特許第6864550号(P6864550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864550
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】電気自動車の充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20210419BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20210419BHJP
【FI】
   H02J3/14
   H02J7/02 J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-93964(P2017-93964)
(22)【出願日】2017年5月10日
(65)【公開番号】特開2018-191471(P2018-191471A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕一郎
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−066372(JP,A)
【文献】 特開2011−130593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の電気自動車に搭載されたバッテリを充電器により契約電力以下で順次充電する電気自動車の充電制御方法であって、
所定時間において、前記充電器への新規接続により充電器と最後に接続された電気自動車のバッテリの充電により、充電電力の合計が契約電力を超える場合の超過積算値が、前記充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超えない場合の差分積算値よりも少ないという条件を満足するか否かを判断し前記条件を満足するときは、前記充電器と最後に接続された電気自動車のバッテリの充電を開始し、前記条件を満足しないときは、前記充電器と最後に接続された電気自動車のバッテリの充電を停止するように、前記充電器を制御することを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項2】
前記超過積算値と前記差分積算値との大小比較は、前記電気自動車のバッテリが持つ充電曲線に基づいて実行される請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法。
【請求項3】
前記超過積算値と前記差分積算値との大小比較は、前記電気自動車のバッテリの充電時間に基づいて実行される請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の電気自動車に搭載されたバッテリを充電器により契約電力以下で順次充電する電気自動車の充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題から、内燃機関を搭載したガソリン自動車に代わるものとして、エネルギー源としてバッテリを搭載したプラグインハイブリッド車などの電気自動車が開発されている。
【0003】
これら電気自動車の場合、走行を継続する必要性から、バッテリを充電しなければならない。そのため、これら電気自動車の普及拡大を目的として、バッテリを充電するための給電インフラの整備が進められている。
【0004】
これら電気自動車の普及拡大に伴って、電気自動車のバッテリを充電するための充電装置が市街地などの各所に設置されることになる。電気自動車の利用者は、市街地などのいずれかの場所に移動し、その場所に設置された充電装置でもって電気自動車のバッテリを充電しなければならない。
【0005】
この電気自動車のバッテリを充電する充電装置として、1台の電気自動車に対して15〜30分で充電を完了する急速充電装置と称するものが開発され、実用化されている。この種の急速充電装置は、市街地などの場所に1台設置されているのが通常である。
【0006】
ここで、1台の急速充電装置により複数台の電気自動車のバッテリを充電する場合、利用者の待ち時間が長くなり、利用効率の悪化を招くことになる。そのため、従来では、1台の急速充電装置で複数台の電気自動車を効率よく充電する充電制御方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0007】
特許文献1で開示された充電制御方法は、電気自動車に接続可能な複数の給電プラグを有する急速充電装置により、充電実施時間帯、優先レベルおよび充電量などの様々な条件で電気自動車を登録し、その登録内容および登録順に基づいて電気自動車の充電を順次切り替えるようにしたものである。
【0008】
また、特許文献2で開示された充電制御方法は、電気自動車に接続可能な複数の充電アダプタを有する急速充電装置により、各充電アダプタに流れる電流値の合計が急速充電装置の最大出力電流値以下の範囲で最大となるようにしながら、複数台の電気自動車を同時に充電するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−90378号公報
【特許文献2】特開2011−130593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1で開示された充電制御方法では、充電実施時間帯、優先レベルおよび充電量などの様々な条件からなる登録内容および登録順に基づいて電気自動車の充電を順次切り替えるようにしている。
【0011】
また、特許文献2で開示された充電制御方法では、各充電アダプタに流れる電流値の合計が急速充電装置の最大出力電流値以下の範囲で最大となるようにしながら、複数台の電気自動車を同時に充電するようにしている。
【0012】
しかしながら、複数台の電気自動車のバッテリを充電することから、急速充電による電力ピークを抑制することが困難となる。このように、急速充電による電力ピークを抑制しつつ、複数台の電気自動車を効率的に低コストで急速充電する方法がないというのが現状であった。
【0013】
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、急速充電による電力ピークを抑制しつつ、複数台の電気自動車を効率的に低コストで急速充電し得る電気自動車の充電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電気自動車の充電制御方法は、複数台の電気自動車に搭載されたバッテリを充電器により契約電力以下で順次充電するものである。
【0015】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、所定時間において、充電器への新規接続により充電器と接続された電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超える場合の超過積算値が、充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超えない場合の差分積算値よりも少ないという条件を満足するように、充電器を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明では、複数台の電気自動車のバッテリを連続的に順次充電することで、電気自動車の利用者の待ち時間を短縮化することができ、利用効率の向上が図れる。
【0017】
また、所定時間において、充電器への新規接続により充電器と接続された電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超える場合の超過積算値が、充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超えない場合の差分積算値よりも少ないという条件を満足することから、電力ピークを抑制することができる。
【0018】
本発明において、超過積算値と差分積算値との大小比較は、電気自動車のバッテリが持つ充電曲線に基づいて実行されることが望ましい。
【0019】
このように、電気自動車のバッテリが持つ充電曲線に基づいて、超過積算値と差分積算値とを大小比較すれば、充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリについて、所定時間内での全体的な充電曲線を推定することで、電力ピークを容易に抑制することができる。
【0020】
本発明において、超過積算値と差分積算値との大小比較は、電気自動車のバッテリの充電時間に基づいて実行されることが望ましい。
【0021】
このように、電気自動車のバッテリの充電時間に基づいて、超過積算値と差分積算値とを大小比較すれば、充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリについて、単純に充電時間で区切ることで、電力ピークを簡便な手段により抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数台の電気自動車のバッテリを連続的に順次充電することで、電気自動車の利用者の待ち時間を短縮化することができ、利用効率の向上が図れる。
【0023】
また、所定時間において、充電器への新規接続により充電器と接続された電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超える場合の超過積算値が、充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリの充電電力の合計が契約電力を超えない場合の差分積算値よりも少ないという条件を満足することから、電力ピークを抑制することができる。
【0024】
その結果、充電による電力ピークを抑制しつつ、複数台の電気自動車を効率的に低コストで充電し得る電気自動車の充電制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態で、電気自動車の充電制御システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の他の実施形態で、電気自動車の充電制御システムの概略構成を示す模式図である。
図3図1および図2の実施形態における充電制御方法を充電曲線に基づいて実行する場合を示す特性図である。
図4図3の実施形態における充電制御方法を説明するためのフローチャートである。
図5図1および図2の実施形態における充電制御方法を充電時間に基づいて実行する場合を示す特性図である。
図6図5の実施形態における充電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る電気自動車の充電制御方法の実施形態を図面に基づいて以下に詳述する。
【0027】
なお、以下の実施形態では、15〜30分で充電完了する急速充電について説明するが、本発明はこれに限定されることなく、数時間〜十数時間で充電完了する通常の充電など他の充電にも適用可能である。
【0028】
図1は電気自動車の充電制御方法を実行するための充電制御システムの一例を示し、図2は充電制御システムの他例を示す。これら充電制御システムは、市街地などの充電ステーションに設置される。
【0029】
充電制御システムは、図1および図2に示すように、商用電源11に接続された電力量計12と、その電力量計12に接続された急速充電器13と、その急速充電器13に接続された蓄電器14と、電力量計12および急速充電器13に接続された制御器15とで主要部が構成されている。なお、電力量計12には、ベース電力を消費する照明装置などの負荷16も接続されている。
【0030】
電力量計12は、この充電制御システムの消費電力、つまり、急速充電器13、蓄電器14および負荷16で消費された電力量を計測する。急速充電器13は、複数台の電気自動車17に搭載されたバッテリ(図示せず)を電力量計12の契約電力以下で充電する。蓄電器14は、余剰電力を貯蔵して必要に応じて商用電源11に代わって急速充電器13に電力を供給する。制御器15は、電力量計12から得られた各種情報に基づいて急速充電器13を制御する。
【0031】
電力量計12の契約電力が、例えば200kWであれば、1台の電気自動車17に対して、例えば50kWまで充電可能な急速充電器13を設置すればよい。その場合、この充電制御システムでは、5台の電気自動車17に対して、50kW×5台=250kWまで充電可能な能力を有する。
【0032】
図1の充電制御システムでは、複数台(図では5台)の急速充電器13を備え、電気自動車17が1対1で急速充電器13に接続される。これに対して、図2の充電制御システムでは、1台の急速充電器13および急速充電器13に接続された複数個(図では5個)の充電プラグ18を備え、電気自動車17が1対1で充電プラグ18に接続される。
【0033】
以上の構成からなる充電制御システムにおいて、複数台の電気自動車17のバッテリを電力量計12の契約電力以下で急速充電する方法を以下に詳述する。
【0034】
図3は、3台の電気自動車17のバッテリを急速充電器13に順次接続して急速充電する場合を例示する。図3では、前述したように、急速充電器13の能力をX=250kW、契約電力をY=200kWとしている。
【0035】
ここで、最初に急速充電器13に接続される1台目の電気自動車17のバッテリをM1、次に急速充電器13に接続される2台目の電気自動車17のバッテリをM2、最後に急速充電器13に接続される3台目の電気自動車17のバッテリをM3とする。
【0036】
各電気自動車17のバッテリM1〜M3は、図3に示すように、急速充電器13に接続した時点から徐々に充電電力が減少する充電曲線L1〜L3を持つ。この充電曲線L1〜L3は、電気自動車17が搭載するバッテリ固有のものであり、バッテリの種類などによって異なる。また、充電曲線L1〜L3は、バッテリの種類が同じでも、充電開始時における充電電力の残量によっても変わってくる。
【0037】
図3に示す実施形態の充電制御方法では、電気自動車17のバッテリM1〜M3が持つ充電曲線L1〜L3に基づいて、所定時間(起点aから終点dまでの30分間)において、急速充電器13への新規接続により、最後に急速充電器13に接続された3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある3台の電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2+A3〔30分間積算値(abcdで囲まれた領域)の残量〕よりも少ないという条件を満足するように、急速充電器13を制御する。
【0038】
具体的には、急速充電器13を以下の要領でもって制御する。以下、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
新たに充電したい3台目の電気自動車17(EV)を急速充電器13に接続する(STEP1)。新規の電気自動車17を急速充電器13に接続した時点で、その電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超えていなければ、その電気自動車17のバッテリM3を即座に充電開始する(STEP2およびSTEP7)。
【0040】
電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超えている場合、電気自動車17のバッテリM1〜M3が持つ充電曲線L1〜L3に基づいて、以下のような処理が実行される。
【0041】
ここで、1台の急速充電器13で充電プラグ18により複数台の電気自動車17を充電する実施形態(図2参照)の場合、急速充電器13の能力を超過しているか否かを判断する(STEP3)。急速充電器13の能力を超過していない場合、電気自動車17のバッテリM1〜M3が持つ充電曲線L1〜L3に基づいて、以下のような処理が実行される。
【0042】
新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電曲線L3を推定すると共に、既に充電中である1台目および2台目の電気自動車17のバッテリM1,M2の充電曲線L1,L2を推定する。これにより、起点aから終点bまでの30分間における全体の充電曲線L1〜L3を推定する(STEP4およびSTEP5)。
【0043】
各バッテリM1〜M3の充電曲線L1〜L3は、データベースとして制御器15(図1および図2参照)の記憶部19に格納されている。バッテリM1〜M3の充電曲線L1〜L3の推定は、制御器15の記憶部19に格納されたデータベースに基づいて実行すればよい。
【0044】
ここで、前述したように、充電曲線L1〜L3は、充電開始時における充電電力の残量によっても変わってくる。そのため、充電曲線L1〜L3をパターン化したり、あるいは学習機能により充電曲線L1〜L3を利用ごとに更新したりすることで、充電曲線L1〜L3の推定が容易となる。
【0045】
ここで、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超えると、これが電力ピークPとなる。前述の契約電力Yは、30分間積算値(abcdで囲まれた領域)であり、電力量の基本料金の対象となることから、電力ピークPを抑制する必要がある。
【0046】
そこで、この実施形態の充電制御方法では、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電曲線L1〜L3に基づいて、新規に急速充電器13に接続された3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2+A3よりも少ないという条件を満足するか否かを常時監視する(STEP6)。
【0047】
新規に急速充電器13に接続された3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2+A3よりも少ないという条件を満足することで、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3を充電開始する(STEP7)。
【0048】
なお、前述の条件を満足していなければ、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3を充電することを停止する(STEP8)。
【0049】
このようにして、複数台の電気自動車17のバッテリM1〜M3を連続的に順次充電することで、電気自動車17の利用者の待ち時間を短縮化することができ、利用効率の向上が図れる。
【0050】
また、新たに充電したい3台目の電気自動車17、つまり、最後に急速充電器13に接続された電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2+A3よりも少ないという条件を満足することから、電力ピークPを抑制することができる。
【0051】
以上で説明した実施形態では、電気自動車17のバッテリM1〜M3が持つ充電曲線L1〜L3を推定することにより、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2+A3よりも少ないという条件を満足することで、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3を充電開始するようにしている。
【0052】
このように、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電曲線L1〜L3を推定することにより、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2+A3よりも少ないという条件を満足することで、電力ピークPを容易に抑制することができる。
【0053】
一方、前述の実施形態のように、超過積算値Bと差分積算値A1+A2+A3との大小比較を電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電曲線L1〜L3に基づいて実行する以外に、他の実施形態として、超過積算値と差分積算値との大小比較を電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間に基づいて実行するようにしてもよい。このバッテリM1〜M3の充電時間は、現状、例えば30分以内に規制されている。
【0054】
図5に示す実施形態の充電制御方法では、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間T1〜T3に基づいて、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある3台の電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2よりも少ないという条件を満足するように、急速充電器13を制御する。
【0055】
ここで、図5に示すように、バッテリM1の充電時間T1を30分とし、また、バッテリM2の充電時間T2を20分と10分とに2分割し、さらに、バッテリM3の充電時間T3を10分ずつに3分割している。
【0056】
具体的には、急速充電器13を以下の要領でもって制御する。以下、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0057】
新たに充電したい3台目の電気自動車17(EV)を急速充電器13に接続する(STEP1)。新規の電気自動車17を急速充電器13に接続した時点で、その電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超えていなければ、その電気自動車17のバッテリM3を即座に充電開始する(STEP2およびSTEP7)。
【0058】
電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超えている場合、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間T1〜T3に基づいて、以下のような処理が実行される。
【0059】
ここで、1台の急速充電器13で充電プラグ18により複数台の電気自動車17を充電する実施形態(図2参照)の場合、急速充電器13の能力を超過しているか否かを判断する(STEP3)。急速充電器13の能力を超過していない場合、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間T1〜T3に基づいて、以下のような処理が実行される。
【0060】
既に充電中である1台目および2台目の電気自動車17のバッテリM1,M2の充電電力(積算開始時の電力)を固定すると共に、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電電力(初期値)を固定する(STEP4およびSTEP5)。
【0061】
各バッテリM1〜M3の充電電力および充電時間T1〜T3は、データベースとして制御器15(図1および図2参照)の記憶部19に格納されている。バッテリM1〜M3の充電電力および充電時間T1〜T3の設定は、制御器15の記憶部19に格納されたデータベースに基づいて実行すればよい。
【0062】
ここで、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超えると、これが電力ピークPとなる。前述の契約電力Yは、30分間電力積算値(abcdで囲まれた領域)であり、電力量の基本料金の対象となることから、電力ピークPを抑制する必要がある。
【0063】
そこで、この実施形態の充電制御方法では、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間T1〜T3に基づいて、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2よりも少ないという条件を満足するか否かを常時監視する(STEP6)。
【0064】
新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2よりも少ないという条件を満足することで、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3を充電開始する(STEP7)。
【0065】
なお、前述の条件を満足していなければ、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3を充電することを停止する(STEP8)。
【0066】
このようにして、複数台の電気自動車17のバッテリM1〜M3を連続的に順次充電することで、電気自動車17の利用者の待ち時間を短縮化することができ、利用効率の向上が図れる。
【0067】
また、新たに充電したい3台目の電気自動車17、つまり、最後に急速充電器13に接続された電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2よりも少ないという条件を満足することから、電力ピークPを抑制することができる。
【0068】
以上で説明した実施形態では、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間T1〜T3に基づいて、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2よりも少ないという条件を満足することで、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3を充電開始するようにしている。
【0069】
このように、電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電時間T1〜T3により、新たに充電したい3台目の電気自動車17のバッテリM3の充電により、充電電力の合計が契約電力Yを超える場合の超過積算値Bが、急速充電器13と接続状態にある電気自動車17のバッテリM1〜M3の充電電力の合計が契約電力Yを超えない場合の差分積算値A1+A2よりも少ないという条件を判断基準として、単純に充電時間T1〜T3で区切ることで、電力ピークPを簡便な手段により抑制することができる。
【0070】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0071】
13 充電器(急速充電器)
17 電気自動車
A1〜A3 差分積算値
B 超過積算値
L1〜L3 充電曲線
M1〜M3 バッテリ
T1〜T3 充電時間
Y 契約電力
図1
図2
図3
図4
図5
図6