望の時間および温度プロファイルにより決めることができる。ブロック76において、冷却された焼結物は、1つ以上の仕上げ作業を受けることができる。ブロック77において、1つ以上の検査を行うことができる。
【0136】
さまざまな形態の粉末およびさまざまな形状の成形物に対する熱処理は、軽焼き(calcining)、焼成(firing)、焼鈍(annealing)、および/または焼結(sintering)として本願明細書に記載される。これらの用語は、適切な状況または特定の内容において交換可能に使用してもよく、それらの組合せで交換可能に使用してもよいことが理解されるべきである。
【0137】
スカンジウム、シリコンおよび/またはマンガンの置換
磁気誘電アンテナ用途については、可能な限り高い透磁率を有することが有利であり得る。高透磁率を有することは、向上した小型化係数などの磁気誘電用途のための多くの利点をもたらすことができ、したがって部品の接地面積全体がより小さくなり、かつ自由空間に対するインピーダンス整合につながる。さらに、材料が組込まれる電子装置の動作周波数を最大化することができる高い共振周波数を有することが有利であり得、それによって、より高い周波数範囲における電子装置の使用が可能となる。
【0138】
しかし、先行技術のアンテナ用途に典型的に用いられてきた高透磁率磁性酸化物は、低い共振周波数を有する傾向にある。高い共振周波数を有する少数の材料は、通常は低い透磁率を有し、高周波電磁誘電用途においてそれらを使用することは好適ではない。たとえば、SrCoFe1222(Sr−Co−Y相)は、1GHzを十分に超える共振周波数を有するが、透磁率はわずか2である。したがって、先行技術材料は高周波用途に効率的に対処するのには使用可能ではなかった。
【0139】
従来の解決策は、Z相六方晶フェライト材料(たとえば、CoZ−BaCoFe2441)の共振周波数の上昇に焦点を当ててきた。具体的には、米国特許番号第8,524,190号および第8,609,062号に開示されるように、CoZにおいてバリウムイオンをアルカリ金属で置換することが行なわれてきた。当該公報の全体を引用によって本願明細書に援用する。バリウムの代わりにアルカリ金属を組込むことにより材料の共振周波数が上昇してきたが、材料の使用可能な周波数は、所望よりも依然として低い場合がある。したがって、共振周波数における適度の向上を上記の開示で詳述してきたが、CoZ材料についての使用可能な周波数範囲を著しく拡張していない場合がある。
【0140】
したがって、本願明細書に開示されるのは、高透磁率および高共振周波数の双方を有することができる、上記のようなY相ストロンチウム六方晶フェライト材料(CoY)の実施形態であり、したがって材料は、高周波アンテナ用途において使用するのに有利とされる。
【0141】
いくつかの実施形態では、透磁率は、Sr−Co−Y相六方晶フェライト材料の結合置換を用いて、典型値から2倍または3倍になり得る。さらに、Z相材料に対する、Y相六方晶フェライト材料の共振周波数は、約500MHz〜約1GHzの範囲に上昇することができ、材料を高周波用途に使用することが可能となる。
【0142】
いくつかの実施形態では、上述したように、高誘電体アンテナ部品に用いることができる例示的なY相六方晶フェライトは以下の式を有することができる。
Sr2−xCo2−xFe1222またはSr2−xNaCo2−xFe1222
この場合、Mはスカンジウムまたはインジウム(Sc3+またはIn3+)である。スカンジウムまたはインジウムでコバルトを置換すると、これは、透磁率の増大をもたらすことができる。これは、コバルト、スカンジウムおよびインジウムがすべてシャノン-プレウィット(Shannon-Prewitt)の有効イオン半径に従って比較的同様のイオンサイズを有することから生じる可能性が最も高い。たとえば、コバルトは、0.885オングストロームのイオンサイズを有し、一方スカンジウムおよびインジウムは、それぞれ0.885および0.94のイオンサイズを有する。実際、スカンジウムおよびコバルトはほぼ同一のサイズを有する。したがって、これらの元素がCoY材料の結晶構造中に置換される場合、当初の原子と概ね同じ場所に適合する置換原子によって最小の変形が結晶構造に対して生じる可能性が高い。
【0143】
上記の式に続いて、いくつかの実施形態では、シリカおよび/またはアルミニウムをさらにSr−Co−YまたはScおよびNaで共同置換された六方晶フェライト材料に組込み、それにより六方晶フェライト材料の共振周波数および透磁率を概ね増大させ、高周波部品のために有利な特性をもたらすことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、Al3+でFe3+を置換し、それによって、置換された原子を含むようにSrCoFe1222格子を調節することができる。
【0144】
したがって、いくつかの実施形態では、Mがスカンジウムまたはインジウム(Sc3+またはIn3+)である場合、組成はSrCoFe12−yAl22またはSr2−x(K,Na)Co2−xFe12−yAl22であり得る。
【0145】
さらに、Mがスカンジウムまたはインジウム(Sc3+またはIn3+)である場合、SrCoFe1222、Sr22−x(K,Na)Co2−xFe1222またはSr2−x(K,Na)Co2−xFe12−yAl22にシリコンを添加して、六方晶フェライト材料の磁気特性を調節することができる。Si添加物は結晶粒成長抑制物質として作用し、したがって、粒界において分離させることができ、焼結材料における磁歪作用を弱めることができる。
【0146】
また、Mn3+を六方晶フェライト材料に添加して、上述のようにFe3+還元を防ぎ、したがって誘電損失を向上させることができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、シリコンは結晶構造の粒界に配置されることができ、マンガンおよびアルミニウムを結晶構造に組込むことができるが、それらこの構造は限定的なものではない。
【0148】
いくつかの実施形態では、Mがスカンジウムまたはインジウム(Sc3+またはIn3+)である場合、組成は、SrCoFe12−yMn22、Sr2−xCo2−xFe12−yMn22またはSr2−xCo2−xFe12−y−zMnAl22であり得る。
【0149】
図16図17は、上記で開示した置換技術を用いたインピーダンススペクトルを示す。典型的に、インピーダンススペクトルは、インピーダンス分光法または電気化学インピーダンス分光法としても知られている誘電分光法を用いて行なわれる。インピーダンススペクトルは、媒体の異なる誘電特性を異なる周波数の関数として有利に示すことができる。具体的には、図16図17は、Sc、Al、Si、およびMnを含むY相六方晶フェライトの2つの異なる組成を例示する。
【0150】
図16図17では、インピーダンススペクトルは、周波数範囲全体にわたる透磁率(μ′)および損失係数(μ″)の双方を示す。高周波用途で用いられる磁気誘電材料は、周波数範囲全体にわたって最小の特性変化、特に最小のμ″、およびしたがって特定の周波数において最小損失正接を有することが有利となり得る。損失正接が上昇または急上昇し始めると、材料はアンテナ用途に好適でなくなり得る。
【0151】
損失正接スパイクを最小化すると共に、損失正接におけるスパイク(または急速な上昇)を可能な限り高い周波数に調節することが有利であり得る。言及したように、損失正接が急上昇すると、材料は、その特定の周波数においてあまり有用でなくなり得る。したがって、より高い周波数において損失正接スパイクを有することは、最小化された損失でより高い周波数において当該材料を用いることができることを意味する。
【0152】
図16は、x=0.3でありScを含み、したがってSr1.7Na0.3Co1.7Sc0.3Fe11.5l0.522を形成する上記の組成の実施形態を示す。図示のように、組成の損失正接は、より高い共振周波数スペクトルまで相対的に最小化されることができる。たとえば、材料の透磁率および損失係数は、500MHzを超えるまでおよそ5である。この点においてμ″(損失係数)および損失正接は着実に上昇し始める一方、低いμ″および損失正接は1GHzまででも保持される。これは、そのような高周波のための高透磁率および低損失係数であり、開示される材料の実施形態が高周波用途に有利であることを示す。
【0153】
図17は、x=0.4であり、Scを含み、したがってSr1.6Na0.4Co1.6Sc0.4Fe11.5Al0.522を形成する上記の組成の実施形態を示す。図示のように、組成の損失正接は、より高い共振周波数スペクトルまで相対的に最小化されることができる。たとえば、材料の透磁率は、500MHzを超えるまでおよそ5であるが、損失係数はおよそ6である。この点においてμ″(損失係数)および損失正接は着実に上昇し始め、低いμ″および損失正接は1GHzまででも保持される。これは、そのような高周波のための高透磁率および低損失係数であり、開示される材料の実施形態が高周波用途に有利であることを示す。
【0154】
化学量論的酸化物の組込み
上記の開示は、Y相六方晶フェライト材料の磁気特性を向上させるためのある方法および置換物を示しているが、六方晶フェライト材料に第2相酸化物を組込むことによって六方晶フェライト材料に改善を行うこともできる。これらの第2相酸化物は主要な六角相構造に溶解して非化学量論的にするか、または第2相としてセラミックに組込み得る。この組込みは、他のやり方で本願明細書に開示される磁気特性を向上させるための他の方法の有無に関わらず行うことができる。
【0155】
したがって、いくつかの実施形態では、Z相SrCoFe2441の化学量論比と一致する酸化物をY相六方晶フェライト材料の実施形態に組込んで、材料のある磁気特性を向上させることができる。加えて、(スピネル型構造を有する)CoFeまたは(マグネトプラムバイト構造を有する)SrFe1219をY相六方晶フェライト材料に添加することができ、Y相に溶解させて非化学量論的にするか、または、セラミック体内の別個の第2相として存在し得る。しかし、他の酸化物も用いることができ、材料に組込まれる具体的な酸化物は限定的なものではない。
【0156】
いくつかの実施形態では、酸化物は具体的なY相六方晶フェライト組成に組込むことができる。たとえば、これらの化合物をSr1.6Na0.4Co1.6Sc0.4Fe1122の構造に組込んで、向上した特性を有する六方晶フェライト材料を形成することができる。しかし、Y相六方晶フェライトの他の組成を用いることができ、酸化物が組込まれるY相六方晶フェライトの種類は限定的なものではない。含まれる酸化物添加物は、上記の磁気誘電特性のうち少なくともいくつかを向上させることができるため有利であり得る。さらに、磁気特性を向上させることによって、磁気誘電アンテナ材料を合成するために用いることができる多くの組成を用いることができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、2(または約2)重量%のSrCoFe2441とのSr1.6Na0.4Co1.6Sc0.4Fe1122の組合せは、磁気誘電アンテナ材料としての使用のための優れた特性をもたらすことができる。たとえば、図18は、六方晶フェライト材料に適用される周波数と比較したMu′(透磁率)および磁気Qデータを示す。
【0158】
図18に示されるように、開示されるY相六方晶フェライト材料の実施形態のQ係数は、低周波値において極めて高い。しかし、500MHzと1GHzとの間以上などのより高い周波数でも、材料が高いQ係数値を維持することが有利である。開示される材料の実施形態は、これらの高周波において比較的高いQ係数を維持することができることが有利である。Q値は印加周波数が上昇するにつれて低下するが、降下は、従来用いられてきた他の材料で生じるように劇的なものではない。したがって、開示される六方晶フェライト材料の実施形態は、高周波において依然として高いQ値を維持/実現する。
【0159】
たとえば、六方晶フェライト材料の実施形態は、800MHzにおいて約20より大きいQ値を有する。さらに、六方晶フェライト材料の実施形態は、1GHzにおいて約15より大きいQ値を有する。したがって、開示されるY相六方晶フェライト材料の実施形態は、現行のバルク材料で可能であるよりも高い周波数用途で用いることができる。
【0160】
また、図18に示されるように、六方晶フェライト材料は、上記の高Q係数を有しつつも、その周波数範囲の全体にわたって高透磁率を維持することができる。図示のように、六方晶フェライト材料は、800MHz〜1GHzまで約6、7、または8という比較的均一な透磁率μ′を維持する。この透磁率レベルは、基本的なY相六方晶フェライト構造についての典型的な透磁率値2よりも著しく高い。実際、開示されるY相六方晶フェライト値の実施形態は、高周波において標準的なY相六方晶フェライト材料の2〜3倍の透磁率レベルを実現することができる。したがって、開示される六方晶フェライト材料の実施形態は、高透磁率を維持しつつも高Q値を実現し、それによって、500MHzと1GHzとの間の周波数において磁気誘電アンテナで使用するのに有利とすることができる。
【0161】
さらに、六方晶フェライト材料の実施形態は、およそ10〜11の比誘電率(たとえば誘電率)を有することができる。比較的高い透磁率によって、SrCoFe1222よりも良好な、自由空間とのインピーダンス整合がこれらの材料に与えられる。μ=εの時、自由空間との完全なインピーダンス整合がある。
【0162】
アンテナ性能のための2つの性能指数は、小型化係数および帯域幅を含む。第一に、小型化係数は以下の式によって決定される。
【0163】
【数4】
【0164】
ここでdeff/dは小型化係数であり、εはアンテナ材料の誘電率であり、μはアンテナ材料の透磁率である。εおよびμは双方とも、磁性酸化物アンテナの周波数に依存する。第二に、有効帯域幅(または効率)が以下の式によって決定される。
【0165】
【数5】
【0166】
ここでη/ηは材料の効率(または帯域幅)を表す。μが最大化されると、この効率は最大化される。
【0167】
小型化が高誘電率および高透磁率の双方を有することが有利であり得る。高い値を有することは、小型化係数の向上をもたらすことができる。さらに、効率式については、誘電率以上の透磁率を有することが有利であり得る。しかし、透磁率および誘電率の双方を可能な限り高くすることが有利であり得る。したがって、説明したY相六方晶フェライト材料の実施形態は高透磁率および高誘電率を有し、透磁率に比較的近い誘電率を有することから、自由空間に対する良好なインピーダンス整合が望ましいアンテナ用途に有用であり得る。
【0168】
表1は、詳細に上記した方法を用いるなどして置換されたSr−Co−Y相六方晶フェライトの実施形態の透磁率スペクトルを例示する。
【0169】
【表1】
【0170】
処理
本開示のある局面は、より高い周波数においてY相ヘキサフェライトの透磁率を上昇させるための処理技術を提供する。一実現例では、処理技術は、向上した磁気特性を有するテクスチャ加工されたセラミックをもたらすためのY相ヘキサフェライトの磁気テクスチャ加工の方法を含む。一実施形態では、成形に用いられる磁気テクスチャ加工の方法は、反応焼結法を用いることを含み、反応焼結法は、M相(BaFe1219一軸磁化)を静磁場内の非磁性添加物と位置合せし、BaO源およびCoOと反応してY相(SrMeFe1222)を形成する工程を含む。別の実施形態では、Sr−CoYを形成するのに用いられる磁気テクスチャ加工の方法は回転磁場法を用いることを含み、回転磁場法は、Sr−CoY相(平面磁化)を回転磁場に生じる磁気テクスチャ加工と位置合せする工程を含む。発明者は、位置合わせの程度、したがって透磁率利得が回転磁場においてはるかに優れていることを見出した。
【0171】
発明者は高温におけるFeの還元(Fe3+→Fe2+)によって誘電損失および磁気損失が増大されると考えるため、いくつかの実施形態では、Y相材料を形成するための処理技術は、Y相Feを不足させてFeの還元を阻止することを含む。処理技術は、Feの還元を阻止し、Fe2+→Feを引起すために、酸素中での熱処理またはアニールのステップを含む。
【0172】
他のいくつかの実施形態では、Sr−CoYを形成するための処理技術は、細粒六方晶フェライト粒子を形成することを含む。当該プロセスは、粒径を減少させるために高エネルギ粉砕を用いることを含む。
【0173】
図19は、好ましい実施形態に係るSr−CoY材料を形成する方法100を例示する。図19に示されるように、適切な量の前駆材料−磁性材料を形成することができるストロンチウム、コバルト、鉄、1つ以上のアルカリ金属、スカンジウム、インジウム、アルミニウム、シリカ、マンガン、および酸素をもたらし得る反応物−がステップ102において互いに混合される。いくつかの局面では、酸素の少なくとも一部分は、ストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、または1つ以上のアルカリ金属の酸素含有化合物の形態で提供され得る。たとえば、これらの元素は、炭酸塩または酸化物の形態か、または当該技術において知られている他の酸素含有前駆体で提供され得る。1つ以上の局面において、1つ以上の前駆材料が、非酸素含有化合物または純粋な元素形態で提供され得る。他の局面では、たとえばHなどの別個の化合物から、または酸素ガスもしくは空気から酸素を供給することができる。たとえば、一実施形態では、SrCO、Co、NaHCO、Sc、およびFe前駆体が、Y相材料の形成のために適切な比率で混合される。これらの前駆体化合物は、たとえば、カウレスミキサー、ボールミル、または振動ミルを用いて水またはアルコールに混合または配合され得る。これらの前駆体は、乾燥した状態でも配合され得る。
【0174】
配合された混合物は次いで、必要であればステップ104において乾燥され得る。混合物は、たとえば、パンドライ(pan drying)または噴霧乾燥を含む多くの方法のうちのいずれかで乾燥され得る。乾燥された混合物は次いで、軽焼きを容易にするためのある温度およびある時間、ステップ106において加熱され得る。たとえば、加熱ステップ106で用いられる加熱システムの温度は、1時間当たり約20℃と1時間当たり約200℃との間の速度で上昇して、約2時間〜約12時間維持され得る約1000℃〜1300℃または約1100℃〜1250℃の浸漬温度を実現し得る。加熱システムは、たとえば炉または窯であり得る。混合物は、水分の損失、および/または1つ以上の成分の還元もしくは酸化、および/または存在し得る炭酸塩および/または有機化合物の分解を被り得る。混合物の少なくとも一部分はヘキサフェライト固溶体を形成し得る。
【0175】
温度勾配率、浸漬温度、および混合物が加熱される時間は、特定用途の要件に依存して選択され得る。たとえば、加熱後の材料において小さい結晶粒が望ましい場合は、より大きい結晶粒が望ましい用途とは反対に、より速い温度勾配、および/またはより低い浸漬温度、および/またはより短い加熱時間が選択され得る。その上、異なる量および/または形態の前駆材料の使用により、加熱後の混合物に所望の特性をもたらすための温度勾配率および浸漬温度および/または時間などのパラメータについて異なる要件がもたらされ得る。
【0176】
加熱後、ヘキサフェライト固溶体の凝集粒子を形成している可能性がある混合物は、室温またはさらなる処理を容易にすることになる任意の他の温度に冷却されてもよい。加熱システムの冷却速度は、たとえば1時間当たり80℃であり得る。ステップ108において、凝集粒子は粉砕され得る。粉砕は、水、アルコール、ボールミル、振動ミル、または他の粉砕装置内で行なわれ得る。たとえば直径約1〜約10ミクロンの他の粒径はいくつかの用途において許容され得るが、いくつかの実施形態では、結果として生じる粉末材料の中央粒径が約1〜約4ミクロンになるまで粉砕が継続される。好ましい実施形態では、高エネルギ粉砕を用いて、直径0.2〜0.9ミクロンの微細な粒径まで粒子を粉砕する。この粒径は、たとえば、粒度測定装置(sedigraph)またはレーザー散乱技術を用いて測定され得る。目標の中央粒径は、後のステップでの焼結を容易にするために粒子の十分な表面積をもたらすように選択され得る。より小さな中央粒径を有する粒子は、大きな粒子よりも、反応性がより高く、より容易に焼結され得る。いくつかの方法では、ステップ102の代わりにまたはステップ102に加えて、1つ以上のアルカリ金属またはアルカリ金属前駆体または他のドーパント材料をこの時点で添加してもよい。
【0177】
粉末材料は、ステップ110において必要であれば乾燥してもよく、乾燥した粉末は、たとえばステップ112において一軸加圧または等方静的加圧を用いて所望形状に加圧されてもよい。材料を加圧するために用いられる圧力は、たとえば80,000N/mまでであり得、典型的には約20,000N/m〜約60,000N/m.sup.2の範囲内にある。より高い加圧圧力は、より低い加圧圧力よりも、さらなる加熱後により高密度の材料をもたらし得る。
【0178】
ステップ114において、加圧された粉末材料を焼結して、ドープされたヘキサフェライトの固体物質を形成し得る。ドープされたヘキサフェライトの固体物質は、ドープされたヘキサフェライトから形成されることが望ましい部品の形状を有する金型で焼結され得る。ドープされたヘキサフェライトの焼結は、限定はしないが結晶粒径、不純物レベル、圧縮性、引張強さ、多孔性、およびいくつかの場合は透磁率などの1つ以上の所望の特性をもたらすのに好適なまたは所望の温度で十分な時間行なわれ得る。好ましくは、焼結条件は、他の望ましくない特性に影響することなく、または、少なくとも他の望ましくない特性に対する許容可能な変更により、1つ以上の所望の材料特性を促進する。たとえば、焼結条件は、鉄の還元がほとんどないかまたは最小である焼結済みのドープされたヘキサフェライトの形成を促進し得る。一実施形態では、焼結工程114で用いられる温度は、好ましくは1100℃〜1250℃である。いくつかの実施形態によれば、焼結工程114で用いられる加熱システムの温度は、1時間当たり約20℃と1時間当たり約200℃との間の速度で上昇され、約2時間〜約12時間維持され得る約1000℃〜1450℃または約1100℃〜1150℃または約1100℃〜1250℃の浸漬温度を実現し得る。加熱システムは、たとえば炉または窯であり得る。より遅い勾配および/またはより高い浸漬温度および/またはより長い焼結時間は、より速い温度勾配および/またはより低い浸漬温度および/またはより短い加熱時間を用いて実現され得るよりも高密度の焼結材料をもたらし得る。たとえば焼結プロセスに対して調節を行うことによって最終的な焼結材料の密度を増大させることを行い、所望の透磁率、飽和磁化、および/または磁歪係数を材料にもたらし得る。本開示に係る方法のいくつかの実施形態によれば、焼結されたヘキサフェライトの密度範囲は、約4.50g/cmと約5.36g/cmとの間であり得る。ドープされたヘキサフェライトの所望の透磁率は、材料の熱処理を調整して所望のサイズの粒子を生成することによっても実現され得る。ヘキサフェライトは、最終的なヘキサフェライト製品を形成するためにステップ116においてクラッシュ加圧され、さらに焼結されてもよい。
【0179】
上記の方法の実施形態によって生成される材料の粒径は、加工条件に依存する直径約5マイクロメートルと1ミリメートルとの間で変動し得、本開示に係る方法のいくつかの局面ではさらに大きい粒径が可能である。いくつかの局面では、材料の各結晶は、単一磁区を含み得る。ドープされたSr−CoYおよび化学的に置換された(たとえばNaおよびSc)Sr−CoYは双方とも、Y形フェライト結晶構造を有するフェロクスプレーナと呼ばれる平らなヘキサフェライト族の要素であり得る。
【0180】
図20は、磁歪を低減し、かつ材料の共振周波数を向上させるように適合された別の実施形態に係るテクスチャ加工されたSr−CoYを形成する方法200を例示する。方法200は、細粒六方晶フェライト粉末が形成されるステップ202から開始する。一実現例では、細粒六方晶フェライト粉末はストロンチウムコバルトフェライトY相粉末である。この粉末は、共沈などの当該技術において既知の化学プロセスを用いて合成することができる。Sr−CoYは、ゾルゲル法、軽焼き、およびネッチュ・ツェーター・ミルなどを用いた機械粉砕によって合成することもできる。一実施形態では、Sr−CoY粉末は、約1ミクロン未満の粒径および約6m/gより大きい表面積を有する。別の実施形態では、Sr−CoY粉末は、約1ミクロン未満の平均粒径および約6m/gより大きい表面積を有する。
【0181】
図20がさらに示すように、方法200は、冷間等方加圧、一軸加圧成形、押出などの既知のプロセスによって六方晶フェライト粉末が圧縮されるステップ204をさらに含む。また図20に示されるように、六角形の粉末はその後、同じ材料について標準的な従来の焼結温度よりも低い約1100℃と1250℃との間の温度でステップ206において燃焼される。結果として生じる材料は、好ましくは細粒六方晶フェライト材料である。
【0182】
パワーアンプモジュールおよび無線装置
図21および図22は、本開示の方法、材料および装置のうちのいずれかを用いて実現された1つ以上の高周波装置を含むことができるパワーアンプモジュール10および無線装置11をそれぞれ例示する。たとえば、パワーアンプモジュール10および無線装置11は、限定はしないが共振周波数が上昇したアルカリがドープされたy相六方晶フェライト、共振周波数が上昇したカリウムがドープされた六方晶フェライト、ナトリウム置換によって形成された磁気誘電y相ストロンチウム六方晶フェライト材料、および高周波動作のための酸化物を組込んだフェライト材料を組込む1本以上のアンテナ、変圧器、インダクタ、サーキュレータ、吸収装置、もしくは他のRF装置、または本開示によって実現される他の装置を含むことができる。
【0183】
図21は、高周波(RF)信号を増幅するためのパワーアンプモジュール(PAM)10の概略図である。例示されるパワーアンプモジュール10は、RF信号(RF_IN)を増幅して、増幅されたRF信号(RF_OUT)を生成する。
【0184】
図22は、例示的な無線またはモバイル装置11の概略ブロック図である。図22に描かれた例示的な無線装置11は、マルチバンド/マルチモード携帯電話機などのマルチバンドおよび/またはマルチモード装置を表わすことができる。例として、モバイル通信用グローバルシステム(GSM(登録商標))規格は、世界の多くの地域で利用されているデジタル移動体通信の様式である。GSMモード携帯電話機は、4つの周波数帯、850MHz(Txについておよそ824〜849MHz、Rxについて869〜894MHz)、900MHz(Txについておよそ880〜915MHz、Rxについて925〜960MHz)、1800MHz(Txについておよそ1710〜1785MHz、Rxについて1805〜1880MHz)、および1900MHz(Txについておよそ1850〜1910MHz、Rxについて1930〜1990MHz)のうち1つ以上において動作することができる。GSM帯域の変動および/または地域/国家的な実現例も世界の異なる地域で利用されている。
【0185】
符号分割多元接続(CDMA)は、携帯電話装置において実現することができる別の規格である。ある実現例では、CDMA装置は、800MHz、900MHz、1800MHz、および1900MHz帯域のうち1つ以上で動作することができ、あるW−CDMAおよびロングタームエボリューション(LTE)装置は、たとえば22以上の高周波スペクトル帯域上で動作することができる。
【0186】
本開示の1つ以上の特徴は、前述の例示的なモードおよび/または帯域において、かつ他の通信規格において実現することができる。たとえば、802.11、2G、3G、4G、LTE、およびAdvanced LTEは、そのような規格の非限定的な例である。データ速度を高めるために、無線装置11は、64個のQAM信号などの複雑な変調信号を用いて動作することができる。
【0187】
ある実施形態において、無線装置11は、スイッチ12、トランシーバ13、アンテナ14、電力増幅器17a,17b、制御部品18、コンピュータ読取り可能な媒体19、プロセッサ20、バッテリ21、およびパワー管理システム30を含むことができ、いずれも開示される材料の実施形態を含むことができる。
【0188】
トランシーバ13は、RF信号を生成してアンテナ14を介して伝送することができる。さらに、トランシーバ13は、アンテナ14からの入来RF信号を受信することができる。
【0189】
RF信号の送受信に関連付けられた様々な機能性は、図22においてトランシーバ13として一括して表わされる1つ以上の部品によって実現することができることが理解されるであろう。たとえば、送受信機能性をもたらすように単一部品を構成することができる。別の例では、送受信機能性は別個の部品によってもたらすことができる。
【0190】
同様に、RF信号の送受信に関連付けられた様々な機能性は、図22においてアンテナ14として一括して表わされる1つ以上の部品によって実現することができることが理解されるであろう。たとえば、単一のアンテナを構成して送信機能性および受信機能性の双方をもたらすことができる。別の例では、送受信機能性は別個のアンテナによってもたらすことができる。さらに別の例では、無線装置11に関連付けられた異なる帯域は、異なるアンテナを用いて動作することができる。
【0191】
図22では、トランシーバ13からの1つ以上の出力信号は、1つ以上の送信経路15を介してアンテナ14に供給されるものとして描かれる。図示の例では、異なる送信経路15は、異なる帯域および/または異なる電力出力に関連付けられた出力経路を表わすことができる。たとえば、図示の2つの例示的な電力増幅器17a,17bは、異なる電力出力構造(たとえば低出力および高出力)に関連付けられた増幅、および/または異なる帯域に関連付けられた増幅を表わすことができる。図22は2つの送信経路15および2つの電力増幅器17a,17bを用いた構造を例示しているが、無線装置11は、より多いかもしくはより少ない送信経路15および/またはより多いかもしくはより少ない電力増幅器を含むように適合されることができる。
【0192】
図22では、アンテナ14からの1つ以上の検出信号が、1つ以上の受信経路16を介してトランシーバ13に供給されるものとして描かれる。図示の例では、異なる受信経路16は、異なる帯域に関連付けられた経路を表わすことができる。たとえば、図示の4つの例示的な受信経路16は、いくつかの無線装置に備えられるクアッドバンド機能を表わすことができる。図22は4つの受信経路16を用いた構造を例示しているが、無線装置11は、より多いかまたはより少ない受信経路16を含むように適合されることができる。
【0193】
受信経路と送信経路とのスイッチングを容易にするために、選択された送信または受信経路にアンテナ14を電気的に接続するようにスイッチ12を構成することができる。したがって、スイッチ12は、無線装置11の動作に関連付けられた多くのスイッチング機能性を提供することができる。ある実施形態では、スイッチ12は、たとえば異なる帯域間のスイッチング、異なる電源モード間のスイッチング、送信モードと受信モードとのスイッチング、またはそれらの何らかの組合せに関連付けられた機能性を提供するように構成された多くのスイッチを含むことができる。スイッチ12は、信号のフィルタリングおよび/または多重化を含む追加的な機能性を提供するように構成することもできる。
【0194】
図22は、ある実施形態において、スイッチ12、電力増幅器17a,17b、パワー管理システム30、および/または他の動作部品の動作に関連付けられた様々な制御機能性を制御するために制御部品18を設けることができることを示す。
【0195】
ある実施形態では、プロセッサ20は、本願明細書に記載される様々なプロセスの実現を容易にするように構成することができる。プロセッサ20は、様々なコンピュータプログラム命令を実行することができる。プロセッサ20は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理機器であり得る。
【0196】
ある実施形態では、これらのコンピュータプログラム命令は、命令がコンピュータ読取り可能なメモリ19に格納されるように、特定のやり方で動作するようプロセッサ20を導くことができるコンピュータ読取り可能なメモリ19に格納されてもよい。
【0197】
例示されている無線装置11はパワー管理システム30も含み、パワー管理システム30は、電力増幅器供給電圧を電力増幅器17a,17bの1つ以上に供給するために用いることができる。たとえば、パワー管理システム30は、電力増幅器17a,17bに供給される供給電圧を変化させて、電力付加効率(PAE)などの効率を向上させるように構成することができる。パワー管理システム30は、平均パワートラッキング(APT)および/またはエンベロープトラッキング(ET)を提供するために用いることができる。さらに、以下にさらに詳細に説明されるように、パワー管理システム30は、電力増幅器17a,17bの1つ以上の段階のための電力増幅器供給電圧を生成するために用いられる1つ以上の低ドロップアウト(LDO)レギュレータを含むことができる。例示されている実現例では、パワー管理システム30は、トランシーバ13によって生成された電力制御信号を用いて制御される。ある構成では、電力制御信号は、トランシーバ13によってシリアルペリフェラルインターフェイス(SPI)またはMobile Industry Processor Interface(MIPI)などのインターフェイスによってパワー管理システム30に供給される。
【0198】
ある構造では、無線装置11は、キャリアアグリゲーションを用いて動作し得る。キャリアアグリゲーションは、周波数分割二重化(FDD)および時分割二重化(TDD)の双方に用いることができ、複数のキャリアまたはチャネル、たとえば5つまでのキャリアを集約するために用いられ得る。キャリアアグリゲーションは、同じ使用周波数帯域内の隣接したキャリアが集約される隣接アグリゲーションを含む。キャリアアグリゲーションは非隣接であることもでき、共通の帯域内の周波数に、または異なる帯域に分離されたキャリアを含むことができる。
【0199】
以上の説明から、創意のある共振器が開示されていることが理解されるであろう。いくつかの構成要素、技術および局面をある程度の詳細をもって説明してきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本願明細書に記載の具体的設計、構造および方法に対する多くの変更ができるということは、明らかである。
【0200】
別々の実現例に関連して本開示において記載された特定の特徴は、組合わせて単一の実現例において実施することもできる。逆に、単一の実現例に関連して説明されたさまざまな特徴は、別々でまたは任意の適切な部分組合せで複数の実現例において実施することができる。さらに、上記の特徴が特定の組合わせで作用してもよいが、場合によって、特許請求された組合わせから1つ以上の特徴をその組合わせから除外することができ、その組合わせを任意の部分組合せとしてまたは任意の部分組合せの変形として請求することができる。
【0201】
また、方法は、特定の順序で図面に図示されまたは明細書に記載されたが、これらの方法は、示された特定の順序または順番で行う必要がなく、望ましい結果を達成するために、すべての方法を実行する必要がない。図示されていないまたは記載されていない他の方法は、例示の方法および処理に組込むことができる。たとえば、1つ以上の追加の方法は、記載された方法の前でまたは後で行うことができ、記載された方法と同時に行うことができ、または記載された方法の間に行うことができる。さらに、方法は、他の実現例において再配列するまたは順序を変えることができる。また、上述の実現例においてさまざまなシステム構成要素の分離は、すべての実現例において構成要素を分離する必要があると理解されるべきではなく、一般的に、記載の構成要素およびシステムは、単一の製品に統合されるかまたは複数の製品にパッケージ化されることができるように理解すべきである。さらに、他の実現例は、本開示の範囲内に含まれる。
【0202】
「できる」または「可能である」などの条件付き表現は、特に明記しない限りまたは使用される文脈の理解に反しない限り、一般的に、特定の実施形態が、特定の特徴、要素および/またはステップを含んでもよく含まなくてもよいということを意図している。したがって、このような条件付き表現は、一般的に、これらの特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要されると意味していない。
【0203】
「X、YおよびZのうち少なくとも1つ」などの接続表現は、特に明記しない限りまたは使用される文脈の理解に反しない限り、一般的に、そのアイテムまたはタームなどがX、YまたはZのいずれであってもよいということを意図している。したがって、そのような接続表現は、一般的に、特定の実施形態において少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、および少なくとも1つのZが存在する必要があると意味していない。
【0204】
本願明細書に使用された「およそ」、「約」、「一般的に」および「実質的に」などの程度を示す表現は、明記された値、量または特徴に近いであり、所望の機能を実行するまたは所望の結果を達成することができる特性、量または特徴を表す。たとえば、「およそ」、「約」「一般的に」および「実質的に」という用語は、明記された量の10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、または0.01%以下である量を意味してもよい。
【0205】
いくつかの実施形態は、添付の図面に関連して説明されてきた。図面は一定の縮尺で描かれているが、縮尺が図面を限定するものではない。図示されているもの以外の寸法および比率が考えられ、開示された発明の範囲内に含まれる。距離および角度などは、単なる例示であり、必ずしも例示の装置の実際の寸法および配置の正確な関係を示すものではない。構成要素を追加、除外および/または再配置することができる。または、本願明細書において、さまざまな実施形態に関連して開示された任意の特定の特徴、局面、方法、特性、特徴、品質、属性および要素などは、本願明細書に記載されたすべての他の実施形態に使用することができる。さらに、本願明細書に記載された任意の方法は、記載されたステップを実行するのに適した任意の装置を使用して実施され得ることが認識されるであろう。
【0206】
複数の実施形態およびその変形は詳細に説明されてきたが、他の変更およびそれを使用する方法は当業者にとって明らかであろう。したがって、さまざまな応用、変更、材料および置換は、本願明細書の開示または特許請求の範囲から逸脱することなく、同等物であることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0207】
60 配置図、61 成形金型、62 容積、63 粉末、64 配置図、65 ピストン、66 矢印、67 中間圧縮形態、68 配置図、69 成形物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図19
図20
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図22