特許第6864786号(P6864786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864786
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】マイクロメカニカル膜センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20210419BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20210419BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G01L9/00 303F
   B81C3/00
   B81B7/02
   B81B3/00
   H01L29/84 B
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-520712(P2020-520712)
(86)(22)【出願日】2018年6月14日
(65)【公表番号】特表2020-525803(P2020-525803A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2018065775
(87)【国際公開番号】WO2019001974
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】102017210691.3
(32)【優先日】2017年6月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ダンネンベルク,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】オプル,シュテファン
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102010042113(DE,A1)
【文献】 特開2013−154465(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008002579(DE,A1)
【文献】 特開2009−080095(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102015120881(DE,A1)
【文献】 特表2002−530641(JP,A)
【文献】 特開2014−058016(JP,A)
【文献】 特開2000−065854(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0122181(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/001651(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0087866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32,27/00−27/02,
B81B 1/00−7/04,
B81C 1/00−99/00,
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロメカニカルセンサ圧力差センサとして作製する方法であって、
基板(5)に機能層(2)を作るステップ、
前記基板(5)の裏側(7)をエッチングしてセンサ膜(2,20)用の前記機能層(2)を露出させる少なくとも1つの裏側のトレンチ領域(10,11,12,13,30)を作るステップ、
前記基板(5)の裏側(7)をエッチングして、前記少なくとも1つの裏側のトレンチ領域(10,11,12,13,30)とは連通しない少なくとも1つの空洞(18)を形成するステップ、
前記基板(5)の表側(6)をエッチングして、前記少なくとも1つの空洞(18)と連通する少なくとも1つの表側のトレンチ領域(19)を作るステップ、および
前記少なくとも1つの表側のトレンチ領域(19)に少なくとも部分的にゲル(20)を充填するステップ
を含み、
前記基板(5)は、前記センサ膜(2,20)のためのサスペンションとして、前記少なくとも1つの表側のトレンチ領域(19)および前記少なくとも1つの空洞(18)により形成されたバネ構造(17)を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記バネ構造(17)は、前記基板(5)の表側(6)からみたときに曲線形状を有するように形成されている、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記少なくとも1つの裏側のトレンチ領域を作るために、複数の裏側のトレンチホール(10)を生成する、方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法において、
前記複数の裏側のトレンチホール(10)の間に少なくとも1つの空洞からなる第1の接続トレンチ領域(11、13、15)を形成する、方法。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
前記少なくとも1つの表側のトレンチ領域(19)を形成するために、表側の複数のトレンチを形成する、方法。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法であって、
前記基板(5)と前記機能層(2)との間にストップ層(4)を作り、
前記少なくとも1つの裏側のトレンチ領域(10、11、12、13、30)をストップ層(4)まで作り、
続いて、前記センサ膜(2、20)の領域のストップ層(4)を除去する方法。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載方法において、
前記少なくとも1つの表側のトレンチ領域(19)は、複数のトレンチからなり、
前記少なくとも1つの空洞(18)は、前記複数のトレンチの間を接続させる、方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法において、
前記少なくとも1つの裏側のトレンチホール(10)の直径を、前記第1の接続トレンチ領域(11、13、15)および/または前記少なくとも1つの空洞(18)からなる第2の接続トレンチ領域の横断面の直径よりも小さくなるように選択する、方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、
前記第1の接続トレンチ領域(11、13)、少なくとも1つのトレンチチャネル(12)を介して互いに流体接続された複数の空洞からなり前記複数の空洞のうちの少なくとも1つ(13)を、前記機能層(2)を露出するために該機能層の直下に作る、方法。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
前記少なくとも1つの表側のトレンチ領域(19)を、前記少なくとも1つの裏側のトレンチ領域(10、11、12、13、30)よりも時間的に前に作る、方法。
【請求項11】
請求項に記載の方法において、
前記機能層(2)の露出時に前記第1および/または第2の接続トレンチ領域(11、13、15、18)への1つまたは複数のアクセスチャネル(10、12、14、16)をマスクする、方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法により作製されたマイクロメカニカルセンサであって
前記センサ膜が、前記機能層(2)と、該機能層(2)に塗布した前記ゲル(20)とを有する、マイクロメカニカルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニカルセンサ、特に圧力差センサの製造方法に関する。
【0002】
本発明は、マイクロメカニカルセンサにも関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、一般に、任意のタイプのマイクロメカニカルセンサに適用可能であるが、圧力差センサの形態のマイクロメカニカルセンサに関連して本発明を説明する。
【0004】
マイクロメカニカル圧力差センサは、通常、機械−電気変換器として使用される半導体抵抗器を含む。これらの半導体抵抗器は、対応する膜への圧力の影響によって生じる機械的負荷を吸収するだけでなく、機械的干渉によって生じる負荷も吸収する。機械的負荷は、一方では、圧力差センサを結合する場合に、例えば、圧力差センサが配置される回路基板の変形によって、または層構造/パッケージの変形につながるはんだ付けによる接触によって生じることもあり、他方では、センサ自体による負荷によって生じることもある。後者は、例えば、層構造の異なる層の異なる温度挙動によって、または特に大面積のボンディングランドが塗布される場合に、金属めっきの異なる温度挙動によって引き起こされる場合もある。上述の効果は、圧力差センサの製造履歴、すなわち製造ステップの順序にも依存しており、これは、圧力差センサ供給前の比較に基づいてしか補正することができない。
【0005】
したがって、このことから、例えば、実質的に全ての側で圧力センサの膜をトレンチにより露出することによって、すなわち実質的に全ての側で個々の接続部を除いて膜をエッチング除去することによって、電気供給線を膜の上方に導くことができるように圧力差センサの部分、すなわち、膜および対応するマイクロメカニカル圧力センサを圧力差センサの残りの部分から機械的に切り離すことが提案されている。圧力センサは、全面の裏側のトレンチによって露出され、裏側トレンチは、続いて、裏側キャップを有するウェーハボンドによって労力をかけて再び閉じられる。圧力アクセスホールを有する付加的な表側カバーは、露出した圧力センサを上方から保護する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、マイクロメカニカルセンサ、特に圧力差センサを作製する方法を提供し、該方法は、
基板に機能層を作るステップ、
センサ膜のための機能層を露出させるために、基板の裏側から始まって、少なくとも1つの裏側のトレンチ領域を作るステップ、
センサ膜のためのサスペンションとして、基板内に少なくとも1つの支持構造、特に、好ましくはバネ構造の形式のエネルギー貯蔵構造を形成するために少なくとも1つの表側のトレンチ領域を作るステップ、および
少なくとも1つの表側のトレンチ領域に少なくとも部分的にゲルを充填するステップ
を含む。
【0007】
さらなる実施形態では、本発明は、請求項1〜10までのいずれか1項に記載の方法により作製されたマイクロメカニカルセンサを提供し、特に、マイクロメカニカルセンサは圧力差センサとして構成され、圧力センサ膜は、機能層と、機能層に塗布したゲルとを有する。
【0008】
換言すれば、本発明の実施形態は、機能層を全ての側から露出することを可能にし、部分的な露出により生じる間隙、溝、および割れ目は、表側を裏側から封止するために部分的にゲル化する。
【0009】
これにより、特に圧力センサ膜を形成するために、機能層の全ての側を露出することが可能になり、機能層領域が、パッケージまたはパッケージの適用場所からの応力から分離されるという利点が達成できる。さらにウェーハレベルでゲル化を行うことができ、したがって、より経済的な組立および接続技術が可能になる。別の利点は、明確に定めたトレンチ領域、例えば、基板内の割れ目などの充填によって、応力分離を正確な方法で行うことができることである。このことは、制御が困難な大きい接着剤厚がもはや必要ではないので、異なるセンサ間のばらつきを低減する。
【0010】
用語「トレンチ形成」は、最も広い意味で理解されるべきであり、特に、例えば、エッチング、特に、シリコンにおける反応性イオンエッチングによって、ベース材料から材料を除去することによって溝、孔、間隙などを作ることを意味する。
【0011】
用語「実質的に」または「ほぼ」は、最も広い意味で理解されるべきであり、特に特許請求の範囲、好ましくは説明において、寸法、位置、間隔、距離、分数などに関する差異、変動、許容差などに関する。例えば、「1つの大きさは、本質的に第2の大きさに等しい」という表現は、2つの大きさが、互いに、特に100%、好ましくは75%、特に50%、好ましくは少なくとも25%、特に20%、好ましくは10%、特に少なくとも0.5%、好ましくは0.1%未満、特に0.001%未満などだけ互いに異なっていてもよいことを意味する。例えば、「ほぼ等方性のトレンチ形成ステップ」という表現は、50%を超える、特に60%を超える、好ましくは70%を超える、特に80%を超える、好ましくは90%を超える、特に95%を超えるトレンチ形成が等方性に行われることを意味する。
【0012】
用語「ゲル」は、最も広い意味で理解されるべきであり、特に、少なくとも2つの成分、特に、ポリマーネットワークおよび溶媒を含む分散系を意味する。用語「ゲル」は、特に、柔らかい集合体を意味し、ポリマーネットワークが全ての溶媒を吸収した場合にゲルが生じる。特に、用語「ゲル」は、架橋および非架橋ゲルの両方を含む。ゲルの例は、シリコーンヒドロゲル、ポリアクリルアミドまたはポリマコン(CAS番号25053−81−0)をベースとするヒドロゲル、または例えば架橋ポリマーをベースとするヒドロゲル、例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドンである。
【0013】
本発明のさらなる特徴、利点、およびさらなる実施形態を、以下に説明し、これにより明らかにする。
【0014】
有利な実施形態によれば、少なくとも1つの裏側のトレンチ領域を作るために、複数の裏側のトレンチホールを生成する。このようにして達成できる利点の1つは、少なくとも1つの裏側のトレンチ領域を簡単に作ることが可能になることである。
【0015】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも1つの空洞を、裏側のトレンチホールの間に第1の接続トレンチ領域を形成するために生成する。このようにして、裏側の複数のトレンチホールを流体的に接続することができる。
【0016】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも1つの表側のトレンチ領域を形成するために、表側の複数のトレンチを形成する。これにより、一方では、機能層のほぼ全ての側における露出を達成することができ、他方では、センサ膜のためのサスペンションを作ることができる。
【0017】
さらなる有利な実施形態によれば、基板と機能層との間にストップ層を作り、少なくとも1つの裏側のトレンチ領域をこの層まで作り、続いて、センサ膜の領域のストップ層を除去する。ストップ層によって、時間制御された作製プロセスにおいてプロセスのばらつきを低減することができる。
【0018】
さらなる有利な実施形態によれば、複数の表側のトレンチ領域の間に少なくとも1つの第2の接続トレンチ領域を形成するために、少なくとも1つの空洞を生成する。したがって、2つの表側のトレンチ領域間の流体接続を簡単な方法で確立することができ、これにより、エネルギー蓄積構造は、例えば、ほぼ完全に露出したセンサ膜領域が吊り下げられる長いバネの形態で形成する。
【0019】
さらなる有利な実施形態によれば、裏側のトレンチホールの直径は、第1および/または第2の接続トレンチ領域の少なくとも1つの空洞の横断面の直径よりも小さくなるように選択する。これにより、ゲルが基板の裏側を通って、例えばウェーハのホルダに流れ、ホルダを汚染することを容易に防止することができる。この場合、ゲルは水平方向にしか流れることができない。
【0020】
さらなる有利な実施形態によれば、複数の第1の接続トレンチ領域を作り、これらの第1の接続トレンチ領域は、少なくとも1つのトレンチチャネルを介して互いに流体接続し、少なくとも1つの第1の接続トレンチ領域は、機能層を露出するために、機能層の直下に作る。このようにして、一方では、連通する空洞を生成することができ、粒子による機能層の下側の汚染をさらに低減する。
【0021】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも1つの表側のトレンチ領域は、少なくとも1つの裏側のトレンチ領域よりも時間的に前に作る。これにより達成される利点の1つは、表側のトレンチ領域を最初に完全に作り、次に対応する裏側のトレンチ領域を裏側から作ることであり、これにより、全体としてマイクロメカニカルセンサの作製を簡単化する。
【0022】
さらなる有利な実施形態によれば、マイクロメカニカルセンサは、圧力センサ膜として構成した機能層を有する圧力差センサとして構成している。このようにして、簡単かつ安価な方法で圧力差センサを提供する。
【0023】
本発明のさらなる重要な特徴および利点が、従属請求項、図面、およびその一部をなす図面に基づいた図面の説明から明らかになる。
【0024】
言うまでもなく、上述した特徴および以下に説明する特徴は、それぞれの場合に示された組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせで、または単独で使用することができる。
【0025】
本発明の好ましい構成および実施形態を図面に示し、以下の説明においてより詳細に説明する。同じ符号は、同じまたは類似の、または機能的に同じ構成要素または要素に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a)-d)】本発明の第1の実施形態による方法のステップを示す図である。
図1e)-h)】本発明の第1の実施形態による方法のステップを示す図である。
図2a)-d)】本発明の第2の実施形態による方法のステップを示す図である。
図2e)-f)】本発明の第2の実施形態による方法のステップを示す図である。
図3a)-d)】本発明の第3の実施形態による方法のステップを示す図である。
図4a)-d)】本発明の第4の実施形態による方法のステップを示す図である。
図5】本発明の一実施形態による方法により作製された圧力差センサを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1a〜1hは、膜を有するマイクロメカニカルセンサ1を作製するための本発明の第1の実施形態による方法のステップを示し、マイクロメカニカルセンサ1はそれぞれ断面図で示している。
【0028】
図1aに示す第1のステップでは、ウェーハ5の表側の領域に、ストップ層4を備え(例えばSolウェーハ)、必要に応じて拡散された圧電抵抗(図示せず)、導体路(図示せず)、ボンドパッド3があり、そして例えば5〜100の高アスペクト比を有するトレンチホール10をウェーハ5の裏側7に、例えばエッチングによって作製する。ストップ層4は、ウェーハ内に公知の方法で、例えば、基板に堆積させ、この堆積したストップ層4にいわゆる「センサ層または機能層2」を塗布することによって、作製することができる。ストップ層4は、公知の方法で酸化ケイ素から作製することができる。
【0029】
図1bに示す第2のステップでは、0.1〜3のアスペクト比を有する等方性またはほぼ等方性のトレンチを設け、これにより、つながった空洞11が生じる。2つのトレンチホール10は、空洞11によって流体的に接続されている。
【0030】
図1cに示す第3のステップでは、トレンチホール10を、表側6またはストップ層4の方向に空洞11を越えて延ばし、0.1〜3の間のアスペクト比を有する等方性またはほぼ等方性の第2のトレンチを設け、これにより第2の空洞13がストップ層4の下方に生じ、第1の空洞11に流体的に連通もしくは接続する。
【0031】
図1dに示す第4のステップでは、ストップ層4上に露出して配置された機能層2の機械的挙動に対するこの層4の影響を回避するために、ストップ層4を、第2の空洞13の領域で除去する。
【0032】
図1eに示す第5のステップでは、等方性またはほぼ等方性の第3のトレンチを設け、これに加えて、互いに連通しない空洞15、16、または互いに連通する空洞を作製し、後者は図1eには示していない。この場合、第2および第3のステップで作製した裏側のトレンチホール10、空洞11および13、ならびに接続チャネル12を、例えばこれらが第5のステップでエッチングする場合に損傷されることを回避するために、例えばドライレジストによって覆うことができる。
【0033】
図1fに示す第6のステップでは、トレンチ19によって表側6から、バネ構造17、および機能層2、特に圧力センサ膜領域を、側方に露出させ、図1fでは左側で露出する。この場合、応力分離を保証するが、表側と裏側6、7は依然として流体接続しており、センサ1の表側と裏側との間の差圧を測定することはできない。
【0034】
図1gに示す第7のステップでは、表側6から裏側7への流体接続は、液体またはゲル状の材料20を空間19、18、15に充填し、機能層2に塗布することによって中断する。したがって、圧力センサ膜は、露出した機能層2と、この層2に塗布したゲル20とによって形成される。好ましくは、ゲル20は、最初は実質的に液状の材料であり、硬化もしくは架橋ステップの後にゲル状に、すなわち柔らかくなり、塑性変形可能ではなくなる。ゲル20が柔らかく構成されるほど、パッケージからの圧力センサ膜領域の応力分離が良好になる。まだ架橋されていないゲルは、例えば、スクリーン印刷プロセスを用いて、例えばボンドパッド領域3が汚染されることなく、ウェーハ5の表面に塗布することができる。適切な圧力で、ゲル20は、特に、空間15、18、19に流れ込み、空気は、裏側のトレンチへのアクセスホール10、14、16を通って逃げることができる。アクセスホール10、14、16の直径が空洞11、15、18の横断面よりも小さい場合には、ゲル20は、裏側7を通る代わりに第1の空洞11の方向に、すなわちトレンチホール10、14、16に入り、これらのトレンチホールを通過して水平方向に流れ、ゲル20は、例えばウェーハ5のホルダを汚染する恐れがある。表側のトレンチ18の下部領域から第1の空洞11までの適切な水平方向流路長さにより、ゲル充填ステップのプロセス信頼性がもたらされる。第1の空洞11の一部には、センサ性能に著しい影響を及ぼすことなしにゲル20を充填することさえできる。しかしながら、第2の空洞13がこのように閉じられ、もはや裏方から膜2に圧力を加えることができないので、第1の空洞11を充填することを回避することが望ましい。
【0035】
図1hに示す第8のステップにおいて、マイクロメカニカルセンサ1を、表側印刷と裏側印刷とを接続することができるように、組立および結合技術において接着する。
【0036】
図2a〜図2fは、本発明の第2の実施形態による方法のステップを示す。
【0037】
図2は、0.1〜3のアスペクト比のただ1つの等方性またはほぼ等方性のトレンチを有し、圧力センサ膜の下方に格子構造を有さない差圧センサを製造するための本発明の第2の実施形態を示す。
【0038】
図2aに示す第1のステップでは、図1aのステップ1と同様に、例えば、5〜100の高アスペクト比を有する複数の裏側のトレンチホール10、16を形成する。
【0039】
図2bに示す第2のステップでは、次に、等方性またはほぼ等方性のトレンチによってウェーハ5の裏側7から空洞11、18を形成し、いずれか1つの空洞11が多数のトレンチホール10を流体的に接続する。
【0040】
図2cに示す第3のステップでは、キャビティ30を、例えばストップ層4、例えばSOIウェーハの酸化シリコンまで、例えば異方性エッチングにより生成し、これにより圧力センサ膜2を定める、すなわち、実質的に圧力センサ膜2を下方で露出する。この場合、空洞11へのアクセスホールもしくは裏側のトレンチホール10は、例えばドライレジストによってマスクすることができる。ストップ層4に対するキャビティ30は空洞11と重なり合い、露出した圧力センサ膜領域が後に生じる。
【0041】
図2dに示す第4のステップでは、後の圧力センサ膜の機械的挙動に対するストップ層4の影響を回避するために、機能層2の下のストップ層4を除去する。
【0042】
図2eに示す第5のステップでは、圧力センサ膜領域は、表側のトレンチ19によって露出させ、これにより空洞18を表側のトレンチ19と流体的に接続し、同様に空洞11、18の間の流体接続も確立される。
【0043】
図2fに示す第6のステップでは、図1hに示す第8のステップと同様に、空間にゲル20を充填するか、もしくはゲル20を機能層2に塗布し、ゲル20は続いて硬化または架橋する。したがって、圧力センサ膜は、露出した機能層2と、この機能層2に塗布したゲル20とによって再び形成される。
【0044】
図3a〜図3dは、本発明の第3の実施形態による方法のステップを示す。
【0045】
図3は、等方性またはほぼ等方性のトレンチステップなしに、圧力センサ膜の下方の格子構造なしに、そしてゲル20のための受止め領域なしに、差圧センサを製造するためのプロセスフロー図を示す。
【0046】
図3aに示す第1のステップは、実質的に図1aに示す第1のステップに対応する。図1aに示す第1のステップとは異なり、図3aに示す第1のステップでは、裏側にトレンチホール10を生成しないが、その代わりにストップ層4までトレンチを形成し、このようにして圧力センサ膜を定める。
【0047】
図3bに示す第2のステップでは、ストップ層4を除去する。
【0048】
図3cに示す第3のステップでは、ウェーハ5全体を、表側6からトレンチを形成し、間隙19を形成し、その間にストップ層4を除去する。
【0049】
図3dに示す第4のステップでは、再び、間隙19をゲル20により充填し、ゲル20を、図1gに示す第7のステップと実質的に同様に、機能層2の表側に塗布する。したがって、圧力センサ膜2、20は、機能層2の露出した領域と、機能層2に塗布したゲル20とによって再び形成される。
【0050】
図4a〜図4dは、本発明の第4の実施形態による方法のステップを示す。
【0051】
図4は、等方性またはほぼ等方性のトレンチステップなしに、圧力センサ膜の下方の格子構造なしに、そしてゲル受止め領域なしに、本発明の第4の実施形態により圧力差センサを製造するためのプロセスフロー図を示す。
【0052】
図4aに示す第1のステップでは、圧力センサ膜領域をストップ層4まで露出させるために、トレンチ10とトレンチ30の両方を裏側に設ける。
【0053】
図4bに示す第2のステップでは、裏側の2つのトレンチ10およびトレンチ30においてストップ層4をそれぞれ除去する。
【0054】
図4cに示す第3のステップでは、裏側の2つのトレンチ10を対応して開け、もはやストップ層4を除去する必要はない。
【0055】
図4dに示す第4のステップでは、次に、ゲル20が裏側のトレンチ10内へ部分的にのみ流れ込むように、トレンチ10の充填を行う。換言すれば、図4の実施形態では、バネ構造17を露出させるための分離空間の一部を、トレンチ30によって圧力センサ膜を定めるステップで設ける。このことは、特にエッチング時間が短縮されるという利点を有する。なぜならば、表側6から裏側7への局所的な開放後には拡散経路がより大きく、エッチング時間のばらつきがより少なくなることに基づいて、機能層2の表側6から裏側7へのエッチング作用が低減するからである。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態による方法により製造した圧力差センサの概略図を示す。
【0057】
図5は、図1によるステップa)〜f)を実施した後の圧力差センサを示す。図1は、基板5の左側から圧力センサ膜の中心までの断面を示す。この場合、機能層2のみを示しており、ゲル充填は示していない。裏側のトレンチホール14と、機能層2の下方の露出した領域もしくは空洞13を見ることができる。図5では、露出したバネ状構造17の下方に裏側のトレンチホール16は示していない。この場合、バネ状構造17は、基板5の4つのうちの2つの縁部から始まって、実質的にS字形に構成している。
【0058】
全ての実施形態において、梁バネ17として示す構造は、メアンダ状のバネ、角を有するバネ、または任意の曲線形状を有するバネとして構成もしくは分離することもできる。この場合、圧力センサ膜の領域に接触させるために任意の数のバネを形成することができる。バネは、結合および/または分割することができ、圧力センサ膜の領域にセンサを懸吊し、必要に応じて接触させる役割を果たすことができる。
【0059】
要約すると、少なくとも1つの実施形態は、以下の利点のうちの少なくとも1つを有するか、またはこれらの利点のうちの1つを可能にする。
パッケージからの応力の回避
パッケージの保管場所からの応力の回避
安価な組立および接続技術
例えば、スクリーン印刷によって、ウェーハレベルでゲル化することが可能
明確に定めたトレンチ/ホールを介した充填の制御。
【0060】
本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多様に変更することが可能である。
図1a)-d)】
図1e)-h)】
図2a)-d)】
図2e)-f)】
図3a)-d)】
図4a)-d)】
図5