特許第6864892号(P6864892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6864892アスベスト検出剤、アスベスト検出キットおよびアスベスト検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864892
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】アスベスト検出剤、アスベスト検出キットおよびアスベスト検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/22 20060101AFI20210419BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20210419BHJP
   G01N 21/77 20060101ALI20210419BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20210419BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G01N31/22 122
   G01N21/78 Z
   G01N21/77 C
   G01N31/22 124
   G01N31/00 A
   C09B57/10
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2020-169865(P2020-169865)
(22)【出願日】2020年10月7日
(62)【分割の表示】特願2020-57558(P2020-57558)の分割
【原出願日】2020年3月27日
(65)【公開番号】特開2021-36235(P2021-36235A)
(43)【公開日】2021年3月4日
【審査請求日】2020年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-68139(P2019-68139)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼脇 亮次
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬洋
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−156853(JP,A)
【文献】 特開2008−209392(JP,A)
【文献】 特開昭62−064950(JP,A)
【文献】 特開昭58−153166(JP,A)
【文献】 特開平10−048193(JP,A)
【文献】 特開2000−088838(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/024881(WO,A1)
【文献】 特開2008−309722(JP,A)
【文献】 特開平09−105743(JP,A)
【文献】 特開2015−031562(JP,A)
【文献】 特開2010−078399(JP,A)
【文献】 特開2008−026269(JP,A)
【文献】 尾家慶彦 ほか,アスベストの有無を、簡単に、短時間で探知できるオンサイト技術,OHM,2007年10月12日,Vol.94,No.10,P.12-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00 − 31/22
G01N 21/00 − 21/958
G01N 33/48 − 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)、下記式(II)、下記式(III)、下記式(IV)および下記式(V)によって示される化合物の塩からなる群から選択される何れか1つ以上を含み、
キレート剤をさらに含む、アスベスト検出剤;
【化1】
[式(I)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]、
【化2】
[式(II)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはイミノ基である]、
【化3】
[式(III)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【化4】
[式(IV)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【化5】
[式(V)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]。
【請求項2】
前記キレート剤は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸系の化合物およびアミノカルボン酸系の化合物からなる群から選択される何れか1つ以上の化合物またはその塩である、請求項1に記載のアスベスト検出剤。
【請求項3】
前記キレート剤は、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸および1,3−プロパンジアミン四酢酸からなる群から選択される何れか1つ以上の化合物またはその塩である、請求項1または2に記載のアスベスト検出剤。
【請求項4】
請求項1からの何れか1項に記載のアスベスト検出剤を含む、アスベスト検出キット。
【請求項5】
請求項1からの何れか1項に記載のアスベスト検出剤と、被験物質とを接触する工程と、
前記アスベスト検出剤が発色したか否かを判定する工程と、を含む、アスベスト検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを簡便に検出するためのアスベスト検出剤および該アスベスト検出剤を含むアスベスト検出キットに関する。また、本発明は、アスベストの簡便な検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(別名:石綿)は天然鉱物繊維であり、熱および摩擦に強く、安価であることから建材、船舶、および鉄道車両等の多くの産業資材に用いられてきた。しかしながら、アスベストはその特性から大気中へ飛散しやすく、飛散したアスベストを吸入することで肺がんおよび中皮腫といった疾患の原因となることが明らかとなっている。そのため日本では、1975年頃からアスベストの使用に関する規制が強化され、2004年にはアスベストは原則使用禁止となった。なお、ここでいうアスベストとは、国際労働機関(ILO)によって定義される蛇紋石または角閃石グループに属する繊維状の無機けい酸塩鉱物を示す。
【0003】
現在、アスベストを使用した建造物等を解体または除去する際には、大気汚染防止法および石綿障害予防規則等の法令により、解体工事の届出およびアスベスト有無についての事前調査の実施等が義務付けられている。
【0004】
しかしながら、石綿除去作業時のアスベスト飛散事例および自然災害発生現場でのアスベスト飛散事例等が未だに報告されている。このような飛散事例が発生した場合、現場作業員の安全性の確保およびアスベストの周囲への飛散を未然に防止するために、建材等に含まれるアスベストを即座に調査する方法が必要となる。
【0005】
前記のような背景の下、これまでにもアスベスト検出方法は開発されており、例えば特許文献1には、アスベストに含まれるマグネシウムイオンの呈色を指標としたアスベスト検出方法が開示されている。
【0006】
ところで、アニリン骨格を有するジエチルパラフェニレンジアミンは、従来、生活排水中に含まれる残留塩素の有無を判定するために用いることが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2010−78399号」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2004−85453号」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された方法は、該方法は建材等からマグネシウムイオンを抽出および精製するために、濾過および洗浄といった前処理工程が必要となり、操作が煩雑であるとともに、アスベスト検出に要する時間が長いという問題点がある。
【0009】
上述の問題点を解決するために、本発明の一態様は、アスベストの呈色を指標とした、簡便なアスベスト検出方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアスベスト検出剤は、下記式(VI)によって示される化合物の塩からなる群から選択される何れか1つ以上を含み、キレート剤をさらに含む;
【0011】
【化1】
【0012】
[式(VI)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アミノ基、ヒドロキシ基、または有機基である]。
【0013】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアスベスト検出剤は、下記式(I)、下記式(II)、下記式(III)、下記式(IV)および下記式(V)によって示される化合物の塩からなる群から選択される何れか1つ以上を含み、キレート剤をさらに含む;
【0014】
【化2】
【0015】
[式(I)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]、
【0016】
【化3】
【0017】
[式(II)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはイミノ基である]、
【0018】
【化4】
【0019】
[式(III)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【0020】
【化5】
【0021】
[式(IV)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]。
【0022】
【化6】
【0023】
[式(V)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]。
【0024】
本発明の一態様に係るアスベスト検出剤は、前記キレート剤は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸系の化合物およびアミノカルボン酸系の化合物からなる群から選択される何れか1つ以上の化合物またはその塩であってもよい。
【0025】
本発明の一態様に係るアスベスト検出剤は、前記キレート剤は、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸および1,3−プロパンジアミン四酢酸からなる群から選択される何れか1つ以上の化合物またはその塩であってもよい。
【0026】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアスベスト検出キットは、前記のいずれかの態様に係るアスベスト検出剤を含む。
【0027】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアスベスト検出方法は、前記のいずれかの態様に係るアスベスト検出剤と、被験物質とを接触する工程と、前記アスベスト検出剤が発色したか否かを判定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、呈色によってアスベストを検出することができる、簡便なアスベスト検出方法等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るアスベスト検出剤の発色を示す図である。
図2】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図3】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図4】本発明の一実施例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図5】本発明の一実施例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図6】本発明の比較例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図7】本発明の一実施例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図8】本発明の比較例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図9】本発明の一実施例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図10】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図11】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図12】本発明の一実施例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図13】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図14】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図15】本発明の一実施例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図16】本発明の一実施例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図17】本発明の一実施例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図18】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図19】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
図20】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出剤の組成を示す図である。
図21】本発明の一実施例および比較例に係るアスベスト検出方法による判定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。
【0031】
〔1.アスベスト検出剤〕
本実施形態に係るアスベスト検出剤は、少なくとも下記に示す発色剤を含むものであればよいが、さらにキレート剤、有機溶媒およびpH緩衝剤を含んでいてもよい。後述するように、アスベスト検出剤とアスベストを含む被験物質とを接触させ、アスベスト検出剤の発色の有無を確認することによって被験物質中のアスベストの有無を判定できる。
【0032】
なお、該アスベスト検出剤の状態は、水等の適当な溶媒等に発色剤等を溶解した溶液状であっても、溶媒に溶解する前の固体混合物の状態であってもよい。
【0033】
(発色剤)
本実施形態に係る発色剤は、下記式(VI)によって示される化合物の塩からなる群から選択される何れか1つ以上の発色剤である;
【0034】
【化7】
【0035】
[式(VI)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アミノ基、ヒドロキシ基、または有機基である]。
【0036】
本実施形態に係る発色剤はアニリン骨格を有しており、アスベストとの接触によって発色する性質を有する。したがって、これらの発色剤を含むアスベスト検出剤によれば、建材等の被験物質にアスベストが含まれているか否かを判定する際に有用である。以下、建材等の被験物質にアスベストが含まれているか否かを判定することを「アスベスト検出」と称する。
【0037】
なお、上述のようなアニリン骨格を有する発色剤として、従来、ジエチルパラフェニレンジアミンが生活排水中に含まれる残留塩素の有無を判定するために用いられていた(例えば、特許文献2)。しかしながら、アニリン骨格を有する発色剤が、アスベストとは反応するものの、アスベストの代替物(例えば、ロックウール)とは反応しない、アスベスト選択性に優れた発色剤であることは、従来知られていなかった新たな知見である。本発明の発明者らは鋭意研究の結果、アニリン骨格を有する発色剤が、アスベスト検出に有用であることを独自に発見し、本発明の完成に至ったものである。
【0038】
本実施形態に係る発色剤は、分子構造内に第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミンを少なくとも1官能基以上有している芳香族化合物を含む。前記式(VI)中におけるRからRはそれぞれ独立に、水素、アミノ基、ヒドロキシ基または有機基である。RからRにおける有機基としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基およびアニリノ基等が挙げられる。RからRにおけるアルキル基は、炭素数4以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。
【0039】
また、RからRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
また、RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、RからRにおけるアルコキシ基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるアルコキシ基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基およびエトキシ基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、RからRにおけるアルキルアミノ基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキルアミノ基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるアルキルアミノ基は、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基およびジエチルアミノ基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
より具体的には、本実施形態に係る発色剤は、下記式(I)、下記式(II)、下記式(III)、下記式(IV)および下記式(V)によって示される化合物の塩からなる群から選択される何れか1つ以上の発色剤である;
【0044】
【化8】
【0045】
[式(I)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]、
【0046】
【化9】
【0047】
[式(II)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはイミノ基である]、
【0048】
【化10】
【0049】
[式(III)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【0050】
【化11】
【0051】
[式(IV)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【0052】
【化12】
【0053】
[式(V)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]。
【0054】
ここで、前記式(I)中におけるRからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である。RからRにおけるアルキル基は、炭素数4以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。
【0055】
また、RからRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
また、RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
上記式(I)により表される化合物としては、例えばパラアニシジン(4−メトキシアニリン)、パラフェネチジン(4−エトキシアニリン)、N−メチル−4−メトキシアニリン、N−メチル−4−エトキシアニリン、N−エチル−4−メトキシアニリン、N−エチル−4−エトキシアニリン、N,N−ジメチル−4−メトキシアニリン、N,N−ジメチル−4−エトキシアニリン、N,N−ジエチル−4−メトキシアニリン、N,N−ジエチル−4−エトキシアニリン、4−ヒドロキシ−N−メチルアニリン、4−ヒドロキシ−N−エチルアニリン、4−ヒドロキシ−N,N−ジメチルアニリン、4−ヒドロキシ−N,N−ジエチルアニリン、4−アミノフェノキシエタノール、N,N−ビス(β−ヒドロキシメチル)−4−メトキシアニリン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−4−メトキシアニリン、N,N−ビス(β−ヒドロキシメチル)−4−エトキシアニリン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−4−エトキシアニリン、N−ヒドロキシエチル−4−メトキシアニリン、N−ヒドロキシメチル−4−メトキシアニリン、N−ヒドロキシエチル−4−エトキシアニリンおよびN−ヒドロキシメチル−4−エトキシアニリン等が挙げられ、この中でもパラアニシジンであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、前記式(II)中におけるRからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはイミノ基である。RからRにおけるアルキル基は、炭素数4以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。また、RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
また、RからRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記式(II)により表される化合物としては、例えばパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,4−パラフェニレンジアミン、N,N,N,N−テトラエチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジプロピルフェニレンジアミン、2−メトキシ−1,4−パラフェニレンジアミン、2−エトキシ−1,4−フェニレンジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシメチル)−N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシメチル)−N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N,N,N−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N,N−テトラキス(β−ヒドロキシメチル)−1,4−フェニレンジアミン、4−アミノ−N−メチルアニリン、4−アミノ−N−エチルアニリン、4−アミノ−2−メトキシ−N−メチルアニリン、4−アミノ−2−エトキシ−N−メチルアニリン、4−アミノ−2−メトキシ−N−エチルアニリンおよび4−アミノ−2−エトキシ−N−エチルアニリン等が挙げられ、この中でもN,N−ジエチルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミンおよびN,N,N,N−テトラメチル−1,4−パラフェニレンジアミンであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、前記式(III)中におけるRからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である。RからRにおけるアルキル基は、炭素数4以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。
【0062】
また、RからRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
また、RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
また、RからRにおけるアルコキシ基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるアルコキシ基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基およびエトキシ基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記式(III)により表される化合物としては、例えば4,4−ジアミノビフェニル(ベンジジン)、3,3−ジメチルベンジジン、ジメトキシベンジジン、オルトジメトキシベンジジン、メタジメトキシベンジジン、オルトジエトキシベンジジン、メタジエトキシベンジジン、2,2‘−ジアミノベンジジン、3,3−ジアミノベンジジン、および3,3−ジエチルベンジジン等が挙げられ、この中でも4,4−ジアミノビフェニル(ベンジジン)および3,3−ジメチルベンジジンであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0066】
また、前記式(IV)中におけるRからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である。RからRにおけるアルキル基は、炭素数4以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。
【0067】
また、RからRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0068】
また、RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0069】
また、RからRにおけるアルコキシ基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるアルコキシ基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基およびエトキシ基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記式(IV)により表される化合物としては、例えば4,4−ジアミノジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−2,2−ジメチルジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−3,3−ジメチルジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−2,2−ジエチルジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−3,3−ジエチルジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−2,2−ジメトキシジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−3,3−ジメトキシフェニルアミン、4,4−ジアミノ−2,2−ジエトキシジフェニルアミン、4,4−ジアミノ−3,3−ジエトキシジフェニルアミンおよびジアミノジフェニルアミン等が挙げられ、この中でも4,4−ジアミノジフェニルアミンであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0071】
また、前記式(V)中におけるRからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である。RからRにおけるアルキル基は、炭素数4以下であることが好ましい。RからRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。
【0072】
また、RからRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
また、RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数2以下であることが好ましい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、2以下であってもよく、1であってもよい。RからRにおけるヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0074】
上記式(V)により表される化合物としては、例えば、2,4−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2,4−ジアミノフェノキシメタノール、4−ジアミノメトキシベンゼン、2,4−ジアミノエトキシベンゼン、2,4−ジアミノメチルフェノール、2.4−ジアミノエチルフェノール、2,4−ビス(β−ヒドロキシメチル)フェノール、2,4−ビス(β−ヒドロキシエチル)フェノール、N,N,N,N−テトラメチル−2,4−ジアミノフェノール、N,N,N,N−テトラエチル−2,4−ジアミノフェノール、N,N,N,N−テトラキス(β−ヒドキシメチル)−2,4−ジアミノフェノールおよびN,N,N,N−テトラキス(β−ヒドキシエチル)−2,4−ジアミノフェノール等が挙げられ、この中でも2,4−ジアミノフェノールおよび2,4−ジアミノフェノキシエタノールであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0075】
前記式(I)、前記式(II)、前記式(III)、前記式(IV)または前記式(V)にて示される化合物の塩は、特に限定されず、それぞれ独立にいかなる塩であってもよい。該塩は、化合物の親水性を向上させる塩であることが好ましい。このような塩であれば、発色剤が水に溶解しやすくなる。したがって、該発色剤の水溶液を含むアスベスト検出剤を、アスベストを含む被験物質に接触させることにより、効率的に強い発色を得ることができる。
【0076】
該塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルコン酸塩、スルホン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、酪酸塩、過塩素酸塩、ほう酸塩およびケイ酸塩等が挙げられ、この中でも塩酸塩および硫酸塩が特に好ましいが、これに限定されるものではない。
【0077】
アスベスト検出剤に含まれる発色剤の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば0.005質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0078】
発色剤の濃度が0.005質量%以上であれば、アスベスト検出剤とアスベストを接触させることにより発色が得られる。また、発色剤の濃度が5質量%以下であれば、アスベスト検出剤自体の非特異的な発色を抑制できる。「非特異的な発色」の意味については後述する。
【0079】
(キレート剤)
本実施形態に係るアスベスト検出剤には、キレート剤が含まれていてもよい。キレート剤は、アスベスト検出剤におけるアスベストに対する発色の特異性を高める成分である。
【0080】
前記のアスベスト検出剤は、アスベストと接触した場合は発色するが、アスベストの代替品の一例であるロックウール等と接触した場合は発色しないというように、アスベスト特異的な発色を示すことが望まれる。しかしながら、前記のアスベスト検出剤は、市場に流通する一部のロックウールとの接触によっても発色するという、非特異的な発色を示す場合がある。
【0081】
ロックウールは、原料として製鋼工程において発生する鉄鋼スラグが用いられる。鉄鋼スラグの主成分は酸化カルシウムおよび二酸化ケイ素であるが、金属成分も含まれる。本発明の発明者らは、ロックウールに含まれる金属成分または酸化カルシウム等が上述の発色剤と反応していると考え、アスベスト検出剤に金属成分をマスキングするためのキレート剤を加えることで、上述の非特異的な発色をさらに抑制できることを見出した。
【0082】
前記のキレート剤は、特に限定されることなく、例えば脂肪族ヒドロキシカルボン酸系のキレート剤およびアミノカルボン酸系のキレート剤等であることが好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸系のキレート剤としては、例えばリンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、アミノカルボン酸系のキレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−四酢酸(CyDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)および1,3−プロパンジアミン四酢酸(PDTA)からなる群から選択される化合物またはその塩等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記の塩は、特に限定されず、あらゆる塩であり得る。該塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、およびエタノールアミン塩等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0084】
また、アスベスト検出剤に含まれる前記のキレート剤の濃度は、特に限定されるものではないが、例えばCyDTAまたはEDDSをキレート剤として使用する場合、0.00001質量%以上0.05質量%以下であることが好ましく、0.00001質量%以上0.01質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以上0.01質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上0.01質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上0.0075質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上0.005質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
また、例えばEGTAをキレート剤として使用する場合、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。キレート剤の濃度が前記範囲内であれば、ロックウール等との接触によるアスベスト検出剤の発色を抑制でき、不溶化したキレート剤によるアスベスト検出剤の発色阻害を起こしにくい。
【0086】
このように、本実施形態に係るアスベスト検出剤に前記のキレート剤が含まれていれば、アスベストとの接触による発色は阻害せず、ロックウール等との接触による非特異的な発色をさらに抑制できる。また、建材等の被験物質にカルシウムイオンなどの金属成分が含まれていた場合にも、該金属成分による、アスベストに対するアスベスト検出剤の発色阻害を抑制できる。
【0087】
(有機溶媒)
本実施形態に係るアスベスト検出剤は、エーテル基を有する有機溶媒をさらに含んでいてもよい。このような有機溶媒としては、グリコール系またはグリコールエーテル系の有機溶媒が好ましいが、これに限定されるものではない。より具体的には、前記の有機溶媒は、下記式(VII)および下記式(VIII)によって示される化合物からなる群から選択される何れか1つ以上であってもよい;
【0088】
【化13】
【0089】
[式(VII)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素またはアルキル基であり、
nは1以上3以下である]、
【0090】
【化14】
【0091】
[式(VIII)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素またはアルキル基であり、
nは1以上3以下である]。
【0092】
このような有機溶媒は、前記の発色剤の分散性を向上させる効果がある。それ故に、建材等の被験物質の表面に発色剤が吸着してしまった場合でも、前記の有機溶媒の作用によって発色剤が再溶解しやすくなる。それ故に、前記の吸着によって発色剤の発色が阻害されてしまう現象を抑制できるため、アスベスト検出剤に前記の有機溶媒が含まれることで、アスベスト検出剤のアスベストに対する発色感度の向上が期待できる。したがって前記の有機溶媒は、感度向上剤としてアスベスト検出剤に含まれることが好ましい。
【0093】
ここで、前記式(VII)および前記式(VIII)中のそれぞれにおけるRおよびRは、それぞれ独立に、水素またはアルキル基である。RおよびRにおけるアルキル基は、炭素数8以下であることが好ましい。これらのRおよびRにおけるアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、8以下であってもよく、7以下であってもよく、6以下であってもよく、5以下であってもよく、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1であってもよい。
【0094】
また、RおよびRにおけるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基、n−ペンチル基およびn−ヘキシル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、分岐鎖アルキル基としては例えば、iso−プロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0095】
また、前記式(VII)および前記式(VIII)中におけるnは、それぞれ独立に、1以上3以下である。
【0096】
前記式(VII)により表される化合物は、例えば、ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)、ヘキシルジグリコール(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)、エチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールブチルエチルエーテル、エチレングリコールブチルプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルメチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルプロピルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルブチルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル等が挙げられ、中でもブチルグリコールまたはヘキシルジグリコールであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0097】
前記式(VIII)により表される化合物は、例えば、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエチルエーテル、プロピレングリコールブチルプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルメチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルブチルエーテル、ジプロピレングリコールジヘキシルエーテル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0098】
アスベスト検出剤に含まれる前記の有機溶媒の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0099】
(酸化防止剤)
本実施形態に係るアスベスト検出剤は、酸化防止剤をさらに含んでいてもよい。酸化防止剤は、建材等の被験物質に含まれているアスベスト以外の物質との反応による非特異的な発色を抑制する成分である。
【0100】
前記のアスベスト検出剤は、アスベストと接触した場合のみ発色する、アスベスト特異的な発色を示すことが望まれる。しかしながら、上述の発色剤はアスベストと反応することで発色する一方、残留塩素等の酸化性物質または溶存酸素等と反応することでも発色する場合がある。本発明の発明者らは、発色剤のアスベストとの反応による発色と、酸化性物質または溶存酸素等との反応による発色とは、異なる種類の化学反応によって発色すると考えた。そして、発色剤と酸化性物質または溶存酸素等との反応は、酸化反応による発色であり、この反応を抑制することで、発色剤がアスベスト以外の物質と反応することによる非特異的な発色を抑制できることを見出した。
【0101】
アスベスト検出剤に前記の酸化防止剤が含まれていれば、アスベスト検出剤と酸化性物質または溶存酸素等とが接触した場合でも、酸化防止剤が発色剤の非特異的な発色を抑制する。一方で、酸化防止剤が含まれるアスベスト検出剤とアスベストとが接触した場合でも、酸化防止剤は発色剤とアスベストとの反応による発色を阻害しない。このように、酸化防止剤は発色剤の酸化反応による非特異的な発色のみを抑制できるため、酸化防止剤を含むアスベスト検出剤によれば、感度よくアスベストを検出することができる。
【0102】
前記の酸化防止剤は、水溶性の酸化防止剤であることが好ましい。酸化防止剤は、水溶性の酸化防止剤であれば特に限定されることなく、例えば無機系または有機系の酸化防止剤が考えられる。無機系の酸化防止剤としては、例えば亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム(ピロ亜硫酸カリウム)、二亜硫酸ナトリウム(ピロ亜硫酸ナトリウム)等が挙げられ、この中でも亜硫酸ナトリウムおよび二亜硫酸ナトリウムが特に好ましいが、これに限定されるものではない。また、有機系の酸化防止剤としては、例えばL−アスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられ、この中でもL−アスコルビン酸およびエリソルビン酸が特に好ましいが、これに限定されるものではない。
【0103】
また、アスベスト検出剤に含まれる前記の酸化防止剤の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば亜硫酸カリウムまたは亜硫酸ナトリウムを酸化防止剤として使用する場合、0.0005質量%以上0.005質量%以下であることが好ましく、0.0005質量%以上0.001質量%以下であることがより好ましい。また、例えば二亜硫酸カリウムまたは二亜硫酸ナトリウムを酸化防止剤として使用する場合、0.0001質量%以上0.005質量%以下であることが好ましく、0.0001質量%以上0.001質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以上0.0005質量%以下であることがより好ましい。また、例えばL−アスコルビン酸、エリソルビン酸またはエリソルビン酸ナトリウム等を酸化防止剤として使用する場合、0.00001質量%以上0.005質量%以下であることが好ましく、0.00001質量%以上0.001質量%以下であることがより好ましく、0.00001質量%以上0.0005質量%以下であることがより好ましく、0.00001質量%以上0.0001質量%以下であることがより好ましく、0.00001質量%以上0.00005質量%以下であることがより好ましい。
【0104】
(pH緩衝剤)
本実施形態に係るアスベスト検出剤は、pH9以下に緩衝能を有するpH緩衝剤をさらに含んでいてもよい。建材等の被験物質は多様な種類があり、中には石灰石等の高pHの成分が含まれているものがある。アスベスト検出剤と被験物質とを接触したとき、被験物質にこのような高pHの成分が含まれていた場合には、アスベスト検出剤のpHが上昇する。アスベスト検出剤におけるpHの上昇は、発色剤の発色阻害の原因となる。特に、アスベスト検出剤のpHが9を超えた場合には、前記のキレート剤による金属成分のマスキング効果よりも、水酸化カルシウム等の形成が優先されてしまい、前記の発色阻害が起こりやすい。
【0105】
アスベスト検出剤に前記のpH緩衝剤が含まれていれば、アスベスト検出剤と被験物質とを接触した場合に、アスベスト検出剤のpHが上昇しにくい。したがって、pHの上昇による発色の阻害を抑制できるため、アスベスト検出剤によって感度よくアスベストを検出することができる。
【0106】
前記のpH緩衝剤は、pH9以下に緩衝能を有することが好ましく、pH8.5以下に緩衝能を有することがより好ましく、pH8以下に緩衝能を有することがより好ましく、pH7.5以下に緩衝能を有することがより好ましい。また、pH7以下に緩衝能を有していてもよく、pH6.5以下に緩衝能を有していてもよく、pH6以下に緩衝能を有していてもよい。
【0107】
前記のpH緩衝剤は、通常、pH緩衝剤を水等に溶解したpH緩衝液として利用される。pH緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸カリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム緩衝液、EDTA緩衝液、炭酸−重炭酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(Tris緩衝液)、TE(Tris−EDTA)緩衝液、TAE(Tris−酢酸−EDTA)緩衝液、フタル酸緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液およびほう酸ナトリウム緩衝液等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0108】
また、アスベスト検出剤における前記のpH緩衝液の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、アスベスト検出剤が含有するpH緩衝剤の終濃度が1mM(ミリモル濃度)以上6mM以下となることが好ましく、1.5mM以上6mM以下となることがより好ましく、1.5mM以上5.5mM以下となることがより好ましく、2mM以上5.5mM以下となることがより好ましく、2mM以上5mM以下となることがより好ましく、2mM以上4.5mM以下となることがより好ましく、2mM以上4mM以下となることがより好ましく、2mM以上3.5mM以下となることがより好ましく、2mM以上3mM以下となることがより好ましい。
【0109】
(アスベストの種類)
本実施形態に係るアスベスト検出剤を用いて検出されるアスベストとは、国際労働機関(ILO)によって定義される蛇紋石または角閃石グループに属する繊維状の無機けい酸塩鉱物を示す。該アスベストの例としては、クリソタイル(白石綿;MgSi(OH))、クロシドライト(青石綿;Na(Fe2+Fe3+Si22(OH)))、アモサイト(茶石綿;MgSi22(OH))、アンソフィライト(直閃石綿;MgSi22(OH))、トレモライト(透角閃石綿;Ca(Mg/Fe)Si22(OH)、Mg/(Mg+Fe)=1.0−0.9)およびアクチノライト(陽起石綿;Ca(Mg,Fe)Si22(OH)、Mg/(Mg+Fe)=0.5−0.9)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。被験物質に含まれるアスベストは、これらのうちの少なくとも1種以上であってもよく、より好ましくはクリソタイル、クロシドライトおよびアモサイトのうちの少なくとも1種以上であるが、これに限定されるものではない。
【0110】
また被験物質中には、上述のようなアスベストが少なくとも0.1質量%以上含まれていれば、本実施形態に係るアスベスト検出剤を用いて検出することができる。被験物質中に含まれるアスベストが少ない場合(例えば、1.0質量%未満)、アスベスト検出剤は、発色剤に加えて、キレート剤、有機溶媒、酸化防止剤およびpH緩衝剤の少なくともいずれか1つ以上を含むことがより好ましい。これにより、アスベスト検出剤の、アスベスト特異的な発色と、アスベスト非特異的な発色とを明確に区別することが容易となる。
【0111】
〔2.アスベスト検出キット〕
本実施形態に係るアスベスト検出キットには、少なくとも上述のアスベスト検出剤が含まれていればよい。さらにキレート剤、有機溶媒、およびpH緩衝剤(またはpH緩衝液)が含まれていてもよい。該アスベスト検出用キットが上述の発色剤、キレート剤、有機溶媒、およびpH緩衝剤(またはpH緩衝液)等の複数の構成からなる場合、上記各構成はあらかじめ混合された状態で(つまり一体として)該アスベスト検出キットに含まれていてもよいが、それぞれ別々の状態で(つまり別体として)該アスベスト検出キットに含まれていてもよい。上記構成が別々の状態で該アスベスト検出キットに含まれている態様の場合は、アスベスト検出を行う毎に、アスベスト検出剤を調製する(つまり用時調製する)ことになるが、アスベスト検出剤の安定性の観点からは、用時調製する態様の方が好ましい場合がある。
【0112】
また、該アスベスト検出キットはさらに、その他の構成を備えていてもよい。このような構成として例えば、溶媒としての水、アスベスト検出剤を調製するための調製用容器、被験物質をアスベスト検出剤に浸漬するための浸漬用容器、キットの取扱説明書、発色見本、および被験物質にアスベスト検出剤を噴霧するためのスプレー等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0113】
〔3.アスベスト検出方法〕
本実施形態に係るアスベスト検出方法は、上述の発色剤を含むアスベスト検出剤と、被験物質とを接触する工程と、前記アスベスト検出剤が発色したか否かを判定する工程と、を含む。
【0114】
アスベスト検出剤と被験物質とを接触させる方法としては、例えば、被験物質のアスベスト検出剤への浸漬、被験物質へのアスベスト検出剤の滴下または噴霧等が挙げられるが、これに限られず、いかなる方法による接触であってもよい。また、被験物質は必要に応じて、判定のために適切な大きさの欠片を得られるよう粉砕されてもよい。また、前記の接触前に被験物質が洗浄等されてもよいが、必須ではない。
【0115】
被験物質と接触したアスベスト検出剤は、発色しているか否かが判定される。該判定は、人の目視によるものであってもよく、画像解析装置等を用いた色調解析によるものであってもよく、光分析装置等を用いた波長測定によるものであってもよく、その他のいかなる方法によるものであってもよい。図1は、本実施形態に係るアスベスト検出方法(浸漬式)によって、アスベスト(被験物質)およびロックウール(対照物質)を呈色させた結果を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るアスベスト検出剤によれば、人の目視によって明確に発色の有無を判定することができる。
【0116】
被験物質と接触したアスベスト検出剤が発色しているか否かの判定は、該接触後数分以内に行ってよい。例えば、該判定を行うのは、前記の接触後1分以上5分以内の時点であってもよく、1分以上4分以内の時点であってもよく、2分以上4分以内の時点であってもよく、3分の時点であってもよい。前記の判定が前記の接触後1分以上後の時点で行われることにより、アスベスト検出剤が十分に発色できる。また、前記の判定が前記の接触後5分以内の時点で行われることにより、アスベスト検出剤の非特異的な発色による判定への影響を低減できる。
【0117】
このように、本実施形態に係るアスベスト検出方法によれば、アスベスト検出剤と被験物質とを接触させ、発色の有無を判定するだけの簡便な工程によって、5分以内という非常に短い時間でアスベスト検出を完了できる。したがって、アスベスト検出を行う判定者は、多くの被験物質に対して効率的にアスベスト検出を行っていくことができる。
【0118】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るアスベスト検出剤は、下記式(I)、下記式(II)、下記式(III)、下記式(IV)および下記式(V)によって示される化合物の塩からなる群から選択される何れか1つ以上を含む;
【0119】
【化15】
【0120】
[式(I)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]、
【0121】
【化16】
[式(II)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはイミノ基である]、
【0122】
【化17】
【0123】
[式(III)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【0124】
【化18】
【0125】
[式(IV)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基である]、
【0126】
【化19】
【0127】
[式(V)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である]。
【0128】
本発明の態様2に係るアスベスト検出剤は、前記態様1において、前記式(I)によって示される化合物は、前記式(I)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、炭素数4以下のアルキル基または炭素数2以下のヒドロキシアルキル基であり、前記式(II)によって示される化合物は、前記式(II)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、炭素数4以下のアルキル基、炭素数2以下のヒドロキシアルキル基またはイミノ基であり、前記式(III)によって示される化合物は、前記式(III)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、炭素数4以下のアルキル基、アミノ基、炭素数2以下のヒドロキシアルキル基または炭素数2以下のアルコキシ基であり、前記式(IV)によって示される化合物は、前記式(IV)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、炭素数4以下のアルキル基、アミノ基、炭素数2以下のヒドロキシアルキル基または炭素数2以下のアルコキシ基であり、前記式(V)によって示される化合物は、前記式(V)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、炭素数4以下のアルキル基または炭素数2以下のヒドロキシアルキル基であってもよい。
【0129】
本発明の態様3に係るアスベスト検出剤は、前記態様1または2において、前記式(I)によって示される化合物は、前記式(I)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、直鎖アルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、前記式(II)によって示される化合物は、前記式(II)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、直鎖アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはイミノ基であり、前記式(III)によって示される化合物は、前記式(III)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、直鎖アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基であり、前記式(IV)によって示される化合物は、前記式(IV)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、直鎖アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシ基であり、前記式(V)によって示される化合物は、前記式(V)中、RからRはそれぞれ独立に、水素、直鎖アルキル基またはヒドロキシアルキル基であってもよい。
【0130】
本発明の態様4に係るアスベスト検出剤は、前記態様1から3において、キレート剤をさらに含んでいてもよい。
【0131】
本発明の態様5に係るアスベスト検出剤は、前記態様4において、前記キレート剤は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸系の化合物およびアミノカルボン酸系の化合物からなる群から選択される何れか1つ以上の化合物またはその塩であってもよい。
【0132】
本発明の態様6に係るアスベスト検出剤は、前記態様4または5において、前記キレート剤は、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸および1,3−プロパンジアミン四酢酸からなる群から選択される何れか1つ以上の化合物またはその塩であってもよい。
【0133】
本発明の態様7に係るアスベスト検出剤は、前記態様1から6において、エーテル基を有する有機溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0134】
本発明の態様8に係るアスベスト検出剤は、前記態様7において、前記有機溶媒は、グリコール系またはグリコールエーテル系の有機溶媒であってもよい。
【0135】
本発明の態様9に係るアスベスト検出剤は、前記態様7または8において、前記有機溶媒は、下記式(VII)および下記式(VIII)によって示される化合物からなる群から選択される何れか1つ以上であってもよい;
【0136】
【化20】
【0137】
[式(VII)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素またはアルキル基であり、nは1以上3以下である]、
【0138】
【化21】
【0139】
[式(VIII)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素またはアルキル基であり、nは1以上3以下である]。
【0140】
本発明の態様10に係るアスベスト検出剤は、前記態様1から9において、pH9以下に緩衝能を有する緩衝液をさらに含んでいてもよい。
【0141】
本発明の態様11に係るアスベスト検出剤は、前記態様1から10において、酸化防止剤をさらに含んでいてもよい。
【0142】
本発明の態様12に係るアスベスト検出剤は、前記態様11において、前記酸化防止剤は、水溶性の酸化防止剤であってもよい。
【0143】
本発明の態様13に係るアスベスト検出剤は、前記態様12において、前記酸化防止剤は、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、二亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸およびエリソルビン酸ナトリウムからなる群から選択される何れか1つ以上の化合物であってもよい。
【0144】
本発明の態様14に係るアスベスト検出キットは、前記態様1から13におけるアスベスト検出剤を含む。
【0145】
本発明の態様15に係るアスベスト検出方法は、前記態様1から13におけるアスベスト検出剤と、被験物質とを接触する工程と、前記アスベスト検出剤が発色したか否かを判定する工程と、を含む。
【0146】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0147】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0148】
〔発色剤の濃度〕
発色剤としてN,N−ジエチルパラフェニレンジアミンを用い、該発色剤を0.002質量%、0.005質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.05質量%、0.1質量%、または0.2質量%含む水溶液を調製した。得られた各水溶液にクリソタイルの断片を浸漬した結果、0.002質量%の水溶液では発色が得られなかったが、0.005質量%以上の水溶液では、クリソタイルと水溶液との反応に由来する発色が得られた。この結果は、被験材としてクロシドライトおよびアモサイトの断片を用いた場合でも同様であった。
【0149】
また、前記の発色剤を5質量%、10質量%、または20質量%含む水溶液を調製した結果、5質量%水溶液は発色剤自体に由来する非特異的な発色は見られなかったが、10質量%以上の水溶液では発色剤自体に由来する非特異的な発色が見られた。この結果から、本実施例におけるクリソタイルの検出における、アスベスト検出剤に含まれる発色剤の好ましい濃度は、0.005質量%以上5質量%以下であることが示された。
【0150】
〔アスベスト検出〕
(アスベスト検出剤の条件)
図2図21は、実施例1〜112または比較例1〜24に係る各アスベスト検出剤の成分組成、並びに、これらのアスベスト検出剤の発色時のpH、溶解性、および安定性を評価した結果を示す図である。ここで溶解性は、アスベスト検出剤の外観が、無色透明であれば「○」、マスキング剤の不溶化した粉末が若干残っている場合は「△」、明らかな不溶物、濁りまたは発色が見られる場合は「×」と評価した。なお、上述の溶解性が「△」または「×」となる場合でも、アスベストと発色剤とを接触させ、アスベストと発色剤との反応に由来する発色が目視により明確に確認できるならば、アスベスト検出剤としては有用である。
【0151】
また安定性は、実施例1〜36および比較例1〜13では、アスベスト検出剤について、アスベストを含まないベース被験材を浸漬して5分間無色透明のままである、または該ベース被験材に噴霧し、5分間外観に変化が認められない場合を「○」、それ以外の、アスベスト検出剤に発色が認められた場合を「×」と評価した。実施例37〜112および比較例14〜24では、アスベスト検出剤を調製した後、アスベスト検出剤の外観が略20分間無色透明を維持していた場合を「◎」、当該外観が略10分間無色透明を維持していた場合を「○」、当該外観が10分以上無色透明を維持していなかった場合(10分未満で発色が見られた場合)を「×」と評価した。
【0152】
また、図2図4図6図9図10図12図13図15図17図18および図20中の成分略称の詳細については、以下の通りである。なお、同図中、「アスベスト検出剤」を「組成物」、「キレート剤」を「マスキング剤」、「pH緩衝剤」を「緩衝剤」、「有機溶剤」を「感度向上剤」と表記する。
【0153】
実施例に係る発色剤については、以下の通りである;
DPD・SO4:N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン硫酸塩、
DPD・HCl:N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン塩酸塩、
DMD・HCl:N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン塩酸塩、
IDA:4,4−ジアミノジフェニルアミン硫酸塩(イミノジアニリン)、
OT:3,3−ジメチルベンジジン二塩酸塩(オルトトリジン)、
p−Az:パラアニシジン塩酸塩、
TPD:N,N,N,N−テトラメチルパラフェニレンジアミン塩酸塩、
DMBz:ジメトキシベンジジン二塩酸塩、
DPD・OH:N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、
DAP:2,4−ジアミノフェノール二塩酸塩、
DAPE:2,4−ジアミノフェノキシエタノール二塩酸塩。
【0154】
また、比較例に係る発色剤については、以下の通りである;
p−AP:パラアミノフェノール、
DPD:N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン(無塩)、
p−Tz:パラトルイジン塩酸塩、
SAT−3:N,N'−ビス(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)トリジン二ナトリウム・四水和物。
【0155】
実施例に係るマスキング剤については、以下の通りである;
EGTA:グリコールエーテルジアミン四酢酸、
CyDTA:トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−四酢酸・一水和物、
EDDS:エチレンジアミン−N,N'−ジコハク酸、
EDTA:エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム塩、
TTHA:トリエチレンテトラミン−N,N,N',N'',N''',N''',−六酢酸。
【0156】
比較例に係る酸化防止剤については、以下の通りである;
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン。
【0157】
なお、pH緩衝液については、リン酸緩衝液およびクエン酸カリウム緩衝液のいずれも10mMのモル濃度のものを用いた。
【0158】
(アスベスト検出方法)
図2図3図9図11に示すように、上述の実施例1〜11、37〜53、比較例1〜7および14〜16に係るアスベスト検出剤を、アスベストであるクリソタイル、クロシドライトもしくはアモサイト、またはアスベスト代替物質であるロックウールの繊維と接触し、接触後3分の時点における発色の有無を評価した。また、前記の接触は浸漬式または噴霧式により実施した。
【0159】
また、図4図8図12図14に示すように、建材中に含まれるアスベストの検出感度を試験するために、上述の実施例12〜36、54〜72、比較例8〜13および17〜19に係るアスベスト検出剤については、アスベストであるクリソタイル、クロシドライト、もしくはアモサイト、またはアスベスト代替物質であるロックウールが1.0質量%含まれた被験材0.1gと接触し、接触後3分の時点における発色の有無を評価した。また、前記の接触は浸漬式または噴霧式により実施した。
【0160】
また、図15図21に示すように、建材中に含まれるアスベストの検出感度を試験するために、上述の実施例73〜112および比較例20〜24に係るアスベスト検出剤については、アスベストであるクリソタイル、クロシドライト、もしくはアモサイト、またはアスベスト代替物質であるロックウールが0.1質量%含まれた被験材0.1gと接触し、接触後3分の時点における発色の有無を評価した。また、前記の接触は浸漬式または噴霧式により実施した。
【0161】
浸漬式では、前記の繊維または被験材を各アスベスト検出剤10mLに浸漬し、3分後の時点においてアスベストと発色剤との反応に由来する発色の有無を目視により判定した。また噴霧式では、前記の繊維または被験材に対して各アスベスト検出剤をミスト状にして噴霧し、3分後の時点においてアスベストと発色剤との反応に由来する発色の有無を目視により判定した。
【0162】
浸漬式および噴霧式のいずれの場合でも、結果の評価は、アスベストと発色剤との反応に由来する発色が目視により確認された場合は「○」、該発色が目視により確認されたが、発色がわずかにしか得られなかった場合は「△」、該発色が目視により確認されたが、マスキング剤由来の粉末もまた目視により確認された場合は「●」、該発色が目視により確認されなかった場合は「×」とした。
【0163】
また、被験材としてはフレキシブルボード、サイディング材または石膏ボードを用いた。フレキシブルボードまたはサイディング材は、非特異的な発色の原因となる金属成分(カルシウムイオン等)が多く含まれており、アスベスト検出が困難と考えられる被験材である。
【0164】
(アスベスト検出結果)
図3図9および図10に示すように、本発明の一実施例に係る種々の発色剤を含む実施例1〜11および37〜53について、いずれの方法および繊維でも、アスベストに対する特異的な発色が得られた。一方、本発明の範囲に含まれない発色剤を含む比較例1〜4については、アスベストに対する発色が得られなかった。
【0165】
発色剤の濃度については、比較例5に示すように、0.01質量%以下ではアスベストに対する発色が得られなかった。また比較例6および7に示すように、発色剤の濃度が10質量%以上である場合には、発色剤自体が非特異的に発色してしまうため、アスベストに対する特異的な発色が得られなかった。一方、実施例1〜4に示すように、発色剤の濃度が0.1質量%以上2質量%以下であれば、アスベストに対する特異的な発色が良好に得られた。
【0166】
対して、DPD・OHを発色剤として用いた場合、実施例37〜39で示すように、発色剤の濃度が0.2質量%の場合だけでなく、0.01質量%および0.005質量%でもアスベストに対する発色が得られた。一方、比較例14に示すように、発色剤の濃度が20質量%では、発色剤自体が非特異的な発色を示し、アスベストに対する特異的な発色が得られなかった。
【0167】
また、本発明の一実施例に係る種々の酸化防止剤を含む実施例42〜53についても、アスベストに対する特異的な発色が得られた。酸化防止剤の濃度について、実施例42〜53に示すように、0.00001質量%以上であればアスベストに対する特異的な発色が得られた。一方、比較例15および16に示すように、酸化防止剤の濃度が0.01質量%以上である場合には、アスベストに対する特異的な発色が得られなかった。
【0168】
次に、被験材中に含まれるアスベストの検出結果を示す。図7図14図16図19および図21に示すように、本発明の一実施例に係る種々の発色剤を含む実施例について、いずれの方法および被験材でも、アスベストに対する特異的な発色が得られた。さらに、アスベストおよびロックウールの含有量が0.1質量%の被験材においても、アスベストに対する特異的な発色が得られた。したがって、本発明のアスベスト検出剤を用いれば、被験材に含まれるアスベストの量が0.1質量%程度の少量である場合でも、アスベストを特異的に検出できることが示された。
【0169】
また、本発明の一実施例に係る種々のマスキング剤を含む実施例についても、同様にアスベストに対する特異的な発色が得られた。マスキング剤の濃度について、マスキング剤としてEGTAを用いた場合、実施例26〜36に示すように、0.01質量%以上であればアスベストに対する特異的な発色が得られたが、比較例13に示すように、0.005質量%ではアスベストに対する特異的な発色が得られなかった。
【0170】
一方、マスキング剤としてCyDTAを用いた場合、実施例90に示すように、0.00001質量%以上であればアスベストに対する特異的な発色が得られたが、比較例18に示すように、0.05質量%では、マスキング剤がアスベストに対する特異的な発色を阻害した。また、EDDSを用いた場合、実施例88に示すように、0.00003質量%以上であればアスベストに対する特異的な発色が得られたが、比較例19に示すように、0.05質量%では、マスキング剤がアスベストに対する特異的な発色を阻害した。
【0171】
また、実施例65〜72で示すように、マスキング剤としてCyDTAおよびEDDSの両方を用いた場合においても、アスベストに対する特異的な発色が得られた。
【0172】
なお、比較例12に示すように、アスベスト検出剤は、マスキング剤として脂肪族ヒドロキシカルボン酸系のキレート剤またはアミノカルボン酸系マスキング剤以外を使用した場合、アスベストに対する特異的な発色を示さなかった。
【0173】
また、実施例32に示すように、マスキング剤の濃度が0.2質量%であれば、溶解性は良好であったが、実施例26、27および92に示すように、マスキング剤の濃度を0.3質量%または2質量%まで上昇させた場合には溶解性が「△」となった。なお、実施例26、27および92について、アスベストに対する特異的な発色には問題なかった。
【0174】
また、実施例28および93に示すように、マスキング剤の濃度をさらに5質量%まで上昇させた場合、溶解性は「×」と評価された。また、アスベストに対する特異的な発色は見られたが、不溶化したマスキング剤に由来する粉末も残っていた。
【0175】
次に、実施例21〜23においてpH緩衝液の濃度および種類をそれぞれ変更したが、いずれの条件においてもアスベスト特異的な発色が見られた。
【0176】
次に、図18に示すように、感度向上剤を添加しなかった実施例97では、サイディング材ではアスベストに対する特異的な発色が見られたが、浸漬式における石膏ボードではアスベストおよびロックウールのいずれに対しても発色が得られなかった。一方、感度向上剤を0.001質量%含んでいる実施例98では、石膏ボードについてもアスベスト特異的な発色がわずかに得られたため、「△」となった。また、実施例25に示すように、感度向上剤はブチルグリコールに限られず、ヘキシルジグリコールを含んでいても、アスベストに対して特異的な発色が得られた。
【0177】
次に、図6図13図18および図20に示すように、比較例8〜11、20、21、23および24はいずれも本発明の範囲に含まれない発色剤を用いており、比較例8および20ではクリソタイル以外のアスベストに対して発色が得られなかった。またこれらはクリソタイルに対しても、発色はわずかだった。また、比較例9〜11ではアスベストに対する特異的な発色が得られなかった。また、比較例21ではロックウールにも発色を示し、アスベストに対する特異的な発色が得られなかった。
【0178】
発色剤の濃度について、比較例22に示すように、発色剤の濃度が10質量%以上である場合には、発色剤自体が非特異的に発色してしまうため、アスベストに対する特異的な発色が得られなかった。一方、実施例54〜56および87に示すように、発色剤の濃度が0.2質量%以上2質量%以下であれば、アスベストに対する特異的な発色が良好に得られた。また、本発明の一実施例に係る種々の酸化防止剤を含む実施例54〜105についても、アスベストに対する特異的な発色が得られた。
【0179】
これらの結果から、アスベスト検出剤は、本発明の範囲に含まれる発色剤が含まれていることで、アスベストに対する特異的な発色が得られることが示された。また、アスベスト検出剤には、マスキング剤、感度向上剤、酸化防止剤および/またはpH緩衝液がさらに含まれることが好ましいことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、建材等に含まれるアスベストの調査に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
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図10
図11
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