(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864904
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】1軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20210419BHJP
H02K 7/106 20060101ALI20210419BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20210419BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20210419BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20210419BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20210419BHJP
F16C 29/06 20060101ALI20210419BHJP
F16D 55/28 20060101ALI20210419BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20210419BHJP
F16D 121/22 20120101ALN20210419BHJP
【FI】
H02K7/06 A
H02K7/106
H02K7/08 Z
F16H25/20 B
F16H25/22 J
F16H25/24 A
F16C29/06
F16D55/28 B
F16D65/16
F16D121:22
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-253735(P2016-253735)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-107942(P2018-107942A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】505227043
【氏名又は名称】野村ユニソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 俊和
【審査官】
末續 礼子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−089374(JP,A)
【文献】
特開平05−329761(JP,A)
【文献】
特開平11−132264(JP,A)
【文献】
特開2009−092101(JP,A)
【文献】
特開平02−298446(JP,A)
【文献】
特表2012−528284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
F16C 29/06
F16D 55/28
F16D 65/16
F16H 25/20
F16H 25/22
F16H 25/24
H02K 7/08
H02K 7/106
F16D 121/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転を直線運動に変換するボールねじ軸とボールねじナットとを備えるボールねじ機構と、
前記モータと前記ボールねじ機構との間に配置される電磁ブレーキと、
前記モータのモータ軸と前記ボールねじ軸とを連結するカップリングと、を有し、
前記カップリングは筒状のハブを備え、前記ハブの前記ボールねじ機構側に前記ボールねじ軸を螺合固定し、前記モータ側に前記モータ軸を挿入軸止し、
前記ハブの前記モータ側の端面が前記電磁ブレーキの可動磁性板の軸方向の移動位置を規制し、前記ボールねじ機構側の端面が前記ボールねじ軸を軸支するアンギュラ玉軸受を前記ボールねじ軸の段部との間で押圧固定する、
ことを特徴とする1軸アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の1軸アクチュエータにおいて、
前記ボールねじ機構は、間隔を開けて対面する一対のリニアガイドと、一対の前記リニアガイドの間に挟まれるように配置され前記ボールねじナットと一体で軸方向に移動するテーブルブロックを有し、
前記ボールねじ軸の軸中心が一対のガイドレールの対面中心と同軸上に配置され、
前記テーブルブロックのラジアル方向の断面中心が前記ボールねじ軸の軸中心と同軸上に配置されている、
ことを特徴とする1軸アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の1軸アクチュエータにおいて、
前記テーブルブロックは、相対する2つの面に突設される前記ガイドレールを備え、前記ガイドレールを介して一対の前記リニアガイドによって支持される、
ことを特徴とする1軸アクチュエータ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の1軸アクチュエータにおいて、
一対の前記リニアガイドは、前記ガイドレールの各々が挿入されるレール溝を備え、
前記テーブルブロックは、前記ガイドレールが前記レール溝の幅方向両側に配置されるボールを介して前記リニアガイドに軸方向へ移動可能に保持され、
前記一対のリニアガイドの一方を他方側に所定の力で押圧し、前記ボールと前記ガイドレールおよび前記リニアガイドとの間のクリアランスを調整する、
ことを特徴とする1軸アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1軸アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータとボールねじ機構、モータとボールねじ機構とを連結するカップリング(連結機構)を有し、回転運動を直線運動に変換する1軸アクチュエータというものがある。特許文献1には、モータとボールねじ機構の間に制動用の電磁ブレーキが配置された1軸アクチェータが開示されている。この1軸アクチュエータは、モータ側に電磁ブレーキおよびモータのモータ軸とボールねじ機構のボールねじ軸とを連結するカップリングを有している。
【0003】
また、従来一般に使用される1軸アクチュエータは、
図6に示すボールねじ機構100を有している。
図6は、従来技術の1例を示す1軸アクチュエータのボールねじ機構100を示し、ボールねじ軸101の軸方向に直交する断面図である。ボールねじ機構100は、ボールねじ軸101と、ボールねじ軸101に螺合するボールねじナット102と、ボールねじナット102と一体となって移動可能なテーブルブロック103を有している。テーブルブロック103は一対のリニアガイド104,104を有し、この一対のリニアガイド104、104が本体ケース105の同じ平面上に配置された一対のガイドレール106、106で案内されている。テーブルブロック103は、ガイドレール106、106に沿ってボールねじ軸101の軸方向に移動可能となっている。ボールねじ軸101の軸中心107は、リニアガイド104,104およびガイドレール106,106から断面方向(ボールねじ軸101のラジアル方向)に離れた位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−89374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の1軸アクチュエータは、電磁ブレーキのブレーキハブ(カップリング)にモータ軸を固定し、ブレーキハブにボールねじ軸を軸方向に摺動可能に連結しているため、電磁ブレーキとボールねじ機構の間隔が大きくなり全長が長くなってしまうという課題がある。
【0006】
また、
図6に示す従来技術のボールねじ機構100は、力点となるボールねじ軸101の軸中心107が、作用点となるリニアガイド104,104およびガイドレール106,106からラジアル方向に離れて配置されている。そのため、リニアガイド104、104およびガイドレール106,106にボールねじ軸から加えられる力による回転モーメントが作用するため、駆動バランス(または荷重バランス)が悪く駆動損失が大きくなるなどの課題がある。また、ガイドレール106,106の間の距離が小さいので、テーブルブロックに回転モーメントを加えられた際にリニアガイドにかかる負荷が大きくなってしまい、全体の剛性が低下するという課題がある。
【0007】
また、
図6に示したボールねじ機構100には、リニアガイド104,104とガイドレール106,106との間に転動部材として不図示のボールが配置される。この従来構造では、リニアガイド104,104およびガイドレール106,106、ボールを組み立てたときに、ボールとの間にクリアランス(ボールガタ)が発生することがあり、クリアランスがあることによってテーブルブロックの支持が不安定になることや、撓みやすくなるなどの課題がある。また、ガイドレール106,106を軸中心107に向かって突設していることから、剛性および搬送能力を高めようとする場合に大型化してしまうという課題もある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記課題の少なくとも一部を解決し、電磁ブレーキを備えながら全長の短縮化を可能にし、高い剛性を持たせ、かつ駆動損失が小さい1軸アクチュエータを実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の1軸アクチュエータは、モータと、モータの回転を直線運動に変換するボールねじ軸とボールねじナットとを備えるボールねじ機構と、モータとボールねじ機構との間に配置される電磁ブレーキと、モータのモータ軸とボールねじ軸とを連結するカップリングと、を有し、カップリングは筒状のハブを備え、ハブのボールねじ機構側にボールねじ軸を螺合固定し、モータ側にモータ軸を挿入軸止し、ハブのモータ側の端面が電磁ブレーキの可動磁性板の軸方向の移動位置を規制し、ボールねじ機構側の端面がボールねじ軸を軸支するアンギュラ玉軸受をボールねじ軸の段部との間で押圧固定することとする。
【0010】
本発明の1軸アクチュエータにおいては、ボールねじ機構は、間隔を開けて対面する一対のリニアガイドと、一対のリニアガイドの間に挟まれるように配置されボールねじナットと一体で軸方向に移動するテーブルブロックを有し、ボールねじ軸の軸中心が一対のガイドレールの対面中心と同軸上に配置され、テーブルブロックのラジアル方向の断面中心がボールねじ軸の軸中心と同軸上に配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明の1軸アクチュエータにおいては、テーブルブロックは、相対する2つの面に突設されるガイドレールを備え、ガイドレールを介して一対の前記リニアガイドによって支持されることが好ましい。
【0012】
本発明の1軸アクチュエータにおいては、一対のリニアガイドは、ガイドレールの各々が挿入されるレール溝を備え、テーブルブロックは、ガイドレールがレール溝の幅方向両側に配置されるボールを介してリニアガイドに軸方向へ移動可能に保持され、一対のリニアガイドの一方を他方側に所定の力で押圧し、ボールとガイドレールおよびリニアガイドとの間のクリアランスを調整することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る1軸アクチュエータの概要を示し、(A)は外観斜視図、(B)は(A)を図示右側から見た正面図である。
【
図2】
図1のA−A切断線で切断した1軸アクチュエータを示す断面図である。
【
図3】
図1のB−B切断線で切断した1軸アクチュエータを示す断面図である。
【
図4】
図1のC−C切断線で切断したボールねじ機構の断面を拡大して示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電磁ブレーキおよびカップリングの構成を示す断面図である。
【
図6】従来技術の1例を示す1軸アクチュエータのボールねじ機構を示し、ボールねじ軸の軸方向に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る1軸アクチュエータ1について好適な実施の形態をあげ、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す各図の説明において、
図1の長辺方向を軸方向、軸方向に対して直交する方向をラジアル方向または断面方向と記載して説明する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る1軸アクチュエータ1を示し、(A)は概要を示す外観斜視図、(B)は(A)を図示右側(太い矢印方向)から見た正面図(ただし、拡大して図示)である。なお、
図1は、表面に配置されるねじ、ねじ孔および孔類などの図示を省略している。
図1(A)に示すように、1軸アクチュエータ1は、回転駆動源である正転・逆転が可能なモータ2と、モータ2の回転を直線運動に変換するボールねじ機構3と、モータ2とボールねじ機構3との間に配置される電磁ブレーキ4およびカップリング5とが軸方向に配列されている。モータ2は、モータケース6内に格納され、ボールねじ機構3は、本体ケース7(複数のケース部材の総称)内に格納されている。本体ケース7の図示上面側(ケース部材17、
図1(B)参照)には、内側に貫通する孔部8が設けられており、この孔部8にテーブルブロック9の一部が露出するよう配置されている。図示右側の端面には、ボールねじ機構3を構成するテーブルブロック9、一対のリニアガイド10,11および一対のガイドレール12,13が、それぞれ距離をおいて対面するように配置されている。
【0016】
図1(B)に示すように、本体ケース7は、図示左側に配置され断面がL字形状のケース部材15、ケース部材15の側壁部15Bに対面配置されるケース部材16、図示上方側に配置されケース部材15とケース部材16とを接続固定するケース部材17で構成されている。ケース部材16においては、図示上方側はケース部材17に固定され、図示下方側はケース部材15の底面部15Aに固定される。各ケース部材15,16,17は、
図1(B)に示すように組み合わせて不図示のねじなどの固定手段によって一体に固定される。ケース部材15の側壁部15Bの内側にはリニアガイド10、ケース部材16の内側にはリニアガイド11が嵌め込まれている。リニアガイド10およびリニアガイド11は、テーブルブロック9を挟むように対面配置される。
【0017】
テーブルブロック9の相対する2つの面22,23は、それぞれ外側方向に向かってガイドレール12,13が突設されている。テーブルブロック9の先端端面は、不図示のワークあるいはツールの取付け部9A(ツール取付け部9A)であって、ワークあるいはツールなどの位置を決める複数の孔部9Cおよびねじ孔9Dが設けられている。ケース部材17には孔部8が開口されており、テーブルブロック9の一部がこの孔部8を貫通してケース部材17の上面からわずかに突き出されており、この部分は、先端端面のツール取付け部9Aと同じように不図示のワークあるいはツールの取り付け部9Eである。
【0018】
図1(B)に示すように、テーブルブロック9のラジアル方向断面の中央部にはボールねじ軸26が配置されている。テーブルブロック9のラジアル方向の断面中心P1は、ボールねじ軸26の軸中心P0と同じ軸上に配置されている。また、ボールねじ軸26の軸中心P0は、一対のガイドレール12,13の対面中心P2と同軸上に配置される。テーブルブロック9は、一対のガイドレール12,13と一体となって一対のリニアガイド10,11の間に支持され軸方向に移動可能となっている。ボールねじ機構3、電磁ブレーキ4およびカップリング5の構成は、
図2〜
図5を参照して詳しく説明する。
【0019】
図2は、
図1のA−A切断線で切断した1軸アクチュエータ1を示す断面図、
図3は、
図1のB−B切断線で切断した1軸アクチュエータ1を示す断面図である。A−A切断線およびB−B切断線は共に、ボールねじ軸26の軸中心P0を通る。
図2および
図3に示すように、ボールねじ軸26には、ボールねじナット27が螺合している。ボールねじナット27のモータ2側の端部には支持板28が設けられていて、支持板28はテーブルブロック9の端面にねじ29,29(
図3参照)によって固定される。テーブルブロック9はボールねじナット27の軸方向の動きに連動して移動する。ボールねじ軸26とボールねじナット27の間には複数のボール(不図示)が挿入されていて、ボールねじ軸26を回転することによって複数のボールおよびボールねじナット27を介してテーブルブロック9を軸方向の直線運動に変換する。すなわち、ボールねじナット27が図示右側に移動するときには、テーブルブロック9を軸方向右側に移動させ、ボールねじナット27が図示左側に移動するときにはテーブルブロック9を軸方向左側に移動させる。テーブルブロック9の移動方向は、ボールねじ軸26(つまり、モータ2)の回転方向によって律せられる。テーブルブロック9には、ボールねじ軸26が挿通される孔部24が設けられている。
【0020】
ボールねじ機構3は、
図1(B)に示したように、ケース部材15,16,17に囲まれた空間内に配設されている。
図1(B)および
図2に示すように、ボールねじ軸26を挟んで両側には、一対のリニアガイド10,11が配設されている。リニアガイド10,11は、対面するケース部材15の側壁部15Bとケース部材16の各々に設けられた凹部30,31内に嵌め込まれている。リニアガイド10,11には、それぞれ対向するレール溝32,33が形成されている(
図1(B)参照)。テーブルブロック9には、二つのリニアガイド10,11それぞれに対向するようにガイドレール12,13が突設されている。ガイドレール12,13はレール溝32、33内に挿入され、レール溝32,33に沿って配設される複数個のボール35(
図4参照)を介して、テーブルブロック9と共にガイドレール溝32,33内に挿着された状態で軸方向に移動可能である。
【0021】
テーブルブロック9のモータ2に対して反対側に配置されるツール取付け部9Aは、テーブルブロック9が最もモータ2側に移動した状態において、ケース部材15,16,17よりも突出している。ツール取付け部9Aには、ねじ孔9Dおよび孔部9C(
図1(B)参照)が設けられている。また、
図3に示すように、ケース部材17側のツール取付け部9Eには、ツール取付け部9Aと同様にねじ孔9Fおよび孔部(不図示)が設けられ、ツール取付け部9Eの一部がケース部材17の上面から突出している。ツール取付け部9Eは、ケース部材17に設けられた孔部8の範囲内で移動可能となっている。
【0022】
図2および
図3に示すように、モータ2とボールねじ機構3の間には、電磁ブレーキ4およびカップリング5が配設されている。カップリング5は、電磁ブレーキ4と互いの機能要素を共有する複合機能カップリングである。カップリング5は、モータ軸38とボールねじ軸26を連結する筒状のハブ39を有している。ハブ39は、ボールねじ機構3側においてボールねじ軸26を螺合固定し、モータ2側においてモータ軸38を挿入軸止するカップリング機能を有している。また、ハブ39は、モータ2側の端面39Bにおいて電磁ブレーキ4の可動磁性板48の軸方向の移動位置を規制する機能と、ボールねじ機構3側の端面39Aがボールねじ軸26を軸支するアンギュラ玉軸受37を押圧固定する機能を有している。電磁ブレーキ4およびカップリング5の詳しい構成については
図5を参照して後述する。次に、リニアガイド10,11とガイドレール12,13の嵌合関係について
図4を参照して詳しく説明する。
【0023】
図4は、
図1のC−C切断線で切断したボールねじ機構3の断面を拡大して示す図である。ガイドレール12,13は、それぞれリニアガイド10,11のレール溝32,33にボール35を介して挿着されている。なお、リニアガイド10およびガイドレール12、リニアガイド11およびガイドレール13は、ボールねじ軸26の軸中心P0を垂直に通る直線S1に対して対称配置されているので、リニアガイド11およびガイドレール13側を代表例としてあげ説明する。また、リニアガイド11およびガイドレール13は、直線S1に対して直交する直線S2に対して対称形である。ボール35は、リニアガイド11の斜面部40とガイドレール13の斜面部41の間に配設される。ボール35は、ボール循環部42によってリニアガイド11とガイドレール13の間に循環される。
【0024】
リニアガイド11、ガイドレール13(テーブルブロック9)およびボール35を組み立てる際、リニアガイド11およびガイドレール13とボール35の間にクリアランス(ボールガタと呼ばれる)が発生することがある。このクリアランスが大きいとテーブルブロックの支持が不安定になり、撓みやすくなる。そこで、このクリアランスを適切に調節することが要求される。次に、そのことについて説明する。
【0025】
図4に示すように、ケース部材16は、ねじ43,43によってケース部材15の底面部15Aおよびケース部材17に固定される。これらのねじ43,43を完全に締め付けする前にケース部材16に図示太い矢印方向に所定の与圧Fを加えると、リニアガイド11がケース部材16と共に同じ方向に移動する。一方、リニアガイド11に対面するリニアガイド10は、ケース部材15の側壁部15Bに保持されているので移動しない。なお、ケース部材17は、側壁部15Bにねじ43(図示は省略)によって固定されている。したがって、リニアガイド11にリニアガイド10側に向かって与圧Fを加えることによって、ボール35を介してガイドレール13とテーブルブロック9、ガイドレール12の順に与圧Fが伝達し、斜面部40と斜面部41との相対位置をずらしクリアランスを調整することが可能となる。
【0026】
所定の与圧Fを加えた状態で、ケース部材16側のねじ43を締め付けることによって、リニアガイド11およびガイドレール13とボール35の間のクリアランスと、リニアガイド10およびガイドレール12とボール35の間のクリアランスとを適切に調整し維持できる。なお、リニアガイド11の移動量は、ねじ43のねじ軸部44、44の直径とケース部材15の孔45およびケース部材17の孔45の直径差の1/2の範囲である。
【0027】
続いて、電磁ブレーキ4およびカップリング5の構成について
図5を参照して説明する。
図5は、電磁ブレーキ4およびカップリング5の構成を示す断面図で、
図3に示す電磁ブレーキ4およびカップリング5を拡大して表している。ケース部材15のモータ2側の端面璧部15Cに形成された凹部18には、2連のアンギュラ玉軸受37が嵌め込まれている。アンギュラ玉軸受37によって、ボールねじ軸26はアキシャル方向(軸方向)およびラジアル方向が支持される。アンギュラ玉軸受37は、外輪49が上記凹部18の底面と固定板50とで挟持され、内輪51がボールねじ軸26の段部57とハブ39の端面で挟持されている。固定板50は、ねじ52,52によってケース部材15の端面壁部15Cに固定される。一方、ハブ39のアンギュラ玉軸受37側には、ボールねじ軸26の軸部36に形成されたねじ部46と螺合するねじ孔53が形成され、ハブ39をボールねじ軸26にねじ込むことによって内輪51側を押圧する。ハブ39のモータ2側に設けられた孔部54には、モータ軸38が挿入される。ハブ39は、ボールねじ軸26の軸部36の先端部、モータ軸38の先端部のそれぞれにおいて止めねじ55,56(図示は省略)で側面から固定され、モータ2とボールねじ軸26とが同軸上で連結され、モータ2の回転がボールねじ軸26に伝達される。
【0028】
電磁ブレーキ4は、モータ2側に取付けられるヨーク60とコイル61を有する。ヨーク60とハブ39の間には可動磁性板48が配置され、可動磁性板48はヨーク60とハブ39の端面39Bの間で移動可能である。可動磁性板48と摩擦板63の間にはブレーキパッド64が配置される。ブレーキパッド64には、ハブ39に形成された角柱部39Cに嵌合する角孔64Aが設けられ、ブレーキパッド64はハブ39と共に回転可能、かつ軸方向に移動可能である。また、コイル61のラジアル方向内側にはコイルばね65が配設されている。
図5に示すように、モータ2およびコイル61に電流を流さない(OFF)ときには、電磁吸引力が可動磁性板48に作用しないので、コイルばね65の弾性力によって可動磁性板48がブレーキパッド64を押し、ブレーキパッド64は摩擦板63に当接するまで移動し、モータ2およびボールねじ軸26の回転が制動される。また、モータ2およびコイル61に電流を流す(ON)ときには、可動磁性板48がコイル61側に吸着され、ブレーキパッド64には何ら力が作用しないフリー状態となるため、モータ2およびボールねじ軸26は回転する。
【0029】
以上説明した本実施の形態に係る1軸アクチュエータ1は、モータ2と、モータ2の回転を直線運動に変換するボールねじ軸26とボールねじナット27とを備えるボールねじ機構3と、モータ2とボールねじ機構3との間に配置される電磁ブレーキ4と、モータ2のモータ軸38とボールねじ軸26とを連結するカップリング5と、を有している。カップリング5は筒状のハブ39を備え、ハブ39のボールねじ機構3側にボールねじ軸26を螺合固定し、モータ2側にモータ軸38を挿入軸止し、ハブ39のモータ2側の端面39Bが電磁ブレーキ4の可動磁性板48の軸方向の移動位置を規制し、ボールねじ機構3側の端面39Aがボールねじ軸26を軸支するアンギュラ玉軸受37をボールねじ軸26の段部57との間で押圧固定する。
【0030】
このようにカップリング5に、モータ2とボールねじ機構3との連結機能と、電磁ブレーキ4の制動要素の一部と、ボールねじ機構3のアンギュラ玉軸受37の固定機能とを持たせることによって、電磁ブレーキ4を備える構成であっても1軸アクチュエータ1を軸方向に短縮することが可能となる。
【0031】
また、ボールねじ機構3は、間隔を開けて対面する一対のリニアガイド10,11と、一対のリニアガイド10,11の間に挟まれるように配置されボールねじナット27と一体で軸方向に移動するテーブルブロック9を有し、ボールねじ軸26の軸中心P0が一対のガイドレール12,13の対面中心P2と同軸上に配置され、テーブルブロック9のラジアル方向の断面中心P1がボールねじ軸26の軸中心P0と同軸上に配置されている。
【0032】
このように構成すれば、ボールねじ軸26を回転し、この回転力がボールねじナット27を介してリニアガイド10,11およびガイドレール12,13に均等に伝達されるので、それぞれに負荷される荷重バランスがとれることによって駆動損失を低減することができる。
【0033】
また、テーブルブロック9は、相対する2つの面22,23に突設されるガイドレール12,13を備え、ガイドレール12,13を介して一対のリニアガイド10,11によって支持されている。したがって、ガイドレール12,13のラジアル方向の断面積がテーブルブロック9を加えたものとなり、
図6に示した従来技術の構成にくらべ高剛性のものとすることができる。また、ガイドレール12,13は、テーブルブロック9の相対する2つの面22,23の外側に向かって突設しているので、ボールねじ軸26回りのスペースが大きく、たとえば、ボール35の直径を大きくしたり、ボールねじ機構3の断面積を大きくしなくても、リニアガイド10,11およびガイドレール12,13のサイズを大きくしたりすることができ、全体として剛性が高い1軸アクチュエータ1を実現できる。
【0034】
また、一対のリニアガイド10,11は、ガイドレール12,13の各々が挿入されるレール溝32,33を備え、テーブルブロック9は、ガイドレール12,13がレール溝32,33の幅方向両側に配置されるボール35を介してリニアガイド10,11に軸方向に移動可能に保持され、一対のリニアガイド10,11の一方(リニアガイド11)を他方(リニアガイド10)側に所定の力(与圧F)で押圧し、ボール35とガイドレール12,13およびリニアガイド10,11との間のクリアランスを調整する。
【0035】
上記クリアランスが大きいと、テーブルブロック9の支持が不安定になり、撓みやすくなる。そこで、一方のリニアガイド11に与圧Fを加えて組み立てることによって、このクリアランスを適切に調整することによって、テーブルブロック9の支持が安定し、撓みにくくすることが可能となる。
【0036】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1…1軸アクチュエータ
2…モータ
3…ボールねじ機構
4…電磁ブレーキ
5…カップリング
9…テーブルブロック
10,11…リニアガイド
12,13…ガイドレール
22,23…面
26…ボールねじ軸
27…ボールねじナット
32,33…レール溝
35…ボール
37…アンギュラ玉軸受
38…モータ軸
39…ハブ
48…可動磁性板
57…ボールねじ軸の段部