(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁性板状フィラーは、焼成クレー、微粉タルク、珪藻土、マイカ、ハードクレー及び表面処理クレーからなる群から選択される少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項1に記載のウェザーストリップ。
前記絶縁性板状フィラーは、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を主成分とするケイ酸化合物によって構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェザーストリップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ゴム製部材(例えばウェザーストリップ)において、カーボンブラックの配合量を減らす一方で、他の絶縁性フィラーの配合量を単に増加させたとしても、十分な補強効果が得られず、ゴム製部材の物性、特に「引裂強さ」が低下してしまう。とりわけ、金属製の芯金が埋設されたウェザーストリップでは、押出成形等の一連の製造過程で、芯金に対しブレーキングや曲げ加工を施した際に、芯金の端部によって、芯金を被覆しているゴム系材料が引き裂かれて芯金が露出するという不具合を生ずることがある。
【0006】
本発明の目的は、車体の電蝕防止と、ウェザーストリップを構成するゴム系材料の引き裂き防止とを高いレベルで両立させることができるウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ゴム組成物と、そのゴム組成物の内部に埋設された芯金とによって構成される断面略U字形の取付部を備えてなるウェザーストリップにおいて、
前記ゴム組成物は、100質量部のEPDMに対して、60〜85質量部のカーボンブラック、45〜200質量部の絶縁性板状フィラー、及び、45〜80質量部の軟化剤を配合してなるものであり、
前記ゴム組成物の全質量に対する前記カーボンブラックの配合率が、10質量%以上、30質量%以下であり、
前記ゴム組成物は、JIS−K6271の二重リング電極法による測定試験での体積抵抗率が1.0×10
6Ωcm以上であると共に、JIS−K6252に規定するトラウザ形引裂強さが3.5N/cm以上である、ことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、ウェザーストリップの取付部を構成するゴム組成物において、カーボンブラックの配合率を30質量%以下に抑制することで、体積抵抗率を1.0×10
6Ωcm以上にして、車体取付時における電蝕を防止することが可能になる。その一方で、カーボンブラックの配合率を10質量%以上とすると共に、ゴム組成物に配合する絶縁性のフィラーとして絶縁性板状フィラーを選択することで、3.5N/cm以上のトラウザ形引裂強さを確保することが可能になる。その結果、取付部に芯金が埋設されたウェザーストリップの製造過程において、芯金のブレーキングその他の荷重付与的な加工操作を受けた場合でも、ウェザーストリップの一部に破れ等を生じて芯金が露出する事態(即ち不良品の発生)を極力回避することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のウェザーストリップにおいて、前記絶縁性板状フィラーは、焼成クレー、微粉タルク、珪藻土、マイカ、ハードクレー及び表面処理クレーからなる群から選択される少なくとも一種である、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、本発明で使用可能な絶縁性板状フィラーの選択肢を具体的に列挙したものであり、請求項1の発明と同様の効果を奏するものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のウェザーストリップにおいて、前記絶縁性板状フィラーは、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を主成分とするケイ酸化合物によって構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、本発明で使用可能な絶縁性板状フィラーの好ましい化学的形態を特定したものであり、請求項1又は2の発明と同様の効果を奏するものである。なお、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を主成分とするケイ酸化合物は、板状の結晶構造を取り易いことに加えて、EPDMポリマーとの間に分子間力が働くことで、ゴム組成物の引裂強さの向上に役立つ。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェザーストリップにおいて、
当該ウェザーストリップは押出成形品であり、
前記ゴム組成物の空隙率が35%以下であり、ここで、同一のゴム組成物を用いてプレス成形又は押出成形した場合におけるプレス成形品の比重をD1(g/cm
3)、押出成形品の比重をD2(g/cm
3)とすると、空隙率:VR(%)は、
VR=[(D1−D2)/D1]×100
で表される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明によれば、請求項1〜3の発明の効果に加えて更に以下のような効果を奏する。即ち、本発明に係るウェザーストリップが押出成形品であるにもかかわらず、少なくとも取付部を構成するゴム組成物が35%以下という低い空隙率を有することで、ゴム組成物中へのエア(空気)の混入が少なくなる。その結果、取付部の引裂強さが低下するのを極力防止することができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウェザーストリップにおいて、
当該ウェザーストリップは、前記取付部の内側領域に配設されると共に前記ゴム組成物で構成される保持リップを備えており、
前記ゴム組成物は、JIS−K6254による引張試験(ひずみ25%)での引張応力が0.5MPa以上のものである、ことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の発明の効果に加えて更に以下のような効果を奏する。即ち、保持リップを構成するゴム組成物が0.5MPa以上の引張応力(ひずみ25%)を有することで、保持リップの保持力が高まり、ウェザーストリップを車両の被取付部に対して確実に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明のウェザーストリップによれば、車体の電蝕防止と、ウェザーストリップを構成するゴム系材料の引き裂き防止とを高いレベルで両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細および好ましい実施形態について説明する。
【0020】
本発明のウェザーストリップは、ゴム組成物と、そのゴム組成物の内部に埋設された芯金とによって構成される断面略U字形の取付部を備えてなるものである。ウェザーストリップは、取付部(「トリム部」ともいう)の他に、中空状又はリップ状のシール部を具備する(
図1参照)。かかるウェザーストリップは一般に押出成形の手法によって連続成形され、概して長尺なゴム製の部材として提供される。なお、近時のウェザーストリップでは、取付部を構成するゴム組成物と、シール部を構成するゴム組成物とを異ならせることが通例となっているが、取付部とシール部とを同種のゴム組成物で構成することも可能である。
【0021】
本発明において取付部を構成するゴム組成物は主原料として、100質量部のEPDMに対して、60〜85質量部のカーボンブラック、45〜200質量部の絶縁性板状フィラー、及び、45〜80質量部の軟化剤を配合してなるものである。
【0022】
EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)は、一般にエチレンとプロピレンと第三成分としてのジエン(二重結合を二つ持った炭化水素成分)とを共重合させて得られるゴム材料であり、耐水性や耐候性に優れることから、ウェザーストリップ等の主たるゴム材料として多用されているものである。
【0023】
カーボンブラックは、EPDM主体のゴム組成物に添加することでゴムの強度を向上させる炭素成分である。カーボンブラックは、EPDM100質量部に対して60〜85質量部の範囲で配合される。カーボンブラックの配合量が60質量部未満になると、カーボンブラックの添加によるゴム強度向上を図れなくなるおそれがある。他方、カーボンブラックの配合量が85質量部を超えると、ゴム組成物の導電性が高くなり、所望の体積抵抗率(1.0×10
6Ωcm以上)を達成することが難しくなる。
【0024】
本発明のゴム組成物は、絶縁性板状フィラーを含有する。
一般に絶縁性フィラーは、その粒形又は結晶形に応じて、板状フィラー、紡錘状フィラー、針状フィラー、無定形フィラーに概ね分類される。これらのフィラーの中でも、ゴム強度(特に引裂強さ)の向上に最も資するのは板状フィラーであり、それよりも劣るのが紡錘状フィラー及び針状フィラーであり、ゴム強度の向上に最も不利なのが無定形フィラーである。故に本発明ではゴム強度向上を図るべく、上記カーボンブラックと共に絶縁性板状フィラーを併用している。
【0025】
絶縁性板状フィラーは、EPDM100質量部に対して45〜200質量部の範囲で配合される。絶縁性板状フィラーの配合量が45質量部未満になると、ゴム組成物の体積低効率が低下傾向となり、所望の体積抵抗率を達成する上で好ましくない。他方、絶縁性板状フィラーの配合量が200質量部を超えると、フィラーの入れ過ぎによって、むしろゴムの強度が低下してしまうという弊害が生じ好ましくない。
【0026】
絶縁性板状フィラーの具体例としては、焼成クレー、微粉タルク、珪藻土、マイカ、ハードクレー、表面処理クレーをあげることができる。また、絶縁性板状フィラーは、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を主成分とするケイ酸化合物によって構成されていることは好ましい。ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウムは板状の結晶構造を取り易く、EPDMポリマーとの間に分子間力が働くことでゴム組成物の引裂強さの向上に役立つからである。
【0027】
本発明のゴム組成物は、ゴムの加工性(例えば成形性)を高めるべく軟化剤を含有する。軟化剤としては、パラフィン系オイルを例示することができるが、これに限定されるものではない。この軟化剤は、EPDM100質量部に対して45〜80質量部の範囲で配合される。軟化剤の配合量が45質量部未満になると、ゴムの加工性が悪化するのみならず体積抵抗率を低下させる原因となり好ましくない。他方、軟化剤の配合量が80質量部を超えると、ゴムが柔らかくなり過ぎてゴム強度が低下し好ましくない。
【0028】
本発明のゴム組成物は、上記のカーボンブラック、絶縁性板状フィラー及び軟化剤以外にも、発泡剤、加硫活性剤、加工助剤(例えば滑剤)等を含有することができる。
発泡剤としては、OBSH(p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)、重曹、市販の熱膨張性マイクロカプセルを例示することができる。加硫活性剤としては、酸化亜鉛やステアリン酸を例示することができる。加工助剤としては、脂肪酸エステルを例示でき、脂肪酸エステルは押出成形時における滑剤として働く。
【0029】
本発明において、取付部を構成するゴム組成物は、上述のような主原料(即ち、EPDM、カーボンブラック、絶縁性板状フィラー及び軟化剤、並びに、必要に応じて発泡剤、加硫活性剤及び加工助剤)の他に、加硫用副原料を含むことができる。加硫用副原料としては、硫黄系加硫剤(例えば硫黄)や加硫促進剤(例えば、チラウム系DPTT、チアゾール系MDB、ジチオカルバミン酸塩系ZnMDC)が挙げられる。なお、加硫用副原料の配合量は非常に僅かであり、主原料300〜400質量部に対して加硫用副原料は概ね10質量部で足りる(即ち、主原料と加硫用副原料とをあわせた全質量に対する加硫用副原料の配合比率:約2.4質量%〜約3.2質量%)。
【0030】
なお、取付部を構成するゴム組成物に対し上記の加硫用副原料を添加して加硫処理を施す場合、JIS−K6300−2に規定する50%加硫時間(加硫反応の中間点)が1分以内となるような短時間条件で加硫処理を施すことが好ましい。50%加硫時間を1分以内にとどめることで、長時間加熱による高分子同士の離間を抑制してゴム組成物の空隙率の増大を防止することができ、ひいては加硫後のゴム組成物の空隙率を35%以下に制御し易くなる。
【0031】
取付部を構成するゴム組成物において、当該ゴム組成物の全質量に対する前記カーボンブラックの配合率は、10質量%以上30質量%以下(より好ましくは12質量%以上25質量%以下)である。ここで、「ゴム組成物の全質量」とは、原則としてEPDM及びそこへの添加物を全てあわせた質量をいい、上記主原料の他に上記加硫用副原料を併用する場合には、主原料と加硫用副原料とをあわせた全質量を意味するものである。なお、カーボンブラックの配合率が10質量%未満になると、所望のゴム強度(3.5N/cm以上のトラウザ形引裂強さ)を確保することが難しくなる。他方、カーボンブラックの配合率が30質量%を超えると、ゴム組成物の導電性が高くなり所望の体積抵抗率を達成することが難しくなる。
【0032】
上述のような条件を満たすゴム組成物は、JIS−K6271の二重リング電極法による測定試験での体積抵抗率が1.0×10
6Ωcm以上であると共に、JIS−K6252に規定するトラウザ形引裂強さが3.5N/cm以上であるように調製することができる。その結果、当該ゴム組成物からなる取付部を備えたウェザーストリップは、車体取付時における電蝕を防止することが可能になるのみならず、取付部に芯金が埋設されたウェザーストリップの製造過程において、芯金のブレーキングその他の荷重付与的な加工操作を受けた場合でも、ウェザーストリップの一部に破れ等を生じて芯金が露出する事態を極力回避可能となる。
【0033】
本発明によれば、ウェザーストリップが押出成形法で製造された押出成形品であると共に、当該ウェザーストリップの取付部を構成するゴム組成物の空隙率が35%以下であることは、大変好ましい。その場合には、ウェザーストリップが押出成形品であるにもかかわらず、ゴム組成物が低い空隙率を有することで、ゴム組成物中へのエア(空気)の混入が少なくなり、その結果、取付部の引裂強さが低下するのを極力防止することが可能になる。
【0034】
なお、空隙率:VR(%)は、次のように定義される。
VR=[(D1−D2)/D1]×100
ここで、D1とは、同一のゴム組成物を用いてプレス成形(プレス圧:180kgf/cm
2=17.6MPa)した場合におけるプレス成形品の比重(g/cm
3)を示す。他方、D2とは、同一のゴム組成物を用いて押出成形(押出時大気圧)した場合における押出成形品の比重(g/cm
3)を示す。
【0035】
また、ウェザーストリップが、前記取付部の内側領域に配設されると共に上記ゴム組成物と同種のゴム組成物で構成される保持リップを備える場合には、上記ゴム組成物は、JIS−K6254による引張試験(ひずみ25%)での引張応力が0.5MPa以上のものであることは好ましい。かかる引張応力を有するゴム組成物によれば、保持リップの保持力が高まり、ウェザーストリップを車両の被取付部(例えばフランジ部位)に対して確実に取り付けることが可能になる。
【0036】
本発明は、あらゆる形態の車両用ウェザーストリップに適用することができるが、とりわけ
図1に例示するような断面形態のウェザーストリップへの適用に適している。
【0037】
図1について説明すると、
図1のウェザーストリップは、取付部10と、その取付部10に隣接し且つ一体化された中空トンネル状のシール部20とを有している。取付部10は、車体側の被取付部(
図1ではフランジF)に対し直接的に取り付けられる部位であり、横断面が略U字形となるように屈曲形成された金属製の芯金11と、その芯金11を被覆するように付着されたゴム被覆部12とを有している。換言すれば、芯金11はゴム被覆部12の内部に埋設されている。そして、取付部10の内側領域にはそのゴム被覆部12から突出した複数の保持リップ13(
図1では4つ)が設けられている。これらの保持リップ13は前記フランジFをそれらの間に挟み込むことで当該ウェザーストリップを車体に対し装着させる。なお、ゴム被覆部12及び保持リップ13は、本発明に係るゴム組成物によって一体成形されている。
【0038】
なお、
図1のウェザーストリップは更に、ゴム被覆部12の外側表面から外方向に突出形成された3つの補助リップ(第1車外側リップ14a、第2車外側リップ14b及び車内側リップ14c)を有している。これらの補助リップ(14a,14b,14c)は、中空トンネル状のシール部20を構成するスポンジゴム組成物と同じ材料で構成されている。当該スポンジゴム組成物は、ゴム被覆部12及び保持リップ13を構成する本発明に係るゴム組成物よりも軟質な材料である。
【0039】
図1に示すような取付部10を有するウェザーストリップは、概ね
図2に示すような一連のプロセスを経て製造される。
【0040】
図2(A)は押出成形前の裸の芯金30の一部分を示す。押出成形前の芯金30は、魚骨状又は櫛歯状に平面展開した金属製の長尺な薄板材であり、芯金の長手方向に沿って複数の芯金単位Uが連結された構造を有する。芯金単位Uの各々は、中央片部31並びにその左右両側に位置する左片部32及び右片部33から構成されている。芯金30の長手方向において前後に並んだ二つの芯金単位U(の中央片部31)の境界部を連結部34と呼ぶことにすると、複数の芯金単位Uが複数の連結部34を介して長手方向に連結されることで、魚骨状又は櫛歯状の長尺な薄板材としての芯金30が構成されている。
【0041】
本発明では、
図2(A)に示す芯金30をインサート(挿入物)として使用する押出成形が行われる。この押出成形では、芯金30及び本発明に係るゴム組成物を原材料とする取付部の押出成形と、上記スポンジゴム組成物を原材料とするシール部の押出成形とが同期して行われる。
図2(B)は、この同期的な押出成形によって得られるところの、芯金30がゴム被覆部12(ゴム組成物)内に埋設されてなる取付部の第1中間体101(ブレーキング前で且つU字曲げ前の中間体)を概念的に示す。なお、取付部の第1中間体101の上側にはシール部20が一体的に存在するが、図面の複雑化を避けるために
図2(B)では敢えてシール部20を描いていない(次の
図2(C)も同様)。
【0042】
続いて、
図2(B)の取付部の第1中間体101は、公知のブレーキング加工装置に導かれてブレーキングを施される。ブレーキング加工装置は一般に、前記第1中間体101に対して引張り荷重や曲げ荷重を多重的・連続的に付与するように構成されており、かかる多重的・連続的な荷重付与によって芯金の各連結部34をブレーキング(即ち「破断」)する。
図2(C)は、各連結部34が破断された状態にある取付部の第2中間体102(ブレーキング後で且つU字曲げ前の中間体)を概念的に示す。ブレーキング後においては、芯金30を構成する各芯金単位Uは互いに切り離された状態にある。尚、本発明に係るゴム組成物を用いて取付部を押出成形した場合には、ブレーキング時にゴム被覆部12の一部が破れたり破断したりして芯金30の端部が露出するといった好ましくない事態の発生を極力防止することができる。
【0043】
その後、
図2(C)の取付部の第2中間体102は、公知のU字曲げ加工装置に導かれてU字曲げを施される。具体的には、互いに切り離された芯金単位Uの各々において、中央片部31に対して左片部32及び右片部33がそれぞれ略直角に折り曲げられ、芯金30に付着したゴム被覆部12共々、
図1に示すような略U字の断面形に整形される。尚、本発明に係るゴム組成物を用いて取付部を押出成形した場合には、U字曲げ加工時にゴム被覆部12の一部が破れたり破断したりして芯金11の端部が露出するといった好ましくない事態の発生を極力防止することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を具体化した実施例1,2及び3、並びに、これら実施例と対比されるべき比較例1,2及び3について説明する。
【0045】
以下に述べる実施例及び比較例に係るゴム組成物を調製するための主原料として、次のものを使用した。
EPDM: 三井化学株式会社製「EPT3092M」及び「EPT4045M」を混合して使用した。
カーボンブラック: 旭カーボン株式会社製「旭#60UG」
絶縁性板状フィラーの一種である焼成クレー(主成分はケイ酸アルミニウム): バーゲス・ピグメント社製「アイスバーグ」
絶縁性板状フィラーの一種である微粉タルク(主成分はケイ酸マグネシウム): イメリス・スペシャリティーズジャパン株式会社製「ミストロンベーパー」
無定形フィラーの一種である重質炭酸カルシウム: 白石工業株式会社製「ホワイトンB」
軟化剤としてのパラフィン系オイル: 出光興産株式会社製「ダイアナ プロセスPW90」
発泡剤としてのOBSH: 永和化成工業株式会社製「ネオスレンRM40N」
【0046】
また、ゴム組成物を調製するための主原料と併用する加硫用副原料として、硫黄系加硫剤と三種類の加硫促進剤との混合物を使用した。具体的には、硫黄系加硫剤として硫黄(鶴見化学工業株式会社製「金華印 微粉硫黄 200メッシュ」を用いると共に、加硫促進剤として、チラウム系DPTT(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーTRA」、チアゾール系MDB(同社製「ノクセラーMDB」)およびジチオカルバミン酸塩系ZnMDC(同社製「ノクセラーPZ」)の三種類を用いた。以下では、上記硫黄系加硫剤(硫黄)と上記三種類の加硫促進剤との混合物を「加硫用副原料混合物」と称する。
【0047】
[実施例1]
後掲の表1に示すように、EPDM(100質量部)に対し、カーボンブラック、絶縁性板状フィラーとしての焼成クレー及び微粉タルク、パラフィン系オイル(軟化剤)、酸化亜鉛、ステアリン酸、並びに脂肪酸エステルを表1に示す配合量で配合すると共に混練機で混練して主原料混合物を調製した。更にその主原料混合物に対し前記加硫用副原料混合物を約3質量%となるように添加すると共に、混練機で混練して実施例1のゴム組成物(加硫前)を調製した。
実施例1のゴム組成物(加硫前)と
図2(A)に示したような芯金30とを用いて押出成形(押出成形温度:80〜100℃)を行い、一次成形品(
図2(B)の取付部の第1中間体101参照)を得た。その後、一次成形品を180℃以上に加熱してゴム組成物での加硫反応を促進した。加硫後の一次成形品に対してブレーキングを施すと共に(
図2(C)参照)、U字曲げ加工を施すことで、
図1に示すような断面形状のウェザーストリップを得た。得られたウェザーストリップについて後述のような各種の測定や試験を行った。その結果を表1に記す。
【0048】
[実施例2]
後掲の表1に示すように、EPDM(100質量部)に対し、カーボンブラック、絶縁性板状フィラーとしての焼成クレー及び微粉タルク、パラフィン系オイル(軟化剤)、OBSH(発泡剤)、酸化亜鉛、ステアリン酸、並びに脂肪酸エステルを表1に示す配合量で配合すると共に混練機で混練して主原料混合物を調製した。更にその主原料混合物に対し前記加硫用副原料混合物を約3質量%となるように添加すると共に、混練機で混練して実施例2のゴム組成物(加硫前)を調製した。この実施例2は、OBSH(発泡剤)を使用する点で実施例1と異なる。
その後、実施例1と同様に、押出成形、加硫反応、ブレーキングおよびU字曲げ加工を施して、
図1に示すような断面形状のウェザーストリップを得た。実施例2のウェザーストリップについての各種の測定や試験の結果を表1に記す。
【0049】
[実施例3]
後掲の表1に示すように、EPDM(100質量部)に対し、カーボンブラック、絶縁性板状フィラーとしての焼成クレー、パラフィン系オイル(軟化剤)、酸化亜鉛、ステアリン酸、並びに脂肪酸エステルを表1に示す配合量で配合すると共に混練機で混練して主原料混合物を調製した。更にその主原料混合物に対し前記加硫用副原料混合物を約3質量%となるように添加すると共に、混練機で混練して実施例3のゴム組成物(加硫前)を調製した。この実施例3は、絶縁性板状フィラーとして焼成クレーのみを用いる点で実施例1と異なる。
その後、実施例1と同様に、押出成形、加硫反応、ブレーキングおよびU字曲げ加工を施して、
図1に示すような断面形状のウェザーストリップを得た。尚、実施例3での50%加硫時間(JIS−K6300−2)は0.65分であった。実施例3のウェザーストリップについての各種の測定や試験の結果を表1に記す。
【0050】
[比較例1]
後掲の表2に示すように、比較例1は、実施例2(発泡剤を配合)の場合よりも発泡剤の配合量を多くした点(つまり実施例2よりもゴム組成物の空隙率を高めた点)のみが異なり、その他は実施例2と同じ条件としたものである。
比較例1のウェザーストリップについての各種の測定や試験の結果を表2に記す。
【0051】
[比較例2]
後掲の表2に示すように、比較例2は、実施例3の場合よりもカーボンブラックの配合量をかなり多くした点が基本的に異なり、その他は実施例3と概ね同じ条件としたものである。尚、比較例2での50%加硫時間(JIS−K6300−2)は0.85分であった。比較例2のウェザーストリップについての各種の測定や試験の結果を表2に記す。
【0052】
[比較例3]
比較例3は、板状フィラーに代えて無定形フィラーを用いたものに相当する。具体的には後掲の表2に示すように、EPDM(100質量部)に対し、カーボンブラック、無定形フィラーとしての重質炭酸カルシウム、パラフィン系オイル(軟化剤)、酸化亜鉛、ステアリン酸、並びに脂肪酸エステルを表2に示す配合量で配合すると共に混練機で混練して主原料混合物を調製した。更にその主原料混合物に対し前記加硫用副原料混合物を約3質量%となるように添加すると共に、混練機で混練して比較例3のゴム組成物(加硫前)を調製した。
その後、実施例1と同様に、押出成形、加硫(反応)、ブレーキングおよびU字曲げ加工を施して、
図1に示すような断面形状のウェザーストリップを得た。比較例3のウェザーストリップについての各種の測定や試験の結果を表2に記す。
【0053】
以下、各ウェザーストリップに対する各種の測定や試験について簡潔に説明する。
【0054】
[体積抵抗率]
JIS−K6271の二重リング電極法に基づいて体積抵抗率(単位:Ωcm)を求めた。試験装置として、デジタル超高抵抗/微小電流計5451(株式会社エーディーシー社製)を使用した。体積抵抗率(ρ)は次の計算式により算出される。
ρ=(V/I)*(π*d
2)/(4*t)
ここで、
V:試験片に印加した電圧(ボルト)
I:体積抵抗測定時の電圧印加1分後の電流(A)
π:円周率
d:主電極の外径(cm)
t:試験片の厚さ(cm)
【0055】
[引裂強さ]
JIS−K6252に規定するトラウザ形引裂強さを求めた。即ち、トラウザ形試験片の切込みを起点として引き裂くのに要する力の中央値(JIS−K6274参照)を試験片の厚さで除して得た値を引裂強さ(単位:N/cm)とした。
【0056】
[空隙率]
既に説明した通り、ゴム組成物をプレス成形(プレス圧:180kgf/cm
2=17.6MPa)した場合におけるプレス成形品の比重D1(g/cm
3)、および、同一のゴム組成物を押出成形(押出時大気圧)した場合における押出成形品の比重D2(g/cm
3)の測定結果から、前述の計算式に基づいて空隙率(VR)を算出した。
【0057】
[破れ等の有無]
ブレーキング及びU字曲げ加工を経た後のそれぞれのウェザーストリップにおけるゴム被覆部12の表面を目視観察することで、破れ等の有無を判定した。ゴム被覆部の一部に破れや破断が認められた場合には「×」(即ち不良品)と評価し、ゴム被覆部に破れや破断が認められない場合には「○」(即ち良品)と評価した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例及び比較例についての考察]
実施例1〜3はいずれも、良好な体積抵抗率を示すのみならず、良好な引裂強さを示すと共にゴム被覆部における破れ等も認められず、全般に所期の性能を確保できた。
【0061】
比較例1ではゴム被覆部に破れ等の発生が認められた。比較例1は、実施例2との対比において発泡剤をやや過剰に配合した事例にあたる。比較例1では発泡剤の過剰配合に起因して、空隙率が本発明での上限値(35%)を超えると共に、引裂強さが本発明での下限値(3.5N/cm)を下回る結果となり、ゴム被覆部の破れ等につながったものと思われる。
【0062】
比較例2は、実施例3との対比においてカーボンブラックを過剰配合した事例にあたる。比較例2では、ゴム被覆部に破れ等の発生は認められなかったものの、体積抵抗率が本発明での下限値(1.0×10
6Ωcm)を大きく下回る結果となった。
【0063】
比較例3ではゴム被覆部に破れ等の発生が認められた。比較例3は、板状フィラーに代えて無定形フィラー(重質炭酸カルシウム)を使用した事例にあたる。実施例1〜3と比較例3との対比から、カーボンブラックの配合量を従来よりも低減した条件の下では、同じ絶縁性フィラー類であっても無定形フィラーよりも板状フィラーの方が、必要な引裂強さを確保しゴム被覆部の破れ等を防止する上で有利であることがわかる。
【0064】
なお、実施例3での50%加硫時間(0.65分)は比較例2での50%加硫時間(0.85分)よりも短くなっており、そのことが、比較例2の空隙率よりも実施例3の空隙率が小さくなった理由と考えられる。