特許第6864626号(P6864626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864626
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】縫製繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06H 7/08 20060101AFI20210419BHJP
   A41H 43/04 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   D06H7/08
   A41H43/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-541865(P2017-541865)
(86)(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公表番号】特表2018-511710(P2018-511710A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】IB2016050362
(87)【国際公開番号】WO2016125043
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年11月28日
(31)【優先権主張番号】BS2015A000017
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517273467
【氏名又は名称】ロナーティ エス. ピー. エー.
【氏名又は名称原語表記】LONATI S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サルヴェッティ, セルジョ
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−231647(JP,A)
【文献】 特開昭48−073589(JP,A)
【文献】 特開昭48−033152(JP,A)
【文献】 実公昭46−006302(JP,Y1)
【文献】 特開昭51−047193(JP,A)
【文献】 特開平07−070883(JP,A)
【文献】 特開2005−113349(JP,A)
【文献】 特開2008−101304(JP,A)
【文献】 特表2014−512911(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0123368(US,A1)
【文献】 米国特許第07735342(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00−23/30
D06C 3/00−29/00
D06G 1/00− 5/00
D06H 1/00− 7/24
D06J 1/00− 1/12
A41D27/00−27/28
A41H 1/00−43/04
D04B 1/00− 1/28
21/00−21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地(1)を得る工程と、
前記筒状編地(1)を支持体(2)の外面に被せて引き伸ばす工程と、
前記支持体(2)に被せた筒状編地(1)の外面の少なくとも第1部分に熱接着剤(4)を適用し、前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に固着させる工程と、
前記熱接着剤(4)が適用された筒状編地(1)を切開して平面編地(9)を得る工程と、
前記平面編地(9)を所定の切断線に沿って切断して、1つまたは複数の生地パーツを得る工程と、
前記平面編地(9)から得られた複数の生地パーツを縫い合わせて繊維製品を得る工程とを含み、
前記支持体(2)に被せた前記筒状編地(1)の外面に前記熱接着剤(4)を適用する工程は、前記筒状編地(1)の外面全体を被覆することで行われ、
前記筒状編地(1)を切断した前記平面編地(9)から得られる1つまたは複数の前記生地パーツは、前記熱接着剤(4)が適用された前記平面編地(9)の表面の全体を用いて形成されることを特徴とする縫製繊維製品の製造方法。
【請求項2】
前記筒状編地(1)を支持体(2)の外面に被せて引き伸ばす工程において、前記筒状編地(1)は、前記筒状編地(1)の内面の少なくとも一部が前記支持体(2)に当接し、外面が開放されるように所定の張力で引き伸ばされ、
前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に固着させる工程は、前記第1部分の弾性および/または変形性を低下させるために加熱下で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記丸編機の直径は、3.5〜22インチまたは5〜13インチであり、
前記筒状編地(1)を得る工程は、前記筒状編地(1)にトリミングナイフを用いてジャカード編みを形成する工程と、一列針床式または二列針床式の靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地(1)を作成する工程とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱接着剤(4)はシート(5)または膜の形態で形成され、
前記支持体(2)に被せた前記筒状編地(1)の外面に前記熱接着剤(4)を適用する工程は、前記熱接着剤(4)のシート(5)または膜を前記筒状編地(1)に当接させる工程、または、被覆生地に結合された前記熱接着剤(4)のシート(5)を前記筒状編地(1)に当接させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記筒状編地(1)に前記熱接着剤(4)を均一に適用するために、前記支持体(2)の形状に少なくとも部分的に一致する少なくとも1つの加圧要素(7)を前記支持体(2)に配置し、前記加圧要素(7)によって、少なくとも前記熱接着剤(4)を加熱する工程の間または後に前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に圧着する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記支持体(2)は、平坦な形状の板または繊維成形体であり、
少なくとも前記熱接着剤(4)を加熱する工程の間または後に前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に圧着するための前記加圧要素(7)を有し、
前記加圧要素(7)は、前記支持体(2)の形状に少なくとも部分的に一致する加圧板で構成され、
前記加圧要素(7)は、2つ配置されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記
載の方法。
【請求項7】
前記支持体(2)は、支持ロールまたは筒状支持要素であり、
少なくとも前記熱接着剤(4)を加熱する工程の間または後に前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に圧着するための前記加圧要素(7)を有し、
前記加圧要素(7)は、加圧ロールで構成され、
前記加圧要素(7)は、2つ配置されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に適用する前または後に前記熱接着剤(4)または前記支持体(2)を加熱して、前記熱接着剤(4)を前記筒状編地(1)に固着させる工程と、
加熱され前記筒状編地(1)に適用された前記熱接着剤(4)を冷却または放熱する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
複数の生地パーツからなる縫製繊維製品であって、
前記複数の生地パーツの少なくとも一部は、靴下用丸編機またはニットウェア用編機によって作成され、外面全体が加熱下で適用された熱接着剤(4)で被覆された筒状編地(1)を切断した平面編地(9)から得られたものであり、前記熱接着剤(4)が適用された前記平面編地(9)の表面の全体を用いて形成されたものであることを特徴とする縫製繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製繊維製品、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレスなどの複数の生地パーツを縫い合わせて製造される繊維製品の製造方法に関する。本発明はさらに、上記方法により製造された繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのタイプの縫製繊維製品、すなわち適切に成形された複数の生地パーツを縫い合わせて製造される複合繊維製品が知られている。これらの生地パーツは、1つまたは複数の生地を型紙や型板を用いて適切な形状に裁断することで得られる。続いて、裁断された生地パーツを縫い合わせることで所望の繊維製品が製造される。縫製繊維製品の製造に使用される生地は、加工を可能とし、また、最終製品に所望の外観および技術的特徴を付与するために、安定性および剛性に関して所定の特性を有するものでなければならない。これらの生地は、例えば、ジャージ、ベルベット、錦等であり、綿、羊毛、リネン、絹、合成材料などの材料で製造される。
【0003】
通常、これらの生地は、専門の製造業者または織物業者により、直線編機を用いて製造される。直線編機としては、例えば、一般的に高い構造的剛性を有する緯編地および経編地を製造するための編機や、編地としては十分に高い構造的安定性および剛性を有する様々な長さの生地を製造可能な直径24インチを超える二列針床式の丸編機など、大量の生地を製造するために適した機械が用いられる。
【0004】
従来の縫製繊維製品(特に、ジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレス等)の製造方法にはいくつかの欠点がある。第1の欠点は、繊維製品を製造するために一般的に使用される生地の安定性および剛性が繊維製品の剛性を決定するため、繊維製品の着用性および快適性が制限されることである。第2の欠点は、長尺の生地パーツを作成するための材料となる生地の製造に使用される編機の性能に限界があることである。すなわち、上記編機は、いくつかのタイプの緯編地および柄を作成可能であるが、生地のタイプや繊度に関する自由度が低く、また、他のタイプの編機のように複雑な柄を編み込むことができない。第3の欠点は、生地の作成時間が長いことである。第4の欠点は、これらの生地の作成方法の自由度が低いことである。すなわち、通常、これらの編機は、複雑な初期設定を必要とし、また、製造コストを下げるために大量の生地の製造に適した構成となっている。そのため、生地の製造方法の自由度が低く、サンプルの製造や少量生産のコストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した欠点を除去することである。本発明のさらなる目的は、高い着用性、すなわち、着用者の体形に対する適合性を有する縫製繊維製品、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレスなどの複数の生地パーツを縫い合わせて製造される繊維製品の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、使用者に高い快適性を与える縫製繊維製品の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、弾性糸を使用しなくても高い弾性を有する縫製繊維製品の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、多様な繊維効果および編組織を有する縫製繊維製品の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、低コストで高品質な縫製繊維製品の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、少量生産およびサンプル作製のために、縫製繊維製品を迅速かつ低コストで製造するための方法を提供することである。本発明の別の目的は、高い製造自由度を有する縫製繊維製品の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、作業員による手作業の必要性を低減することができる縫製繊維製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下で説明するように、上述の目的は、添付の請求項のうちの1つまたはこれらの組み合わせに係る方法および繊維製品、および/または、以下に記載の1つまたは複数の態様を有する方法および繊維製品によって達成される。
【0007】
本発明の一態様は、靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地を得る工程と、編機によって作成された筒状編地を支持体の外面に被せて引き伸ばす工程と、支持体に被せた筒状編地の外面の少なくとも第1部分に熱接着剤を適用し、熱接着剤を筒状編地に固着させる工程と、熱接着剤が適用された筒状編地を切開して平面編地を得る工程と、平面編地を所定の切断線に沿って切断して、1つまたは複数の生地パーツを得る工程と、上記平面編地または複数の編地から得られた複数の生地パーツを縫い合わせて繊維製品を得る工程とを含むことを特徴とする縫製繊維製品の製造方法である。
【0008】
本発明の別の態様は、靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地を得る工程と、筒状編地を支持体の外面に被せて、筒状編地の内面の少なくとも一部が支持体に当接し、外面が開放されるように筒状編地を所定の張力で引き伸ばす工程と、支持体に被せた筒状編地の外面の少なくとも第1部分に熱接着剤を適用し、第1部分の弾性および/または変形性を低下させるために熱接着剤を加熱下で筒状編地に固着させる工程と、熱接着剤が適用された筒状編地を切開して平面編地を得る工程とを含むことを特徴とする平面編地の作成方法である。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、前述の態様に係る方法に従って平面編地を得る工程と、平面編地を所定の切断線に沿って切断して、縫製繊維製品の1つまたは複数の生地パーツを得る工程と、平面編地から得られた複数の生地パーツを縫い合わせて繊維製品を得る工程とを含むことを特徴とする縫製繊維製品、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレスなどの複数の生地パーツを縫い合わせて製造される繊維製品の製造方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地を作成し、筒状編地を支持体の外面に被せて引き伸ばし、支持体に被せた筒状編地の外面の少なくとも第1部分に熱接着剤を適用し、熱接着剤を筒状編地に固着させ、熱接着剤が適用された筒状編地を切開し、筒状編地を切開して得られた平面編地を所定の切断線に沿って切断して、複数の生地パーツを得る工程と、複数の生地パーツを縫い合わせて繊維製品を得る工程とを含むことを特徴とする縫製繊維製品、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレスなどの複数の生地パーツを縫い合わせて製造されたる繊維製品の製造方法である。
【0011】
本発明の一態様において、前述の態様に係る繊維製品の複数の生地パーツは、1つの平面編地、または種類および機能が異なる複数の編地から得られる。
【0012】
本発明の別の態様において、平面編地を得る工程は、既製の平面編地を調達することで行われる。
【0013】
本発明の別の態様において、筒状編地を得る工程は、既製の筒状編地を調達することで行われる。
【0014】
本発明の別の態様において、熱接着剤を筒状編地に固着させる工程は、筒状編地の外面の全体または大部分に熱接着剤を適用し、熱接着剤を加熱した後、熱接着剤を冷却または放熱することで行われる。
【0015】
本発明の別の態様において、筒状編地は、ジャージ編みで形成される。
【0016】
本発明の別の態様において、筒状編地は、ジャカード編みで形成される。
【0017】
本発明の別の態様において、筒状編地の少なくとも一部は、トリミングナイフで加工された糸を用いたジャカード編みで形成される。
【0018】
本発明の別の態様において、筒状編地に適用される熱接着剤は、被覆生地に結合されている。
【0019】
本発明の別の態様において、筒状編地に適用される熱接着剤は、被覆生地に結合されている。
【0020】
本発明の別の態様において、筒状編地に適用される熱接着剤は、筒状編地よりも高い剛性を有する被覆生地に結合されている。
【0021】
本発明の別の態様において、熱接着剤は、被覆膜の形態である。
【0022】
本発明の別の態様において、熱接着剤を筒状編地に固着させる工程は、支持体の形状に少なくとも部分的に適合する少なくとも1つの加圧要素を加熱し、上記加圧要素で熱接着剤を筒状編地に押し付けることで行われる。
【0023】
本発明の別の態様において、筒状編地の外面の第1部分は、筒状編地の長手方向に沿って延びている。
【0024】
本発明の別の態様において、筒状編地の外面の第1部分は、筒状編地の円筒形状の少なくとも1つの母線を含む。
【0025】
本発明の別の態様において、筒状編地は支持体に被せる前に裏返され、熱接着剤は筒状編地の裏面または内面に対応する面に適用される。
【0026】
本発明の別の態様は、支持体から筒状編地または平面編地を取り出す工程を含む。
【0027】
本発明の別の態様において、筒状編地を切開する工程は、手動で行われる。
【0028】
本発明の別の態様において、筒状編地を切開する工程は、自動的におよび/または適切な切断装置によって行われる。
【0029】
本発明の別の態様において、熱接着剤が適用された筒状編地を切開して平面編地を得る工程は、支持体から筒状編地を取り出す前に行われる。
【0030】
本発明の別の態様において、熱接着剤が適用された筒状編地を切開して平面編地を得る工程は、支持体から筒状編地を取り出した後に行われる。
【0031】
本発明の別の態様において、熱接着剤が適用された筒状編地を切開して平面編地を得る工程は、筒状編地をその母線に沿って切断することで行われる。
【0032】
本発明の別の態様において、熱接着剤が適用された筒状編地を切開して平面編地を得る工程は、筒状編地の外面の少なくとも第1部分を切断することで行われる。
【0033】
本発明の別の態様において、平面編地を所定の切断線に沿って切断して1つまたは複数の生地パーツを得る工程は、型紙や型板を用いて行われる。
【0034】
本発明の別の態様において、靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地を得る工程には、筒状編地の少なくとも一部に、ポケット、および/またはフラウンス、および/またはレリーフ、および/またはテリー編地、および/または厚みの異なる編地、および/または種々の色の糸で形成された色の異なる編地を形成する工程が含まれる。
【0035】
本発明の別の態様において、靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地を得る工程には、筒状編地の少なくとも一部に、トリミングナイフで加工された糸を用いてジャカード編みおよび/またはジャカード柄を形成する工程が含まれる。
【0036】
本発明の別の態様において、支持体に被せた筒状編地の外面に熱接着剤を適用する工程は、筒状編地の外面に熱接着剤を塗布することで行われる。
【0037】
本発明の別の態様において、支持体に被せた筒状編地の外面に熱接着剤を適用する工程は、筒状編地の外面に熱接着剤を噴霧することで行われる。
【0038】
本発明の別の態様において、支持体に被せた筒状編地の外面に熱接着剤を適用する工程および筒状編地に適用した熱接着剤を加熱する工程は、熱接着剤を加熱して筒状編地に適用することで行われる。
【0039】
本発明の別の態様において、支持体に被せた筒状編地の外面に熱接着剤を適用する工程は、筒状編地を熱接着剤に浸漬することで行われる。
【0040】
本発明の別の態様において、支持体に被せた筒状編地の外面に熱接着剤を適用する工程および筒状編地に適用した熱接着剤を加熱する工程は、筒状編地を熱接着剤に浸漬した後加熱することで行われる。
【0041】
本発明の別の態様において、平面編地または複数の編地から得られた複数の生地パーツを縫い合わせて繊維製品を得る工程は、生地パーツの熱接着剤が適用された面が繊維製品の内側に配置されるように行われる。
【0042】
本発明の別の態様は、加熱された熱接着剤が適用された筒状編地の外面を被覆生地で被覆して、筒状編地と被覆生地が熱接着剤で接着されて形成された二重生地を得る工程を含む。
【0043】
本発明の別の態様は、熱接着剤が適用された筒状編地の表面または被覆生地に所定の柄を印刷する工程を含む。
【0044】
本発明の別の態様において、筒状編地は、一列針床式の編機によって作成される。
【0045】
本発明の別の態様において、筒状編地は、二列針床式の編機によって作成される。
【0046】
本発明の別の態様において、筒状編地は、二本針筒式の編機によって作成される。
【0047】
本発明の別の態様は、ネクタイ、スカーフ、セーター、スカートなどの繊維製品の製造に用いられる。
【0048】
本発明の別の態様において、丸編機は小径型である。
【0049】
本発明の別の態様において、丸編機の直径は、3.5〜22インチである。
【0050】
本発明の別の態様において、丸編機の直径は、5〜13インチである。
【0051】
本発明の別の態様において、丸編機は、直径が3.5〜6インチの靴下用編機である。
【0052】
本発明の別の態様において、丸編機の針密度は、1インチ当たり10〜28本である。
【0053】
本発明の別の態様において、丸編機は、ニットウェア用編機であり、および/または、直径が10〜22インチである。
【0054】
本発明の別の態様において、丸編機は、緯編地を作成可能に構成される。
【0055】
本発明の別の態様において、丸編機は、シームレス(無縫製)編機である。
【0056】
本発明の別の態様において、丸編機は、一列針床式である。
【0057】
本発明の別の態様において、丸編機は、二列針床式である。
【0058】
本発明の別の態様において、丸編機は、二本針筒式である。
【0059】
本発明の別の態様において、丸編機は、筒状編地の少なくとも一部にテリー編地を形成可能に構成される。
【0060】
本発明のさらに別の態様は、上述の態様に係る方法によって製造された繊維製品である。
【0061】
本発明のさらに別の態様は、1つまたは複数の平面編地から裁断された複数の生地パーツを有し、上記生地パーツの少なくとも1つは、靴下用丸編機またはニットウェア用編機によって作成され、かつ表面の少なくとも一部に加熱下で適用された熱接着剤を備える筒状編地の一部からなることを特徴とする繊維製品である。
【0062】
本発明のさらに別の態様は、複数の生地パーツが、靴下用丸編機またはニットウェア用編機によって作成され、かつ表面の少なくとも一部に加熱下で適用された熱接着剤を備える筒状編地の一部からなり、生地パーツの表面の全体または大部分には、加熱下で適用された熱接着剤が配置され、熱接着剤は、生地パーツを縫い合わせた繊維製品の内側に配置されることを特徴とする繊維製品である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明のさらなる特徴および利点については、例示的であって限定的でない以下の実施形態の記載および添付の図面により明らかとなる。
図1図1は、平板状の支持体に被せた筒状編地に、本発明の第1実施形態に係る工程を行う様子を示す概略図である。
図2図2は、ローラ状の支持体に被せた筒状編地に、本発明の第2実施形態に係る工程を行う様子を示す概略図である。
【0064】
上述の図は、本発明の各実施形態に係る方法が所定の装置により段階的に実行される様子を示す。本発明に係る方法は、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレスなどの複数の生地パーツを縫い合わせて製造される繊維製品の製造方法に関する。
【0065】
本方法は、靴下用丸編機またはニットウェア用編機を用いて筒状編地を得る工程を含む。筒状編地は、好ましくは緯編地である。筒状編地は、一列針床(シングルニードルベッド)式の編機によって作成されることが好ましいが、二列針床(ダブルニードルベッド)式あるいは二本針筒(ニードルシリンダ)式の編機によって作成することもできる。丸編機の直径は、好ましくは、3.5〜22インチまたは5〜13インチである。丸編機の針密度は、好ましくは、1インチ当たり10〜28本である。丸編機は、一列針床式であることが好ましいが、二列針床式あるいは二本針筒式であってもよい。筒状編地を得る工程には、筒状編地の少なくとも一部に、ポケット、および/またはフラウンス、および/またはレリーフ、および/またはテリー編地、および/または厚みの異なる編地を形成する工程が含まれていてもよい。
【0066】
筒状編地を得る工程にはさらに、後の工程において筒状編地を支持体上に正確に位置決めし、および/または筒状編地の裁断を案内するために、筒状編地の円筒形状の母線に沿って、筒状編地とは異なる生地からなる少なくとも1つの切断基準線を形成する工程が含まれていてもよい。
【0067】
本方法はさらに、編機によって作成された筒状編地1を支持体2に被せて、所定の張力で引き伸ばす工程を含む。このとき、筒状編地1は、内面の少なくとも一部が支持体2に当接し、外面が開放されるように配置される。支持体2のサイズは、支持体2に配置される筒状編地1のサイズに応じて決定される。支持体2は複数設けてもよく、その場合、各支持体2はそれぞれに配置される筒状編地1に応じたサイズを有する。本工程は、本発明の2つの実施形態を示す図1および図2において文字Aで示されており、例えば作業員3によって実行される。所定の張力は、生地を完全かつ均一に伸張して皺や折れの発生を防止できるように、さらには、本方法により製造される繊維製品の生地が所望の伸張度および/または外観を得られるように決定される。
【0068】
図2の工程Eでは、支持体2に配置された筒状編地1の第1の伸張を可能にするために支持体2が加熱される。本方法はさらに、支持体2に配置された筒状編地1の外面の少なくとも第1部分に熱接着剤4を適用し、熱接着剤4を加熱下で筒状編地1に固着させる工程を含む。この後、熱接着剤4を冷却することで、上記第1部分の弾性および/または変形性を低下させ、生地を安定化させることができる。本工程において、熱接着剤4は、十分な接着性を備える温度まで加熱される。本工程は、図1の工程B1、B2、B3、および図2の工程Bに対応する。このようにして、熱接着剤4が適用された筒状編地1aが形成される。筒状編地1の外面の第1部分は、筒状編地1の長手方向に沿って延び、および/または、筒状編地1の円筒形状の少なくとも1つの母線を含むことが好ましい。また、筒状編地1を支持体2に被せる前に裏返すことで、熱接着剤4を筒状編地1の裏面または内面に対応する面に適用することが好ましい。また、支持体2に配置された筒状編地1の外面に熱接着剤4を適用する工程は、筒状編地1の外面全体または大部分を被覆し、筒状編地1全体を安定化させるように行われることが好ましい。
【0069】
好ましい実施形態では、支持体2に配置された筒状編地1の外面に熱接着剤4を適用する工程は、熱接着剤4をシート状に形成したシート5または熱接着剤4を適用したシート5を筒状編地1に当接させることにより行われる。例えば、図2の工程Bは、供給ロール6から解舒された熱接着剤4のシート5が、加圧ロール7によって、支持体2に配置された筒状編地1に圧着される様子を示す。なお、支持体2に配置された筒状編地1の外面に熱接着剤4を適用する工程は、筒状編地1の外面に加熱された(または後で加熱される)熱接着剤4を噴霧または塗布することで行ってもよい。また、支持体2上に配置された筒状編地1の外面に熱接着剤4を適用する工程は、筒状編地1を熱接着剤4に浸漬することで行ってもよい。本方法はさらに、熱接着剤4を筒状編地1に確実に固着させるために、筒状編地1に適用された熱接着剤4を加熱する工程を含んでいてもよい。本方法はさらに、筒状編地1に適用され、加熱された熱接着剤4を冷却または放熱する工程をさらに含んでいてもよい。本方法は、熱接着剤4を筒状編地1に適用する前に、熱接着剤4を加熱する工程を含んでいてもよい。また、本方法は、筒状編地1に適用された熱接着剤4を加熱して熱接着剤4を筒状編地1に確実に固着させるために、筒状編地1が配置された支持体2を加熱する工程を含んでいてもよい。本方法は、筒状編地1に適用された熱接着剤4を加熱するために、支持体2に加熱材、加熱プレートまたは加熱ロールを所定時間適用する工程を含んでいてもよい。本工程は、例えば、支持体2の形状に少なくとも部分的に一致する少なくとも1つの加圧要素7を用いて熱接着剤4を筒状編地1に押し付けることで行われる。本方法はさらに、少なくとも熱接着剤4を加熱する工程の間または後に、熱接着剤4を筒状編地1に押し付ける工程を含んでいてもよい。本方法はさらに、筒状編地1に熱接着剤4を適切かつ均一に適用するために、支持体2の形状に少なくとも部分的に一致する少なくとも1つの加圧要素7を筒状編地1が配置された支持体2に適用して、少なくとも熱接着剤4を加熱する工程の間または後に熱接着剤4を筒状編地1に押し付ける工程を含んでいてもよい。図1に示す実施形態では、支持体2は、平坦な形状を有する板または繊維成形体である。この場合、少なくとも熱接着剤4を加熱する工程の間または後に熱接着剤4を筒状編地1に圧着するための加圧要素7は、例えば、支持体2の形状に少なくとも部分的に一致する加圧板である。本方法では、例えば、加圧板からなる2つの加圧要素が設けられる。
【0070】
図2に示す実施形態では、支持体2は、支持ロールまたは筒状支持要素である。この場合、少なくとも熱接着剤4を加熱する工程の間または後に熱接着剤4を筒状編地1に押し付けるための加圧要素7は、好ましくは加圧ロール7である。一実施形態では、加圧ロールからなる2つの加圧要素が設けられる。支持体2は、回転可能であることが好ましい。図1の実施形態では、作業員3は、支持体2を回転させることで、熱接着剤4を筒状編地1の両面(上面および下面)に容易に適用することができる。
【0071】
図2の実施形態では、支持体2を回転させることで、供給ロール6から解舒された熱接着剤4のシート5を筒状編地1に適用することができる。本方法はさらに、熱接着剤4が適用された筒状編地1を切開して平面編地9を得る工程を含む。本工程は、例えば、支持体2から筒状編地1を取り出す工程の前に行われる。あるいは、支持体2から筒状編地1を取り出す工程の後に行われてもよい。また、熱接着剤4が適用された筒状編地1を切開して平面編地9を得る工程は、筒状編地1および/または熱接着剤4が適用された筒状編地1の外面の第1部分をその母線に沿って切断することで行われることが好ましい。図1および図2の工程Cは、切断要素8により筒状編地1を切断する工程を概略的に示す。本方法はさらに、加熱された熱接着剤4が適用された筒状編地1の外面を被覆生地で被覆して、熱接着剤4で接着された筒状編地1と被覆生地からなる二重生地を得る工程を含んでいてもよい。本方法はさらに、支持体2から編地を取り出し、平面編地9を引き伸ばす工程を含む。本工程は、図1および図2の工程Dにより示される。
【0072】
以下、図1に示された工程についてさらに詳細に説明する。
【0073】
工程A
支持体2に筒状編地1を被せる。
【0074】
工程B1
熱接着剤4のシート5の一部を筒状編地1の上面に適用した後、加熱された加圧要素7によってシート5を押圧し、熱接着剤4を筒状編地1の上面に固着させる。
【0075】
工程B2
支持体2を回転させて、筒状編地1の上面と下面を反転させる。
【0076】
工程B3
上記回転後の筒状編地1の上面(熱接着剤4は未適用)に加熱された加圧要素7を用いて熱接着剤4を固着させる。
【0077】
工程C
切断要素8により、筒状編地1を所定の切断線に沿って切開する。
【0078】
工程D
筒状編地1を切開して得られた平面編地9を支持体2から取り出し、これを載置台に載置した後、後続の処理ステーションに移送する。
【0079】
本方法は、熱接着剤4が適用された筒状編地1の表面に所定の柄を印刷する工程をさらに含んでいてもよい。本方法はさらに、平面編地9を所定の切断線に沿って切断して、1つまたは複数の生地パーツを得る工程を含んでいてもよい。平面編地9の切断工程は、型紙や型板を用いて行われることが好ましい。これらの型は、例えば、男性用ジャケットの複数の生地パーツを画定するように構成される。編機のシリンダ直径を適切な値に設定することで、使用される型紙や型板に対して適切なサイズの平面編地9を得ることができるため、編地の浪費を最小限に抑えることが可能である。適切な直径を有する複数の編機を用いることで、それぞれの型紙や型板に適した複数の編地を得ることができる。
【0080】
好ましい実施形態では、筒状編地1を切断した平面編地9から得られる縫製繊維製品の1つまたは複数の生地パーツは、熱接着剤4が適用された筒状編地1の表面の全体を用いて形成される。本方法はさらに、平面編地9から得られた複数の生地パーツを縫い合わせて、縫製繊維製品、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレス等の複数の生地パーツからなる繊維製品を得る工程を含む。平面編地9から得られた複数の生地パーツを縫い合わせて縫製繊維製品を得る工程は、生地パーツの熱接着剤4が適用された面が繊維製品の内側に配置されるように行われることが好ましい。本方法は、ネクタイ、スカーフ、セーター、スカートなどの製造にも用いることができる。
【0081】
本発明はさらに、1つまたは複数の平面編地9から裁断された複数の生地パーツを有し、これらの生地パーツの少なくとも1つは、靴下用丸編機またはニットウェア用編機によって作成され、かつ表面の少なくとも一部に加熱下で適用された熱接着剤4を備える筒状編地1の一部からなる、縫製繊維製品、特にジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレス等の複数の生地パーツを縫い合わせて製造される繊維製品に関する。好ましい実施形態では、繊維製品の複数の生地パーツは、靴下用丸編機またはニットウェア用編機によって作成され、かつ表面の少なくとも一部に加熱下で適用された熱接着剤4を備える筒状編地1の一部からなる。好ましい実施形態では、靴下用丸編機またはニットウェア用編機によって作成された生地パーツには、その表面の全体または大部分に加熱下で適用された熱接着剤4が配置されている。好ましい実施形態では、熱接着剤4は、縫製繊維製品の内側に配置される。
【0082】
本発明は、ジャケット、ズボン、男性用スーツ、女性用ドレス、スカーフ、ネクタイ、スカート、下着、ランジェリー、ニットウェア、技術用品、スポーツ用品、医療用品等の複数の生地パーツを縫い合わせて製造される様々な種類の繊維製品の製造に用いることができる。本発明は重要な利点を有する。まず第1に、本発明は、既知の技術の欠点を克服することを可能にする。本発明はさらに、高い着用性(すなわち、着用者の体形に対する適合性)および快適性を有する縫製繊維製品の製造を可能にする。本発明はさらに、弾性糸を使用せずに得られ、かつ特定の繊維製品の要求に応じて容易に設計することができる、単方向または双方向の弾性率を有する縫製繊維製品を製造することを可能にする。本発明はさらに、多種多様な繊維効果および編組織を有する縫製繊維製品の製造を可能にする。本発明はさらに、高品質かつ低コストで縫製繊維製品を得ることを可能にする。本発明はさらに、大量の生地を作成することなく、少量生産やサンプル製造のために作成された生地を縫い合わせて製造される繊維製品を得ることを可能にする。本発明はさらに、短時間で高い製造柔軟性を有する縫製繊維製品を得ることを可能にする。本発明はさらに、縫製繊維製品を製造するための作業員による手作業の必要性を低減することができる。
図1
図2