特許第6864523号(P6864523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6864523コアシェル型粒子ならびにその用途および製造方法
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  • 特許6864523-コアシェル型粒子ならびにその用途および製造方法 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864523
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】コアシェル型粒子ならびにその用途および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/409 20210101AFI20210419BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210419BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20210419BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20210419BHJP
   C08F 220/08 20060101ALI20210419BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20210419BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20210419BHJP
   C08F 214/28 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 127/16 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M4/13
   C08L27/16
   C08F214/22
   C08F220/08
   C08F216/14
   C08F220/04
   C08F214/28
   C09D5/00 Z
   C09D127/16
   C09D133/02
   H01M2/16 M
   C09D7/40
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-72852(P2017-72852)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174105(P2018-174105A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳余子
(72)【発明者】
【氏名】長澤 善幸
(72)【発明者】
【氏名】及川 彩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 夢乃
(72)【発明者】
【氏名】小林 正太
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−500791(JP,A)
【文献】 特開2003−231722(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/080259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/409
C08F 214/22
C08F 214/28
C08F 216/14
C08F 220/04
C08F 220/08
C08L 27/16
C09D 5/00
C09D 7/40
C09D 127/16
C09D 133/02
H01M 4/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、当該コア部の周囲を取り囲んでいるシェル部と、を含むコアシェル型粒子であって、
当該コア部は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第1の重合体を含み、
当該シェル部は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第2の重合体を含み、
当該第2の重合体は、下記式(1)で表される化合物に由来する構成単位、下記式(2)で表される化合物に由来する構成単位および下記式(3)で表される化合物に由来する構成単位の少なくとも何れかをさらに含み、
当該第1の重合体の融点は、当該第2の重合体の融点よりも高いことを特徴とするコアシェル型粒子。
【化1】
(式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、主鎖が原子数1〜19で構成される分子量472以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化2】
(式(2)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは主鎖が原子数1〜19で構成される分子量484以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化3】
(式(3)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、R10は、水素原子、または少なくとも一つのヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の炭化水素部分である。)
【請求項2】
上記式(1)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物である、請求項1に記載のコアシェル型粒子。
【化4】
(式(4)において、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、主鎖が原子数1〜18で構成される分子量456以下の原子団である。)
【請求項3】
上記コア部に含まれる上記第1の重合体および/または上記シェル部に含まれる上記第2の重合体には、ハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位がさらに含まれている、請求項1または2に記載のコアシェル型粒子。
【請求項4】
上記コアシェル型粒子の融点が145℃以上である、請求項1から3の何れか1項に記載のコアシェル型粒子。
【請求項5】
上記第1の重合体の構成単位は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位のみである、請求項1から4の何れか1項に記載のコアシェル型粒子。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のコアシェル型粒子および分散媒を含む、分散液。
【請求項7】
二次電池における負極層と正極層との間に設けられるセパレータの少なくとも一方の面に設けられる多孔質のフッ素樹脂層の形成のためのコーティング組成物であって、
請求項1から5の何れか1項に記載のコアシェル型粒子を含む、コーティング組成物。
【請求項8】
増粘剤をさらに含む、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
フィラーをさらに含む、請求項7または8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
請求項7から9の何れか1項に記載のコーティング組成物が少なくとも一方の面に塗布されている、セパレータ。
【請求項11】
請求項7から9の何れか1項に記載のコーティング組成物から形成されたフッ素樹脂層が設けられている二次電池であって、
上記フッ素樹脂層は、上記負極層と上記正極層と上記セパレータとを熱プレスすることによって形成されてなる上記第2の重合体を含む層を有しており、
上記第2の重合体を含む層には、上記第1の重合体を含む粒子が含まれている、二次電池。
【請求項12】
二次電池における負極層と正極層との間に設けられるセパレータに接するように、当該負極層および当該正極層の少なくとも何れかの少なくとも一方の面に設けられるフッ素樹脂層の形成のためのコーティング組成物であって、
請求項1から5の何れか1項に記載のコアシェル型粒子を含む、コーティング組成物。
【請求項13】
コア部と、当該コア部の周囲を取り囲んでいるシェル部と、を含むコアシェル型粒子の製造方法であって、
フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第1の重合体を含むコア部を形成するコア部形成工程と、
フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第2の重合体を含むシェル部を形成するシェル部形成工程と、を含み、
当該第1の重合体の融点は、当該第2の重合体の融点よりも高く、
当該シェル部形成工程では、当該コア部形成工程により形成されたコア部を含む分散液において、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物および下記式(3)で表される化合物の少なくとも何れかと、フッ化ビニリデンとを含む、当該第2の重合体を構成するための単量体を重合反応させることにより当該コア部の周囲に当該シェル部を形成する、コアシェル型粒子の製造方法。
【化5】
(式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、主鎖が原子数1〜19で構成される分子量472以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化6】
(式(2)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは主鎖が原子数1〜19で構成される分子量484以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化7】
(式(3)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、R10は、水素原子、または少なくとも一つのヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の炭化水素部分である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型粒子、分散液、コーティング組成物、セパレータ、二次電池およびコアシェル型粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発展はめざましく、小型携帯機器の高機能化が進んでいる。そのため、これらに使用される電源には小型化および軽量化、すなわち高エネルギー密度化が求められている。高いエネルギー密度を有する電池として、リチウムイオン二次電池等に代表される非水電解質二次電池が、広く使用されている。
【0003】
また、非水電解質二次電池は、地球環境問題および省エネルギーの観点から、二次電池とエンジンとを組み合わせたハイブリッド自動車、および二次電池を電源にした電気自動車などにも利用されており、その用途が拡大している。
【0004】
非水電解質二次電池の電極(正極および負極)の間にはセパレータが設けられている。電極とセパレータとの間に隙間が形成されると、サイクル寿命を悪化させることがある。そのため、電極およびセパレータ等の接着部の接着性を向上させることが求められている。
【0005】
そこで、電極との接着性を向上させたセパレータが開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、多孔質基材の少なくとも一方の面にポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂を含む所定量の微粒子の集合体層である接着層を設けることによって、イオン透過性およびハンドリング性に優れ、電極との接着性を向上させた、非水系二次電池用セパレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/073503号(2013年5月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の非水系二次電池用セパレータでは、電池の製造工程において熱プレスをする際に、PVDF系樹脂を含む微粒子が溶融してつぶれてしまい、セパレータを構成する多孔質基材の表面の孔が塞がれてしまう。その結果、セパレータにおけるイオン透過性が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、電極に対する高い接着性を有しつつ、熱プレスの工程を経てもセパレータの表面の孔を塞ぐことが低減された接着層を与えるフッ化ビニリデン粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコアシェル型粒子は、上記課題を解決するために、コア部と、当該コア部の周囲を取り囲んでいるシェル部と、を含み、当該コア部は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第1の重合体を含み、当該シェル部は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第2の重合体を含み、当該第2の重合体は、下記式(1)で表される化合物に由来する構成単位、下記式(2)で表される化合物に由来する構成単位および下記式(3)で表される化合物に由来する構成単位の少なくとも何れかをさらに含む。
【化1】
(式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、主鎖が原子数1〜19で構成される分子量472以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化2】
(式(2)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは主鎖が原子数1〜19で構成される分子量484以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化3】
(式(3)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、R10は、水素原子、または少なくとも一つのヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の炭化水素部分である。)
【0010】
また、本発明に係るコアシェル型粒子では、上記式(1)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】
(式(4)において、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、主鎖が原子数1〜18で構成される分子量456以下の原子団である。)
【0011】
また、本発明に係るコアシェル型粒子では、上記コア部に含まれる上記第1の重合体および/または上記シェル部に含まれる上記第2の重合体には、ハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位がさらに含まれていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るコアシェル型粒子では、上記コアシェル型粒子の融点が145℃以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るコアシェル型粒子では、上記第1の重合体の構成単位は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位のみであってもよい。
【0014】
また、本発明に係るコアシェル型粒子および分散媒を含む分散液も本発明に含まれる。
【0015】
また、二次電池における負極層と正極層との間に設けられるセパレータの少なくとも一方の面に設けられる多孔質のフッ素樹脂層の形成のためのコーティング組成物であって、本発明に係るコアシェル型粒子を含むコーティング組成物も本発明に含まれる。
【0016】
また、本発明に係るコーティング組成物は、増粘剤をさらに含んでいてもよい。
【0017】
また、本発明に係るコーティング組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。
【0018】
また、本発明に係るコーティング組成物が少なくとも一方の面に塗布されているセパレータも本発明に含まれる。
【0019】
また、本発明に係るコーティング組成物から形成されたフッ素樹脂層が設けられている二次電池であって、上記フッ素樹脂層は、上記負極層と上記正極層と上記セパレータとを熱プレスすることによって形成されてなる上記第2の重合体を含む層を有しており、上記第2の重合体を含む層には、上記第1の重合体を含む粒子が含まれている二次電池も本発明に含まれる。
【0020】
また、二次電池における負極層と正極層との間に設けられるセパレータに接するように、当該負極層および当該正極層の少なくとも何れかの少なくとも一方の面に設けられるフッ素樹脂層の形成のためのコーティング組成物であって、本発明に係るコアシェル型粒子を含むコーティング組成物も本発明に含まれる。
【0021】
本発明に係るコアシェル型粒子の製造方法は、上記課題を解決するために、コア部と、当該コア部の周囲を取り囲んでいるシェル部と、を含むコアシェル型粒子の製造方法であって、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第1の重合体を含むコア部を形成するコア部形成工程と、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第2の重合体を含むシェル部を形成するシェル部形成工程と、を含み、当該シェル部形成工程では、当該コア部形成工程により形成されたコア部を含む分散液において、上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物および上記式(3)で表される化合物の少なくとも何れかと、フッ化ビニリデンとを含む、当該第2の重合体を構成するための単量体を重合反応させることにより当該コア部の周囲に当該シェル部を形成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電極に対する高い接着性を有しつつ、熱プレスの工程を経てもセパレータの表面の孔を塞ぐことが低減された接着層を与えるフッ化ビニリデン粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例および比較例のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るコアシェル型粒子、分散液、コーティング組成物、セパレータおよび二次電池ならびにコアシェル型粒子の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
【0025】
〔コアシェル型粒子〕
本実施形態において「コアシェル型粒子」とは、コア部と、コア部の周囲を取り囲んでいるシェル部とを含んでいる粒子を指す。
【0026】
(コア部)
コア部は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第1の重合体を含んでおり、コア部は、第1の重合体を含むフッ化ビニリデン粒子である。本明細書において「主構成単位」とは、重合体を構成する構成単位のうち、最も多くの割合(モル%)を占める構成単位を指す。また、本明細書において「フッ化ビニリデン粒子」とは、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする重合体の粒子を指し、当該重合体には、フッ化ビニリデンの単独重合体、およびフッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体が包含される。
【0027】
第1の重合体における、フッ化ビニリデンに由来する構成単位の割合は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。また、第1の重合体は、一例において、フッ化ビニリデンに由来する構成単位のみで構成されていることが特に好ましい。フッ化ビニリデンに由来する構成単位を98モル%以上とすることで、電解液存在下における第1の重合体の溶融温度が、後述する熱プレス工程の通常行われる温度よりも高くなる。その結果、本実施形態に係るコアシェル型粒子では、熱プレス工程においてコア部がつぶされる(溶融する)ことが低減される。ここで「電解液存在下における第1の重合体の溶融温度」は、電解液の組成等にもよるが、例えば第1の重合体の融点より60〜70℃程度低い温度となり得る。
【0028】
第1の重合体は、第1の重合体を構成する他の構成単位として、フッ化ビニリデン以外の化合物に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。フッ化ビニリデン以外の化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルビニル化合物、炭化水素系単量体、ジメタクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステル、ジアクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステルおよびポリビニルベンゼン等が挙げられる。ハロゲン化アルキルビニル化合物としては、例えば、フッ化アルキルビニル化合物が挙げられ、具体的には、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレンおよびフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられ、なかでもヘキサフルオロプロピレンが好ましい。炭化水素系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンおよびスチレン等が挙げられる。
【0029】
第1の重合体を構成する他の構成単位としてフッ化ビニリデン以外の化合物に由来する構成単位を含む場合、フッ化ビニリデン以外の化合物に由来する構成単位の割合は、耐酸化性および結晶性が損なわれる虞を低減する観点から、例えば、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。ハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位の含有量が2モル%以下である場合には、電池の製造工程における熱プレス時にコアシェル粒子が溶融してつぶれてしまう可能性をより一層低減することができる。
【0030】
また、コア部は、第1の重合体以外の化合物をさらに含んでいてもよい。第1の重合体以外の化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルビニル化合物、炭化水素系単量体、ジメタクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステル、ジアクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステルおよびポリビニルベンゼンおよび架橋剤等が挙げられる。ハロゲン化アルキルビニル化合物としては、例えば、フッ化アルキルビニル化合物が挙げられ、具体的には、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレンおよびフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。炭化水素系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンおよびスチレン等が挙げられる。
【0031】
また、第1の重合体の融点は、イオン透過性の観点から、150℃以上であることが好ましく、155℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることがさらに好ましい。本実施形態に係る第1の重合体の融点の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0032】
また、第1の重合体の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上1μm以下である。本実施形態に係る第1の重合体の平均粒子径の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0033】
(シェル部)
シェル部は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を主構成単位とする第2の重合体を含んでいる。第2の重合体としては、第1の重合体とは異なる重合体が用いられる。第2の重合体は、下記式(1)で表される化合物に由来する構成単位、下記式(2)で表される化合物に由来する構成単位および下記式(3)で表される化合物に由来する構成単位の少なくとも何れかをさらに含んでいる。
【化5】
(式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、主鎖が原子数1〜19で構成される分子量472以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化6】
(式(2)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは主鎖が原子数1〜19で構成される分子量484以下の原子団であり、かつ酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。)
【化7】
(式(3)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、R10は、水素原子、または少なくとも一つのヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の炭化水素部分である。)
【0034】
本実施形態に係るコアシェル型粒子は、第2の重合体が式(1)で表される化合物に由来する構成単位、式(2)で表される化合物に由来する構成単位および式(3)で表される化合物に由来する構成単位の少なくとも何れかをさらに含むことにより、電極と後述するフッ素樹脂層との間の接着性をより高め得る。また、第2の重合体が式(1)で表される化合物に由来する構成単位および式(2)で表される化合物に由来する構成単位の少なくとも何れかを含む場合には、セパレータ基材とフッ素樹脂層との間の接着性もより高め得る。
【0035】
[式(1)で表される化合物]
、R、およびRは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。このなかでも、Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。Rは水素原子、フッ素原子、またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0036】
を構成する主鎖は、原子数1〜19であり、原子数1〜14であることが好ましく、原子数1〜9であることがより好ましい。主鎖を構成する原子としては、例えば、炭素原子および後述するヘテロ原子等が挙げられる。なお、主鎖の原子数に水素原子の原子数は含まない。また、主鎖の原子数とは、Xの右側に記載されたカルボキシル基と、Xの左側に記載された基(RC=CR‐CO‐)とを、最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数を意味している。
【0037】
の原子団の分子量は472以下であり、172以下であることがより好ましい。また、原子団である場合の分子量の下限としては特に限定はないが、通常は15である。
【0038】
またXは、酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。また上述の原子団は、ヘテロ原子を少なくとも一つ含んでいればよく、複数含んでいてもよい。フッ化ビニリデンとの共重合性の観点から、ヘテロ原子は、酸素原子であることが好ましい。なお、ヘテロ原子は原子団の主鎖と側鎖との両方に含まれていてもよいし、どちらか一方のみに含まれていてもよい。また原子団の側鎖に1つ以上のカルボキシル基を含んでいてもよい。
【0039】
また、式(1)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
(式(4)において、R、RおよびRはそれぞれ式(1)におけるR、RおよびRと同一であり、Xは、主鎖が原子数1〜18で構成される分子量456以下の原子団である。)
【0040】
式(4)で表される化合物におけるXを構成する主鎖は、原子数1〜18であり、原子数1〜13であることが好ましく、原子数1〜8であることがより好ましい。主鎖を構成する原子としては、例えば、炭素原子および後述するヘテロ原子等が挙げられる。なお、主鎖の原子数に水素原子の原子数は含まない。また、主鎖の原子数とは、Xの右側に記載されたカルボキシル基と、Xの左側に記載された基(RC=CR‐CO‐O‐)とを、最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数を意味している。
【0041】
式(4)で表される化合物におけるXの原子団の分子量は456以下であり、156以下であることが好ましい。また、原子団である場合の分子量の下限としては特に限定はないが、通常は14である。
【0042】
またXは、酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含んでいてもよいし、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、ヘテロ原子は原子団の主鎖と側鎖との両方に含まれていてもよいし、どちらか一方のみに含まれていてもよい。
【0043】
式(1)で表される化合物としては、例えば、アクリロイロキシプロピルコハク酸、アクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシプロピルコハク酸、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、アクリロイロキシエチルフタル酸、メタクリロイロキシエチルフタル酸、N−カルボキシエチル(メタ)アクリルアミド、およびカルボキシエチルチオ(メタ)アクリレート等が挙げられる。式(1)で表される化合物としては、電極とフッ素樹脂層との間の接着性およびセパレータ基材とフッ素樹脂層との間の接着性の観点から、アクリロイロキシプロピルコハク酸および/またはアクリロイロキシエチルコハク酸であることが好ましい。
【0044】
[式(2)で表される化合物]
、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。このなかでも、Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。Rは水素原子、フッ素原子、またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0045】
を構成する主鎖は、原子数1〜19であり、原子数1〜14であることが好ましく、原子数1〜9であることがより好ましい。主鎖を構成する原子としては、例えば、炭素原子および後述するヘテロ原子等が挙げられる。なお、主鎖の原子数に水素原子の原子数は含まない。また、主鎖の原子数とは、Xの右側に記載されたカルボキシル基と、Xの左側に記載された基(RC=CR‐O‐)とを、最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数を意味している。
【0046】
の原子団の分子量は484以下であり、184以下であることが好ましい。また、原子団である場合の分子量の下限としては特に限定はないが、通常は14である。
【0047】
またXは、酸素原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む。また上述の原子団は、ヘテロ原子を少なくとも一つ含んでいればよく、複数含んでいてもよい。フッ化ビニリデンとの共重合性の観点から、ヘテロ原子は、酸素原子であることが好ましい。なお、ヘテロ原子は原子団の主鎖と側鎖との両方に含まれていてもよく、どちらか一方のみに含まれていてもよい。また原子団の側鎖に1つ以上のカルボキシル基を含んでいてもよい。
【0048】
式(2)で表される化合物としては、例えば、ビニルカルボキシアルキルエーテル類が挙げられ、具体的には、ビニルカルボキシメチルエーテルおよびビニルカルボキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0049】
[式(3)で表される化合物]
、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基等が挙げられる。このなかでも、R、RおよびRは、それぞれ水素原子であることが好ましい。
【0050】
10は、水素原子、または少なくとも一つのヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の炭化水素部分である。ヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の炭化水素部分としては、例えば、ヒドロキシエチル基およびヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0051】
式(3)で表される化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、および2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。式(3)で表される化合物は、電極とフッ素樹脂層との間の接着性およびセパレータとフッ素樹脂層との間の接着性の観点から、アクリル酸であること好ましい。
【0052】
[他の構成単位]
第2の重合体は、第2の重合体を構成する他の構成単位として、フッ化ビニリデンおよび上記式(1)〜(3)で表される化合物以外の化合物に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。そのような化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルビニル化合物、炭化水素化単量体、ジメタクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステル、ジアクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステル、およびポリビニルベンゼン等が挙げられる。
【0053】
ハロゲン化アルキルビニル化合物としては、例えば、フッ化アルキルビニル化合物が挙げられ、具体的には、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、およびフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられ、なかでもヘキサフルオロプロピレンが好ましい。炭化水素系単量体としては、例えばエチレン、プロピレンおよびスチレン等が挙げられる。ハロゲン化アルキルビニル化合物を含むことにより、電解液を含んだ状態での電極との熱プレスにおいて接着性が向上し得る。
【0054】
[構成単位の割合]
第2の重合体における、フッ化ビニリデンに由来する構成単位の割合は、イオン透過性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。また、密着性の観点から、99モル%以下であることが好ましく、98モル%以下であることがより好ましく、95モル%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
また、第2の重合体における、上記式(1)で表される化合物に由来する構成単位、上記式(2)で表される化合物に由来する構成単位および上記式(3)で表される化合物に由来する構成単位の合計の割合は、特に限定されないが、密着性の観点から、0.01モル%以上であることが好ましく、0.02モル%以上であることがより好ましく、0.03モル%以上であることがさらに好ましい。また、生産性の観点から、5モル%以下であることが好ましく、4モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
第2の重合体を構成する他の構成単位としてハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位を含む場合、ハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位の割合は、特に限定されないが、密着性の観点から、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることがさらに好ましい。また、イオン透過性の観点から、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
また、シェル部は、第2の重合体以外の化合物をさらに含んでいてもよい。第2の重合体以外の化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルビニル化合物、炭化水素系単量体、ジメタクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステル、ジアクリル酸(ポリ)アルキレングリコールエステルおよびポリビニルベンゼンおよび架橋剤等が挙げられる。ハロゲン化アルキルビニル化合物としては、例えば、フッ化アルキルビニル化合物が挙げられ、具体的には、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレンおよびフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。炭化水素系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンおよびスチレン等が挙げられる。
【0058】
本実施形態に係るコアシェル型粒子の構成単位の帰属方法は、19F−NMRで得られるピーク面積比および吸光度比(IR比)Aを検出することによって求められる。ピーク面積比および吸光度比(IR比)Aの検出方法は、後述する実施例において説明する。
【0059】
また、第1の重合体および第2の重合体の少なくとも何れかに、ハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位が含まれていることが好ましい。コアシェル型粒子におけるハロゲン化アルキルビニル化合物に由来する構成単位の割合は、特に限定されないが、1モル%以上であることが好ましく、1.5モル%以上であることがより好ましい。また、5モル%以下であることが好ましく、3.5モル%以下であることがより好ましい。
【0060】
(コアシェル型粒子の融点)
第1の重合体の融点は第2の重合体の融点よりも高いことが好ましい。そのため、コアシェル型粒子は、第1の重合体よりも融点が低い。コアシェル型粒子の融点は、145℃以上であることが好ましく、また、164℃未満であることが好ましい。本実施形態に係るコアシェル型粒子の融点の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0061】
(粒子径)
本実施形態に係るコアシェル型粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上1μm以下である。本実施形態に係るコアシェル型粒子の平均粒子径の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0062】
(用途)
本実施形態に係るコアシェル型粒子は、二次電池(特には、非水電解質二次電池)におけるセパレータ基材または電極に塗布されるコーティング組成物の構成材料として好適に用いられる。
【0063】
本実施形態に係るコアシェル型粒子をコーティング組成物に含有させることで、後述のように、電極に対する高い接着性を有しつつ、電池の製造工程において熱プレスする際に、コア部に含まれるフッ化ビニリデン粒子がつぶれることを低減することができる。したがって、熱プレスの工程を経てもセパレータの表面の孔を塞ぐことが低減される。
【0064】
〔コアシェル型粒子の製造方法〕
本実施形態に係るコアシェル型粒子の製造方法は、第1の重合体を含むコア部を形成するコア部形成工程と、第2の重合体を含むシェル部を形成するシェル部形成工程とを含んでいる。
【0065】
コア部形成工程では、第1の重合体を構成するための単量体であるフッ化ビニリデンを重合する。第1の重合体を構成する構成単位として、フッ化ビニリデン以外の他の化合物に由来する構成単位をさらに含む場合は、フッ化ビニリデンと当該他の化合物とを重合する。
【0066】
コア部形成工程における、フッ化ビニリデンの仕込み量は、コア部形成工程の全単量体の総量を100質量部とすると、90質量部以上であることが好ましく、92質量部以上であることがより好ましく、95質量部以上であることがさらに好ましい。また、フッ化ビニリデンのみを用いてもよい。
【0067】
他の化合物としてハロゲン化アルキルビニル化合物を添加する場合、ハロゲン化アルキルビニル化合物の仕込み量は、コア部形成工程の全単量体の総量を100質量部とすると、イオン透過性の観点から、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0068】
上記重合によって得られたコア部は、続いて行うシェル部形成工程において、コア部形成工程で得られた粒子を含んだ分散液のまま使用してもよいし、塩析、凍結粉砕、スプレードライ、およびフリーズドライ等から選ばれる少なくとも1種類の方法で粉体化して使用してもよい。また、そのまま使用する場合、コア部形成工程における重合に用いた分散媒に分散させたままであってもよいし、別途用意した水などの分散媒に物理的または化学的に再分散させてもよい。また、粉体化したコア部は、水などの分散媒に物理的または化学的に再分散させて使用してもよい。未処理のコア部を含む分散液または上記操作等によって処理済みのコア部を含む分散液は、界面活性剤、pH調整剤、沈降防止剤、分散安定剤、腐食防止剤、防カビ剤、湿潤剤等をさらに含ませてもよいし、透析膜またはイオン交換樹脂などによって不純物を除去してもよい。
【0069】
シェル部形成工程では、コア部形成工程により形成されたコア部を含む分散液において、上記式(1)表される化合物、上記式(2)表される化合物および上記式(3)で表される化合物の少なくとも何れかと、フッ化ビニリデンとを含む、第2の重合体を構成するための単量体とを重合反応させる。これら単量体を添加するタイミングは特に限定されず、重合反応の開始前に全ての単量体を添加してもよいし、重合反応の開始後に一部の単量体を添加してもよいし、それらを組み合わせてもよい。この重合において、第1の重合体粒子にこれら単量体を浸透させずに重合する。そうすることによって、第1の重合体と第2の重合体とが相互に絡み合ったIPN構造のようなポリマーアロイ粒子ではなく、第1の重合体粒子の周囲を第2の重合体が取り囲むように形成されるコアシェル粒子を重合することができる。この重合により、フッ化ビニリデン粒子のコア部の周囲にシェル部が形成される。
【0070】
シェル部形成工程における、フッ化ビニリデンの仕込み量は、シェル部形成工程の全単量体の総量を100質量部とすると、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがさらに好ましい。
【0071】
また、上記式(1)表される化合物、上記式(2)表される化合物および上記式(3)で表される化合物の仕込み量の合計は、シェル部形成工程の全単量体の総量を100質量部とすると、密着性の観点から、0.03質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。また製造性の観点から、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0072】
他の化合物としてハロゲン化アルキルビニル化合物を添加する場合、ハロゲン化アルキルビニル化合物の仕込み量は、シェル部形成工程の全単量体の総量を100質量部とすると、密着性の観点から、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、イオン透過性の観点から、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0073】
コア部形成工程とシェル部形成工程とは、同一の反応器で行ってもよいし、別々の反応器で行ってもよい。コア部形成工程とシェル部形成工程とを同一の反応器で連続的に行う場合、例えば、コア部形成工程の終了後に反応器内の残存ガスモノマーをパージし、次いでシェル部形成工程において用いられる単量体等を反応器に添加すればよい。
【0074】
コア部形成工程およびシェル部形成工程において、第1の重合体および第2の重合体を重合する方法としては、特に限定はなく、従来公知の重合方法を用いることができる。重合方法としては、例えば懸濁重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、ミニエマルション重合、シード乳化重合および溶液重合等が挙げられるが、そのなかでも乳化重合、ソープフリー乳化重合、ミニエマルション重合、シード乳化重合が特に好ましい。
【0075】
乳化重合とは、ラジカル重合の一種であり、水等の媒体と、媒体に難溶な単量体と乳化剤(以下、界面活性剤とも記す)とを混合し、そこに媒体に溶解可能な重合開始剤を加えて行う重合方法である。乳化重合において、フッ化ビニリデンおよびその他の単量体の他に、分散媒、界面活性剤および重合開始剤が用いられる。
【0076】
懸濁重合とは、懸濁剤などを含む水中で油溶性の重合開始剤を非水溶性のモノマーに溶かし、これを機械的撹拌により懸濁および分散させて行われる重合方法である。懸濁重合では、モノマー液滴中で重合が進行することで、フッ化ビニリデン粒子が得られる。
【0077】
ソープフリー乳化重合とは、上記乳化重合を行う際に用いるような通常の乳化剤を用いることなく行われる乳化重合である。ソープフリー乳化重合によって得られたフッ化ビニリデン粒子は、乳化剤が重合体粒子内に残存しないため好ましい。
【0078】
ミニエマルション重合とは、超音波発振器などを用いて強いせん断力をかけることでモノマー液滴をサブミクロンサイズまで微細化して行われる重合方法である。ミニエマルション重合では、微細化されたモノマー液滴を安定化させるために、ハイドロホープという難水溶性物質を添加する。理想的なミニエマルション重合では、モノマー液滴が重合することで、それぞれフッ化ビニリデン重合体の微粒子となる。
【0079】
シード乳化重合とは、上記のような重合方法で得られた微粒子を他の単量体からなる重合体で被覆する重合である。微粒子の分散液に、さらにフッ化ビニリデンおよびその他の単量体と、分散媒、界面活性剤、重合開始剤等が用いられる。
【0080】
[分散媒]
用いることができる分散媒としては特に限定はなく、従来公知のものを用いることができるが、分散媒として水を用いることが好ましい。
【0081】
[界面活性剤]
用いる界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤の何れであってもよく、複数種類を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤としては、ポリフッ化ビニリデンの重合に従来から使用されている過フッ素化界面活性剤、部分フッ素化界面活性剤および非フッ素化界面活性剤等が好適である。それらのうち、パーフルオロアルキルスルホン酸およびその塩、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩、フルオロカーボン鎖またはフルオロポリエーテル鎖を有するフッ素系界面活性剤を使用することが好ましく、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩を用いることがより好ましい。本実施形態では、乳化剤として、上記のうちから選択される1種単独または2種以上を使用することができる。
【0082】
乳化剤の添加量は、重合に用いられる全単量体の総量を100質量部とすると、0.005〜22質量部であることが好ましく、0.2〜20質量部であることがより好ましい。
【0083】
[重合開始剤]
用いることができる重合開始剤としては、特に限定はなく、従来公知のものを用いることができる。重合開始剤としては、水溶性過酸化物、水溶性アゾ系化合物またはレドックス開始剤系が用いられる。水溶性過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム等が挙げられる。水溶性アゾ系化合物としては、例えば、AIBNおよびAMBN等が挙げられる。レドックス開始剤系としては、例えば、アスコルビン酸−過酸化水素が挙げられる。重合開始剤は好ましくは水溶性過酸化物である。これらの重合開始剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
重合開始剤の添加量は、重合に用いられる全単量体の総量を100質量部とすると、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.02〜4質量部であることがより好ましい。
【0085】
[他の成分]
乳化重合において、得られるコアシェル型粒子の重合度を調節するために、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、炭酸ジエチル、アセトン、エタノール、n−プロパノール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、プロピオン酸エチル、および四塩化炭素等を挙げることができる。
【0086】
また、必要に応じてpH調整剤を用いてもよい。pH調整剤としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素カリウム等の緩衝能を有する電解質物質、ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の塩基性物質が挙げられる。
【0087】
また、必要に応じて、沈降防止剤、分散安定剤、腐食防止剤、防カビ剤および湿潤剤等を用いてもよい。
【0088】
他の成分の添加量は、重合に用いられる全単量体の総量を100質量部とすると、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.02〜7質量部であることがより好ましい。
【0089】
(重合条件)
重合温度は、重合開始剤の種類等によって、適宜選択すればよいが、例えば、0〜120℃の範囲とすればよく、20〜110℃の範囲であることが好ましく、40〜100℃の範囲であることがより好ましい。
【0090】
また、重合圧力は、例えば、0〜10MPaの範囲とすればよく、0.5〜8MPaの範囲であることが好ましく、1〜6MPaの範囲であることがより好ましい。
【0091】
重合時間は、特に制限されないが、生産性等を考慮すると、1〜24時間の範囲であることが好ましい。
【0092】
〔分散液〕
本実施形態に係る分散液は、本実施形態に係るコアシェル型粒子および分散媒を含んでいる。
【0093】
本実施形態に係る分散液における分散媒は、例えば、水であることが好ましいが、水と混和する任意の非水溶媒と水との混合液であって、フッ化ビニリデン樹脂を溶解せず、分散、懸濁、または乳化し得る液体であれば特に限定されるものではない。上記非水溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリン等の炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロン等のケトン;酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル;o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン等のアミン化合物;γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトン等のラクトン;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド化合物およびスルホン化合物;ならびにテトラヒドロフランおよび酢酸エチル等が挙げられる。これらの非水溶媒は、水と任意の割合で混合して用いることができる。水は単独で用いてもよいし、水とこれら非水溶媒のうちの一種類または二種類以上とを混合した混合分散媒であってもよい。
【0094】
また、必要に応じて、pH調整剤、沈降防止剤、分散安定剤、腐食防止剤、防カビ剤および/または湿潤剤等を用いてもよい。
【0095】
本実施形態に係る分散液におけるコアシェル型粒子の含有量は、分散液の全量を100質量部とすると、60質量部以下であることが好ましい。
【0096】
〔コーティング組成物〕
本実施形態に係るコーティング組成物は、負極層および正極層(電極)とその間に設けられるセパレータとを備える二次電池において、電極とセパレータとの接着性を向上させる多孔質のフッ素樹脂層を形成するために用いられる組成物である。
【0097】
本実施形態に係るコーティング組成物は、本実施形態に係るコアシェル型粒子を含む。本実施形態に係るコーティング組成物は、コアシェル型粒子のみを含むものであってもよいし、コアシェル型粒子を分散する分散媒をさらに含んでいてもよい。分散媒の具体的な説明は、上記〔分散液〕の欄を参照することができる。一例において、本実施形態に係るコーティング組成物は、上述の分散液であり得る。
【0098】
本実施形態に係るコーティング組成物を調製するにあたり、コアシェル型粒子は、塩析、凍結粉砕、スプレードライ、およびフリーズドライ等から選ばれる少なくとも1種類の方法で粉体化してそのままコーティング組成物としてもよいし、このように粉体化したコアシェル型粒子を水などの分散媒に物理的または化学的に再分散させてコーティング組成物としてもよい。あるいは、重合に用いた分散媒にコアシェル型粒子が分散された分散液をそのままコーティング組成物としてもよいし、別途用意した水などの分散媒にコアシェル型粒子を物理的または化学的に再分散させてコーティング組成物としてもよい。
【0099】
分散媒を用いる場合、コーティング組成物が含有する分散媒の含有量は、コアシェル型粒子の含有量を100質量部とすると、65〜3500質量部であることが好ましく、300〜2000質量部であることがより好ましい。
【0100】
また、本実施形態に係るコーティング組成物は、必要に応じて、フィラーを含ませてもよい。フィラーを含むことで、セパレータの耐熱性を向上させることができる。フィラーとしては、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)、二酸化チタン(TiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO)等の酸化物;水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))等の水酸化物;炭酸カルシウム(CaCO)等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;窒化物;粘土鉱物;およびベーマイト等が挙げられる。フィラーとしては、電池の安全性および塗液安定性の観点から、アルミナ、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛およびベーマイトが好ましい。フィラーは、単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0101】
また、本実施形態に係るコーティング組成物は、増粘剤をさらに含んでもよい。増粘剤を含むことで、コーティング組成物の粘度の調整ならびにコアシェル型粒子およびフィラーの分散性を向上させることができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース化合物;上記セルロース化合物のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸;上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系(共)重合体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸等の不飽和カルボン酸と、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラールまたはビニルエステルとの共重合体の鹸化物等の水溶性ポリマー等が挙げられる。なかでも、セルロース化合物およびその塩が好ましい。
【0102】
フィラーを含ませる場合、フィラーの添加量は、コアシェル型粒子の含有量を100質量部とすると、10〜900質量部であることが好ましい。
【0103】
増粘剤を含む場合、コーティング組成物に対する増粘剤の添加量は、コアシェル型粒子、フィラーおよび増粘剤の総量のうち10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0104】
また、本実施形態に係るコーティング組成物は、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、沈降防止剤、腐食防止剤、分散安定剤、防カビ剤、湿潤剤および/または消泡剤等をさらに含んでもよい。
【0105】
〔フッ素樹脂層〕
本実施形態におけるフッ素樹脂層は、本実施形態に係るコーティング組成物を、セパレータまたは電極に塗布し、乾燥させることによって形成される。具体的には、まずセパレータまたは電極のいずれかの少なくとも一方の面にコーティング組成物を塗布し、塗布したコーティング組成物を乾燥させる。乾燥させたセパレータと電極とを重ね合わせ、電解液やその他必要な部材とを外装材に入れ、外装材ごと熱プレスしてセパレータと電極とを接着させる。この段階で、コアシェル粒子のシェル部が熱によって溶融してフッ素樹脂層が形成される。
【0106】
フッ素樹脂層の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.2μm以上9.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。本実施形態に係るコーティング組成物は、フッ素樹脂層の膜厚が上記の範囲内に収まるように塗布される。
【0107】
コーティング組成物を塗布する方法としては、例えばドクターブレード法、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法、ダイコート法およびディップコート法等の方法を適用することができる。塗膜の乾燥処理は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは45〜130℃の温度範囲において、好ましくは1〜500分間、より好ましくは2〜300分間の処理時間で行われる。
【0108】
また、本実施形態におけるフッ素樹脂層は、負極層とセパレータとの間に設けられてもよいし、セパレータと正極層との間に設けられてもよいし、その両方に設けられてもよい。
【0109】
本実施形態におけるフッ素樹脂層は、セパレータと電極との間に設けられることによって、セパレータと電極との間に十分な接着性を与えることができる。本実施形態におけるフッ素樹脂層を設けられたセパレータと電極との剥離強度は、例えば、0.2〜2.7gf/mmである。剥離強度の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0110】
本実施形態におけるフッ素樹脂層は、後述する非水電解質電池の製造工程の一部である熱プレスの工程が行われた後において、溶融した第2の重合体を含む層を含んでいる。すなわち、フッ素樹脂層は、一例において、負極層と正極層とセパレータとを熱プレスすることによって形成されてなる第2の重合体を含む層を有している。この第2の重合体を含む層には、第1の重合体を含む粒子が含まれている。このような構造を有することによって、熱プレスの工程を経てもセパレータの表面の孔を塞ぐことが低減されている。従って、本実施形態におけるフッ素樹脂層は、多孔質である。本実施形態におけるフッ素樹脂層によってセパレータの表面の孔が塞がれていないことは、SEM観察によって確認することができる。SEM観察用フッ素樹脂層コーティングセパレータの作製方法は、後述する実施例において説明する。
【0111】
〔セパレータ〕
本実施形態に係るセパレータは、電気的に安定であり、電気伝導性を有していない。また本実施形態に係るセパレータは、内部に空孔または空隙を有する多孔質基材が用いられイオン透過性に優れている。多孔質基材としては、例えば、ポリオレフィン系高分子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系高分子(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド系高分子(例えば、芳香族ポリアミド系高分子、ポリエーテルイミド等)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セラミックス等、およびこれらの少なくとも2種の混合物からなる単層または多層の多孔膜;不織布;ガラス;並びに紙等を挙げることができる。なお、前述のポリマーとしては、変性されたものが挙げられる。
【0112】
多孔質基材としては、ポリオレフィン系高分子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)を含むものが好ましい。多孔質基材は、シャットダウン機能の観点から、ポリエチレンを含むことがより好ましく、シャットダウン機能と耐熱性との両立の観点から、ポチエチレンとポリプロピレンとを含むことがより好ましく、95質量%以上のポリエチレンと5質量%以下のポリプロピレンとを含むことがさらに好ましい。
【0113】
また、多孔質基材の厚さは、力学特性および内部抵抗の観点から、3μm以上25μm以下であることが好ましく、5μm以上25μmであることがより好ましい。
【0114】
多孔質基材の表面には、コーティング組成物との濡れ性を向上させる目的で、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、または紫外線照射処理等が施されていてもよい。
【0115】
本実施形態に係るセパレータは、一例において、本実施形態に係るコーティング組成物が、負極層および正極層に対向する面のうち少なくとも一方の面に塗布されている。
【0116】
〔電極〕
本実施形態における負極層および正極層は、特に限定されず、例えば、二次電池における公知の負極層および正極層を用いることができる。
【0117】
一例において、負極層および正極層は、電極合剤の層が集電体上に設けられた構成である。電極合剤層は、集電体の少なくとも一方の面に形成されていればよい。
【0118】
電極合剤は、例えば、電極活物質とバインダー組成物とを含有し得る。
【0119】
電極活物質は、特に限定されるものではなく、例えば、従来公知の負極用の電極活物質(負極活物質)または正極用の電極活物質(正極活物質)を用いることができる。
【0120】
負極活物質としては、例えば、人工黒鉛、天然黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、活性炭、またはフェノール樹脂およびピッチ等を焼成炭化したもの等の炭素材料;Cu、Li、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cd、Ag、Zn、Hf、ZrおよびY等の金属材料および合金材料;ならびにGeO、GeO、SnO、SnO、PbOおよびPbO等の金属酸化物等が挙げられる。
【0121】
正極活物質としては、少なくともリチウムを含むリチウム系正極活物質が好ましい。リチウム系正極活物質としては例えば、LiCoO、LiNiCo1−x(0≦x≦1)、LiNiCoMnO等の一般式LiMY(Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、V等の遷移金属の少なくとも一種:YはO、S等のカルコゲン元素)で表わされる複合金属カルコゲン化合物、LiMnなどのスピネル構造をとる複合金属酸化物、およびLiFePOなどのオリビン型リチウム化合物等が挙げられる。
【0122】
バインダー組成物としては、フッ化ビニリデン重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース等のセルロース化合物、セルロース化合物のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、ならびにポリアクリロニトリル(PAN)等を含むものが挙げられる。
【0123】
電極合剤は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等の導電助剤;ポリビニルピロリドンなどの顔料分散剤;およびポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの接着補助剤等をさらに含んでいてもよい。
【0124】
集電体は負極層および正極層の基材であり、電気を取り出すための端子である。集電体の材質としては、特に限定されるものではなく、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス鋼、鋼、ニッケルおよびチタン等の金属箔または金属鋼などを用いることができる。集電体の厚さは、特に限定されるものではないが、5〜100μmであることが好ましく、5〜70μmであることがより好ましい。
【0125】
電極合剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常は6〜1000μmであり、7〜500μmであることが好ましい。
【0126】
本実施形態における電極では、フッ素樹脂層が、負極層および正極層の少なくとも何れかにおいて、セパレータと接するように設けられてもよく、一例において、正極層に設けられることが好ましい。また、本実施形態における電極では、一例において、本実施形態に係るコーティング組成物が、負極層および正極層の少なくとも何れかの少なくとも一方の面に塗布されている。
【0127】
〔電解質〕
本実施形態における二次電池に用いられる電解質は、特に限定されず、例えば、二次電池における公知の電解質を用いることができる。電解質としては、例えば、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、およびLiBPh等が挙げられる。本実施形態における二次電池では、電解質を非水系溶媒に溶解させた電解液を用いることもできる。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フロロエチレンカーボネート、ジフロロエチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそのフッ素置換体等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステルあるいはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0128】
〔二次電池〕
本実施形態に係る二次電池は、本実施形態に係るコーティング組成物から形成されたフッ素樹脂層が設けられている。一例において、セパレータは上記で説明したセパレータである。また、一例において、電極は上記で説明した電極である。
【0129】
本実施形態に係る二次電池は、例えば電解質の種類によって分類することができる。具体的には、例えば、非水電解質二次電池、および固体電解質二次電池等が挙げられ、なかでも非水電解質二次電池が好ましい。
【0130】
本実施形態に係る非水電解質二次電池としては、例えば、ゲル電解質を含むポリマー電池等も含まれる。非水電解質二次電池における他の部材については特に限定されるものでなく、例えば、従来用いられている部材を用いることができる。
【0131】
非水電解質二次電池の製造方法としては、例えば、負極層と正極層とをセパレータを介して重ね合わせ、電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。この製造方法において、電解液の注入後の熱プレスによって、コーティング組成物に含まれていたコアシェル型粒子の一部(理想的にはシェル部のみ)が溶融し、形成されたフッ素樹脂層によって電極とセパレータとが接着する。
【0132】
熱プレスの温度は、第1の重合体の溶融温度とコアシェル型粒子の溶融温度とに応じて決定されており、例えば、30〜150℃とすることができる。また、熱プレスの圧力は、特に限定されないが、例えば、1〜30MPaとすることができる。
【0133】
本実施形態に係るコアシェル型粒子によれば、電解液存在下における第1の重合体の溶融温度が熱プレスの温度より高いため、熱プレスによってコア部のフッ化ビニリデン粒子がつぶされることを低減することができる。
【0134】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0135】
後述のように、本発明に係るコアシェル型粒子およびフッ化ビニリデン粒子(以下、まとめてフッ素ポリマー粒子とも記す)を作製し、当該フッ素ポリマー粒子の物性を測定した。また、当該フッ素ポリマー粒子を用いて、セパレータを製造し、それを用いて剥離強度試験およびSEM観察を行った。なお、具体的な実施例の説明の前に、本明細書における「固形分濃度」および「粒子径」の算出方法について以下に記載する。
【0136】
〔固形分濃度〕
重合により調製したフッ素ポリマー粒子を含む分散液(以下、ラテックスとも記す)約5gをアルミ製のカップに入れ、80℃で3時間乾燥し、乾燥前後の重量を測定することによって濃度を算出した。
【0137】
〔粒子径〕
フッ素ポリマー粒子の粒子径は、動的光散乱法の正則化解析によって算出した。具体的には、BECKMAN COULTER社製「DelsaMaxCORE」を使用し、JIS Z 8828に準拠して測定し、正則化解析によって得られる大小2つのピークのうち、大きいピークを粒子径とした。
【0138】
各実施例および各比較例における、フッ素ポリマー粒子の調製方法について以下に記載する。
【0139】
〔実施例1〕
コア部の重合:オートクレーブにイオン交換水280質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、リン酸水素二ナトリウム0.2質量部、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、フッ化ビニリデン(VDF)35質量部を上記オートクレーブ中に添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5wt%過硫酸アンモニウム水溶液を過硫酸アンモニウム換算で0.06質量部に相当する量を入れて重合を開始した。この時の缶内圧力は4.3MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、VDF65質量部を缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。添加終了後、1.5MPaまで圧力が降下したところで重合を完了とし、コア部の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は24.0wt%であり、粒子径は140nmであった。
シェル部の重合:オートクレーブにイオン交換水700質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、水分散したコア部の粒子100質量部、PFOA0.5質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、VDF70質量部、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)30質量部、アクリロイロキシプロピルコハク酸(APS)0.06質量部を上記オートクレーブ中に添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5wt%過硫酸アンモニウム水溶液を過硫酸アンモニウム換算で0.1質量部に相当する量を入れて重合を開始した。この時の缶内圧力は3.3MPaであった。反応開始後、1.5MPaまで圧力が降下したところでシェル部の重合を完了とし、コアシェル型の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.5wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0140】
〔実施例2〕
コア部の重合:実施例1と同様にコア部のフッ化ビニリデン粒子を得た。
シェル部の重合:VDFを70質量部から78質量部、HFPを30質量部から22質量部、APSを0.06質量部から0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様に重合して、コアシェル型の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.3wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0141】
〔実施例3〕
コア部の重合:実施例1と同様にコア部のフッ化ビニリデン粒子を得た。
シェル部の重合:過硫酸アンモニウムを0.1質量部から0.4質量部、APSを0.1質量部から0.5質量部に変更した以外は実施例2と同様に重合して、コアシェル型の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.3wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0142】
〔実施例4〕
コア部の重合:実施例1と同様にコア部のフッ化ビニリデン粒子を得た。
シェル部の重合:APSをアクリル酸(AA)に変更した以外は実施例2と同様に重合して、コアシェル型の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.6wt%であり、粒子径は180nmであった。
【0143】
〔実施例5〕
コア部の重合:オートクレーブに添加するVDFを35質量部から30質量部に変更し、さらにHFP5.0質量部を添加した以外は実施例1と同様に重合してコア部の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は21.5wt%であり、粒子径は140nmであった。
シェル部の重合:実施例2と同様に重合して、コアシェル型の粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.1wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0144】
〔実施例6〕
コア部の重合:実施例5と同様にコア部のフッ化ビニリデン粒子を得た。
シェル部の重合:実施例4と同様に重合して、コアシェル型粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.2wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0145】
〔実施例7〕
コア部の重合:オートクレーブに添加するVDFを30質量部から25質量部、HFPを5.0質量部から10質量部に変更した以外は実施例5と同様に重合してコア部のフッ化ビニリデン粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は21.4wt%であり、粒子径は140nmであった。
シェル部の重合:実施例2と同様に重合して、コアシェル型粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.2wt%であり、粒子径は180nmであった。
【0146】
〔比較例1〕
コア部の重合:実施例1と同様にコア部のフッ化ビニリデン粒子を得た。
シェル部の重合:APSを添加せずに、反応開始後、1.5MPaまで圧力が降下したところでシェル部の重合を完了とした以外は実施例1と同様に重合して、コアシェル型粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.5wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0147】
〔比較例2〕
コア部の重合:実施例1と同様にコア部のフッ化ビニリデン粒子を得た。
シェル部の重合:APSを添加せずに、反応開始後、1.5MPaまで圧力が降下したところでシェル部の重合を完了とした以外は実施例2と同様に重合して、コアシェル型粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は13.4wt%であり、粒子径は170nmであった。
【0148】
〔比較例3〕
オートクレーブにイオン交換水280質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)0.5質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、フッ化ビニリデン(VDF)30質量部、HFP5.0質量部を上記オートクレーブ中に添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5wt%過硫酸アンモニウム水溶液を過硫酸アンモニウム換算で0.1質量部に相当する量を入れて重合を開始した。この時の缶内圧力は3.1MPaであった。反応開始後、缶内圧力が2.5MPaまで圧力が降下したところで、VDF65質量部を缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。連続添加VDFのうち50質量%以上消費された時点でAPS0.06質量部を添加した。反応開始後、1.5MPaまで圧力が降下したところで重合を完了とし、フッ化ビニリデン粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は19.6wt%であり、粒子径は200nmであった。
【0149】
〔比較例4〕
PFOAを0.5質量部から1.0質量部に、APSをAAに変更した以外は比較例3と同様に重合して、フッ化ビニリデン粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は21.0wt%であり、粒子径は130nmであった。
【0150】
各実施例および各比較例における、フッ素ポリマー粒子の物性の測定方法について以下に記載する。
【0151】
〔HFP導入量〕
重合により調製した分散液中のフッ素ポリマー粒子に含まれるHFP導入量は、19F−NMR(BURUKAR社製)で測定した。塩析によって粉体化したフッ素ポリマー粒子40mgをアセトン−d6 960mgに溶解させ測定用サンプルとした。HFP単位に由来するCF部分のピークは−70−〜80ppm付近の2本のピークに相当し、VDFおよびHFP単位(全単量体)に由来するCF部分のピークは−90ppm以下のピークに相当する。これらのピーク強度からHFP導入量を下記式によって求めた。
HFP導入量[wt%]=HFPピーク面積/全単量体ピーク面積×100
【0152】
〔吸光度比(IR比)A
各実施例および各比較例において得られたフッ素ポリマー粒子を含む分散液を0.5質量%の塩化カルシウムで塩析し、80℃のオーブンで乾燥させることによって粉体化した。粉体化したフッ素ポリマー粒子を200℃で熱プレスし、厚さ約0.01μmのプレスシートを作製した。作製したプレスシートのIRスペクトルを、赤外分光光度計FT−730(株式会社堀場製作所製)を用いて、1500cm−1〜4000cm−1の範囲で測定した。IR比Aは、下記式によって求めた。
=A1760/A3020
上記式において、A1760は1760cm−1付近に検出されるカルボニル基の伸縮振動に由来の吸光度であり、1600cm−1〜1800cm−1に検出されるピークをカルボニル基の伸縮振動に由来の吸光度とした。A3020は3020cm−1付近に検出されるCHの伸縮振動に由来の吸光度であり、2900cm−1〜3100cm−1に検出されるピークをカルボニル基の伸縮振動に由来の吸光度とした。
【0153】
〔融点〕
重合により調製した分散液中のフッ素ポリマー粒子の融点は、フィルムの形態で測定した。フィルムは以下の操作によって作製した。剥離剤を噴霧した2枚のアルミ箔の間に、縦5cm×横5cm×厚み150μmの鋳型と塩析によって粉体化したフッ素ポリマー粒子約1gを挟み、200℃でプレスした。融点は、DSC(METTLER社製「DSC−1」)を用いてASTM d 3418に準拠して測定した。
【0154】
〔剥離強度試験〕
各実施例および各比較例において得られたフッ素ポリマー粒子を用いてフッ素ポリマー粒子コーティングセパレータを作製し、電極(正極および負極)との剥離強度試験を行った。フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータおよび電極の製造方法について、以下に詳細に記載する。
【0155】
(コーティング組成物の作製)
フッ素ポリマー粒子100重量部、CMC(カルボキシメチルセルロース)(セロゲン4H、第一工業製薬製)2重量部に水を加えて固形分濃度10質量%の組成物を調製し、これをコーティング組成物とした。
【0156】
(剥離強度測定用フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータの作製)
上記で得られたコーティング組成物をコロナ処理装置(春日電気社製)にてコロナ処理を施したセパレータ(ハイポアND420 旭化成製)の片面に、ウェット塗布量24μm(番手12)でワイヤーバーを用いて逐次コートし、70℃で30分間乾燥した。さらに70℃で2時間の熱処理を実施した。
【0157】
(剥離強度測定用正極の作製)
LiNiCoMnO(MX6 ユミコア製)94重量部、導電助剤(SuperP TIMCAL製)3重量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)(KF#7200、クレハ製)3重量部にN−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリーを作製し、Al箔(厚さ15μm)に塗布した。乾燥した後、プレスし、120℃で3時間熱処理を実施し、電極嵩密度が3.0[g/cm]、目付け量が103[g/m]である正極を得た。
【0158】
(剥離強度測定用の負極の作製)
BTR918(改質天然黒鉛 BTR製)95重量部、導電助剤(SuperP TIMCAL製)2重量部、SBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックス(BM−400 日本ゼオン製)2重量部、CMC(カルボキシメチルセルロース)(セロゲン4H 第一工業製薬製)1重量部に水を加えてスラリーを作製し、Cu箔(厚さ10μm)に塗布した。乾燥した後、プレスし、150℃で3時間熱処理を実施し、電極嵩密度が1.6[g/cm]、目付け量が50[g/m]である負極を得た。
【0159】
(剥離強度測定用サンプルの作製)
上記により得られた正極および負極を2.5×5.0cmに切り出し、フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータを3.0×6.0cmに切ってそれぞれ接合させ、電解液(エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7、LiPF1.2M、VC1wt%)を120μL浸み込ませた後、Alラミネートセル中に真空脱気封入し、一晩静置した。
【0160】
このAlラミネートセルを熱プレスすることによって、対正極の剥離強度測定用サンプルおよび対負極の剥離強度測定用サンプルを得た。具体的には、対正極の剥離強度測定用サンプルおよび対負極の剥離強度測定用サンプルは、100℃において、1分間の余熱の後、2分間、面圧約4MPaで熱プレスを行うことで作製した。この対正極の剥離強度測定用サンプルおよび対負極の剥離強度測定用サンプルでは、熱プレスによって、フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータと電極(正極または負極)との界面にフッ素樹脂層を形成した。
【0161】
(剥離強度の測定)
作製した対正極の剥離強度測定用サンプルおよび対負極の剥離強度測定用サンプルについて、それぞれ正極または負極を固定し、引張試験機(ORIENTEC社製「STA−1150 UNIVERSAL TESTING MACHINE」)を使用し、ヘッド速度200mm/分で、180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
【0162】
〔SEM観察による多孔性の評価〕
各実施例および各比較例において得られたフッ素ポリマー粒子を用いてフッ素ポリマー粒子コーティングセパレータを作製した。電極(負極)とSEM観察用フッ素樹脂コーティングセパレータを熱プレスし、熱プレス後のフッ素樹脂層コーティングセパレータのSEM観察を行った。フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータおよび電極の製造方法について、以下に詳細に記載する。
【0163】
(コーティング組成物の作製)
剥離強度試験で作製したコーティング組成物の作製方法と同様の方法で調製したものをコーティング組成物とした。
【0164】
(SEM観察用フッ素樹脂層コーティングセパレータの作製)
剥離強度試験で作製したコーティングセパレータと同様の方法で作製した。
【0165】
(SEM観察用負極の作製)
剥離強度測定用負極と同様の方法で作製し、SEM観察用負極とした。
【0166】
(SEM観察用サンプルの作製および多孔性の評価)
上記により得られた負極を4.0×4.0cmに切り出し、フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータを4.0×4.0cmに切ってそれぞれ接合させ、電解液(エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7、LiPF6 1.2M、VC1wt%)を150μL浸み込ませた後、Alラミネートセル中に真空脱気封入し、一晩静置した。
【0167】
このAlラミネートセルを熱プレスした後、セパレータと負極を剥離し、セパレータを洗浄することによって、SEM観察用サンプルを得た。具体的には、SEM観察用サンプルは、100℃において、1分間、面圧約3MPaで熱プレスを行うことで、フッ素ポリマー粒子コーティングセパレータと電極(負極)との界面にフッ素樹脂層を形成した。続いて、フッ素樹脂層が形成されたコーティングセパレータと負極との界面を剥離し、セパレータをジメチルカーボネート(DMC)洗浄し、70℃で2時間乾燥処理を実施することで、SEM観察用サンプルを得た。
【0168】
作成したSEM観察用サンプルについて、走査電子顕微鏡(日本電子製「JSM−6510LA型」)を用いて、フッ素樹脂層が形成されたコーティングセパレータと電極(負極)との界面画像を撮影した。加速電圧5kVで倍率10,000倍撮影したSEM画像において、フッ素樹脂層に含まれる各粒子が粒子形状を維持していることが確認できたものを「多孔性あり」とし、粒子が熱プレスによって溶融して粒子形状を維持できていないものを「多孔性なし」とした。
【0169】
<結果>
各実施例および各比較例における粒子径、IR比、融点、剥離強度、およびSEM画像による多孔性の評価結果を、各実施例および各比較例におけるフッ素ポリマー粒子の仕込み組成比と併せて表1〜3に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明に係るコアシェル型粒子は、例えば、二次電池の製造において好適に利用することができる。
図1