【実施例】
【0170】
本発明は、さらに限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例において、さらに例示される。本明細書の引用文献はすべて、参照により明白に組み入れられる。
【0171】
実施例1
本実施例は、ヒトMASP-2を標的とするモノクローナル抗体であるOMS646が、ヒトMASP-2に高い親和性で結合し、レクチン経路補体活性を妨害することを実証する。
【0172】
背景
「OMS646」と呼ばれる、ヒトMASP-2(SEQ ID NO: 1として示される)を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体を、参照によりここで本明細書に組み入れられるWO2012/151481に説明されているようにして作製した。OMS646モノクローナル抗体は、SEQ ID NO: 2として示される重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 3として示される軽鎖可変領域(VL)を含む。OMS646は、ヒトIgG4重鎖およびλ軽鎖の定常領域に融合されたヒト由来の可変領域から構成され、(4に示すアミノ酸配列を有する)2つの同一の重鎖および(SEQ ID NO: 5に示すアミノ酸配列を有する)2つの同一のλ軽鎖からなるジスルフィド結合されたグリコシル化四量体として分泌される。重鎖(SEQ ID NO: 4)の295位のアスパラギン残基(N)はグリコシル化されており、ボールド体および下線を引いた文字で表示している。
【0173】
重鎖可変領域
下記に提示するのは、OMS646の重鎖可変領域(VH)配列である。KabatによるCDR(31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜107(H3))をボールド体で示し、ChothiaによるCDR(26〜32(H1)、52〜56(H2)、および95〜101(H3))に下線を引いている。
【0174】
OMS646重鎖可変領域(VH)(SEQ ID NO: 2)
【0175】
軽鎖可変領域
下記に提示するのは、OMS646の軽鎖可変領域(VL)配列である。KabatによるCDR(24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)に下線を引いている。これらの領域は、Kabatの方式によって番号を付与されるかChothiaの方式によって番号を付与されるかを問わず、同じである。
【0176】
OMS646軽鎖可変領域(VL)(SEQ ID NO: 3)
【0177】
OMS646重鎖IgG4変異重鎖全長ポリペプチド(445 aa)(SEQ ID NO: 4)
【0178】
OMS646軽鎖全長ポリペプチド(212aa)(SEQ ID NO: 5)
【0179】
WO2012/151481に説明されているように、OMS646はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典的経路を実質的に阻害せず(すなわち、レクチン経路を阻害する一方で、古典的補体経路は無傷のままにする)、また次の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数も示す:該抗体は、ヒトMASP-2に10nMまたはそれ未満のK
Dで結合し;該抗体は、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープに結合し;該抗体は、1%ヒト血清におけるインビトロアッセイ法で10nMまたはそれ未満のIC
50でC3b沈着を阻害し;該抗体は、90%ヒト血清において30nMまたはそれ未満のIC
50でC3b沈着を阻害し;ここで、該抗体は、Fv、Fab、Fab'、F(ab)
2、およびF(ab')
2からなる群より選択される抗体断片であり、該抗体は単鎖分子であり、該抗体はIgG2分子であり、該抗体はIgG1分子であり、該抗体はIgG4分子であり、IgG4分子はS228P変異を含む。
【0180】
WO2012/151481に説明されているように、OMS646は、C1s、C1r、MASP-1、またはMASP-3と比べた場合に、5000倍を上回る選択性でヒト MASP-2 (SEQ ID NO: 1)に非常に強く結合することが明らかにされた。本実施例で示すように、OMS646は、ヒトMASP-2に高い親和性で特異的に結合し、レクチン経路補体活性を妨害する能力を有している。
【0181】
上記に示したように、OMS646は、(a)(i)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列の31〜35番目を含むCDR-H1、(ii)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列の50〜65番目を含むCDR-H2、および(iii)SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列の95〜107番目を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、(b)(i)SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列の24〜34番目を含むCDR-L1、(ii)SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列の50〜56番目を含むCDR-L2、および(iii)SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列の89〜97番目を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0182】
WO2012/151481にさらに説明されているように、SEQ ID NO: 2に対して少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 3に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域を有するOMS646の変異体は、OMS646と同様の機能活性を有することが実証された。WO2012/151481に説明されているOMS646変異体は、a)残基31がRであり、残基32がGであり、残基33がKであり、残基34がMであり、残基35がGであり、残基36がVであり、残基37がSであり、残基50がLであり、残基51がAであり、残基52がHであり、残基53がIであり、残基54がFであり、残基55がSであり、残基56がSであり、残基57がDであり、残基58がEであり、残基59がKであり、残基60がSであり、残基61がYであり、残基62がRであり、残基63がTであり、残基64がSであり、残基65がLであり、残基66がKであり、残基67がSであり、残基95がYであり、残基96がYであり、残基97がCであり、残基98がAであり、残基99がRであり、残基100がIであり、残基101がRであり、残基102がRもしくはAであり、残基103がGであり、残基104がGであり、残基105がIであり、残基106がDであり、かつ残基107がYであるSEQ ID NO: 2を含む重鎖可変領域またはSEQ ID NO: 2に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むその変異体と;b)残基23がSであり、残基24がGであり、残基25がEもしくはDであり、残基26がKであり、残基27がLであり、残基28がGであり、残基29がDであり、残基30がKであり、残基31がYもしくはFであり、残基32がAであり、残基33がYであり、残基49がQであり、残基50がDであり、残基51がKもしくはNであり、残基52がQもしくはKであり、残基53がRであり、残基54がPであり、残基55がSであり、残基56がGであり、残基88がQであり、残基89がAであり、残基90がWであり、残基91がDであり、残基92がSであり、残基93がSであり、残基94がTであり、残基95がAであり、残基96がVであり、かつ残基97がFであるSEQ ID NO: 3を含む軽鎖可変領域またはSEQ ID NO: 3に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むその変異体とを含む。
【0183】
1.OMS646は、終末補体成分のレクチン依存性活性化を特異的に妨害する
方法:
膜侵襲複合体(MAC)沈着に対するOMS646の効果を、レクチン経路、古典的経路、および副経路に対して経路に特異的な条件を用いて解析した。この目的のために、Wieslab Comp300補体スクリーニングキット(Wieslab, Lund, Sweden)を製造業者の取扱説明書に従って使用した。
【0184】
結果:
図1Aは、様々な量のヒトMASP-2阻害抗体(OMS646)の存在下での、レクチン経路に依存するMAC沈着の量を図示する。
図1Bは、ヒトMASP-2阻害抗体(OMS646)の存在下での、古典的経路に依存するMAC沈着の量を図示する。
図1Cは、様々な量のヒトMASP-2阻害抗体(OMS646)の存在下での、副経路に依存するMAC沈着の量を図示する。
図1Aに示したように、OMS646は、MAC沈着のレクチン経路を介した活性化を妨害し、その際のIC
50値は約1nMである。しかし、OMS646は、古典的経路を介した活性化(
図1B)または副経路を介した活性化(
図1C)によって生じるMAC沈着のどちらに対しても効果を有していなかった。
【0185】
実施例2
OMS646プレフォーミュレーション試験
背景/論理的根拠
粘度を低下させたタンパク質製剤の組成は、限定されるわけではないが、タンパク質の性質、タンパク質の濃度、所望のpH範囲、タンパク質製剤が保管される温度、タンパク質製剤が保管される期間、および製剤が患者に投与される方法を含むいくつかの因子を考慮することによって決定される。注射によって投与される、粘度を低下させたタンパク質製剤の場合、タンパク質濃度は、注射体積(通常1.0mL〜2.25mL)に依存する。タンパク質が患者の体重に対して2mg/kg〜4mg/kgで提供される予定であり、平均的な患者の体重が75kgで有る場合、150mg〜300mgのタンパク質が、1.0mL〜1.62mLの注射体積で送達される必要がある。理想的には、粘度は、現実的に注射針を通過できる皮下治療的製品を確保するために、約25cP未満で維持される。いくつかの態様において、粘度は、注射器具を用いて治療的製品を送達するのを可能にするために、およびまた接線流ろ過などの様々なタイプのバイオプロセス処理を可能にするために、約20cP未満で維持される。
【0186】
これらの試験の最も重要な目標は、液体製剤中でのOMS646抗体の最適な化学的、物理的、および構造的な安定性をもたらして、粘度が25cP未満、例えば20cP未満であり、高濃度のOMS646(100mg/mLまたは100mg/mL超)を含み、ヒト対象に皮下注射するために適した安定な製剤を生じると思われる製剤組成を特定することであった。
【0187】
解析方法
様々な緩衝液および賦形剤の組合せを試験するために、OMS646抗体の精製調製物(20mM酢酸ナトリウム、50mg/mLソルビトール、pH5.0中102mg/mL)を、選択した製剤溶液に加えて約1mg/mLに希釈し、体積4mLずつを適切な緩衝液で予めすすいだ濃縮装置に入れた。各ユニットを3200×gで遠心沈殿して約1mLにした。この工程を、合計3回の緩衝液交換の間、繰り返した。
【0188】
白および黒の背景を用いて、水と対比させてEisai Machinery Observation LampのMIH-DXモデルを用いて、製剤の外観を評価した。各製剤試料を、色、清澄度(乳光)、および粒子状物質の存在について試験した。
【0189】
OMS646製剤のタンパク質含有量は、吸光係数1.49mL/mg*cmを用いて決定した。320nmでの吸光度に対して補正する280nmでの吸光度の測定を、使い捨てのUVetteおよび光路長0.2cmを用いて実施した。試料は、1×ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)を用いて約2mg/mLの最終濃度に希釈することによって、2つ1組で調製した。高濃度試料の場合、希釈していない溶液を最初に製剤緩衝液中で1:1希釈し、次いで1×DPBS中で約2mg/mLに希釈した。各試料について2つ1組の測定値を平均し、相対標準偏差(RSD)の比率を計算した。5%を上回るRSDを示している任意の2つ1組の試料について、追加の希釈セットを調製し測定した。
【0190】
タンパク質濃度を以下のよう算出した:
補正A280=A280-A320
タンパク質濃度(mg/mL)=(補正A280*希釈倍率)/1.49mL/mg*cm
【0191】
試料の濁度/光散乱を評価するために、1cm光路長を用いて使い捨てUVetteにおいて、無希釈試料100μLを320nmで測定した。各試料について、タンパク質が存在しない適切な緩衝液交換溶液を用いて、分光光度計のブランクとした。測定後、試料を回収し、pH解析に使用した。試料濃度に対して濁度測定値を標準化するために、A320も単位mg/mLの濃度で割って、得られた単位mAU*mL/mgの値を報告した。
【0192】
すべての製剤および溶液のpH測定は、自動温度補償電極を有する較正されたSeven Multi Meter(Mettler Toledo)を用いて室温で実施した。
【0193】
OMS646製剤の熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によってモニターした。mAbの融解温度(T
m)データを、MicroCalキャピラリーDSCを用いて集めた。タンパク質試料を、適切な緩衝液交換溶液に加えて約2mg/mlの最終濃度まで希釈した。DSCによる試料の評価は、1℃/分または2℃/分で20℃から110℃までスキャンすることによって実施した。スキャン前恒温装置を10分に設定し、スキャン後恒温装置を0分に設定し、サイクル後の恒温装置を25℃に設定した。T
mデータ解析のために、緩衝液-緩衝液スキャンを緩衝液-試料スキャンから引き、次いで、分子量推定値150kDaを用いて、温度記録図をタンパク質濃度(モル濃度)に対して標準化した。連続的なベースラインを作成し、データから引いて、Tm決定を容易にした。融解温度は、関連するOrigin(登録商標)科学ソフトウェアのピーク検出機能を用いて決定した。
【0194】
動的光散乱(DLS)は、試料中の粒子に由来する散乱光の強度の時間依存的変動を測定するものであり、その際、ストークス―アインシュタインの式が、溶液中の粒子の流体力学半径を算出するのに使用される。OMS646製剤についてのDLS実験を、DynaPro(商標)プレートリーダーII測定器(Wyatt)を使用して、2つ1組の無希釈試料(30〜40μL)を用いて実施した。5秒の取得時間を用いて、合計10回の個別スキャンを25℃で実施した。粘度は、リン酸緩衝生理食塩水の粘度である1.019cPに設定した。得られる強度分布プロットを比較して、強度(全体直径)、全体的なサイズ分布幅パラメーター(全体多分散比率または%Pd)、OMS646単量体の平均ピーク直径(ピーク2直径)、およびそのピークの幅パラメーター(ピーク2 %Pd)に基づいて、平均粒径に対する様々な製剤構成成分の影響を評価した。多分散比率(全体またはピーク2)は、強度分布プロットで検出される不均一性を反映する幅パラメーターであり、20%未満の%Pdは、ほぼ単分散の溶液および/または種の立体構造を示唆する。
【0195】
化学的変性に対する安定性を、AVIA等温性化学変性システム(モデル2304)を用いて評価した。このシステムは、一定体積の製剤化タンパク質を製剤緩衝液および尿素を含む製剤緩衝液と混合することによって変性剤勾配を作り出すことにより、自動的に周囲条件下での化学的安定性を試験する。簡単に説明すると、製剤化タンパク質を製剤緩衝液に加えて0.33mg/mLに希釈した。所与の製剤に対して、10M尿素を含む第2の製剤緩衝液も調製した。溶解性の問題が原因で、スクロース含有製剤およびソルビトール含有製剤に対しては9M尿素溶液を調製した。同一のインキュベーション時間(約30分)の後、固有のタンパク質蛍光(すなわち、トリプトファン蛍光)を各データポイントについて測定し、その際、タンパク質の化学的アンフォールディングにより、埋もれていたトリプトファンが溶媒に露出し、蛍光シグナルがそれに伴って赤色移動している。各製剤について、合計24種の尿素濃度(10M尿素ストックについて0〜9.0Mおよび9M尿素ストックについて0〜8.1M)についてデータを得、バックグラウンドの蛍光変化をベースラインで引くためにAbs350/Abs330の比を使用し、二状態モデルまたは三状態モデルのいずれかを用いて、アンフォールディング転移データにあてはまる非線形最小二乗を使用した。
【0196】
製剤の粘度は、落球式粘度計またはレオメーターのいずれかを用いて測定した。粘度の測定はいずれも、0.5s
-1〜1000s
-1の範囲の剪断速度を用いて25℃で実施した。落球の測定は、Anton Paar AMVn粘度計を用いて実施した。落球式の粘度測定の場合、試料で満たした毛細管中のある距離を金色の球が通過するのにかかる時間が、その毛細管を所定の角度(80度)まで傾けた後に測定される。毛細管を合計3回傾け、それらの結果を平均して、試料密度に依存しない値である最終的な粘性係数を決定した。落球式の測定の場合、DI水およびメタノールを用いて毛細管を最初に清潔にした。測定器/毛細管の較正は、10cP、50cP、および/または100cPのブルックフィールド粘度標準物質の測定によって確認した。すべての試料測定の前および間に、DI水およびメタノールを用いて毛細管を再び清潔にした。
【0197】
レオメーターに基づく粘度測定は、ブルックフィールド粘度標準液10番および50番を用いて較正したDV-IIIウルトラプログラマブルレオメーターを用いて実施した。0.5mLの各試料を様々なスピンドル速度(剪断速度)で測定した。すべての剪断速度に対してRSDが10%未満の粘度(cP)測定値を示している試料は、この範囲にわたってニュートン流体とみなし、一方、剪断速度に依存する粘度を有する試料は、非ニュートン流体とみなした。
【0198】
密度測定は、Anton Paar DMA 4500Mデンシトメーターを用いて実施した。簡単に説明すると、DI水で数回、続いてメタノールで、測定器を洗い流した。試料として水の密度を測定する前に、測定器を空気および水について較正した。水およびメタノールで測定器を再び洗浄し、いくつかの製剤から集めた約175mg/mLの材料に対して、1回の試料測定を実施した。報告された値は、重量測定による含有量測定で使用される高濃度OMS646 製剤の妥当な密度近似値として使用した。
【0199】
重量オスモル濃度測定を、溶質濃度が上昇する際の溶液の凝固点の低下を測定する凝固点降下浸透圧計(Multi-Osmette浸透圧計、Precision Systemsモデル2430)を用いて実施した。
【0200】
液体粒子計数システム(Hach Model 9703、センサーモデル:HRLD-150)を、OMS646製剤試料中の粒子の大きさおよび存在量を測定するために使用した。試料の500μL抜き取り物1つ(風袋体積200μL)を用いて、試料データを得た。簡単に説明すると、測定器を約30分間ウォームアップさせ、使用前に少なくとも10回、注射器(1mL)とシステムの両方を脱イオン水で洗い流した。25mLの脱イオン水に含まれるサイズ10μm以上の粒子が25個以下であることを示すことによって、環境適性を試験した。システムの適性は、適切な流路サイズを用いて、2、5、10、および15μMの標準物質の500μL抜き取り物1つを解析することによって確認した。検出される累積計数値/mLが標準物質に対して与えられる規格の範囲内であった場合、そのシステムは試料の試験に適しているとみなした。最初の試料測定の前に、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いてシステムを1回洗い流して、脱イオン水と接触した際に試料が沈殿しないように徹底した。500μL抜き取り物1つを用いて試料を解析し、2μm、5μm、10μm、および25μmの流路についての累積計数値/mLを最も近い整数まで測定した。
【0201】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、OMS646製剤中に存在する凝集物および分解産物の量を評価した。簡単に説明すると、Agilent 1100 HPLCシステムにG3000SWxl SECカラム(Tosoh、7.8×300mm、5μm粒径)を取り付けた。OMS646製剤試料をSEC移動相(140mMリン酸カリウム、75mM塩化カリウム、pH7.0)に加えて2.5mg/mLに希釈し、20μLの試料をHPLCカラムに注入した。流速0.4mL/分を用いてシステムを動かし、参照補正を行わずに280nmでの吸光度(バンド幅4nm)に基づいて、溶出されたタンパク質を検出した。システムの適性を評価するために、全試料の前後に移動相ブランクおよびゲルろ過標準物質を注入し、一連の操作の最初に参照材料を2つ1組で注入した。単量体比率および積分されたピークの総面積に加えて、個々および全体の高分子量(HMW)種および低分子量(LMW)種の存在率(%)を決定した。
【0202】
還元SDSキャピラリーゲル(SDS-CE)電気泳動による解析を、SDS-MW解析キットを用いて、Beckman Coulter製のPA 800 Plusキャピラリー電気泳動システムおよびPDA検出モジュールによって実施した。試料および参照物質は、最初に、SDS-MW試料緩衝液に加えて1.0mg/mLに希釈した。この使用液95μLに、5μLのβ-メルカプトエタノールおよび2μLの内部標準(10kDa)を加えた。すべての試料を300×gで1分間遠心分離し、70±2℃で約10分間加熱し、PCRバイアルに移し、解析するまで25℃で保存した。毛細管の両端に30分間15kV(逆極性)を印加し、入口と出口の両方に20.0psiの圧力を加えることによって、分離を行った。4Hzの収集速度を用いて、220nmでデータを取得した。一連の各操作の最初に、参照物質(未処理のOMS646)を2回注入した。LC、HC、およびIgGの%を報告した。
【0203】
還元剤の代わりに新しく調製した250mMヨードアセトアミドを用い、分離を35分間実施したことを除いては還元CE-SDSについて説明したようにして、非還元SDSキャピラリーゲル電気泳動解析を実施した。電気泳動図の全面積およびIgG比率(%)を報告した。
【0204】
これによって参照により本明細書に組み入れられるWO2012/151481に説明されているような組換え方法を用いて、OMS646抗体の精製調製物(102mg/mL)を作製した。簡単に説明すると、OMS646の重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドをコードする発現構築物を含むCHO細胞においてOMS646抗体を生じさせ、標準的技術を用いて精製した。
【0205】
1.候補の緩衝化系の比較:
方法:
プレフォーミュレーション試験において、治療的抗体製剤中で通常使用されるもの(クエン酸、ヒスチジン、リン酸)、ならびに広いpH範囲(pH4.0〜pH8.0)を網羅するための従来あまり使われない緩衝液(酢酸、コハク酸)を含む、候補の緩衝液群に対して、MASP-2阻害抗体OMS646の安定性を最初に評価した。この試験のために、Amicon Ultra-4(10kDa MWCO)濃縮装置を用いて、タンパク質を20mMコハク酸(pH4.0、5.0および5.5)緩衝液、酢酸(pH4.0、5.0、および5.5)緩衝液、クエン酸(pH5.0、6.0、および7.0)緩衝液、ヒスチジン(pH6.0および7.0)緩衝液、ならびにリン酸(pH6.0、7.0、および8.0)緩衝液に交換した。OMS646抗体の精製調製物(20mM酢酸ナトリウム、50mg/mLソルビトール、pH5.0中102mg/mL)を、14種の各製剤溶液に加えて約1mg/mLに希釈し、体積4.0mLずつを、適切な緩衝液で予めすすいだ濃縮装置に入れた。各ユニットを3200×gで遠心沈殿して約1mLにした。この工程を、合計3回の緩衝液交換の間、繰り返した。最終回の濃縮の間、タンパク質を1mL未満まで極端に濃縮した。各溶液のおおよその体積および遠心分離時間を各サイクル後に記録した。
【0206】
結果:
総合すると、5種の緩衝液タイプについて作成したデータは、緩衝液交換速度、タンパク質内容物の回収、示差走査熱量測定(DSC)、動的光散乱(DLS)、および化学的安定性(データ不掲載)に関して類似していた。pH範囲5.5〜6.0でのOMS646の見かけの総合的な最適の熱的および立体配置的特性に基づいて、酢酸、クエン酸、およびヒスチジンをさらに評価するために選択した。熱安定性が優れていることを主な理由として、pH5.5ではコハク酸よりも酢酸を選択し、一方、pH6.0ではDLSデータに基づいて、リン酸よりもヒスチジンおよびクエン酸を選択した。
【0207】
2.賦形剤のスクリーニング
ベースライン緩衝液スクリーニング(20mM酢酸、pH5.5;クエン酸、pH6.0、およびヒスチジン、pH6.0)の間に特定された緩衝化系を用いて、OMS646の安定性を、抗体安定化特性が報告されている様々な賦形剤の存在下で評価した。この試験のために、OMS646を、Amicon Ultra-4(10kDa MWCO)濃縮装置を用いて、150mM NaCl、250mMソルビトール、250mMスクロース、150mM L-アルギニン、150mM L-グルタマート、または250mM L-プロリンのいずれかを含む各候補緩衝液に緩衝液交換した。緩衝系比較で説明したようにして試料調製を実施し、その際、目標タンパク質濃度は2.0mg/mLであった。
【0208】
結果:
タンパク質回収率に関して、推定されるタンパク質回収率は、約72〜106%の範囲であり、賦形剤の非存在下での回収率よりも、ささやかな改善を示した。ヒスチジン緩衝液が、大多数の賦形剤に対して好ましいようであり、酢酸およびクエン酸は、様々な結果を示した。
【0209】
DSCに関しては、クエン酸緩衝液が、試験したすべての賦形剤においてOMS646の熱安定化をもたらすことが観察された。
図2Aは、OMS646製剤の賦形剤をスクリーニングするための動的光散乱(DLS)解析の結果を図示して、様々な候補賦形剤を含む製剤について観察された全体粒径を示すものである。
図2Bは、OMS646製剤の賦形剤をスクリーニングするためのDLS解析の結果を図示して、様々な候補賦形剤を含む製剤について観察された全体多分散性を示すものである。
図2Aおよび2Bに示すように、DLSに関して、ほとんどの製剤は、同様の結果をもたらした。しかし、すべての緩衝化系について、スクロースは、多分散性の増大ならびに最も大きな全体直径および単量体直径に関連付けられた。スクロースに続いて、ソルビトールがDLSによれば最も好ましくなく、より大きな平均サイズおよび高い多分散性を示した。通常、残りの製剤は、DLSによれば類似しており、単量体直径が10〜12nmであり(
図2Aを参照されたい)、多分散性が20%未満であり、単分散集団を示した(
図2Bを参照されたい)。化学的変性に対する安定性に関しては、AVIA等温性化学変性システムを用いて評価したところ、緩衝液/pHによる傾向がはっきりと観察され、試験されたすべての賦形剤において、酢酸pH5.5製剤は、クエン酸pH6.0製剤およびヒスチジンpH6.0製剤よりも約0.5M低い尿素濃度で変性した。クエン酸およびヒスチジンは、すべての賦形剤において類似していた。
【0210】
要約すれば、このデータから、pH約6.0のクエン酸が最適な緩衝液/pH組合せであることが裏付けられ、溶解性スクリーニング試験へと進められた。すべての緩衝液タイプにおいて観察された不良なDLSデータを考慮して、スクロースはそれ以上の考察からは除外した。
【0211】
3.溶解性/粘度スクリーニング
第1の粘度試験
方法:
最大のOMS646溶解性のための条件を明らかにするために、NaCl、ソルビトール、アルギニン、グルタマート、およびプロリンといったいくつかの等張性の組合せの存在下で、20mMクエン酸(pH5.0および6.0)および20mMコハク酸(pH4.0)を使用した。Amicon15濃縮装置ユニットを複数のサイクルで使用してOMS646を緩衝液交換し、最終サイクルで各溶液の体積を約1mLに減らした。全製剤についての緩衝液交換速度および交換サイクルを記録し、解析した。緩衝液交換後、タンパク質含有量を測定し、回収率(%)を算出し、試料を5℃で一晩保管した。保管中に、コハク酸/グルタマート製剤は沈殿することが観察され、それ以上は評価しなかった。残りの製剤をAmicon 4濃縮装置ユニットに添加し、目標濃度である約200 mg/mLに達するまで、または遠心分離しても体積がもはや減少しなくなるまで、かつ/もしくは(試料操作を介した)試料粘度が取り扱いにくいとみなされるまで、濃縮した。
【0212】
結果:
緩衝液交換速度に関して、最も速い交換速度はpH4.0の試料ではっきりと観察され、コハク酸/ソルビトールが、全般的に見て最も速い交換速度を示した。pH5.0および6.0での交換速度は同程度であり、荷電アミノ酸賦形剤のみを含む製剤の方が、他の製剤よりも速い速度を示した。最も遅い交換速度は、pH6.0のクエン酸/ソルビトール製剤に対して観察された。この製剤は、pHが5.0以上であり非荷電賦形剤構成成分を有する唯一の試料であった。交換速度がOMS646自己会合の代替指標であるという仮説のもとで、荷電した種は、より中性に近いpHでこの挙動を弱めるのに重要であると思われる。DLSに関して、高濃度製剤はすべて、18nM超の濃度で全体的なサイズ分布の上昇を示したコハク酸/アルギニンpH4.0を例外として、約12nmという同程度の全体直径を示した。
【0213】
高粘度のために溶液が物理的に使用不可能になるまで、緩衝液交換した試料を濃縮した。225mg/mLを超える最大濃度を、両方のpH4.0製剤について達成した。pH値がより高い製剤の場合、最大OMS646タンパク質濃度は、160.5〜207.6mg/mLの範囲であった。大多数の製剤の粘度は、前述の0.5s
-1〜1000s
-1の剪断速度で落球式粘度計を用いて評価した。
図3は、pH5.0およびpH6.0で測定された、様々な製剤におけるある範囲のタンパク質濃度にわたるOMS646溶解性スクリーニングのための粘度解析の結果を図示する。
図3に示したように、タンパク質濃度に対してプロットした場合、製剤において粘度の指数関数的増加が観察され、クエン酸/アルギニン/グルタマートpH5.0の場合に最大の粘度が記録された(196.6mg/mL溶液の場合に161.1cP)。pH6.0および同程度のOMS646タンパク質濃度において、クエン酸/ソルビトール製剤は、ソルビトール/グルタマート製剤またはプロリン/グルタマート製剤のいずれかよりもかなり高い粘度を示した。クエン酸/アルギニン/グルタマートpH6.0製剤(95.3mg/mL)は、より多くのタンパク質含有量において、クエン酸/NaCl pH6.0試料(87.5mg/mL)のほぼ半分の粘度(9.3cPに対して5.8cP)を示したことから、荷電アミノ酸がイオン性賦形剤より重要であることが示唆された。
【0214】
所与のタンパク質濃度(すなわち125mg/mL)において、粘度は配合の関数として劇的に変化することに留意することが重要である。理想的には、粘度は、現実的に注射針を通過できる皮下治療的製品を確保するために、約25cP未満で維持される。OMS646製剤のいくつかの態様において、粘度は、注射器具を用いて治療的製品を送達するのを可能にするために、およびまた接線流ろ過などの様々なタイプのバイオプロセス処理を可能にするために、約20cP未満で維持される。
【0215】
第2の粘度試験
OMS646製剤の粘度を減らし、それによって所与の製剤中のOMS646濃度を最大にする目的で、追加の試験を実施した。最初の結果に基づいて、高濃度で粘度が低下した製剤を生じる可能性が最も高い製剤、すなわちコハク酸/ソルビトールpH4.0製剤ならびにグルタマートおよびアルギニンを含むクエン酸製剤、pH6.0を選択した。前の試験に基づくと、荷電アミノ酸は、緩衝液交換速度の上昇、試料加工処理回収率の上昇、および粘度の低下を含む、中性pHでのいくつかの有益な特性に関連していた。正荷電側鎖を有するアミノ酸(例えばアルギニン)または負荷電側鎖を有するアミノ酸(例えばグルタマート)の影響を、ある濃度範囲(50mM〜150mM)にわたって評価して、粘度に対して賦形剤の電荷および濃度の両方を評価した。最後に、米国特許第7,390,786号に説明されているように、CaCl
2は粘度を低下させる潜在的特性を有していることから、等張性クエン酸/グルタマート溶液および高張性クエン酸/グルタマート溶液の両方において添加剤として使用した。
【0216】
前述したように試料を緩衝液交換し、濃縮した。緩衝液交換後、全製剤のタンパク質含有量を算出した。例外は、50mMグルタマートおよび50mM CaCl
2を含む製剤であり、これは緩衝液交換後に沈殿したため、それ以上評価しなかった。これは、シトラートおよびCa
2+のような二価陽イオンの溶解性が限定されていることが一部には原因である可能性が高い。
【0217】
結果:
図4は、様々な候補製剤を用いたOMS646溶解性/粘度試験の緩衝液交換後のタンパク質回収率(%)を図示する。
図4に示したように、アルギニン濃度が上昇するにつれ回収率が上昇する傾向が観察され、150mMアルギニン製剤は、最も高いタンパク質回収率85%を示した。残りの製剤の回収率は同程度であり、64〜75%の範囲であった。次いで、試料が手作業で使用不可能になるまで、前述したように試料を濃縮した。すべての製剤の粘度を前述した様に評価し、結果を下記の表3に示している。
【0218】
(表3)プレフォーミュレーション試験の粘度データの要約
【0219】
上記の表3に示したように、すべての製剤の粘度は70cPを上回っており、最終濃度が広範囲であるにもかかわらず、明らかな傾向が観察された。この予備データから、アルギニンまたはグルタマートの濃度を上昇させると粘度が低下することが明らかであった。コハク酸/ソルビトール製剤の粘度は、150mMアミノ酸製剤と同程度であると思われた。CaCl
2を含めると、粘度の低下が示され、その際、この製剤の粘度は、タンパク質含有量が10%少ない試料と同程度であった。
【0220】
4種の製剤(表3に示すS1、S2、S5、およびS8)を、より詳細な粘度解析のために選択し、回収された純粋な試料を25mg/mLの製剤緩衝液中に徐々に追加して希釈した。
図5は、様々な候補製剤を用いたOMS646溶解性/粘度試験における粘度(粘度データの指数関数的あてはめによって決定)をタンパク質濃度に対して図示する。粘度データの指数関数的あてはめは、Connolly B. et al., Biophysical Journal vol 103:69-78, 2012に説明されている方法に従って決定した。
図5に示したように、150mMのグルタマート製剤およびアルギニン製剤は、最も高い単位濃度当たり粘度を示すほぼ同一の曲線を示し、粘度25cPは約150mg/mLのOMS646に一致した。コハク酸ソルビトール製剤は、いくらか優れた働きをし、25cPは約160mg/mLの推定OMS646含有量に対応した。最も低い全体粘度は、CaCl
2含有製剤において観察され、25cPにおける推定含有量は約175mg/mLであった。この解析の最も興味をそそる結果は、150mMグルタマートおよび50mM CaCl
2を含む高張性製剤が試料粘度を劇的に低下させることであった。可能な最高濃度の液体製剤に対する欲求を考慮して、粘度低下に向けての二価陽イオンおよび高張性の適用を、追加の粘度試験へと進めた。
【0221】
第3の粘度試験
前述した最初の粘度試験の結果に基づいて、追加の試験を実施して、CaCl
2の見かけの粘度低下特性が二価のCa
2+または高張性に関係しているかどうかを判定した。アルギニン含有製剤において緩衝液交換速度の向上が観察されたため、主体となる賦形剤のグルタマートからアルギニンへの変更を行った。沈殿を招く可能性があるシトラートによるCa
2+のキレート化の可能性があるため、ヒスチジンの組込みを実施した。一部の試料について、試料粘度に対するpHおよび界面活性剤の影響も評価し、かつコハク酸/ソルビトールpH4.0製剤に対するCaCl
2および高張性の影響も評価した。先の粘度試験について説明したように、試料を緩衝液交換し、濃縮した。前述の落球式測定器を用いて、全製剤の粘度を測定した。170mg/mLの試料タンパク質濃度に対して、粘度を標準化した。これは、クエン酸/アルギニンpH6.0製剤から得られた先に算出した粘度/溶解性粘度データに対する指数回帰を用いて、測定されたタンパク質含有量から理論上の粘度を最初に算出することによって実施した(y=0.0917
e0.0361x)。170mg/mLのクエン酸/アルギニンpH6.0の理論上の粘度(42.4cP)に測定粘度/理論上の粘度を掛けることによって、標準化された粘度を算出した(表4の脚注bを参照されたい)。得られる標準化粘度は、濃度に関連するばらつきを平準化することによって、ずっと明瞭な傾向を明らかにする(表4および
図6を参照されたい)。
【0222】
(表4)OMS646(170mg/mL)製剤の粘度データの要約
a理論上の粘度は、測定含有量クエン酸/アルギニンpH6.0粘度曲線に対する回帰を用いて算出した(y=0.0917
e0.0361x)。
b170mg/mLクエン酸/アルギニンpH6.0の理論上の粘度(42.4cP)*(測定された粘度/理論上の粘度)
【0223】
図6は、表4のデータに基づく、様々なOMS646候補製剤を用いた粘度試験のための、濃度に対して標準化した粘度データを図示する。
図6および表4に示したように、クエン酸およびヒスチジン製剤の場合、標準化データセットの考察により、高張性は試料粘度の低下をもたらし、この影響の大部分は、アルギニン濃度のごく小さな増加と共に観察されることが明らかに示される。例えば、製剤12(20mMヒスチジンおよび150mMアルギニン)の標準化粘度は57.7cPであり、これと比べて、200mMアルギニンおよび225mMアルギニンをそれぞれ含むヒスチジン製剤の粘度は22.3cPおよび22.0cPである。クエン酸/アルギニン製剤について、同様の傾向が観察された。CaCl
2を含めることの明らかな恩恵はなかった。むしろ、CaCl
2の非存在下で、アルギニン濃度が200mMまたはそれより高いクエン酸/アルギニン製剤およびヒスチジン/アルギニン製剤を用いて低粘度(例えば25cP未満)が実現することを発見したのは意外であった。0.05%のPS-80を含めると、pH≧5.0で評価した3種の製剤のうちの2つにおいて、実質的な粘度低下が起こった。最終的に、pH5.0での粘度は、pH6.0の類似製剤の粘度よりもいくらか低いと思われた。
【0224】
粘度試験から得られた結果を考慮して、高張性アルギニン、二価陽イオンの存在または非存在、およびコハク酸/ソルビトールpH4.0製剤を界面活性剤スクリーニング試験に進めて、OMS646の物理的、立体構造的、および化学的安定性に対する影響をさらに評価した。
【0225】
4.界面活性剤スクリーニング
OMS646安定性に対する界面活性剤の影響を、本明細書において説明する先の試験で特定した候補製剤を用いて評価した。界面活性剤スクリーニング試験のために、以下の6種の製剤を解析した:
20mMクエン酸、200mMアルギニン、pH5.0;
20mMクエン酸、200mMアルギニン、pH6.0;
20mMコハク酸、250mMソルビトール、pH4.0;
20mMヒスチジン、200mMアルギニン、pH6.0;
20mMヒスチジン、75mMアルギニン/50mM CaCl
2、pH6.0;
20mMヒスチジン、75mMアルギニン/50mM MgCl
2、pH6.0。
【0226】
上記に示した6種の各製剤を、界面活性剤を用いないまたは0.01%PS-80の存在下のいずれかで、合計12種の独特な製剤条件について評価した。各製剤について、OMS646を緩衝液交換溶液(PS-80を含まない)に交換し、濃縮し、含有量を測定し、175mg/mLタンパク質に対して試料を標準化した。次いで、各製剤を2つに分けて、PS-80を最終濃度が0.01%(w/v)になるまで適切な試料に添加した。
【0227】
製剤化した試料をそれぞれ、撹拌および凍結/解凍サイクルによる機械的ストレスに供した。両方のタイプのストレスについて、0.5mLの試料を4つのタイプの1型ホウケイ酸ガラスバイアル(2.0mL)に移し、FluroTec(登録商標)栓を用いて封をした。撹拌ストレスの場合、試料を室温で約60時間、600rpmのマイクロプレート振盪機中に入れた。撹拌の対照試料は、撹拌ストレスの期間中、振盪機の隣で保存した。凍結/解凍サイクルの場合、合計5回の凍結-解凍サイクルの間、試料を-80℃で60分以上凍結し、次いで、室温で解凍させた。ストレスを加えた後、解析するまで2〜8℃で試料を保管した。残りの試料は、ストレスを受けていない対照として2〜8℃で維持した。外観観察、A280測定、DLS、およびSECを実施して、OMS646の凝集および安定性に対する界面活性剤の影響を評価した。
【0228】
結果:
6種のOMS646製剤にストレスを加えた後、製品に関係する粒状物質の証拠を示した試料はなかった。所与の製剤の全試料について、タンパク質含有量は本質的に一定であった。凍結/解凍および撹拌試料のDLSデータの解析によって、製剤とストレスのタイプの間にはわずかな差しかないことが明らかになり、PS-80を含めることに関して明らかな全体的傾向は観察されなかった。1つの例外は、コハク酸/ソルビトールpH4.0製剤であり、PS-80を含めることによって、凍結/解凍試料および5℃の対照試料の高い全体多分散性(すなわち、多様な形態)がもたらされた。この酸性製剤はまた、撹拌した際にPS-80の非存在下でDLSによって凝集/自己会合の証拠を示した。
【0229】
SECデータの解析を実施して、試料にストレスを加える間に現れる任意の凝集産物および/または分解産物を評価した。これらの結果を表5A〜5Dに要約する。
【0230】
(表5A)OMS646製剤の界面活性剤スクリーニングのためのSECデータの要約(2〜8℃)
【0231】
(表5B)OMS646製剤の界面活性剤スクリーニングのためのSECデータの要約(凍結/解凍)
【0232】
(表5C)OMS646製剤の界面活性剤スクリーニングのためのSECデータの要約(25℃)
【0233】
(表5D)OMS646製剤の界面活性剤スクリーニングのためのSECデータの要約(撹拌)
【0234】
上記の表5A〜5Dに示したように、全体として、SECデータは、OMS646分子が、界面活性剤に関係なく、PS-80の包含ならびに凍結/解凍(表5B)と撹拌ストレス(表5D)の両方に通常は非感受性であることを示している。最も性能が低いOMS646製剤は、二価陽イオン添加剤(CaCl
2およびMgCl
2)を含むものであることが観察され、これらの試料の高分子量(HMW)材料は他の試料と比べて明らかに増加しており、最も低いレベルの単量体が観察された。
【0235】
5.28日間のストレス負荷条件下およびストレス無負荷条件下の安定性解析
前述のプレフォーミュレーション試験によって、緩衝液、賦形剤、および界面活性剤の組合せ候補を絞った後、175mg/mLおよび200mg/mLの高濃度OMS646においてpH範囲5.5〜6.5にわたって200mMアルギニンを用いてクエン酸緩衝液およびヒスチジン緩衝液を配合して、ストレス負荷条件下(40℃)およびストレス無負荷条件下(5℃)で最も安定な製剤を特定した。アルギニンは、この高濃度で粘度低下特性を有するため、高張性レベル(200mM)で含めた。プレフォーミュレーションデータの統計学的数値最適化にもとづいて、最も適切なOMS646製剤は20mMクエン酸および200mMアルギニンであると決定した。試料のパネルも調製して、0.01% PS-80がクエン酸製剤およびヒスチジン製剤に与える影響も評価した。
【0236】
前述したようにして緩衝液交換を実施し、試料を濃縮し希釈して、目標濃度である175mg/mLまたは200mg/mLのOMS646を実現した。この最終的な標準化の間に、適切な製剤に対して0.01%になるまでPS-80を添加した。Millipore Ultrafree-CL GV 0.22μM無菌濃縮装置を用いて、製剤を滅菌ろ過した。28日のインキュベーション期間の間、各製剤について1本のバイアルを5℃で置き、1本を40℃で置いた。T
0および28日の時点に、これらの試料の濃度、外観、濁度、重量オスモル濃度、pH、DLS、DSC、および粘度を解析した。28日のインキュベーションの後、40℃で保管された175mg/mLおよび200mg/mLのOMS646コハク酸/ソルビトール製剤の両方がゲルに似た堅さを示すようになることが観察され、したがって解析しなかった。
【0237】
結果:
安定性解析に関して、pH値は、製剤および保管条件に関係なく、試験期間の間、安定なままであった。28日後、SEC解析およびSDS-CE解析の両方とも、酸性のpH5.0製剤およびpH4.0製剤においてLMW含有量の実質的な増加を示したことから、これらの製剤をその後の考察から除いた。0.01%PS-80を配合したpH6.0クエン酸/アルギニンおよびヒスチジン/アルギニンの場合、大半の応答は、界面活性剤を含まない関連試料とほとんど区別がつかなかった。しかし、SECは、界面活性剤を含まない対応する製剤と比べて、HMW含有量の0.2%〜0.6%の低下を示した。界面活性剤の見かけの粘度低下特性と結び付けて考えて、ポリソルベート-80(PS-80)を、その後の製剤試験に含めるために選択した。
【0238】
合計10種の製剤の濃度および粘度を、5℃で28日経過後に試験した。代表的な結果を表6に示す。
【0239】
(表6)5℃で28日経過後の製剤の粘度
【0240】
上記の表6に示したように、濃度が高い製剤ほど、高い粘度を示した。PS-80を含めることによって、クエン酸製剤(10.6cP対9.0cP)およびヒスチジン製剤(12.7cP対7.8cP)の両方の粘度が低下し、一方でタンパク質回収率も維持するという観察結果が、かなり興味深かった。PS-80を含めた場合の粘度のこのような低下は有益であり、臨床現場で注射針を通過でき、かつまたオートインジェクターおよび他の注射器具で使用するために適しているとみなされる低粘度を維持しつつ、より高濃度のOMS646を可能にする。
【0241】
結果の要約
これらの試験の最も重要な目標は、液体製剤中での高濃度OMS646抗体の最適な化学的、物理的、および構造的な安定性をもたらすと思われる製剤構成成分を特定することであった。さらに、いくつかの粘度特異的な試験を、皮下投与によってうまく送達され得る最大OMS646抗体濃度を有する最終的な製剤を得ることを目的として、実施した。
【0242】
緩衝系、賦形剤、溶解性、粘度、および界面活性剤スクリーニング試験の評価に照準を合わせた試験の過程を通じて、いくつかの緩衝液タイプ、pH条件、賦形剤、および界面活性剤濃度を反復的に評価した。最初のベースライン緩衝液評価試験では、pH範囲4.0〜8.0の5種の異なる緩衝液タイプ(酢酸、クエン酸、コハク酸、ヒスチジン、およびリン酸)を試験した。DSC、DLS、およびAVIA化学変性システムによる解析から、酸性度の高い条件および塩基性の高い条件がOMS646抗体安定性には最も適していないことが示された。これらの結果に基づいて、酢酸緩衝系、クエン酸緩衝系、およびヒスチジン緩衝系をさらなる評価のために選択した。
【0243】
賦形剤スクリーニングによって、3種の選択された緩衝系のそれぞれにおけるOMS646抗体安定性に対するNaCl、L-アルギニン、L-グルタマート、L-プロリン、スクロース、およびソルビトールの影響を評価した。さらなる賦形剤評価のためのデザインスペースを最大化するために、クエン酸(pH6.0)をそれ以降の試験に単独で進めた。光散乱データが悪かったため、スクロースのみを賦形剤候補から除外した。溶解性スクリーニングにより、OMS646抗体の高い溶解濃度を支援するためにNaCl、ソルビトール、アルギニン、グルタマート、およびプロリンの等張性組合せを含むクエン酸(pH5.0およびpH6.0)製剤の能力を評価した。製剤をすべて、150mg/mL OMS646を超えるように濃縮し、その際、凝集の徴候はなかった。しかし、コハク酸/アルギニン製剤およびコハク酸/グルタマート製剤は、短期間の保管後に沈殿/凝集の徴候を示し、それ以上は評価しなかった。クエン酸製剤の生物物理学的解析では、pH6.0では賦形剤間でごく軽微な差異しか示されず、対応するpH5.0製剤ではHMW含有量のそれほど大きくない減少のみが示された。
【0244】
興味深いデータが、試料のこのサブセットの粘度測定値から生じ、クエン酸/グルタマートおよびコハク酸/ソルビトールが最も低い粘度を与えることが示唆された。賦形剤間で観察された同様の生物物理学的安定性およびOMS646含有量が最大の製剤を得ることの重要性を前提として、追加の粘度試験を実施した。これらの粘度試験によって、二価陽イオンおよび/またはあまり大きくない高張性が、より中性に近いpHでOMS646抗体製剤の粘度を低下させる際の有意な因子であると特定された。クエン酸(pH5.0および6.0)およびヒスチジン(pH6.0)の両方を、200mMアルギニンの存在下で評価した。ヒスチジンpH6.0はまた、75mMアルギニンおよび50mM CaCl
2または50mM MgCl
2のいずれかの存在下でも評価した。最後に、コハク酸/ソルビトールpH4.0を試験した。緩衝液/賦形剤のすべての組合せを、0.01%PS-80の非存在下または存在下のいずれかで試験して、界面活性剤が撹拌ストレス条件下および凍結/解凍ストレス条件下でOMS646抗体安定性を促進するかどうかを判定した。いずれの製剤も、界面活性剤に関係なく、加えられた環境ストレスに対して安定と思われた。目を引く1つの観察結果は、二価陽イオンを含む製剤についてSECによって観察されたOMS646 HMW含有量の増加であった。したがって、CaCl
2およびMgCl
2は、賦形剤としてのそれ以上の考察から除外した。コハク酸/ソルビトールはまた、OMS646抗体純度の低下も示し、これはLMW不純物の目に見える増加に主に帰すことができた。0.01%PS-80を含む製剤と0.01%PS-80を欠く製剤との差異は軽微であったが、界面活性剤を含む試料は、界面活性剤を含まないそれらの対応物と比べて中程度に増加したHMW含有量(約0.1%)を示すと思われた。
【0245】
実施例3
本実施例では、実施例2に説明したプレフォーミュレーション試験に基づいて特定した3種の高度に濃縮された低粘度のOMS646候補製剤を注射針通過性について比べた試験を説明する。
【0246】
背景/論理的根拠
手動での注射に必要とされる時間および力(またはオートインジェクターを用いる注射に必要とされる時間)は重要であり、最終使用者による製品の使いやすさに、したがってコンプライアンスに影響し得る。所定のゲージおよび長さの針を介して所与の注射速度で液剤を注射するのに必要とされる力は、「注射針通過性」と呼ばれる(例えば、Burckbuchler, V.; et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. 76 (3), 351-356, 2010を参照されたい)。ヒト対象に投与するための注射針通過性に関して、(これよりも粘性の市販製剤はあるものの)、通常、25Nの力を超えることは望まれない。一般に、27GA針または27GA薄壁針が、モノクローナル抗体の皮下注射のための標準的針とみなされている。27GA薄壁針は、25GA針とおおよそ等しいIDを有している(G番号が小さいほど直径が大きい)。
【0247】
下記の試験を実施して、3種の高濃度低粘度OMS646候補製剤の注射針通過性を明らかにした。
【0248】
方法:
実施例2で説明したプレフォーミュレーション試験に基づいて、以下の3種の高濃度OMS646候補製剤を選択し、表7に示すようにさらに試験した。この実施例では、塩酸アルギニン、必要であればポリソルベート80、およびクエン酸三ナトリウムまたはヒスチジンのいずれかを用い、塩酸を用いてpHを約5.8〜6.0に調整して、製剤を調製した。
【0249】
(表7)高濃度OMS646候補製剤
【0250】
1.OMS646候補製剤の重量オスモル濃度および粘度
表7に示したように作製した3種の候補製剤の重量オスモル濃度および粘度を、実施例2で説明した方法を用いて測定した。試験した剪断速度におけるRSD(%)が10より大きい場合、製剤の流体挙動を非ニュートン性とみなした。これらの結果を表8に示す。
【0251】
(表8)重量オスモル濃度および粘度
【0252】
2.OMS646候補製剤の注射針通過性
方法:
3種のOMS646製剤の注射針通過性の解析を、27GA(1.25")針、25GA(1")針、および25GA薄壁(1")針を用いて、平均荷重および最大荷重に関して実施した。各製剤の3つ1組のレプリケートをそれぞれ1回注射した。試料の注射針通過性の結果は、3つ1組のレプリケートの平均である。
【0253】
結果:
表7に示す3種の製剤(185mg/mLのOMS646を含む)の注射針通過性を、27GA(1.25")針、25GA薄壁(1")針、および25GA(1")針を用いて評価した。報告される結果は、3つ1組のレプリケートの平均である。これらの結果を表9に示し、
図7Aおよび7Bに図示する。
図7Aは、27GA針、25GA針、および25GA薄壁針を用いた、3種のOMS646候補製剤の平均荷重(lbf)を図示する。
図7Bは、27GA針、25GA針、および25GA薄壁針を用いた、3種のOMS646候補製剤の最大荷重(lbf)を図示する。
【0254】
(表9)高濃度OMS646候補製剤の注射針通過性
【0255】
前述したように、ヒト対象に投与するための注射針通過性に関して、通常、25Nの力を超えることは望まれない。上記の表9に示したように、3種の高濃度OMS646候補製剤はすべて、25GA注射器または25GA薄壁注射器を通して注射された場合、許容される注射針通過性(すなわち、25Nを超えない力)を有している。2番の製剤はまた、27G針を通して注射された場合にも許容される注射針通過性を有している。PS-80 0.01%の添加により、注射針通過性の予想外の改善が引き起こされた。
【0256】
3.注射後のOMS646候補製剤のSEC解析
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、注射後の3種のOMS646候補製剤中に存在する凝集物および分解産物の量を評価した。簡単に説明すると、Agilent 1100 HPLCシステムにG3000SWxl SECカラム(Tosoh、7.8×300mm、5μm粒径)を取り付けた。OMS646試料をSEC移動相(140mMリン酸カリウム、75mM塩化カリウム、pH7.0)に加えて2.5mg/mLに希釈し、20μLの試料をHPLCカラムに注入した。流速0.4mL/分を用いてシステムを動かし、参照補正を行わずに280nmでの吸光度(バンド幅4nm)に基づいて、溶出されたタンパク質を検出した。システムの適性を評価するために、全試料の前後に移動相ブランクおよびゲルろ過標準物質を注入し、一連の操作の最初に参照材料を2つ1組で注入した。単量体比率および積分されたピークの総面積に加えて、個々および全体の高分子量(HMW)種および低分子量(LMW)種の存在率(%)を報告した。
【0257】
結果:
注射後の高濃度OMS646候補製剤のSEC解析の結果を表10に示している。
【0258】
(表10)注射後の高濃度OMS646製剤のSEC解析
【0259】
これらの結果は、針を通して押し出した後にSECによる純度の変化はほとんどないか、またはないことを示す。
【0260】
結果の要約:
注射針通過性解析の結果から、3種の高濃度OMS646候補製剤はいずれも、皮下投与に適した針を用いて試験した場合に許容される注射針通過性を有し、針を通して押し出した後にOMS646の純度の変化はほとんどないか、またはないことが実証される。PS-80 0.01%の添加により、クエン酸アルギニンを含む製剤の注射針通過性の予想外の改善がもたらされた。
【0261】
実施例4
本実施例では、長期保管の間の高濃度低粘度OMS646抗体候補製剤の安定性を評価するために実施した試験を説明する。
【0262】
方法:
この試験は、長期の保管後の、皮下注射用の高濃度OMS646抗体製剤の安定性を評価するために実施した。以下のような2種の候補製剤を評価した:
A)20mMクエン酸、200mMアルギニン、0.01%PS-80、pH5.8(185mg/mL OMS646)
B)20mMヒスチジン、200mMアルギニン、0.01%PS-80、pH5.9(185mg/mL OMS646)
【0263】
試料を、1.0mLのサンプル量で、13mm、2mLサイズのUSP I型Schottガラス管バイアル(West Pharmaceuticals)に入れ、13mmのFluorotec栓(West Pharmaceuticals)で密閉し、ボタン付きの13FOアルミニウムキャップ(West Pharmaceuticalsまたは等価物)をかぶせた。試料バイアルを、-75±10℃、-20±5℃、5±3℃、25±2℃/60±5%RH、および40±2℃/75±5%RHの温度管理されたリーチイン安定性チャンバー中に保管した。製剤1つにつき少なくとも40個を目標とする試料バイアルを、本試験のために保管した。液体として保管する試料は、逆向きに保管したのに対し、凍結した試料は直立状態で保管した。必要な数のバイアルを、関連する時点および条件で引き抜き、試料を次の方法によって特徴付けた:目視検査による外観、A280に基づくタンパク質含有量、重量オスモル濃度、SEC-HPLC、pH、およびMASP-2 ELISA。例示的なSEC-HPLCデータを表11に要約しており、このデータは、5℃で6ヶ月、9ヶ月、および12ヶ月保管した後にOMS646抗体が完全性を維持していたことを示す。ELISAデータによって、5℃で6ヶ月、9ヶ月、および12ヶ月保管した後に抗体がその機能性を維持していたことが確認された。
【0264】
結果:この試験の結果を下記の表11に要約する。
【0265】
(表11)SECによって解析した製剤の安定性
【0266】
表11に示したように、意図された保管温度、すなわち-20℃で最長9ヶ月保管した試料においても5℃で最長12ヶ月保管した試料においても、純度の変化はほとんどまたはまったく観察されなかった。25℃で保管された試料の純度も、2ヶ月を超えて維持されたが、9ヶ月間の保管中に、25℃での純度のわずかな変化が観察された。
【0267】
実施例5
pH5.8のMASP-2阻害抗体OMS646を含む例示的な製剤を、OMS646(185mg/mL)をクエン酸(20mM)、アルギニン(200mM)、およびポリソルベート80(0.01%)と組み合わせることによって調製した。必要に応じて塩酸および/または水酸化ナトリウムを用いてpHを調整して、クエン酸ナトリウム二水和物(4.89mg/mL)およびクエン酸一水和物(0.71mg/mL)を用いてクエン酸緩衝液を調製した。
【0268】
毛管粘度計を用いて、この製剤の粘度を測定した。結果を表12に示している。剪断速度が速い場合、粘度がわずかに減少し、値はすべて13 cP未満である。
【0269】
(表12)異なる剪断速度で測定した例示的OMS646製剤の粘度
【0270】
本実施例で説明する例示的な185mg/mL OMS646製剤を(希釈後の皮下注射および静脈内投与の両方によって)ヒト対象に投薬すると、持続的かつ高度なレクチン経路阻害がもたらされることが明らかにされた。
【0271】
本発明の好ましい態様を例示し説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される製剤および方法に対する様々な変更をその中で加えてよいことが理解されるであろう。したがって、本明細書中で認められる特許文書の範囲は、添付の特許請求の範囲の定義づけによってのみ限定されることが意図される。
【0272】
前述の内容に従って、本発明は、以下の態様を特徴とする。
1. 哺乳動物対象への非経口投与に適した安定な薬学的製剤であって、
(a) pH5.0〜7.0を有する緩衝系を含む水溶液;ならびに
(b) (i)SEQ ID NO: 2のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む重鎖可変領域ならびに(ii)SEQ ID NO: 3のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域、またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 3に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域を含むその変異体を含む、ヒトMASP-2に特異的に結合する約50mg/mL〜約250mg/mLの濃度のモノクローナル抗体またはその断片
を含み;
2〜50センチポアズ(cP)の粘度を有し、かつ2℃〜8℃で少なくとも1ヶ月間保管された場合に安定である、前記薬学的製剤。
2. 製剤中の抗体の濃度が約100mg/mL〜約225mg/mLである、項1記載の薬学的製剤。
3. 製剤中の抗体の濃度が約150mg/mL〜約200mg/mLである、項1記載の薬学的製剤。
4. 製剤中の抗体の濃度が約または約175mg/mL〜約195mg/mLである、項1記載の薬学的製剤。
5. 製剤の粘度が約2cP〜約40cPである、項1または項2記載の薬学的製剤。
6. 製剤の粘度が約2cP〜約30cPである、項1または項2記載の薬学的製剤。
7. 製剤の粘度が約2cP〜約25cPである、項1または項2記載の薬学的製剤。
8. 製剤の粘度が約2cP〜約20cPである、項1または項2記載の薬学的製剤。
9. 製剤の粘度が約2cP〜約18cPである、項1または項2記載の薬学的製剤。
10. 緩衝系が、製剤のpHから2pH単位以内の酸解離定数を有する少なくとも1種の薬学的に許容される緩衝剤を含む、項1〜9のいずれか一項記載の薬学的製剤。
11. 緩衝系が、スクシナート、ヒスチジン、およびシトラートからなる群より選択される少なくとも1種の緩衝剤を含む、項1〜10のいずれか一項記載の薬学的製剤。
12. 少なくとも1種の緩衝剤がヒスチジンまたはシトラートである、項11記載の薬学的製剤。
13. 少なくとも1種の緩衝剤がシトラートである、項1〜12のいずれか一項記載の薬学的製剤。
14. 少なくとも1種の緩衝剤がクエン酸ナトリウムである、項13記載の薬学的製剤。
15. 少なくとも1種の緩衝剤がヒスチジンである、項1〜12のいずれか一項記載の薬学的製剤。
16. 少なくとも1種の緩衝剤がL-ヒスチジンである、項15記載の薬学的製剤。
17. シトラートが10mM〜50mMの濃度で溶液中に存在する、項13記載の薬学的製剤。
18. ヒスチジンが10mM〜50mMの濃度で溶液中に存在する、項15記載の薬学的製剤。
19. タンパク質、アミノ酸、糖、ポリオール、塩、脂肪酸、およびリン脂質からなる群より選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含む、項1〜18のいずれか一項記載の薬学的製剤。
20. 少なくとも1種の賦形剤が、製剤が高張性であるのに十分な量の浸透圧調整剤である、項19記載の薬学的製剤。
21. 浸透圧調整剤が、荷電側鎖を有するアミノ酸、糖または他のポリオール、および塩からなる群より選択される、項20記載の薬学的製剤。
22. 浸透圧調整剤が、糖または他のポリオールであり、スクロース、トレハロース、マンニトール、およびソルビトールからなる群より選択される、項21記載の薬学的製剤。
23. 浸透圧調整剤が、NaClまたはアミノ酸の塩からなる群より選択される塩である、項21記載の薬学的製剤。
24. 浸透圧調整剤が、荷電側鎖を有するアミノ酸である、項21記載の薬学的製剤。
25. 荷電側鎖を有するアミノ酸が、約150mM〜約300mMの濃度で製剤中に存在する、項24記載の薬学的製剤。
26. 浸透圧調整剤が、負荷電側鎖を有するアミノ酸である、項24または25記載の薬学的製剤。
27. 浸透圧調整剤賦形剤が、正荷電側鎖を有するアミノ酸である、項24または25記載の薬学的製剤。
28. 浸透圧調整剤がグルタマートである、項26記載の薬学的製剤。
29. 浸透圧調整剤がアルギニンである、項27記載の薬学的製剤。
30. 浸透圧剤がL-アルギニンHClである、項29記載の薬学的製剤。
31. アルギニンが、200mM〜300mMの高張性レベルで溶液中に存在する、項29記載の薬学的製剤。
32. 溶液が、約20mMのシトラートを含み、かつpH約5.5〜約6.5を有する、項17記載の薬学的製剤。
33. 溶液が、約200mMの濃度のアルギニンをさらに含む、項32記載の薬学的製剤。
34. 溶液が、約20mMのヒスチジンを含み、かつpH約5.5〜約6.5を有する、項18記載の薬学的製剤。
35. 溶液が、約200mMの濃度のアルギニンをさらに含む、項34記載の薬学的製剤。
36. 溶液が、約0.001%(w/v)〜約0.1%(w/v)の濃度の界面活性剤をさらに含む、項1〜35のいずれか一項記載の薬学的製剤。
37. 界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、項36記載の薬学的製剤。
38. 界面活性剤がポリソルベートまたはポロキサマーである、項37記載の薬学的製剤。
39. 界面活性剤がポリソルベート80である、項38記載の薬学的製剤。
40. 2℃〜8℃で少なくとも6ヶ月間保管された場合に安定である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
41. 2℃〜8℃で少なくとも12ヶ月間保管された場合に安定である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
42. 粘度が約25cP未満である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
43. 粘度が約20cP未満である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
44. 粘度が約18cP未満である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
45. 室温で27GA 1.25"針を通して注射される場合に、製剤の注射すべり力が約25ニュートンまたはそれ未満である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
46. 室温で25GA 1"針を通して注射される場合に、製剤の注射すべり力が約20ニュートンまたはそれ未満である、項1〜39のいずれか一項記載の薬学的製剤。
47. 製剤が約20mMのクエン酸ナトリウム、約200mMのL-アルギニンHClを含み、該製剤中の抗体の濃度が約175mg/mL〜約195mg/mLであり、かつ粘度が約25cP未満である、項1記載の薬学的製剤。
48. 0.001%w/v〜0.05%w/vのポリソルベート80をさらに含む、項47記載の薬学的製剤。
49. 製剤が約20mMのL-ヒスチジン、約200mMのL-アルギニンHClを含み、該製剤中の抗体の濃度が約175mg/mL〜約195mg/mLであり、かつ粘度が約25cP未満である、項1記載の薬学的製剤。
50. 0.001%w/v〜0.05%w/vのポリソルベート80をさらに含む、項49記載の薬学的製剤。
51. 無菌である、項1〜50のいずれか一項記載の薬学的製剤。
52. モノクローナル抗体が全長モノクローナル抗体である、項1〜50のいずれか一項記載の薬学的製剤。
53. 抗体がヒトIgG4全長抗体である、項52記載の薬学的製剤。
54. IgG4がヒンジ領域中に変異を含む、項53記載の薬学的製剤。
55. スクロースもソルビトールも含まない、項1〜54のいずれか一項記載の薬学的製剤。
56. CaCl
2を含まない、項1〜54のいずれか一項記載の薬学的製剤。
57. MgCl
2を含まない、項1〜54のいずれか一項記載の薬学的製剤。
58. CaCl
2を含まず、かつMgCl
2を含まない、項1〜54のいずれか一項記載の薬学的製剤。
59. 二価陽イオン添加剤を含まない、項1〜54のいずれか記載の薬学的製剤。
60. 抗体の濃度が約185mg/mLである、項1〜59のいずれか一項記載の薬学的製剤。
61. 皮下投与後の抗体の分散および/または吸収を増大させるのに有効な量のヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、項1〜60のいずれか一項記載の薬学的製剤。
62. 約100U/mL〜約20,000U/mLのヒアルロニダーゼ酵素を含む、項61記載の薬学的製剤。
63. (a)約0.01〜約0.08%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約150mM〜約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約10mM〜約50mMの濃度のクエン酸ナトリウム;および
(d)約150mg/mL〜約200mg/mLの抗体
を含む、項1記載の薬学的製剤。
64. (a)約0.01〜約0.08%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約150mM〜約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約10mM〜約50mMの濃度のL-ヒスチジン;および
(d)約150mg/mL〜約200mg/mLの抗体
を含む、項1記載の薬学的製剤。
65. (a)約0.01w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約20mMの濃度のクエン酸ナトリウム;および
(d)約175mg/mL〜約195mg/mLの抗体
を含む、項1記載の薬学的製剤。
66. (a)約0.01%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約20mMの濃度のL-ヒスチジン;および
(d)約175mg/mL〜約195mg/mLの抗体
を含む、項1記載の薬学的製剤。
67. (a)約0.01%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約20mMの濃度のクエン酸ナトリウム;および
(d)約175mg/mL〜約195mg/mLの抗体
を含む、項1記載の薬学的製剤。
68. (a)約0.01%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約20mMの濃度のL-ヒスチジン;および
(d)約175mg/mL〜約195mg/mLの抗体
を含む、項1記載の薬学的製剤。
69. 皮下投与後の抗体の分散および/または吸収を増大させるのに有効な約100U/mL〜約20,000U/mLのヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、項63〜68のいずれか記載の薬学的製剤。
70. 哺乳動物対象への非経口投与に適した安定な水性薬学的製剤であって、
(a)約0.01〜約0.08%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約150mM〜約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約10mM〜約50mMの濃度のクエン酸ナトリウム;ならびに
(d)(i)SEQ ID NO: 2のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む重鎖可変領域ならびに(ii)SEQ ID NO: 3のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域、またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 3に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域を含むその変異体を含む、ヒトMASP-2に特異的に結合する約150mg/mL〜約200mg/mLの濃度のモノクローナル抗体またはその断片
から本質的になり、
pH約5.0〜約7.0、2〜50センチポアズ(cP)の粘度を有し、かつ2℃〜8℃で少なくとも1ヶ月間保管された場合に安定である、前記薬学的製剤。
71. 哺乳動物対象への非経口投与に適した安定な水性薬学的製剤であって、
(a)約0.01〜約0.08%w/vの濃度のポリソルベート80;
(b)約150mM〜約200mMの濃度のL-アルギニンHCl;
(c)約10mM〜約50mMの濃度のL-ヒスチジン;および
(d)(i)SEQ ID NO: 2のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む重鎖可変領域ならびに(ii)SEQ ID NO: 3のCDR-L1、CDR-L2 およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域、またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 3に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域を含むその変異体を含む、ヒトMASP-2に特異的に結合する約150mg/mL〜約200mg/mLの濃度のモノクローナル抗体またはその断片
から本質的になり、
pH約5.0〜約7.0、2〜50センチポアズ(cP)の粘度を有し、かつ2℃〜8℃で少なくとも1ヶ月間保管された場合に安定である、前記薬学的製剤。
72. 抗体またはその断片が、SEQ ID NO: 2に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 3に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項1〜71のいずれか一項記載の製剤。
73. 項1〜72のいずれか一項記載の製剤を含む、密閉容器。
74. 項1〜72のいずれか一項記載の製剤をその中に含む、皮下投与器具。
75. 項1〜72のいずれか一項記載のMASP-2抗体を含む薬学的製剤を含む事前充填容器および該製剤を使用するための説明書を含む、キット。
76. 事前充填容器が、注射器、ペンインジェクター、密閉バイアル、オートインジェクター、およびポンプ器具(例えば、体表面に取り付けるパッチポンプまたは有線式ポンプ)からなる群より選択される、項75記載のキット。
77. (a)項1〜60または項63〜72のいずれか一項記載のMASP-2抗体を含む薬学的製剤を含む第1の事前充填容器;
(b)皮下投与後の該MASP-2抗体の分散および/または吸収を増大させるのに有効な量のヒアルロニダーゼ酵素を含む第2の事前充填容器;ならびに
(c)使用のための説明書
を含む、キット。
78. 第1の事前充填容器または第2の事前充填容器の少なくとも1つが、注射器、ペンインジェクター、密閉バイアル、オートインジェクター、およびポンプ器具(例えば、体表面に取り付けるパッチポンプまたは有線式ポンプ)からなる群より選択される、項77記載のキット。
79. 項1〜72のいずれか一項記載の製剤を適切な容器中に含む、ヒトへの非経口投与に適した薬学的単位剤形。
80. 項1〜72のいずれか一項記載の製剤をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、MASP-2阻害抗体による治療の影響を受けやすい疾患または障害を患っている対象を治療する方法。
81. 製剤が対象に皮下投与される、項80記載の方法。
82. 抗体の分散および/または吸収を増大させるのに有効な量のヒアルロニダーゼ酵素を対象に投与する段階をさらに含む、項80記載の方法。
83. ヒアルロニダーゼ酵素が、MASP-2阻害抗体を含む製剤と同時に投与される、項82記載の方法。
84. 製剤が、MASP-2阻害抗体およびヒアルロニダーゼ酵素を含む、項82または83記載の方法。
85. ヒアルロニダーゼ酵素が、MASP-2阻害抗体を含む製剤より前に対象に投与される、項82記載の方法。
86. ヒアルロニダーゼ酵素が、MASP-2阻害抗体を含む製剤より後に対象に投与される、項82記載の方法。
87. 製剤が、その中に前記製剤を含む事前充填注射器によって投与される、項80記載の方法。
88. 項1〜72のいずれか一項記載の製剤をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、補体に関連する疾患または障害を患っているか、または発症するリスクを有している対象において、MASP-2依存性補体活性化を阻害する方法。
89. 製剤が対象に皮下投与される、項88記載の方法。
90. 製剤が、その中に前記製剤を含む事前充填注射器によって投与される、項79記載の方法。
91. 対象が、血栓性微小血管症(TMA)、腎臓の病態、組織または臓器の移植の結果として生じる炎症性反応、虚血再灌流傷害、糖尿病に関連する合併症、心血管系の疾患または障害、炎症性胃腸障害、肺の障害、眼の疾患または障害、および播種性血管内凝固からなる群より選択される、補体に関連する疾患または障害を患っているか、または発症するリスクを有している、項88記載の方法。
92. 血栓性微小血管症が非定型溶血症候群(aHUS)である、項91記載の方法。
93. 血栓性微小血管症が、造血幹細胞移植に関連している、項91記載の方法。
94. 腎臓の病態がIgA腎症である、項91記載の方法。
95. 腎臓の病態がループス腎炎である、項91記載の方法。
96. 項1〜72のいずれか一項記載の製剤を、薬学的に許容される希釈剤に加えて希釈する段階、および希釈された該製剤をそれを必要とする対象に全身的に投与する段階を含む、補体に関連する疾患もしくは障害を患っているか、または発症するリスクを有している対象において、MASP-2依存性補体活性化を阻害する方法。
97. 希釈された製剤が対象に静脈内投与される、項96記載の方法。
98. 対象が、血栓性微小血管症(TMA)、腎臓の病態、組織または臓器の移植の結果として生じる炎症性反応、虚血再灌流傷害、糖尿病に関連する合併症、心血管系の疾患または障害、炎症性胃腸障害、肺の障害、眼の疾患または障害、および播種性血管内凝固からなる群より選択される、補体に関連する疾患もしくは障害を患っているか、または発症するリスクを有している、項96記載の方法。
99. 血栓性微小血管症が非定型溶血症候群(aHUS)である、項98記載の方法。
100. 血栓性微小血管症が、造血幹細胞移植に関連している、項98記載の方法。
101. 腎臓の病態がIgA腎症である、項98記載の方法。
102. 腎臓の病態がループス腎炎である、項98記載の方法。
103. MASP-2依存性補体に関連する疾患もしくは障害を患っているか、または発症するリスクを有している患者の治療において使用するための薬学的組成物であって、該組成物が、約350mg〜約400mgのMASP-2阻害抗体を含む無菌の単回使用剤形であり、該組成物が、約1.8mL〜約2.2mLの185mg/mL抗体製剤を含み、該抗体が、(i)SEQ ID NO: 2に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および(ii)SEQ ID NO: 3に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、かつ該組成物が、2℃〜8℃で少なくとも6ヶ月間保管された場合に安定である、前記薬学的組成物。
104. pH5.0〜7.0を有する緩衝系を含む、項103記載の組成物。
105. 緩衝系が、スクシナート、ヒスチジン、およびシトラートからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的に許容される緩衝剤を含む、項104記載の組成物。
106. 項1〜72のいずれか一項記載の185mg/mL MASP-2阻害抗体製剤を1.8mL〜2.2mL含む、項103記載の組成物。
107. MASP-2依存性補体に関連する疾患または障害がaHUSである、項103〜107のいずれか一項記載の組成物。
108. MASP-2依存性補体に関連する疾患または障害がHSCT-TMAである、項103〜107のいずれか一項記載の組成物。
109. MASP-2依存性補体に関連する疾患または障害がIgANである、項103〜107のいずれか一項記載の組成物。
110. MASP-2依存性補体に関連する疾患または障害がループス腎炎(LN)である、項103〜107のいずれか一項記載の組成物。
【0273】
本発明の好ましい態様を例示し説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それらおいて様々な変更がなされてもよいことが理解されるであろう。
【0274】
排他的な所有権または特権を請求する本発明の態様を添付の特許請求の範囲に定義する。