特許第6864503号(P6864503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864503
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】二次電池の制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20210419BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210419BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20210419BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01M10/44 P
   H02J7/00 P
   B60L58/12
   B60W10/08 900
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-40595(P2017-40595)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-147665(P2018-147665A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】成岡 慶紀
【審査官】 杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212228(JP,A)
【文献】 特開2012−54220(JP,A)
【文献】 特開2013−149451(JP,A)
【文献】 特開2013−196805(JP,A)
【文献】 特開2014−7025(JP,A)
【文献】 特表2015−528101(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/080285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/12
B60W 10/08
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを活物質として含む負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に配置された電解質とを備える二次電池の制御方法であって、
放電時の前記二次電池の単位時間当たりの電圧の変化量に対する、放電時の前記二次電池の単位時間当たりの残容量の変化量である放電特性値と、前記二次電池の電圧との関係を示す放電特性線を取得し、
前記二次電池の最大電圧から放電末期における電圧までの電圧範囲内で前記放電特性値の絶対値が最大になる第1の電圧を抽出し、
放電開始から放電終了時に向けて、前記第1の電圧以下の電圧範囲において前記放電特性線の傾きの絶対値が減少から増大に転じる変曲点における第2の電圧を抽出し、
前記第2の電圧に所定値を加算した第3の電圧以下での前記二次電池の使用を抑制する二次電池の制御方法。
【請求項2】
前記第3の電圧は、前記第1の電圧以下である請求項1に記載の二次電池の制御方法。
【請求項3】
前記二次電池は、モータの駆動電源であり、
前記二次電池の電圧が前記第3の電圧以下である場合に前記モータのトルクを抑制することにより、前記第3の電圧以下での前記二次電池の使用を抑制する請求項1又は2に記載の二次電池の制御方法。
【請求項4】
前記二次電池は、ハイブリッド自動車のモータの駆動電源であり、
前記二次電池の電圧が前記第3の電圧以下である場合にエンジン走行モードに設定することにより、前記第3の電圧以下での前記二次電池の使用を抑制する請求項1〜3の何れか1項に記載の二次電池の制御方法。
【請求項5】
前記二次電池は、報知装置を備える機器の駆動電源であり、
前記二次電池の電圧が前記第3の電圧以下である場合に前記報知装置を作動させることにより、前記第3の電圧以下での前記二次電池の使用を抑制する請求項1〜4の何れか1項に記載の二次電池の制御方法。
【請求項6】
前記変曲点の有無と、前記変曲点における前記放電特性値との少なくとも一方に基づいて、前記負極の劣化度を判定し、
前記劣化度が閾値以上である場合に、前記二次電池の使用の抑制を解除又は禁止する請求項1〜5の何れか1項に記載の二次電池の制御方法。
【請求項7】
Siを活物質として含む負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に配置された電解質とを備える二次電池の制御装置であって、
放電時の前記二次電池の単位時間当たりの電圧の変化量に対する、放電時の前記二次電池の単位時間当たりの残容量の変化量である放電特性値と、前記二次電池の電圧との関係を示す放電特性線を取得し、
前記二次電池の最大電圧から放電末期における電圧までの電圧範囲内で前記放電特性値の絶対値が最大になる第1の電圧を抽出し、
放電開始から放電終了時に向けて、前記第1の電圧以下の電圧範囲において前記放電特性線の傾きの絶対値が減少から増大に転じる変曲点における第2の電圧を抽出し、
前記第2の電圧に所定値を加算した第3の電圧以下での前記二次電池の使用を抑制する二次電池の制御装置。
【請求項8】
前記変曲点の有無と、前記変曲点における前記放電特性値との少なくとも一方に基づいて、前記負極の劣化度を判定する負極劣化判定部を備える請求項7に記載の二次電池の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池として、Si(シリコン)を含む材料と炭素材料との合剤で負極を構成することにより、容量の増大を図ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−89521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池では、充放電が繰り返されると、負極のSiが劣化することにより容量が低下するという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、充放電に伴う負極のSiの劣化を抑制することにより、容量を増大することができる二次電池の制御方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、放電時の二次電池の単位時間当たりの電圧の変化量に対する、放電時の二次電池の単位時間当たりの残容量の変化量である放電特性値と、二次電池の電圧との関係を示す放電特性線を取得し、上記放電特性値の絶対値が最大になる第1の電圧を抽出し、当該第1の電圧以下の電圧範囲において上記放電特性線の傾きの絶対値が減少から増大に転じる変曲点における第2の電圧を抽出し、当該第2の電圧に所定値を加算した第3の電圧以下での二次電池の使用を抑制することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二次電池の放電に対するSiの寄与が大きい電圧範囲での二次電池の使用を抑制することにより、充放電に伴う負極のSiの劣化を抑制できるので、二次電池の容量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の制御方法を適用した車両のシステム構成図である。
図2】車両制御装置の機能ブロック図である。
図3】実験で得られたバッテリの放電特性線を示すグラフである。
図4図2の車両制御装置によるトルク制御処理、バッテリの放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理を示すフローチャートである。
図5】他の実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
図6図5の車両制御装置による走行モード設定処理、バッテリの放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理を示すフローチャートである。
図7】他の実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
図8図7の車両制御装置が搭載される車両のバッテリの充電状態を標示するインジケータを示す図である。
図9図7の車両制御装置によるインジケータの表示制御処理、バッテリの放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の制御方法及び装置を適用した車両1のシステム構成図である。この図に示すように、車両1は、電動モータの駆動力によって走行する電動車両であり、バッテリ10と、インバータ20と、モータ30と、電圧センサ40と、電流センサ50と、アクセル開度センサ60と、放電スイッチ70と、充電スイッチ80と、車両制御装置100とを備える。本実施形態の車両1は、電気自動車であるが、電気自動車に限定されず、ハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車等であってもよい。なお、図1において、太線は電力線を示し、細線は信号線を示している。
【0010】
バッテリ10は、負極活物質が、Si(シリコン)を含む材料とその他の材料(例えば、グラファイト等)との合剤で構成された、Si負極のリチウムイオン二次電池である。Siを含む材料(Si系材料)としては、結晶性、非結晶性Siや、Si−O系材料等を例示できる。一方、正極活物質としては、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)、LMO(マンガン酸リチウム)、NCA(ニッケル・コバルト・アルミ)、LFP(オリビン型リン酸鉄リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)等を例示できる。本実施形態のバッテリ10では、負極活物質が結晶性Siとグラファイトとの比率が20:80の合剤であり、正極活物質がNMCである。
【0011】
バッテリ10は、外部の充電器90と充電プラグを介して接続され、この充電器90により充電される。一方で、充電器90は、放電回路を備えており、バッテリ10から外部(例えば、系統電力)への定電流放電が実施可能である。本実施形態では、バッテリ10から外部への0.3Cの定電流放電が実施可能である。また、バッテリ10は、直流電力をインバータ20へ出力する。
【0012】
インバータ20は、共に不図示のインバータ回路と回路制御装置とを備える。インバータ20のインバータ回路は、バッテリ10から出力された直流電力を三相交流電力に変換してモータ30に出力する。また、インバータ20の回路制御装置は、後述するように車両制御装置100から出力されるトルク指令値に応じたモータ30の出力トルクが実現されるように三相交流電力を制御する。
【0013】
モータ30は、車両1の駆動輪を駆動する三相交流モータであり、バッテリ10から直流電力として出力されインバータ20により三相交流電力に変換された電力により駆動される。モータ30は、駆動輪に連れ回されて回転するときに回生電力を発生する。この場合、インバータ20は、モータ30で発生された交流電流を直流電流に変換してバッテリ10に供給する。
【0014】
電圧センサ40は、バッテリ10の電圧Vを検出して車両制御装置100に出力する。電流センサ50は、バッテリ10とインバータ20との間の直流電源ラインに設けられ、バッテリ10からインバータ20へ流れる電流の電流値を検出して車両制御装置100に出力する。アクセル開度センサ60は、アクセル開度を検出して車両制御装置100に出力する。
【0015】
放電スイッチ70は、バッテリ10の放電を指令する際に車両1のユーザや車両1のメンテナンスをする作業者等に操作される。また、充電スイッチ80は、バッテリ10の充電を指令する際に車両1のユーザや車両1のメンテナンスをする作業者等に操作される。これらの放電スイッチ70、充電スイッチ80としては、車両1の室内に設けられたタッチパネルや押ボタンや、充電器90に設けられたタッチパネルや押ボタン等を例示できる。
【0016】
放電スイッチ70のON/OFFは、車両制御装置100により検出され、バッテリ10が充電器90に接続された状態で放電スイッチ70がONになると、車両制御装置100から充電器90に放電指令が出力される。ここで、放電スイッチ70は、後述のバッテリ10の放電抑制電圧範囲の算出処理とSi負極の劣化の判定処理とを実施する際にバッテリ10の放電を指令するためのスイッチである。
【0017】
充電スイッチ80のON/OFFは、車両制御装置100により検出され、バッテリ10が充電器90に接続された状態で充電スイッチ80がONになると、車両制御装置100から充電器90に充電指令が出力される。なお、放電スイッチ70がONになると、充電スイッチ80のON/OFFにかかわらず、放電が実行された後に充電が実行される。
【0018】
車両制御装置100は、車両1の走行制御機能、バッテリ10の充放電制御機能等の諸機能を実現する制御装置である。車両1の走行制御機能には、モータ30のトルクを制御するトルク制御処理が含まれる。また、バッテリ10の充放電制御機能には、バッテリ10の放電を制限する放電抑制処理、Si負極の劣化を判定する劣化判定処理が含まれる。
【0019】
車両制御装置100は、トルク制御処理、バッテリ10の放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理等を実行するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、 ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いることができる。
【0020】
図2は、車両制御装置100の機能ブロック図である。この図に示すように、車両制御装置100は、充放電指令部101と、dQ/dV算出部102と、劣化判定部103と、放電電力制御部104と、トルク指令値演算部105と、アクセル開度−トルク指令値マップ106とを備えている。
【0021】
充放電指令部101は、放電スイッチ70のON/OFFの状態を検出し、放電スイッチ70がONになり、且つ、バッテリ10が充電器90に接続されている場合に、充電器90に放電指令を出力する。即ち、車両1のユーザ又はメンテナンスを実施する作業者等が、バッテリ10を充電器90に接続してバッテリ10の充電を実施するに際して放電スイッチ70を操作した場合に、充放電指令部101は、バッテリ10の放電を指令する。ここでのバッテリ10の放電は、完全放電またはSOC=1〜20%程度まで実施される。
【0022】
充放電指令部101は、充電スイッチ80のON/OFFの状態を検出し、充電スイッチ80がONになり、且つ、バッテリ10が充電器90に接続されている場合に、充電器90に充電指令を出力する。なお、充放電指令部101は、放電スイッチ70と充電スイッチ80との双方がONになった場合には、放電指令を先行して出力し、放電完了後に充電指令を出力する。
【0023】
ここで、充放電指令部101は、バッテリ10の電圧が、所定値V未満である場合には、充電器90に、バッテリ10の電圧を電圧V以上まで充電する指令を出力し、バッテリ10が電圧V以上まで充電された後に、充電器90に放電指令を出力する。ここで、所定値Vは、後述のdQ/dVの絶対値が最大となる時点での電圧Vよりも高い電圧である。
【0024】
dQ/dV算出部102は、放電スイッチ70のON/OFFの状態を検出し、放電スイッチ70がONになり、放電指令に従ってバッテリ10の放電処理が実行された場合に、電圧センサ40から出力されたバッテリ10の電圧Vと、電流センサ50から出力されたバッテリ10の電流Aとに基づいて、バッテリ10の電圧Vの変化量dVに対するバッテリ10の残容量Qの変化量dQの割合であるdQ/dVを算出する。dQ/dV算出部102は、放電開始時から放電終了時まで、dQ/dVを、劣化判定部103と放電電力制御部104とに出力する。放電電力制御部104は、入力されたdQ/dVの時系列データである放電特性線(放電曲線、図3参照)を充放電サイクルのサイクル数と共にメモリに記録する。
【0025】
劣化判定部103は、放電特性線に基づいて、バッテリ10のSi負極の劣化を判定し、判定結果を放電電力制御部104に出力する。なお、Si負極の劣化の判定方法については後述する。
【0026】
放電電力制御部104は、放電特性線に基づいて、バッテリ10の放電を抑制する電圧範囲(以下、放電抑制電圧範囲という)を算出する。なお、バッテリ10の放電抑制電圧範囲の算出方法については後述する。
【0027】
ここで、放電電力制御部104は、劣化判定部103から出力されたバッテリ10のSi負極の劣化の判定結果に応じて、放電抑制電圧範囲を算出する。例えば、バッテリ10のSi負極の劣化の程度が、相対的に大きい場合には、放電抑制電圧範囲が存在しないと算出したり、バッテリ10のSi負極の劣化の程度が大きくなるほど、放電抑制電圧範囲の上限値が低くなるように算出したりする。
【0028】
放電電力制御部104は、算出した放電抑制電圧範囲をメモリに記録する。車両1の走行中、放電電力制御部104は、電圧センサ40から出力されたバッテリ10の電圧Vが、放電抑制電圧範囲に含まれるか否かを判定し、電圧Vが放電抑制電圧範囲に含まれる場合に、トルク抑制指令をトルク指令値演算部105に出力する。
【0029】
トルク指令値演算部105は、アクセル開度センサ60から出力されたアクセル開度に対応するトルク指令値を、アクセル開度−トルク指令値マップ106から読み出してインバータ20に出力する。ここで、トルク指令値算出部105は、放電電力制御部104からトルク抑制指令が出力されていない場合には、アクセル開度−トルク指令値マップ106から読み出したトルク指令値を補正することなくインバータ20に出力する。それに対して、トルク指令値算出部105からトルク抑制指令が出力された場合には、アクセル開度−トルク指令値マップ106から読み出したトルク指令値に対して所定の補正値α(<1.0)を乗じ、補正したトルク指令値をインバータ20に出力する。
【0030】
ここで、バッテリ10の放電抑制電圧範囲の算出方法と、Si負極の劣化の判定方法とについて説明する。本願の発明者は、以下に述べる実験を実施したところ、Si負極のSiとグラファイトとで、それぞれ放電時の寄与が大きい電圧範囲が存在することを見出した。以下、本実験の内容とその結果について説明する。
【0031】
本実験では、Siとグラファイトとの比率が20:80であるSi負極と、NMCからなる正極とを備え、容量が3.5Ahであり、最大電圧が4.2Vであるリチウムイオン二次電池を用意した。このリチウムイオン二次電池を4.2V(SOC:100%程度)〜2.7V(SOC:0〜10%程度)の間で0.3Cの電流レートで充放電する充放電サイクルを繰り返し実施した。そして、放電時のバッテリ10の電圧Vと残容量Qとを継続的に測定し、放電時のバッテリ10の放電特性線を取得した。
【0032】
図3は、本実験で得られたバッテリ10の放電特性線(放電時のdQ/dV曲線)を示すグラフである。このグラフ中の曲線(A)は、1サイクル目での放電特性線であり、グラフ中の曲線(B)は、200サイクル目での放電特性線であり、グラフ中の曲線(C)は、500サイクル目での放電特性線である。
【0033】
図3のグラフに示すように、放電の始期(4.2V−3.7V)では、充放電のサイクル数の増加に伴うdQ/dVの絶対値の変化は微小であるのに対して、放電の中期から末期にかけては(3.7V−2.7V)、充放電のサイクル数の増加に伴うdQ/dVの絶対値の減少が相対的に大きくなり、特に、放電の末期(3.4V−2.7V)において、200サイクル目、500サイクル目のdQ/dVの絶対値と1サイクル目のdQ/dVの絶対値との差が顕著になる。
【0034】
ここで、充放電サイクルのサイクル数の増加に伴ってSiの劣化は進行しているのに対して、放電の始期では、サイクル数の増加に伴うバッテリ10の容量の低下が生じていない。このことから、放電の始期では、バッテリ10の放電に対するSiの寄与度は、バッテリ10の放電に対するグラファイトの寄与度と比較して小さいと判断できる。それに対して、放電の末期では、サイクル数の増加に伴うバッテリ10の容量の低下が顕著に生じている。このことから、放電の末期では、バッテリ10の放電に対するSiの寄与度は、バッテリ10の放電に対するグラファイトの寄与度と比較して大きいと判断できる。
【0035】
また、図3のグラフに示すように、1サイクル目、200サイクル目での放電特性線(A)、(B)では、バッテリ10の電圧Vが3.4〜3.5V(SOCは40%程度)の時点で、dQ/dVの絶対値が最大となることが確認された。そして、放電特性線(A)、(B)では、dQ/dVの絶対値が、最大値から最小値まで減少する途中に、dQ/dVの絶対値の傾きが減少してから増加に転じる点(以下、変曲点Cという)が、約3.2V(SOCは20〜30%程度)の時点に存在することが確認された。それに対して、500サイクル目での放電特性線(C)では、放電末期に、上記変曲点Cが存在することは確認されなかった。即ち、放電に対するSiの寄与度が残存する充放電サイクルでは、上記変曲点Cが、放電に対するSiの寄与度が放電に対するグラファイトの寄与度と比較して大きい電圧範囲に存在することが確認された。
【0036】
以上により、1サイクル目〜200サイクル目の放電特性線(A)、(B)において、dQ/dVの絶対値が最大となる電圧(3.4〜3.5V)以下の電圧範囲であり、上記変曲点Cが存在する電圧範囲が、放電に対するSiの寄与度が放電に対するグラファイトの寄与度と比較して大きい電圧範囲であることが確認された。
【0037】
また、1サイクル目の放電特性線(A)における変曲点Cと、200サイクル目の放電特性線(B)における変曲点Cとを比較することで、サイクル数の増加に伴うバッテリ10の容量低下を確認することができ、それにより、サイクル数の増加に伴うSiの劣化の進行度を確認することができる。さらに、500サイクル目の放電特性線(B)では、1サイクル目の放電特性線(A)、200サイクル目の放電特性線(B)において確認されていた変曲点Cの存在が確認されない。それにより、サイクル数の増加に伴うSiの劣化の進行により、変曲点Cが確認されなくなった場合には、Siの劣化が顕著になったと判断できることが確認された。
【0038】
ここで、Siは充放電に伴う体積変化が他の負極活物質と比して大きいことが一般的に知られている。このため、放電に対するSiの寄与度が大きい電圧範囲でのバッテリ10の使用は、Siの劣化を早め、Si負極に皺を発生させる要因になる。Si負極に皺が発生すると、正極と負極との距離が不均一になることにより、電極の一部に電流が集中し、電極の耐久性が低下する。
【0039】
そこで、本実施形態の放電電力制御部104は、変曲点Cが存在する充放電サイクルにおける、dQ/dVの絶対値が最大となる電圧V(3.4〜3.5V)以下であり、上記変曲点Cが存在する電圧範囲を、バッテリ10の放電抑制電圧範囲(VMIN〜VMAX)に設定する。ここで、バッテリ10の放電抑制電圧範囲の上限値VMAXは、下記(1)式を満足する。また、バッテリ10の放電抑制電圧範囲の下限値VMINは、充放電サイクルでの放電末期(SOC=0〜20%程度に相当)における電圧に相当する。
MAX=V+V …(1)
但し、Vは、変曲点Cに対応する電圧であり、Vは所定値である。ここで、Vは、電圧Vを超えないように設定されている。
【0040】
なお、1サイクル目の充放電サイクルにおける電圧V、Vのみを用いて電圧VMAXを設定してもよく、複数の充放電サイクルにおける電圧V、Vの平均値を用いたり、最新の充放電サイクルにおける電圧V、Vを用いたりして電圧VMAXを設定してもよい。
【0041】
また、本実施形態の放電電力制御部104は、各充電サイクルのdQ/dVの時系列データである放電特性線をメモリに記録する。劣化判定部103は、充放電サイクルが実施された際に、変曲点Cを検出できた場合には、その変曲点Cとメモリに記録されている以前のサイクルの放電特性線の変曲点Cとを比較し、それらのdQ/dVの差からSiの劣化の程度を判定する。さらに、劣化判定部103は、メモリに記録されている放電特性線の電圧Vに対応する変曲点Cを検出できない場合には、Siの劣化の進行度を所定の閾値以上と判定して判定結果を放電電力制御部104に出力する。この場合、放電電力制御部104は、放電電力の抑制制御を解除する。
【0042】
図4は、車両制御装置100によるトルク制御処理、バッテリ10の放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、バッテリ10が充電器90に接続され、放電スイッチ70が操作されると開始される。
【0043】
まず、ステップS101において、充放電指令部101は、電圧センサ40によって検出されたバッテリ10の電圧が上記所定値V以上であるか否かを判定する。所定値Vは、dQ/dVの絶対値が最大となる時点でのバッテリ10の電圧Vよりも高い電圧に相当する。本ステップにおいて肯定判定がされるとステップS103に進み、本ステップにおいて否定判定がされるとステップS102に進む。
【0044】
ステップS102において、充放電指令部101は、充電器90に充電指令を出力する。充電器90は、充電指令が入力されるとバッテリ10の充電を実施する。ステップS102からステップS101に戻り、バッテリ10の電圧が所定値V以上に上昇するまでステップS101、S102が繰り返される。
【0045】
一方、ステップS103では、充放電指令部101が、充電器90に放電指令を出力する。充電器90は、放電指令が入力されるとバッテリ10の放電を実施する。次に、ステップS104において、バッテリ10の放電が実施されている間、dQ/dV算出部102は、電圧センサ40から出力されるバッテリ10の電圧Vと電流センサ50から出力されるバッテリ10の電流Aとに基づいて、dQ/dVを算出して劣化判定部103と放電電力制御部104とに出力する。放電電力制御部104は、dQ/dVの時系列データである放電特性線を充放電サイクルのサイクル数と共にメモリに記録する。
【0046】
次に、ステップS105において、放電電力制御部104は、放電が終了したか否かを判定する。本ステップにおいて否定判定がされた場合にはステップS104に戻り、本ステップにおいて肯定判定がされた場合にはステップS106に進む。ステップS106において、劣化判定部103は、ステップS104においてメモリに記憶された放電特性線から、dQ/dVの絶対値の最大値を抽出し、抽出した最大値が所定値以上であり、且つ、当該最大値に対応する電圧V以下の電圧範囲に上記変曲点Cが存在するかを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合には、ステップS107に進み、本ステップにおいて否定判定がされた場合には、ステップS111に進む。
【0047】
ステップS107において、劣化判定部103は、放電抑制指令を放電電力制御部104に出力する。また、劣化判定部103は、今回の充放電サイクルの放電特性線から検出した変曲点Cと、メモリに記録されている以前の充放電サイクルの放電特性線の変曲点Cとを比較し、それらのdQ/dVの差からSiの劣化の程度を判定する。ステップS107からステップS108に進む。
【0048】
ステップS108において、放電電力制御部104は、ステップS104においてメモリに記憶された放電特性線から、dQ/dVの絶対値の最大値に対応する電圧Vと、電圧V以下の電圧範囲に存在する変曲点Cに対応する電圧Vとを抽出し、抽出した電圧V、Vに基づき、上記(1)式から、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXを算出する。次に、ステップS109において、放電電力制御部104は、車両1の走行中、電圧センサ40から出力された電圧Vが、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXに含まれるか否かを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合にはステップS110に進み、本ステップにおいて否定判定がされた場合には、ステップS112に進む。
【0049】
ステップS110において、放電電力制御部104は、トルク抑制指令をトルク指令値演算部105に出力する。トルク指令値演算部105は、車両1の走行中、放電電力制御部104からトルク抑制指令が出力された場合に、アクセル開度−トルク指令値マップ106から読み出したトルク指令値に対して所定の補正値α(<1.0)を乗じ、補正したトルク指令値をインバータ20に出力する。ステップS110からステップS112に進む。
【0050】
一方、ステップS111において、劣化判定部103は、放電抑制制御を解除/禁止する放電抑制解除/禁止指令を放電電力制御部104に出力する。放電電力制御部104は、劣化判定部103から放電抑制解除/禁止指令が出力された場合、車両1の走行中、トルク抑制指令をトルク指令値演算部105に出力しない。このため、トルク指令値演算部105は、車両1の走行中、アクセル開度−トルク指令値マップ106から読み出したトルク指令値を補正することなくインバータ20に出力する。また、本ステップにおいて、劣化判定部103は、Siの劣化の進行度を判定する。ここで、本ステップにおいて判定されるSiの劣化の進行度は、ステップS107において判定されるSiの劣化の進行度よりも高くなる。ステップS111からステップS112に進む。
【0051】
ステップS112において、充放電指令部101は、充電器90に充電指令を出力する。次に、ステップS113において、充放電指令部101は、バッテリ10のSOCがユーザにより指定された値まで上昇したか否かを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合には処理を終了する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るバッテリ10の制御方法及び装置では、放電時のバッテリ10の単位時間当たりの電圧の変化量dVに対する、放電時のバッテリ10の単位時間当たりの残容量の変化量dQである放電特性値dQ/dVと、バッテリ10の電圧との関係を示す放電特性線を取得し、上記放電特性値dQ/dVの絶対値が最大になる電圧Vを抽出し、当該電圧V以下の電圧範囲において放電特性線の傾きの絶対値が減少から増大に転じる変曲点Cにおける電圧Vを抽出し、当該電圧Vに所定値Vを加算した電圧VMAX以下でのバッテリ10の使用を抑制する。即ち、放電に対するSiの寄与度が大きい電圧範囲でのバッテリ10の使用を抑制する。これにより、充放電に伴う負極のSiの劣化を抑制できるので、バッテリ10の容量を増大することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るバッテリ10の制御方法及び装置では、放電抑制電圧範囲の上限値VMAXが、放電特性値dQ/dVの絶対値が最大になる電圧V以下である。これにより、放電抑制電圧範囲を、放電に対するSiの寄与度が大きい電圧範囲に限定でき、バッテリ10の使用を制限する電圧範囲を、必要最小限の範囲に設定できる。
【0054】
また、本実施形態に係るバッテリ10の制御方法及び装置では、バッテリ10の電圧が放電電圧抑制範囲に含まれる場合にモータ30のトルクを抑制する。これにより、放電に対するSiの寄与度が大きい電圧範囲でのバッテリ10の使用を抑制でき、充放電に伴う負極のSiの劣化を抑制できる。
【0055】
ここで、Si負極の劣化度が顕著である場合には、バッテリ10の使用を抑制してSiの劣化を抑制する必要性は少ない。そこで、本実施形態に係るバッテリ10の制御方法及び装置では、上記変曲点Cの有無と、変曲点Cにおける放電特性値dQ/dVとの少なくとも一方に基づいて、Si負極の劣化度を判定し、Si負極の劣化度が閾値以上である場合に、バッテリ10の使用の抑制を解除又は禁止する。これにより、バッテリ10の使用の制限を、必要最小限に抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態に係るバッテリ10の制御装置は、上記変曲点Cの有無と、変曲点Cにおける放電特性値dQ/dVとの少なくとも一方に基づいて、Si負極の劣化度を判定する劣化判定部103を備える。これにより、Si負極の劣化度を車両のユーザやメンテナンスを行う作業者等に報知することができる。
【0057】
図5は、他の実施形態に係る車両制御装置200の機能ブロック図である。本実施形態の車両制御装置200が搭載される車両はハイブリッド自動車又はプラグインハイブリッド自動車である。なお、上述の実施形態の車両制御装置100と同様の構成には同一の符号を付し、重複した説明は省略して上述の説明を援用する。図5に示すように、車両制御装置200は、充放電指令部101と、dQ/dV算出部102と、劣化判定部103と、放電電力制御部204と、走行モード設定部205とを備えている。
【0058】
放電電力制御部204は、上述の実施形態の放電電力制御部104と同様に、劣化判定部103から放電抑制指令が出力された場合に、放電電圧抑制範囲(VMIN〜VMAX)を算出する。放電電力制御部204は、車両の走行中、電圧センサ40から出力された電圧Vが、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXに含まれる場合に、モータの駆動を禁止するモータ駆動禁止指令を走行モード設定部205に出力する。
【0059】
一方で、放電電力制御部204は、劣化判定部103から放電抑制制御を解除/禁止する指令が出力された場合に、車両1の走行中、モータ駆動禁止指令を走行モード設定部205に出力しない。
【0060】
走行モード設定部205が設定する走行モードには、エンジンとモータの両方で車両を駆動するエンジン/モータ走行モードと、エンジンのみで車両を駆動するエンジン走行モードと、モータのみで車両を駆動するモータ走行モードとの3種類があり、走行モード設定部205は、車両の走行状態やバッテリ10の充電状態に応じて走行モードを切換える。ここで、走行モード設定部205は、車両の走行中、放電電力制御部204からモータ駆動禁止指令が出力された場合、車両の走行状態にかかわらず、常に走行モードをエンジン走行モードに設定する。一方で、走行モード設定部205は、車両の走行中、放電電力制御部204からモータ駆動禁止指令が出力されなかった場合、車両の走行状態に応じて、走行モードを上記3種類の走行モードの何れかに設定する。
【0061】
図6は、車両制御装置200による走行モード設定処理、バッテリ10の放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、バッテリ10が充電器90に接続され、放電スイッチ70が操作されると開始される。
【0062】
まず、上述の実施形態におけるステップS101〜S109、S111と同様の処理が実行される。ステップS109において、放電電力制御部204は、車両1の走行中、電圧センサ40から出力された電圧Vが、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXに含まれるか否かを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合にはステップS210に進み、本ステップにおいて否定判定がされた場合には、ステップS112に進む。
【0063】
ステップS210において、放電電力制御部204は、モータ駆動禁止指令を走行モード設定部205に出力する。走行モード設定部205は、車両1の走行中、放電電力制御部204からモータ駆動禁止指令が出力された場合に、車両の走行状態にかかわらず、常に走行モードをエンジン走行モードに設定する。ステップS210からステップS111に進む。なお、モータ駆動禁止指令が出力された際に、エンジン/モータ走行モードを禁止することは必須ではなく、モータ走行モードのみを禁止してもよい。
【0064】
一方、ステップS111において、劣化判定部103は、放電抑制制御を解除/禁止する放電抑制解除/禁止指令を放電電力制御部204に出力する。放電電力制御部204は、劣化判定部103から放電抑制解除/禁止指令が出力された場合、車両1の走行中、モータ駆動禁止指令を走行モード設定部205に出力しない。このため、走行モード設定部205は、車両1の走行中、車両の走行状態に応じて、走行モードを上記3種類の走行モードの何れかに設定する。ステップS111からステップS112に進む。
【0065】
ステップS112において、充放電指令部101は、充電器90に充電指令を出力する。次に、ステップS113において、充放電指令部101は、バッテリ10のSOCがユーザにより指定された値まで上昇したか否かを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合には処理を終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係るバッテリ10の制御方法及び装置では、ハイブリッド自動車のモータの駆動電源であるバッテリ10の電圧が放電抑制電圧範囲に含まれる場合にエンジン走行モードに設定する。これにより、放電に対するSiの寄与度が大きい電圧範囲でのバッテリ10の使用を抑制でき、充放電に伴う負極のSiの劣化を抑制できる。
【0067】
図7は、他の実施形態に係る車両制御装置300の機能ブロック図である。図8は、本実施形態の車両制御装置300が搭載される車両のバッテリ10の充電状態を標示するインジケータ310を示す図である。なお、上述の実施形態の車両制御装置100、200と同様の構成には同一の符号を付し、重複した説明は省略して上述の説明を援用する。図7に示すように、車両制御装置300は、充放電指令部101と、dQ/dV算出部102と、劣化判定部103と、放電電力制御部304と、インジケータ制御部305とを備えている。
【0068】
図8に示すように、インジケータ310には、バッテリ10の充電状態を標示する表示部311と、表示部311の低残量領域に設けられた表示ランプ312とが設けられている。表示部311の低残量領域の充電残量は、放電電圧抑制範囲(VMIN〜VMAX)での充電残量に相当する。
【0069】
図7に戻り、放電電力制御部304は、上述の実施形態の放電電力制御部104と同様に、劣化判定部103から放電抑制指令が出力された場合に、放電電圧抑制範囲(VMIN〜VMAX)を算出する。放電電力制御部304は、電圧センサ40から出力された電圧Vが、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXに含まれる場合に、表示ランプ312の点灯指令をインジケータ制御部305に出力する。
【0070】
一方で、放電電力制御部304は、劣化判定部103から放電抑制制御を解除/禁止する指令が出力された場合に、表示ランプ312の点灯指令をインジケータ制御部305に出力しない。
【0071】
インジケータ制御部305は、放電電力制御部304から表示ランプ312の点灯指令が出力された場合、表示ランプ312を点灯させる。これにより、車両のユーザに対して、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXでのバッテリ10の使用を控えることが報知される。それに従って、車両のユーザは、バッテリ10の充電の頻度を上げることになる。一方で、インジケータ制御部305は、放電電力制御部304から表示ランプ312の点灯指令が出力されなかった場合には、表示ランプ312を点灯させない。
【0072】
図9は、車両制御装置300によるインジケータの表示制御処理、バッテリ10の放電抑制処理、及び、Si負極の劣化判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、バッテリ10が充電器90に接続され、放電スイッチ70が操作されると開始される。
【0073】
まず、上述の実施形態におけるステップS101〜S109、S111と同様の処理が実行される。ステップS109において、放電電力制御部304は、車両1の走行中、電圧センサ40から出力された電圧Vが、放電抑制電圧範囲VMIN〜VMAXに含まれるか否かを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合にはステップS310に進み、本ステップにおいて否定判定がされた場合には、ステップS112に進む。
【0074】
ステップS310において、放電電力制御部304は、表示ランプ312の点灯指令をインジケータ制御部305に出力する。インジケータ制御部305は、放電電力制御部304から表示ランプ312の点灯指令が出力されると、表示ランプ312を点灯させる。ステップS310からステップS112に進む。
【0075】
ステップS112において、充放電指令部101は、充電器90に充電指令を出力する。次に、ステップS113において、充放電指令部101は、バッテリ10のSOCが指定値まで上昇したか否かを判定する。本ステップにおいて肯定判定がされた場合には処理を終了する。
【0076】
以上説明したように、報知装置としての表示ランプ312を備える車両の駆動電源であるバッテリ10の電圧が放電抑制電圧範囲に含まれる場合に表示ランプ312を点灯させる。これにより、車両のユーザに、放電に対するSiの寄与度が大きい電圧範囲でのバッテリ10の使用を控えさせることができ、充放電に伴う負極のSiの劣化を抑制できる。
【0077】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、車両に搭載される二次電池の制御方法及び装置を例示挙げて本発明を説明したが、車両以外の機器に搭載される二次電池にも本発明を適用できる。また、上述の各実施形態での制御を組み合わせてもよい。例えば、ハイブリッド自動車において、バッテリ10の電圧が放電抑制電圧範囲に含まれる場合に、エンジン/モータ走行モードに設定すると共に、モータのトルクを抑制してもよい。また、バッテリ10の電圧が放電抑制電圧範囲に含まれる場合に、モータのトルクを抑制したりエンジン走行モードに設定したりすると共に、表示ランプ312を点灯させてもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、放電抑制電圧範囲の上限値VMAXを放電特性値dQ/dVの絶対値が最大になる電圧V以下に設定したが、必須ではなく、上限値VMAXを電圧Vを超える値に設定してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 バッテリ
30 モータ
100 車両制御装置
103 劣化判定部
200 車両制御装置
300 車両制御装置
310 インジケータ
312 表示ランプ
電圧(第2の電圧)
所定値
電圧(第1の電圧)
MAX 電圧(第3の電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9