(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凸状または凹状を有するモールド側アライメントマーク、および凸状または凹状を有するモールド側モアレマークを含むモールドと、蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、凸状または凹状を有する基板側アライメントマーク、および凹状または凸状を有する基板側モアレマークを含むパターン付基板とをこの順に積層する積層工程と、
前記樹脂組成物層の局所的な厚みの差異に基づく蛍光強度の局所的な差異により前記モールド側アライメントマークと前記基板側アライメントマークの第一ミスアライメントを検出する第一検出工程と、
検出された第一ミスアライメントを小さくする方向に前記モールドに対して前記パターン付基板を相対的に移動させる第一アライメント工程と、
前記樹脂組成物層、前記モールド側モアレマークおよび前記基板側モアレマークによって生じる蛍光モアレ縞に基づいて前記モールド側アライメントマークと前記基板側アライメントマークの第二ミスアライメントを検出する第二検出工程と、
検出された第二ミスアライメントを小さくする方向に前記モールドに対して前記パターン付基板を相対的に移動させる第二アライメント工程と
を備える位置合わせ方法。
凹凸パターンを有する転写領域、凸状または凹状を有するモールド側アライメントマーク、および凸状または凹状を有するモールド側モアレマークを含むモールドと、蛍光色素を含み流動性を有する硬化性樹脂組成物で形成された硬化性樹脂組成物層と、被転写領域、凸状または凹状を有する基板側アライメントマーク、および凸状または凹状を有する基板側モアレマークを含むパターン付基板とをこの順に積層する積層工程と、
前記硬化性樹脂組成物層の局所的な厚みの差異に基づく蛍光強度の局所的な差異によりモールド側アライメントマークと基板側アライメントマークの第一ミスアライメントを検出する第一検出工程と、
検出されたミスアライメントを小さくする方向に前記モールドに対して前記パターン付基板を相対的に移動させる第一アライメント工程と、
前記硬化性樹脂組成物層、前記モールド側モアレマークおよび前記基板側モアレマークによって生じる蛍光モアレ縞に基づいて前記モールド側アライメントマークと前記基板側アライメントマークの第二ミスアライメントを検出する第二検出工程と、
検出された第二ミスアライメントを小さくする方向に前記モールドに対して前記パターン付基板を相対的に移動させる第二アライメント工程と、
前記硬化性樹脂組成物層を硬化させて硬化樹脂層を形成する硬化樹脂形成工程と、
前記モールドを前記硬化樹脂層から剥離する剥離工程と
を備えるインプリント方法。
前記積層工程と前記第一検出工程との間に、アライメントマーク部およびモアレマーク部近傍への前記硬化性樹脂組成物層の充填状態を暗視野の光学顕微鏡で観察する検査工程を含む請求項5記載のインプリント方法。
前記モールド側アライメントマーク、または前記基板側アライメントマークの線幅が100nm〜1000nmの範囲内である請求項5または6に記載のインプリント方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明者らは、上述の課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、蛍光色素を含む樹脂組成物を用いることで、モールド、基板、樹脂の屈折率およびアライメントマークの溝深さに制限がなく、100nm〜1000nmの線幅のアライメントマークを蛍光顕微境観察で検出し、モールドと基板の位置合わせを行うことにより、上述の課題が解決され得ることを見出した。さらに、本願発明者らは、蛍光色素を含む樹脂組成物を用いることで、蛍光モアレ縞を蛍光顕微鏡観察で検出し、モールドと基板の位置合わせを行うことにより、位置合わせ精度の向上を図ることが可能であることを見出した。
【0020】
以下、本発明の一実施形態による位置合わせ方法、インプリント方法及びインプリント装置について
図1から
図14を用いて説明する。まず、本実施形態による位置合わせ方法について
図1から
図9を用いて説明する。
【0021】
(積層体)
まず、本発明の位置合わせ方法を実施する対象である積層体について
図1から
図3を用いて説明する。
図1(a)は、本実施形態による位置合わせ方法において用いられる積層体1の概略構成を示す平面図である。
図1(b)は、
図1(a)中に示すA−A線で切断した積層体1の概略構成を示す断面図である。
図2(a)は、本実施形態による位置合わせ方法において用いられるモールド3の概略構成を示す平面図である。
図2(b)は、
図2(a)中に示すB−B線で切断したモールド3の概略構成を示す断面図である。
図3(a)は、パターン付基板7の概略構成を示す平面図である。
図3(b)は、
図3(a)中に示すC−C線で切断したパターン付基板7の概略構成を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、積層体1は、凸状または凹状を有するモールド側アライメントマーク31、および凸状または凹状を有するモールド側モアレマーク33を含む透明なモールド3を備えている。また、積層体1は、蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物で形成された樹脂組成物層5を備えている。さらに、積層体1は、凸状または凹状を有する基板側アライメントマーク71、および凸状または凹状を有する基板側モアレマーク73を含むパターン付基板7を備えている。積層体1は、モールド3、樹脂組成物層5およびパターン付基板7をこの順に積層した構成を有している。
【0023】
図1(a)に示すように、積層体1は、平面視において、ほぼ正方形状を有している。積層体1のほぼ中央部には、モールド3に設けられた転写領域32と、パターン付基板7に設けられた被転写領域72(
図1では不図示)とが重なって配置されている。積層体1の四隅には、モールド3に設けられ転写領域32を囲んで設けられたモールド側アライメントマーク31と、パターン付基板7に設けられ被転写領域72を囲んで設けられた基板側アライメントマーク71とが重なってそれぞれ配置されている。モールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71との少なくとも一部が重ね合わされた領域がアライメントマーク部となる。また、積層体1の4つの端辺のうち2つの端辺に沿って、モールド3に設けられたモールド側モアレマーク33と、この2つの端辺に沿ってパターン付基板7に設けられた基板側モアレマーク73とが重なってそれぞれ配置されている。モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73との少なくとも一部が重ね合わされた領域がモアレマーク部となる。詳細は後述するが、積層体1は、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73とが重ね合わされて配置されることにより、蛍光モアレ縞を発現するように構成されている。
【0024】
(モールド)
図2に示すように、モールド3は、硬化樹脂層に転写する所望の凹凸パターンを有する転写領域32と、モールドの位置情報の基準となる凸状または凹状を有するモールド側アライメントマーク31およびモールド側モアレマーク33とを有している。転写領域32は、平面視において、モールド3のほぼ中央で正方形状の領域を占めて設けられている。モールド側アライメントマーク31は、転写領域32を囲みモールド3の四隅にそれぞれ設けられている。モールド側モアレマーク33は、2つのモールド側アライメントマーク31に挟まれてモールド3の端辺と転写領域32との間に設けられている。モールド側モアレマーク33は、モールド3の4つの端辺のうち直交する2つの端辺に沿って設けられている。
【0025】
モールド3の形成材料は、ガラス、SiO
2、または透明な硬化樹脂が用いられる。モールド3は、これらの材料で形成された透明板である。具体的には、モールド3の形成材料として、石英ガラス、石英、シロキサン重合体、ホウケイ酸ガラス、フルオロカーボン重合体、有機ポリマー、硬化サファイアが例示される。また、蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物と接触する転写領域を有する側のモールド3の表面は、離型処理されているか、または離型性を有する層を有していてもよい。
【0026】
モールド3の厚みは、取扱うための強度と光透過性が両立する範囲であれば限定されない。モールド3の厚みは、例えば0.1〜6.0mmであってもよく、0.3〜1.0mmであってもよい。
モールド側アライメントマーク31は、平面視で、十字形状を有し、この十字形状の部分が凹状に形成されている。モールド側アライメントマーク31は、凸状の十字形状を有していてもよい。モールド側アライメントマーク31の幅は、例えば100〜1000nmであってもよく、100〜500nmであってもよい。モールド側アライメントマーク31の幅が100nm以上であると後述する蛍光観察により検出可能となる。また、モールド側アライメントマーク31の幅が1000nm以下であるとより精密な位置合わせが可能となる。モールド側アライメントマーク31の深さは、例えば検出波長の1/2〜1/50であってもよく、検出波長の1/8〜1/40であってもよい。モールド側アライメントマーク31の深さが10nm以上であると後述する蛍光強度が高くなる。また、モールド側アライメントマーク31の深さが300nm以下であると樹脂充填時に気泡が残りにくい。また、これらの寸法であると、未修飾のモールドでも離型剤で修飾したモールドでも用いることができる。
【0027】
モールド側モアレマーク33は、200nmから20μmのピッチP1で並列して配置されて線幅W1が100nmから10μmの複数の第一パターン部331と、200nmから20μmのピッチP2で並列して配置されて線幅W2が100nmから10μmの複数の第二パターン部332とを有している。複数の第一パターン部331のピッチP1は、隣り合う2つの第一パターン部331のうちの一方の第一パターン部331内の所定位置から、他方の第一パターン部331内における当該所定位置と同等の位置までの長さである。
図2では、当該所定位置は、隣り合う2つの第一パターン部331のうちの相対的に左側(又は上側)に位置する第一パターン部331の左側(又は上側)の長辺であり、当該所定位置と同等の位置は、相対的に右側(又は下側)に位置する第一パターン部331の左側(又は上側)の長辺である。隣り合う2つの第一パターン部331のうちの一方の所定位置と、他方の当該所定位置と同等の位置は、第一パターン部331の左側(又は上側)の長辺に限られず、第一パターン部331の右側(又は下側)の長辺であってもよいし、第一パターン部331の中点などであってもよい。
【0028】
また、複数の第二パターン部332のピッチP2は、隣り合う2つの第二パターン部332のうちの一方の第二パターン部332内の所定位置から、他方の第二パターン部332内における当該所定位置と同等の位置までの長さである。
図2では、当該所定位置は、隣り合う2つの第二パターン部332のうちの相対的に左側(又は上側)に位置する第二パターン部332の左側(又は上側)の長辺であり、当該所定位置と同等の位置は、相対的に右側(又は下側)に位置する第二パターン部332の左側(又は上側)の長辺である。隣り合う2つの第二パターン部332のうちの一方の所定位置と、他方の当該所定位置と同等の位置は、第二パターン部332の左側(又は上側)の長辺に限られず、第二パターン部332の右側(又は下側)の長辺であってもよいし、第二パターン部332の中点などであってもよい。
【0029】
複数の第一パターン部331および複数の第二パターン部332は、ピッチP1とピッチP2とのピッチ差が20nmから2μmとなるように配置されている。本実施形態では、ピッチP1は4.4μmであり、ピッチP2は4.0μmであり、線幅W1および線幅W2は2.0μmである。ピッチが大きいほど、またピッチP1とピッチP2とのピッチ差が小さいほど、後述するモアレ縞による拡大率が大きくなるため、高分解能が得られる。一方で、本発明においては、後述するモアレ縞の観察を行うために、高倍率のレンズを用いた狭い観察視野でアライメントを行う場合がある。本発明において、高分解能と、狭い観察視野でもモアレ縞を観察できることとは、相互のバランスによって決定される。すなわち、高分解能を優先して拡大率を決定すれば、レンズの倍率が定まるため、これに適したピッチ及びピッチ差を決定することができ、レンズの倍率を定めれば、高分解能を得るために適したピッチ及びピッチ差を定めることができる。モアレ縞による拡大率が大きくなってアライメントしやすくなるという観点と高倍率のレンズを用いた場合でも、モアレ縞の周期が十分に観察視野に入り、アライメントしやすくなるという観点の2つを考慮すると、複数の第一パターン部331および複数の第二パターン部332のピッチは200nm以上20μm以下であり、ピッチ差は20nm以上2μm以下であるとよい。
【0030】
さらに、モアレ縞による拡大率が大きくなってアライメントしやすくなるという観点と、高倍率のレンズを用いた場合でも、モアレ縞の周期が十分に観察視野に入り、アライメントしやすくなるという観点の2つを考慮すると、複数の第一パターン部331および複数の第二パターン部332のピッチは4μm以上400nm以下であり、複数の第一パターン部331および複数の第二パターン部332のピッチ差は4μm以上400nm以下であってもよい。
【0031】
ここで、ピッチの大きい方をP2とする、すなわち「P1<P2」の関係が成り立っている場合、ピッチP1とピッチP2によるモアレ縞の拡大率MPは次の式(1)で規定される。
MP=P2/(P2−P1) ・・・(1)
【0032】
第一パターン部331は、平面視で矩形状に形成されている(
図2(a)参照)。第一パターン部331は、断面視で凹状に形成されている(
図2(b)参照)。複数の第一パターン部331は、それぞれ同じ形状を有している。複数の第一パターン部331は、モールド3の端辺側に配置されている。複数の第一パターン部331は、モールド3の4つの端辺のうち直交する2つの端辺に沿って並んで配置されている。複数の第一パターン部331は、2つのモールド側アライメントマーク31の間に配置されている。
【0033】
第二パターン部332は、平面視で矩形状に形成されている(
図2(a)参照)。第二パターン部332は、断面視で凹状に形成されている。複数の第二パターン部332は、それぞれ同じ形状を有している。第二パターン部332は、第一パターン部331と同じ形状を有している。複数の第二パターン部332は、第一パターン部331の隣であって転写領域32側に配置されている。複数の第二パターン部332は、第一パターン部331が配置されたモールド3の2つの端辺と転写領域32との間で、これらの端辺が延伸する方向に並んで配置されている。
【0034】
モールド3は種々の方法で作製することができる。例えば、石英ガラス基板の一主面に電子線レジストを塗布して転写領域32の凹凸パターンとモールド側アライメントマーク31とモールド側モアレマーク33とを電子線描画して現像した後、硬化した電子線レジストをマスクとしてテトラフルオロカーボンと酸素の混合ガスで基板をドライエッチングする方法が挙げられる。モールド3の離型処理としては、任意の離型処理が使用可能であるが、例えば、ディップコーターで離型剤を塗布して乾燥させる処理が挙げられる。離型剤としては、パーフルオロ基を有するシラン化合物が挙げられる。
【0035】
(樹脂組成物層)
蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物は、インプリント法に使用する観点から硬化性を有する樹脂組成物であり、例えばラジカル重合モノマーまたはカチオン重合モノマーを含み、該モノマーに応じてラジカル系光重合開始剤またはカチオン系光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物であってもよい。蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物は、例えば紫外線硬化性樹脂組成物である。蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分、例えば重合禁止剤を含んでいてもよい。
【0036】
蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物は、流動性を有し、粘度0.005〜20Pa・sであってもよい。この樹脂組成物は、所定の波長の励起光を照射されるとエネルギーを吸収し電子が励起して発光する蛍光性を有しており、励起光の波長とは異なる紫外線を照射されることで硬化する特性を有する。
【0037】
ラジカル重合モノマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーが好適に使用でき、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート等の化合物が例示される。
光重合開始剤としては、紫外線、特にg線、h線、i線の照射によりラジカル重合を開始する重合開始剤が好適に使用でき、例えばα―ヒドロキシアルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル等の化合物が例示される。
蛍光色素としては、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化反応が起こらない可視領域の光の照射により蛍光を発する化合物が好適に使用できる。
【0038】
まず、パターン形成用光硬化性樹脂組成物で形成される層を露光して得られる硬化樹脂層の蛍光色素以外の吸収が、該蛍光色素が有する蛍光を発光する吸収波長領域の少なくとも一部に実質的に無いものであることが必要である。すなわち、少なくともパターン形成用光硬化性樹脂組成物で形成される層を露光して得られる硬化樹脂層の蛍光色素以外の吸収が実質的に無い領域に、蛍光を発光する吸収がある該蛍光色素を用いる。換言すると、蛍光色素の吸収スペクトルのうち蛍光を発光する吸収波長領域は、パターン形成用光硬化性樹脂組成物で形成される層を露光して得られる硬化樹脂層の蛍光色素以外の吸収スペクトルと実質的に重ならない領域を有することが必要である。蛍光色素の吸収スペクトルのうち蛍光を発光する吸収波長領域が、該蛍光色素以外の吸収スペクトルと実質的に重ならない領域を有しない場合、蛍光色素の励起が阻害されるためである。
【0039】
上記蛍光色素としては、例えば蛍光染料や蛍光顔料などの蛍光発光性色素が挙げられるが、有機または無機蛍光体を使用してもよい。特に、光硬化性樹脂組成物に溶解しやすく蛍光量子収率が高い点から、有機蛍光発光性色素が使用されてもよい。本実施形態の光硬化性樹脂組成物は光ナノインプリントリソグラフィに用いられるため、リアクティブイオンエッチング等で最終的に除去できる、金属イオンを含まない有機蛍光発光性色素が使用されてもよい。有機蛍光発光性色素としては、例えば、ローダミン(ローダミン6G(対アニオンが、Cl−やBF4−)、ローダミンBなど)等のキサンテン系色素や、クマリン色素、オキサジン系色素、スチルベン系色素、アリールジメチリデン系色素、シアニン系色素、ピリジン系色素、及びキナクリドン誘導体等がある。
【0040】
樹脂組成物層5の厚み(アライメントマーク等の凹部以外)は,モールド3の凹部の深さに対して0.1〜10倍の高さが好ましい。樹脂組成物層5の厚みがモールド3の凹部に対して10倍以下で薄くなるほどSN比が上がり検出が容易となる。
【0041】
(パターン付基板)
図3に示すように、パターン付基板7は、所望の凹凸構造を有する硬化樹脂層が積層される被転写領域72と、パターン付基板7の位置情報の基準となる凸状または凹状を有する基板側アライメントマーク71および基板側モアレマーク73とを有している。被転写領域72は、平面視において、パターン付基板7のほぼ中央で正方形状の領域を占めて設けられている。基板側アライメントマーク71は、被転写領域72を囲みパターン付基板7の四隅にそれぞれ設けられている。基板側モアレマーク73は、2つの基板側アライメントマーク71に挟まれてパターン付基板7の端辺と被転写領域72との間に設けられている。基板側モアレマーク73は、パターン付基板7の4つの端辺のうち直交する2つの端辺に沿って設けられている。
【0042】
パターン付基板7は、Siウエハ(以下、「Siウエハ」はGaAs等の「化合物半導体ウエハ」と読み替えてもよい。)上に上述の基板側アライメントマーク71の凹凸構造を有する硬化樹脂層が形成された積層体、上述の基板側アライメントマーク71および基板側モアレマーク73がエッチングにて形成されたSiウエハ、およびこれらのSiウエハにn層またはp層のパターン、配線層及び絶縁層のいずれか1層または複数層形成された基板である。
【0043】
基板側アライメントマーク71は、平面視で十字形状を有し、この十字形状の部分が凹状に形成されている。基板側アライメントマーク71は、凸状の十字形状を有していてもよい。基板側アライメントマーク71の幅は、例えば100〜1000nmであってもよく、100〜500nmであってもよい。基板側アライメントマーク71の幅が100nm以上であると後述する蛍光観察により検出可能となる。また、基板側アライメントマーク71の幅が1000nm以下であるとより精密な位置合わせが可能となる。基板側アライメントマーク71の深さは、例えば検出波長の1/2〜1/50であってもよく、検出波長の1/8〜1/40であってもよい。基板側アライメントマーク71の深さが10nm以上であると後述する蛍光強度が高くなる。また、基板側アライメントマーク71の深さが300nm以下であると樹脂充填時に気泡が残りにくい。また、これらの寸法であると、未修飾のモールドでも離型剤で修飾したモールドでも用いることができる。
【0044】
基板側アライメントマーク71は、幅および深さはモールド側アライメントマーク31とほぼ同じ寸法を有している。一方、基板側アライメントマーク71の交差する2つの棒状部は、モールド側アライメントマーク31の交差する2つの棒状部よりも長く形成されている。光硬化性樹脂組成物を挟んでパターン付基板7とモールド3とを対向配置すると、モールド側アライメントマーク31は、基板側アライメントマーク71と少なくとも一部が重なって配置される。基板側アライメントマーク71とモールド側アライメントマーク31とが重なり合っている領域は、両マーク31,71が重なり合っていない領域と比較して光硬化性樹脂組成物に含まれる蛍光レジストの色素の数が多くなり、蛍光強度が強くなる。これにより、基板側アライメントマーク71とモールド側アライメントマーク31とが設けられた領域の蛍光強度に基づいて、モールド3とパターン付基板7とのミスアライメントを検出できる。
【0045】
基板側モアレマーク73は、200nmから20μmのピッチP1で並列して配置されて線幅W1が100nmから10μmの複数の第一パターン部731と、200nmから20μmのピッチP2で並列して配置されて線幅W2が100nmから10μmの複数の第二パターン部732とを有している。複数の第一パターン部731のピッチP1は、隣り合う2つの第一パターン部731のうちの一方の第一パターン部731内の所定位置から、他方の第一パターン部731内における当該所定位置と同等の位置までの長さである。
図3では、当該所定位置は、隣り合う2つの第一パターン部731のうちの相対的に左側(又は上側)に位置する第一パターン部731の左側(又は上側)の長辺であり、当該所定位置と同等の位置は、相対的に右側(又は下側)に位置する第一パターン部731の左側(又は上側)の長辺である。隣り合う2つの第一パターン部731のうちの一方の所定位置と、他方の当該所定位置と同等の位置は、第一パターン部731の左側(又は上側)の長辺に限られず、第一パターン部731の右側(又は下側)の長辺であってもよいし、第一パターン部731の中点などであってもよい。
【0046】
また、複数の第二パターン部732のピッチP2は、隣り合う2つの第二パターン部732のうちの一方の第二パターン部732内の所定位置から、他方の第二パターン部732内における当該所定位置と同等の位置までの長さである。
図3では、当該所定位置は、隣り合う2つの第二パターン部732のうちの相対的に左側(又は上側)に位置する第二パターン部732の左側(又は上側)の長辺であり、当該所定位置と同等の位置は、相対的に右側(又は下側)に位置する第二パターン部732の左側(又は上側)の長辺である。隣り合う2つの第二パターン部732のうちの一方の所定位置と、他方の当該所定位置と同等の位置は、第二パターン部732の左側(又は上側)の長辺に限られず、第二パターン部732の右側(又は下側)の長辺であってもよいし、第二パターン部732の中点などであってもよい。
【0047】
複数の第一パターン部731および複数の第二パターン部732は、ピッチP1とピッチP2とのピッチ差が20nmから2μmとなるように配置されている。本実施形態では、ピッチP1は4.4μmであり、ピッチP2は4.0μmであり、線幅W1および線幅W2は2.0μmである。ピッチP1を固定した場合に、ピッチP2が大きいほど、またピッチP1とピッチP2とのピッチ差が小さいほど、後述するモアレ縞による拡大率が大きくなるため、高分解能が得られる。一方で、本発明においては、後述するモアレ縞の観察を行うために、高倍率のレンズを用いた狭い観察視野でアライメントを行う場合がある。本発明において、高分解能と、狭い観察視野でもモアレ縞を観察できることとは、相互のバランスによって決定される。すなわち、高分解能を優先して拡大率を決定すれば、レンズの倍率が定まるため、これに適したピッチ及びピッチ差を決定することができ、レンズの倍率を定めれば、高分解能を得るために適したピッチ及びピッチ差を定めることができる。モアレ縞による拡大率が大きくなってアライメントしやすくなるという観点と高倍率のレンズを用いた場合でも、モアレ縞の周期が十分に観察視野に入り、アライメントしやすくなるという観点の2つの観点を考慮すると、複数の第一パターン部731および複数の第二パターン部732のピッチは200nm以上20μm以下であり、ピッチ差は20nm以上2μm以下であるとよい。
【0048】
さらに、モアレ縞による拡大率が大きくなってアライメントしやすくなるという観点と、高倍率のレンズを用いた場合でも、モアレ縞の周期が十分に観察視野に入り、アライメントしやすくなるという観点の2つを考慮すると、複数の第一パターン部731および複数の第二パターン部732のピッチは4μm以上400nm以下であり、複数の第一パターン部731および複数の第二パターン部732のピッチ差は4μm以上400nm以下であってもよい。
【0049】
ここで、ピッチの大きい方をP2とする、すなわち「P1<P2」の関係が成り立っている場合、ピッチP1とピッチP2によるモアレ縞の拡大率MPは、上述の式(1)で規定される。
【0050】
第二パターン部732は、平面視で矩形状に形成されている(
図3(a)参照)。第二パターン部732は、断面視で凹状に形成されている(
図3(b)参照)。複数の第二パターン部712は、それぞれ同じ形状を有している。複数の第二パターン部732は、パターン付基板7の端辺側に配置されている。複数の第二パターン部732は、パターン付基板7の4つの端辺のうち直交する2つの端辺に沿って並んで配置されている。複数の第二パターン部732は、2つの基板側アライメントマーク71の間に配置されている。複数の第二パターン部732は、モールド3に設けられた複数の第二パターン部332と同じピッチP1で同じ線幅W1を有している。
【0051】
第一パターン部731は、平面視で矩形状に形成されている(
図3(a)参照)。第一パターン部731は、断面視で凹状に形成されている。複数の第一パターン部731は、それぞれ同じ形状を有している。第一パターン部731は、第二パターン部732と同じ形状を有している。複数の第一パターン部731は、第二パターン部732の隣であって被転写領域72側に配置されている。複数の第一パターン部731は、第二パターン部732が配置されたパターン付基板7の2つの端辺と被転写領域72との間で、これらの端辺が延伸する方向に並んで配置されている。複数の第一パターン部731は、モールド3に設けられた複数の第一パターン部731と同じピッチP1で同じ線幅W1を有している。
【0052】
光硬化性樹脂組成物を挟んでモールド3とパターン付基板7とを対向して配置させると、モールド3の複数の第一パターン部331の形成領域とパターン付基板7の複数の第二パターン部732の形成領域とが重なり合い、モールド3の複数の第二パターン部332の形成領域とパターン付基板7の複数の第二パターン部732の形成領域とが重なり合う。ピッチP1とピッチP2の僅かな差(本実施形態では0.4μm)によって、モールド3とパターン付基板7とを対向配置させると、第一パターン部331および第二パターン部732の重なり具合に疎密が生じ、第二パターン部332および第一パターン部731の重なり具合に疎密が生じる。これにより、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73とが重なり合う領域にモアレ縞が生じる(
図1(a)参照)。
【0053】
モールド3とパターン付基板7とが設計どおりに重なり合って、第一パターン部331および第二パターン部732によって生じるモアレ縞と、第二パターン部332および第一パターン部731によって生じるモアレ縞とは、濃淡の周期および位相が一致する(
図1(a)参照)。しかしながら、モールド3とパターン付基板7とが設計どおりに重なり合っていないと、第一パターン部331および第二パターン部732によって生じるモアレ縞と、第二パターン部332および第一パターン部731によって生じるモアレ縞とは、濃淡の周期は一致するが位相はずれる。このため、第一パターン部331および第二パターン部732によって生じるモアレ縞の位相と、第二パターン部332および第一パターン部731によって生じるモアレ縞の位相とよって、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73とのミスアライメントを検出できる。
【0054】
(位置合わせ方法)
次に、本実施形態による位置合わせ方法について
図4から
図9を用いて説明する。
図4は、本実施形態による位置合わせ方法におけるアライメントマーク部の蛍光視野画像およびモアレマーク部のモアレ縞蛍光視野画像を取得する方法を示す模式図である。
図5は、本実施形態による位置合わせ方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図6は、アライメントマーク部の蛍光視野画像の平面模式図である。
図7中上段はアライメントマーク部の断面模式図であり、
図7中下段は、
図7中上段に示すアライメントマーク部の蛍光強度を示す図である。
図7中下段の横軸はアライメント部の位置を示し、縦軸は蛍光強度を示している。
図8は、モアレマーク部のモアレ縞蛍光視野画像である。
図9は、
図8に示すモアレマーク部の蛍光強度を示す図である。
図9中の横軸は所定位置からのモアレマーク部の各部までの距離を示し、縦軸はモアレマーク部の蛍光強度を示している。
【0055】
本実施形態による位置合わせ方法は、前述した蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物層の局所的な厚みの差異に基づく蛍光強度の局所的な差異によりモールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71の第一ミスアライメントを検出する第一検出工程と、検出された第一ミスアライメントを小さくする方向にモールド側アライメントマーク31が設けられたモールド3に対して基板側アライメントマーク71が設けられたパターン付基板7を相対的に移動させる第一アライメント工程とを含む。さらに、本実施形態による位置合わせ方法は、蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物層、モールド側モアレマーク33および基板側モアレマーク73によって生じる蛍光モアレ縞に基づいて第二ミスアライメントを検出する第二検出工程と、検出された第二ミスアライメントを小さくする方向にモールド3に対してパターン付基板7を相対的に移動させる第二アライメント工程とを含む。
【0056】
図4に示すように、本実施態様においては、モールド3、樹脂組成物層5およびパターン付基板7をこの順に積層し(積層工程)、モールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71との少なくとも一部が重ね合わされたアライメントマーク部の蛍光視野画像が蛍光顕微鏡装置103を用いてモールド3側から取得できる位置にセットする。
【0057】
この状態で、
図5に示すフローチャートに示すように、まずステップS1において、モールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71とを透明なモールド3越しに蛍光視野観察する。ステップS1の次のステップS3において、観察した画像を取得する。ステップS3の次のステップS5において、ステップS3において取得した蛍光視野画像のアライメントマーク部の蛍光強度をスキャンして、スキャンライン上の蛍光強度信号プロファイルを得る。ステップS5の次のステップS7では、ステップS5におけるスキャンラインの方向からθ方向の第一ミスアライメント(dθ1)を検出し、ステップS5において得たプロファイルからX方向の第一ミスアライメント(dX1)およびY方向の第一ミスアライメント(dY1)を検出する(第一検出工程)。ステップS7の次のステップS9において、第一ミスアライメントを少なくする方向でパターン付基板7が載置された可動ステージを実際に動かす量であるXYθ軸移動量を決定する。ステップS9の次のステップS11において、可動ステージを動かして位置合わせする(第一アライメント工程)。
【0058】
ステップS11の次のステップS13において、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73とを透明なモールド3越しにモアレ縞蛍光視野観察する。ステップS13におけるモアレ縞蛍光視野観察では、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73との少なくとも一部が重ね合わされたモアレマーク部と、アライメントマーク部とが蛍光顕微鏡装置103の視野に入るように蛍光顕微鏡装置103の位置がセットされる。モアレマーク部に発生する蛍光モアレ縞の濃淡の少なくとも1周期が蛍光顕微鏡装置103の視野に入るように、蛍光顕微鏡装置103は、
図4中の右側に示すようにモールド3に対して、ステップS1での視野観察の位置より離れた位置にセットされる。あるいは、蛍光顕微鏡装置103は、広角レンズに切り替えてからステップS1での視野観察の位置とほぼ同程度にモールド3から離れた位置にセットされてもよい。
【0059】
ステップS13の次のステップS15において、観察したモアレ縞蛍光視野画像を取得する。ステップS15の次のステップS17において、ステップS15において取得したモアレ縞蛍光視野画像のアライメント部およびモアレマーク部をスキャンして、スキャンライン上の蛍光モアレ縞信号のプロファイルを得る。この蛍光モアレ縞信号のプロファイルには、蛍光モアレ縞の濃淡値が現れる。
【0060】
ステップS17の次のステップS19では、ステップS17において得たプロファイルからX方向の第二ミスアライメント(dX2)、Y方向の第二ミスアライメント(dY2)およびθ方向の第二ミスアライメント(dθ2)を検出する(第二検出工程)。θ方向の第二ミスアライメント(dθ2)は、後述する第1の方法と同様に、Xの正方向の第二ミスアライメントdX2+およびXの負方向の第二ミスアライメントdX2−と、Yの正方向の第二ミスアライメントdY2+およびYの負方向の第二ミスアライメントdY2−とに基づいて取得される。ステップS19の次のステップS21において、第二ミスアライメントを少なくする方向でパターン付基板7が載置された可動ステージを実際に動かす量であるXYθ軸移動量を決定する。ステップS21の次のステップS23において、可動ステージを動かして位置合わせし(第二アライメント工程)、モールド3とパターン付基板7との位置合わせが完了する。
【0061】
一般に、紫外線硬化型樹脂とモールドの屈折率は1.45〜1.50程度でほぼ同等であり、紫外線硬化型樹脂がモールド側アライメントマークの凹部に充填されると、モールド側アライメントマークを光学的に識別することは困難になる。
しかし、蛍光色素を含む樹脂組成物で形成される樹脂組成物層は、この樹脂組成物層の厚みに相関のある蛍光強度が得られる。このため、例えば
図6に示すように、凹状に形成されたモールド側アライメントマーク31に光硬化性蛍光組成物が充填され、凹状に形成された基板側アライメントマーク71に光硬化性蛍光組成物が充填された状態での蛍光視野画像が取得される。
【0062】
ミスアライメントを検出するための第一の方法においては、
図6中に直線の破線矢印で示すように、X方向2箇所以上(
図6では2箇所)およびY方向2箇所以上(
図6では2箇所)の異なる箇所で、蛍光強度をスキャンする。例えば、Xの正方向(
図6中左から右に向かう方向)およびXの負方向(
図6中右から左に向かう方向)をそれぞれ1箇所ずつ合計2箇所スキャンし、Xの正方向の第一ミスアライメントdX1+と、Xの負方向の第一ミスアライメントdX1−とを検出する。次いで、例えば、Yの正方向(
図6中下から上に向かう方向)およびYの負方向(
図6中上から下に向かう方向)をそれぞれ1箇所ずつ合計2箇所スキャンし、Yの正方向の第一ミスアライメントdY1+と、Yの負方向の第一ミスアライメントdY1−とを検出する。
【0063】
パターン付基板7に対してモールド3が左回り(反時計回り)にずれて配置されているとする。この場合、
図6に示すように、モールド側アライメントマーク31が基板側アライメントマーク71に対して左回り(反時計回り)にずれた状態の蛍光視野画像が取得される。
図7中上段に示すように、凹状のモールド側アライメントマーク31および凹状の基板側アライメントマーク71には、樹脂組成物層5に含まれる蛍光色素が他の領域よりも多く存在している。このため、
図6中の左向き破線矢印で示すように、蛍光強度分布をXの負方向にスキャンすると、
図7中下段に示すように、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71のそれぞれの位置で蛍光強度が相対的に強くなる蛍光強度プロファイルが取得される。この蛍光強度プロファイルの極大点の差を求めることにより、Xの負方向の第一ミスアライメントdX1−が検出される。Xの正方向、Yの正方向およびYの負方向も同様の方法により、Xの正方向の第一ミスアライメントdX1+、Yの正方向の第一ミスアライメントdY1+およびYの負方向の第一ミスアライメントdY1−が検出される。
【0064】
第一ミスアライメントdX1+と第一ミスアライメントdX−とが異なり、第一ミスアライメントdY1+と第一ミスアライメントdY−とが異なる場合、θ方向(パターン付基板7の主面に平行な面内で回転する方向)のミスアライメントがあることを意味し、計算によりθ方向のミスアライメントを求めることが可能である。
【0065】
より具体的に、例えばパターン付基板7の蛍光視野画像の所定位置にスキャン開始点(原点)を設けておくことにより、基板側アライメントマーク71の位置が特定され、基板側アライメントマーク71に基づく蛍光強度プロファイルの極大点(以下、「基板側極大点」と略記する場合がある)も特定される。このため、Xの正方向およびXの負方向のそれぞれにおける蛍光視野画像のスキャンにおいて、モールド側アライメントマーク31に基づく蛍光強度プロファイルの極大点(以下、「モールド側極大点」と略記する場合がある)が、基板側極大点に対して右側、左側あるいは重なって存在するかによってパターン付基板7とモールド3との相対位置関係を判断することができる。
【0066】
例えば、モールド側極大点がXの正方向では右側(または左側)に存在し、Xの負方向では左側(または右側)に存在し、モールド側極大点がYの正方向では上側(または下側)に存在し、Yの負方向では下側(または上側)に存在する場合、モールド3は、パターン付基板7に対して左向き(または右向き)に回転して配置されていることが分かる。また例えば、モールド側極大点がXの正方向およびXの負方向のいずれも右側(または左側)に存在し、モールド側極大点がYの正方向では上側(または下側)に存在し、Yの負方向では下側(または上側)に存在する場合、モールド3は、パターン付基板7に対して左側(または右側)にずれるとともに、左向き(または右向き)に回転して配置されていることが分かる。また例えば、モールド側極大点がYの正方向およびYの負方向のいずれも上側(または下側)に存在し、モールド側極大点がXの正方向では左側(または右側)に存在し、Xの負方向では右側(または左側)に存在する場合、モールド3は、パターン付基板7に対して上側(または下側)にずれるとともに、左向き(または右向き)に回転して配置されていることが分かる。
【0067】
このように、第一の方法は、後述する第二の方法のように、θ方向の第一ミスアライメントを検出してモールド3とパターン付基板7とのずれを調整した後に、X方向およびY方向の第一ミスアライメントを検出して調整する方法とは異なる。第一の方法は、第一ミスアライメントdθ1、dX1、dY1を同時に検出し(ステップS7)、可動ステージθXY移動量を同時に決定し(ステップS11)、第一アライメントを行うことができる。
【0068】
第二の方法においては、まず、取得した蛍光視野画像における十字型のモールド側アライメントマーク31と十字型の基板側アライメントマーク71の平行度のずれ角度がdθ1に相当する。θ方向(パターン付基板7の主面に平行な面内で回転する方向)のずれがある場合は、パターン付基板7を載置したXYZθ軸可動ステージをdθ回転させてミスアライメントdθ1を解消させる。
次に、モールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71を包含する領域の蛍光強度分布をX方向及びY方向にスキャンし、モールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71との相対的な第一ミスアライメントdX1,dY1を検出する。第二の方法では、θ方向の第一ミスアライメントは調整されているため、第一ミスアライメントdX1,dY1がゼロとなるようにXYZθ軸可動ステージをdX、dY移動させることで第一ミスアライメントdX1,dY1を解消させることができる。
【0069】
非特許文献1に記載されているように、蛍光視野の場合、可視光を用いた暗視野の検出限界300nmより短い100nmの線幅まで識別することが可能であり、よりアライメントマークを微細にすることが可能であるため検出精度向上の効果もある。
【0070】
モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71を用いてモールド3とパターン付基板7とを位置合わせすることができる。しかしながら、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71を用いた蛍光アライメントでは、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の線幅未満のミスアライメントを調整することはできない。そこで、本実施形態による位置合わせ方法では、モールド側モアレマーク33および基板側モアレマーク73によって生じる蛍光モアレ縞を用いてモールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の線幅未満のミスアライメントを調整するようになっている。
【0071】
図5に示すステップS11の第一アライメント工程が終了すると、
図8に示すように、パターン付基板7の主面に平行な面内における回転方向のミスアライメントが存在しなくなっても、パターン付基板7の端辺に沿う方向に、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の線幅未満のミスアライメントが存在する場合がある。
図8では、モールド3がパターン付基板7に対して、
図8中の左下方向にずれている状態が図示されている。
【0072】
ところで、第一パターン部331,731のピッチP1(=4.4μm)と、第二パターン部332,732のピッチP2(=4.0μm)との差は0.4μmであり、ピッチP1と比較すると微小な値である。複数の第一パターン部331のうちの一の第一パターン部331と、複数の第二パターン部732のうちの一の第二パターン部732とが重なり合う重なり位置(例えば
図8に示す基板側アライメントマーク71に最も近い位置)から、複数の第一および第二パターン部331,732が並ぶ方向(例えば
図8において右向きまたは下向き)に進むほど、第一パターン部331と第二パターン部732とのずれ量は増加する。複数の第一および第二パターン部331,732が並ぶ方向に、重なり位置から所定距離だけ離れた位置では、例えば複数の第一パターン部331のうちの他の一の第一パターン部331が、隣り合う第二パターン部732の間の中間位置に配置される。この中間位置からさらに複数の第一および第二パターン部331,732が並ぶ方向に進むに従って、第一パターン部331と第二パターン部732とのずれ量は減少し、複数の第一パターン部331のうちのさらに他の一の第一パターン部331と複数の第二パターン部732のうちの他の一の第二パターン部732とが重なり合う。第一パターン部331と第二パターン部732とが重なり合う重なり位置の近傍では、第一パターン部331および第二パターン部732の密度が疎となる。一方、第一パターン部331(又は第二パターン部732)が、隣り合う第二パターン部732(又は隣り合う第一パターン部331)の間に配置される位置の近傍では、第一パターン部331および第二パターン部732の密度が密となる。このため、
図8に示すように、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73とが重ね合わされたモアレマーク部には、所定周期で濃淡が繰り返される蛍光モアレ縞が発生する。また、第二パターン部332と第一パターン部731との間でも同様に作用し、蛍光モアレ縞が発生する。
【0073】
そこで、本実施形態におけるモールド3およびパターン付基板7は、第一アライメント工程(ステップS11)が終了すると、モールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73との少なくとも一部が重なり合い、蛍光モアレ縞が必ず生じるように構成されている。そこで、
図8に示すように、モアレ縞の濃淡の少なくとも1周期分と、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71とが含まれるようにモアレ縞蛍光視野画像が取得される(
図5のステップS15)。
【0074】
また、
図8中に直線の破線矢印で示すように、モールド3の第一パターン部331とパターン付基板7の第二パターン部732とが重なっている領域と、モールド3の第二パターン部332とパターン付基板7の第一パターン部731とが重なっている領域とを基板側アライメントマーク71が含まれるように、蛍光モアレ縞をスキャンする(
図5のステップS17)。
【0075】
蛍光モアレ縞をスキャンすることによって、蛍光モアレ縞の濃淡値のプロファイルを取得することができる。蛍光モアレ縞の濃淡値は、樹脂組成物層5に含まれる蛍光色素が多い、すなわち基板側アライメントマーク71、第一パターン部331および第二パターン部732の少なくとも1つが形成されている領域において大きくなる。
【0076】
図9中上段に示すように、積層体1の端部側(外側)においてモールド側モアレマーク33の第一パターン部331と基板側モアレマーク73の第二パターン部732によって生じた蛍光モアレ縞の濃淡プロファイルは、次のようになる。基板側アライメントマーク71の線幅のほぼ中心から10μmから30μm程度離れた区間で繰り返しピークが発生する状態となり、30μmから36μm程度離れた区間でブロード状態となり、36μmから50μm程度離れた区間で再びピークが繰り返し発生する状態となる。蛍光モアレ縞の濃淡プロファイルにピークが発生する区間は、第一パターン部331および第二パターン部732が疎状態となっている区間である。一方、蛍光モアレ縞の濃淡プロファイルにピークが発生する区間に挟まれたブロード状態となる区間は、第一パターン部331および第二パターン部732が密状態となっている区間である。したがって、積層体1の端部側(外側)、すなわち
図8中の右側の下向き破線矢印における蛍光モアレ縞は、基板側アライメントマーク71から30〜35μm程度離れた区間で初めて濃い状態となる。ここで、基板側アライメントマーク71から距離D1(=33.9μm)離れた位置を蛍光モアレ縞が初めて濃い状態となった区間の代表値とする。
【0077】
図9中下段に示すように、積層体1の転写領域32側(内側)においてモールド側モアレマーク33の第二パターン部332と基板側モアレマーク73の第一パターン部731によって生じた蛍光モアレ縞の濃淡プロファイルは、次のようになる。基板側アライメントマーク71の線幅のほぼ中心から10μmから39μm程度離れた区間でピークが繰り返し発生する状態となり、39μmから45μm程度離れた区間でブロード状態となり、45μmから53μm程度離れた区間で再びピークが繰り返し発生する状態となる。蛍光モアレ縞の濃淡プロファイルにピークが発生する区間は、第二パターン部332および第一パターン部731が疎状態となっている区間である。一方、蛍光モアレ縞の濃淡プロファイルにピークが発生する区間に挟まれたブロード状態となる区間は、第二パターン部332および第一パターン部731が密状態となっている区間である。したがって、積層体1の転写領域32側(内側)、すなわち
図8中の左側の下向き破線矢印における蛍光モアレ縞は、基板側アライメントマーク71から39〜45μm程度離れた区間で初めて濃い状態となる。ここで、基板側アライメントマーク71から距離D2(=41.7μm)離れた位置を蛍光モアレ縞が初めて濃い状態となった区間の代表値とする。
【0078】
このように、蛍光モアレ縞は、外側と内側とでは位相が異なる。2つの蛍光モアレ縞の位相差をd(=D2−D1)と表し、ピッチP1をP1と表し、ピッチP2をP2と表すと、モールド3とパターン付基板7とのずれ量Δlは、次の式(2)で表すことができる。なお、式(2)における分子の項は絶対値である。
Δl=((P2−P1)/(P1+P2))×d ・・・(2)
【0079】
ここで、P1=4.4μm、P2=4.0μm、d=7.8μm(=41.7−33.9)を式(2)に代入すると、モールド3とパターン付基板7とのずれ量Δlは、370nmと求められる。このように、蛍光モアレ縞を用いることにより、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の線幅2μm未満のミスアライメントを検出することができる。
【0080】
本実施形態による位置合わせ方法では、式(2)によって求めたX方向(
図8中の左右方向)のずれ量Δlを第二ミスアライメントdX2とし、Y方向(
図8中の上下方向)のずれ量Δlを第二ミスアライメントdY2とし(
図5のステップS19)、第二ミスアライメントdX2,dY2がゼロとなるように可動ステージのXY軸移動量を決定する(
図5のステップS21)。本実施形態による位置合わせ方法では、決定されたXY軸移動量に基づいて可動ステージを移動させ、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の線幅2μm未満の誤差を調整する第二アライメントを実行する(
図5のステップS23)。
【0081】
以上説明したように、本実施形態による位置合わせ方法によれば、モールドと基板との位置合わせの精度を向上させることが可能となる。
【0082】
(インプリント方法)
次に、本実施形態によるインプリント方法について
図10を用いて説明する。
図10は、本実施形態によるインプリント方法の一例を示す工程図である。なお、積層する際の光硬化性組成物の塗布方法に制限はなく、スピン塗布法、インクジェット法、マイクログラビア法またはスクリーン印刷法等の種々の塗布方法を利用できる。
【0083】
図10(a)に示す積層工程を説明する。本実施形態においては、
図10(a)中の上段に示すように、まずパターン付基板7上に蛍光色素を含み流動性を有する硬化性樹脂組成物を塗布装置109のノズルから滴下して硬化性樹脂組成物で形成された樹脂だまり50を形成する。次に、
図10(a)中の下段に示すように、モールド3を樹脂だまり50に接触させ、凸状または凹状(本例では凹状)を有するモールド側アライメントマーク31、基板側アライメントマーク71および被転写領域72に硬化性樹脂組成物50aを充填させる。例えば、粘度が低い硬化性樹脂組成物を用い、モールド3を、中央
部が先に樹脂だまり50に接し硬化性樹脂組成物を外側に延展させながら徐々に周囲
部が樹脂だまり50に接するように積層することで、硬化性樹脂組成物で形成される層に気泡が入るのを防ぐことができる。
【0084】
図10(b)に示す第一検出工程とそれに続く第一アライメント工程は、上述の位置合わせ方法を用いた工程であるため、説明は省略する。
図10(b)に示すように、第一検出工程における蛍光視野画像の取得の際に、複数の蛍光顕微鏡装置103を用いて、複数のアライメント部の蛍光視野画像を同時に取得してもよいし、1つの蛍光顕微鏡装置103を用いて、複数のアライメント部の蛍光視野画像を順次取得してもよい。また、
図10(c)に示す第二検出工程とそれに続く第二アライメント工程は、上述の位置合わせ方法を用いた工程であるため、説明は省略する。第二検出工程において、
図10(c)に示すように、第二検出工程におけるモアレ縞蛍光視野画像の取得の際に、複数の蛍光顕微鏡装置103を用いて、複数のモアレマーク部のモアレ縞蛍光視野画像を同時に取得してもよいし、1つの蛍光顕微鏡装置103を用いて、複数のモアレマーク部のモアレ縞蛍光視野画像を順次取得してもよい。
【0085】
図10(a)に示す積層工程と
図10(b)に示す第一検出工程との間に、暗視野の光学顕微鏡で硬化性樹脂のアライメントマーク部およびモアレマーク部近傍への充填状態を観察する検査工程を入れてもよい。気泡が存在すると気泡と樹脂層との屈折率差が大きいため、気泡の存在を検出することができる。この検査工程では、モールド3のモールド側アライメントマーク31およびモールド側モアレマーク33並びにパターン付基板7の基板側アライメントマーク71および基板側モアレマーク73への硬化性樹脂組成物50aの充填状態が不十分で気泡が残っているかどうかの検査を行う。
【0086】
ここで、従来のアライメントマークを識別する方法に上述の暗視野観察を用いる場合、チタン酸化物や高吸収剤が気泡の検出の障害となるため、可視光を用いて硬化性樹脂の充填が完了したことを光学的に判別することは困難である。これに対して、本実施形態においては、蛍光視野観察でアライメントマークを識別できるため、事前に硬化性樹脂の充填状態を判断できる検査工程を導入することが可能となる。
【0087】
図10(d)に示す硬化樹脂形成工程を説明する。上述した第一および第二アライメント工程でモールド3とパターン付基板7とを位置合わせした状態で、硬化性樹脂組成物50aに透明なモールド3越しにエネルギー線Eを照射して硬化させることで、モールド3の微細な凹凸パターンが反転した凹凸構造75をパターン付基板7の被転写領域72に設けることができる。硬化処理時間が短いという観点から、硬化性樹脂組成物として紫外線硬化型や樹脂組成物を用いて、紫外線照射により硬化させてもよいし、電子線や熱線による硬化であってもよい。
【0088】
図10(e)に示す剥離工程を説明する。XYZθ可動ステージ(不図示)をZ方向(モールド3とパターン付基板7とを重ね合わせる方向)に下降させることで、モールド3と樹脂組成物層5との間で離型することができる。
【0089】
(インプリント装置)
次に、本実施形態によるインプリント装置について
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、本実施形態によるインプリント装置100の概略構成を示す図である。
本実施形態によるインプリント装置100は、上述のような、硬化性樹脂組成物を樹脂層に用いることにより、蛍光視野観察でより微細な線幅のアライメントマークを識別できることに特徴がある。さらに、インプリント装置100は、モアレ縞蛍光視野観察により、モールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の線幅未満の誤差でもモールド3とパターン付基板7との位置合わせをすることができる。
その他の構成、例えば、モールドと硬化性樹脂組成物層とを接触、モールドと硬化樹脂層とを離型させるステージの可動機構、紫外線照射部については、従来のインプリント装置の構成を適用できる。
【0090】
図11に示すように、本実施形態によるインプリント装置100は、モールド3を保持する固定ステージ107、パターン付基板7上に硬化前の樹脂を形成する塗布装置109を有している。また、インプリント装置100は、パターン付基板7を保持し、モールド3とパターン付基板7の上に形成された硬化前の樹脂層とを接触させ、または、離型させ、さらにモールド3とパターン付基板7との位置合わせを行うために、パターン付基板7を移動させるXYZθ軸可動ステージ111を有している。また、インプリント装置100は、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させる紫外線照射装置105、モールド3のモールド側アライメントマーク31および基板側アライメントマーク71の蛍光視野画像並びにモールド側モアレマーク33および基板側モアレマーク73に基づくモアレ縞蛍光視野画像を取得する蛍光顕微鏡装置103を有している。さらに、インプリント装置100は、塗布装置109、XYZθ軸可動ステージ111、紫外線照射装置105および蛍光顕微鏡装置103を制御し、且つ画像からミスアライメントを演算処理する制御装置101を有している。
【0091】
蛍光顕微鏡装置103は、固定ステージ107とXYZθ軸可動ステージ111との間隔が所定値の中央
部と、固定ステージ107とXYZθ軸可動ステージ111との間隔が中央部よりも狭いアライメントマーク
部およびモアレマーク
部の少なくとも3つの位置に移動可能に構成されている。
【0092】
制御装置101は、モールド3とパターン付基板7との間で、パターン付基板7に塗布された紫外線硬化型樹脂組成物を延展させて紫外線硬化型樹脂組成物で形成された紫外線硬化型樹脂組成物層が形成されるように、転写領域32および被転写領域72との
間からアライメントマーク部が設けられた領
域およびモアレマーク部が設けられた領
域にXYZθ軸可動ステージ111の移動を制御する。また、制御装置101は、蛍光視野画像の蛍光強度分布に基づいてモールド側アライメントマーク31と基板側アライメントマーク71のX方向、Y方向およびθ方向の第一ミスアライメントを取得してXYZθ軸可動ステージ111を第一ミスアライメントが少なくなるX方向、Y方向およびθ方向の少なくともいずれかに移動させる。また、制御装置101は、モアレ縞蛍光視野画像の蛍光強度に基づいてモールド側モアレマーク33と基板側モアレマーク73のX方向およびY方向の第二ミスアライメントを取得してXYZθ軸可動ステージ111を第二ミスアライメントが少なくなるX方向およびY方向の少なくともいずれか一方に移動させる。さらに、制御装置101は、硬化樹脂層が形成された後にモールド3が硬化樹脂層から剥離されるように、XYZθ軸可動ステージ111をZ方向に移動させて固定ステージ107との間隔が広がるように制御する。
【0093】
インプリント装置100は、これらの装置101〜111を具備し、モールド3とパターン付基板7との位置合わせおよびインプリントを行う装置である。
【0094】
さらに、インプリント装置100は、暗視野反射型光学顕微鏡装置(不図示)を有していてもよい。この場合、インプリント装置100は、蛍光顕微鏡装置103、暗視野反射型光学顕微鏡および紫外線照射装置105を入れ替えてモールド3上に配置できる装置となるように構成される。
【0095】
また、インプリント装置100は、暗視野反射型光学顕微鏡装置と蛍光顕微鏡装置とを兼ねた光学系を有する蛍光顕微鏡装置とすることもできる。
図12は、そのような2つの顕微鏡装置を兼ねる光学系を有する蛍光顕微鏡装置に具備する観測システムの模式図である。
2つの顕微鏡装置を兼ねる光学系を有する蛍光顕微鏡装置は、
図12(a)に示すような蛍光観測システム200と、
図12(b)に示すような暗視野観測システム300とに切り替えが可能なシステムとなっている。
図12(a)に示すように蛍光観測システム200は、光源201と、蛍光物質の励起に必要な波長の光を光源201から抽出する励起フィルタ203と、励起フィルタ203を透過した光が入射するダイクロイックミラー205と、ダイクロイックミラー205で反射した光を積層体1に集束する対物レンズ211とを有している。また、蛍光観測システム200は、積層体1から発光し対物レンズ211およびダイクロイックミラー205を透過した光からノイズを除去する蛍光フィルタ207と、蛍光フィルタ207を透過した光を検出する検出器209とを有している。ダイクロイックミラー205は、蛍光色素の励起に使用する波長の光を反射し、蛍光の波長の光を透過するように多層光学薄膜で作ることができる。
【0096】
また、暗視野観測システム300は、光源201と、光源201からの光を輪帯状の光に変換するリング絞り301と、リング絞り301を通過した光を積層体1側に反射する穴あきミラー303と、穴あきミラー303で反射した光を積層体1に集光する集光レンズ305と、積層体1で反射した光を検出する検出器209とを有している。光源201及び検出器209は、蛍光観測システム200および暗視野観測システム300で共用されている。
【0097】
本実施形態によるインプリント装置100によれば、モールド、基板、樹脂の屈折率、アライメントマークの溝深さに制限がなく、また、100nmから1000nmの線幅のアライメントマークを識別し、かつモアレ縞を用いて高いアライメント精度でモールド3とパターン付基板7とを位置合わせし、インプリントすることが可能となる。また、本実施形態によるインプリント装置100は、温湿度の制御をしなくても高いアライメント精度でモールド3とパターン付基板7とを位置合わせし、インプリントすることが可能となる。
【0098】
(実施例)
以下、実施例を用いて、本実施形態をさらに具体的に説明する。
モールドとして、縦25mm、横25mm、厚さ1mmのシリカ基板上に、線幅500nm、深さ100nmの十字状の凹状を有するモールド側アライメントマークを有する透明な硬化樹脂層が形成された透明な積層体を用意した。ここで、透明な硬化樹脂層は、ラジカル重合型モノマーglycerol 1,3−diglycerolate diacrylateと光重合開始剤Irgacure907が質量比95:5となる紫外線硬化型樹脂組成物を光硬化させて作製した層である。モールドは(tridecafluoro−1,1,2,2−tetrahydrooctyl)trimethoxysilaneで離型処理した。モールド側アライメントマークは、
図2に示すのと同様に仮想正方形の角に相当する位置に4つ形成されている。隣り合うモールド側アライメントマークの中心(十字状の交差部)間距離は、140μmである。また、モールド側モアレマークは、モールドの直交する2つの端辺に沿って形成されている。モールド側モアレマークに設けられた第一パターン部のピッチP1は4.4μmであり、線幅W1は2μmであり、第二パターン部のピッチP2は4μmであり、線幅W2は2μmである。なお、本実施例では、モールドの転写領域に転写パターンは形成されていない。
【0099】
次に、パターン付基板として、縦7mm、横7mm、厚さ0.525mmのシリコン基板上に、線幅500nm、深さ100nmの十字状の凹状を有する基板側アライメントマークを有する硬化樹脂層が形成された積層体を用意した。基板側アライメントマークは、パターン付基板にモールドを重ね合わせたときに、モールド側アライメントマークと重なり合うように、150μm角の四隅に対応する位置に形成されている。また、基板側モアレマークは、パターン付基板にモールドを重ね合わせたときに、モールド側モアレマークと重なり合うように、パターン付基板の直交する2つの端辺に沿って設けられている。基板側モアレマークに設けられた第一パターン部のピッチP1は4.4μmであり、線幅W1は2μmであり、第二パターン部のピッチP2は4.0μであり、線幅W2は2μmである。ここで、硬化樹脂層は、ラジカル重合型モノマーbisphenol A glycerolate dimethacrylateと光重合開始剤Irgacure907が質量比95:5となる紫外線硬化型組成物を光硬化させて作製した層である。
【0100】
次に、蛍光色素を含む紫外線硬化型樹脂組成物として、ラジカル重合モノマーglycerol 1,3−diglycerolate diacrylate、光重合開始剤Irgacure907、蛍光色素rhodamine 6G−BF4を質量比95:5:0.05で混合し、溶剤1−methoxy−2−propanolで希釈した組成物を用意した。溶剤除去後のこの紫外線硬化型樹脂組成物の粘度は、12950mPa・sであった。
【0101】
まず、パターン付基板上に蛍光色素を含む紫外線硬化型樹脂組成物をスピンコートで塗布し、インプリント装置のXYZθ軸可動ステージ上に固定した。パターン付基板は、位置合わせ時にXYZθ軸可動ステージを移動させる際にXYZθ軸可動ステージに対してずれない程度に固定されている。なお、本実施例では、
図10に示す塗布装置109ではなく、スピンコート装置を用いて紫外線硬化型樹脂組成物を塗布した。次に、モールドを固定ステージに固定した。モールドは、パターン付基板に対面させたときに固定ステージから落下しない程度の強さで固定ステージに固定されている。なお、パターン付基板をXYZθ軸可動ステージに固定する方法と、モールドを固定ステージに固定する方法は、インプリントが終了した後に、パターン付基板及びモールドを各ステージから容易に取り外せる方法であれば、特に制限されない。
【0102】
バブル欠陥の発生防止を目的とした凝縮性ガスであるPFP(ペンタフルオロプロパン)雰囲気下でXYZθ軸可動ステージを用いて紫外線硬化型樹脂組成物を塗布したパターン付き基板をZ軸方向(パターン付基板を基準にモールドが配置されている方向)に上昇させ、パターン付基板上の紫外線硬化型樹脂組成物をモールドと接触させ、蛍光顕微鏡装置を暗視野反射観測システム用の光学系に設定して暗視野観察を行いながら、アライメントマークが識別できなくなるまでZ軸を調整し、アライメントマークに光硬化性蛍光組成物が気泡なしに充填されたことを確認した。充填完了時の紫外線硬化型蛍光組成物で形成された層の厚みは約300nmである。
【0103】
次に、蛍光顕微鏡装置を蛍光視野観測システム用の光学系に切り替えて、モールド側アライメントマークおよび基板側アライメントマークを包含する蛍光視野画像を取得した。図示は省略するが、暗視野視野画像では識別できていないアライメントマークは、蛍光視野画像では容易に識別できた。また、蛍光視野画像をスキャンすることにより、蛍光強度の特性が取得できた。取得した蛍光強度を用いて、モールド側アライメントマークと基板側アライメントマークの相対的な位置情報を取得した。取得した位置情報に基づいて、流動性をもった状態でモールドとパターン付基板とを位置合わせした。
【0104】
次に、蛍光視野観測システム用の光学系に切り替えた蛍光顕微鏡装置を用いてモアレマーク部において発生している蛍光モアレ縞を観察し、モアレ縞蛍光視野画像を撮像した。撮像したモアレ縞蛍光視野画像をスキャンすることにより、蛍光モアレ縞の濃淡値の特性が取得できた。取得した蛍光モアレ縞の濃淡値を用いて、モールド側アライメントマークと基板側アライメントマークの相対的な位置情報を取得した。取得した位置情報に基づいて、流動性をもった状態でモールドとパターン付基板とを位置合わせした。
【0105】
最後に、波長365nmの紫外線照射にて紫外線硬化型樹脂組成物層を硬化させて硬化樹脂層とし、モールドと該硬化樹脂層との間で離型させた。
以上、上述の実施例では、線幅500nm、深さ100nmのアライメントマークであり、モールド側アライメントマークと基板側アライメントマークのX方向及びY方向の間隔は5μmで設計されたものを用いた例である。
【0106】
ここで、アライメントマークのサイズについては、線幅は非特許文献1に記載されている通り、100nmでも良好な識別が可能であり、さらに微細にしてもよい。また、アライメントマークの深さは、100nm未満でも蛍光強度と厚みに相関があるため、さらに深さを浅くしてもよい。モールド側アライメントマークと基板側アライメントマークの間隔は、線幅100nmの場合、1000nmまで間隔を狭めることは可能である。
【0107】
また、ラジカル重合モノマーは、glycerol 1,6−diglycerolate diacrylate(粘度6mPa・s)、またはglycerol 1,10−diglycerolate diacrylate(粘度10mPa・s)であっても、上述と同等の結果が得られた。
【0108】
(変形例1)
本実施形態の変形例1における積層体について
図13を用いて説明する。なお、
図1に示す積層体1と同一の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0109】
図13(a)および
図13(b)に示すように、本実施形態の変形例1における積層体10は、凸状または凹状を有するモールド側アライメントマーク31、および凸状または凹状を有するモールド側モアレマーク33を含む透明なモールド30を備えている。また、積層体10は、蛍光色素を含み流動性を有する樹脂組成物で形成された樹脂組成物層5を備えている。さらに、積層体10は、凸状または凹状を有する基板側アライメントマーク71、および凸状または凹状を有する基板側モアレマーク73を含むパターン付基板70を備えている。積層体10は、モールド3、樹脂組成物層5およびパターン付基板7をこの順に積層した構成を有している。
【0110】
モールド30は、上記実施形態におけるモールド3と異なり、モールド30の4つの端辺のそれぞれに沿って設けられたモールド側モアレマーク33を有している。各端辺に沿ってそれぞれ設けられたモールド側モアレマーク33は、200nmから20μmのピッチP1で並列して配置されて線幅W1が100nmから10μmの複数の第一パターン部331と、200nmから20μmのピッチP2で並列して配置されて線幅W2が100nmから10μmの複数の第二パターン部332とを有している。転写領域32を挟んで対向配置された複数の第一パターン部331同士は、転写領域32の中心を対称軸として点対称となるように配置されている。転写領域32を挟んで対向配置された複数の第一パターン部331同士は、転写領域32の中心を対称軸として点対称となるように配置されている。
【0111】
パターン付基板70は、上記実施形態におけるパターン付基板7と異なり、パターン付基板70の4つの端辺のそれぞれに沿って設けられた基板側モアレマーク73を有している。各端辺に沿ってそれぞれ設けられた基板側モアレマーク73は、200nmから20μmのピッチP1で並列して配置されて線幅W1が100nmから10μmの複数の第一パターン部731と、200nmから20μmのピッチP2で並列して配置されて線幅W2が100nmから10μmの複数の第二パターン部732とを有している。被転写領域72を挟んで対向配置された複数の第一パターン部731同士は、被転写領域72の中心を対称軸として点対称となるように配置されている。被転写領域72を挟んで対向配置された複数の第二パターン部732同士は、被転写領域72中心を対称軸として点対称となるように配置されている。
【0112】
本変形例におけるモールド30は、4つの端辺にそれぞれ沿うモールド側モアレマーク33を有している。また、本変形例におけるパターン付基板70は、4つの端辺にそれぞれ沿う基板側モアレマーク73を有している。これにより、本変形例では、モアレ縞蛍光視野画像を用いて、パターン付基板70の主面に平行な面内における回転方向のミスアライメントを検出し、アライメントマークの線幅未満のミスアライメントを検出してモールド30およびパターン付基板70を位置合わせすることができる。
図13中の上側のモアレマークに基づくモアレ縞蛍光視野画像より例えばXの正方向の第二ミスアライメントdX2+を取得し、下側のモアレマークに基づくモアレ蛍光視野画像より例えばXの負方向の第二ミスアライメントdX2−を取得する。また、
図13中の左側のモアレマークに基づくモアレ縞蛍光視野画像より例えばYの正方向の第二ミスアライメントdY2+を取得し、右側のモアレマークに基づくモアレ蛍光視野画像より例えばYの負方向の第二ミスアライメントdY2−を取得する。取得された第二ミスアライメントdX2+および第二ミスアライメントdX2−と、取得された第二ミスアライメントdY2+および第二ミスアライメントdY2−とに基づいて、θ方向の第二ミスアライメントdθ2を取得することができる。
【0113】
(変形例2)
本実施形態の変形例2におけるモールドおよびパターン付基板について
図14を用いて説明する。
図14(a)に示すように、本変形例におけるモールドは、上記実施形態におけるモールド3と同様に、凸状または凹状を有し平面視で十字状のモールド側アライメントマーク31を有している。一方、
図14(b)に示すように、本変形例におけるパターン付基板は、凸状または凹状を有し平面視で4つのL字状部を一組にした基板側アライメントマーク76を有している。
【0114】
パターン付基板の主面に平行な面内で回転した状態でモールドがパターン基板に重ね合わされると、
図14(c)中の太矢印の左側に示すように、モールド側アライメントマーク31は、この面内において基板側アライメントマーク76に対して回転(
図14(c)では左回り(反時計回り))して重ね合わされる。本変形例においても、上述の第一の方法または第二の方法を用いることにより、
図14(c)中の太矢印の右側に示すように、モールド側アライメントマーク31を基板側アライメントマーク76を構成する4つのL字状部の間に配置することができる。その後、蛍光モアレ縞を用いることにより、モールド側アライメントマーク31を基板側アライメントマーク76を構成する4つのL字状部の間のほぼ中央に配置することができる。
【0115】
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施形態では、第一パターン部および第二パターン部が重ね合わされた2つの列にそれぞれに生じる蛍光モアレ縞を用いて第二ミスアライメントを検出しているが、本発明はこれに限られない。例えば、第一パターン部および第二パターン部が重ね合わされた1つの列に生じる蛍光モアレ縞と、設計値に基づく蛍光モアレ縞とを比較して得られるひずみがゼロとなるように調整しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
また、モールド側アライメントマークおよび基板側アライメントマークの形状は、上記実施形態および変形例2における形状に限定されずに、種々のアライメントマークの形状が使用できる。
【0117】
上記の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。