特許第6864501号(P6864501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6864501-水硬性組成物及び耐熱構造物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864501
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】水硬性組成物及び耐熱構造物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20210419BHJP
   C04B 14/14 20060101ALI20210419BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20210419BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20210419BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20210419BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C04B28/04
   C04B14/14
   C04B16/06 A
   C04B16/06 Z
   C04B16/06 E
   C04B18/14 A
   C04B14/04 C
   E04B1/94 U
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-40008(P2017-40008)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-145040(P2018-145040A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 彦次
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 聡
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴泰
(72)【発明者】
【氏名】石垣 勉
(72)【発明者】
【氏名】白井 悠
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−160161(JP,A)
【文献】 特開2014−076917(JP,A)
【文献】 特開2003−171161(JP,A)
【文献】 特開昭58−099159(JP,A)
【文献】 特開2008−050214(JP,A)
【文献】 特開2016−088777(JP,A)
【文献】 特開2010−235399(JP,A)
【文献】 特開昭62−096355(JP,A)
【文献】 特開2017−24930(JP,A)
【文献】 特開2018−145039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、ブレーン比表面積が3,000〜20,000cm/gのポゾラン質混和材、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、ポリプロピレン繊維、水、及び、セメント分散剤を含み、かつ、空気量調整剤を含まない水硬性組成物であって、
上記ポゾラン質混和材が、高炉スラグ微粉末であり、
上記細骨材及び上記粗骨材を構成する各火成岩が、玄武岩又は安山岩であり、
上記ポルトランドセメントと上記ポゾラン質混和材の合計量中の上記ポゾラン質混和材の割合が15〜60質量%であり、かつ、上記水硬性組成物1m中の上記ポリプロピレン繊維の配合量が0.455〜4.55kg/mであり、
上記セメント分散剤が、AE減水剤であることを特徴とする水硬性組成物。
【請求項2】
上記ポリプロピレン繊維は、直径が20dtex以下でかつ長さが24mm以下であるフィラメントの5〜100本が、連糸形状を有して、分離可能な連結部で接合されてなるものである請求項に記載の水硬性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水硬性組成物の硬化体であるコンクリートによって、表面を含む部分が形成されていることを特徴とする耐熱構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物及び耐熱構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却炉や、工場におけるヒーター等の熱源の周辺は、その温度が高温と低温(常温)を繰り返し、かつ、このような状況が長期に亘る場合がある。
このため、これらの熱源の周辺の構造物に用いられるコンクリート等の水硬性組成物には、優れた耐熱性が求められている。
耐熱性に優れた水硬性組成物として、特許文献1には、固体へ焼結させた石炭フライアッシュを含むコンクリート混合物に、耐火性を高めるためにプラスチック繊維を使用することを特徴とする耐火性を高めたコンクリート混合物が記載されている。
また、特許文献2には、コンクリートあるいはモルタルに、鋼繊維と、合成高分子材料からなる繊維及び/又はビーズとが添加されてなることを特徴とする高靭性・高耐火性のセメント配合体が記載されている。
一方、コンクリート等の水硬性組成物に配合するための繊維として、ポリプロピレン繊維等が知られている。例えば、特許文献3は、ポリプロピレン系合成樹脂フィラメントであり、個々のフィラメントが分離可能に連結した連糸形状テープの短繊維からなるセメント強化用ポリプロピレン繊維が記載されている。
また、特許文献4には、ポリプロピレン繊維を含む耐熱性に優れた水硬性組成物として、ポルトランドセメント、フライアッシュ、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、ポリプロピレン繊維、水、及び、減水剤を含むことを特徴とする水硬性組成物が記載されている。
さらに、コンクリート等の水硬性組成物に、高炉スラグ微粉末等の混和材を配合することも知られている。例えば、特許文献5には、細骨材、粗骨材、セメント、前記セメントよりも粒子の小さい混和材(シリカヒューム、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末および石英片岩微粉末からなる群から選択された少なくとも1種)、減水剤および水をミキサー内で混練して得られる高強度透水性コンクリートであって、前記細骨材の配合割合が、前記粗骨材の18重量%以下であることを特徴とする高強度透水性コンクリートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−328855号公報
【特許文献2】特開2002−193654号公報
【特許文献3】特開平9−86984号公報
【特許文献4】特開2016−160161号公報
【特許文献5】特開2000−239052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているコンクリート混合物、及び、特許文献2に記載されているセメント配合体は、火災の際の高温による、部材の剥げ落ちや表面の爆裂等が起こりにくいものである。すなわち、これらは火災時等の一時的な高温(特に、火炎による非常な高温)に対する耐熱性(耐火性)に優れたものである。
一方、特許文献4に記載されている水硬性組成物は、周辺の温度が高温(例えば、摂氏数百度程度)と低温(例えば、気温と同じ温度)を繰り返し、かつ、このような状況が長期に亘る場合においても、爆裂や強度低下等の劣化が起こりにくい、耐熱性に優れたものである。
本発明は、周辺の温度が高温と低温(常温)を繰り返し、かつ、このような状況が長期に亘る場合において、爆裂や強度低下等の劣化が起こりにくい、耐熱性に優れた水硬性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポルトランドセメント、特定のポゾラン質混和材、特定の細骨材、特定の粗骨材、ポリプロピレン繊維、水、及び、セメント分散剤を含む水硬性組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] ポルトランドセメント、ブレーン比表面積が3,000〜20,000cm/gのポゾラン質混和材、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、ポリプロピレン繊維、水、及び、セメント分散剤を含む水硬性組成物であって、上記ポゾラン質混和材が、高炉スラグ微粉末、火山灰微粉末、又は、シリカの含有率が70質量%以上である非晶質シリカ粉末であることを特徴とする水硬性組成物。
[2] 上記細骨材及び上記粗骨材を構成する各火成岩が、玄武岩又は安山岩である前記[1]に記載の水硬性組成物。
[3] 上記ポリプロピレン繊維は、直径が20dtex以下でかつ長さが24mm以下であるフィラメントの5〜100本が、連糸形状を有して、分離可能な連結部で接合されてなるものである前記[1]又は[2]に記載の水硬性組成物。
[4] 上記ポルトランドセメントと上記ポゾラン質混和材の合計量中の上記ポゾラン質混和材の割合が15〜60質量%であり、かつ、上記水硬性組成物1m中の上記ポリプロピレン繊維の配合量が0.455〜4.55kg/mである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水硬性組成物。
[5] 上記セメント分散剤が、AE減水剤又は高性能AE減水剤である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水硬性組成物。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水硬性組成物の硬化体であるコンクリートによって、表面を含む部分が形成されていることを特徴とする耐熱構造物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水硬性組成物は、周辺の温度が高温と低温(常温)を繰り返し、かつ、このような状況が長期に亘る場合において、爆裂したり、強度(例えば、圧縮強度)が低下するといった劣化が起こりにくい、耐熱性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】連糸形状を有するポリプロピレン繊維を、繊維が延びる方向に対して垂直な方向に切断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水硬性組成物は、ポルトランドセメント、ブレーン比表面積が3,000〜20,000cm/gのポゾラン質混和材、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、ポリプロピレン繊維、水、及び、セメント分散剤を含む水硬性組成物であって、上記ポゾラン質混和材が、高炉スラグ微粉末、火山灰微粉末、又は、シリカの含有率が70質量%以上である非晶質シリカ粉末(以下、「非晶質シリカ粉末」ともいう。)であるものである。
なお、本明細書中、「水硬性組成物」の語は、硬化前の組成物、および、組成物が硬化してなる硬化体を包含するものである。
以下、各原料について詳しく説明する。
本発明の水硬性組成物に用いられるポルトランドセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント等が挙げられる。中でも、強度発現性および流動性の観点から、普通ポルトランドセメントまたは中庸熱ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0009】
本発明において、ポゾラン質混和材のブレーン比表面積は3,000〜20,000cm/g、好ましくは4,000〜17,000cm/g、より好ましくは5,000〜15,000cm/g、さらに好ましくは5,500〜12,000cm/g、特に好ましくは6,000〜10,000cm/gである。該比表面積が3,000cm/g以上であれば、水硬性組成物の硬化体の耐熱性をより向上することができる。該比表面積が20,000cm/g以下であるポゾラン質混和材は、容易に入手可能である。また、該比表面積が20,000cm/g以下であれば、硬化前の水硬性組成物の流動性をより向上することができる。
本発明において、ポゾラン質混和材としては、高炉スラグ微粉末、火山灰微粉末、又は、非晶質シリカ粉末が挙げられる。
【0010】
本発明において、非晶質シリカ粉末中のシリカの含有率は、水硬性組成物のアルカリ骨材反応の抑制や強度発現性の向上の観点から、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
また、非晶質シリカ粉末のガラス化率は、水硬性組成物のアルカリ骨材反応の抑制や強度発現性の向上の観点から、90質量%以上、好ましくは93質量%以上、より好ましくは96質量%以上である。
なお、ガラス化率は、Jansenらの以下の文献を参考にしてリートベルト/外部標準(G因子)法を用いて求めた結晶相の合計量(質量%)を100から引いた差分から求めることができる。 D.Jansen et al.、「Does Ordinary Portland Cement contain amorphous phase? A quantitative study using an external standard method」、Powder Diffraction、Vol.26、No.1、pp.31-38
非晶質シリカ粉末としては、例えば、石英ガラスの粉砕物等が挙げられる。
【0011】
本発明において、ポルトランドセメントと上記ポゾラン質混和材の合計量(100質量%)中の上記ポゾラン質混和材の割合(ポゾラン質混和材として、2種以上を併用する場合はその合計の割合)は、好ましくは15〜60質量%、より好ましくは20〜55質量%、特に好ましくは25〜50質量%である。該割合が15質量%以上であれば、水硬性組成物の硬化体の耐熱性がより向上し、水硬性組成物のアルカリ骨材反応をより抑制することができる。該割合が60質量%以下であれば、水硬性組成物の硬化体の耐熱性および強度がより向上する。
また、ポゾラン質混和材は2種以上を併用してもよく、併用する場合において、各ポゾラン質混和材の質量比は、特に限定されるものではない。
本発明において、高炉スラグ微粉末、火山灰微粉末及び非晶質シリカ粉末以外の混和材(他の混和材)を用いることができる。他の混和材の配合量は、高炉スラグ微粉末、火山灰微粉末及び非晶質シリカ粉末の合計100質量部に対して、強度発現性の低下を避ける観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
他の混和材の例としては、フライアッシュ等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる細骨材及び粗骨材は、火成岩からなるものである。火成岩からなる細骨材及び粗骨材を用いることで、高温の環境下において、爆裂による硬化体の損傷等を防ぐことができる。
火成岩としては、例えば、玄武岩、安山岩、流紋岩、斑レイ岩、閃緑岩、及び花崗岩等が挙げられる。中でも、水硬性組成物の硬化体の耐熱性向上の観点から、玄武岩又は安山岩が好ましく、玄武岩がより好ましい。
本発明の水硬性組成物1m中の火成岩からなる細骨材の配合量は、好ましくは550〜1,000kg/m、より好ましくは800〜950kg/mである。該量が上記数値範囲内であれば、水硬性組成物の混練時及び打設時の作業性や、水硬性組成物の硬化体の耐熱性及び強度が向上する。
本発明の水硬性組成物1m中の火成岩からなる粗骨材の配合量は、好ましくは700〜1,200kg/m、より好ましくは750〜950kg/mである。該量が上記数値範囲内であれば、水硬性組成物の硬化体の耐熱性及び強度が向上する。
【0013】
本発明の水硬性組成物は、ポリプロピレン繊維を含むものである。
ポリプロピレン繊維を含むことによって、高温の環境下において、本発明の水硬性組成物の硬化体中のポリプロピレン繊維が溶けて、該硬化体中に空洞が生じ、該空洞を通じて硬化体の内部に発生した水蒸気が外部に放出されるため、爆裂による該硬化体の損傷を防ぐことができる。
本発明で用いられるポリプロピレン繊維は、フィラメントの直径が、好ましくは20dtex(デシテックス)以下、より好ましくは3〜15dtex、特に好ましくは6〜12dtex、かつ、長さが、好ましくは24mm以下、より好ましくは6〜20mm、特に好ましくは10〜18mmのものである。
上記直径が20dtex以下であれば、水硬性組成物の硬化体の強度および耐熱性が向上する。
上記長さが24mm以下であれば、水硬性組成物の混練時及び打設時の作業性や、水硬性組成物の硬化体の強度および耐熱性が向上する。
【0014】
本発明で用いられるポリプロピレン繊維は、直径が20dtex以下でかつ長さが24mm以下であるフィラメントの5〜100本が、連糸形状を有して、分離可能な連結部で接合されてなるものが好ましい。
ここで、本明細書中、「連糸形状」とは、複数のフィラメントが、顕微鏡で拡大して観察した場合にテープ状となるように、並列に配設された形状をいう。
本発明で用いられる連糸形状を有するポリプロピレン繊維について、図1を参照にしながら説明する。連糸形状を有するポリプロピレン繊維1は、複数の単糸フィラメント2が並列に配設され、各単糸フィラメントが、隣接する単糸フィラメントと連結部3で接合されてなるものである。連結部3は、外力によって割れやすくなっているため、水硬性組成物を混練する際に、適度に分離、解繊される。
このようなポリプロピレン繊維を用いることで、水硬性組成物を混練する際に、ポリプロピレン繊維が、単糸フィラメントからなる繊維または少数(例えば、2〜4本)のフィラメントからなる連糸形状を有する繊維に容易に分離する。その結果、ポリプロピレン繊維を、水硬性組成物の硬化体中に均一に分散させることができる。
【0015】
本発明で用いられる連糸形状を有するポリプロピレン繊維を構成するフィラメントの数は、5〜100本、好ましくは10〜90本、より好ましくは20〜80本である。該数が上記数値範囲内であれば、製造が容易であり、混練によって少数のフィラメントからなる連糸形状のポリプロピレン繊維を、水硬性組成物の硬化体中に均一に分散させることが可能となるため、水硬性組成物の硬化体の強度および耐熱性が向上する。
連糸形状を有するポリプロピレン繊維の具体例としては、例えば、上述の特許文献3(特開平9−86984号公報)に記載されているポリプロピレン繊維が挙げられる。
【0016】
ポリプロピレン繊維の配合量は、水硬性組成物の全量中の割合として、好ましくは0.05〜0.5体積%、より好ましくは0.08〜0.3体積%、特に好ましくは0.1〜0.25体積%である。該量が0.05体積%以上であれば、水硬性組成物の硬化体の耐熱性を向上させることができる。該量が0.5体積%以下であれば、水硬性組成物の混練時及び打設時の作業性が向上する。
また、本発明の水硬性組成物1m中のポリプロピレン繊維の配合量は、好ましくは0.455〜4.55kg/m、より好ましくは0.728〜2.73kg/m、特に好ましくは0.91〜2.28kg/mである。
【0017】
本発明の水硬性組成物は、ポリプロピレン繊維の他に、補強用繊維として他の繊維を含むことができる。補強用繊維が含まれることにより、硬化体の靭性を向上させ、かつ硬化体の収縮を抑制することができる。
他の繊維としては、鋼繊維、ステンレス繊維、およびアモルファス繊維等の金属繊維;ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、およびアラミド繊維等の有機繊維、が挙げられる。
【0018】
本発明の水硬性組成物に用いられる水としては、水道水等を使用することができる。
本発明において、水と、ポルトランドセメントと上記ポゾラン質混和材の合計の質量比(水/(ポルトランドセメント+ポゾラン質混和材)の質量比)は、好ましくは0.30〜0.65、より好ましくは0.35〜0.60、特に好ましくは0.40〜0.55である。該比が0.30以上であれば、水硬性組成物の混練時及び打設時の作業性が向上する。該比が0.65以下であれば、強度発現性が向上する。
【0019】
本発明の水硬性組成物に用いられるセメント分散剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤および高性能AE減水剤等が挙げられる。中でも、水硬性組成物の流動性、施工性、及び強度発現性の観点から、AE減水剤又は高性能AE減水剤が好ましく、AE減水剤がより好ましく、本発明において、ポゾラン質混和材として高炉スラグ微粉末を用い、かつ、AE減水剤を用いることが特に好ましい。
減水剤(通常、液状)の配合量は、ポルトランドセメントと上記ポゾラン質混和材の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜3.0質量部、より好ましくは0.3〜2.0質量部、特に好ましくは0.5〜1.5質量部である。該量が0.1質量部以上であれば、減水性能が向上し、水硬性組成物の混練時及び打設時の作業性が向上する。該量が3.0質量部以下であれば、強度発現性が向上する。
【0020】
本発明の水硬性組成物を硬化してなる硬化体(コンクリート)は、周辺の温度が高温(例えば、摂氏数百度程度)と低温(例えば、気温;0〜40℃程度)を数時間〜数週間単位で繰り返し、かつ、繰り返しの回数が多数(例えば、数百回〜1,100回程度)であっても、爆裂等による損傷が生じにくく、また、強度の低下が起こりにくいものである。本発明の水硬性組成物は耐熱性に優れており、耐熱構造物の表面を含む部分等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)普通ポルトランドセメント:太平洋セメント社製
(2)高炉スラグ微粉末(混和材):ブレーン比表面積8,000cm/g
(3)非晶質シリカ粉末(混和材):石英ガラスの粉砕品(シリカの含有率90質量%以上、ガラス化率99質量%以上、ブレーン比表面積6,000cm/g)
(4)細骨材A:玄武岩砕砂
(5)細骨材B:安山岩砕砂
(6)細骨材C:山砂
(7)粗骨材A:玄武岩砕石
(8)粗骨材B:安山岩砕石
(9)粗骨材C:砂岩砕石
(10)ポリプロピレン繊維:直径10dtex、長さ12mmであるフィラメント50本が、連糸形状を有して、分離可能な連結部で接合されてなるもの(萩原工業社製);比重0.91
(11)AE減水剤(セメント分散剤;表1中の「分散剤」):フローリックSV10(液状;フローリック社製)
(12)高性能AE減水剤(セメント分散剤;表1中の「分散剤」):フローリックSF500S(液状;フローリック社製)
(13)水:上水道水
【0022】
[実施例1]
上記各材料を表1に示される配合割合で混練して、水硬性組成物を調製した。なお、表1中、「細骨材率」の単位は「%」である。
混練は、パン型ミキサを使用して、以下の方法で行った。
普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、細骨材、粗骨材をパン型ミキサに投入して、15秒間空練りした後、水および混和剤を投入して、2分間混練し、さらにポリプロピレン繊維を投入して、1分間混練した。
得られた水硬性組成物を10×10×40cmの型枠に流し込み、20℃で24時間前置き後、脱型し、20℃で27日間水中養生し、供試体を得た。
【0023】
(a)高温度履歴繰り返し試験
得られた供試体を耐火炉に入れて、供試体の周辺温度を40℃から980℃となるまで1分程度で昇温した後、980℃の温度を20分間維持した。次いで、供試体の周辺温度が40℃となるまで自然冷却した。これを表2に示す回数となるまで繰り返した後、供試体の表面の損傷について目視観察によって評価を行った。
(b)圧縮強度試験
また、高温度履歴繰り返し試験を行う前の供試体、および高温度履歴繰り返し試験を1,100回行った後の供試体について、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して、コンクリートの圧縮強度を測定した。
得られた測定結果から、残存圧縮強度比({(高温度履歴繰り返し試験を行った後の供試体の圧縮強度/高温度履歴繰り返し試験を行う前の供試体の圧縮強度)×100}(%))を算出した。
【0024】
[実施例2〜4]
表1に示す各材料を表1に示される配合割合で混練する以外は、実施例1と同様にして供試体を得た。
[実施例5]
高炉スラグ微粉末の代わりにシリカ質粉末を使用する以外は、実施例1と同様にして供試体を得た。
得られた供試体を用いて、実施例1と同様にして、高温度履歴繰り返し試験における評価、及び、残存圧縮強度比の算出を行った。
【0025】
[比較例1〜2]
上記各材料を表1に示される配合割合で混練する以外は、実施例1と同様にして供試体を得た。
得られた供試体を用いて、実施例1と同様にして高温度履歴繰り返し試験における評価を行った。
[比較例3]
ポリプロピレン繊維を使用しない以外は、実施例1と同様にして供試体を得た。
得られた供試体を用いて、実施例1と同様にして高温度履歴繰り返し試験における評価を行った。
結果を表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
表2から、本発明の水硬性組成物(実施例1〜5)の硬化体は、比較例1〜3と比べて高温度履歴を繰り返しても硬化体の損傷が起こりにくく、耐熱性に優れていることがわかる。特に、高炉スラグ微粉末およびAE減水剤を用いた場合(実施例1〜2)の水硬性組成物では、繰り返し回数が1,100回でも、硬化体の損傷は見られなかった。また、本発明の水硬性組成物(実施例1〜5)の硬化体は、残存圧縮強度比が91〜96%であり、強度の低下が起こりにくいことがわかる。特に、高炉スラグ微粉末およびAE減水剤を用いた場合(実施例1〜2)の水硬性組成物では、残存圧縮強度比が95〜96%であり、強度の低下がより起こりにくいことがわかる。
【符号の説明】
【0029】
1 連糸形状を有するポリプロピレン繊維
2 フィラメント(単糸)
3 連結部
図1