(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864691
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】キノリン誘導体またはその塩を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4709 20060101AFI20210419BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210419BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20210419BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20210419BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61P35/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/44
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-533610(P2018-533610)
(86)(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公表番号】特表2019-503366(P2019-503366A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】CN2017072155
(87)【国際公開番号】WO2017129087
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2020年1月8日
(31)【優先権主張番号】201610056739.3
(32)【優先日】2016年1月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100153394
【弁理士】
【氏名又は名称】謝 卓峰
(74)【代理人】
【識別番号】100145056
【弁理士】
【氏名又は名称】當別當 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100116311
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 忠行
(72)【発明者】
【氏名】ルウ、ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、シンホア
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チェンヤン
【審査官】
飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第101824029(CN,A)
【文献】
特表2014−507448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61K 9/00− 9/72
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩である活性薬物;および
2)架橋ポリビニルピロリドン
を含有する、医薬組成物。
【請求項2】
薬理学的に許容される塩がマレイン酸塩、好ましくはジマレイン酸塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
架橋ポリビニルピロリドンが、組成物の全重量に対して、2重量%-20重量%、好ましくは4重量%-15重量%、より好ましくは6重量%-10重量%の量で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
活性薬物が、組成物の全重量に対して、5重量%-70重量%、好ましくは10重量%-50重量%、より好ましくは20-40重量%の量で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
結合剤が、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、およびメチルセルロースの1つ以上であり、該結合剤が、好ましくは組成物の全重量に対して、約0.5重量%-15重量%の量で存在している、結合剤もまた含有することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
フィラーが、好ましくは結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、マンニトール、アルファ化デンプン、および乳糖の1つ以上であり、該フィラーが、好ましくは組成物の全重量に対して、5重量%-80重量%の量で存在している、フィラーもまた含有することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
滑沢剤が、好ましくはタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、およびコロイド状二酸化ケイ素の1つ以上であり、該滑沢剤が、好ましくは組成物の全重量に対して、0.5重量%-5重量%の量で存在している、滑沢剤もまた含有することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1)5-70重量%の(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩;
2)2-20重量%の架橋ポリビニルピロリドン;
3)5-80重量%のフィラー、該フィラーは乳糖および結晶セルロースから成る群から選択される1つ以上である;
4)0.5-15重量%の結合剤、該結合剤はポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースから成る群から選択される1つ以上である;および
5)0.5-5重量%の滑沢剤、該滑沢剤はステアリン酸マグネシウムおよびタルクから成る群から選択される1つ以上である;
を含有する、医薬組成物。
【請求項9】
経口固形製剤、好ましくは錠剤およびカプセル剤、より好ましくは錠剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌、好ましくは胃癌、肺癌または乳癌の治療薬の製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩および架橋ポリビニルピロリドンを混合するステップを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤の分野に属し、具体的には(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物に関する。該医薬組成物は、迅速な溶出特性を有する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、式Iで示す構造を持つ小分子化合物(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドを開示している。
【化1】
【0003】
それは、上皮増殖因子受容体(EGFR)およびヒト上皮因子受容体2(ERBB2)を阻害する小分子受容体チロシンキナーゼ阻害剤として知られている。それは、細胞においてEGFRおよびERBB2のキナーゼ領域のATP結合部位に共有結合的に結合し、腫瘍細胞においてEGFRとERBB2の同種性および異種性二量体の生成を防止して、それ自身のリン酸化を阻害し、下流のシグナル経路の活性化をブロックして、それによって腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。それは、胃癌、肺癌、および乳癌などの種々の腫瘍の治療に臨床的に用いられる。
【0004】
特許文献2は、他の塩や式Iの化合物自体に比べて溶解性、バイオアベイラビリティおよび薬物動態に関して多くの利点を有する式Iの化合物のマレイン酸塩形態を開示している。
【0005】
特許文献3は、式Iの化合物のジマレイン酸塩の結晶形Iを開示している。この結晶形は、良い結晶安定性および化学的安定性を有しており、EGFR受容体チロシンキナーゼまたはHER-2受容体チロシンキナーゼと関連している疾患の治療薬の製造に用いることができる。
【0006】
しかしながら、(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬剤的に許容される塩を医薬固形組成物に製造する場合、ひとたび活性成分を水に溶解すると高い粘性が局所的に生じる。それは、医薬製剤の製造に貢献せず、薬物溶出率の減少を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN102471312B
【特許文献2】CN102933574B
【特許文献3】CN103974949B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、迅速に溶出する医薬組成物を提供することである。医薬組成物を製造する方法は、シンプルで、大規模製造により適している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により提供される医薬組成物は、活性医薬成分と架橋ポリビニルピロリドンを含有する。活性医薬成分は、(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩、例えば塩酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩またはエタンスルホン酸塩、好ましくはマレイン酸塩、より好ましくはジマレイン酸塩である。活性成分は、組成物の全重量に対して、5-70重量%、好ましくは10-50重量%、より好ましくは20-40重量%の量で存在する。架橋ポリビニルピロリドンは、組成物の全重量に対して、2-20重量%、好ましくは4-15重量%、より好ましくは6-10重量%の量で存在する。
【0010】
本発明により提供される医薬組成物は、またフィラー、例えば結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、マンニトール、アルファ化デンプン、および乳糖等の1つ以上を含有していてもよい。フィラーは、組成物の全重量に対して、約5-80重量%の量で存在する。
【0011】
本発明により提供される医薬組成物は、また結合剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、およびメチルセルロース等の1つ以上を含有していてもよい。結合剤は、組成物の全重量に対して、約0.5-15重量%の量で存在する。
【0012】
本発明により提供される医薬組成物は、また他の崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の1つ以上を含有していてもよい。崩壊剤は、組成物の全重量に対して、約0-20重量%の量で存在する。
【0013】
本発明により提供される医薬組成物は、またカプセル充填や錠剤化を容易にする1つ以上の滑沢剤を含有していてもよい。滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、コロイド状二酸化ケイ素等が挙げられる。滑沢剤は、組成物の全重量に対して、約0.5-5重量%の量で存在する。
【0014】
本発明は、また:
1)5-70重量%の(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩;
2)2-20重量%の架橋ポリビニルピロリドン;
3)5-80重量%のフィラー、該フィラーは乳糖および結晶セルロースから成る群から選択される1つ以上である;
4)0.5-15重量%の結合剤、該結合剤はポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースから成る群から選択される1つ以上である;および
5)0.5-5重量%の滑沢剤、該滑沢剤はステアリン酸マグネシウムおよびタルクから成る群から選択される1つ以上である;
を含有する、医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明の医薬組成物に架橋ポリビニルピロリドンを添加することによって活性成分の溶出率が大きく高まることが、溶出試験から分る。溶出は迅速で完全であり、このことは薬物が体内に入って迅速に働き、その効力を迅速に発揮するのに有利である。
【0016】
本発明は、また、医薬組成物の製造過程で湿潤剤が添加された医薬組成物を提供する。湿潤剤は、少なくとも1つの有機溶媒を含み、水も含まれ、該有機溶媒は低毒性の有機溶媒、好ましくはエタノールおよびアセトン等、より好ましくはエタノールである。有機溶媒は、湿潤剤の全重量に対して、20-100重量%、好ましくは50-95重量%、より好ましくは50-80重量%の量で存在する。
【0017】
医薬組成物の製造過程で加えられた湿潤剤はエタノール等の低毒性の有機溶媒を含むため、得られる顆粒は望ましい粒子径分布を有し、活性成分の溶出は迅速で完全であり、薬物がその効力を発揮するのを容易にする。
【0018】
本発明の医薬組成物は、迅速に溶解して、著しい効果を有し、胃癌、肺癌または乳癌などの癌の治療に用いられる。
【0019】
本発明は、また、(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドまたはその薬理学的に許容される塩および架橋ポリビニルピロリドンを混合するステップを含む、医薬組成物の製造方法を提供する。医薬組成物は、湿式造粒法などの技術分野で慣用の方法によって顆粒に調製して、最終的に錠剤やカプセル剤などの経口製剤に調製する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例1および比較例1〜4の錠剤の溶出プロフィールを示す図である。
【
図2】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例2〜7の錠剤の溶出プロフィールを示す図である。
【
図3】実施例8〜12および比較例5の粒子径分布を示す図である。
【
図4】0.1 mol/L塩酸溶液中の比較例5の多錠剤サンプルの溶出プロフィールを示す図である。
【
図5】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例8の多錠剤サンプルの溶出プロフィールを示す図である。
【
図6】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例9の多錠剤サンプルの溶出プロフィールを示す図である。
【
図7】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例10の多錠剤サンプルの溶出プロフィールを示す図である。
【
図8】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例11の多錠剤サンプルの溶出プロフィールを示す図である。
【
図9】0.1 mol/L塩酸溶液中の実施例12の多錠剤サンプルの溶出プロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明を以下の実施例および試験例により更に詳細に説明する。これらの実施例および試験例は説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1、比較例1〜4
【0022】
(R,E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)-プロペンアミドのマレイン酸塩(以下、化合物Aと呼ぶ)、乳糖、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、および架橋ポリビニルピロリドンを表1に示した実施例1の比率で混合した。湿式造粒法を湿潤剤として適量の93.75重量%エタノール水溶液を用いて実施した。顆粒は、水分含量が2%以下になるまで乾燥し、次いで乾式製粉を行った。ステアリン酸マグネシウムの処方量を加えて、混合物を回転混合器で混合した。得られた全混合顆粒を打錠してコーティングし、錠剤を製造した。低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプンを含有する比較例1〜4の錠剤は、同じ方法に従って製造した。
【表1】
単位:重量%
【0023】
実施例1および比較例1〜4の錠剤の溶出試験を、37±0.5°Cおよびパドルスピード50rpmで溶解培地として0.1 mol/L塩酸溶液900 mlを用いて、中国薬局方(2010年版)の第II巻付録に記載された溶出率試験の第2法(パドル法)に従って行った。結果は、架橋ポリビニルピロリドンを含有する実施例1の錠剤では、化合物Aの溶出は迅速で完全であるが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプンを含有する比較例1〜4の錠剤では、化合物Aの溶出は遅くて不完全であることを示した。
溶出プロフィールを
図1に示す。
実施例2〜7
【0024】
化合物A、乳糖、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、および架橋ポリビニルピロリドンを表2に示した比率で混合した。湿式造粒法を湿潤剤として適量の93.75重量%エタノール水溶液を用いて実施した。顆粒は、水分含量が2%以下になるまで乾燥し、次いで乾式製粉を行った。ステアリン酸マグネシウムの処方量を加えて、混合物を回転混合器で混合した。得られた全混合顆粒を打錠してコーティングし、錠剤を製造した。
【表2】
単位:重量%
【0025】
溶出試験
実施例2〜7の錠剤の溶出試験を、37±0.5°Cおよびパドルスピード50rpmで溶解培地として0.1 mol/L塩酸溶液900 mlを用いて、中国薬局方(2010年版)の第II巻付録に記載された溶出率試験の第2法(パドル法)に従って行った。結果は、異なる比率で架橋ポリビニルピロリドンを含有する実施例2〜5の錠剤および異なる比率で化合物Aを含有する実施例6〜7の錠剤において、化合物Aの溶出は迅速で完全であることを示した。
溶出プロフィールを
図2に示す。
実施例8〜12、比較例5
【0026】
化合物A、乳糖、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、および架橋ポリビニルピロリドンを表3に示した比率で混合した。湿式造粒法を湿潤剤として適量の精製水、20重量%エタノール水溶液、50重量%エタノール水溶液、80重量%エタノール水溶液、93.75重量%エタノール水溶液および無水エタノールをそれぞれ用いて実施した。顆粒は、水分含量が2%以下になるまで乾燥し、次いで乾式製粉を行った。ステアリン酸マグネシウムの処方量を加えて、混合物を回転混合器で混合した。得られた全混合顆粒の100gをふるい分け用に分け、残りの顆粒を打錠してコーティングし、錠剤を製造した。
【表3】
単位:重量%
【0027】
ふるい分け試験
実施例8〜12および比較例5で得られた分けた顆粒100gを、50メッシュと100メッシュのふるいを用いて振とうし、ふるい分けした。比較例5では湿潤剤として精製水が用いられたが、得られた顆粒中に多量の大粒子と微粉末があり、粒子径分布は望ましくない。エタノールを含む湿潤剤が実施例8〜12で用いられたが、得られた顆粒中には大粒子と微粉末は少なく、粒子径分布はより均一である。
ふるい分け結果を
図3に示す。
【0028】
溶出試験
実施例8〜12および比較例5の錠剤の溶出試験を、37±0.5°Cおよびパドルスピード50rpmで溶解培地として0.1 mol/L塩酸溶液900 mlを用いて、中国薬局方(2010年版)の第II巻付録に記載された溶出率試験の第2法(パドル法)に従って行った。結果は、20重量%エタノール水溶液、50重量%エタノール水溶液、80重量%エタノール水溶液、93.75重量%エタノール水溶液および無水エタノールが実施例8〜12でそれぞれ湿潤剤として用いられたとき、得られた顆粒は望ましい粒子径分布を有し、化合物Aの溶出は迅速で完全であり;精製水が比較例5で湿潤剤として用いられたとき、得られた錠剤では化合物Aの溶出均一性が乏しいことを示した。エタノールを含む湿潤剤が実施例8〜12で湿潤剤として用いられたが、得られた錠剤では化合物Aの溶出均一性はよい。
溶出プロフィールを
図4〜9に示すが、図中に示したR1〜R6は試験したサンプル錠剤1〜錠剤6を表している。