特許第6864835号(P6864835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6864835-端末装置および通信方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864835
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】端末装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20210419BHJP
   H04W 4/10 20090101ALI20210419BHJP
【FI】
   H04W72/04 131
   H04W4/10
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-166616(P2017-166616)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-47241(P2019-47241A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 元志
(72)【発明者】
【氏名】小池 浩史
【審査官】 石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0157958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、
前記通信部で受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する切り替え部と、
を備え
前記切り替え部は、前記受信信号が自端末装置宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合に、前記切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、
前記通信部で受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する切り替え部と、
を備え、
前記切り替え部は、前記受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと異なる場合に、前記切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替えることを特徴とする端末装置。
【請求項3】
通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、
前記通信部で受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する切り替え部と、
信先選択部と、
を備え、
前記切り替え部は、前記受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合で、前記送信先選択部により自端末装置宛の受信信号を送信している端末装置以外を選択された場合に、前記切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替えることを特徴とする端末装置。
【請求項4】
複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を実行する端末装置での通信方法であって、
受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるステップと、
受信された受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持するステップと、
を備え
前記受信信号が自端末装置宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合に、前記切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替えることを特徴とする通信方法。
【請求項5】
複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を実行する端末装置での通信方法であって、
受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるステップと、
受信された受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持するステップと、
を備え、
前記受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと異なる場合に、前記切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替えることを特徴とする通信方法。
【請求項6】
複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を実行する端末装置での通信方法であって、
受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるステップと、
受信された受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持するステップと、
送信相手先を選択するステップと、
を備え、
前記受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合で、送信相手先を選択するステップにおいて自端末装置宛の受信信号を送信している端末装置以外を選択された場合に、前記切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替えることを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に業務用無線による通信を実行可能な端末装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TDMA(Time Division Multiple Access)技術を用いて、複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う無線通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この無線通信装置は、デフォルトタイムスロットが利用できない場合、利用可能なタイムスロットを検索し、利用可能なタイムスロットを一時的に選択して、通信を開始する。デフォルトタイムスロットが利用可能となった場合に、無線通信装置は、デフォルトタイムスロットを再選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0157958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、デフォルトタイムスロットが利用できない場合に利用可能なタイムスロットを検索するので、迅速に送信を開始することが困難である。また、デフォルトタイムスロットを再選択するので、通話で用いたタイムスロットで再び送信することができない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、迅速に送信を開始する可能性を高めることができるとともに、送信が可能であったタイムスロットを次回の送信でも維持できる端末装置および通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、通信部で受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する切り替え部と、を備える。切り替え部は、受信信号が自端末装置宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合に、切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替える。
本発明の別の態様もまた、端末装置である。この装置は、通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、通信部で受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する切り替え部と、を備える。切り替え部は、受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと異なる場合に、切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替える。
本発明のさらに別の態様もまた、端末装置である。この装置は、通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、通信部で受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する切り替え部と、送信先選択部と、を備える。切り替え部は、受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合で、送信先選択部により自端末装置宛の受信信号を送信している端末装置以外を選択された場合に、切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替える。
【0007】
本発明の別の態様は、通信方法である。この方法は、複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を実行する端末装置での通信方法であって、受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるステップと、受信された受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持するステップと、を備える。受信信号が自端末装置宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合に、切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替える。
本発明の別の態様もまた、通信方法である。この方法は、複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を実行する端末装置での通信方法であって、受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるステップと、受信された受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持するステップと、を備える。受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと異なる場合に、切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替える。
本発明のさらに別の態様もまた、通信方法である。この方法は、複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を実行する端末装置での通信方法であって、受信された受信信号に基づき所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるステップと、受信された受信信号に基づき再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持するステップと、送信相手先を選択するステップと、を備える。受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合で、送信相手先を選択するステップにおいて自端末装置宛の受信信号を送信している端末装置以外を選択された場合に、切り替え条件を満たすとして、送信用のタイムスロットを切り替える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、迅速に送信を開始する可能性を高めることができるとともに、送信が可能であったタイムスロットを次回の送信でも維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の端末装置の構成を示すブロック図である。
図3図1の端末装置の処理を示すフローチャートである。
図4図1の端末装置の別の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。実施の形態は、業務用無線による通信を実行可能な端末装置に関する。業務用無線は、音声通信を実行する。音声通信の一例がPTT(Push to Talk)である。PTTでは、ユーザが、通話開始時にPTTボタンを押し、通話終了時にPTTボタンを解放する。また、業務用無線では、複数の端末装置によってグループを形成することも可能である。
【0012】
業務用無線の通信方式の規格として、DMR(Digital Mobile Radio)が知られている。DMRは、1つの通信チャンネルに2つのタイムスロットが割り当てられたTDMAの規格である。複数の端末装置は、1つの通信チャンネルの2つのタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う。2つのグループにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当てることで、1つの通信チャンネルを共用して2つのグループがそれぞれ個別に通信を実行可能である。既述のように、送信用のタイムスロットの切り替えには改善の余地がある。
【0013】
そこで本実施の形態に係る端末装置では、受信信号が所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号が再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する。
【0014】
図1は、実施の形態に係る通信システム100の構成を示すブロック図である。通信システム100は、端末装置10と総称される第1端末装置10a、第2端末装置10b、第3端末装置10c、第4端末装置10dを備える。端末装置10の数は、「4」に限定されない。
【0015】
端末装置10は、他の端末装置10と業務用無線による通信を実行可能な無線端末である。ここでは、通信として通話がなされるものとする。なお、データ通信がなされてもよい。業務用無線については公知のDMR技術が使用されればよいので、ここでは詳細な説明を省略する。例えば、第1端末装置10aと第2端末装置10bが第1グループ12を形成し、第3端末装置10cと第4端末装置10dが第2グループ14を形成する。このように、複数の端末装置10が含まれたグループが複数形成されている。1つのグループに含まれる端末装置10の数は、「2」に限定されない。グループ毎に、グループに含まれたひとつの端末装置10から、当該グループに含まれた残りの端末装置10への通信がなされる。前述のように、DMR技術では、1つの通信チャンネルが2つのタイムスロットを有するため、1つの通信チャンネル、すなわち1つの周波数で2回線の半二重の通信を行うことが可能である。そのため、第1グループ12の複数の端末装置10が通信に用いる通信チャンネルは、第2グループ14の複数の端末装置10が通信に用いる通信チャンネルと同じ場合がある。以下、2つのタイムスロットを、タイムスロット1、タイムスロット2と呼ぶ。
【0016】
なお、複数の端末装置10は、図示しない基地局装置に接続してもよい。この場合、複数の端末装置10は、基地局装置を介して互いに通信可能である。基地局装置は、グループに対して、上りチャネルと下りチャネルを割り当てる。このような状況下において、グループ中の1つの端末装置10が、上りチャネルにて信号を送信し、グループ中の他の端末装置10が、下りチャネルにて信号を受信する。上りチャネルと下りチャネルは、それぞれ、タイムスロット1、タイムスロット2を有する。
【0017】
図2は、端末装置10の構成を示すブロック図である。端末装置10は、通信部20、受信処理部22、送信処理部24、スピーカ26、マイク28、操作部30を含む。送信処理部24は、送話部40、切り替え部42を含む。
【0018】
通信部20は、DMRに対応し、通信チャンネルの2つのタイムスロットのいずれかを用いて、自グループの他の端末装置10と通信を行う。通信部20は、他の端末装置10から信号を受信するとともに、他の端末装置10に信号を送信する。
【0019】
受信処理部22は、通信部20で受信された受信信号を検出する。通信部20で受信された受信信号は、自グループの送信側の他の端末装置10から送信される場合もあれば、自グループの通信チャンネルを共用している他グループの他の端末装置10から送信される場合もある。受信処理部22は、受信信号に含まれている識別子に基づいて、受信信号が自端末装置10宛であるか否か判定する。識別子は、端末装置IDを含む。端末装置IDは、端末装置10を一意に識別する番号である。受信処理部22は、受信信号に含まれている端末装置IDが自端末装置10の端末装置IDに一致する場合、受信信号が自端末装置10宛であると判定し、受信信号に含まれている端末装置IDが自端末装置10の端末装置IDに不一致の場合、受信信号が他の端末装置10宛であると判定する。識別子は、予め定められた番号であるカラーコードなどをさらに含んでもよい。また、受信処理部22は、受信信号に含まれているタイムスロットの情報をもとに、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1とタイムスロット2のいずれであるか判定する。
【0020】
受信処理部22は、端末装置10の電源がオンされた場合、音声信号のミュートを行う。受信処理部22は、受信信号が自端末装置10宛でない場合、音声信号のミュートを継続する。音声信号のミュートにより、スピーカ26は音声を出力しない。一方、受信処理部22は、受信信号が自端末装置10宛である場合、音声信号のミュートを解除して、受信信号に基づいて復調し音声信号を再生する。この処理は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1であってもタイムスロット2であっても実行される。具体的には、受信処理部22は、この場合、通信部20に受信信号の増幅、周波数変換、復調、復号等を実行させる。通信部20は、処理の結果(以下、これもまた「音声信号」という)を受信処理部22に出力する。受信処理部22は、音声信号を再生する。受信処理部22は、音声信号をスピーカ26に出力する。スピーカ26は、受信処理部22からの音声信号を受けつけ、音声信号を音声として出力する。スピーカ26は、報知音等も出力する。
【0021】
受信処理部22は、受信信号を検出したか否かの情報、受信信号が自端末装置10宛であるか否かの情報、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1とタイムスロット2のいずれであるかの情報を、送信処理部24に出力する。
【0022】
マイク28は、通話の際に、ユーザからの音声を受け付け、音声を音声信号に変換する。マイク28は、音声信号を送信処理部24へ出力する。操作部30は、ユーザの送信操作を受け付けるスイッチ、ボリューム等のデバイスにより構成される。操作部30のスイッチの一つは、PTTボタンに相当し、PTTによって音声を送信する場合に、ユーザによって押し下げられる。また、音声を送信している間にわたって、PTTボタンは押し下げ続けられる。PTTボタンが押し下げられることは、音声信号を送信するための送信操作を受けつけることに相当する。PTTボタンは、押し下げられている間にわたって、指示を送信処理部24に出力し続ける。また、操作部30は、復調音量調整のためのボリューム、送信相手先を選択するためのスイッチ、緊急呼のためのスイッチ等を備える。
【0023】
送話部40は、操作部30からの指示を受けつけている場合に、マイク28からの音声信号を入力する。送話部40は、音声信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した音声信号(以下、これもまた「音声信号」という)を通信部20に出力する。一方、送話部40は、操作部30からの指示を受けつけていない場合に、このような処理を実行しない。通信部20は、送話部40からの音声信号を入力し、タイムスロット1またはタイムスロット2を用いて、音声信号を受信側の他の端末装置10に送信する。音声信号の送信のために、通信部20は、符号化、変調、周波数変換、増幅等を実行する。
【0024】
通信部20による音声信号の送信、および、送信用のタイムスロットとしてどちらのタイムスロットを用いるかは、受信信号に応じて、切り替え部42により以下のように制御される。ここでは、説明を明瞭にするために、(1)受信信号を未検出の場合、(2)検出された受信信号が自端末装置10宛の場合、(3)検出された受信信号が自端末装置10宛ではない場合の順に説明する。
【0025】
(1)受信信号を未検出の場合
送信処理部24には、送信用のタイムスロットが設定されている。以下、設定された送信用のタイムスロットは、タイムスロット1である一例について説明するが、タイムスロット2であってもよい。切り替え部42は、受信処理部22が受信信号を未検出であり、且つ、操作部30が送信操作を受け付けた場合に、設定された送信用のタイムスロットであるタイムスロット1で通信部20に送信を実行させる。なお、送信用のタイムスロットには初期設定のタイムスロットがあり、端末装置10の電源投入後は初期設定のタイムスロットが設定されるが、後述するように、過去の受信信号に応じて送信用のタイムスロットは設定される。
【0026】
(2)検出された受信信号が自端末装置10宛の場合
受信信号を検出した場合に、受信処理部22は、通信部20に対し復号化を指示し、復号化した信号によりタイムスロットの判定を行い、復調を行う。切り替え部42は、受信信号が所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替え、当該受信信号が再び切り替え条件を満たすまで送信用のタイムスロットを維持する。このように、送信用のタイムスロットは、適宜設定し直される。
【0027】
具体的には、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットに、送信用のタイムスロットを設定する。切り替え部42は、切り替え条件として、受信信号が自端末装置10宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを切り替える。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット2である場合に、送信用のタイムスロットの設定がタイムスロット1であった場合に、送信用のタイムスロットをタイムスロット2に切り替える。一方、切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと同じ場合に、送信用のタイムスロットを維持する。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1である場合に、送信用のタイムスロットを設定されたタイムスロット1に維持する。
【0028】
送信処理部24は、送信中以外は操作部30からの送信相手先の選択を受け付ける。つまり、操作部30は、送信相手先を選択する送信先選択部としても機能する。さらには、受信処理部22が自端末装置10宛の受信信号を復調中であっても送信相手先の選択を受け付けることを可としてもよい。つまり自端末装置10宛の受信信号を復調中であっても、自分宛の受信信号を送信している端末装置以外を、送信相手先として選択することを可としてもよい。また、送信相手先を選択し設定しても現在の受信信号の復調は維持される。
【0029】
自分宛の受信信号を送信している端末装置以外を、送信相手先として選択し設定した場合、切り替え条件は満たすことになり受信信号のタイムスロットとは異なるタイムスロットに送信用のタイムスロットは設定される。つまり、切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと同じ場合に、送信用のタイムスロットを切り替える。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1である場合に、送信用のタイムスロットをタイムスロット2に切り替える。
【0030】
切り替え部42は、操作部30が送信操作を受け付けた場合に、設定された送信用のタイムスロットで通信部20に送信を実行させる。
【0031】
このように、通信部20が自端末装置10宛の受信信号を受信した場合に、通信部20は、切り替え条件に対応して設定された送信用のタイムスロットを用いて送信を実行する。
【0032】
また、送信処理部24は、通信部20が受信信号を検出している場合に、送信操作を了承するのかまたは拒絶するかの設定を備えてもよく、さらには、受信信号が自端末装置10宛の場合で受信信号が継続中の場合に、送信操作を了承するのかまたは拒絶するかの設定としてもよい。これにより、自端末装置10宛の信号を受信しているにも係わらず、その受信信号に被せて送信を行ってしまうといったことを防ぐことができる。なお、本発明において、「送信操作を受け付けた」、「送信操作を受け付けない」とする場合の意味は、「送信操作が検出された」、「送信操作が検出されていない」という意味であり、つまり端末装置10を操作するユーザが送信操作を行ったか否か、の判定を意味する。一方、「送信操作を拒絶」の意味は、送信操作が検出されても送信状態とはしないことの意味であり、つまり端末装置10を操作するユーザが送信操作を行っても送信状態とはならないことを意味する。
【0033】
(3)検出された受信信号が自端末装置10宛ではない場合
切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛ではない場合に、設定された送信用のタイムスロットを維持する。また、切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であるか否か判定できない場合は設定された送信用のタイムスロットを維持する。例えば、受信信号が微弱であったり、通信とは無関係のノイズであったり妨害波であったりといった信号で、受信処理部22が復号化された信号からタイムスロットの判定ができない場合は、切換え条件は満たさないとして、現時点で設定されている送信用のタイムスロットを維持する。
【0034】
切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと異なる場合は、切り替え条件は満たさないとして、操作部30が送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットは切り替えない。一方、切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと同じである場合に、切り替え条件を満たすとし、操作部30が送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替える。このとき、切り替え部42は、切り替え先のタイムスロットが空いているか確認せずに送信用のタイムスロットを切り替える。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1である場合に、送信用のタイムスロットをタイムスロット2に切り替える。
【0035】
切り替え部42は、操作部30が送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットで通信部20に送信を実行させる。
【0036】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0037】
以上の構成による端末装置10の動作を説明する。図3は、端末装置10の処理を示すフローチャートである。この処理は、繰り返し行われる。受信処理部22が受信信号を未検出であり(S10のN)、操作部30が送信操作を受け付けなければ(S12のN)、処理を終了する。操作部30が送信操作を受け付ければ(S12のY)、通信部20は、設定された送信用のタイムスロットで送信を行う(S14)。送信が終了していなければ(S16のN)、送信を維持する。送信が終了していれば(S16のY)、処理を終了する。
【0038】
ステップ10で受信処理部22が受信信号を検出し(S10のY)、受信信号が自端末装置10宛であれば(S18のY)、受信処理部22は、ミュートを解除し、通信部20に復調を行わせる(S20)。受信信号のタイムスロットが、設定された送信用のタイムスロットであれば送信用のタイムスロットは維持され、受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットでなければ、送信用のタイムスロットは、受信信号のタイムスロットと同じタイムスロットに設定される(S20)。復調中であっても送信相手先の変更は可であるとし、送信相手先を変更しても復調は継続される。
【0039】
送信相手先の設定操作を受け付けた場合は(S22のY)、切り替え条件が満たされたとして、送信用のタイムスロットを受信タイムスロットと異なるタイムスロットに設定する(S24)。送信相手先の設定操作を受け付けなかった場合は(S22のN)、現在設定されている送信用のタイムスロットを維持する。また、受信を継続中に送信相手先の設定操作を複数回行った場合は、すでに切り替え条件は満たされているので、受信タイムスロットとは異なるタイムスロットに、送信用のタイムスロットは維持される。
【0040】
操作部30が送信操作を受け付けない場合は(S26のN)、受信信号は継続中であるか否かの判定を行う(S28)。受信信号が継続中であれば(S28のY)、S22に戻る。受信信号が継続中でなければ(S28のN)、処理を終了する。
【0041】
操作部30が送信操作を受け付けた場合は(S26のY)、通信部20は、設定された送信用のタイムスロットで送信を行う(S14)。送信が終了していなければ(S16のN)、送信を維持する。送信が終了すれば(S16のY)、処理を終了する。
【0042】
ステップ18で受信信号が自端末装置10宛でなければ(S18のN)、受信処理部22は、ミュートを継続する(S30)。操作部30が送信操作を受け付けず(S32のN)、かつ、受信信号が継続中であれば(S33のY)、ステップ18に移行する。受信信号が終了した場合(S33のN)、処理を終了する。操作部30が送信操作を受け付け(S32のY)、受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと同じでなければ(S34のN)、ステップ14に移る。受信信号のタイムスロットが設定された送信用のタイムスロットと同じであれば(S34のY)、通信部20は、設定された送信用のタイムスロットとは異なる送信用のタイムスロットに設定する(S36)。通信部20は、設定された送信用のタイムスロットで送信する(S14)。送信が終了していなければ(S16のN)、送信を維持する。送信が終了すれば(S16のY)、処理を終了する。
【0043】
なお、受信信号が自端末装置10宛の場合で受信信号が継続中の場合に、送信操作を拒絶する設定とした場合の処理を図4に示す。図4は、図1の端末装置10の別の処理を示すフローチャートである。
【0044】
図3のフローチャートとステップ24までは同じ処理であるが、受信信号が継続中の場合は(S210のY)、ステップ22に戻る。受信信号が継続中で無い場合は(S210のN)、送信操作を受け付けたか否かの判定をステップ230にて行う。送信操作を受けつけた場合は(S230のY)、設定された送信用のタイムスロットで送信する(ステップ14)。送信操作を受けつけなかった場合は(S230のN)、処理を終了する。
【0045】
このように本実施の形態によれば、受信信号が所定の切り替え条件を満たした場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるので、タイムスロットを検索せずに切り替えることができる。よって、迅速に送信を開始する可能性を高めることができる。また、送信用のタイムスロットを切り替えた場合に、受信信号が再び切り替え条件を満すまで送信用のタイムスロットを維持するので、送信が可能であったタイムスロットを次回の送信でも維持できる。
【0046】
また、受信信号が自端末装置宛ではなく、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと同じ場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるので、他のグループの受信信号のタイムスロットと異なるタイムスロットで送信を実行できる。また、受信信号が自端末装置宛であり、且つ、当該受信信号のタイムスロットが送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを切り替えるので、自グループの受信信号のタイムスロットで送信を実行できる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0048】
例えば、1つの通信チャンネルに2つのタイムスロットが割り当てられている場合に限らず、1つの通信チャンネルに3つ以上のタイムスロットが割り当てられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…端末装置、20…通信部、22…受信処理部、24…送信処理部、26…スピーカ、28…マイク、30…操作部、40…送話部、42…切り替え部。
図1
図2
図3
図4