(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤は、前記したように、繊維強化樹脂組成物に用いられる分散剤であり、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤は、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を含有するので、作業環境性に優れるとともに、溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
側鎖にオキサゾリン基を有する重合体としては、例えば、オキサゾリン基含有単量体の単独重合体、オキサゾリン基含有単量体および当該オキサゾリン基含有単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられるが、本発明はかかる例示にのみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基を有する重合体のなかでは、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、オキサゾリン基含有単量体および当該オキサゾリン基含有単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体が好ましい。
【0012】
オキサゾリン基含有単量体は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、付加重合性オキサゾリン基含有単量体であることが好ましい。
【0013】
付加重合性オキサゾリン基含有単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの付加重合性オキサゾリン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの付加重合性オキサゾリン基含有単量体のなかでは、工業的に容易に入手することができることから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0014】
単量体成分におけるオキサゾリン基含有単量体の含有率は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、溶融混練性をさらに向上させる観点から、さらに一層好ましくは20質量%以上であり、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、さらに一層好ましくは70質量%以下である。
【0015】
オキサゾリン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル基(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジtert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;エチレン、プロピレンなどのオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体などの芳香族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有単量体と共重合可能な他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのオキサゾリン基含有単量体と共重合可能な他の単量体のなかでは、熱可塑性樹脂との相溶性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、スチレン系単量体が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0016】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0017】
単量体成分におけるオキサゾリン基含有単量体と共重合可能な他の単量体の含有率は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、0質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに一層好ましくは30質量%以上であり、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下であり、溶融混練性をさらに向上させる観点から、さらに一層好ましくは80質量%以下である。
【0018】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を容易に調製することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0019】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、重合開始剤を溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら単量体成分を当該溶液に添加することによって単量体成分を重合させることができるほか、単量体成分を溶媒に溶解させ、得られた溶液を撹拌しながら重合開始剤を当該溶液に添加することによって単量体成分を重合させることができる。
【0020】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの溶媒のなかでは、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤の溶解性を高める観点から、トルエンが好ましい。溶媒の量は、単量体成分および重合開始剤を十分に溶解させるとともに、両者を効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されないが、通常、単量体成分100質量部あたり、50〜500質量部程度であることが好ましい。
【0021】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチル=2−エチルパーオキシヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイドなどのラジカル重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量の下限値は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、またその上限値は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0023】
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0024】
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、成膜助剤などの添加剤をフラスコ内に適量で添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0025】
単量体成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0026】
単量体成分を重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜150℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
【0027】
単量体成分を重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜20時間程度である。
【0028】
以上のようにして単量体成分を重合させることにより、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を得ることができる。側鎖にオキサゾリン基を有する重合体のなかでは、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、オキサゾリン基含有単量体およびスチレン系単量体を含有する単量体成分からなるオキサゾリン基含有スチレン系重合体が好ましい。
【0029】
側鎖にオキサゾリン基を有する重合体の重量平均分子量は、溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上、さらに好ましくは3万以上、さらに一層好ましくは4万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる観点から、10万以下であることが好ましい。
【0030】
なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
【0031】
本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤は、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を含有する。
【0032】
側鎖にオキサゾリン基を有する重合体は、溶液で用いることができるほか、固体で用いることができる。側鎖にオキサゾリン基を有する重合体は、溶媒、未反応の単量体成分、揮発性の副産物などの揮発分を除去することにより、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、実際に使用する際に固体であることが好ましい。
【0033】
側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を固体で得る方法としては、例えば、当該側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を塊状重合法によって調製する方法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などによって調製した重合体溶液を、揮発分を溶解するが、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を溶解しない溶媒中に添加することにより、当該当該側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を析出させた後、析出した重合体を乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0034】
揮発分を溶解するが、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を溶解しない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
重合体溶液から析出した側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を乾燥させる方法としては、例えば、減圧乾燥法、加熱乾燥法、温風乾燥法、自然乾燥法、送風乾燥法、赤外線照射による乾燥法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乾燥方法のなかでは、溶媒、未反応の単量体成分、揮発性の副産物などの揮発分を除去することにより、作業環境性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、加熱乾燥法が好ましい。側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を加熱乾燥させる際の温度および時間は、特に限定がなく、加熱乾燥の進行状況に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤の不揮発成分1gあたりの側鎖にオキサゾリン基を有する重合体のオキサゾリン基の量の下限値は、好ましくは0.1mmol以上、より好ましくは0.5mmol以上、さらに好ましくは1mmol以上であり、またその上限値は、好ましくは10mmol以下、より好ましくは5mmol以下である。
【0037】
本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤における側鎖にオキサゾリン基を有する重合体の含有率は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0038】
本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤は、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体のみを含有するものであってもよく、本発明の目的を阻害しない範囲で添加剤、他の重合体などを含有するものであってもよい。
【0039】
添加剤としては、例えば、顔料などの着色剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、重合禁止剤、充填剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌剤、金属不活性化剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防曇剤、防食剤、顔料分散剤、流動調整剤、過酸化物分解剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、スリップ剤、金属キレート剤、アンチブロッキング剤、耐熱安定剤、加工安定剤、分散剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、発泡剤、老化防止剤、防腐剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、成膜助剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
【0040】
なお、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤における不揮発分量は、特に限定がないが、通常、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは40〜60質量%であり、その上限値は100質量%である。
【0041】
本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤における不揮発分量は、当該繊維強化樹脂組成物用分散剤1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔繊維強化樹脂組成物用分散剤における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔繊維強化樹脂組成物用分散剤1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
【0042】
以上のようにして得られる本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤は、側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を含有することから、熱可塑性樹脂およびカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維を含有する成分の溶融混練時に各成分を均一に分散することができるので、繊維強化樹脂組成物に好適に使用することができる。
【0043】
本発明の繊維強化樹脂組成物は、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤、熱可塑性樹脂およびカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維を含有するものである。
【0044】
本発明の繊維強化樹脂組成物は、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤を含有することから、熱可塑性樹脂およびカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維を含有する成分の溶融混練時にイソシアネートガスが発生しがたいので、作業環境性に優れており、当該溶融混練時に各成分が均一に分散されるので、溶融混練性に優れている。
【0045】
熱可塑性樹脂100質量部あたりの本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤の量は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、さらに一層好ましくは3質量部以上であり、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0046】
本発明の繊維強化樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体、ポリ(p−メチルスチレン)などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリエーテルスルホン;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン樹脂などの環状オレフィン系樹脂;塩化ビニル樹脂、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;シリコーン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、特に限定がなく、本発明の繊維強化樹脂組成物が使用される用途に応じて適宜設定すればよいが、通常、1万〜100万程度である。なお、熱可塑性樹脂が架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することは困難である。
【0048】
本発明の繊維強化樹脂組成物に用いられるカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維は、強化繊維の表面にカルボキシル基を有するサイジング剤が付着した強化繊維である。
【0049】
熱可塑性樹脂100質量部あたりのカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維の量は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、さらに一層好ましくは20質量部以上であり、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは35質量部以下、さらに一層好ましくは30質量部以下である。
【0050】
本発明の繊維強化樹脂組成物に用いられる強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭化ケイ素繊維などの無機繊維;芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの有機繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの強化繊維は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの強化繊維のなかでは、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、無機繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
【0051】
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炭素繊維は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの炭素繊維のなかでは、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が好ましい。
【0052】
強化繊維の力学特性として、引張強度は、高強度の繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは2000MPa以上、より好ましくは3000MPa以上、さらに好ましくは4000MPa以上であり、熱可塑性樹脂との分散性を向上させる観点から、10000MPa以下である。引張弾性率は、高強度の繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは100〜700GPaである。引張伸度は、高強度の繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。
【0053】
なお、本明細書において、引張強度および引張弾性率は、引張試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAG−1kNI SP〕を用い、ISO527に準拠して10mm/minの引張速度で測定した引張強度および引張弾性率を意味する。また、本発明において、引張伸度は、ひずみゲージを用いて測定した破断点ひずみを意味する。
【0054】
強化繊維のX線光電子分光法(XPS)により測定される強化繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比(O/C)は、強化繊維表面の官能基量を多くすることにより、サイジング剤との接着性を向上させる観点から、好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.08〜0.4、さらに好ましくは0.1〜0.3である。
【0055】
なお、本明細書において、強化繊維の表面酸素濃度比(O/C)は、X線光電子分光分析装置〔日本電子(株)製、品番:JPS−9000M〕を用いて、X線光電子分光法(XPS)により、以下の手順にしたがって算出した値を意味する。具体的な手順としては、溶剤で強化繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した強化繊維束を20mmに切り出し、銅製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90゜とし、X線源としてMgK
α1、2を用い、試料チャンバー中を1×10
-8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を969eVに合わせる。C1Sピーク面積は、K.E.として958〜972eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1Sピーク面積は、K.E.として714〜726eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。求めたO1Sピーク面積とC1Sピーク面積との比から、前記X線光電子分光分析装置固有の感度補正値(1.74)を用いて原子数比として算出した値を表面酸素濃度比(O/C)とした。
【0056】
表面酸素濃度比(O/C)を制御する方法としては、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理、気相酸化処理などの方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0057】
本発明の繊維強化樹脂組成物に用いられるカルボキシル基を有するサイジング剤としては、例えば、カルボキシル基を1分子中に3個以上有する化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、カルボキシル基を有するサイジング剤は、カルボキシル基以外に、アミノ基、水酸基、エポキシ基などの官能基が1分子中に1種類以上混在していてもよい。
【0058】
カルボキシル基を1分子中に3個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体などのカルボキシル基含有重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を1分子中に3個以上有する化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基を1分子中に3個以上有する化合物のなかでは、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、カルボキシル基含有重合体が好ましく、ポリアクリル酸がより好ましい。
【0059】
カルボキシル基を有するサイジング剤は、前記カルボキシル基を1分子中に3個以上有する化合物のみを含有するものであってもよく、本発明の目的を阻害しない範囲で添加剤、他の重合体などを含有するものであってもよい。添加剤としては、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤に用いられる添加剤と同様のものを例示することができ、これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
【0060】
カルボキシル基を有するサイジング剤を強化繊維の表面に付着させる方法としては、例えば、ローラを介してサイジング液に強化繊維を浸漬させる方法、サイジング液の付着したローラに強化繊維を接触させる方法、サイジング液を霧状にして強化繊維に吹き付ける方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、かかる方法は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよいが、カルボキシル基を有するサイジング剤を強化繊維の表面に効率よく、均一に付着させる観点から、連続式が好ましい。なお、カルボキシル基を有するサイジング剤を強化繊維の表面に付着させる際の当該カルボキシル基を有するサイジング剤の量、温度、時間、糸条張力などは、特に限定がなく、当該カルボキシル基を有するサイジング剤の付着量などに応じて適宜設定すればよい。
【0061】
カルボキシル基を有するサイジング剤をサイジング液として使用する場合に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの溶媒のなかでは、取り扱い性が容易であることから、水が好ましい。なお、カルボキシル基を有するサイジング剤をサイジング液として使用する際の当該サイジング液の濃度は、特に限定がなく、当該カルボキシル基を有するサイジング剤の付着量などに応じて適宜設定すればよいが、通常、0.5〜5質量%程度である。
【0062】
なお、水に不溶または難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダなどのアニオン系乳化剤;ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリンなどのカチオン系乳化剤;ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物などのノニオン系乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
強化繊維の表面に付着させたカルボキシル基を有するサイジング剤を乾燥させる方法としては、例えば、減圧乾燥法、加熱乾燥法、温風乾燥法、自然乾燥法、送風乾燥法、赤外線照射による乾燥法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの乾燥方法のなかでは、溶媒、未反応の単量体成分、揮発性の副産物などの揮発分を除去することにより、作業環境性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、加熱乾燥法が好ましい。強化繊維の表面に付着させたカルボキシル基を有するサイジング剤を加熱乾燥させる際の温度および時間は、特に限定がなく、加熱乾燥の進行状況に応じて適宜設定すればよい。
【0064】
強化繊維100質量部あたりの当該強化繊維の表面上におけるカルボキシル基を有するサイジング剤の乾燥後の付着量は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0065】
なお、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤100質量部あたりのカルボキシル基を有するサイジング剤の量は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0066】
本発明の繊維強化樹脂組成物における本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤、熱可塑性樹脂およびカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維の合計含有率は、作業環境性および溶融混練性に優れる繊維強化樹脂組成物を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0067】
本発明の繊維強化樹脂組成物は、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤、熱可塑性樹脂およびカルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維のみを含有するものであってもよく、本発明の目的を阻害しない範囲で添加剤、他の重合体などを含有するものであってもよい。添加剤としては、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤に用いられる添加剤と同様のものを例示することができ、これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
【0068】
本発明の繊維強化樹脂組成物は、例えば、押出機を用い、熱可塑性樹脂に本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤、カルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維、必要により添加剤、他の重合体などを混合し、溶融混練する方法などにより、容易に調製することができる。これらの成分を混合する順序は、任意であり、これらの成分を一括して混合してもよく、分割して混合してもよい。押出機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機などが挙げられるが、本発明はかかる例示にのみに限定されるものではない。なお、二軸押出機としては、例えば、スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比(L/D)が20〜100の二軸押出機などが挙げられる。
【0069】
熱可塑性樹脂、本発明の繊維強化樹脂組成物用分散剤、カルボキシル基を有するサイジング剤で処理された強化繊維、必要により添加剤、他の重合体などを溶融混練する際の温度は、各成分を均一に分散させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、各成分の劣化を防止する観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下、さらに好ましくは400℃以下である。
【0070】
なお、本発明の繊維強化樹脂組成物における不揮発分量は、特に限定がないが、通常、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは40〜60質量%である。
【0071】
以上のようにして得られる本発明の繊維強化樹脂組成物は、作業環境性および溶融混練性に優れていることから、例えば、自動車、航空機などの車両関連部品、電子機器筐体、電気電子部品などの工業製品、建材、スポーツ用品などに好適に使用することができる。
【0072】
なお、本発明の繊維強化樹脂組成物は、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、カレンダー成形、熱成形、回転成形、シート成形、フイルム成形などにより、所望の形状を有する成形体に加工することができる。
【実施例】
【0073】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0074】
製造例
ポリアクリロニトリルを主成分とする重合体を用いて紡糸し、得られたフィラメントに焼成処理および表面酸化処理を施すことにより、総フィラメント数12000本のポリアクリロニトリル系炭素繊維束(ストランド)を得た。得られた炭素繊維束の特性を以下に示す。
・引張強度:4900MPa
・引張弾性率:240GPa
・引張伸度:2%
・比重:1.8
・単糸の平均繊維径:7μm
・表面酸素濃度比[O/C]:0.12
【0075】
前記で得られた炭素繊維束を連続的に引き取り、サイジング剤としてポリアクリル酸〔(株)日本触媒製、商品名:アクアリック(登録商標)AS58〕の2質量%水溶液に炭素繊維束を浸漬させた後、サイジング剤から取り出し、230℃の温度で1分間加熱乾燥することにより、サイジング剤で表面処理された炭素繊維維束を得た。得られた炭素繊維束におけるサイジング剤の乾燥後の付着量は、炭素繊維束100部あたり1部であった。その後、得られた炭素繊維束を長さ6mmに切断することにより、チョップドストランドを得た。
【0076】
実施例1
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた0.5L容のフラスコ内にトルエン40部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン2部およびスチレン18部を仕込み、窒素ガスをフラスコ内に10分間吹き込むことにより、フラスコ内を窒素ガス置換した後、フラスコ内を攪拌しながら約120℃の還流温度に昇温した。その後、トルエン60部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン8部、スチレン72部および重合開始剤としてtert−ブチル=2−エチルパーオキシヘキサノエート2部からなる混合物を3時間かけてフラスコ内に連続滴下し、還流させながら5時間加熱した。その後、前記フラスコ内の内容物を25℃に冷却し、トルエンをフラスコ内に添加することにより、不揮発分量が50質量%の重合体溶液を得た。
【0077】
次に、エタノール500gが入れられたビーカー内に前記で得られた重合体溶液全量を少量ずつ添加することにより、重合体を析出させた。析出した重合体を取り出し、100℃の温度で3時間かけて溶媒を揮発除去することにより、重量平均分子量が44000である側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を固体で得た。得られた重合体を繊維強化樹脂組成物用分散剤として用いた。
【0078】
二軸押出機〔(株)日本製鋼所製、品番:TEX−30α、L/D=31.5〕を用いて、ポリフェニレンスルフィド(融点285℃、重量平均分子量30000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%)100部および前記で得られた繊維強化樹脂組成物用分散剤5部をメインフィードから二軸押出機内に注入し、製造例で得られたチョップドストランド25部をサイドフィードから二軸押出機内に注入し、シリンダー温度290℃およびスクリュー回転数150rpmにて溶融混練を行なった。
【0079】
その後、二軸押出機から吐出量10kg/時で吐出された吐出物を引き取りながら、25℃の水温に保たれた水冷バス内に浸漬し、冷却することにより、繊維強化樹脂組成物をガット状で得た。得られたガット状の繊維強化樹脂組成物を長さ5mmに切断することにより、繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。
【0080】
次に、射出成形機〔(株)日本製鋼所製、品番:J150EII−P〕を用い、シリンダー温度を320℃に、金型温度を150℃に、および射出成形圧を射出成形時の最大圧力に調整して前記で得られたペレットの射出成形を行なった。その後、得られた射出成形品を150℃の温度で2時間徐冷した後、25℃に空冷することにより、評価用試験片を得た。
【0081】
実施例2
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた0.5L容のフラスコ内にトルエン40部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン4部およびスチレン16部を仕込み、窒素ガスをフラスコ内に10分間吹き込むことにより、フラスコ内を窒素ガス置換した後、フラスコ内を攪拌しながら約120℃の還流温度に昇温した。その後、トルエン60部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16部、スチレン64部および重合開始剤としてtert−ブチル=2−エチルパーオキシヘキサノエート2部からなる混合物を3時間かけてフラスコ内に連続滴下し、還流させながら5時間加熱した。その後、前記フラスコ内の内容物を25℃に冷却し、トルエンをフラスコ内に添加することにより、不揮発分量が50質量%の重合体溶液を得た。
【0082】
次に、エタノール500gが入れられたビーカー内に前記で得られた重合体溶液全量を少量ずつ添加することにより、重合体を析出させた。析出した重合体を取り出し、100℃の温度で3時間かけて溶媒を揮発除去することにより、重量平均分子量が46000である側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を固体で得た。得られた重合体を繊維強化樹脂組成物用分散剤として用いた。
【0083】
二軸押出機〔(株)日本製鋼所製、品番:TEX−30α、L/D=31.5〕を用いて、ポリフェニレンスルフィド(融点285℃、重量平均分子量30000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%)100部および前記で得られた繊維強化樹脂組成物用分散剤5部をメインフィードから二軸押出機内に注入し、製造例で得られたチョップドストランド25部をサイドフィードから二軸押出機内に注入し、シリンダー温度290℃およびスクリュー回転数150rpmにて溶融混練を行なった。
【0084】
その後、二軸押出機から吐出量10kg/時で吐出された吐出物を引き取りながら、25℃の水温に保たれた水冷バス内に浸漬し、冷却することにより、繊維強化樹脂組成物をガット状で得た。得られたガット状の繊維強化樹脂組成物を長さ5mmに切断することにより、繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。
【0085】
次に、射出成形機〔(株)日本製鋼所製、品番:J150EII−P〕を用い、シリンダー温度を320℃に、金型温度を150℃に、および射出成形圧を射出成形時の最大圧力に調整して前記で得られたペレットの射出成形を行なった。その後、得られた射出成形品を150℃の温度で2時間徐冷した後、25℃に空冷することにより、評価用試験片を得た。
【0086】
実施例3
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた0.5L容のフラスコ内にトルエン40部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン12部およびスチレン8部を仕込み、窒素ガスをフラスコ内に10分間吹き込むことにより、フラスコ内を窒素ガス置換した後、フラスコ内を攪拌しながら約120℃の還流温度に昇温した。その後、トルエン60部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン48部、スチレン32部および重合開始剤としてtert−ブチル=2−エチルパーオキシヘキサノエート2部からなる混合物を3時間かけてフラスコ内に連続滴下し、還流させながら5時間加熱した。その後、前記フラスコ内の内容物を25℃に冷却し、トルエンをフラスコ内に添加することにより、不揮発分量が50質量%の重合体溶液を得た。
【0087】
次に、エタノール500gが入れられたビーカー内に前記で得られた重合体溶液全量を少量ずつ添加することにより、重合体を析出させた。析出した重合体を取り出し、100℃の温度で3時間かけて溶媒を揮発除去することにより、重量平均分子量が55000である側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を固体で得た。得られた重合体を繊維強化樹脂組成物用分散剤として用いた。
【0088】
二軸押出機〔(株)日本製鋼所製、品番:TEX−30α、L/D=31.5〕を用いて、ポリフェニレンスルフィド(融点285℃、重量平均分子量30000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%)100部および前記で得られた繊維強化樹脂組成物用分散剤5部をメインフィードから二軸押出機内に注入し、製造例で得られたチョップドストランド25部をサイドフィードから二軸押出機内に注入し、シリンダー温度290℃およびスクリュー回転数150rpmにて溶融混練を行なった。
【0089】
その後、二軸押出機から吐出量10kg/時で吐出された吐出物を引き取りながら、25℃の水温に保たれた水冷バス内に浸漬し、冷却することにより、繊維強化樹脂組成物をガット状で得た。得られたガット状の繊維強化樹脂組成物を長さ5mmに切断することにより、繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。
【0090】
次に、射出成形機〔(株)日本製鋼所製、品番:J150EII−P〕を用い、シリンダー温度を320℃に、金型温度を150℃に、および射出成形圧を射出成形時の最大圧力に調整して前記で得られたペレットの射出成形を行なった。その後、得られた射出成形品を150℃の温度で2時間徐冷した後、25℃に空冷することにより、評価用試験片を得た。
【0091】
実施例4
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた0.5L容のフラスコ内にトルエン40部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン3部およびスチレン20部を仕込み、窒素ガスをフラスコ内に10分間吹き込むことにより、フラスコ内を窒素ガス置換した後、フラスコ内を攪拌しながら約120℃の還流温度に昇温した。その後、トルエン60部、スチレン77部および重合開始剤としてtert−ブチル=2−エチルパーオキシヘキサノエート2部からなる混合物を3時間かけてフラスコ内に連続滴下し、還流させながら5時間加熱した。その後、前記フラスコ内の内容物を25℃に冷却し、トルエンをフラスコ内に添加することにより、不揮発分量が50質量%の重合体溶液を得た。
【0092】
次に、エタノール500gが入れられたビーカー内に前記で得られた重合体溶液全量を少量ずつ添加することにより、重合体を析出させた。析出した重合体を取り出し、100℃の温度で3時間かけて溶媒を揮発除去することにより、重量平均分子量が40000である側鎖にオキサゾリン基を有する重合体を固体で得た。得られた重合体を繊維強化樹脂組成物用分散剤として用いた。
【0093】
二軸押出機〔(株)日本製鋼所製、品番:TEX−30α、L/D=31.5〕を用いて、ポリフェニレンスルフィド(融点285℃、重量平均分子量30000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%)100部および前記で得られた繊維強化樹脂組成物用分散剤5部をメインフィードから二軸押出機内に注入し、製造例で得られたチョップドストランド25部をサイドフィードから二軸押出機内に注入し、シリンダー温度290℃およびスクリュー回転数150rpmにて溶融混練を行なった。
【0094】
その後、二軸押出機から吐出量10kg/時で吐出された吐出物を引き取りながら、25℃の水温に保たれた水冷バス内に浸漬し、冷却することにより、繊維強化樹脂組成物をガット状で得た。得られたガット状の繊維強化樹脂組成物を長さ5mmに切断することにより、繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。
【0095】
次に、射出成形機〔(株)日本製鋼所製、品番:J150EII−P〕を用い、シリンダー温度を320℃に、金型温度を150℃に、および射出成形圧を射出成形時の最大圧力に調整して前記で得られたペレットの射出成形を行なった。その後、得られた射出成形品を150℃の温度で2時間徐冷した後、25℃に空冷することにより、評価用試験片を得た。
【0096】
比較例1
実施例1において、繊維強化樹脂組成物用分散剤5部の代わりに、脂肪族ポリカルボジイミド〔日清紡ケミカル(株)製、商品名:カルボジライト(登録商標)HMV−8CA〕3部を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価用試験片を得た。
【0097】
実験例
各実施例および比較例1で得られた評価用試験片を用い、繊維強化樹脂組成物の物性として、作業環境性および溶融混練性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0098】
〔作業環境性〕
各実施例および比較例1において、繊維強化樹脂組成物を得るまでの溶融混練過程で、作業者がイソシアネート臭を感じるかどうかを調べ、以下の評価基準に基づいて作業環境性を評価した。
(評価基準)
100点:混練中にイソシアネート臭がしなかった。
0点:混練中にイソシアネート臭がした。
【0099】
〔溶融混練性〕
各実施例および比較例1において、繊維強化樹脂組成物を得るまでの溶融混練過程で、スクリュー回転数を調整することにより、吐出量を10kg/時または20kg/時に調整したときの吐出物の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて溶融混練性を評価した
(評価基準)
100点:ポリフェニレンスルフィドと製造例で得られたチョップドストランドとが均一に分散し、溶融混練をすることができた。
50点:ポリフェニレンスルフィドと製造例で得られたチョップドストランドとがやや分離したが、溶融混練をすることができた。
0点:ポリフェニレンスルフィドと製造例で得られたチョップドストランドとが分離し、溶融混練をすることができなかった。
【0100】
〔総合評価〕
各試験項目における評価得点を合計することにより、総合評価(300点満点)を行なった。なお、物性評価において0点の評価が1つでもある繊維強化樹脂組成物は、不合格である。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示された結果から、各実施例で得られた繊維強化樹脂組成物は、いずれも、作業環境性および溶融混練性に優れていることがわかる。