(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864562
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】目違い修正治具
(51)【国際特許分類】
B23K 37/04 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
B23K37/04 U
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-110053(P2017-110053)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-202448(P2018-202448A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】599115376
【氏名又は名称】樋脇 就三
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋脇 就三
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3125686(JP,U)
【文献】
特開2008−188636(JP,A)
【文献】
特開平8−158658(JP,A)
【文献】
特開昭64−53771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ同士の突合部分のズレを修正するための目違い修正治具であって、
該目違い修正治具は、
一方のフランジに掛止するコ字状の掛止部と、
前記一方のフランジの下部を押圧して、当該一方のフランジの上部に掛止した前記掛止部を固定するための固定用ボルトと、
他方のフランジの下部を押圧して、当該他方のフランジを強制的に押し上げるための押上げ用ボルトと、
一端部側に前記固定用ボルトが螺合され、他端部側に前記押上げ用ボルトが螺合される所要長さの基部と、
該基部の下部に間隔を開けて設けられる2枚の軸保持板と、
該軸保持板同士に渡って設けられ、前記掛止部の軸孔に軸通する軸部とからなり、
前記掛止部は、前記軸部に沿って移動可能であり、前記一方のフランジに対する掛止位置の調整ができる構成であること
を特徴とする目違い修正治具。
【請求項2】
前記基部は、前記固定用ボルト及び前記押上げ用ボルトが螺合される水平板と、該水平板の縁部から垂直に垂下する補強板とが一体に形成されてなること
を特徴とする請求項1に記載の目違い修正治具。
【請求項3】
前記掛止部には、前記軸部に沿って移動させるための把手が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の目違い修正治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨構造又は鉄筋構造等における形鋼、柱、梁等のフランジ同士の突合部分のズレを同じ高さに修正するための目違い修正治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄骨構造物又は鉄筋構造物等は、ブロック単位で製造されて、このブロック相互を溶接して大型構造物を完成させる場合等が多い。これら構造物の形鋼、柱、梁等のフランジ同士の突合部分の溶接に際しては、突合部分の位置がズレて目違いが生じていることがある。
【0003】
このように目違いが生じる理由としては、製造時等における寸法誤差や、取付時の取付誤差、あるいは、形鋼又は鋼板等の熱歪みによる変形など、様々な要因が複合的に作用し合っている。
【0004】
従来、このようなフランジ同士の突合部分の目違いを修正する場合は、例えば、両方のフランジに跨がる長さのプレートの一端を、低くなっているフランジに溶接し、プレートの他端と高くなっているフランジとの隙間に、ハンマーで楔を打ち込んで、高くなっているフランジを強制的に押し下げて、突合部分の目違いを同じ高さに修正している。
【0005】
なお、特開2012−225011号公報には、鉄骨構造あるいは鉄骨コンクリート構造において、鉄骨柱ごとにレベル調整を行うための、鉄骨柱の目違い修正装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−225011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来例の場合においては、プレートを溶接でフランジに取り付けるので、溶接作業の手間が発生する。また、フランジの突合部分の溶接が終了した後には、プレートをガス切りで除去したり、その後をグラインダーで仕上げる等の手間が必要である。そして、ガス切りに伴う煙や火炎の発生が危惧されるだけでなく、ハンマーで楔を打ち込む際の騒音問題も危惧されるという種々の問題点を有している。
【0008】
従って、従来例における場合においては、プレートを溶接する手間や、ガス切り及びグラインダー仕上げ等の手間を解消することと、ガス切りに伴う煙や火炎の発生や、ハンマーで楔を打ち込む際の騒音問題を解消することとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、フランジ同士の突合部分のズレを修正するための目違い修正治具であって、該目違い修正治具は、一方のフランジに掛止するコ字状の掛止部と、前記一方のフランジの下部を押圧して、当該一方のフランジの上部に掛止した前記掛止部を固定するための固定用ボルトと、他方のフランジの下部を押圧して、当該他方のフランジを強制的に押し上げるための押上げ用ボルトと、一端部側に前記固定用ボルトが螺合され、他端部側に前記押上げ用ボルトが螺合される所要長さの基部と、該基部の下部に間隔を開けて設けられる2枚の軸保持板と、該軸保持板同士に渡って設けられ、前記掛止部の軸孔に軸通する軸部とからなり、前記掛止部は、前記軸部に沿って移動可能であり、前記一方のフランジに対する掛止位置の調整ができる構成としたことである。
【0010】
また、前記基部は、前記固定用ボルト及び前記押上げ用ボルトが螺合される水平板と、該水平板の縁部から垂直に垂下する補強板とが一体に形成されてなること、;
前記掛止部には、前記軸部に沿って移動させるための把手が設けられていること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る目違い修正治具によれば、高くなっている一方のフランジの上にコ字状の掛止部を掛止させた状態で、一方のフランジの下方の固定用ボルトを締め付けて、掛止部を一方のフランジに固定し、次いで、低くなっている他方のフランジの下方の押上げ用ボルトを締め付けて、他方のフランジを強制的に押し上げ、両方のフランジを同じ高さ又は位置に修正することができる。
つまり、従来例のようにプレートをフランジに溶接する手間が必要なく、プレートのガス切りやグラインダー仕上げ等の手間が一切必要なく、また、ガス切りに伴う煙や火炎の発生がなく、ハンマーで楔を打ち込む際の騒音問題も発生しない。
特に、掛止部をフランジに掛止するときには、必要に応じて掛止部を軸部に沿って左右方向に移動することができるので、その結果、一方のフランジに対する掛止位置の調整が可能であるという優れた効果を奏する。
【0012】
基部は、固定用ボルト及び押上げ用ボルトが螺合される水平板と、水平板の縁部から垂直に垂下する補強板とが一体に形成されてなることによって、押上げ用ボルトを締め付けて他方のフランジの下部を押圧したときに、この押圧方向(
図3の矢印A方向)と逆方向(
図3の矢印B方向)の反力によって生じる、基部の歪みに対する耐性強度を向上させたという優れた効果を奏する。
【0013】
掛止部には、軸部に沿って移動させるための把手が設けられていることによって、掛止部の左右方向の移動が容易に行えるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る目違い修正治具11の斜視図である。
【
図2】本発明に係る目違い修正治具11の斜視図である。
【
図3】目違い修正治具11の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る目違い修正治具11の正面図である。
【
図5】本発明に係る目違い修正治具11の背面図である。
【
図6】本発明に係る目違い修正治具11の右側面図である。
【
図7】本発明に係る目違い修正治具11の左側面図である。
【
図8】掛止部13を軸部20に沿って移動した状態を示す背面図である。
【
図9】掛止部13を軸部20に沿って移動した状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、
図1から
図7において、符号11は目違い修正治具を示し、この目違い修正治具11は、高くなっている一方のフランジ12(
図3参照)に掛止する掛止部13と、フランジ12の下部を押圧して掛止部13を固定するための固定用ボルト14と、低くなっている他方のフランジ15の下部を押圧して当該フランジ15を強制的に押し上げるための押上げ用ボルト16と、固定用ボルト14及び押上げ用ボルト16が螺合される基部17と、基部17の下部17cに間隔を開けて設けられる2枚の軸保持板18と、軸保持板18同士に渡って設けられる軸部20とから構成される。
【0016】
掛止部13は、所要の厚みに形成されて、側面視がコ字状を呈しており、一方に張り出す上部13aと、上部13aの下方に連設する連設部13bと、連設部13bから一方に張り出す下部13cとが一体に形成されてなる(
図6及び
図7参照)。
掛止部13の下部13cには、軸孔19が形成されており、軸孔19に軸部20が軸通している(
図2、
図8及び
図9参照)。また、掛止部13には、軸部20に沿って左右方向に移動するための把手22が設けられている。
【0017】
固定用ボルト14は、
図1、
図4及び
図5に示すように、頭部14aと、螺旋部14bと、固定部14cとからなり、固定部14cは、上端が平らに形成されており、フランジ12の下部を押圧したときの押圧状態を安定して維持できるようになっている。
【0018】
押上げ用ボルト16は、
図1、
図4及び
図5に示すように、頭部16aと、螺旋部16bと、押上げ部16cとからなり、押上げ部16cは、上端が球状に形成されており、フランジ15の下部を押圧したときの押圧力が分散せずに、効率的に押上げが図れるようになっている。
【0019】
基部17は、所要の長さ及び厚みに形成されており、フランジと水平に位置させる水平板23と、水平板23の縁部から垂直に垂下する補強板24とが一体に形成されてなる。
そして、水平板23の一端部17a側には固定用ボルト14が螺合されており、他端部17b側には押上げ用ボルト16が螺合されている。
なお、固定用ボルト14と押上げ用ボルト16との螺合位置は、適宜交換することが可能であって、水平板23の一端部17a側に押上げ用ボルト16を螺合し、他端部17b側に固定用ボルト14を螺合しても良いことは勿論である。
【0020】
このように、基部17は、水平板23と、水平板23の縁部から垂直に垂下する補強板24とが一体に形成されてなることによって、押上げ用ボルト16を締め付けて他方のフランジ15の下部を押圧したときに、この押圧方向(
図3の矢印A方向)と逆方向(
図3の矢印B方向)の反力によって生じる、基部17の歪みに対する耐性強度を向上させたのである。
【0021】
軸保持板18は、角部18aを切欠いた略矩形状に形成されており(
図6及び
図7参照)、基部17の下部17cに所要の間隔を開けて2枚設けられている(
図5参照)。
【0022】
また、軸保持板18の上辺18bが、基部17の水平板23の下部17cと接合して(
図6及び
図7参照)ネジ25留めされており(
図1参照)、且つ軸保持板18の側辺18cが、基部17の補強板24の側部24aと接合して(
図6及び
図7参照)ネジ26留めされた構成である(
図1参照)。
【0023】
このように、軸保持板18の上辺18bが、水平板23の下部17cと接合してネジ25留めされ、且つ軸保持板18の側辺18cが、補強板24の側部24aと接合してネジ26留めされた構成であることによって、押上げ用ボルト16を締め付けて他方のフランジ15の下部を押圧したときに、この押圧方向(
図3の矢印A方向)と逆方向(
図3の矢印B方向)の反力によって生じる、基部17の歪みに対する耐性強度をさらに向上させたのである。
つまり、水平板23と補強板24とが直角に交わってなる基部17の存在と、水平板23の下部17cと補強板24の側部24aとに連接して強固に接合する軸保持板18の存在とが相俟って、基部17の歪みに対する耐性強度を飛躍的に向上させたのである。
【0024】
軸部20は、軸保持板18同士に渡って設けられる(
図5参照)。また、軸部20は、掛止部13の軸孔19に軸通している(
図2、
図8及び
図9参照)。従って、掛止部13は、
図8及び
図9に示すように、軸部20に沿って移動できる。その結果、掛止部13をフランジ12に掛止するときに、必要に応じて掛止部13を軸部20に沿って左右方向に移動させて、一方のフランジ12に対する掛止位置の調整が可能である。
【0025】
以上のように構成される目違い修正治具11は、高くなっている一方のフランジ12の上に掛止部13を掛止させた状態で、フランジ12の下方の固定用ボルト14を締め付けて、掛止部13をフランジ12に固定し、次いで、低くなっている他方のフランジ15の下方の押上げ用ボルト16を締め付けて、フランジ15を強制的に押し上げ、フランジ12とフランジ15とを同じ高さ又は位置に修正することができる(
図3参照)。
【0026】
この場合、目違い修正治具11の掛止部13は、軸孔19に軸部20が軸通しているので、掛止部13を軸部20に沿って移動することができる。従って、掛止部13をフランジ12に掛止するときに、必要に応じて掛止部13を軸部20に沿って左右方向に適宜移動させて、フランジ12に対する掛止位置の調整が可能である(
図8及び
図9参照)。即ち、現場の諸状況に応じて、掛止部13が掛止できる位置や、掛止状態が安定する最適な位置に、掛止部13を掛止できるのである。
【0027】
また、基部17は、水平板23と、水平板23の縁部から垂直に垂下する補強板24とが一体に形成されてなる。従って、押上げ用ボルト16を締め付けて他方のフランジ15の下部を押圧したときに、この押圧方向(
図3の矢印A方向)と逆方向(
図3の矢印B方向)の反力によって生じる、基部17の歪みに対する耐性強度を向上させた構造である。
【0028】
さらに、軸保持板18の上辺18bが、水平板23の下部17cと接合してネジ25留めされ、且つ軸保持板18の側辺18cが、補強板24の側部24aと接合してネジ26留めされた構成である。従って、軸保持板18が軸部20を保持する役目を果たすだけでなく、押上げ用ボルト16を締め付けて他方のフランジ15の下部を押圧したときに、この押圧方向(
図3の矢印A方向)と逆方向(
図3の矢印B方向)の反力によって生じる、基部17の歪みに対する耐性強度をさらに向上させた構造である。
【0029】
即ち、水平板23と補強板24とが直角に交わってなる基部17の存在と、水平板23の下部17cと補強板24の側部24aとに連接して強固に接合する軸保持板18の存在とが相俟って、基部17の歪みに対する耐性強度を飛躍的に向上させたのである。
【符号の説明】
【0030】
11 目違い修正治具
12 一方のフランジ
13 掛止部
13a上部
13b連設部
13c下部
14 固定用ボルト
14a頭部
14b螺旋部
14c固定部
15 他方のフランジ
16 押上げ用ボルト
16a頭部
16b螺旋部
16c押上げ部
17 基部
17a一端部
17b他端部
17c下部
18 軸保持板
18a角部
18b上辺
18c側辺
19 軸孔
20 軸部
22 把手
23 水平板
24 補強板
24a側部
25 ネジ
26 ネジ