(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクリル系モノマーは、一官能性アクリル系モノマー、二官能性アクリル系モノマー、及び多官能性アクリル系モノマーのうち1種または2種以上の混合物である、請求項6に記載のインクジェットプリント用組成物。
前記アクリル系オリゴマーは、エポキシアクリレート、ウレタン系変性エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリリックアクリレート、シリコンアクリレート、メラミンアクリレート、アクリリックアクリレート、ポリチオールアクリレート誘導体、及びポリチオールスピロアセタル系アクリレートからなる群から選択される1種または2種以上の混合物である、請求項6又は7に記載のインクジェットプリント用組成物。
前記光開始剤は、ベンゾフェノン系、ジフェノキシベンゾフェノン系、アントラキノン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、またはベンジル系である、請求項6から8のいずれか1項に記載のインクジェットプリント用組成物。
前記組成物は、消泡剤、レベリング剤、付着増進剤、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、平滑剤、分散剤、及びシランカップリング剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項6から9のいずれか1項に記載のインクジェットプリント用組成物。
前記素地鋼板は、冷延鋼板;熱延鋼板;亜鉛めっき鋼板;アルミめっき鋼板;コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、マンガン、鉄、マグネシウム、錫、銅またはそれらの混合物を含有するめっき鋼板;またはシリコン、銅、マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛またはそれらの混合物を添加したアルミニウム合金板である、請求項11に記載のインクジェットプリント鋼板。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一側面であるインクジェットプリント用組成物について詳細に説明する。
【0010】
本発明の一側面であるインクジェットプリント用組成物は、多数の気孔を有し、表面に金属薄膜が形成された高分子粒子を含む。
【0011】
上述のように、従来ではインクジェットプリント鋼板に金属質感を実現するために、インクジェットプリント用組成物に金属粒子を単に混合してきた。しかし、溶剤ベースのインクの場合、分散剤の添加によって組成物内への金属粒子の分散が可能であるということは別論としても、無溶剤型の紫外線硬化方式のインクジェットプリント用組成物の場合は、分散剤の溶解が容易でないだけでなく、インク自体の粘度が低くて比重が大きい金属粉末の沈殿を防ぐのが容易でないため、金属質感を有する紫外線硬化方式のインクジェットプリント用組成物を実現することが困難であるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、発想を転換して、インクジェットプリント用組成物に金属粒子自体を添加するのではなく、比重が小さい高分子粒子の表面に金属薄膜を形成し、このように金属薄膜が形成された高分子粒子をインクジェットプリント用組成物に添加した。
【0013】
しかし、通常の高分子の表面に金属薄膜を形成すると、金属含有粒子の比重低減による沈殿防止の効果が十分でないことが確認された。したがって、本発明者らは、多数の気孔を有する高分子粒子の表面に金属薄膜を形成するようにすることで、本発明の目的を効果的に達成できることを確認した。
【0014】
一方、本発明の効果をより極大化するためには、その内部に空洞が形成された高分子粒子の表面に金属薄膜を形成することがより好ましい。これは、金属含有粒子の比重が顕著に低くなって金属含有粒子の分散性が著しく改善されるためである。
【0015】
制限されない一例によると、表面に金属薄膜が形成された高分子粒子の平均粒径は、50〜2000nmであることができる。もし、その平均粒径が50nm未満であると、粒子の乱反射によって金属質感を実現する効果が減少し、一方、2000nmを超えると、ヘッドノズルを詰まらせてジェッティング性が低下する。ここで、平均粒径とは、金属薄膜が形成された高分子粒子の平均円相当直径(equivalent circular diameter)を意味する。
【0016】
制限されない一例によると、金属薄膜が形成された高分子粒子の体積に対する空洞の体積の比は、8:1〜8:7であることができる。もし、空洞の体積が小さすぎてその比が8:1未満であると、空洞の形成による比重減少の効果が不十分となり、一方、その比が8:7を超えると、外部からの衝撃によって高分子粒子が簡単に割れたり変形したりする恐れがある。
【0017】
本発明では、多数の気孔を有する高分子粒子の構造及び具体的な種類については特に限定しないが、制限されない一例によると、コア−シェル構造を有することができ、より具体的には、親水性酸単量体を含む単量体から重合されたコア層重合体及び上記コア層重合体を囲む少なくとも一つ以上のセル層重合体を含んでなることができる。このとき、上記コア層重合体の内部には、空洞が形成されていることができる。
【0018】
コア層重合体は、ミセル(micelle)を形成する球状ナノ粒子であって、コアを囲むセルとの親和性のために、両親媒性重合体であることが好ましく、より具体的には、コア層重合体は、親水性酸単量体及びエチレン性不飽和単量体の共重合体であることが好ましい。
【0019】
親水性酸単量体は、特に制限されるものではないが、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のモノアルキルエステルまたはビニル安息香酸などが用いられることができる。
【0020】
エチレン性不飽和単量体は、特に制限されるものではないが、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼンのような芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのような(メタ)アクリル酸エステル;ブタジエン、イソプレンのようなジエン系単量体;N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;酢酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル;塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン;またはビニルピリジンを用いることができ、上記単量体は、2種以上用いられることができる。
【0021】
セル層重合体としては、製造過程中に粒子形状、例えば、球状またはチューブ状を維持することができるものであれば、制限なく用いることができる。例えば、セル層重合体は、親水性酸単量体及びエチレン性不飽和単量体の共重合体である中間層重合体、及び上記中間層重合体を囲み、疎水性単量体から重合された外郭層重合体の2層構造で形成されることができ、場合によっては、より多くの機能層を含むことができる。
【0022】
ここで、親水性酸単量体及びエチレン性不飽和単量体の種類は、上述の通りである。一方、疎水性単量体は、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼンのような芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのような(メタ)アクリル酸エステル;ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系単量体;酢酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル;塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン;またはビニルピリジンなどを用いることができる。
【0023】
一方、本発明では、上述のように多数の気孔を有する高分子粒子を製造する方法についても特に限定せず、例えば、乳化重合、ラジカル重合、イオン重合、懸濁重合、ウレタン重合、ゾル−ゲル重合など、通常広く知られている重合方法のいずれかを用いることができる。もし、乳化重合によって製造する場合、好ましい一例として、次のような方法によることができる。
【0024】
コア層重合体は、反応媒体として蒸留水を用い、乳化重合が可能な単量体、必要に応じて連鎖移動剤(chain transfer agent)を界面活性剤で乳化させた後、水溶性開始剤を投入して反応を開始して合成することができる。より具体的には、単量体を界面活性剤で乳化させたエマルジョンを超音波乳化機で乳化させた後に反応器に投入し、窒素を投入して反応器内部を窒素雰囲気に維持させる。そして、オイルバス(oil bath)を用いて反応器の温度を50〜1000℃に昇温させた後、水溶性開始剤を投入して反応を開始してコア層重合体を合成することができる。
【0025】
ここで、乳化重合が可能な単量体は、上述の通りである。一方、界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)のようなアニオン性界面活性剤、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(tetradecyl trimethyl ammonium bromide)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(hexadecyl trimethyl ammonium bromide)、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(stearyl trimethyl ammonium chloride)などのようなカチオン性界面活性剤、ノニルフェニルエーテル(nonyl phenyl ether)のような非イオン性界面活性剤を用いることができる。特に、本発明は、コーティング剤を用いる場合、基材との接着性を向上させるためにカチオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。上記単量体と界面活性剤との反応比は、1:0.001〜0.2重量比が好ましく、より好ましくは1:0.005〜0.1がよい。もし、単量体と界面活性剤との反応比が上記範囲を外れると、エマルジョンの状態が不安定になるという問題がある。
【0026】
また、水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)、過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)、過硫酸カリウム(potassium persulate)などのような過硫酸系、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(4,4−Azobis(4−cyanovaleric acid))、アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(Azobis(2−amidinopropane)dihydrochloride)のようなアゾ系開始剤を用いることができ、その使用量は、上記単量体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部を用いることができる。
【0027】
また、連鎖移動剤は、乳化重合において通常に用いるものを用いることができる。
【0028】
また、外郭層重合体を形成する段階前に中間層を形成するために、例えば、上記コア層重合体の存在下で水性酸単量体及びエチレン性不飽和単量体の共重合体である中間層重合体を形成する段階をさらに含むことができる。上記外郭層の単量体は上述の通りであり、重合方法は上述のエマルジョン重合方法を用いることができる。
【0029】
一方、粒子内部の空洞は、コア層重合体にアルカリ性物質を混入させてコア粒子を膨張させる方法により形成することができる。本発明では、アルカリ性物質の種類については特に限定しないが、例えば、アンモニア、エタノールアミン、トリエタノールアミン、5−アミノ−1−ペンタノール、ジエタノールアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミンなどを用いることができる。空洞の大きさは、混入するアルカリ性物質の量と混入時間に応じて適宜調節することができる。
【0030】
本発明では、多数の気孔を有する高分子粒子の表面に形成された金属薄膜の具体的な種類などについては特に限定せず、例えば、金属薄膜をなす金属は、Zn、Mg、Au、Ag、Cu及びAlからなる群から選択される1種以上であることができる。一方、金属薄膜は、通常のステンレス(STS)薄膜であることもできる。
【0031】
また、本発明では、金属薄膜の厚さについても特に限定しないが、制限されない一例を挙げると、金属薄膜の厚さは10〜200nmであることができる。もし、金属薄膜の平均厚さが10nm未満であると、金属質感を実現する効果が現れない可能性があり、一方、200nmを超えると、工程費用が過剰に増加するだけでなく、比重と粒子サイズの増加によって分散性及びジェッティング性が低下する恐れがある。
【0032】
また、本発明では、多数の気孔を有する高分子粒子の表面に金属薄膜を形成する方法についても特に限定しないが、制限されない一例を挙げると、電気めっき、物理蒸着法(PVD、Physical Vapor Deposition)、エアロゾルデポジション(Aerosol Deposition)、ディッピングなどの方法により形成することができる。
【0033】
本発明では、インクジェットプリント用組成物に含有された金属薄膜が形成された高分子粒子の含有量については特に限定しないが、制限されない一例によると、インクジェットプリント用組成物100重量部に対して5〜50重量部含まれることができる。もし、その含有量が5重量部未満であると、金属質感を実現する効果が現れない可能性があり、一方、50重量部を超えると、金属粒子が印刷面に付着されず、剥離する恐れがある。本発明の一実施形態では、上記金属薄膜が形成された高分子粒子の含有量のより好ましい範囲として、インクジェットプリント用組成物100重量部に対して20〜40重量部を含むことができる。
【0034】
本発明では、金属薄膜が形成された高分子粒子を除いては、インクジェットプリント用組成物に含まれることができる成分の具体的な種類について特に限定せず、通常の溶剤ベースインク用組成物や紫外線硬化型インク用組成物に含まれる成分で組成されることができる。但し、上述のように、溶剤ベースのインクは、VOCの排出、熱硬化による材料の変色や変形、工程費用の増加などによる問題があるため、以下では、紫外線硬化型インク用組成物であることを前提に、金属薄膜が形成された高分子粒子以外の残りの成分について詳細に説明する。
【0035】
「アクリル系モノマー」
アクリル系モノマーは、光硬化反応に関与し、コーティング層内でバインダーとしての役割を果たす。
【0036】
アクリル系モノマーは、インクジェットプリント用組成物100重量部に対して10〜60重量部、好ましくは20〜50重量部含まれることができる。もし、アクリル系モノマーの含有量が少なすぎると、粘度が過剰に上昇して鉄鋼材料へのインクジェットインクの適用が困難になる。逆にアクリル系モノマーの含有量が多すぎると、全体的な塗膜物性に悪影響を及ぼすことがある。
【0037】
一例によると、アクリル系モノマーは、一官能性アクリル系モノマー、二官能性アクリル系モノマー、及び多官能性アクリル系モノマーのうち1種または2種以上の混合物であることができる。
【0038】
また、一例によると、アクリル系モノマーとして用いられる一官能性アクリル系モノマーは、アルキルアクリレート、アリルアクリレート、アルコキシアクリレート、及びテトラヒドロフルフリルアクリレートからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であることができる。
【0039】
また、一例によると、アクリル系モノマーとして用いられる二官能性アクリル系モノマーは、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であることができる。
【0040】
また、一例によると、アクリル系モノマーとして用いられる多官能性アクリル系モノマーは、トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレートからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であることができる。
【0041】
「アクリル系オリゴマー」
アクリル系オリゴマーも光硬化反応に関与し、コーティング層内でバインダーとしての役割を果たす。ここで、アクリル系オリゴマーとは、分子内に少なくとも一つのアクリル基を有するオリゴマーを意味する。
【0042】
アクリル系オリゴマーは、インクジェットプリント用組成物100重量部に対して10〜40重量部、好ましくは10〜30重量部含まれることができる。アクリル系オリゴマーの含有量が10重量部未満であると、接着性、加工性、耐溶剤性などが劣化し、一方、30重量部を超えると、粘度が過剰に上昇して噴射が困難になり、これにより、インクジェットインクの適用が困難になる。
【0043】
一例によると、アクリル系オリゴマーは、エポキシアクリレート、ウレタン系変性エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリリックアクリレート、シリコンアクリレート、メラミンアクリレート、アクリリックアクリレート、ポリチオールアクリレート誘導体、及びポリチオールスピロアセタル系アクリレートからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であることができる。
【0044】
「光開始剤」
光開始剤は、光硬化反応が開始されるようにする役割を果たす。本発明では、光開始剤の含有量は特に制限しないが、インクジェットプリント用組成物100重量部に対して1〜10重量部含まれることができる。もし、1重量部未満であると、光硬化反応が十分に起こらない恐れがあり、10重量部を超えると、コーティング層の物性が低下する恐れがある。
【0045】
一例によると、光開始剤は、ベンゾフェノン系、ジフェノキシベンゾフェノン系、アントラキノン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、またはベンジル系であることができる。また、現在市販されている光開始剤であるMicure HP−8、Irgacure 819、Darocur TPO、Micure CP−4のような開始剤を用いることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0046】
「その他の添加剤」
本発明のインクジェットプリント用組成物は、上述の成分に加えて、消泡剤、レベリング剤、付着増進剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、平滑剤、分散剤、帯電防止剤、及びシランカップリング剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を0.01〜10重量部含むことができる。添加剤が上記含有量範囲内で添加されると、塗膜の物性を変化させることなく添加剤本来の効果を発揮できるようになる。
【0047】
消泡剤は、コーティングにおいて発生する気泡を除去するためのものであり、具体的な例としては、TEGO Airex 920、TEGO Airex 932、BYK 088、またはBYK 1790などを挙げることができる。
【0048】
レベリング剤は、表面外観及びスクラッチ性を向上させるためのものであり、具体的な例としては、TEGO Glide 410、TEGO Glide 440、TEGO Rad 2250、BYK−UV 3500、またはBYK−UV 3510などを挙げることができる。
【0049】
付着増進剤は、素地鋼板との密着力を向上させるためのものであり、具体的な例としては、ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートまたはヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェートなどのアクリルホスフェート系付着増進剤を挙げることができる。
【0050】
安定剤は、保存性を容易にするためのものであり、具体的な例としては、フェノール系酸化防止剤、アルキル化されたモノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ヒドロキノン、アルキル化されたヒドロキノン、トコフェロール、ヒドロキシ化されたチオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、O−、N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化されたマロネート、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、アミン系酸化防止剤、アリルアミン、ジアリルアミン、ポリアリルアミン、アシルアミノフェノール、オキサミド、金属不活性剤、ホスファイト、フォスフォナイト、ベンジルホスホネート、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン、ニトロン、チオシネルギスト、ベンゾフラノン、またはインドリノンを挙げることができる。また、現在市販されている安定剤であるチヌビン292(Tinuvin 292)、チヌビン144(Tinuvin 144)またはチヌビン622LD(Tinuvin 622LD)などのBASF社製品と、サノールLS−770(sanol LS−770)、サノールLS−765(sanol LS−765)、サノールLS−292(sanol LS−292)またはサノールLS−744(sanol LS−744)などの三共社製品を用いることができる。
【0051】
酸化防止剤は、酸化反応を防止して結果的に保存を容易にするためのものであり、具体的な例としては、イルガノックス1010(Irganox 1010)、イルガノックス1035(Irganox 1035)、イルガノックス1076(Irganox 1076)またはイルガノックス1222( Irganox 1222)などのBASF社製品を挙げることができる。
【0052】
紫外線吸収剤は、光硬化反応においてUV吸収を助けて光硬化反応の効率を高めるためのものであり、具体的な例としては、チヌビンP(Tinuvin P)、チヌビン234(Tinuvin 234)、チヌビン320(Tinuvin 320)またはチヌビン328 (Tinuvin 328)などのBASF社製品と、スミソーブ110(Sumisorb 110)、スミソーブ130(Sumisorb 130)、スミソーブ140(Sumisorb 140)、スミソーブ220(Sumisorb 220)、スミソーブ250(Sumisorb 250)、スミソーブ320(Sumisorb 320)またはスミソーブ400(Sumisorb 400)などの住友社製品を挙げることができる。
【0053】
熱重合禁止剤は、熱による副反応で反応が終結されないようにすることで、光硬化反応の効率を高めるためのものであり、具体的な例としては、HQ、THQ、HQMMEを挙げることができる。
【0054】
平滑剤及び分散剤は、溶媒において分散を円滑にするためのものであり、BYK社、TEGO社及びEFKA社などの通常の塗料用添加剤メーカーの製品を選択して用いることができる。
【0055】
帯電防止剤は、光硬化反応において帯電防止のために添加するものであり、具体的な例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアミン類系、グリセリンまたはソルビトール脂肪相エステル系などの非イオン系と、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルホスフェートなどのアニオン系、4級アンモニウム塩またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0056】
シランカップリング剤は、本発明のインクジェットプリント用組成物の粘着強度を向上させるためのものであり、具体的な例としては、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシプロピルエトキシシラン、ガンマ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(ベータ−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ガンマ−メルカプトプロピルメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシランまたはそれらの混合物を挙げることができる。
【0057】
以下、本発明の他の側面であるインクジェットプリント鋼板について詳細に説明する。
【0058】
本発明の他の側面であるインクジェットプリント鋼板は、素地鋼板と、上記素地鋼板の表面に形成され、多数の気孔を有し、表面に金属薄膜が形成された高分子粒子を含むコーティング層とを含む。
【0059】
本発明では、素地鋼板の種類を特に限定しないが、制限されない一例を挙げると、素地鋼板は、冷延鋼板;熱延鋼板;亜鉛めっき鋼板;アルミめっき鋼板;コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、マンガン、鉄、マグネシウム、錫、銅、またはそれらの混合物を含有するめっき鋼板;またはシリコン、銅、マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、またはそれらの混合物を添加したアルミニウム合金板であることができる。
【0060】
本発明のインクジェットプリント鋼板を製造するために、鋼板の表面に上述のインクジェットプリント用組成物をコーティングして硬化させることでコーティング層を形成することができ、コーティング層を素地鋼板の表面に形成させる場合、金属質感を実現することができる。組成物に含有されることができる成分とそれらの組成範囲は、上述の通りである。
【0061】
本発明では、コーティング層の厚さについて特に限定しないが、制限されない一例を挙げると、0.1〜15μmであることができる。もし、その厚さが0.1μm未満であると、金属質感が十分に実現されない恐れがあり、一方、15μmを超えると、印刷後の印刷層が剥離するか、または未硬化が発生する恐れがある。
【0062】
図2は本発明の一実施形態に従って製造されたインクジェットプリント鋼板の外観を観察した写真である。
図2を参照すると、紫外線硬化方式のインクを用いたにも関わらず、金属質感を容易に実現することができることが視覚的に確認できる。
【実施例】
【0063】
[高分子粒子の製造、金属薄膜コーティング]
高分子粒子は、乳化重合法を介して連続的に製造した。カルボン酸ラテックスコアをシードとし、メチルメタクリレート及びスチレンを主成分として重合体セルを合成した。高分子粒子内部の空洞を形成するために、アンモニアでシード物質を中和し、高分子粒子を製造した後に真空状態のチャンバーで目標とする金属をスパッタリングさせて薄膜を製造した。
【0064】
[テスト基準]
ジェッティング性は、インク組成物がインクジェットヘッドから吐出可能であるか否かに基づいて判断した。即ち、最初からノズルが詰まってインク組成物の吐出が不可能である場合は×と判断し、最初は吐出されたものの、作業途中にノズルが詰まった場合を△、最初から最後までノズルが詰まることなく吐出可能である場合を○と判断した。
【0065】
また、金属質感は、亜鉛めっき鋼板を基準に外観を比較評価した。即ち、
図2に示すようにプリントされた鋼板が亜鉛めっき鋼板と同様に金属の質感が感じられる場合を○と判断し、そうでない場合は×と判断した。
【0066】
硬化度は、MEKを付けた布を1kgfの力で50回擦りつけて、母材が露出するか否かで評価し、母材が露出した場合は×、そうでない場合は○と判断した。
【0067】
そして、密着性は、ISO 2409の塗料の接着試験法に準拠し、試験片の上に間隔が1mmとなるように縦、横に1本の線を引き、その上にセロハン粘着テープを付着した。後にそれを剥がし、100片に分離されたコーティング面のうち、残っている片の個数で接着力を評価した。全体片のうち80%以上が脱落した場合は×、そうでない場合は○と判断した。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1から確認できるように、本発明の条件を満たす発明例の場合、優れたジェッティング性を示しており、また、塗膜物性の側面においても金属質感を示しながら、優れた硬化度と密着性を示した。
【0070】
しかし、比較例1の場合は、高分子粒子に形成された金属薄膜の厚さが薄くて十分な金属質感を示しておらず、比較例2は、コーティングの厚さが厚くて硬化度が不十分であった。また、比較例3は、インクジェットプリント用組成物内に含まれる高分子粒子の割合が高くて、十分に形成された塗膜が十分な密着性を有しなかった。比較例4は、金属薄膜の厚さが少し厚かった場合であって、ジェッティング性が不十分な結果を示し、金属薄膜の厚さがさらに厚かった比較例5は、ジェッティング性が不良で、塗膜形成自体が不可能な結果を示した。比較例6は、インクジェット組成物中の高分子粒子の含有量が1重量%に過ぎず、金属質感を得ることが困難であった。また、比較例7は、高分子粒子の粒径が2200nmと厚い場合であって、このような場合には、ジェッティング性に問題があって塗膜が形成されなかった。