(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体における前記セルロースナノファイバーの質量割合は、3質量%以上10質量%以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のミッドソール。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の靴底用部材について以下にその実施の形態を例示しつつ説明する。
図1は、本実施形態の靴底用部材を用いて形成される靴を示したもので、該靴1は、アッパー2と靴底用部材3,4とを有している。
該靴1は、靴底用部材としてミッドソール3、及び、アウトソール4を有している。
尚、以下において
図1に示した靴1などについて説明する際に、踵の中心HCと爪先の中心TCとを結ぶシューセンター軸CXに沿った方向のことを長さ方向Xと称することがある。
また、シューセンター軸CXに沿った方向の内、踵から爪先に向けた方向X1を前方などと称し、爪先から踵に向けた方向X2を後方などと称することがある。
シューセンター軸CXに直交する方向の内、水平面HPに平行する方向を幅方向Yと称することがある。
この幅方向Yの内、足の第1指側に向けた方向Y1を内方などと称し、第5指側に向けた方向Y2を外方などと称することがある。
そして、水平面HPに直交する垂直方向Zを厚み方向や高さ方向と称することがある。
さらに、以下においては、この垂直方向Zにおいて上方に向かう方向Z1を上方向と称し、下方に向かう方向Z2を下方向と称することがある。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の靴1は最も下方にアウトソール4を備えている。
該アウトソール4は、靴1の接地面を構成するものである。
前記靴1は、着用者の足を上側から覆うアッパー2と前記アウトソール4との間にミッドソール3を備えている。
本実施形態のミッドソール3は、扁平形状を有し、その厚み方向が靴の高さ方向Zとなるように配されている。
該ミッドソール3の下面は、前記アウトソール4の上面に接しており、前記ミッドソール3の上面は、アッパー2に対して下側から接している。
ミッドソールの側面部31,32は、前記アッパー2や前記アウトソール4などによって覆われることなく露出した状態になっている。
即ち、本実施形態のミッドソール3は、靴1の外表面を構成する側面部31,32を備えている。
【0010】
図1に示すように本実施形態のミッドソール3は、内側の側面部31に複数の突起や複数の凹みを有している。
本実施形態のミッドソール3の側面部31には、靴1の踵側において複数の線状突起3aを有している。
この複数の線状突起3aは、それぞれ靴の長さ方向Xに沿って延在し、互いに並行するように配されて側面部31にヘアライン状となって備えられている。
本実施形態のミッドソール3の側面部31には、靴1の爪先側において複数の四角い凹み3bを有している。
そして、本実施形態のミッドソール3は、これらの線状突起3aや四角い凹み3bが靴1の意匠の一部となっている。
【0011】
図には示していないがミッドソール3の外側の側面部32にも内側と同様の突起や凹みが備えられている。
この複数の突起及び複数の凹みは、ミッドソール3を作製する際に形成されたものであり、その詳しい作製方法については、後述する。
【0012】
本実施形態のミッドソール3は、靴1に対して優れた軽量性を発揮させるべく、比重が0.2以下であることが好ましい。
ミッドソールの3の比重は、0.15以下であることがより好ましい。
ミッドソール3に優れた強度を発揮させる上において、前記比重は0.05以上であることが好ましく、0.07以上であることがより好ましい。
なお、ミッドソールの比重とは、JIS K7112のA法「水中置換法」によって、23℃の温度条件下において測定される値を意味する。
該比重は、試料の浮上を防止するような機構を備えた比重計を用いて測定することができ、例えば、アルファミラージュ社から高精度電子比重計として市販されている比重計などによって測定することができる。
【0013】
本実施形態のミッドソール3は、優れたクッション性を発揮させる上においてアスカーC硬度が80以下であることが好ましい。
該アスカーC硬度は、70以下であることがより好ましい。
尚、ミッドソール3に適度は反発弾性を発揮させる上において、ミッドソール3のアスカーC硬度は、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
ここで前記アスカーC硬度とは、JIS K7312のタイプCによるスプリング硬さ試験を23℃において実施した際の瞬時値を意味する。
【0014】
本実施形態のミッドソール3は、弾性率が低い方がクッション性に優れる。
本実施形態のミッドソール3は、過度に弾性率が低いと歩行時において足が地面から受ける衝撃力を吸収し切れなくなるおそれがある。
このようなことから、ミッドソールの弾性率(圧縮弾性率)は、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることが特に好ましく、1.5MPa以上であることがとりわけ好ましい。
ミッドソールの弾性率(圧縮弾性率)は、20MPa以下であることが好ましく、12MPa以下であることがより好ましく、8MPa以下であることが特に好ましく、4MPa以下であることがとりわけ好ましい。
【0015】
ミッドソールの弾性率は、0.01s
−1のひずみ速度で圧縮した際の「応力−歪み曲線」から求めることができる。
より詳しくは、ミッドソールの弾性率は、直径10mm、高さ10mm程度の大きさの円柱状試料を用意し、該試料を0.01s
−1のひずみ速度で圧縮した際の微小変形領域の「応力−歪み曲線」の傾きから求められる。
尚、微小変形領域の傾きは、例えば、「応力−歪み曲線」の0.5%圧縮時の点と1.5%圧縮時の点とを結ぶ直線の傾きとして求めることができる。
【0016】
前記ミッドソール3は、靴1の耐用期間を長期化させる上において厚み方向での圧縮永久歪が70%以下であることが好ましい。
前記圧縮永久歪は、65%以下であることがより好ましい。
なお、前記ミッドソール3を圧縮永久歪が全く生じない状態にさせることは容易ではなく、前記圧縮永久歪は、通常、1%以上となる。
この圧縮永久歪とは、ASTM D395A法(定荷重法)に基づいて測定される値であり、測定試料に対して23℃の温度条件下0.59MPaの圧力を22時間加え、前記測定試料を圧力から開放した24時間後に該測定試料の厚みを測定して求められる値を意味する。
【0017】
本実施形態の前記ミッドソール3は、上記のような特性を発揮させることが容易になる点において、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体で構成されている。
本実施形態の前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、ミッドソール3に優れた強度を発揮させ、しかも、ミッドソール3に所望の形状を付与することが容易になるように所定の原材料によって作製されている。
具体的には、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、融点が75℃を超える高融点ポリオレフィン樹脂を1種類以上含有し、さらに軟化剤と補強材とを含有している。
【0018】
前記高融点ポリオレフィン樹脂は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の主成分であり、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の特性に大きく影響を与える。
前記軟化剤は、単純に架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の強度だけを考えると前記補強材とは相反する機能を発揮するものになるが、本実施形態では線状突起3aなどといったミッドソール3の細部の形状を所定の状態にさせ易くするために用いられている。
このような機能をより顕著に発揮させるべく、本実施形態における前記軟化剤は、融点が40℃以上75℃以下の結晶性樹脂又はガラス転移温度が40℃以上75℃以下の非晶性樹脂の何れかを含んでいる。
【0019】
本実施形態における前記補強材は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の引張強度や圧縮強度の向上に有効なものである。
本実施形態の前記補強材は、セルロースナノファイバー又はカーボンナノファイバーを含んでいる。
【0020】
本実施形態の前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、2種類以上の高融点ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましく、3種類以上の高融点ポリオレフィン樹脂を含有することがより好ましい。
本実施形態においては、第1高融点ポリオレフィン樹脂、第2高融点ポリオレフィン樹脂、及び、第3高融点ポリオレフィン樹脂の3種類の高融点ポリオレフィン樹脂を含有している。
この3つの高融点ポリオレフィン樹脂の内、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に最も大きな質量割合で含まれているのは前記第1高融点ポリオレフィン樹脂であり、次に多く含まれているのが前記第2高融点ポリオレフィン樹脂である。
したがって、3つの高融点ポリオレフィン樹脂の内、前記第3高融点ポリオレフィン樹脂は、最も少量しか含まれていない。
【0021】
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂、前記第2高融点ポリオレフィン樹脂、及び、前記第3高融点ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び、プロピレン−酢酸ビニル共重合体の内の何れかとすることができる。
【0022】
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂、前記第2高融点ポリオレフィン樹脂、及び、前記第3高融点ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレンである場合、これらは、例えば、密度が0.94g/cm
3以上の高密度ポリエチレン、密度が0.925g/cm
3以上0.94g/cm
3未満の中密度ポリエチレン、密度が0.91g/cm
3以上0.925g/cm
3未満の低密度ポリエチレン、及び、密度が0.9g/cm
3以上0.91g/cm
3未満の超低密度ポリエチレンの何れであってもよい。
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂、前記第2高融点ポリオレフィン樹脂、及び、前記第3高融点ポリオレフィン樹脂が、例えば、低密度ポリエチレンである場合、高圧法によって作製される長鎖分岐を有するタイプの低密度ポリエチレン(PE−LD)であっても、触媒法によって作製される短鎖分岐を有するタイプの直鎖状低密度ポリエチレン(PE−LLD)であってもよい。
【0023】
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂、前記第2高融点ポリオレフィン樹脂、及び、前記第3高融点ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレンである場合、これらは、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)の何れであってもよい。
【0024】
本実施形態における前記第1高融点ポリオレフィン樹脂は、前記のように3つの高融点ポリオレフィン樹脂の内で架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に最も多く含まれるもので、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の特性に強く影響を与えるものである。
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂は、ミッドソール3に良好なクッション性を与え易い点、及び、ミッドソール3を所定の形状に成形する際に作業性が良好になる点からエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン−αオレフィン共重合体であることが好ましい。
そして、該第1高融点ポリオレフィン樹脂は、融点が95℃以上105℃以下であることが好ましい。
【0025】
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂に次いで架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に多く含まれる前記第2高融点ポリオレフィン樹脂は、架橋効率に優れる点やミッドソール3を他の部材(アッパー材2やアウトソール4)との接着性に優れたものとする上においてエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
該エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、20質量%以下であることが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、融点が82℃以上92℃以下であることが好ましい。
【0026】
前記第3高融点ポリオレフィン樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンは、融点が105℃以上125℃以下であることが好ましい。
【0027】
前記第1高融点ポリオレフィン樹脂の融点は、前記第2高融点ポリオレフィン樹脂の融点、及び、前記第3高融点ポリオレフィン樹脂の融点の両方に対して±20℃以内であることが好ましい。
即ち、ミッドソール3を構成する架橋ポリオレフィン樹脂発泡体が複数の高融点ポリオレフィン樹脂を含有する場合、これらの高融点ポリオレフィン樹脂は、互いの融点の差の最大値が40℃以下となるように選択されることが好ましい。
【0028】
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体における高融点ポリオレフィン樹脂の合計含有量は、65質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体における第1高融点ポリオレフィン樹脂の含有量は、25質量%以上55質量%以下であることが好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体における第2高融点ポリオレフィン樹脂の含有量は、5質量%以上35質量%以下であることが好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体における第3高融点ポリオレフィン樹脂の含有量は、1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0029】
第1高融点ポリオレフィン樹脂の含有量(M1)に対する第2高融点ポリオレフィン樹脂の含有量(M2)の質量割合(M2/M1×100%)は、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
第1高融点ポリオレフィン樹脂の含有量(M1)に対する第3高融点ポリオレフィン樹脂の含有量(M3)の質量割合(M3/M1×100%)は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0030】
本実施形態における前記軟化剤は、上記のような高融点ポリオレフィン樹脂だけで架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を形成させる場合に比べて低い弾性率となる架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を得るための成分である。
尚、軟化剤の効果の程度を予め確認する必要がある場合は、例えば、当該軟化剤と前記高融点ポリオレフィン樹脂とを含む混合樹脂と、高融点ポリオレフィン樹脂単体とのそれぞれによって非発泡な板状試料(例えば、厚さ0.5mm)を作製し、該板状試料を使った比較試験を実施すればよい。
該比較試験としては、例えば、粘弾性スペクトロメータを用いた試験などが挙げられる。
より詳しくは、前記軟化剤の効果は、常温(例えば、23℃)での引張弾性率を測定するなどして確かめることができる。
【0031】
前記軟化剤は、ミッドソール3を成形する際の作業性を良好にする上においても有効な成分である。
本実施形態における前記軟化剤は、前記結晶性樹脂だけを含んでいてもよく、前記非晶性樹脂だけを含んでいてもよい。
本実施形態における前記軟化剤は、前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂との両方を含んでいてもよい。
本実施形態における前記軟化剤は、前記高融点ポリオレフィン樹脂との相溶性に優れることから融点が40℃以上75℃以下の低融点ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
前記低融点ポリオレフィン樹脂の融点は、45℃を超えていることが好ましい。
前記低融点ポリオレフィン樹脂の融点は、70℃未満であることが好ましい。
【0032】
前記低融点ポリオレフィン樹脂と前記高融点ポリオレフィン樹脂の何れか一つとの間には、融点に30℃以上の差があることが好ましい。
しかも、前記低融点ポリオレフィン樹脂と前記高融点ポリオレフィン樹脂の何れか一つとの間の融点の差は30℃未満であることが好ましい。
即ち、複数の前記高融点ポリオレフィン樹脂の中の一つの高融点ポリオレフィン樹脂は前記低融点ポリオレフィン樹脂との融点の差が30℃以上で、別の高融点ポリオレフィン樹脂は前記低融点ポリオレフィン樹脂との融点の差が30℃未満であることが好ましい。
前記低融点ポリオレフィン樹脂と前記高融点ポリオレフィン樹脂との合計に占める前記低融点ポリオレフィン樹脂の質量割合は、5質量%以上であることが好ましく10質量%以上であることがより好ましい。
前記低融点ポリオレフィン樹脂と前記高融点ポリオレフィン樹脂との合計に占める前記低融点ポリオレフィン樹脂の質量割合は、5質量%以上であることが好ましく40質量%以下であることが好ましく30質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
前記軟化剤に占める低融点ポリオレフィン樹脂の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
前記低融点ポリオレフィン樹脂は、前記高融点ポリオレフィン樹脂に対して優れた相溶性を示し、加熱状態において前記高融点ポリオレフィン樹脂に対する優れた可塑化効果を発揮する上において、エチレン−αオレフィン共重合体か、エチレン−酢酸ビニル共重合体かの何れかであることが好ましい。
尚、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に含有される低融点ポリオレフィン樹脂は、2種類以上であってもよい。
また、軟化剤には低融点ポリオレフィン樹脂とともにガラス転移温度が40℃以上75℃以下の非晶性樹脂を含有させてもよい。
ガラス転移温度が40℃以上75℃以下の非晶性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂やアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0035】
前記低融点ポリオレフィン樹脂は、温度190℃、公称荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレイト(MFR)が0.5g/10min以上であることが好ましく、0.6g/10min以上であることがより好ましく、0.7g/10min以上であることがさらに好ましい。
前記低融点ポリオレフィン樹脂のMFRは、4g/10min以下あることが好ましい。
前記低融点ポリオレフィン樹脂のMFRは、例えば、JIS K 7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法によって測定することができる。
軟化剤を複数種類の樹脂で構成させる場合、複数種類の樹脂の混合物のメルトフローレイトも上記範囲内であることが好ましい。
低融点ポリオレフィン樹脂のMFRは、高融点樹脂のMFRよりも低いことが好ましい。
低融点ポリオレフィン樹脂のMFRは、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に最も多く含まれている高融点樹脂のMFRに対し、0.1倍以上0.7倍以下であることが好ましい。
高融点樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、1g/10min以上であることが好ましく、1.2g/10min以上であることがより好ましい。
高融点樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、6g/10min以下であることが好ましく、5.5g/10min以下であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態における「融点」や「ガラス転移温度」は、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に基づいて測定することができる。
より詳しくは、「融点」や「ガラス転移温度」は、熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)などを用い、試料量を約5mgとし、リファレンスとしてアルミナを使い、窒素パージをしつつ、10℃/minの昇温速度での測定を実施して求めることができる。
尚、前記融点は、DCSのチャートにおける融解ピークの温度を測定することで求められる。
前記ガラス転移温度は、DCSのチャートにおける中間点ガラス転移温度を測定することで求められる。
尚、本明細書における「融点」や「ガラス転移温度」とは、DCSのチャートにおいて複数の融解ピークや複数のガラス転移が観測される場合、実際に樹脂が溶融状態となる温度域に現れる融解ピークやガラス転移について求められる値を意味する。
【0037】
前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸又は該脂肪酸に由来の有機化合物などを前記軟化剤としてさらに含有してもよい。
前記脂肪酸由来の有機化合物としては、例えば、脂肪酸リチウム塩、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸のカリウム塩、脂肪酸カルシウム塩などの脂肪酸塩;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル類;モノ脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド、N,N’−ジアルキル脂肪酸アミドなどの脂肪酸アミド類;などが挙げられる。
これらの脂肪酸や脂肪酸由来の有機化合物は、常温においてワックス状となるものであっても液状となるものであってもよい。
前記軟化剤に脂肪酸や脂肪酸由来の有機化合物を含有させる場合、前記軟化剤における脂肪酸と脂肪酸由来の有機化合物との合計含有量は、1質量%以上10質量%以下とされることが好ましい。
即ち、本実施形態では、前記軟化剤の内の90質量%以上は、融点が40℃以上75℃以下の結晶性樹脂やガラス転移温度が40℃以上75℃以下の非晶性樹脂であることが好ましい。
【0038】
本実施形態における前記補強材は、前記セルロースナノファイバーだけを含んでいてもよく、前記カーボンナノファイバーだけを含んでいてもよい。
本実施形態における前記補強材は、前記セルロースナノファイバーと前記カーボンナノファイバーとの両方を含んでいてもよい。
【0039】
前記補強材として架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に含有させるセルロースナノファイバーは、例えば、植物、動物、藻類、微生物、微生物産生物などに由来するものを採用することができる。
前記補強材には、セルロースナノファイバーを一種単独で含有させても2種類以上を含有させてもよい。
前記セルロースナノファイバーは、原料が植物であることが好ましい。
前記セルロースナノファイバーの原料となる、植物は、植物そのものや、植物を加工した加工品、及び、不要となった廃棄物などであってもよい。
より具体的には、前記セルロースナノファイバーの原料となる、植物としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙など)、糸、布、農業廃棄物などが挙げられる。
【0040】
該セルロースナノファイバーは、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に1質量%以上の割合で含有されることが好ましく、2質量%以上の割合で含有されることがより好ましく、3質量%以上の割合で含有されることがさらに好ましい。
該セルロースナノファイバーは、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に20質量%以下の割合で含有されることが好ましく、16質量%以下の割合で含有されることがより好ましく、12質量%以下の割合で含有されることがさらに好ましい。
【0041】
前記セルロースナノファイバーは、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に含有された状態において過半数がナノサイズとなっていればよく、全てがナノサイズとなっていなくてもよい。
即ち、セルロースナノファイバーは、高融点ポリオレフィン樹脂などと混合される前において全てがナノサイズになっていなくてもよい。
一般に植物は、1μm以上の太さを有する植物繊維で構成されており、一本の前記植物繊維は、複数本のセルロースナノファイバーの束によって構成されている。
そして、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体中に分散される前のセルロースナノファイバーは、このような束の状態であってもよい。
即ち、前記セルロースナノファイバーは、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体中に分散される前の状態において10〜100μm程度の太さを有する束を構成していてもよい。
【0042】
一方で架橋ポリオレフィン樹脂発泡体中に分散された状態でのセルロースナノファイバーは、平均繊維径が1nm以上400nm以下となっていることが好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体中に分散された状態でのセルロースナノファイバーの平均繊維径は、200nm以下となっていることがより好ましい
セルロースナノファイバーの平均長さは、平均繊維径の10倍〜1000倍程度であることが好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体中のセルロースナノファイバーの太さや長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、直接測定することができる。
より詳しくは、セルロースナノファイバーの平均繊維径は、上記のような顕微鏡を用いて複数視野での写真撮影を行い、得られ画像において無作為に選択した箇所における複数本(例えば、50本)の繊維の太さを測定し、得られた測定値を算術平均することによって求めることができる。
セルロースナノファイバーの平均長さは、平均繊維径と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した画像で、全長が測定可能なものを無作為に複数本(例えば、50本)選択してその長さを測定することによって求めることができる。
該平均長さも平均繊維径と同様に測定値の算術平均値として求めることができる。
【0043】
前記セルロースナノファイバーは、変性品であっても非変性品であってもよいが、変性によって疎水化されていることが好ましい。
疎水変性されたセルロースナノファイバーとしては、例えば、セルロースが分子構造中に有する複数の水酸基の内の1以上が、疎水性基を含有する置換基で置換されたものを採用することができる。
前記疎水性基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及び、アリーレン基などが挙げられる。
【0044】
疎水化されたセルロースナノファイバーは、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の主成分である前記高融点ポリオレフィン樹脂に対して優れた親和性を示すため、非変性のセルロースナノファイバーに比べて補強効果に優れる。
しかも、疎水化されたセルロースナノファイバーは、前記高融点ポリオレフィン樹脂に対して優れた親和性を示すため、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を作製する際に粗大気泡が形成されることを抑制する効果も有している。
この点について説明すると、本実施形態における架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、通常、前記高融点ポリオレフィン樹脂、前記補強材、及び、前記軟化剤を含み、さらに、発泡剤と架橋剤とを含む未架橋樹脂組成物を調製し、該未架橋樹脂組成物を発泡させるとともに架橋させることによって作製される。
そのため、セルロースナノファイバーと高融点ポリオレフィン樹脂との間の親和性が低いと未架橋樹脂組成物中にセルロースナノファイバーの凝集物が形成され易く、しかも、発泡剤から発生されるガスがこの凝集物が存在する箇所に集中し易くなって粗大な気泡が形成され易くなる。
一方で疎水化されたセルロースナノファイバーを用いると気泡が細かく連続気泡率の低い架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を得易くなる。
【0045】
前記補強材として架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に含有させるカーボンナノファイバーは、10nm以上500nm以下の太さを有する一般的なカーボンナノファイバーであっても、太さが10nm未満のカーボンナノチューブなどと称されるものであってもよい。
カーボンナノファイバーは、直線性を有するものであっても、コイル状の構造を有するものであってもよい。
即ち、カーボンナノファイバーは、カーボンナノコイルなどと称されるものであってもよい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体中に含有させるカーボンナノファイバーは、平均繊維径が10nm以上400nm以下となっていることが好ましい。
カーボンナノファイバーの平均繊維径は、200nm以下となっていることがより好ましい
カーボンナノファイバーの平均長さは、平均繊維径の10倍〜1000倍程度であることが好ましい。
カーボンナノファイバーの平均繊維径や平均長さはセルロースナノファイバーの平均繊維径や平均長さと同様に測定することができる。
【0046】
カーボンナノファイバーは、化学修飾が施されたものであってもよい。
即ち、カーボンナノファイバーは、強酸などによって表面に水酸基やカルボキシル基が形成されたものであってもよい。
また、カーボンナノファイバーは、前記水酸基や前記カルボキシル基と結合可能な官能基を有する有機化合物を使って更なる化学修飾が施されたものであってもよい。
例えば、カーボンナノファイバーは、ポリオレフィン樹脂への親和性を高めるべく、前記水酸基や前記カルボキシル基とアルコールとを縮合反応させて形成されたアルコキシ基を有するものであってもよい。
【0047】
前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、セルロースナノファイバーやカーボンナノファイバー以外に有機フィラーや無機フィラーなどを補強材としてさらに含有してもよい。
前記有機フィラーとしては、樹脂パウダーなどが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、グラファイト、カーボンブラックなどが挙げられる。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体がセルロースナノファイバーやカーボンナノファイバー以外の補強材を含有する場合、セルロースナノファイバーやカーボンナノファイバー以外の補強材が架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に占める質量割合は1質量%以上15質量%以下とされることが好ましい。
【0048】
尚、前記架橋剤や前記発泡剤は、従来の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の作製に利用されているものを本実施形態においても採用することができる。
前記架橋剤は、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物とすることができる。
前記高融点ポリオレフィン樹脂としてシラン架橋型のポリオレフィン樹脂を用いる場合、前記架橋剤は、シラノール縮合触媒等としてもよい。
【0049】
該有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0050】
前記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0051】
前記シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。
【0052】
本実施形態における架橋剤は有機過酸化物であることが好ましい。
【0053】
本実施形態においては、前記架橋剤とともに架橋助剤を前記未架橋樹脂組成物に含有させて架橋密度を調整させてもよい。
前記架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどを挙げることができる。
【0054】
前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;p−トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤を採用することができる。
【0055】
前記発泡剤は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤であってもよい。
【0056】
前記発泡剤が上記のような熱分解型発泡剤である場合、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体には、例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物系発泡助剤、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤などの発泡助剤を含有させてもよい。
【0057】
前記発泡剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類などの有機系発泡剤、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系発泡剤であってもよい。
【0058】
前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体には、さらに各種添加剤を含有させてもよい。
例えば、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体には、耐侯剤、難燃剤、顔料、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤等を適宜含有させてもよい。
さらに前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体には、改質を目的としてポリオレフィン樹脂以外のポリマーを少量含有させてもよい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に含有させることができるポリオレフィン樹脂以外のポリマーとしては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等のポリウレタン系ポリマー;スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン共重合体(SBSB)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBSBS)、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系ポリマー;フッ素樹脂やフッ素ゴムなどのフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド610などのポリアミド系樹脂やポリアミド系エラストマーといったポリアミド系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;シリコーン系エラストマー;ブタジエンゴム(BR);イソプレンゴム(IR);クロロプレン(CR);天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR);アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
これらのポリマーは、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に占める質量割合が5質量%以下であることが好ましい。
これらのポリマーの架橋ポリオレフィン樹脂発泡体における含有量は2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体にはポリオレフィン樹脂以外のポリマーが含まれないことが最も好ましい。
【0059】
前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、上記のような成分を含有する未架橋樹脂組成物を全体が均一な状態になるように混練し、得られた混練物を加熱して高融点ポリオレフィン樹脂などを架橋させるとともに発泡剤による発泡を生じさせることで作製することができる。
未架橋樹脂組成物の混練には、オープンロールやニーダーといった一般的な混練装置を利用できる。
未架橋樹脂組成物の架橋発泡は、真空熱プレスなどの一般的な加熱装置を利用できる。
【0060】
未架橋樹脂組成物の架橋発泡は、作製される架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の平均気泡径が10μm〜1000μmとなるように実施されることが好ましい。
尚、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の平均気泡径は、発泡体の断面を顕微鏡などで観察し、気泡の平均断面積を求め、この平均断面積と同じ面積を有する円の直径を計算することによって求められる。
【0061】
この架橋発泡では、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体で個々の気泡を構成する樹脂の膜の内部に複数のセルロースナノファイバーを存在させることになる。
このときセルロースナノファイバーによって樹脂に高い溶融粘性が発揮されるため、樹脂の膜が良好な伸びを示す。
そのため、前記架橋発泡では、独立気泡率の高い架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。
しかも、前記架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、前記膜が十分薄くなるまで発泡されても、セルロースナノファイバーによって前記膜が補強されるため、軽量性と強度とに優れたものとなり得る。
【0062】
本実施形態のミッドソール3は、
図2A、
図2B、
図2C、及び
図3に示すように成形型Mを使って作製することができる。
尚、
図2A〜
図2Cは成形型の概略図で、
図2Aが正面図、
図2Bが平面図、
図2Cが側面図(右側面図)である。
また、
図3は、成形型を熱プレスに装着した状態を示した図である。
【0063】
図に示すように、成形型Mは、型閉め時に互いに対接する型合わせ面を有する一対の型で構成されている。
前記成形型Mは、型閉め時にミッドソール3の形状に対応した成形空間CVを内部に形成し得るように構成されている。
前記成形型Mは、一対の前記型として雄型MMと雌型MFとを有している。
本実施形態における前記雄型MM及び前記雌型MFのそれぞれは、板状である。
前記成形型Mは、前記雄型MMと前記雌型MFとを重ね合わせることで密閉状態の前記成形空間CVを内部に形成し得るように構成されている。
【0064】
前記雌型MFは、型合わせ面を有する側において開口し、且つ、該雌型MFの厚み方向に凹入した成形用凹部MFaを備えている。
該成形用凹部MFaは、ミッドソール3の厚み方向が深さ方向となるように形成されている。
前記雄型MMは、型合わせ面から突出し、且つ、雌型MFの成形用凹部MFaに突入可能な成形用凸部MMaを備えている。
そして、成形型Mは、雌型MFと雄型MMとを重ね合わせた際に成形用凹部MFaの深さ方向の途中まで前記成形用凸部MMaが入り込んだ状態になって前記成形空間CVを内部に形成し得るように構成されている。
即ち、成形型Mは、成形用凹部MFaの底部分の内壁面と、前記成形用凸部MMaの下面とによって前記成形空間CVが画定され得るように構成されている。
そして。前記成形空間CVを確定する雌型MFの内壁面には、前記線状突起3aの逆形状となる条溝と、前記四角い凹み3bの逆形状となる矩形突起とが形成されている。
【0065】
本実施形態の前記ミッドソール3は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を使ってミッドソール3よりもやや厚手の予備成形体FMを作製する予備成形工程と、該予備成形体FMを前記成形型Mで熱成形してミッドソール3を作製する熱成形工程とによって作製される。
前記予備成形工程では、ミッドソール3よりも大きく、ミッドソール3よりも厚い板状の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を切削加工するような方法で前記予備成形体FMを作製することができる。
前記熱成形工程では、成形型Mを使って前記予備成形体FMを熱プレスするような方法でミッドソール3を作製することができる。
該熱成形工程は、例えば、図に示すように熱プレス機の2枚の熱盤HPにそれぞれ雄型MMと雌型MFとを装着し、予備成形体FMを前記成形用凹部MFaに収容させ、雄型MMと雌型MFとを閉じて圧力を加えるとともに予備成形体FMを加熱する方法によって実施することができる。
該熱成形工程では、予備成形体FMに対して厚み方向に圧力が加えられることで予備成形体FMの側面と雌型MFの成形面との間にも側圧が発生する。
そして、前記熱成形工程では、前記側圧を利用して前記条溝及び前記矩形突起の形状が予備成形体FMに転写され、側面部に線状突起3a及び四角い凹み3bが形成されたミッドソール3が作製される。
【0066】
本実施形態の予備成形体FMは架橋されたポリオレフィン樹脂で構成された発泡体である。
即ち、予備成形体FMを構成する発泡体中において気泡を構成している樹脂の膜は、架橋されたポリオレフィン樹脂で構成されている。
しかも、この樹脂の膜は、膜中に存在する複数のセルロースナノファイバーによって補強されている。
そのため、予備成形体FMは、厚み方向に強い圧力が加えられても内部の気泡が押し潰され難い。
したがって、本実施形態の予備成形体FMは、厚み方向に加えられる圧力の多くを前記側圧へと転化させることができる。
しかも、本実施形態の予備成形体FMには、低融点ポリオレフィン樹脂などの軟化剤が含まれている。
したがって本実施形態の予備成形体FMは、側面部に当接される雌型MFの形状がより忠実に転写され得る。
そして、本実施形態の予備成形体FMは、軟化剤によって雌型MFの形状が転写され易くなっているため、熱成形工程において高い圧力を加えなくても所望の形状とすることができる。
【0067】
本実施形態の予備成形体FMは、個々の気泡を構成する樹脂の膜がセルロースナノファイバーによって補強されているため、高い発泡倍率であっても熱成形工程において加えられる圧力に対して強い反発力を発揮させることができる。
そして、本実施形態の予備成形体FMは、高い圧力を加えなくても側面部などを所望の形状にすることができるため予備成形体FMにおける高い発泡倍率を成形後のミッドソール3にも反映させ易い。
このようなことから本実施形態のミッドソールには、優れた軽量性と強度とが発揮され得る。
なお、本実施形態においては、本発明のミッドソールを上記のように例示しているが、本発明のミッドソールは、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(セルロースナノファイバーマスターバッチ(CNF−MB))
融点114℃の直鎖状低密度ポリエチレン(高融点ポリオレフィン樹脂)と、疎水変性されたセルロースナノファイバーとを含み、セルロースナノファイバー(CNF)の含有量が40質量%のマスターバッチを用意した。
【0070】
((A)高融点ポリオレフィン樹脂)
CNFマスターバッチに含まれている高融点ポリオレフィン樹脂とは別に以下の(A1)〜(A3)に示すような高融点ポリオレフィン樹脂を用意した。
(A1:PE−HD)
・融点:134℃、MFR:5.4g/10minの高密度ポリエチレン
(A2:PE−LLD)
・融点:117℃、MFR:2.7g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン
(A3:EVA)
・融点:77℃、MFR:2.4g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合体
(A4:PE−HD)
・融点:120℃、MFR:0.5g/10minのオレフィン系ブロック共重合体(エチレンと1−オクテンとを構成単位に含むエチレン−αオレフィン共重合体)
【0071】
((B)低融点ポリオレフィン樹脂)
低融点ポリオレフィン樹脂として、下記(B1)に示すようなものを用意した。
(B1:E-AO)
・融点:66℃、MFR:1.2g/10minのエチレン−αオレフィン共重合体
【0072】
((C)その他のポリマー)
その他のポリマーとして下記(C1)に示すスチレン系熱可塑性エラストマー及び(C2)に示すイソプレンゴムを用意した。
(C1:TPS)
・スチレンコンテント:18質量%、MFR(230℃、2.16kg):4.5g/10minのSEBS
(C2:IR)
・ハイシスタイプ(シス1,4結合98%)のポリイソプレンゴム
【0073】
(架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の形成)
表に示したような配合割合でポリオレフィン樹脂やセルロースナノファイバーマスターバッチ(CNF−MB)をブレンドし、これに滑剤と、発泡剤(ADCA)と、発泡助剤(酸化亜鉛)と、架橋剤(DCP)と、架橋助剤(トリアリルシアヌレート:TAC)と、を加えた混和物を加熱溶融させて均一混合した後に型内で発泡させて板状の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を作製した。
そして、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の比重については、発泡剤(ADCA)の含有量によって調整した。
尚、表での配合材料に関する数値は、質量部を表している。
また、セルロースナノファイバーマスターバッチ(Cel・NF−MB)やカーボンナノファイバーマスターバッチ(Cbn・NF−MB)の配合に関する数値は、上記の(A)〜(C)の合計100質量部に対する部数である。
さらに、セルロースナノファイバー(Cel・NF)やカーボンナノファイバー(Cbn・NF)の配合に関する数値は、セルロースナノファイバーマスターバッチ(Cel・NF−MB)やカーボンナノファイバーマスターバッチ(Cbn・NF−MB)の添加によって混和物中に添加されたセルロースナノファイバーやカーボンナノファイバーの部数((A)〜(C)の合計100質量部に対する部数)を示している。
【0074】
(評価)
(硬度)
作製した架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、表面の皮膜を切除することなくアスカーC硬度を測定した。
(比重)
作製した架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の比重をJIS K7112のA法「水中置換法」によって測定した。
(引裂き強さ)
作製した架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の引裂強さをJIS K 6252に準拠して測定した。
具体的な測定条件は次の通り。
尚、測定の結果、引裂き強さが8.0以上の場合は強度に優れていると考え「A」判定とした。
また、引裂き強さが8.0未満の場合は「B」判定とした。
<引裂強さの測定条件>
測定機器:(株)東洋精機製作所製、製品名「STROGRAPH−R2」
試料形状:JIS K 6252に指定されたアングル形試験片(切込み無し)
試験速度:500mm/min
(弾性率)
作製した架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の圧縮弾性率を測定した。
(賦形性)
作製した架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の賦形性を目視で評価した。
評価は、次のようにして行った。
エッジがシャープな状態のものが得られている場合は「○」判定とし、そうでないものは「×」判定とした。
【0075】
評価結果を表に示す。
なお、比較例7、比較例11では、イソプレンゴムを使ってその他の比較例や実施例と同等の比重を有する架橋発泡体を作製しようとしたが、結果的に同等のものが得られることはなかった。
そのため、比較例7、比較例11では、その他の比較例や実施例のような硬度や引裂き強さの評価は行わなかった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
以上のことからも本発明によれば軽量性と強度とに優れたミッドソールが提供されることがわかる。