特許第6864535号(P6864535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864535
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/16 20060101AFI20210419BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   F17C1/16
   F16J12/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-85274(P2017-85274)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-184972(P2018-184972A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525864(JP,A)
【文献】 特表2009−531625(JP,A)
【文献】 特開2016−203443(JP,A)
【文献】 特開2014−084900(JP,A)
【文献】 特開2004−211783(JP,A)
【文献】 特開2001−150523(JP,A)
【文献】 特開2001−173893(JP,A)
【文献】 特開2005−280973(JP,A)
【文献】 米国特許第5518141(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/16
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の胴部の端部にドーム部が連なった形態のライナーと、
前記ドーム部に当接される口金と、
前記ライナーの外面に巻き付けられた形態の繊維束を有する繊維強化樹脂層と、を備え、
前記ドーム部の端部は、前記胴部の軸線と交差する平板部とされるとともに、前記平板部の外周と前記胴部の端部とは曲面部によって繋がれており、
前記平板部と、前記曲面部との境は稜線とされ、
前記平板部の内面には、窪みが形成されており、
前記窪みは、前記稜線の裏よりも前記平板部の中心に寄った内側の位置に形成されていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記窪みは、パリソンの開口縁部を綴じ合わせたときに、金型で食い切りされた食い切り部の外側端部に由来することを特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒状の直胴部の両端にドーム部が形成されたライナーと、ドーム部の中心部に取り付けた口金と、ライナーの外周に形成された繊維強化樹脂層とを備えた圧力容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−045826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力容器は安全性の向上のため、更なる耐圧性が求められていた。そのためには、ライナーの強度向上が切望されていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、圧力容器のライナーの強度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力容器は、
略円筒状の胴部の端部にドーム部が連なった形態のライナーと、
前記ドーム部に当接される口金と、
前記ライナーの外面に巻き付けられた形態の繊維束を有する繊維強化樹脂層と、を備え、
前記ドーム部の端部は、前記胴部の軸線と交差する平板部とされるとともに、前記平板部の外周と前記胴部の端部とは曲面部によって繋がれており、
前記平板部と、前記曲面部との境は稜線とされ、
前記平板部の内面には、窪みが形成されており、
前記窪みは、前記稜線の裏よりも前記平板部の中心に寄った内側の位置に形成されていることを特徴とする圧力容器である。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、以下の作用効果が奏される。
ライナーのドーム部の内側には、えくぼ状の窪みが形成されている。本発明者らが鋭意検討したところ、窪みの位置がライナーの強度に影響することを見いだした。
本発明では、ドーム部が、平板部と、曲面部と、を備えており、平板部と、曲面部との境は稜線とされている場合に、内面の窪みの位置を、稜線の裏側位置よりも内側にずらしている。
窪みの位置が、稜線の真裏である場合には、次のようになる。すなわち、ライナーに応力がかかると、稜線部分に応力が集中しやすくなる。すると、稜線部分の真裏に強度の弱い窪みが存在して、クラックが発生するおそれがあり、ライナーの強度の向上があまり望めない。本発明では、窪みの位置が、稜線の裏側位置に対して、ずらしてあるから、応力がかかっても窪み部分には力が集中せず、強度保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の圧力容器の断面図である。
図2図1のB視平面図である。
図3】実施例1のライナーの斜視図である。
図4】従来例の圧力容器の断面図である。
図5図4のB視平面図である。
図6】従来例のライナーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の圧力容器では、前記窪みは、パリソンの開口縁部を綴じ合わせたときに、金型で食い切りされた食い切り部の外側端部に由来する構成であってもよい。
ブロー成形においては、金型で食い切りされた食い切り部の外周側端部に由来する窪みが形成される場合がある。この場合、窪みの位置が、稜線の裏側位置に対して、ずらしてあるので、応力がかかっても窪み部分には力が集中せず、強度向上できる。
【0010】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。本実施例1の圧力容器Aは、合成樹脂製のライナー10と、第1口金22(請求項に記載の口金)と、第2口金28と、繊維強化樹脂層33とを備えて構成されている。圧力容器Aは、燃料電池自動車や天然ガス自動車に搭載され、高圧の水素ガスや天然ガスの充填容器として用いられるものである。
【0011】
ライナー10は、図1に示すように、径寸法が全長に亘ってほぼ一定の円筒状をなす胴部11と、胴部11の軸線方向における一方の端部に連なる第1ドーム部12(請求項に記載のドーム部)と、胴部11の軸線方向における他方の端部に連なる第2ドーム部13とを備えた単一部品である。ライナー10の内部は、流体(水素ガスや天然ガス等)を貯留するための貯留空間14となっている。ライナー10は、ブロー成形によって所定形状に成形されている。ライナー10の材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)とエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等が用いられている。実施例1では、ライナー10は、HDPE層、変性PE層、バリア層の一例としてのEVOH層、変性PE層、HDPE層が外側から順に積層された構造を有する。
【0012】
第1ドーム部12の中心部には、胴部11の軸線と同軸の円形をなす貫通形態の筒状突出部15が一体に形成されている。筒状突出部15は第1ドーム部12の外部へ突出した形態である。ライナー10の外部空間と貯留空間14内は、筒状突出部15の内部空間を介して連通可能となっている。第1ドーム部12の端部は、胴部11の軸線と略直角をなす略円形の平板部16とされている。平板部16の直径は、胴部11の直径よりも小さくされている。
【0013】
平板部16の外周と胴部11の端部とは、曲面部17によって繋がれている。曲面部17は、円環状をなしている。平板部16と、曲面部17との境は稜線19とされている。すなわち、稜線19は、平板部16の外周円の位置に存在しており、略円形をなす。
【0014】
第2ドーム部13の中心部には、胴部11の軸線と同軸の円形をなす膨出部18が一体に形成されている。膨出部18は貫通しておらず、胴部11の他方の端部は第2ドーム部13によって閉塞されている。
【0015】
ライナー10は、下記のようなブロー成形法によって成形されている。成形に際しては、ブロー成形機(図示省略)から略円筒形のパリソン(図示省略)が軸線を上下方向に向けて下向きに押し出される。押し出されたパリソン内には下方からロッド(図示省略)が収容される。そして、パリソンが一対の金型で挟まれるとともに、ロッドを通して供給された加圧エアが、パリソンを金型のキャビティ内面に密着させる。この後、パリソンが硬化すれば、金型によるライナー10の成形工程が完了する。
【0016】
金型によって成形されたライナー10の平板部16には、パリソンの開口縁部を綴じ合わせたときに、金型で食い切られた痕であるピンチライン(食い切り部)21が形成される。ピンチライン21は、図2に示されるように、平板部16の中心を通る直線状に形成される。ピンチライン21は、平板部16の中心に対して対称な形態である。
平板部16の内面には、図3に示されるように外側へ向けて凹んだ一対の窪み20が形成されている。窪み20の深さは特に限定されないが、通常0.1〜5mmである。窪み20は、稜線19の裏側位置よりも平板部16の中心寄りの内側に配されている。窪み20は、ピンチライン21の外側端部に形成されている。一対の窪み20は、平板部16の中心を対称中心とした対称位置に形成されている。
【0017】
第1口金22は、軸線方向に貫通した円筒状をなす第1本体部23と、第1本体部23の軸線方向両端部のうち基端部から径方向外方へ張り出した第1フランジ部24とを備えた単一部品である。第1本体部23の内周の先端部には、第1雌ネジ部25が形成されている。第1口金22には、バルブ26が第1雌ネジ部25にねじ込まれることによって取り付けられる。
【0018】
第1口金22は、第1ドーム部12の平板部16を覆うようにライナー10に取り付けられている。第1口金22を取り付けた状態では、第1フランジ部24の内面が平板部16の外面に密着している。第1フランジ部24は第1本体部23と同心の円形をなし、第1フランジ部24の外径は、平板部16の外径とほぼ同じ寸法である。
【0019】
第2口金28は、円柱状をなす第2本体部29と、第2本体部29の軸線方向両端部のうち基端部から径方向外方へ張り出した第2フランジ部30とを備えた単一部品である。第2本体部29には、その先端面を同軸状に凹ませた形態の第2雌ネジ部31が形成されている。第2口金28は、第2ドーム部13の外面を覆うようにライナー10に取り付けられている。
【0020】
繊維強化樹脂層33は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスッチック等からなる。繊維強化樹脂層33は、フィラメントワインディング法、即ち、胴部11の軸線を中心として回転するライナー10及び口金22,28の外面に、繊維束に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、又は繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を巻き付けることによって形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0021】
<実施例1の効果>
ここで、実施例1の効果について、従来例と比較して説明する。
ブロー成形においては、金型で食い切りされた食い切り部の外側端部に由来する窪み20が形成される場合がある。従来例を図4〜6に示す。図4〜6において、実施例1と略同じ構成部位には同符号を付ける。図4の断面図は図1と同様となるが、図5〜6に実施例1との相違点が現れている。すなわち、図5〜6に示すように、窪み20の位置は、稜線19の真裏となっている。すなわち、窪み20は稜線19と重なった位置に形成されている。従来例の場合、ライナー10に応力がかかると、稜線19に応力が集中しやすくなる。すると、稜線19の真裏に強度の弱い窪み20が存在して、クラックが発生するおそれがある。
一方、実施例1では、図2〜3に示すように、窪み20の位置が、稜線19の裏側位置とずらしてあるから、応力がかかっても窪み20の部分には力が集中しない。
【0022】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0023】
(1)実施例1では、特定の多層構造のライナー10を例に挙げて説明したが、層の構成は特に限定されず、適宜変更することができる。
(2)なお、窪み20の位置を、稜線19の裏側位置よりも平板部16の中心寄りの内側に配するための方法は特に限定されない。例えば、ブロー比を調整することによって窪みの位置を所望位置とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
10…ライナー
11…胴部
12…第1ドーム部
13…第2ドーム部
14…貯留空間
15…筒状突出部
16…平板部
17…曲面部
18…膨出部
19…稜線
20…窪み
21…ピンチライン(食い切り部)
22…第1口金
23…第1本体部
24…第1フランジ部
25…第1雌ネジ部
26…バルブ
28…第2口金
29…第2本体部
30…第2フランジ部
31…第2雌ネジ部
33…繊維強化樹脂層
A…圧力容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6