特許第6864587号(P6864587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6864587-排ガス浄化システム 図000002
  • 特許6864587-排ガス浄化システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864587
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】排ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20210419BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   F01N3/08 C
   F01N3/20 C
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-167121(P2017-167121)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-44664(P2019-44664A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】島村 遼一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】松田 千尋
(72)【発明者】
【氏名】松山 翔
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 純人
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−104970(JP,A)
【文献】 特開2001−159309(JP,A)
【文献】 特開2009−275686(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0040089(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106050485(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において生じる排ガスが通過可能な排気管と、
前記排気管に介在される排ガス浄化触媒と、
前記排ガス浄化触媒よりも下流側において前記排気管に介在されるプラズマリアクタと、
前記プラズマリアクタに電力を印加する電源と、
前記排ガス浄化触媒における浄化性能を検知する触媒センサと、
前記電源の出力を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、
前記触媒センサの検知に基づいて、前記排ガス浄化触媒の劣化の度合いを算出し、
前記排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じた電力を前記プラズマリアクタに印加するように、前記電源の出力を制御する
ことを特徴とする、排ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化システム、詳しくは、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分が含まれており、これらを浄化するための手段として、排ガス浄化用触媒(三元触媒)およびプラズマリアクタが知られている。
【0003】
排ガス浄化触媒およびプラズマリアクタは、例えば、排ガス流路に介在されており、具体的には、例えば、エンジンに取り付けられた排ガス管に接続された第一のNOx還元触媒装置と、第一の還元触媒装置に接続された放電プラズマ装置と、放電プラズマ装置に接続された第二のNOx還元触媒装置と、放電プラズマ装置に高電圧を供給する高電圧電源と、第二のNOx還元触媒装置に接続された酸化触媒装置とを備える排ガス処理装置が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−275686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載される排ガス処理装置では、NOx還元触媒装置中の触媒が使用に伴って劣化し、排ガス浄化性能が低下するという不具合がある。
【0006】
一方、触媒の劣化を見込んで過剰量の触媒を使用することも検討される。しかし、このような方法では、高コスト化を惹起するという不具合がある。
【0007】
本発明は、低コストで排ガス浄化性能の低下を抑制できる排ガス浄化システムである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、内燃機関において生じる排ガスが通過可能な排気管と、前記排気管に介在される排ガス浄化触媒と、前記排ガス浄化触媒よりも下流側において前記排気管に介在されるプラズマリアクタと、前記プラズマリアクタに電力を印加する電源と、前記排ガス浄化触媒における浄化性能を検知する触媒センサと、前記電源の出力を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記触媒センサの検知に基づいて、前記排ガス浄化触媒の劣化の度合いを算出し、前記排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じた電力を前記プラズマリアクタに印加するように、前記電源の出力を制御する、排ガス浄化システムを含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化システムでは、触媒センサにより、排ガス浄化触媒における浄化性能を検知し、その検知に基づいて、排ガス浄化触媒の劣化の度合いを算出し、排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じた電力を、電源からプラズマリアクタに印加する。
【0010】
このような排ガス浄化システムによれば、排ガス浄化触媒が劣化しても、排ガス浄化性能が低下した度合いに応じて、より高い出力でプラズマリアクタを作動させることができ、プラズマリアクタによる排ガス浄化性能を向上させることができる。
【0011】
その結果、本発明の排ガス浄化システムによれば、低コストで排ガス浄化性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の排ガス浄化システムの一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、図1の制御ユニットにおいて実行される制御処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.排ガス浄化システムの全体構成
図1において、排ガス浄化システム1は、例えば、自動車のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関2から排出される排ガスを浄化するシステムである。このような排ガス浄化システム1および内燃機関2が、自動車のエンジンユニット10を構成する。
【0014】
排ガス浄化システム1は、内燃機関2において生じる排ガスが通過可能な排気管3と、排気管3に介在される触媒ユニット4と、触媒ユニット4よりも下流側において排気管3に介在されるプラズマリアクタ5と、プラズマリアクタ5に電力を印加(供給)する電源6とを備えている。
【0015】
排気管3は、内燃機関2の各気筒から排ガスを排出するために設けられる管(例えば、エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプなど)であって、内燃機関2で生じる排ガスの排気経路を構成している。
【0016】
触媒ユニット4は、排気管3における排ガスの流れ方向途中部分において、排ガスに含まれる有害成分を浄化するために設けられている。
【0017】
有害成分は、内燃機関2の種類などに応じて異なるが、例えば、内燃機関2がガソリンエンジンである場合は、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)などが挙げられ、また、内燃機関2がディーゼルエンジンである場合は、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などが挙げられる。
【0018】
このような触媒ユニット4は、内部に排ガス浄化触媒を備えている。より具体的には、触媒ユニット4は、例えば、触媒担体およびその担体上にコーティングされる排ガス浄化触媒を備えている。
【0019】
排ガス浄化触媒は、上記した有害成分の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、公知の三元触媒(貴金属触媒など)などが挙げられる。
【0020】
プラズマリアクタ5は、触媒ユニット4よりも排ガスの流れ方向下流側において、触媒ユニット4で浄化されずに残存する有害成分(後述)を浄化するために設けられている。
【0021】
より具体的には、プラズマリアクタ5は、詳しくは図示しないが、排気管3と一体的に形成される矩形筒状の筐体部と、筐体部の内側において互いに間隔を隔てて対向配置される複数の誘電板および電極とを備えている。このようなプラズマリアクタ5では、電極に電力を印加(供給)することにより、電力に応じた出力でプラズマが発生する。
【0022】
電源6は、プラズマリアクタ5に電力を印加するために設けられており、プラズマリアクタ5の電極(図示せず)に電気的に接続されている(図1破線参照。)。そして、電源6からプラズマリアクタ5の電極に対して電力が印加(供給)されることにより、プラズマリアクタ5内にプラズマが発生する。
【0023】
このような電源6としては、例えば、直流電源、交流電源、パルス電源などが挙げられ、好ましくは、パルス電源が挙げられる。
【0024】
また、詳しくは後述するが、電源6は、制御ユニット8(後述)に電気的に接続されており、後述する制御フローに基づいて、その動作が制御される。
【0025】
さらに、排ガス浄化システム1は、上記した排ガス浄化触媒の浄化性能を検知する触媒センサ7と、上記した電源6の出力を制御する制御ユニット8とを備えている。
【0026】
触媒センサ7としては、排ガス浄化触媒の浄化性能を検知することができれば、特に制限されず、公知の触媒センサが用いられる。例えば、排ガス浄化触媒における酸素吸蔵量を測定することによって、その浄化性能を検知する触媒センサ(例えば、特開2011−185172号公報に記載の触媒劣化検出装置)や、例えば、排ガス浄化触媒よりも上流側に配置されるフロント空燃比センサの応答性と、排ガス浄化触媒よりも下流側に配置されるリア空燃比センサの応答性とを対比することにより、排ガス浄化触媒の浄化性能を検知する触媒センサ(例えば、特開2013−189902号公報記載の触媒劣化判定装置など)などが挙げられる。
【0027】
触媒センサ7によって、排ガス浄化触媒の浄化性能を測定することにより、後述する制御ユニット8が、排ガス浄化触媒の初期の浄化性能に対する劣化の度合いを算出可能としている。
【0028】
制御ユニット8は、排ガス浄化システム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されている。
【0029】
この制御ユニット8は、触媒センサ7および電源6に電気的に接続されており(図1破線参照)、上記した触媒センサ7の検知に基づいて、電源6の出力を制御する。
【0030】
2.排ガスの浄化
図1に示される排ガス浄化システム1において、内燃機関2が駆動開始されると、内燃機関2から排ガスが生じ、排気管3に供給される(図1矢印参照。)。
【0031】
排ガスは、排気管3内を通過して、触媒ユニット4に供給される。
【0032】
触媒ユニット4では、排ガス中の有害成分の少なくとも一部が、排ガス浄化触媒によって浄化(除去)される。その後、排ガスは、触媒ユニット4から排出される。
【0033】
このとき、触媒ユニット4を通過した排ガスには、排ガス浄化触媒によって浄化されずに残存する有害成分(すなわち、未浄化の有害成分)が、含まれる場合がある。
【0034】
このような場合、上記の排ガス浄化システム1では、触媒ユニット4よりも下流側において、プラズマリアクタ5を駆動させることにより、未浄化の有害成分を浄化することができる。
【0035】
より具体的には、触媒ユニット4を通過した排ガスは、排気管3を介して、プラズマリアクタ5に供給される。
【0036】
このとき、プラズマリアクタ5の電極に対して、電源6から所定の電力を供給することにより、プラズマリアクタ5内にプラズマを発生させる。その結果、プラズマリアクタ5を通過する排ガス中の有害成分(すなわち、触媒ユニット4における未浄化の有害成分)が、プラズマ処理(除去)される。
【0037】
その後、排ガスは、プラズマリアクタ5から排出され、排気管3の下流側端部から大気開放される。
【0038】
上記したように、この排ガス浄化システム1では、排ガス中の有害成分が、触媒ユニット4およびプラズマリアクタ5によって浄化される。
【0039】
触媒ユニット4およびプラズマリアクタ5により浄化される有害成分の割合は、特に制限されないが、排ガス浄化システム1の使用初期において、例えば、有害成分の総量100%に対して、触媒ユニット4による浄化割合が、例えば、90〜100%であり、プラズマリアクタ5による浄化割合が、0〜10%である。
【0040】
換言すれば、触媒ユニット4およびプラズマリアクタ5によって浄化される有害成分の割合が上記範囲になるように、触媒ユニット4の浄化性能(すなわち、排ガス浄化触媒の種類および量など)と、プラズマリアクタ5の浄化性能(すなわち、プラズマ出力など)とが初期設計される。
【0041】
また、触媒ユニット4による浄化割合と、プラズマリアクタによる浄化割合との総量は、例えば、95%以上、好ましくは、98%以上、より好ましくは、99%以上であり、通常、100%以下である。
【0042】
3.排ガス浄化触媒の劣化
上記の排ガス浄化システム1を長期間使用すると、その使用に伴って排ガス浄化触媒が劣化し、排ガス浄化性能が低下する場合がある。一方、排ガス浄化触媒の劣化を見込んで過剰量の触媒を使用することも検討されるが、このような方法では、高コスト化を惹起するという不具合がある。
【0043】
そこで、この排ガス浄化システム1では、以下に示すように、プラズマリアクタ5の出力を制御することにより、排ガス浄化性能の低下を抑制する。
【0044】
図2は、図1に示される排ガス浄化システム1において実行される制御処理を示すフロー図である。
【0045】
なお、図2に示す制御処理は、制御ユニット8のROMに記憶されており、その制御処理が制御ユニット8の中央処理装置(CPU)により実行される。
【0046】
以下、制御ユニット8において実行される制御処理について、図2を参照して詳述する。
【0047】
この制御処理は、図2にスタートとして示されるように、内燃機関2の駆動開始をトリガーとして開始される。
【0048】
内燃機関2の駆動が開始されると、上記したように、排ガスが触媒ユニット4およびプラズマリアクタ5を順次通過し、排ガス中の有害成分が浄化される。一方、このような排ガスの浄化によって、触媒ユニット4中の排ガス浄化触媒が劣化する。
【0049】
そこで、この制御処理では、上記のように排ガスを浄化するとともに、触媒センサ7によって、排ガス浄化触媒の浄化性能を検知する(ステップS1)。
【0050】
このとき、触媒センサ7で検知された浄化性能は、電気信号として制御ユニット8に入力される。
【0051】
そして、この制御処理では、排ガス浄化触媒の浄化性能が、初期の浄化性能に対して劣化しているか否かが、制御ユニット8において判断される(ステップS2)。
【0052】
排ガス浄化触媒の浄化性能が、初期の浄化性能に対して劣化していないと判断される場合(ステップS2:NO)、排ガス浄化触媒の浄化性能が、初期の浄化性能に対して劣化していると判断されるまで、上記の処理が繰り返される。
【0053】
一方、排ガス浄化触媒の浄化性能が、初期の浄化性能に対して劣化していると判断される場合(ステップS2:YES)、その排ガス浄化触媒の劣化の度合いが、触媒センサ7の検知に基づいて、制御ユニット8により算出される(ステップS3)。
【0054】
劣化の度合いの算出方法は、特に制限されず、公知の方法から適宜選択される。より具体的には、触媒センサ7の種類などにもよるが、例えば、触媒センサ7により検知される空燃比の応答性や、空燃比ピークが検知される回数などから、排ガス浄化触媒の劣化の度合いを算出することができる。
【0055】
そして、この排ガス浄化システム1では、排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じた電力をプラズマリアクタ5に印加するように、電源6の出力を制御する(ステップS4)。
【0056】
すなわち、排ガス浄化触媒の浄化性能が、排ガス浄化システム1の使用初期に比べて劣化している場合、触媒ユニット4で浄化されずに残存する有害成分(未浄化の有害成分)が増加する。
【0057】
このような場合、プラズマリアクタ5の出力が排ガス浄化システム1の使用初期から一定であると(すなわち、プラズマリアクタ5による有害成分の浄化効率が一定であると)、未浄化の有害成分の増加分を処理することができない。
【0058】
その結果、排気管3から大気開放される排ガスに、比較的多くの有害成分が含有されるという不具合を生じる。
【0059】
そこで、この排ガス浄化システム1では、排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じて、電源6の出力を制御し、プラズマリアクタ5の出力を使用初期に比べて増大させる。
【0060】
より具体的には、この排ガス浄化システム1では、予め、排ガス浄化触媒による浄化性能と、プラズマリアクタ5による浄化性能とをマッピングして、浄化性能マップを作成する。すなわち、まず、排ガス浄化触媒が初期の浄化性能であり、かつ、プラズマリアクタ5が初期の浄化性能(出力)である場合の、排ガスの総合浄化率を算出する。一方、排ガス浄化触媒が初期の浄化性能に対して劣化した場合、プラズマリアクタ5の浄化性能(出力)をどの程度増大させることで、排ガスの総合浄化率を維持できるかについて、算出する。
【0061】
浄化性能は、例えば、浄化前の排ガスに含まれる有害成分量(100%)から、浄化後の排ガスに含まれる有害成分量(例えば、1%)を差し引くことにより、有害成分の浄化率(例えば、99%)として求めることができる。
【0062】
すなわち、排ガス浄化触媒の浄化性能は、内燃機関2から排出され、触媒ユニット4に供給される排ガス(図1のA点における排ガス)中の有害成分量と、触媒ユニット4から排出される排ガス(図1のB点における排ガス)中の有害成分量とを測定し、触媒ユニット4において除去された有害成分の割合(浄化率)を算出することにより、求めることができる。
【0063】
また、プラズマリアクタ5の浄化性能は、触媒ユニット4から排出され、プラズマリアクタ5に供給される排ガス(図1のB点における排ガス)中の有害成分量と、プラズマリアクタ5から排出される排ガス(図1のC点における排ガス)中の有害成分量とを測定し、プラズマリアクタ5において除去された有害成分の割合(浄化率)を算出することにより、求めることができる。
【0064】
また、排ガスの総合浄化率は、内燃機関2から排出され、触媒ユニット4に供給される排ガス(図1のA点における排ガス)中の有害成分量と、プラズマリアクタ5から排出される排ガス(図1のC点における排ガス)中の有害成分量とを測定し、触媒ユニット4およびプラズマリアクタ5において除去された有害成分の総量の割合(浄化率)を算出することにより、求めることができる。
【0065】
そして、このような排ガス浄化システム1では、排ガス浄化触媒の浄化率が低下した場合、排ガス浄化触媒の浄化率の低下分を補填するように、プラズマリアクタ5の出力を増大させる。
【0066】
以下において、内燃機関2から排出され、排ガス浄化触媒およびプラズマリアクタ5により浄化される前の排ガス(図1のA点における排ガス)中の有害成分量を、有害成分量Aとする。
【0067】
また、触媒ユニット4から排出され、プラズマリアクタ5に供給される排ガス(図1のB点における排ガス)中の有害成分量を、有害成分量Bとする。
【0068】
また、プラズマリアクタ5から排出される排ガス(図1のC点における排ガス)中の有害成分量を、有害成分量Cとする。
【0069】
例えば、排ガス浄化システム1の設計段階において、排ガス浄化触媒が、有害成分量Aの99%を浄化できる性能となるように設計され、かつ、プラズマリアクタ5が、有害成分量Aの0%を浄化する(すなわち、プラズマリアクタ5を作動させない)ように設計される場合について、説明する。
【0070】
このとき、有害成分量Bは、有害成分量Aに対して、1%である。また、有害成分量Cは、有害成分量Aに対して、1%である。すなわち、排ガスの初期の総合浄化率は99%である。
【0071】
このような排ガス浄化システム1において、排ガス浄化触媒が劣化し、排ガス浄化触媒の浄化率が1%低下した場合(すなわち、排ガス浄化触媒の浄化率が99%から98%に低下した場合)には、有害成分量Bが、有害成分量Aに対して、1%から2%に増加する。
【0072】
このような場合、排ガス浄化触媒の浄化率の低下分を補填するように、プラズマリアクタ5の出力を増大させる。
【0073】
より具体的には、排ガス浄化触媒の劣化により、有害成分量Bが有害成分量Aに対して2%になった場合、プラズマリアクタ5を作動させ、その出力を調整することにより、プラズマリアクタ5の浄化率を0%から50%に上昇させる。これにより、有害成分量B(有害成分量Aに対して2%)のうちの50%、つまり、有害成分量Aに対して1%を、プラズマリアクタ5において除去することができる。
【0074】
このように、有害成分量Aの1%を浄化する出力でプラズマリアクタ5を作動させることにより、有害成分量Cが、有害成分量Aに対して1%に低減される。その結果、排ガスの総合浄化率を、初期の総合浄化率(99%)に維持することができる。
【0075】
また、例えば、排ガス浄化システム1の設計段階において、排ガス浄化触媒が、有害成分量Aの95%を浄化できる性能となるように設計され、かつ、プラズマリアクタ5が、有害成分量Aの4%を浄化するように作動される場合について、説明する。
【0076】
このとき、有害成分量Bは、有害成分量Aに対して、5%である。また、有害成分量Cは、有害成分量Aに対して、1%である。すなわち、排ガスの初期の総合浄化率は99%である。
【0077】
また、プラズマリアクタ5は、有害成分量B(有害成分量Aに対して5%)を、有害成分量C(有害成分量Aに対して1%)に低減している。このとき、プラズマリアクタ5の浄化率は、80%である。
【0078】
このような排ガス浄化システム1において、排ガス浄化触媒が劣化し、排ガス浄化触媒の浄化率が1%低下した場合(すなわち、排ガス浄化触媒の浄化率が95%から94%に低下した場合)には、有害成分量Bが、有害成分量Aに対して、5%から6%に増加する。
【0079】
このような場合、上記と同様に、排ガス浄化触媒の浄化率の低下分を補填するように、プラズマリアクタ5の出力を増大させる。
【0080】
より具体的には、排ガス浄化触媒の劣化により、有害成分量Bが有害成分量Aに対して6%になった場合、プラズマリアクタ5を作動させ、その出力を調整することにより、プラズマリアクタ5の浄化率を80%から83%に上昇させる。これにより、有害成分量B(有害成分量Aに対して6%)のうちの83%、つまり、有害成分量Aに対して5%を、プラズマリアクタ5において除去することができる。
【0081】
このように、有害成分量Aの5%を浄化するようにプラズマリアクタ5を作動させることにより、有害成分量Cが、有害成分量Aに対して1%に低減される。その結果、排ガスの総合浄化率を、初期の総合浄化率(99%)に維持することができる。
【0082】
また、例えば、排ガス浄化システム1の設計段階において、排ガス浄化触媒が、有害成分量Aの90%を浄化できる性能となるように設計され、かつ、プラズマリアクタ5が、有害成分量Aの9%を浄化するように作動される場合について、説明する。
【0083】
このとき、有害成分量Bは、有害成分量Aに対して、10%である。また、有害成分量Cは、有害成分量Aに対して、1%である。すなわち、排ガスの初期の総合浄化率は99%である。
【0084】
また、プラズマリアクタ5は、有害成分量B(有害成分量Aに対して10%)を、有害成分量C(有害成分量Aに対して1%)に低減している。このとき、プラズマリアクタ5の浄化率は、90%である。
【0085】
このような排ガス浄化システム1において、排ガス浄化触媒が劣化し、排ガス浄化触媒の浄化率が1%低下した場合(すなわち、排ガス浄化触媒の浄化率が90%から89%に低下した場合)には、有害成分量Bが、有害成分量Aに対して、10%から11%に増加する。
【0086】
このような場合、上記と同様に、排ガス浄化触媒の浄化率の低下分を補填するように、プラズマリアクタ5の出力を増大させる。
【0087】
より具体的には、排ガス浄化触媒の劣化により、有害成分量Bが有害成分量Aに対して11%に増加した場合、プラズマリアクタ5を作動させ、その出力を調整することにより、プラズマリアクタ5の浄化率を91%に上昇させる。これにより、有害成分量B(有害成分量Aに対して11%)のうちの91%、つまり、有害成分量Aに対して10%を、プラズマリアクタ5において除去することができる。
【0088】
このように、有害成分量Aの10%を浄化するようにプラズマリアクタ5を作動させることにより、有害成分量Cが、有害成分量Aに対して1%に低減される。その結果、排ガスの総合浄化率を、初期の総合浄化率(99%)に維持することができる。
【0089】
以上のように、排ガス浄化触媒の浄化率が低下した場合(例えば、有害成分量Aの1%分が低下した場合)、プラズマリアクタ5の出力の増大により、排ガス浄化触媒の浄化率の低下分(例えば、有害成分量Aの1%)を、プラズマリアクタ5の浄化率に加算することができ、初期の総合浄化率を維持することができる。
【0090】
なお、プラズマリアクタ5における出力と、プラズマリアクタ5の浄化率とは、所定の相関式の関係にあることから、プラズマリアクタ5の浄化率を決定すれば、プラズマリアクタ5の出力も決定される。
【0091】
上記のような計算に基づいて、排ガス浄化触媒の劣化の度合い(浄化率の低下の度合い)と、プラズマリアクタ5の出力と、排ガスの総合浄化率との関係をマッピングし、浄化性能マップを得る。なお、得られた浄化性能マップは、制御ユニット8のROMに格納される。
【0092】
そして、上記した制御処理によって、排ガス浄化触媒が劣化していると判断され、その劣化の度合いが算出された場合、制御ユニット8では、上記の浄化性能マップに基づいて、排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じて、初期の排ガスの総浄化率を維持できるように、電源6の出力を制御する(ステップS4)。
【0093】
これにより、プラズマリアクタ5の出力を増大して、触媒ユニット4において浄化されずに残存する有害成分(未浄化の有害成分)を、より高い出力のプラズマリアクタ5において浄化する。
【0094】
これにより、排ガス浄化触媒の劣化によって、未浄化の有害成分が増加した場合にも、その有害成分の増加分を、高出力のプラズマリアクタ5により浄化することができる。
【0095】
その結果、排気管3から大気開放される排ガス中の有害成分を低減することができる。
【0096】
なお、上記の制御処理は、内燃機関2が停止されるまで繰り返される(リターン)。
【0097】
4.作用・効果
上記したように、排ガス浄化システム1では、触媒センサ7により排ガス浄化触媒における浄化性能を検知し、その検知に基づいて、排ガス浄化触媒の劣化の度合いを算出し、排ガス浄化触媒の劣化の度合いに応じた電力を、電源6からプラズマリアクタ5に印加する。
【0098】
このような排ガス浄化システム1によれば、排ガス浄化触媒が劣化しても、排ガス浄化性能が低下した度合いに応じて、より高い出力でプラズマリアクタ5を作動させることができ、プラズマリアクタ5による排ガス浄化性能を向上させることができる。
【0099】
その結果、上記の排ガス浄化システム1によれば、低コストで排ガス浄化性能の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0100】
1 排ガス浄化システム
2 内燃機関
3 排気管
4 触媒ユニット
5 プラズマリアクタ
6 電源
7 触媒センサ
8 制御ユニット
図1
図2