(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属箔の少なくとも一方の面に接着層が形成されてなる積層フィルムであり、接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含有し、接着層面の表面粗さ(Sa)が5〜100nmであることを特徴とする積層フィルム。
請求項1記載の積層フィルムを製造するための方法であって、金属箔の少なくとも一方の面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体を塗布し、180℃以上かつ0.5秒以上の条件で乾燥して、接着層を形成することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
請求項6に記載された包装材料を製造するための方法であって、シーラント樹脂をインラインで積層フィルムの接着層面に溶融押出してシーラント層を形成することを特徴とする包装材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、金属箔の少なくとも一方の面に接着層が形成されたものであり、接着層は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
【0009】
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のアルケンや、ノルボルネン等のシクロアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でもエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンが特に好ましい。また、2種類以上のオレフィン成分が共重合されていてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。オレフィン成分の含有量が50質量%未満では、金属箔などの基材との密着性等が優れるというポリオレフィン樹脂由来の特性が失われてしまうことがある。
【0010】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、後述する樹脂の水性化(液状化)の点から、また接着層と金属箔との密着性の点から、酸変性されていることが必要であり、不飽和カルボン酸成分を含有して酸変性されることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1〜25質量%であることがより好ましく、0.5〜15質量%であることがさらに好ましく、1〜8質量%であることが特に好ましく、1〜5質量%であることが最も好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、無水マレイン酸がより好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0011】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、シーラント層、特にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなるシーラント層との密着性を向上させる理由から、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、良好な密着性を持たせるために、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが最も好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が40質量%を超えると、オレフィン由来の樹脂の性質が失われ、密着性が低下することがある。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、シーラント層との密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)
【0012】
また、上記成分以外に他の成分を酸変性ポリオレフィン樹脂全体の10質量%以下程度、含有していてもよい。他の成分としては、ジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられ、中でもエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。
【0014】
酸変性ポリオレフィン樹脂が、エチレン(a1)−アクリル酸エステル(a4)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a1/a4/a5)は、95/4/1〜50/40/10であることが好ましく、94/5/1〜60/36/4であることがより好ましく、92/7/1〜62/35/3であることが特に好ましい。
また、プロピレン(a2)−ブテン(a3)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a2/a3/a5)は、95/4/1〜53/40/7であることが好ましく、94/5/1〜60/34/6であることがより好ましく、92/7/1〜62/33/5であることが特に好ましい。
また、プロピレン(a2)−エチレン(a1)−ブテン(a3)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a2/a1/a3/a5)は、95/3/1/1〜50/15/28/7であることが好ましい。
また、エチレン(a1)−プロピレン(a2)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a1/a2/a5)は、1/98/1〜50/40/10であることが好ましい。
【0015】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜500g/10分であることが好ましく、0.1〜400g/10分であることがより好ましく、1〜300g/10分であることがさらに好ましく、5〜200g/10分であることが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難となることがある。一方、酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが500g/10分を超えると、得られる接着層は硬くてもろくなる傾向にあり、接着層の割れにより、密着性が低下しやすい。
【0016】
本発明の積層フィルムを構成する接着層は、不揮発性水性化助剤を含有してもよい。不揮発性水性化助剤としては、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられ、例えば、乳化剤、水溶性高分子、保護コロイド作用を有する化合物、高酸価の酸変性化合物などが挙げられる。不揮発性水性化助剤が高分子である場合、滑り性向上の観点から、重量平均分子量は2500以上であることが好ましい。
【0017】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、アラビアゴム等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、アラビアゴム、カゼイン等が挙げられる。
高酸価の酸変性化合物としては、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩等が挙げられる。
中でも、不揮発性水性化助剤は、少量添加することで金属箔に対して滑り性の効果を発揮するという点で、水溶性高分子が好ましい。さらに、滑り性と、金属箔とシーラント層との接着性を両立する観点の点から、ポリビニルアルコールまたはポリエチレングリコールがより好ましい。
【0018】
不揮発性水性化助剤として使用することができるポリビニルアルコールとしては、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものなどが挙げられる。ケン化方法としては、公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を採用することができる。中でも、メタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどが挙げられる。中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
ポリビニルアルコールのケン化度としては、滑り性向上の観点から、80〜99.9モル%が好ましく、90〜99.9モル%がより好ましく、95〜99.9モル%がさらに好ましい。80モル%未満であると、滑り性が低下する傾向がある。
【0019】
ポリビニルアルコールの平均重合度としては、57以上が好ましく、57〜6820がより好ましく、455〜4545がさらに好ましく、500〜2500が特に好ましく、500〜1000が最も好ましい。
また、ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、前記平均重合度にビニルアルコールの分子量44を乗じることで算出され、2500以上が好ましく、2500〜300000がより好ましく、20000〜200000がさらに好ましく、22000〜110000が特に好ましく、22000〜44000が最も好ましい。重量平均分子量が2500未満であると滑り性が低下する場合がある。また、重量平均分子量が300000を超えると水性分散体とした場合の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0020】
また、本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル化合物であるビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩;エチレンなど炭素数2〜30のα−オレフィン類;アルキルビニルエーテル類;ビニルピロリドン類、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。エチレンを共重合した場合、即ち、エチレン−ビニルアルコール共重合体の場合のエチレンの含有量としては、密着性の観点から50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。
【0021】
なお、ポリビニルアルコールとしては、市販のものが使用できる。具体的には、日本酢ビ・ポバール社製の「J−ポバール」、クラレ社製の「クラレポバール」「エクセバール」、電気化学工業社製の「デンカ ポバール」などを好適に用いることができる。
【0022】
不揮発性水性化助剤として使用することができるポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量が2500以上であるものが好ましい。ポリエチレングリコールの重量平均分子量が2500未満であると、得られた積層フィルムは、ロール状に巻き取る際に金属箔にシワが発生しやすくなることがある。
【0023】
本発明の積層フィルムを構成する接着層は、金属箔とシーラント層との接着性の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、不揮発性水性化助剤を0〜3質量部含有することが好ましく、0〜2質量部含有することがより好ましく、0〜1質量部含有することがさらに好ましい。接着層は、不揮発性水性化助剤の含有量が3質量部を超えると、金属箔とシーラント層との接着性が低下する。
【0024】
本発明の積層フィルムを構成する接着層は、耐内容物性や耐薬品性の観点から、表面粗さ(Sa)が5〜100nmであることが必要であり、6〜70nmであることが好ましく、7〜30nmであることがより好ましく、7〜15nmであることがさらに好ましい。接着層は、表面粗さ(Sa)が100nmを超えると、接着層表面にシーラント層を積層して得られた包装材料は、耐内容物性や耐薬品性が低下する。
【0025】
接着層の滑り性は、巻取りのし易さの観点から、動摩擦係数(μ
D)が0.5〜0.2であることが好ましく、0.45〜0.25であることがより好ましく、0.4〜0.3であることがさらに好ましい。接着層の動摩擦係数(μ
D)が0.5を超えると、積層フィルムは、巻き取る際にシワが発生し、0.2未満であると、巻き取ったロールは、傾けた際に積層フィルムが滑り『タケノコ』状になり、作業性が低下することがある。
【0026】
接着層の量は、接着面に対して、0.001〜5g/m
2であることが好ましく、0.01〜3g/m
2であることがより好ましく、0.02〜2g/m
2であることがさらに好ましく、0.03〜1g/m
2であることが特に好ましく、0.05〜1g/m
2であることが最も好ましい。接着層の量が0.001g/m
2未満では、十分な接着性が得られない傾向にあり、一方、5g/m
2を超えると、経済的に不利となる傾向にある。
【0027】
本発明の積層フィルムは、金属箔の少なくとも一方の面に接着層が形成されたものである。金属箔を有する積層フィルムを使用して得られる包装材料は、液体や気体を遮断して、包装された内容物を保存することができる。
金属箔を構成する金属としては、アルミニウム、銅またはステンレス鋼であることが好ましい。金属箔の厚みは、特に限定されないが、経済的な面から3〜50μmであることが好ましい。
金属箔における、接着層が形成される表面は、酸化膜が形成されていてもよい。
【0028】
本発明の積層フィルムは、たとえば、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体を、金属箔の少なくとも一方の面に塗布、乾燥して接着層を形成することによって、製造することができる。
【0029】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、後述するような方法で、水性媒体中に分散または溶解させることで、水性分散体に加工することが可能である。この水性分散体は、水性媒体中に、酸変性ポリオレフィン樹脂が主に分散した状態で含有する。ここで、水性媒体とは、水または、水を含む液体からなる媒体であり、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散安定化に寄与する中和剤や水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。
【0030】
酸変性ポリオレフィン樹脂と不揮発性水性化助剤とを含有する水性分散体の製造方法は、特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体と不揮発性水性化助剤の水溶液を、個別に作製しておいてからそれぞれを混合する方法や、水性媒体に固形の酸変性ポリオレフィン樹脂と不揮発性水性化助剤とを一括して仕込み、同一の系内で両者を分散、溶解する方法などを採用することができる。
【0031】
次に酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体について説明する。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散し水性分散体に加工することが可能である。分散させる方法としては、自己乳化法や強制乳化法など公知の分散方法を採用すればよい。なお、上述したように、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散の際に、予め不揮発性水性化助剤を原料として特定量仕込み、酸変性ポリオレフィン樹脂と一括して水性分散化させる方法を採用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体は、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体を使用することが、接着性の観点から好ましい。
【0032】
酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化させる際に用いる水性媒体は、水または、水を含む液体からなる媒体であり、分散安定化に寄与する中和剤や水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体;さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。なお、これら有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の水溶性有機溶媒を用いることが、接着層を形成する際に残存を少なくするために好ましい。具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられる。
【0033】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を中和するのに用いる塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属等が挙げられる。なお、塩基性化合物は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の塩基性化合物を用いることが、接着層を形成する際に残存を少なくするために好ましい。具体的には、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0034】
不揮発性水性化助剤の水性媒体への溶解方法としては、公知の方法を採用すればよく、具体的には、水性媒体として水を用い、不揮発性水性化助剤を水に仕込み攪拌しながら加熱し溶解させる方法が一般的である。
【0035】
このようにして得られた不揮発性水性化助剤の溶液を、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に特定量添加することで、酸変性ポリオレフィン樹脂と不揮発性水性化助剤と水性媒体とを含有する水性分散体を得ることが可能である。不揮発性水性化助剤の溶液の添加の際は、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を攪拌しながら添加することが好ましい。
【0036】
水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径を小さくすることで、より短時間の加熱処理により、塗膜表面粗さであるSaを小さくすることが可能となる。数平均粒子径が500nmを超えると、水性分散体の保存安定性が低下する傾向にあったり、均一な厚みの塗布が困難となり、その結果、安定した効果が得られなくなることがある。なお、水性分散体中の分散粒子は、通常、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散粒子のことを意味する。
また、水性分散体の固形分濃度(不揮発成分濃度)は、水性分散体全体に対して1〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
水性分散体は、本発明の効果を損ねない限りにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂、不揮発性水性化助剤以外の樹脂が含有されていてもよく、具体的には酸変性ポリオレフィン樹脂に対して30質量%以下の範囲で含有されていることが好ましい。その他の樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0038】
さらに水性分散体には、酸変性ポリオレフィン樹脂または不揮発性水性化助剤を架橋するための架橋剤が含有されていてもよい。架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、多価メラミン化合物、尿素化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボジイミド化合物、多価オキサゾリン基含有化合物、多価ヒドラジド化合物、多価ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの含有量は、滑り性を考慮して適宜決定すればよいが、具体的には、酸変性ポリオレフィン樹脂と不揮発性水性化助剤の総和100質量部に対して、20質量%以下の範囲で含有されていることが好ましい。
【0039】
上記のような、その他の樹脂や架橋剤は、水性分散体への添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものを用いることが好ましい。
【0040】
本発明において、接着層を形成する方法としては、上記方法で調製した水性分散体を金属箔の一方の面に塗布して、水性媒体の一部または全てを乾燥し、塗膜を形成させる方法、また、剥離紙上に水性分散体を塗布し、水性媒体の一部または全てを乾燥させて一旦塗膜を形成し、後に金属箔の一方の面にこれを転写する方法などが挙げられる。中でも、環境面や性能面、接着層の量を調整しやすくする点などから、水性分散体を、金属箔の一方の面に塗布して水性媒体の一部または全てを乾燥させる方法が好ましい。
【0041】
水性分散体の塗布方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などが挙げられる。
水性分散体を基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供することにより、水性媒体の一部または全てを乾燥し、均一な塗膜、即ち接着層を基材表面に密着させて形成することができる。乾燥の際は、水性媒体の全てを乾燥させることが、接着性を良好にする観点から好ましい。乾燥のための加熱処理の条件としては、温度は、180℃以上であることが必要であり、180〜300℃が好ましく、190〜280℃がより好ましく、200〜250℃がさらに好ましく、時間は、0.5秒以上であることが必要であり、0.5〜10秒が好ましく、0.7〜8秒がより好ましく、1〜5秒がさらに好ましい。乾燥温度が180℃未満であったり、乾燥時間が0.5秒未満であると、接着層面の表面粗さ(Sa)が100nmを超え、この接着層表面にシーラント層を積層して得られた包装材料は、耐薬品性や耐内容物性が劣るものとなる。また、乾燥時間が0.5秒未満であると十分な乾燥が得られず、接着性が低くなる。
【0042】
本発明の積層フィルムは、接着層上にシーラント層を形成することにより、包装材料として使用することができる。
シーラント層を構成する樹脂としては、従来から知られたシーラント樹脂を使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、アイオノマーやポリオレフィン樹脂以外の複層シーラント層として、酸変性ポリオレフィン樹脂とナイロン、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂、バリア機能があるポリオレフィン樹脂とポリオレフィン樹脂を共押出で複合されたフィルムが挙げられる。中でも低温シール性からポリエチレン系樹脂が好ましく、安価であることからポリエチレンが特に好ましい。
【0043】
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、包装材料への加工性や金属箔との接着性などから、10〜60μmが好ましく、15〜40μmがより好ましい。
また、シーラント層に高低差が5〜20μmの凸凹を設けることで、シーラント層の滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
【0044】
積層フィルムの接着層上にシーラント層を積層する方法としては、特に限定されないが、例えば、接着層とシーラント樹脂フィルムとを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)や、シーラント樹脂を溶融させて接着層上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネーション法)などが挙げられ、押出ラミネーション法が好ましい。
押出しの際、溶融シーラント樹脂温度は、接着性を良好にする観点から、200〜400℃であることが好ましく、250〜350℃であることがより好ましく、280〜330℃であることがさらに好ましい。また、押出しの際の溶融シーラント樹脂には、接着性を向上させたりライン速度を向上させるために、オゾン処理などの処理を施しても構わない。
シーラント層は、積層フィルムの製造直後にインラインで、シーラント樹脂を溶融押出して接着層上に積層してもよく、また、製造した積層フィルムを一旦ロール状に巻き取って保管や輸送したのち、オフラインで接着層上に積層してもよい。
【0045】
本発明の包装材料は、通常、金属箔は外側に、シーラント層は内側(内容物側)にされて使用される。包装材料は、その用途、必要な性能(易引裂性やハンドカット性)、要求される剛性や耐久性(例えば、耐衝撃性や耐ピンホール性など)などに応じて、金属箔の外側に他の層を積層することもできる。通常は、金属箔の外側に、基材層、紙層、第2のシーラント層、不織布層などを伴って使用される。他の層を積層する方法としては公知の方法、たとえば、他の層との層間に接着剤層を設けてドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法や押出しラミネート法などを採用すればよい。接着剤としては、1液タイプのウレタン系接着剤、2液タイプのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性ポリオレフィンの水性分散体などを用いることが可能である。また、本発明における接着層を形成するための水性分散体を他の層の接着に用いても特に構わない。
【0046】
包装材料に他の層を積層した具体的な構成としては、一般な包装材料や蓋材、詰め替え容器などに好適に用いることが可能な、基材層/金属箔/接着層/シーラント層や、紙容器、紙カップなどに好適に用いることが可能な、第2のシーラント層/紙層/金属箔/接着層/シーラント層、第2のシーラント層/紙層/ポリオレフィン樹脂層/基材層/金属箔/接着層/シーラント層、紙層/金属箔/接着層/シーラント層や、チューブ容器などに好適に用いることが可能な、第2のシーラント層/金属箔/接着層/シーラント層などが挙げられる。これら積層体は、必要に応じて、印刷層やトップコート層などを設けてあっても構わない。
【0047】
基材層としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、ナイロン6、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6ナイロン/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体などが用いられ、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムが好ましく用いられる。紙層としては、紙や合成紙などが挙げられる。第2のシーラント層の材料としては、シーラント層と同様の材料が挙げられる。
【0048】
これら他の層は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよく、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、前処理としてフィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などしてもよい。
【0049】
他の層の厚みは、包装材料としての適性、積層する場合の加工性を考慮して決定すればよく、特に制限されないが、実用的には1〜300μmの範囲で、用途によっては300μm以上のものを採用すればよい。
【0050】
包装材料の態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラシック、ブリュックタイプ、チューブ容器(ラミネートチューブ)、紙カップ(胴部と底部のブランク板を作製し、該ブランク板をカップ成形機で筒状の胴部と、該胴部の一方の開口端に底部を成形、熱接着してなる紙カップ容器など)、蓋材など種々あり、最内層のシーラント層にポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂製チャックを設けて、チャック付き包装袋とすることもできる。本発明における接着層を形成するための水性分散体はその様なチャックとの接着性にも優れる。さらに深絞り成型にも適している。
【0051】
本発明の積層フィルムから作製できる包装材料は、様々な内容物に対して良好な耐性を有していることから、特に、揮発性を有する内容物や刺激性の強い内容物の包装材料として好適であり、中でも香り成分、香辛料成分、薬効成分を有する製品や電解液の包装材料として最適である。具体的には、アルコール(例えば50質量%以上の高濃度アルコール)、アルコール飲料、酸化防止剤、亜硫酸塩、芳香剤、香料、入浴剤(液体タイプ、粉末タイプ)、香辛料(チョウジ、唐辛子)、湿布剤、貼付剤、医薬品、電池電解液、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、洗剤、車用洗浄剤、パーマ液、防虫剤、殺虫剤、消毒液、消臭剤、育毛剤、食酢、歯磨き剤、化粧品、現像液、毛染め剤、歯磨き粉、美容エキス、マスタード、食酢、油、カレー、粉末キムチの素、タバスコ(キダチトウガラシを原料とした香辛料、登録商標)、塩基性物質を含んだ物、酸性物物質を含んだ物の包装材料に好適に使用される。
【0052】
本発明の積層フィルムは、包装材料以外の用途にも使用することができる。包装材料以外の用途としては、例えば、断熱フィルム部材などの建材用途、太陽電池素子材料部材、照明部材、フィルムコンデンサ部材などの電子部材用途などが挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0054】
1.接着層構成成分、水性分散体の特性
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂の構成
1H−NMR分析装置(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d
2)を溶媒とし、120℃で測定した。
【0055】
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K7210:1999記載の方法に準じて行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂A−1(ボンダインHX−8290)については190℃、2160g荷重で測定し、酸変性ポリオレフィン樹脂A−2、A−3については160℃、2160g荷重で測定した。
【0056】
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量
酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgのポリオレフィン樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合は、オルトジクロロベンゼンで溶解した。
【0057】
(4)水性分散体の分散粒子の数平均粒子径(mn)、体積平均粒子径(mw)
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
【0058】
(5)ポリビニルアルコールのケン化度および平均重合度
JIS K6726:1994記載の方法に準じて測定した。
【0059】
(6)ポリビニルアルコールの重量平均分子量
ポリビニルアルコールの平均重合度とビニルアルコールの分子量44とから、次式でポリビニルアルコールの重量平均分子量を算出した。
重量平均分子量=平均重合度×44
【0060】
2.接着層の特性
(1)接着層の量(塗工量)
予め面積および質量を計測した金属箔に、水性分散体を所定量塗工し、100℃で2分間乾燥した。得られた積層体の質量を測定し、塗工前の基材の質量を差し引くことで塗工量を求めた。塗工量と塗工面積から単位面積当りの塗工量(g/m
2)を計算した。
【0061】
(2)表面粗さ(Sa)
非接触式表面形状測定装置(Taylor/Hobson社製、タリサーフCCI6000)を使用し、実施例、比較例で作製した積層フィルムの接着層側の表面について、対物レンズ20倍で実態計測し、ロバストガウシアンフィルター0.25mmを使用して、試料の表面粗さを解析して、平均値からの偏差の算術平均値を、接着層の表面粗さSa(平均偏差)(nm)とした。
【0062】
(3)滑り性
JIS K7125記載の方法に準じて、実施例、比較例で作製した積層フィルムについて、接着層面同士の動摩擦係数(μ
D)を測定した。
【0063】
(4)ポリオレフィンフィルムとの密着性
実施例、比較例で得られた水性分散体のうち、オレフィン成分の主成分がプロピレンである酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体は、延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、OPU−1、厚み50μm(以下、PP))の未処理面上に、また、オレフィン成分の主成分がエチレンである酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体は、ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、V−1、厚み30μm(以下、PE))の未処理面上に、乾燥後の塗布量が約2g/m
2になるように、それぞれメイヤーバーで塗工して塗膜を得た。100℃で60秒間乾燥した後、塗膜面に粘着テープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した。塗膜面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
○:塗膜に全く剥がれがなかった。
△:塗膜の一部に剥がれが生じた。
×:塗膜の全て剥がれた。
本発明においては、○であるものを実用に耐えうるものとした。
【0064】
(5)耐温水性
上記(4)に記載された方法で作製した、フィルム上に水性分散体を塗工し乾燥して得られた積層体を、5cm角にカットして、40℃の温水に24時間浸漬し、外観を観察し、耐温水性を3段階で評価した。
○:白化なし、塗膜の膨潤なし
△:若干の白化あり、塗膜の膨潤なし
×:白化あり、塗膜の膨潤あり
【0065】
3.包装材料(金属箔/接着層/シーラント層)の特性
(1)金属箔とシーラント層との接着性
金属箔/接着層/シーラント層(PEまたはPPフィルム)の構成を有する包装材料を、15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で塗膜の剥離強度を測定することで、金属箔と、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムからなるシーラント層との接着性を評価した。
本発明においては、金属箔とシーラント層との剥離強度が、5N/15mm以上であるものを、実用に耐えうるものであるとした。
【0066】
(2)耐薬品性
金属箔/接着層/シーラント層(PEまたはPPフィルム)の構成を有する包装材料を、疑似ガソリン(オクタン/トルエン=1/1(質量比))中、50℃で3か月保管後、上記(1)と同様に剥離強度を測定して、耐薬品性を評価した。
【0067】
4.包装材料(バリア層(基材/金属箔)/接着層/シーラント層)の特性
(1)金属箔とシーラント層との接着性
バリア層(基材/金属箔)/接着層/シーラント層の構成を有する包装材料を幅15mmで切り出し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、Tピール法により、試験片の端部からバリア層とシーラント層との界面を剥離して、剥離強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分で行った。なお、ラミネート強度が高い場合には、測定時にシーラントフィルムに伸び、切れなどが発生して剥離が不可能となることがあるが、このような現象はラミネート状態として最も好ましい。
【0068】
(2)耐内容物性
バリア層(基材/金属箔)/接着層/シーラント層の構成を有する包装材料を2枚用い、シーラント層を内側とし、シール幅10mmで三方をヒートシールした。内容物として毛染め剤(hoyu社製CIELO クリームタイプ 1番)、パーマ液(ベネゼル社製、ウェーブパーマ液、しっかりウェーブ)、殺虫剤(住商アグロインターナショナル社製、サイベーレ 0,5SC)、消毒液(キョーリン製薬社製、ミルトン 液体タイプ)、美容エキス(ヤマダ薬研社製、サンショウエキス21−ET)各5gを、三方シールした袋にそれぞれ入れ、残り一方をシール幅10mmでヒートシールすることで、内容物が密封された包装袋を作製した。60℃で2週間保持した後開封し、密封に使用した包装材料の剥離強度を上記(1)と同様にして測定し、耐内容物性を評価した。
【0069】
酸変性ポリオレフィン樹脂およびその水性分散体、不揮発性水性化助剤の水溶液は、以下のものを使用した。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂A−1
アルケマ社製、ボンダインHX−8290(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸=80/18/2(質量%))。
【0070】
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂A−2
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=64.8/23.9/11.3(質量%))280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って撹拌下、酸成分として無水マレイン酸32.0g、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂A−2(プロピレン/ブテン/エチレン/無水マレイン酸=60.7/22.4/10.6/6.3(質量%))を得た。
【0071】
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂A−3
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/1−ブテン=80/20(質量%))280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂A−3(プロピレン/1−ブテン/無水マレイン酸=76.4/19.1/4.5(質量%))を得た。
【0072】
2.酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂A−1、60.0gのイソプロパノール、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミンおよび175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
【0073】
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂A−2、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、6.9gのN,N−ジメチルエタノールアミンおよび188.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
【0074】
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂A−3、45.0gのテトラヒドロフラン、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミンおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのN,N−ジメチルエタノールアミンおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、白色半透明の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
【0075】
得られた酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の特性とその製造に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂の特性を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
3.不揮発性水性化助剤の水溶液の製造
ポリビニルアルコールとして、日本酢ビ・ポバール社製VC−10(重合度1000(重量平均分子量40000)、ケン化度99.5モル%)を用い、水との加熱、攪拌によって8質量%ポリビニルアルコール水溶液を得た。
【0078】
実施例1
酸変性ポリオレフィン樹脂A−1の水性分散体E−1に、固形分濃度が8質量%となるように水を加え攪拌して水性分散体を調製した。
(金属箔/接着層からなる積層フィルムの作製)
得られた水性分散体を、アルミニウム箔(三菱アルミニウム社製、厚み15μm)上に乾燥後の塗布量が約2g/m
2になるようにメイヤーバーでコートし、180℃で10秒間乾燥して、アルミニウム箔上に接着層が形成された積層フィルムを得た。
(金属箔/接着層/シーラント層からなる包装材料の作製)
得られた積層フィルムの接着層に、シーラント層形成用ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、V−1、厚み30μm)(PE)のコロナ処理面が接するように重ね合わせて、ヒートプレス機(シール圧3kg/cm
2で5秒間)にて120℃でプレスして(ドライラミネート)、金属箔/接着層/シーラント層からなる構成の包装材料を得た。
【0079】
(バリア層(基材/金属箔)/接着層からなる積層フィルムの作製)
厚み12μmの二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレット)からなる基材層と、厚み7μmのアルミニウム箔(UACJ製箔社製1N30)とを二液混合型ポリウレタン系接着剤(主剤:ロックペイント社製RU−004、硬化剤:H−1)を介して貼り合わせ、これをバリア層として準備した。
次に、バリア層のアルミニウム箔面に、乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように、水性分散体を塗布し、180℃で10秒間乾燥することで接着層を形成した。
(基材/金属箔/接着層/シーラント層からなる包装材料の作製)
接着層の上にポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製LC600A)を厚みが60μmになるように、ダイ直下の樹脂温度が320℃の条件で押出ラミネートし、バリア層(基材/金属箔)/接着層/シーラント層からなる構成の包装材料を得た。
【0080】
実施例2〜15、比較例1〜10
酸変性ポリオレフィン樹脂の種類と不揮発性水性化助剤の含有量とが表2に示すものとなるように、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体と不揮発性水性化助剤の水溶液を混合して水性分散体を得て、また乾燥温度や時間を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルム、包装材料を得た。
なお、酸変性ポリオレフィン樹脂として、オレフィン成分の主成分がプロピレンである樹脂A−2、A−3を含有する水性分散体E−2、E−3を使用した実施例、比較例では、金属箔/接着層/シーラント層からなる包装材料の作製において、また、基材/金属箔/接着層/シーラント層からなる包装材料の作製においても、シーラント層形成用延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、OPU−1、厚み50μm)(PP)を用いて、120℃でプレスしてシーラント層を形成した。
【0081】
実施例1〜15および比較例1〜10で得られた積層フィルム、包装材料の特性を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
実施例1〜15では、積層フィルムの接着層面の表面粗さ(Sa)が、本発明で規定する範囲内であったため、接着層面にシーラント層が形成された包装材料は、耐薬品性や耐内容物性に優れるものであった。さらに、実施例1〜10、12〜13、15では、不揮発性水性化助剤の範囲がより好ましい範囲であったため、接着層の耐温水性に優れるものであった。さらに、実施例1、3、8、10、11では、表面粗さ(Sa)がさらに好ましい範囲であったため、いずれの内容物に対しても優れた耐内容物性を示すものであった。
一方、比較例1〜10では、積層フィルムの接着層面の表面粗さ(Sa)が本発明で規定する範囲外であったため、得られた包装材料は、耐薬品性や耐内容物性が劣るものであった。