特許第6864741号(P6864741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864741
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】エア工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   B25F5/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-525281(P2019-525281)
(86)(22)【出願日】2018年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2018020522
(87)【国際公開番号】WO2018235541
(87)【国際公開日】20181227
【審査請求日】2019年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2017-122726(P2017-122726)
(32)【優先日】2017年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】東 賢典
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−513780(JP,A)
【文献】 実開平04−006501(JP,U)
【文献】 特開平06−101401(JP,A)
【文献】 米国特許第03716311(US,A)
【文献】 特開2005−028533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モータ給気口及び第2モータ給気口を有し、該第1モータ給気口から圧縮空気が供給されたときには正転し、該第2モータ給気口から圧縮空気が供給されたときには逆転するようにされたエアモータを備えるエア工具であって、
外部圧縮空気供給源に接続される給気口と、
該給気口から延びる給気路と、
該エアモータの該第1モータ給気口にまで延びる第1分岐給気路と、
該エアモータの該第2モータ給気口にまで延びる第2分岐給気路と、
圧縮空気を外部に排出するための排気路と、
該給気路の途中に配置され、該給気路を開放する開放位置と該給気路を閉止する閉止位置との間で変位可能とされた開閉バルブと、
該開閉バルブを開閉操作するための操作部材であって、該開閉バルブを該開放位置とする駆動位置と、該開閉バルブを該閉止位置とする停止位置との間で変位可能とされた操作部材と、
該給気路と該第1及び第2分岐給気路との間に配置された切替バルブであって、該給気路に対して該第1分岐給気路を連通させ該第2分岐給気路を遮断する正転位置と、該給気路に対して該第1及び第2分岐給気路を連通させるニュートラル位置と、該給気路に対して該第1分岐給気路を遮断し該第2分岐給気路を連通させる逆転位置と、の間で変位可能とされた切替バルブと、
を備え、
該開閉バルブが該開放位置にあり該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときに、該給気口から供給される圧縮空気が、該給気路から該第1及び第2分岐給気路に至り、該エアモータを実質的に回転させることなく該排気路を通して排気されるようにされた、エア工具。
【請求項2】
該切替バルブが排気連通路を有し、該ニュートラル位置にあるときに、該第1及び第2分岐給気路を該排気連通路を介して該排気路に連通させるようにされ、
該開閉バルブが該開放位置にあり該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときに、該給気路から該第1及び第2分岐給気路に至った圧縮空気の少なくとも一部が該第1及び第2分岐給気路から該エアモータ内を通過せずに該排気連通路を通って該排気路に通されるようにされた、請求項1に記載のエア工具。
【請求項3】
該切替バルブが回転中心軸線を中心に回転可能に配置され、
該切替バルブが、該回転中心軸線に垂直な面での横断面が該回転中心軸線を中心として円弧状に延びたC字形状とされた給気連通路をさらに有し、
該排気連通路が、該給気連通路の周方向での両端部の間に形成されており、
該切替バルブが該正転位置にあるときには該給気連通路を介して該給気路と該第1分岐給気路とが連通し、該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときには該給気連通路を介して該給気路と該第1及び第2分岐給気路とが連通し、該切替バルブが該逆転位置にあるときには該給気連通路を介して該給気路と該第2分岐給気路とが連通するようにされた、請求項2に記載のエア工具。
【請求項4】
該エアモータが断面円形の円柱状のモータ室と該モータ室内に回転可能に設けられたロータとを有するベーンモータであって、該モータ室に相互に隣接して開口した該第1及び第2モータ給気口からそれぞれ周方向で略等しい距離にあり該排気路に連通したモータ排気口を有し、
該開閉バルブが該開放位置にあり該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときに、該給気路から該第1及び第2分岐給気路に至った圧縮空気の少なくとも一部が、該第1及び第2モータ給気口からそれぞれ該モータ室に入り、該ロータの周りを互いに逆回りに流れて該モータ排気口に至り該排気路に通されるようにされた、請求項1乃至3の何れか一項に記載のエア工具。
【請求項5】
該操作部材が、該駆動位置に保持可能であるようにされた、請求項1乃至の何れか一項に記載のエア工具。
【請求項6】
該エアモータ及び該切替バルブを備える第1本体部と、該開閉バルブ及び該操作部材を備え該第1本体部に対して回転可能に取り付けられた第2本体部と、を有し、
該第1本体部と該第2本体部とのうちの一方が第1係止部を有し、他方が該第1係止部と嵌合する複数の第2係止部を有し、該第2本体部が該第1本体部に対して回転したときに複数の相対回転位置において該第1係止部が該複数の第2係止部のうちのいずれかに嵌合して該第1本体部に対する該第2本体部の回転方向位置が保持されるようにされた、請求項1乃至の何れか一項に記載のエア工具。
【請求項7】
該操作部材が該第2本体部に枢動可能に取り付けられたレバーであり、該レバーが該駆動位置に変位することを防止するレバー固定部材をさらに備える、請求項に記載のエア工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアモータを備えるエア工具に関し、より詳細には、エアモータの回転方向を正転と逆転との間で切り替えることができるようにされたエア工具に関する。
【背景技術】
【0002】
エアモータを備えたトルクレンチやベルト式研削工具などのエア工具において、エアモータに圧縮空気を供給する供給路を切り替えてエアモータの回転方向を正転と逆転との間で切り替え、レンチやベルトの回転方向を変更できるようにしたものが知られている。このようなエア工具においては、通常、エアモータが2つの給気口を有し、外部圧縮空気供給源に接続される給気口から延びる給気路が途中で分岐してエアモータの2つの給気口にまでそれぞれ延びていて、給気路の分岐部に流路を切り替えるための切替バルブを備えている。切替バルブは正転位置と逆転位置との間で変位可能とされており、切替バルブを正転位置とすると、給気路と一方の分岐給気路が連通して圧縮空気は一方の給気口からエアモータに供給され、それによりエアモータは正転する。切替バルブを逆転位置とすると、給気路と他方の分岐給気路が連通して圧縮空気は他方の給気口からエアモータに供給され、それによりエアモータは逆転する。また、切替バルブとは別に、給気路を開閉するための開閉バルブをさらに備えており、開閉バルブを開放位置に変位させることにより外部圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給路に供給され、切替バルブによって設定した方向にエアモータが駆動されるようになっている。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−145971号
【特許文献2】特開2005−28533号
【特許文献3】実公昭48−43670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような回転方向を切替可能なエア工具において、切替バルブを正転位置と逆転位置の間のニュートラル位置とすると、給気路はいずれの分岐給気路にも連通されず、従って開閉バルブの状態に関わらず圧縮空気は切替バルブから先には流れずエアモータに供給されないため、エアモータは回転しない。そのため、切替バルブがニュートラル位置となっていることに気付かずに開閉バルブを操作したときに、エアモータが駆動せずまたエア工具に他の何らの変化も生じないため、作業者はエア工具が故障しているか又は圧縮空気がエア工具にまで供給されていないとの誤認をする虞がある。また、特許文献1及び2のエア工具において、特許文献3のエア工具のように開閉バルブを操作するためのリング状の操作部材が開閉バルブを開放位置とする駆動位置で保持されるようにした場合には、切替バルブがニュートラル位置にあり開閉バルブが開放位置になっている状態で停止しているエア工具に対して、エアモータの駆動方向を設定するために切替バルブを正転又は逆転位置に操作したときに、不意にエアモータが駆動して思わぬ事故に繋がる虞もある。
【0005】
そこで本発明は、開閉バルブが開放位置にあり且つ切替バルブがニュートラル位置にある状態を作業者が容易に認識できるようにしたエア工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
第1モータ給気口及び第2モータ給気口を有し、該第1モータ給気口から圧縮空気が供給されたときには正転し、該第2モータ給気口から圧縮空気が供給されたときには逆転するようにされたエアモータを備えるエア工具であって、
外部圧縮空気供給源に接続される給気口と、
該給気口から延びる給気路と、
該エアモータの該第1モータ給気口にまで延びる第1分岐給気路と、
該エアモータの該第2モータ給気口にまで延びる第2分岐給気路と、
圧縮空気を外部に排出するための排気路と、
該給気路の途中に配置され、該給気路を開放する開放位置と該給気路を閉止する閉止位置との間で変位可能とされた開閉バルブと、
該開閉バルブを開閉操作するための操作部材であって、該開閉バルブを該開放位置とする駆動位置と、該開閉バルブを該閉止位置とする停止位置との間で変位可能とされた操作部材と、
該給気路と該第1及び第2分岐給気路との間に配置された切替バルブであって、該給気路に対して該第1分岐給気路を連通させ該第2分岐給気路を遮断する正転位置と、該給気路に対して該第1及び第2分岐給気路を連通させるニュートラル位置と、該給気路に対して該第1分岐給気路を遮断し該第2分岐給気路を連通させる逆転位置と、の間で変位可能とされた切替バルブと、
を備え、
該開閉バルブが該開放位置にあり該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときに、該給気口から供給される圧縮空気が、該給気路から該第1及び第2分岐給気路に至り、該エアモータを実質的に回転させることなく該排気路を通して排気されるようにされた、エア工具を提供する。
【0007】
当該エア工具においては、開閉バルブが開放位置にあり切替バルブがニュートラル位置にあるときに、圧縮空気が排気路を通して排気されるため、それにより排気音が生じるようになる。この排気音により、切替バルブがニュートラルの状態で開閉バルブが開放位置になっていることを作業者に容易に認識させることが可能となる。
【0008】
具体的には、
該切替バルブが、該ニュートラル位置にあるときに、該第1及び第2分岐給気路を該排気路に連通させるようにされ、
該開閉バルブが該開放位置にあり該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときに、該給気路から該第1及び第2分岐給気路に至った圧縮空気の少なくとも一部が該第1及び第2分岐給気路から該エアモータ内を通過せずに該排気路に通されるようにすることができる。
【0009】
上記に代えて又はそれと同時に、
該エアモータが断面円形の円柱状のモータ室と該モータ室内に回転可能に設けられたロータとを有するベーンモータであり、該モータ室に相互に隣接して開口した該第1及び第2モータ給気口からそれぞれ周方向で略等しい距離にあり該排気路に連通したモータ排気口を有し、
該開閉バルブが該開放位置にあり該切替バルブが該ニュートラル位置にあるときに、該給気路から該第1及び第2分岐給気路に至った圧縮空気の少なくとも一部が、該第1及び第2モータ給気口からそれぞれ該モータ室に入り、該ロータの周りを互いに逆回りに流れて該モータ排気口に至り該排気路に通されるようにすることもできる。
【0010】
さらに、該操作部材が、該駆動位置に保持可能であるようにすることができる。
【0011】
特に操作部材が駆動位置に保持されるようになっている場合には、切替バルブがニュートラル位置とされ開閉バルブが開放位置とされたままの状態でエア工具が停止されていて、エア工具を使用するために切替バルブを操作したときに不意にエアモータが駆動する虞があるが、当該エア工具においては開閉バルブが開放位置になっていることを作業者に排気音によって容易に認識させることができるため、そのようにして不意にエアモータが駆動されることを防止することが可能となる。
【0012】
好ましくは、
該エアモータ及び該切替バルブを備える第1本体部と、該開閉バルブ及び該操作部材を備え該第1本体部に対して回転可能に取り付けられた第2本体部と、を有し、
該第1本体部と該第2本体部とのうちの一方が第1係止部を有し、他方が該第1係止部と嵌合する複数の第2係止部を有し、該第2本体部が該第1本体部に対して回転したときに複数の相対回転位置において該第1係止部が該複数の第2係止部のうちのいずれかに嵌合して該第1本体部に対する該第2本体部の回転方向位置が保持されるようにすることができる。
【0013】
このような構成により、操作部材の周方向での位置を任意に変更できるようになるため、作業内容に合わせてエア工具を把持する手や把持の向きを変えたときにも、それに合せて操作部材の位置を変更できるようになり、操作性が向上する。
【0014】
好ましくは、該操作部材が該第2本体部に枢動可能に取り付けられたレバーであり、該レバーが該駆動位置に変位することを防止するレバー固定部材をさらに備えるようにすることができる。
【0015】
このような構成により、第2本体部を回転させるときなどに誤ってレバーを駆動位置に変位させてエアモータを駆動させてしまうことを防止することが可能となる。
【0016】
以下、本発明に係るエア工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るベルト式研削工具の上面図である。
図2図1のベルト式研削工具の側面図である。
図3図2のA−A線における上面断面図である。
図4図3のB−B線における側面断面図である。
図5図3のC−C線における側面断面図である。
図6A】切替バルブ周辺の拡大断面図であり、切替バルブが正転位置にある状態を示す図である。
図6B】切替バルブ周辺の拡大断面図であり、切替バルブがニュートラル位置にある状態を示す図である。
図6C】切替バルブ周辺の拡大断面図であり、切替バルブが逆転位置にある状態を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るベルト式研削工具の上面図である。
図8図7のベルト式研削工具の側面図である。
図9図8のD−D線における上面断面図である。
図10図9のE−E線における側面断面図である。
図11図7のベルト式研削工具の側面図であり、第2本体部が45度回転した状態を示す図である。
図12図11のF−F線における上面断面図である。
図13図12のG−G線から見た第1本体部の後端面を示す図である。
図14図12のH−H線から見た第2本体部の前端面を示す図である。
図15図7のベルト式研削工具の側面図であり、第2本体部が180度回転した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係るエア工具は、図1乃至図3に示すように、エアモータ112を備える工具本体110と、エアモータ112の駆動軸114に取り付けられたドライブプーリ116と、工具本体110に対して前後方向に変位可能に取り付けられたプーリ支持バー118と、プーリ支持バー118の前端部に回転自在に取り付けられたアイドルプーリ120とを備え、エアモータ112の駆動によりドライブプーリ116とアイドルプーリ120との間に掛けまわされた無端研削ベルト122を回転駆動させるようにしたベルト式研削工具100である。当該ベルト式研削工具100は、後述するように、切替バルブ124によってエアモータ112の駆動方向を変更して無端研削ベルト122の回転方向を変更可能となっており、また開閉バルブ126を開閉することによりエアモータ112への圧縮空気の供給を制御してエアモータ112の駆動と停止を行なうようになっている。
【0019】
エアモータ112は、図4及び図5に示すように、断面円形の円柱状のモータ室128を画定するモータハウジング130と、モータ室128内に回転可能に設けられたロータ132と、ロータ132に対して径方向で変位可能に配置された複数のベーン134とを有するベーンモータである。モータハウジング130には、図4に示すように相互に隣接してモータ室128に開口する第1モータ給気口136と第2モータ給気口138とが設けられ、また図5に示すように第1モータ給気口136と第2モータ給気口138から周方向で略等しい距離となる位置にモータ排気口140が設けられている。
【0020】
工具本体110には、図3に示すように、外部圧縮空気源(図示しない)が接続される給気口142から延びる給気路144が形成され、給気路144の途中に給気路144を開閉するための開閉バルブ126が配置されている。開閉バルブ126はスプリング146によって給気路144を閉止する閉止位置に付勢され、工具本体110の外部にまで延びる操作軸148をスプリング146の付勢力に抗して押し込むことにより給気路144を開放する開放位置に変位するようになっている。工具本体110はこの開閉バルブ126を開閉操作するための操作リング(操作部材)150をさらに備える。操作リング150は、図示の位置においては周方向への回転が規制されており、前方(図でみて左方)にスプリング152の付勢力に抗して変位させると周方向への回転が可能な状態となる。操作リング150を前方に変位させてから周方向に回転させると、操作リング150の摺動内周面150aが開閉バルブ126の操作軸148にカム係合して操作軸148を径方向内側に押圧し、開閉バルブ126を開放位置に変位させるようになっている。このようにして操作リング150を開閉バルブ126が閉止位置となる停止位置から開閉バルブ126が開放位置となる駆動位置に操作することにより、給気路144は開放された状態となる。なお、操作リング150は、任意の回転位置で手を離してもその位置が保持されるようになっており、従って駆動位置においてもその位置が保持されるため、当該ベルト式研削工具100を駆動させている最中に操作リング150を手で保持し続ける必要はない。
【0021】
工具本体110にはさらに、図4に示すように、エアモータ112の第1モータ給気口136にまで延びる第1分岐給気路154と、エアモータ112の第2モータ給気口138にまで延びる第2分岐給気路156とが形成されており、給気路144と第1及び第2分岐給気路154、156との間に切替バルブ124が配置されている。切替バルブ124は、筒状のバルブハウジング158内に回転可能に配置されている。切替バルブ124は工具本体110の外部に位置する操作つまみ160(図2図3)を有しており、この操作つまみ160を操作することにより切替バルブ124を図6Aの正転位置から図6Bのニュートラル位置を通過してさらに図6Cの逆転位置にまで変位させることができるようになっている。切替バルブ124が正転位置(図6A)にあるときには、給気路144に対して第1分岐給気路154は切替バルブ124の給気連通路162を介して連通され、第2分岐給気路156は遮断される。従って給気路144から供給される圧縮空気は第1分岐給気路154を通って第1モータ給気口136からエアモータ112のモータ室128内に供給され、ロータ132を正転(図4で見て反時計回りに回転)させる。切替バルブ124が逆転位置(図6C)にあるときには、給気路144に対して第1分岐給気路154は遮断され、第2分岐給気路156は給気連通路162を介して連通される。従って、給気路144から供給される圧縮空気は第2分岐給気路156を通って第2モータ給気口138からエアモータ112のモータ室128内に供給され、ロータ132を逆転(図4で見て時計回りに回転)させる。切替バルブ124がニュートラル位置(図6B)にあるときには、給気路144に対して第1分岐給気路154と第2分岐給気路156とがともに給気連通路162を介して連通される。このときには、後述するように給気口142から供給される圧縮空気は第1分岐給気路154と第2分岐給気路156とに至りエアモータ112を実質的に回転させることなく当該ベルト式研削工具100から排気される。
【0022】
工具本体110には、さらに、給気口142から供給された圧縮空気を最終的に外部に排気するための排気路164が形成されている。排気路164は、図5に示すように、エアモータ112のモータ排気口140からモータハウジング130の周囲に延びる環状の第1部分164a、第1部分164aから後方に延びる第2部分164b、第2部分164bに連接した環状の第3部分164cを有する。排気路164はさらに、図3に示すように、切替バルブ124の排気連通路166から第3部分164cにまで延びる第4部分164d、及び第3部分164cから後方に排気口168まで延びる第5部分164e(図3で破線で示す)を有する。
【0023】
切替バルブ124が正転位置(図6A)にある状態で操作リング150を駆動位置とし開閉バルブ126を開放位置とすると、外部圧縮空気供給源から給気口142に供給されている圧縮空気は、開放された給気路144を通って切替バルブ124に至る。圧縮空気はさらに切替バルブ124の給気連通路162を介して連通された第1分岐給気路154を通って第1モータ給気口136からエアモータ112のモータ室128内に供給されてロータ132を正転させる。ロータ132を回転させた圧縮空気の一部はモータ排気口140を通ってエアモータ112から排気され、残りの圧縮空気は第2モータ給気口138を通ってエアモータ112から排気される。モータ排気口140を通ってエアモータ112から排気された圧縮空気は、さらに排気路164の第1部分164a、第2部分164b、第3部分164c、及び第5部分164eを順に通って最終的に排気口168から外部に排気される。一方で第2モータ給気口138を通ってエアモータ112から排気された圧縮空気は、第2分岐給気路156を通り、切替バルブ124の排気連通路166を介して連通された排気路164の第4部分164dを通り、更に排気路164の第3部分164c及び第5部分164eを通って最終的に排気口168から排気される。
【0024】
切替バルブ124が逆転位置(図6C)にある状態で操作リング150を駆動位置とし開閉バルブ126を開放位置とすると、圧縮空気は、給気路144から切替バルブ124の給気連通路162を介して連通された第2分岐給気路156を通って第2モータ給気口138からエアモータ112のモータ室128内に供給されてロータ132を逆転させる。ロータ132を回転させた圧縮空気の一部はモータ排気口140を通ってエアモータ112から排気され、正転時と同様に排気路164を通って排気される。残りの圧縮空気は第1モータ給気口136を通ってエアモータ112から排気され、第1分岐給気路154を通り、切替バルブ124の排気連通路166を介して連通された排気路164の第4部分164dをさらに通って、以降は正転時と同様の経路を通って排気される。このように、当該ベルト式研削工具100においては、正転時には、第2モータ給気口138はモータ排気口となり、第2分岐給気路156は排気路の一部を構成する。また逆転時には、第1モータ給気口136はモータ排気口となり、第1分岐給気路154は排気路の一部を構成する。
【0025】
このように、切替バルブ124を正転位置と逆転位置との間で変位させることによりエアモータ112の回転方向が正転と逆転との間で切り替わり、それによって無端研削ベルト122の回転方向が変更される。なお、切替バルブ124の回転位置を正転位置及び逆転位置において調整することにより、給気連通路162と第1分岐給気路154又は第2分岐給気路156との間の開口面積を変更することができ、これによってエアモータ112に供給される圧縮空気の量を調整してエアモータ112の回転速度を調整することも可能である。
【0026】
切替バルブ124がニュートラル位置(図6B)にある状態で操作リング150を駆動位置とし開閉バルブ126を開放位置とすると、圧縮空気は、給気路144から切替バルブ124の給気連通路162を介して連通された第1分岐給気路154と第2分岐給気路156とに至る。圧縮空気の一部は、第1モータ給気口136及び第2モータ給気口138からそれぞれモータ室128内に入り、モータ室128の内周面128aとベーン134との間を通ってロータ132の周りを互いに逆回りに流れてモータ排気口140からさらに排気路164を通って排気される。このとき、モータ室128内にはほぼ同量の圧縮空気が互いに逆向きに流れ、ロータ132には互いに逆向きでほぼ同じ大きさの回転方向での力が作用することになるため、ロータ132は実質的に回転しない。また、切替バルブ124の給気連通路162と第1及び第2分岐給気路154、156との間の開口面積は図6Bに示すように狭くなるため、第1モータ給気口136から供給される圧縮空気の量と第2モータ給気口138から供給される圧縮空気の量に差がありロータ132に作用する力に偏りがあったとしても、それはエアモータ112及びそれに連結されたドライブプーリ116等を回転させるほどの大きさの力にはならず、やはりエアモータ112は回転しない。残りの圧縮空気は、第1分岐給気路154と第2分岐給気路156とからエアモータ112を通過せずにそれぞれ切替バルブ124の排気連通路166を通って排気路164から排気される。このように、切替バルブ124がニュートラル位置にあるときには、圧縮空気はエアモータ112を実質的に回転させることなく排気路164を通して排気されることになる。このとき、排気路164を通して排気される圧縮空気により排気音が生じるため、作業者は切替バルブ124がニュートラル位置の状態で開閉バルブ126が開放位置となっていることを容易に認識することができる。なお、上述のように圧縮空気が排気される経路はエアモータ112内を通過する経路とエアモータ112を通過しない経路の2つがあるが、圧縮空気は一方の経路のみを通って排気されることもあり得る。例えば、エアモータ112のベーン134がモータ室128の内周面128aに隙間無く当接している場合には、圧縮空気がロータ132室を通過することができず、従って実質的に全ての圧縮空気が切替バルブ124の排気連通路166を通る経路で排気されることになる。圧縮空気がどちらの経路を通って排気されるか、又は2つの経路をどのような流量比で流れるかは、各経路の流路抵抗の大きさに依存することになる。
【0027】
本発明の第2の実施形態に係るエア工具は、図7乃至10に示すように、開閉バルブ226を操作するための操作部材がレバー250とされたベルト式研削工具200である。レバー250を枢動させることにより、開閉バルブ226の操作軸248が内側に押されて閉止位置にから開放位置に変位するようになっている。
【0028】
当該ベルト式研削工具200における工具本体210は、エアモータ212及び切替バルブ224を備える第1本体部210−1と、開閉バルブ226及びレバー250を備える第2本体部210−2とからなる。第2本体部210−2は、第1本体部210−1に対して同軸状に配置されて第1本体部210−1に対して回転可能に取り付けられている。第2本体部210−2を第1本体部210−1に対して回転させることにより、レバー250を図8の位置とそこから180度反転させた図15の位置との間で変更できるようになっている。第1本体部210−1の後端面270には、図13に示すように、周方向に45度間隔で並べて配置された複数の係止凹部(第2係止部)272が形成されている。また、第2本体部210−2の前端面271には、図12及び図14に示すように、スプリングで付勢されたボールを有するボールプランジャ(第1係止部)274が取り付けられている。図11乃至14の状態においては、第2本体部210−2が第1本体部210−1に対して45度回転され、ボールプランジャ274が係止凹部272のひとつに嵌合することにより、第1本体部210−1に対する第2本体部210−2の回転方向位置が45度の位置で保持されている。同様に、第1本体部210−1に対する第2本体部210−2の回転位置が0度、90度、135度、180度の位置においても、ボールプランジャ274が複数の係止凹部272のうちのいずれかに嵌合して第2本体部210−2の回転方向位置が保持されるようになっている。このように、第2本体部210−2の回転方向位置を変更することにより、作業内容に合わせて、または作業者の好みに合わせて、レバー250の向きを変更することが可能となり、作業性を向上させることができる。なお、第2本体部210−2の回転範囲はより狭い範囲に限定しても良いし、または無制限に360度回転できるようにしても良い。また、係止凹部272の配置間隔は、より細かい位置調整ができるようにより狭い間隔とするなど、適宜変更しても良い。なお、給気路244のうちの第1本体部210−1に形成されている第1部分244aと第2本体部210−2に形成されている第2部分244bは、第1本体部210−1に対する第2本体部210−2の回転方向位置がどのような位置であっても常に連通している。同様に、排気路264のうちの第1本体部210−1に形成されている第2部分264b及び第4部分264dは、第1本体部210−1に対する第2本体部210−2の回転方向位置がどのような位置であっても、第1本体部210−1と第2本体部210−2の間の第3部分264cを介して第2本体部210−2に形成されている第5部分264eに常に連通している。
【0029】
レバー250は、図10に示すように、開閉バルブ126を閉止位置とする停止位置に固定して駆動位置に変位することを防止するためのレバー固定部材276を備えている。レバー固定部材276によってレバー250を停止位置に固定しておくことで、レバー250を誤って駆動位置に変位させてエアモータ112を駆動させてしまうことを防止できる。特に第2本体部210−2を第1本体部210−1に対して回転させる際には、レバー250を枢動させてしまい易く、不意にエアモータ112が駆動してしまう虞があるが、レバー固定部材276によりレバー250を停止位置に固定しておくことで、安全にレバー250の回転方向位置の調整を行なうことが可能となる。
【0030】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば本願発明は、ベルト式研削工具以外のトルクレンチなどの他のエア工具としてもよい。また、切替バルブがニュートラル位置にあるときの圧縮空気の排気の経路は、エアモータを通過する経路とエアモータを通過しない経路との両方を備える必要は必ずしもなく、どちらか一方のみを備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
ベルト式研削工具(第1の実施形態に係るエア工具)100;工具本体110;エアモータ112;駆動軸114;ドライブプーリ116;プーリ支持バー118;アイドルプーリ120;無端研削ベルト122;切替バルブ124;開閉バルブ126;モータ室128;内周面128a;モータハウジング130;ロータ132;ベーン134;第1モータ給気口136;第2モータ給気口138;モータ排気口140;給気口142;給気路144;(開閉バルブの)スプリング146;操作軸148;操作リング(操作部材)150;摺動内周面150a;(操作リングの)スプリング152;第1分岐給気路154;第2分岐給気路156;バルブハウジング158;操作つまみ160;給気連通路162;排気路164;第1部分164a;第2部分164b;第3部分164c;第4部分164d;第5部分164e;排気連通路166;排気口168;
ベルト式研削工具(第2の実施形態に係るエア工具)200;工具本体210;第1本体部210−1;第2本体部210−2;エアモータ212;切替バルブ224;開閉バルブ226;給気路244;第1部分244a;第2部分244b;操作軸248;レバー(操作部材)250;排気路264;第2部分264b;第3部分264c;第4部分264d;第5部分264e;後端面270;前端面271;係止凹部(第2係止部)272;ボールプランジャ(第1係止部)274;レバー固定部材276;
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15