特許第6864598号(P6864598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6864598-放射性金属廃棄物の除染装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864598
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】放射性金属廃棄物の除染装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20210419BHJP
   C25F 3/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G21F9/28 571E
   G21F9/28 571F
   C25F3/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-199816(P2017-199816)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-74382(P2019-74382A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅輝
(72)【発明者】
【氏名】神田 昌典
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−266691(JP,A)
【文献】 米国特許第07384529(US,B1)
【文献】 特開平03−017600(JP,A)
【文献】 特開2006−192021(JP,A)
【文献】 特開昭58−016100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/06
C25F 3/00
C25F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射性金属廃棄物を電解研磨によって除染する除染装置であって、
電解液が収容される貯留槽と、
電源装置と、
複数の陰極と、
前記複数の陰極の1つと前記電源装置とを電気的に接続する第1の接続部材と、
前記複数の放射性金属廃棄物の1つと前記電源装置とを電気的に接続する第2の接続部材と、
前記電源装置に接続されていない前記陰極と前記電源装置に接続されていない前記放射性金属廃棄物とを電気的に接続する1つ又は複数の第3の接続部材と、を備えており、
前記第1、第2及び第3の接続部材と前記複数の陰極と前記複数の放射性金属廃棄物とが、前記電源装置と直列に接続されている、除染装置。
【請求項2】
前記電源装置を作動したときに、前記電源装置と前記複数の陰極と前記複数の接続部材との間に電流が流れていないことを報知する報知器をさらに備える、請求項1に記載の除染装置。
【請求項3】
前記複数の陰極の1つをそれぞれ固定する複数の固定治具と、
前記複数の放射性金属廃棄物の1つをそれぞれ保持する複数の保持治具と、をさらに備えており
前記放射性金属廃棄物は、円筒状であり、
前記保持治具は、前記放射性金属廃棄物をその軸線に沿って垂直に載置する底面を有しており、
前記第1の接続部材は、前記固定治具の1つに接続され、
前記第2の接続部材は、前記保持治具の1つに接続され、
前記第3の接続部材は、前記固定治具及び前記保持治具に接続される、請求項1又は2に記載の除染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、放射性金属廃棄物を除染する除染装置に関する。詳細には、複数の放射性金属廃棄物を電解研磨によって除染する除染装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や放射性物質を取り扱う施設において、設備の廃止や解体、或いは運転に伴い発生する金属廃棄物の中には、放射能レベルが基準値以上の金属廃棄物(以下、放射性金属廃棄物とも称する)が含まれる。処分の観点からは、これらの金属廃棄物はその表面を除染して放射能レベルを基準値以下に下げてから処理されることが望ましい。放射性金属廃棄物の除染方法としては、電解研磨等によって放射性金属廃棄物の表面を除去する技術が開発されている。例えば、特許文献1の除染装置では、陽極治具に接続された陽極台が貯留槽内に設置されており、陽極台の上部に円筒状の放射性金属廃棄物が設置されている。また、貯留槽内には陰極治具が設置され、陰極治具には陰極が接続されている。陰極は、円筒状の放射性金属廃棄物の内部を軸方向に貫通するように設置される。複数の放射性金属廃棄物と陰極は、電源装置と並列に接続されており、陽極治具と陰極治具に電圧を印加すると、同時に複数の放射性金属廃棄物の表面が電解研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−17600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の除染装置では、複数の放射性金属廃棄物が同時に除染処理されており、このような場合には、複数の放射性金属廃棄物の全てが除染される必要がある。しかしながら、特許文献1の除染装置では、複数の放射性金属廃棄物と陰極が電源装置に並列に接続しているため、複数の放射性金属廃棄物のうちの1つが適切に接続されていなくても、他の放射性金属廃棄物に電流が流れる。このため、複数の放射性金属廃棄物の中に電源装置に適切に接続されていないものがあっても検知することができず、複数の放射性金属廃棄物の全てが除染されない虞がある。本明細書は、複数の放射性金属廃棄物の全てを同時に除染でき、除染漏れが生じることを防止する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する除染装置は、複数の放射性金属廃棄物を電解研磨によって除染する。除染装置は、電解液が収容される貯留槽と、電源装置と、複数の陰極と、複数の陰極の1つと電源装置とを電気的に接続する第1の接続部材と、複数の放射性金属廃棄物の1つと電源装置とを電気的に接続する第2の接続部材と、電源装置に接続されていない陰極と電源装置に接続されていない放射性金属廃棄物とを電気的に接続する1つ又は複数の第3の接続部材と、を備えている。第1、第2及び第3の接続部材と複数の陰極と複数の放射性金属廃棄物とが、電源装置と直列に接続されている。
【0006】
上記の除染装置では、複数の陰極と複数の接続部材と複数の放射性金属廃棄物が電源装置と直列に接続されているため、これらが適切に接続されていない部分が一箇所でもあると、回路全体に電流が流れない。このため、適切に接続されていない部分があることを容易に検出することができる。したがって、除染装置を適切に作動させることができ、複数の放射性金属廃棄物の全てを同時に除染でき、除染漏れが生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係る除染装置の概略構成を模式的に示す図。
図2】実施例2に係る除染装置の概略構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1)本明細書が開示する除染装置は、電源装置を作動したときに、電源装置と複数の陰極と複数の接続部材との間に電流が流れていないことを報知する報知器をさらに備えていてもよい。このような構成によると、報知器によって、電源装置と複数の陰極と複数の接続部材と複数の放射性金属廃棄物が適切に接続されていない箇所があることを作業者に報知することができる。したがって、除染処理が適切に行われないことを回避することができる。
【実施例】
【0010】
(実施例1)
以下、実施例に係る除染装置10について説明する。除染装置10は、例えば、原子力発電所や放射性物質を取り扱う施設に設置される配管等の円筒状の放射性金属廃棄物2を除染する。配管等の場合、放射性物質を含む成分が配管等の内周内を通過するため、その内表面が放射性物質によって汚染される。このため、本実施例の除染装置10は、円筒状の放射性金属廃棄物2の内表面を電解研磨するように構成される。図1に示すように、除染装置10は、貯留槽12と、電源装置16と、後述する電極部22を固定する固定治具20と、放射性金属廃棄物2を保持可能な保持治具40と、接続配線50、52、54と、報知器30と、制御装置32を備えている。
【0011】
貯留槽12は、上面が解放された箱型形状を有している。貯留槽12の表面は絶縁性材料で覆われており、固定治具20及び保持治具40と絶縁されている。貯留槽12の内部には、固定治具20及び保持治具40が上方から挿入可能となっている。貯留槽12には、電解液14が満たされている。貯留槽12には、図示しない濾過装置が接続されている。貯留槽12内に貯留される電解液14は、濾過装置に送り出されて濾過され、貯留槽12に戻されるようになっている。すなわち、電解液14は、貯留槽12と濾過装置の間を循環するようになっている。電解液14は、電解研磨に用いられる公知の電解液を用いることができ、例えば、リン酸溶液を含有する電解液を用いることができる。電解液14内に放射性金属廃棄物2と電極部22を浸漬した状態で、放射性金属廃棄物2が陽極として機能すると共に電極部22が陰極として機能するように放射性金属廃棄物2と電極部22との間に電圧を印加すると、放射性金属廃棄物2の表面が電気化学的に溶解する。すなわち、放射性金属廃棄物2の表面を構成する鉄などの金属及び表面に付着した放射性物質が電解液14中に溶解する。
【0012】
固定治具20は、放射性金属廃棄物2を除染する際に陰極となる電極部22が固定されている。固定治具20を貯留槽12内に配置することによって、電極部22は貯留槽12内に配置される。固定治具20の表面は絶縁性材料で覆われており、これらの表面に電解液14中に溶解した金属等が付着しないようになっていると共に、貯留槽12及び保持治具40と絶縁される。固定治具20は、貯留槽12内の底面に載置される。固定治具20は、貯留槽12内に複数載置可能となっており、本実施例では、3つの固定治具20が貯留槽12内に載置される。以下、3つの固定治具20を区別する必要があるときは固定治具20a、20b、20cのように沿字のアルファベットを用いて記載し、区別する必要のないときは単に固定治具20と記載する場合がある。また、他の構成要素についても同一構成のものについて区別する必要がないときは、上記と同様に沿字のアルファベットを省略して単に数字で記載することがある。なお、貯留槽12内に載置される固定治具20の数は特に限定されるものではなく、2つであってもよいし、3つより多くてもよい。また、固定治具20は、接続部24を備えており、接続部24は、接続配線50又は接続配線54に接続される。接続部24と接続配線50又は接続配線54との接続については、後に詳述する。
【0013】
電極部22は棒状であり、ステンレス鋼で形成されている。なお、本実施例の電極部22はステンレス鋼で形成されているが、このような構成に限定されない。電極部22は放射性金属廃棄物2を除染する際に陰極として機能できる構成であればよく、例えば、チタンやジルコニウム等のチタン族に属する金属で形成されていてもよいし、チタン族に属する金属以外の金属で形成されていてもよい。電極部22は、固定治具20内の底面上に、底面に対して垂直に設置されている。また、1つの固定治具20に対して、1本の電極部22が固定されている。電極部22と固定治具20とは、電気的に接続されている。貯留槽12内に複数の固定治具20を配置することによって、貯留槽12内には固定治具20と同数の電極部22が設置される。したがって、本実施例では、貯留槽12内に3本の電極部22が配置される。なお、電極部22は、「陰極」の一例である。
【0014】
なお、本実施例では、固定治具20が貯留槽12内の底面に載置されるが、このような構成に限定されない。固定治具20が貯留槽12と電気的に接続されない状態で電極部22を電解液14中に浸漬できる構成であればよく、例えば、固定治具は上部に水平方向に突出する突起を備えており、その突起が貯留槽12の上面に当接することで、固定治具が貯留槽12の上面に支持されるように構成されていてもよい。
【0015】
保持治具40は、放射性金属廃棄物2を保持し、固定治具20内に設置可能となっている。保持治具40の表面は絶縁性部材で覆われており、これらの表面が電解研磨されないようになっていると共に、固定治具20及び貯留槽12と絶縁される。保持治具40は、図示しない把持部を備えており、放射性金属廃棄物2を把持する。把持部が放射性金属廃棄物2を把持した状態で保持治具40が固定治具20内に設置されると、放射性金属廃棄物2の内周内に電極部22が位置する。保持治具40の底面は格子状に部材が配置されており、保持治具40を固定治具20内に配置したときに、電極部22が格子の間を通過するように構成されている。なお、本実施例では、保持治具40の底面が格子状となっているが、保持治具40の底面は、電極部22及び電解液14が通過できると共に、放射性金属廃棄物2を載置可能な構造となっていればよく、例えば、複数の貫通孔が設けられた板材(例えば、パンチングメタル)や、網状の部材であってもよい。また、保持治具40は、接続部42を備えており、接続部42は、接続配線52又は接続配線54に接続される。接続部42と接続配線52又は接続配線54との接続については、後に詳述する。
【0016】
接続配線50、52、54は、電源装置16と固定治具20と保持治具40を電気的に接続する部材であり、例えば、ケーブル等を用いることができる。
【0017】
接続配線50は、電源装置16と固定治具20に接続される。詳細には、接続配線50の一端は、電源装置16の陰極に接続され、他端は3つの固定治具20のうちの1つである固定治具20aの接続部24aに接続される。したがって、電源装置16から流れる負電荷は、接続配線50を介して固定治具20aに流れ、固定治具20aから固定治具20aに固定される電極部22aに流れる。なお、接続配線50は、「第1の接続部材」の一例である。
【0018】
接続配線52は、電源装置16と保持治具40に接続される。詳細には、接続配線52の一端は、電源装置16の陽極に接続され、他端は3つの保持治具40のうちの1つである保持治具40cの接続部42cに接続される。したがって、電源装置16から流れる正電荷は、接続配線52を介して保持治具40cに流れ、保持治具40cから保持治具40cに保持される放射性金属廃棄物2cに流れる。なお、接続配線52は、「第2の接続部材」の一例である。
【0019】
接続配線54は、接続配線50に接続されていない固定治具20と、接続配線52に接続されていない保持治具40に接続される。本実施例では、2つの接続配線54を備えている(以下、これらを接続配線54a、54bともいう)。具体的には、接続配線54aの一端は保持治具40aの接続部42aに接続され、他端は固定治具20bの接続部24bに接続される。また、接続配線54bの一端は保持治具40bの接続部42bに接続され、他端は固定治具20cの接続部24cに接続される。なお、接続配線54は、「第3の接続部材」の一例である。
【0020】
ここで、接続配線50、52、54を介して除染装置10を流れる電流の回路について説明する。上述したように、放射性金属廃棄物2を保持した状態で保持治具40が固定治具20内に設置されると、放射性金属廃棄物2の内周内に電極部22が位置する。電源装置16を作動すると、電源装置16から流れる電流は、電源装置16の陽極と接続される接続配線52を通り、保持治具40cを介して放射性金属廃棄物2cに流れる。その結果、放射性金属廃棄物2cが電解液中に溶け出し、放射性金属廃棄物2cの内周内に位置する電極部22cに電流が流れる。すなわち、放射性金属廃棄物2cは陽極として機能し、電極部22cは陰極として機能する。電極部22cに流れた電流は、固定治具20cを介して接続配線54bを通り、保持治具40bを介して放射性金属廃棄物2bに流れる。そして、電流は、放射性金属廃棄物2bの内周内に位置する電極部22bに流れる。したがって、放射性金属廃棄物2bは陽極として機能し、電極部22bは陰極として機能する。さらに、電極部22bに流れた電流は、固定治具20bを介して接続配線54aを通り、保持治具40aを介して放射性金属廃棄物2aに流れる。そして、電流は、放射性金属廃棄物2aの内周内に位置する電極部22aに流れる。したがって、放射性金属廃棄物2aは陽極として機能し、電極部22aは陰極として機能する。その後、電極部22aに流れた電流は、固定治具20aを介して接続配線50を通り、電源装置16の陰極に戻る。このようにして、除染装置10では、3本の放射性金属廃棄物2と、3本の電極部22と、電源装置16が、接続配線50、52、54a、54bを介して直列に接続される。
【0021】
報知器30は、電源装置16の作動時に上記回路に電流が流れないと、その旨を報知する。なお、上記回路に電流が流れているか否かは、例えば、電圧計等の公知の検出器(図示省略)を用いて検知することができる。報知器30は、制御装置32によって制御されており、検出器が検出した情報は、制御装置32に送信される。制御装置32は、電源装置16が作動しており、かつ、検出器から上記回路に電流が流れていないことを示す情報を取得すると、報知器30を作動させる。報知器30を作動させることによって、作業者は上述した回路に電流が流れていないことを知ることができる。すなわち、作業者は、3本の放射性金属廃棄物2と、3本の電極部22と、電源装置16と、接続配線50、52、54a、54bにおいて、適切に接続されていない箇所があることを知ることができる。なお、報知器30は、上述した回路に電流が流れていないことを作業者に報知できる構成であればよく、音声によって報知してもよいし、表示によって報知してもよい。例えば、報知器30は、アラーム音を発する構成であってもよいし、ランプ等を点灯する構成であってもよいし、表示器に情報を表示する構成であってもよい。
【0022】
次に、除染装置10を用いた放射性金属廃棄物2の除染処理について説明する。まず、固定治具20と、放射性金属廃棄物2を保持した状態の保持治具40を貯留槽12内に配置する。このとき、固定治具20を貯留槽12内に配置した後で保持治具40を固定治具20内に設置してもよいし、貯留槽12外で固定治具20内に保持治具40を設置した後で固定治具20及び保持治具40を貯留槽12内に配置してもよい。その後、接続配線50、52、54a、54bを、電源装置16、固定治具20、保持治具40にそれぞれ接続する。
【0023】
次に、電源装置16を作動する。このとき、3本の放射性金属廃棄物2と、3本の電極部22と、電源装置16と、接続配線50、52、54a、54bが全て適切に接続された状態で電源装置16を作動すると、上述した回路に電流が流れる。そして、3本の放射性金属廃棄物2がそれぞれ除染される。
【0024】
一方、適切に接続されていない箇所が一箇所でもあると、電源装置16を作動しても電流が流れない。このような場合には、制御装置32は、検出器から上述した回路に電流が流れていないことを示す情報が入力されるため、報知器30を作動させる。報知器30によって上述した回路に電流が流れていないことを知った作業者は、3本の放射性金属廃棄物2と、3本の電極部22と、電源装置16と、接続配線50、52、54a、54bを適切に接続し直すことができる。これによって、除染装置10を適切に作動することができ、複数の放射性金属廃棄物2について除染漏れが生じることを防止できる。
【0025】
本実施例の除染装置10は、複数の放射性金属廃棄物2と、複数の電極部22と、電源装置16を、接続配線50、52、54を介して直列に接続している。このため、これらが適切に接続されていない箇所がある場合に、それを容易に検出することができる。複数の放射性金属廃棄物2と、複数の電極部22と、電源装置16を並列に接続すると、適切に接続されていない放射性金属廃棄物2と電極部22の間には電圧が印加されない一方、適切に接続されている他の放射性金属廃棄物2と電極部22の間には電圧が印加される。このため、除染処理が実行されていない放射性金属廃棄物2があってもそれを検知することができない。複数の放射性金属廃棄物2と、複数の電極部22と、電源装置16を直列に接続することによって、複数の放射性金属廃棄物2の全てを同時に除染でき、除染漏れが生じることを防止することができる。このため、除染後の金属廃棄物のうちの1つについて除染されたことを確認できれば、同時に除染処理した全ての金属廃棄物が除染されたことがわかる。したがって、除染後の金属廃棄物全てについて放射能を測定する必要がなくなり、作業負担が軽減され、それによって作業者の被ばくを低減することができる。
【0026】
また、本実施例の除染装置10を用いた場合、除染後の全ての金属廃棄物について放射能を測定する場合であっても、作業者の被ばくを低減することができる。本実施例の除染装置10を用いた場合、除染後の金属廃棄物のうち最初に放射能を測定したものについて除染されたことを確認できれば、全ての金属廃棄物が除染されていることになり、他の金属廃棄物に残存する放射能レベルが高いということはない。一方、並列に接続した除染装置を用いた場合には、複数の金属廃棄物のうち除染されていないものが含まれている可能性ある。このため、複数の金属廃棄物のうち除染されたことが確認できたものがあっても、全ての金属廃棄物について放射能を測定しなければならず、作業者が放射能に曝される時間が長くなる。したがって、本実施例の除染装置10を用いることによって、作業者の被ばく量を低減することができる。
【0027】
なお、本実施例では、除染装置10を用いて円筒状の放射性金属廃棄物2の内表面を電解研磨しているが、このような構成に限定されない。放射性金属廃棄物の形状は特に限定されるものではなく、例えば、保持治具40に平板状の放射性金属廃棄物を設置し、平板状の放射性金属廃棄物の表面を電解研磨してもよい。
【0028】
(実施例2)
上記の実施例1の除染装置10は、1つの貯留槽12内に複数の固定治具20及び保持治具40を配置していたが、このような構成に限定されない。例えば、除染装置110は、複数の貯留槽112を備え、それぞれの貯留槽112内に固定治具20及び保持治具40を配置してもよい。なお、本実施例の除染装置110は、複数の貯留槽112を備える構成が実施例1の除染装置10と相違しており、その他の構成については略同一となっている。そこで、実施例1の除染装置10と同一の構成については、その説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、除染装置110は複数の貯留槽112を備えており、本実施例では、3つの貯留槽112a〜112cを備えている。貯留槽112a〜112cは、実施例1の貯留槽12より寸法が小さくされており、各貯留槽112a〜112cには、1つの固定治具20と1つの保持治具40が配置可能となっている。隣接する貯留槽112間には、配管60が設置されている。詳細には、貯留槽112a、112bの間には、配管60aが設置されており、貯留槽112b、112cの間には、配管60bが設置されている。配管60を通って電解液14が全ての貯留槽112間を循環可能となっている。
【0030】
本実施例の除染装置110は、複数の貯留槽112を備えており、各貯留槽112内に1つずつ固定治具20及び保持治具40が配置される。これによって、貯留槽112毎に放射性金属廃棄物2を電解研磨することができる。このため、貯留槽112毎に放射性金属廃棄物の種類が異なる場合等には、貯留槽112毎に電解研磨の条件を変えることができ、放射性廃棄物の種類毎に適切に電解研磨をすることができる。また、複数の放射性金属廃棄物2を異なる貯留槽112内に設置することによって、放射性金属廃棄物2間に電位差が発生する等の影響が生じることを回避することができる。
【0031】
なお、実施例2では、複数の固定治具20及び保持治具40をそれぞれ異なる貯留槽112内に配置しているが、このような構成には限定されない。例えば、実施例1の除染装置10のように同一の貯留槽12内に複数の固定治具20及び保持治具40を配置し、隣接する放射性金属廃棄物2の間に遮蔽版を設置して貯留槽12内を複数の空間に分割するようにしてもよいし、隣接する放射性金属廃棄物2の間の距離が長くなるように複数の固定治具20及び保持治具40を配置してもよい。
【0032】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
2:放射性金蔵廃棄物
10、110:除染装置
12、112:貯留槽
14:電解液
16:電源装置
20:固定治具
22:電極部
24:接続部
30:報知器
32:制御装置
40:保持治具
42:接続部
50、52、54:接続配線
60:配管
図1
図2