特許第6864522号(P6864522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864522
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ペレット
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/40 20060101AFI20210419BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20210419BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20210419BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210419BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   A01N37/40
   A01N25/10
   A01P1/00
   A01P3/00
   C08K5/101
   C08L101/00
   C08J3/22CER
   C08J3/22CEZ
   C08K7/16
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-72384(P2017-72384)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172347(P2018-172347A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】小松 利豪
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】土谷 美緒
(72)【発明者】
【氏名】丹藤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊文
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−265677(JP,A)
【文献】 特開平05−271016(JP,A)
【文献】 特開平04−029902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/40
A01N 25/10
A01P 1/00
A01P 3/00
C08J 3/22
C08K 5/101
C08K 7/16
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂および熱可塑性樹脂100質量部に対して式(1)で表される化合物を5〜30質量部含有し、該化合物が熱可塑性樹脂中に粒子径μm以下の粒子として分散したペレット。
【化1】
(Rは水素原子またはアルカリ金属、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基を示す。)
【請求項2】
熱可塑性樹脂がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリエステルおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のペレット。
【請求項3】
熱可塑性樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンである、請求項1または2に記載のペレット。
【請求項4】
式(1)で表される化合物が4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のペレット。
【請求項5】
式(1)で表される化合物が4−ヒドロキシ安息香酸ブチルまたは4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルである、請求項1〜4のいずれかに記載のペレット。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のペレットから構成される成形品、中空成形体、フィルム、シートまたは繊維製品。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載のペレットのマスターバッチとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラベン類を含有するペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性を備えた樹脂からなる加工製品が増加しており、特に、抗菌機能を備えた樹脂からなる抗菌加工製品が一般家庭においても広く使用されている。樹脂に抗菌機能を付加させる手段としては、樹脂表面に抗菌剤含有の塗料を塗付する方法や、樹脂中に抗菌剤を混在させる方法等が知られている。
【0003】
このような用途に用いられる抗菌剤としては、抗菌機能が高く安全性の高い銀系抗菌剤や亜鉛系抗菌剤等の無機系抗菌剤が使用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかし、無機系抗菌剤を樹脂に混在させる場合、抗菌剤は無機物固体であるため、熱可塑性の有機物の樹脂中では分散性が劣る。そこで、従来の樹脂中への混練手段としては、製品素材の樹脂と同一の樹脂に、一旦抗菌剤を高濃度で混在させ、粒状に形成した抗菌マスターバッチを形成し、製品成形時の樹脂素材中に前記の抗菌マスターバッチを所定量混合する方法が提案されている。しかしながら、抗菌マスターバッチを用いた場合においても、無機系抗菌剤の分散性が必ずしも十分であるといえず、また、光による無機系抗菌剤の変色や白濁、あるいは樹脂自体の物性の低下を招く等の問題があった。
【0005】
一方、有機系抗菌剤は、無機系抗菌剤と比較して種々の樹脂と相溶性が高いものが多く、樹脂との混練や均一な分散が容易であるといった利点があり、例えば、天然由来の抗菌剤を樹脂に含有させる方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、有機系抗菌剤は一般的に揮発性が高く、樹脂との溶融混練が困難であったり、樹脂と混在させることで抗菌性が著しく低下してしまうといった問題があった。また、人体への安全性が十分に確認されていないものも多く、アレルギー等の問題を引き起こす原因にも成り得ていた。そのため、有機系抗菌剤を樹脂中に使用した製品は無機系抗菌剤を樹脂中に使用した製品と比較して少なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−047884
【特許文献2】特開2015−105252
【特許文献3】特開2013−237653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全性および抗菌性などの機能性に優れ、機能剤が均一に分散されたペレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、機能性を有するペレットについて鋭意検討した結果、粒子径5μm以下のパラベン(パラヒドロキシ安息香酸エステル)類の粒子を熱可塑性樹脂に分散させることにより、安全性および抗菌性などの機能性に優れ、機能剤が均一に分散されたペレットが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂および式(1)で表される化合物を含有し、機能剤としての式(1)で表される化合物が熱可塑性樹脂中に粒子径5μm以下の粒子として分散したペレットを提供する。
【化1】
(Rは水素原子またはアルカリ金属、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のペレット(以下、抗菌ペレットと呼ぶ場合もある)は安全性および抗菌性などの機能性に優れるため、人体と接触する製品にも使用することができる。また、本発明のペレットは機能剤が均一に分散されているため、本発明のペレットからなる成形品、中空成形体、フィルム、シートおよび繊維製品等は、製品の部位による機能性の偏りが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得た樹脂成形体の表面の走査電子顕微鏡写真である。
図2】実施例5で得た樹脂成形体の表面の走査電子顕微鏡写真である。
図3】比較例3で得た樹脂成形体の表面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、ポリエステルおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上の樹脂またはその共重合樹脂が挙げられ、中でも式(1)で表される化合物との相溶性に優れる点で、ポリプロピレンまたはポリエチレンが好ましい。
【0013】
式(1)で表される化合物において、Rは、好ましくは水素原子、ナトリウムまたはカリウムであり、より好ましくは水素原子である。
【0014】
式(1)で表される化合物において、Rは、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはベンジル基であり、さらに好ましくはブチル基またはヘキシル基である。
【0015】
本発明に使用する式(1)で表される化合物の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群から選択される1種以上が挙げられ、抗菌性が高く、難昇華性であることから4−ヒドロキシ安息香酸ブチルおよび4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルが好ましい。
【0016】
式(1)で表される化合物を得る方法は特に限定されないが、市販されているものでもよく、あるいは、触媒の存在下、4−ヒドロキシ安息香酸と炭素原子数1〜10の脂肪族アルコールまたはアリールアルコールとの反応によって得られたものを用いてもよい。
【0017】
本発明のペレットは、熱可塑性樹脂100質量部に対して式(1)で表される化合物を0.5〜30質量部含有するのが好ましく、1〜20質量部含有するのがより好ましく、3〜15質量部含有するのがさらに好ましく、5〜15質量部含有するのが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂100質量部に対して式(1)で表される化合物の含有量が0.5質量部未満であると、抗菌性などの機能性が発揮されず、およびペレットのマスターバッチとしての使用が困難になる傾向があり、30質量部を超えると、樹脂としての物性に問題が生じ、および式(1)で表される化合物がペレット中に沈殿又は凝集するおそれがある。
【0018】
本発明のペレットは抗菌機能の他、抗カビ、防藻およびダニ等に対する防虫機能を有する。
【0019】
本発明のペレットは、熱可塑性樹脂および式(1)で表される化合物以外に、添加剤を含有していてもよく、添加剤としては、着色剤、難燃剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤(紫外線吸収剤等)、帯電防止剤、分散剤、離型剤等の各種添加剤、繊維状強化剤等の強化剤、および粉末増量剤等の充填剤からなる群から選択される一種以上が挙げられる。ただし、当該化合物の担体となるような無機物やペレット化の際に溶融しない有機物は、化合物の微粒子化による均一分散性の点で担持させないほうがより効果的である。
【0020】
本発明のペレットの形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、角柱状、球状、円柱状等とすることができる。ペレットの大きさとしては、角柱状の場合は最大辺の長さが1〜20mmであることが好ましく、球状の場合は粒子径が1〜20mmであることが好ましく、円柱状の場合は直径が1.5〜5mm、高さが1.5〜5mmであることが好ましい。ペレットの大きさが上記範囲内にあることで、取扱性が向上し、ペレットの包装作業等が容易になる。また、上記ペレットは粒子径が0.1〜1mmである微粒子からなるパウダーとして用いることもできる。パウダーは、ペレットを公知の微粉砕機を用いて得ることができる。
【0021】
本発明のペレットの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、式(1)で表される化合物と熱可塑性樹脂とを含有させた樹脂組成物(以下、樹脂組成物1ともいう)を押出成形によりシート状に成形し、この得られたシート状成形物をカッター等により適度な大きさに切断してペレットに加工する方法等を用いることができる。
【0022】
本発明のペレットを構成する樹脂組成物1は、熱可塑性樹脂および式(1)で表される化合物を混合することによって製造することができる。混合は、熱可塑性樹脂と式(1)で表される化合物を溶融混合させることによって行ってもよく、式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させた状態で、加熱溶融させた樹脂と混合し、溶融樹脂から溶媒を気体の状態で除去することによって行ってもよい。
【0023】
熱可塑性樹脂と式(1)で表される化合物を溶融混合する場合、例えばタンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー又はスーパーミキサーのような混合機で予め均一に混合した後、単軸押出機や多軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをカッター等で切断して造粒する方法や、ニーダーやバンバリーミキサー等で溶融混練した後に押出機を用いて造粒する方法等が挙げられる。
【0024】
加熱条件は、用いる熱可塑性樹脂や式(1)で表される化合物、添加剤の種類や配合量、或いは用いる混合機の条件等によっても相違するので、一概には規定できないが、用いる熱可塑性樹脂の結晶融解温度以上、熱可塑性樹脂および当該化合物の劣化温度未満の温度で1〜600秒加熱されることが望ましい。
【0025】
式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させた状態で、加熱溶融させた樹脂と混合する場合、溶媒としては、式(1)で表される化合物を溶解させるものであれば特に限定されないが、有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジフェニルエーテル、ジメチルスルホキシド、N,N―ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
【0026】
式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させる温度としては特に限定されないが、例えば10〜80℃であってよい。また、式(1)で表される化合物は、溶媒100質量部に対し、例えば10〜200質量部の範囲の量で溶解させることができる。
【0027】
混合された式(1)で表される化合物は、熱可塑性樹脂中に粒子径が5μm以下の粒子として分散した状態、すなわち、粒子径が5μmを超える粒子がない状態である。熱可塑性樹脂中の式(1)で表される化合物の粒子径が5μmを超えると、十分な抗菌性などの機能性が得られ難くなる傾向がある。熱可塑性樹脂中の式(1)で表される化合物は、熱可塑性樹脂中において好ましくは粒子径が2.5μm以下の粒子として分散した状態、より好ましくは粒子径が1μm以下の粒子として分散した状態、さらに好ましくは粒子径が0.1μm以下の粒子として分散した状態である。粒子の状態は、走査電子顕微鏡(SEM)で観察して確認することができる。粒子径の測定は、走査電子顕微鏡像において、一つの粒子について最大寸法となる2点間距離を測定する画像解析法により行った。ペレット中の式(1)で表される化合物の粒子径は、成形品等の製造過程を経ても変化し難い傾向がある。したがって、ペレット中における式(1)で表される化合物の粒子径と、ペレットを用いて製造した成形品等における式(1)で表される化合物の粒子径とは、ほぼ同一となる。
【0028】
本発明のペレットは式(1)で表される化合物が均一に分散されているため、当該化合物の有する抗菌性などの機能を均一に具備するので、成形品、中空成形体、フィルム、シートおよび繊維製品等の材料として好適に用いられる。尚、本発明における抗菌活性値はJIS Z 2801 : 2010に準拠して測定したものである。
【0029】
本発明のペレットは、ベース樹脂と混合することなくそのまま使用することにより、またはベース樹脂と混合してマスターバッチとして使用することにより、成形品、中空成形体、フィルム、シートおよび繊維製品等へ成形することができる。本発明のペレットはマスターバッチとして使用することが好ましい。本発明において、マスターバッチとは、式(1)で表される化合物を熱可塑性樹脂100質量部に対して1質量部以上の高濃度に含有したペレットのことをいい、式(1)で表される化合物を含有しないベース樹脂に混合され、ベース樹脂と共に成形される。マスターバッチを用いると、式(1)で表される化合物を直接ベース樹脂に添加して成形することと比較して、材料の取り扱い性が容易で秤量精度も向上する。また、マスターバッチを用いると、汎用の成形機を用いて、式(1)で表される化合物の微粒子を含有する成形体を製造できるという利点も有する。
【0030】
ベース樹脂の例としては、ペレット(すなわちマスターバッチ)に用いる熱可塑性樹脂として上述したものが挙げられる。ベース樹脂としては、マスターバッチに含有される熱可塑性樹脂と同一のものであってもよく、異なったものでもよく、とりわけマスターバッチに含有される熱可塑性樹脂と相溶性の高いものが好ましい。
【0031】
マスターバッチのベース樹脂への配合量は、マスターバッチ中の式(1)で表される化合物およびその量によって適宜変更することが可能であり、マスターバッチを樹脂に例えば2倍〜40倍に希釈して混合するのが望ましい。上記範囲よりもマスターバッチ量が少ない場合には、成形体に十分な抗菌性能を付与することができず、一方上記範囲よりもマスターバッチ量が多い場合には、成形性に劣るおそれがある。
【0032】
マスターバッチをベース樹脂に配合してなる樹脂組成物(以下、樹脂組成物2ともいう)またはペレットを、二本ロール法、射出成形、押出成形、圧縮成形等の従来公知の溶融成形に付することにより、最終成形品の用途に応じた形状、例えば成形品、中空成形体、フィルム、シートおよび繊維製品等の抗菌性成形体を得ることができる。すなわち、本発明の成形品、中空成形体、フィルム、シートおよび繊維製品は、ペレットから直接構成されたものであってもよく、マスターバッチとしてのペレットとベース樹脂とから構成されたものであってもよい。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕熱可塑性樹脂および式(1)で表される化合物を含有し、該化合物が熱可塑性樹脂中に粒子径5μm以下の粒子として分散したペレット。
[化1]
(Rは水素原子またはアルカリ金属、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基を示す。)
〔2〕熱可塑性樹脂がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリエステルおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上である、〔1〕に記載のペレット。
〔3〕熱可塑性樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンである、〔1〕または〔2〕に記載のペレット。
〔4〕式(1)で表される化合物が4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群から選択される1種以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のペレット。
〔5〕式(1)で表される化合物が4−ヒドロキシ安息香酸ブチルまたは4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルである、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のペレット。
〔6〕熱可塑性樹脂100質量部に対して式(1)で表される化合物を0.5〜30質量部含有する、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のペレット。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のペレットから構成される成形品、中空成形体、フィルム、シートまたは繊維製品。
〔8〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のペレットのマスターバッチとしての使用。
【0033】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
実施例および比較例に用いた抗菌剤A〜D、ならびに各測定方法を以下に示す。
≪抗菌剤A≫
4−ヒドロキシ安息香酸ブチルエステル(4−ヒドロキシ安息香酸とブチルアルコールとを触媒の存在下で反応させることにより得た)
≪抗菌剤B≫
4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルエステル(4−ヒドロキシ安息香酸とヘキシルアルコールとを触媒の存在下で反応させることにより得た)
≪抗菌剤C≫
ゼオライト銀(富士ケミカル社製、商品名:バクテライト、品番:MP−102SVC13)
≪抗菌剤D≫
ベヘン酸銀(東京化成工業社製)
【0035】
(測定方法)
(1)抗菌性試験
試験方法:JIS Z 2801 : 2010
試験菌株:大腸菌 Escherichia coli NBRC 3972
試験菌株:黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus NBRC 12732
【0036】
実施例および比較例において得られた抗菌剤を含む樹脂成形体表面に、大腸菌および黄色ブドウ球菌をそれぞれ含む菌液を滴下し、その上からポリエチレン製フィルムを密着させ、温度35℃、湿度90%の条件下で24時間培養した。培養後、ポリエチレン製フィルムおよび試験片に付着している菌体をSCDLP培地で洗いだした液(VmL)を1mL取り、希釈(D倍希釈)した液1mLをシャーレに移して、SPC培地約20mLを加え、混合した。培地が固まった後、温度35℃、湿度90%の条件下で40〜48時間培養した後、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数をそれぞれカウントした。評価の基準は、ペレットを含まないポリプロピレン製樹脂成形体(以下、無加工樹脂成形体ともいう)を用いた。試験はそれぞれ3回行い、平均値を算出した。
【0037】
抗菌試験の評価は以下の方法により算出した。
N=(C×D×V)/ A
N:生菌数(試験片1cmあたり)
C:集落数(採用した2枚のシャーレの集落数平均値)
D:希釈倍数(採用したシャーレに分注した希釈液の希釈倍率)
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(mL)
A:被覆フィルムの表面積(cm
ただし、Cが<1の場合はCを1として生菌数を算出する。
たとえば、V=10mL、A=16cm、D=1の場合、N<0.63と表示する。
R=(U−U)−(A−U)=U−A
R :抗菌活性値
:無加工樹脂成形体の接種直後の生菌数の対数値の平均値
:無加工樹脂成形体の24時間後の生菌数の対数値の平均値
:実施例および比較例において得られた抗菌剤を含む樹脂成形体の24時間後の生菌数の対数値の平均値
抗菌活性評価:抗菌活性値Rが3.0以上を◎、2.0以上3.0未満を○、1.5以上2.0未満を△、1.5未満を×とした。
【0038】
(2)抗菌剤粒子の観察
樹脂成形体の表面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率を適宜設定して観察した。次の基準で判定を行った。
○:粒子径1μmを超える粒子が観測されなかった。
△:粒子径1μm超え5μm以下の粒子が観測された。
×:粒子径5μmを超える粒子が観測された。
【0039】
(3)着色性の評価
樹脂成形体を分光測色計(形式CM−3600d(KONICA MINOLTA製)、色彩ソフトウェアCM−S100W Spectra Magic NXを用い、測定方法:反射、視野:10°、主光源:C光源、ジメオトリ:d/8、正反射光処理:SCI+SCE、測定径:LAV(25.4mm)、UV条件:100%の条件でb*を測定し、次の基準で判定を行った。
◎:b*が2未満
○:b*が2以上20未満
△:b*が20以上40未満
×:b*が40以上
【0040】
[実施例1]
(抗菌ペレットの作製)
抗菌剤A100gをメタノール150gに50℃にて溶解した。ポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、J105G)100質量部に対して、抗菌剤Aが11質量部配合されることとなるように、メタノールに溶解した抗菌剤Aと、200℃の温度で溶融したポリプロピレン樹脂とを二軸押出機(株式会社池貝社製、PCM−30)に供給し、溶融混練し、メタノールを気体の状態で除去することにより得たものをペレット化し、抗菌ペレットを得た。
【0041】
(樹脂成形体の作製)
得られた抗菌ペレットとポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、J105G)を表1に記載の比率にて混合し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH−1000−110)を用いて射出成形し、樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用い10000倍に拡大して観察したところ、粒子は観察されなかった。走査電子顕微鏡写真を図1に示す。また、得られた樹脂成形体について、抗菌性試験および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2〜4]
樹脂成形体の抗菌ペレットとポリプロピレン樹脂との混合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌ペレットおよび樹脂成形体を得た。得られた各樹脂成形体について、抗菌性試験、走査電子顕微鏡にて表面の観察および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例5〜8]
抗菌剤の種類および樹脂成形体の抗菌ペレットとポリプロピレン樹脂との混合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌ペレットおよび樹脂成形体を得た。得られた各樹脂成形体の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用い10000倍に拡大して観察したところ、粒子は観察されなかった。実施例5の走査電子顕微鏡写真を図2に示す。また、得られた各樹脂成形体について、抗菌性試験および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例9〜10]
【0044】
(抗菌ペレットの作製)
抗菌剤Aの比率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌ペレットを得た。
【0045】
(樹脂成形体の作製)
得られた抗菌ペレットの比率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。得られた各樹脂成形体の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用い10000倍に拡大して観察したところ、粒子は観察されなかった。また、得られた各樹脂成形体について、抗菌性試験および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例11](参考例)
(抗菌ペレットの作製)
抗菌剤Aの比率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌ペレットを得た。

【0047】
(樹脂成形体の作製)
得られた抗菌ペレットを射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH−1000−110)を用いて射出成形し、樹脂成形体を得た。得られた各樹脂成形体の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用い10000倍に拡大して観察したところ、粒子は観察されなかった。また、得られた樹脂成形体について、抗菌性試験および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1〜2]
表1に示す抗菌剤および割合でポリプロピレン樹脂と各抗菌剤とを二軸押出機(株式会社池貝社製、PCM−30)に供給し、溶融混練して抗菌ペレットを得た。得られた抗菌ペレットを用いて実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。得られた各樹脂組成物の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用い3000倍に拡大して観察したところ、粒子径が5μmを超える粒子が観察された。また、得られた各樹脂成形体について、抗菌性試験および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例3]
(樹脂成形体の作製)
抗菌剤(A)とポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、J105G)を表1に記載の比率にて混合し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH−1000−110)を用いて射出成形し、樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用い3000倍に拡大して観察したところ、粒子径5μmを超える粒子が観察された。走査電子顕微鏡写真を図3に示す。また、得られた樹脂成形体について、抗菌性試験および着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
図1
図2
図3