【文献】
高野 慧、他,スラリー移送時の鉱石劣化が配管摩耗に及ぼす影響に関する実験的研究[online],日本船舶海洋工学会講演会論文集,日本,2015年,第20号,p. 545-548,[インターネット][検索日:2021/2/12]<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/conf/20/0/_contents/-char/ja?from=2> でダウンロード可能。<DOI:https://doi.org/10.14856/conf.20.0_545 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉱石スラリー循環式摩耗試験における配管類の内壁の摩耗特性に影響する鉱石の摩耗度を評価する方法であって、前記摩耗試験前の複数の前記鉱石の中から無作為に試験前評価用鉱石を抽出するステップ1と、前記試験前評価用鉱石の流体的特性を測定し前記摩耗試験前のデータを得るステップ2と、前記鉱石を用いて前記配管類の前記摩耗試験を行うステップ3と、前記摩耗試験後の複数の前記鉱石の中から無作為に試験後評価用鉱石を抽出するステップ4と、前記試験後評価用鉱石の前記流体的特性を測定し前記摩耗試験後のデータを得るステップ5と、前記摩耗試験前の前記データと前記摩耗試験後の前記データとを比較し比較結果を得るステップ6とを備えたことを特徴とする鉱石の摩耗度評価方法。
前記ステップ2及び前記ステップ5における前記流体的特性の測定は、前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を流体中に沈めた場合の、それぞれの沈降時間又は沈降速度を計測する測定であることを特徴とする請求項1に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
前記ステップ2及び前記ステップ5における前記流体的特性の測定は、回転式流体抵抗計に前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を載置して流体中に臨ませ、それぞれの流体抵抗を計測する測定であることを特徴とする請求項1に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
前記ステップ2及び前記ステップ5における前記流体的特性の測定は、配管の中を流れる流体中に前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を投入し、それぞれの移動速度を計測する測定であることを特徴とする請求項1に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
前記移動速度の測定に当たっては、前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石が、前記配管の内面に接触することなく前記流体中を浮遊して移動する行程のみから前記移動速度を算出したことを特徴とする請求項6に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
前記ステップ6における前記比較結果を、予め定めた閾値とさらに比較し、前記鉱石を次の前記摩耗試験に用いるか否かを判定するステップ7を備えたことを特徴とする請求項1から請求項8のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
前記ステップ1で無作為に抽出した前記試験前評価用鉱石及び前記ステップ4で無作為に抽出した前記試験後評価用鉱石のそれぞれの重量及び/又は粒度を測定し、前記ステップ7での判定に役立てることを特徴とする請求項9に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
前記ステップ6の前記比較結果を、予め定めた前記配管類の摩耗率と前記鉱石の摩耗度との関係に適用し、前記配管類の前記摩耗率を推定するステップ8を備えたことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度評価方法。
請求項2又は請求項3に記載の鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置であって、内部に前記流体を収納する鉛直カラムと、前記流体中に前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を沈めた場合の、それぞれの前記沈降時間を計測する計時手段又は前記沈降速度を検出する速度検出手段を備えたことを特徴とする鉱石の摩耗度測定装置。
請求項4又は請求項5に記載の鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置であって、前記流体を収納する流体収納容器と、前記流体収納容器に臨んだ前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石のそれぞれの前記流体抵抗を計測する前記回転式流体抵抗計を備えたことを特徴とする鉱石の摩耗度測定装置。
前記回転式流体抵抗計として回転式粘度計を用い、前記回転式粘度計は、前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を載置するための円盤及び軸部を有するスピンドルと、前記スピンドルを駆動するモーターと、前記スピンドルにかかるトルクを測定するトルク測定手段を備えたことを特徴とする請求項13に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
前記円盤に前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石の略重量に対応して設定したカウンターウェイトを有したことを特徴とする請求項14に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
前記円盤に前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を載せるターンテーブルを有したことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
前記スピンドルの前記軸部を支持する軸部支持手段を備え、前記軸部支持手段が前記円盤の上部の前記軸部と前記円盤の下部の前記軸部を支持するものであることを特徴とする請求項14から請求項17のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
前記流体収納容器の前記流体中に設けた前記スピンドルの前記円盤を下部から前記軸部が支え、前記流体収納容器の底面を貫いて前記軸部が設けられていることを特徴とする請求項14から請求項17のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
請求項6から請求項8のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置であって、前記配管として透明撮影配管と、前記透明撮影配管の中を移動する前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を撮影して前記移動速度を計測するための高速度カメラとを備えたことを特徴とする鉱石の摩耗度測定装置。
前記透明撮影配管にスケールを、前記高速度カメラの撮影範囲内に入るように併設したことを特徴とする請求項20から請求項22のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
前記透明撮影配管の上流側に、前記試験前評価用鉱石又は前記試験後評価用鉱石を投入するバッファタンクをさらに備えたことを特徴とする請求項20から請求項23のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度測定装置。
【背景技術】
【0002】
海底熱水鉱床などで採掘された鉱石を海上の母船あるいは採掘基地まで輸送(揚鉱)する場合、鉱石を海水と混合して鉱石スラリーとし、これを樹脂製のホースや金属製の配管及びポンプを用いて揚鉱する方法が提案されている(非特許文献1)。
採掘された直後の鉱石は比較的鋭い角部を有しており、スラリー輸送中はその鋭い角部を有した鉱石が管内水流によってホースや配管等の配管類の内壁に衝突するため、内壁は次第に摩耗していく。従って、採掘・揚鉱システムの稼働期間中に配管類の内壁が摩耗により破損して使用不能に陥ることのないよう、配管類の内壁の摩耗特性を把握しておくことが重要となる。
通常、このような配管類の内壁の摩耗特性は、
図18に示すような模擬鉱石を用いたスラリー循環式摩耗試験装置によって評価される(非特許文献2)。
図18に示すスラリー循環式摩耗試験装置800は、水を満たしたタンク801の上部から模擬鉱石を一定量投入してスラリーとし、このスラリーをスラリーポンプ802で配管内を循環させることにより、途中に接続した摩耗量計測部803において配管類の内壁の摩耗試験を行うものである。なお、
図18において、矢印はスラリーの循環方向を示す。また、摩耗量計測部803の下流側に電磁流量計804が設けられている。
模擬鉱石は、スラリー循環式摩耗試験装置800の配管内を循環するため、摩耗試験の開始後、時間の経過に伴って模擬鉱石が配管類の内壁等との多数回の衝突により摩耗し、角が取れて丸くなったり粒径が小さくなったりする。従って、摩耗量計測部803を摩耗量計測配管とした場合、
図19に示すように、摩耗量計測配管の摩耗率(単位時間当たりの摩耗量)が顕著に低下することが明らかとなっている(非特許文献2)。なお、
図19は、鉱石スラリー循環時間と配管摩耗率との関係を示す図であり、縦軸が配管摩耗率(g/hour)、横軸が鉱石スラリー循環時間(hour)である。
一方、実際の揚鉱現場では、配管類を通過するスラリー中の鉱石は採掘直後の摩耗していない鋭い角部を有したものが殆どであり、摩耗試験時のように循環することもないので、揚鉱時間が経過しても鉱石の摩耗によって配管類の摩耗率が変化することはない。
従って、模擬鉱石を交換せずに連続的に行うスラリー循環式摩耗試験で得られる配管類の摩耗率は、実際の配管類における摩耗率よりも試験時間の経過と共に次第に小さくなり、結果的に危険側の評価となってしまう。この問題を避けるためには、スラリー循環式摩耗試験に用いるスラリー中の鉱石の摩耗度(円磨度、角部の取れ具合)を簡便かつ定量的に評価し、これを考慮した上で実際の配管類の摩耗特性を把握する必要がある。
【0003】
これまでに、石又は粒子の形状や円磨度を分類・評価する方法として以下のようなものが提案されている。
非特許文献3には、石の長径(a軸)と中間径(b軸)との比(b/a)、及び中間径と短径(c軸)との比(c/b)をもとに、石の形状を球状(b/a>2/3 and c/b>2/3)、円盤状(b/a>2/3 and c/b<2/3)、棒状(b/a<2/3 and c/b>2/3)、又は小判状(b/a<2/3 and c/b<2/3)に分類することが記載されている。
また、非特許文献4には、円磨度印象図との比較により、円磨度を0.1〜0.9までの9段階に分類することが記載されている。
また、非特許文献5においては、マンガン団塊を中心に粗大非球形粒子の水力学的物性について、単一粒子の自由・干渉沈降速度、粒群の浮遊速度等を実験的に検討している。
【0004】
また、特許文献1には、3個の光電検知器を用いて、スラリーの沈降速度を測定するスラリー平均粒子径測定装置が開示されている。
また、特許文献2には、試料セルの下部にレーザー光を照射し、その散乱光の空間強度分布から粒度分布を測定する粒度分布測定装置が開示されている。
また、特許文献3には、粘度検出部を試料中で回転させ、試料から受けるトルクを歪みゲージで感知し、歪みゲージの抵抗変化をディジタル表示する回転式粘度計が開示されている。
また、特許文献4には、内筒の回転駆動系の従動軸をエアベアリング装置で軸支し、トーションばねのねじれ角を測定するロータリエンコーダのディスクを駆動軸及び従動軸に直接取り付けた回転式粘度計が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献3では、球状や円盤状と表記されているが、石の形状は円磨度と関係がなく、例えば鋭い角部を有する石であっても形状が立方体に近ければ球状と分類されてしまう。
また、非特許文献4は、分類者の主観が入ってしまい、再現性に乏しい。
また、非特許文献5は、粒子の沈降実験から、粒子の抗力係数や沈降速度とAlbartsonの形状係数S
f=c/√(ab)の関係を導いているが、非特許文献3に記載の方法と同様に、形状係数S
fと粒子の円磨度とは関係がなく、粒子の摩耗度は考慮されていない。
【0008】
また、特許文献1の測定装置は、平均粒子径を測定するものであり、鉱石の摩耗度(円磨度、角部の取れ具合)を測定及び評価するものではない。
また、特許文献2の測定装置は、粒度分布を測定するものであり、鉱石の摩耗度を測定及び評価するものではない。
また、特許文献3及び4は回転式粘度計に関するものであるが、流体の粘度を用いて鉱石の摩耗度を測定及び評価することについては何ら記載されていない。
このように、配管類の摩耗に大きく影響する鉱石の摩耗度を簡便に評価している従来技術は見当たらない。
【0009】
そこで本発明は、ホースや配管等の配管類の摩耗に大きく影響する鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる、鉱石の摩耗度評価方法及び鉱石の摩耗度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載に対応した鉱石の摩耗度評価方法においては、鉱石スラリー循環式摩耗試験における配管類の内壁の摩耗特性に影響する鉱石の摩耗度を評価する方法であって、摩耗試験前の複数の鉱石の中から無作為に試験前評価用鉱石を抽出するステップ1と、試験前評価用鉱石の流体的特性を測定し摩耗試験前のデータを得るステップ2と、鉱石を用いて配管類の摩耗試験を行うステップ3と、摩耗試験後の複数の鉱石の中から無作為に試験後評価用鉱石を抽出するステップ4と、試験後評価用鉱石の流体的特性を測定し摩耗試験後のデータを得るステップ5と、摩耗試験前のデータと摩耗試験後のデータとを比較し比較結果を得るステップ6とを備えたことを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、鉱石は摩耗度によって流体的特性が変化するため、試験前評価用鉱石及び試験後評価用鉱石の流体的特性を測定し、その比較結果を得ることで、鉱石の摩耗度を定量的に評価できる。そのため、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0011】
請求項2記載の本発明は、ステップ2及びステップ5における流体的特性の測定は、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を流体中に沈めた場合の、それぞれの沈降時間又は沈降速度を計測する測定であることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便な測定方法で取得することができる。
【0012】
請求項3記載の本発明は、ステップ6における比較結果は、それぞれの沈降時間の比又は沈降速度の比であることを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
【0013】
請求項4記載の本発明は、ステップ2及びステップ5における流体的特性の測定は、回転式流体抵抗計に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を載置して流体中に臨ませ、それぞれの流体抵抗を計測する測定であることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便な測定方法で取得することができる。
【0014】
請求項5記載の本発明は、ステップ6における比較結果は、それぞれの流体抵抗の比であることを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
【0015】
請求項6記載の本発明は、ステップ2及びステップ5における流体的特性の測定は、配管の中を流れる流体中に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を投入し、それぞれの移動速度を計測する測定であることを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便な測定方法で取得することができる。
【0016】
請求項7記載の本発明は、移動速度の測定に当たっては、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石が、配管の内面に接触することなく流体中を浮遊して移動する行程のみから移動速度を算出したことを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、鉱石の摩耗度をより適切に評価・分類することができる。
【0017】
請求項8記載の本発明は、ステップ6における比較結果は、それぞれの移動速度としての比であることを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
【0018】
請求項9記載の本発明は、ステップ6における比較結果を、予め定めた閾値とさらに比較し、鉱石を次の摩耗試験に用いるか否かを判定するステップ7を備えたことを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、角が取れて丸くなった鉱石を除外して、摩耗試験に用いる鉱石と揚鉱現場等で採掘される実際の鉱石との乖離を極力少なくできる。従って、実際の使用状況に近い条件下で配管類の摩耗試験を実施できる。
【0019】
請求項10記載の本発明は、ステップ1で無作為に抽出した試験前評価用鉱石及びステップ4で無作為に抽出した試験後評価用鉱石のそれぞれの重量及び/又は粒度を測定し、ステップ7での判定に役立てることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、摩耗試験に用いる鉱石の継続使用可否をより正確に判定することができる。
【0020】
請求項11記載の本発明は、ステップ6の比較結果を、予め定めた配管類の摩耗率と鉱石の摩耗度との関係に適用し、配管類の摩耗率を推定するステップ8を備えたことを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、摩耗試験に用いる鉱石の摩耗度を考慮したうえで配管類の摩耗特性を把握できる。従って、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0021】
請求項12記載に対応した鉱石の摩耗度測定装置においては、請求項2又は請求項3に記載の鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置であって、内部に流体を収納する鉛直カラムと、流体中に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を沈めた場合の、それぞれの沈降時間を計測する計時手段又は沈降速度を検出する速度検出手段を備えたことを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便に取得することができる。
【0022】
請求項13記載に対応した鉱石の摩耗度測定装置においては、請求項4又は請求項5に記載の鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置であって、流体を収納する流体収納容器と、流体収納容器に臨んだ試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石のそれぞれの流体抵抗を計測する回転式流体抵抗計を備えたことを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、試験前評価用鉱石及び試験後評価用鉱石の流体的特性を測定することにより、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便に取得することができる。
【0023】
請求項14記載の本発明は、回転式流体抵抗計として回転式粘度計を用い、回転式粘度計は、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を載置するための円盤及び軸部を有するスピンドルと、スピンドルを駆動するモーターと、スピンドルにかかるトルクを測定するトルク測定手段を備えたことを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、摩耗試験前後の鉱石のデータを、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を回転式粘度計の円盤に載せて回転させトルクを測定することによって取得できる。
【0024】
請求項15に記載の本発明は、円盤に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石の略重量に対応して設定したカウンターウェイトを有したことを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、軸部に関する重量や慣性モーメントのバランスを取り、スピンドルの偏心や回転ムラを防止できる。
【0025】
請求項16に記載の本発明は、円盤に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を載せるターンテーブルを有したことを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、ターンテーブルに載置された試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石は、周囲の流体から受ける流体力によって、抗力係数がなるべく小さくなるような向きに自ずと回転するため、流体中を自由沈降する場合に近い条件で流体抵抗を測定できる。
【0026】
請求項17に記載の本発明は、ターンテーブルをスピンドルの回転軸に関して軸対称の位置に2個有したことを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、2個の試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石について、平均的な流体抵抗を同時に測定することができる。また、スピンドルの偏心や回転ムラを防止できる。
【0027】
請求項18記載の本発明は、スピンドルの軸部を支持する軸部支持手段を備え、軸部支持手段が円盤の上部の軸部と円盤の下部の軸部を支持するものであることを特徴とする。
請求項18に記載の本発明によれば、スピンドルが偏心することを無くし、スピンドルの支持機構やトルク測定手段の破損を防止できる。
【0028】
請求項19記載の本発明は、流体収納容器の流体中に設けたスピンドルの円盤を下部から軸部が支え、流体収納容器の底面を貫いて軸部が設けられていることを特徴とする。
請求項19に記載の本発明によれば、鉱石を円盤の中央に載せることができるため、鉱石の並進運動による流体抵抗を除き、鉱石の回転運動による流体抵抗のみを測定することができる。
【0029】
請求項20記載に対応した鉱石の摩耗度測定装置においては、請求項6から請求項8のうちの1項に記載の鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置であって、配管として透明撮影配管と、透明撮影配管の中を移動する試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を撮影して移動速度を計測するための高速度カメラとを備えたことを特徴とする。
請求項20に記載の本発明によれば、試験前評価用鉱石及び試験後評価用鉱石の流体的特性を測定することにより、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便に取得することができる。
【0030】
請求項21記載の本発明は、高速度カメラを所定の距離を隔てて2台設けたことを特徴とする。
請求項21に記載の本発明によれば、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石が一方の高速度カメラに対応する位置から他方の高速度カメラに対応する位置に至る全移動行程に基づいて鉱石の速度を算出することができる。また、一方の高速度カメラ又は他方の高速度カメラの画角内における試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石の移動行程に基づいて鉱石の速度を算出することができる。
【0031】
請求項22記載の本発明は、2台の高速度カメラは、同期をとって試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を撮影することを特徴とする。
請求項22に記載の本発明によれば、2台の高速度カメラの撮影タイミングを合わせることができる。
【0032】
請求項23記載の本発明は、透明撮影配管にスケールを、高速度カメラの撮影範囲内に入るように併設したことを特徴とする。
請求項23に記載の本発明によれば、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石の移動距離の把握が容易となる。
【0033】
請求項24記載の本発明は、透明撮影配管の上流側に、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を投入するバッファタンクをさらに備えたことを特徴とする。
請求項24に記載の本発明によれば、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を円滑に配管に投入することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の鉱石の摩耗度評価方法によれば、鉱石は摩耗度によって流体的特性が変化するため、試験前評価用鉱石及び試験後評価用鉱石の流体的特性を測定し、その比較結果を得ることで、鉱石の摩耗度を定量的に評価できる。そのため、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0035】
また、ステップ2及びステップ5における流体的特性の測定は、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を流体中に沈めた場合の、それぞれの沈降時間又は沈降速度を計測する測定である場合には、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便な測定方法で取得することができる。
【0036】
また、ステップ6における比較結果は、それぞれの沈降時間の比又は沈降速度の比である場合には、鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
【0037】
また、ステップ2及びステップ5における流体的特性の測定は、回転式流体抵抗計に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を載置して流体中に臨ませ、それぞれの流体抵抗を計測する測定である場合には、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便な測定方法で取得することができる。
【0038】
また、ステップ6における比較結果は、それぞれの流体抵抗の比である場合には、鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
【0039】
また、ステップ2及びステップ5における流体的特性の測定は、配管の中を流れる流体中に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を投入し、それぞれの移動速度を計測する測定である場合には、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便な測定方法で取得することができる。
【0040】
また、移動速度の測定に当たっては、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石が、配管の内面に接触することなく流体中を浮遊して移動する行程のみから移動速度を算出した場合には、鉱石の摩耗度をより適切に評価・分類することができる。
【0041】
また、ステップ6における比較結果は、それぞれの移動速度としての比である場合には、鉱石の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
【0042】
また、ステップ6における比較結果を、予め定めた閾値とさらに比較し、鉱石を次の摩耗試験に用いるか否かを判定するステップ7を備えた場合には、角が取れて丸くなった鉱石を除外して、摩耗試験に用いる鉱石と揚鉱現場等で採掘される実際の鉱石との乖離を極力少なくできる。従って、実際の使用状況に近い条件下で配管類の摩耗試験を実施できる。
【0043】
また、ステップ1で無作為に抽出した試験前評価用鉱石及びステップ4で無作為に抽出した試験後評価用鉱石のそれぞれの重量及び/又は粒度を測定し、ステップ7での判定に役立てる場合には、摩耗試験に用いる鉱石の継続使用可否をより正確に判定することができる。
【0044】
また、ステップ6の比較結果を、予め定めた配管類の摩耗率と鉱石の摩耗度との関係に適用し、配管類の摩耗率を推定するステップ8を備えた場合には、摩耗試験に用いる鉱石の摩耗度を考慮したうえで配管類の摩耗特性を把握できる。従って、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0045】
本発明の鉱石の摩耗度測定装置によれば、試験前評価用鉱石及び試験後評価用鉱石の流体的特性を測定することにより、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便に取得することができる。
【0046】
また、回転式流体抵抗計として回転式粘度計を用い、回転式粘度計は、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を載置するための円盤及び軸部を有するスピンドルと、スピンドルを駆動するモーターと、スピンドルにかかるトルクを測定するトルク測定手段とを備えた場合には、摩耗試験前後の鉱石のデータを、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を回転式粘度計の円盤に載せて回転させトルクを測定することによって取得できる。
【0047】
また、円盤に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石の略重量に対応して設定したカウンターウェイトを有した場合には、軸部に関する重量や慣性モーメントのバランスを取り、スピンドルの偏心や回転ムラを防止できる。
【0048】
また、円盤に試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を載せるターンテーブルを有した場合には、ターンテーブルに載置された試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石は、周囲の流体から受ける流体力によって、抗力係数がなるべく小さくなるような向きに自ずと回転するため、流体中を自由沈降する場合に近い条件で流体抵抗を測定できる。
【0049】
また、ターンテーブルをスピンドルの回転軸に関して軸対称の位置に2個有した場合には、2個の試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石について、平均的な流体抵抗を同時に測定することができる。また、スピンドルの偏心や回転ムラを防止できる。
【0050】
また、スピンドルの軸部を支持する軸部支持手段を備え、軸部支持手段が円盤の上部の軸部と円盤の下部の軸部を支持するものである場合には、スピンドルが偏心することを無くし、スピンドルの支持機構やトルク測定手段の破損を防止できる。
【0051】
また、流体収納容器の流体中に設けたスピンドルの円盤を下部から軸部が支え、流体収納容器の底面を貫いて軸部が設けられている場合には、鉱石を円盤の中央に載せることができるため、鉱石の並進運動による流体抵抗を除き、鉱石の回転運動による流体抵抗のみを測定することができる。
【0052】
配管として透明撮影配管と、透明撮影配管の中を移動する試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を撮影して移動速度を計測するための高速度カメラとを備えた本発明の鉱石の摩耗度測定装置によれば、試験前評価用鉱石及び試験後評価用鉱石の流体的特性を測定することにより、摩耗試験前後の鉱石のデータを簡便に取得することができる。
【0053】
また、高速度カメラを所定の距離を隔てて2台設けた場合には、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石が一方の高速度カメラに対応する位置から他方の高速度カメラに対応する位置に至る全移動行程に基づいて鉱石の速度を算出することができる。また、一方の高速度カメラ又は他方の高速度カメラの画角内における試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石の移動行程に基づいて鉱石の速度を算出することができる。
【0054】
また、2台の高速度カメラは、同期をとって試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を撮影する場合には、2台の高速度カメラの撮影タイミングを合わせることができる。
【0055】
また、透明撮影配管にスケールを、高速度カメラの撮影範囲内に入るように併設した場合には、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石の移動距離の把握が容易となる。
【0056】
また、透明撮影配管の上流側に、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を投入するバッファタンクをさらに備えた場合には、試験前評価用鉱石又は試験後評価用鉱石を円滑に配管に投入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に、本発明の一実施形態による鉱石の摩耗度評価方法及び鉱石の摩耗度測定装置について説明する。
【0059】
図1は本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の概略図である。
鉱石の摩耗度測定装置20は、内部に水やオイル等の流体30を収納する鉛直カラム21を備える。
鉛直カラム21は、例えば、外径35.4mm、内径31.4mm(板厚2mm)、長さ1000mmの透明アクリルパイプである。鉛直カラム21(透明アクリルパイプ)の下端は栓により塞がれている。流体30は、鉛直カラム21の上端近傍まで満たされており、上面30Aから底面30Bまでの深さを有する。
【0060】
図2は本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法のフローチャートである。
本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法は、まず、鉱石スラリー循環式摩耗試験に用いる前の複数の鉱石10の中から、無作為に試験前評価用鉱石10aを抽出する(ステップ1)。抽出した試験前評価用鉱石10aの集合をグループAとする。
図3は本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる(模擬)鉱石10の外観写真である。鉱石10の大きさは、砕石5号(兵庫県姫路市家島町西島産)、粒径約10〜20mmであり、岩種は、流紋岩である。
図3(a)は、試験前評価用鉱石10a(グループA)を撮影したものである。試験前評価用鉱石10aは、鋭い角部を有していることが分かる。
【0061】
ステップ1で抽出した試験前評価用鉱石10aのそれぞれを、鉛直カラム21に満たされた流体30中に静かに自由沈降させ、流体30の上面30Aから底面30Bに達するまでの沈降時間を計測する。この沈降時間を、鉱石10の摩耗試験前のデータとして記録する(ステップ2)。
また、試験前評価用鉱石10aの重量と粒度の少なくとも一方を計測し、その計測結果を鉱石10の摩耗試験前のデータに含めることが好ましい。
なお、沈降時間に代えて、試験前評価用鉱石10aの沈降速度を計測し、その沈降速度を、鉱石10の摩耗試験前のデータとしてもよい。
【0062】
次に、鉱石10を用いて配管類の摩耗試験を行う(ステップ3)。
配管類は、例えば、ホース、配管、継手、又はポンプである。
摩耗試験は、水を満たしたタンクに鉱石10を一定量投入してスラリーとし、スラリーを所定時間循環させて配管類の内壁の摩耗率を計測し、配管類の摩耗特性を把握するものであり、例えば、
図18に示すスラリー循環式摩耗試験装置800によって行う。
【0063】
次に、摩耗試験に用いた後の複数の鉱石10の中から、無作為に試験後評価用鉱石10bを抽出する(ステップ4)。抽出した試験後評価用鉱石10bの集合をグループBとする。
図3(b)は、摩耗試験を90分間行った後の複数の鉱石10の中から抽出した試験後評価用鉱石10b(グループB)を撮影したものである。試験後評価用鉱石10bは、摩耗試験中の衝突により角部が取れて丸みを帯びている(円磨度が増している)ことが分かる。
【0064】
ステップ4で抽出した試験後評価用鉱石10bのそれぞれを、鉛直カラム21に満たされた流体30中に静かに自由沈降させ、流体30の上面30Aから底面30Bに達するまでの沈降時間を計測する。この沈降時間を、鉱石10の摩耗試験後のデータとして記録する(ステップ5)。
また、試験後評価用鉱石10bの重量と粒度の少なくとも一方を計測し、その計測結果を鉱石10の摩耗試験後のデータに含めることが好ましい。
なお、沈降時間に代えて、試験後評価用鉱石10bの沈降速度を計測し、その沈降速度を、鉱石10の摩耗試験後のデータとしてもよい。
【0065】
次に、ステップ2で得られた摩耗試験前のデータとステップ5で得られた摩耗試験後のデータとを比較し、摩耗試験の前後における鉱石10についての比較結果を得る(ステップ6)。
比較結果は、例えば、試験前評価用鉱石10a(グループA)の沈降時間と試験後評価用鉱石10b(グループB)の沈降時間との差、又は試験前評価用鉱石10a(グループA)の沈降時間に対する試験後評価用鉱石10b(グループB)の沈降時間の比である。
鉱石10は摩耗度(主に角部の鋭さ)によって流体抵抗が変化するため、本実施形態のように試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを流体30中に自由沈降させて両者の流体的特性を測定し、その比較結果を得ることで、鉱石10の摩耗度を簡便かつ定量的に評価できる。
【0066】
次に、ステップ6で得られた比較結果を、予め定めた閾値と比較し、摩耗試験に使用した鉱石10を次の摩耗試験に用いるか否かを判定する(ステップ7)。
閾値は、次の摩耗試験に鉱石10を引き続き使用できるか否かの判定基準となる摩耗度である。比較結果(鉱石10の摩耗度)が基準となる摩耗度に適合しないと判定した場合には、鉱石10を新品に交換し、ステップ1に戻る。比較結果(鉱石10の摩耗度)が基準となる摩耗度に適合すると判定した場合には、ステップ3に戻る。これにより、角が取れて丸くなった鉱石10を除外して、摩耗試験に用いる鉱石10と揚鉱現場等で採掘される実際の鉱石との乖離を極力少なくできる。従って、実際の使用状況に近い条件下で摩耗試験を実施できる。
なお、摩耗試験前のデータ及び摩耗試験後のデータに、試験前評価用鉱石10a及び試験後評価用鉱石10bの重量と粒度の少なくとも一方が含まれている場合には、摩耗試験の前後における鉱石10の重量又は粒度の変化を判定の材料に用いて役立てることができる。これにより、摩耗試験に使用した鉱石10を次の摩耗試験に用いるか否かの判定の精度が向上する。例えば、重量の測定は電子天秤を用いて、粒度の測定はふるいを用いて行う。重量及び粒度にもそれぞれの閾値を定めて、流体的特性の比較結果に加え重量及び/又は粒度の比較結果を加味して判定を行う。
【0067】
また、ステップ6で得られた比較結果を、予め定めた配管類の摩耗率と鉱石10の摩耗度との関係に適用し、配管類の摩耗率を推定する(ステップ8)。
例えば、試験前評価用鉱石10a(グループA)の沈降時間に対する試験後評価用鉱石10b(グループB)の沈降時間の比と、
図19に示される配管摩耗率との相関図を作成し、作成した相関図の傾向に基づいて配管類の摩耗率を推定する。
これにより、摩耗試験に用いる鉱石10の摩耗度を考慮したうえで配管類の摩耗特性を把握できる。従って、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0068】
図4及び
図5は、ステップ6の比較結果の例を示す図である。
図4は流体30に水を用いた実験により得られた比較結果であり、
図5は流体30にシリコーンオイルを用いた実験により得られた比較結果である。用いたシリコーンオイルの動粘度は、25℃において3,000mm
2/secである。
流体30に水を用いた場合、シリコーンオイルを用いた場合のいずれにおいても、
図1に示す鉱石の摩耗度測定装置20を用いて、鉛直カラム21に満たされた流体30に試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを自由沈降させ、上面30Aから底面30Bに達するまでの沈降時間をストップウォッチにより測定した。また、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの重量を一つずつ測定した。なお、試験後評価用鉱石10bは、ステップ3における摩耗試験を90分間行った後の複数の鉱石10の中から抽出した。
図4及び
図5では、試験前評価用鉱石10a及び試験後評価用鉱石10bの双方について、沈降時間と重量の測定結果をプロットしている。横軸は重量(g)、縦軸は沈降時間(sec)であり、四角(□)は、試験前評価用鉱石10aの測定結果、丸(●)は、試験後評価用鉱石10bの測定結果を示す。また、点線Aは、試験前評価用鉱石10aの沈降時間の平均値を示し、点線Bは、試験後評価用鉱石10bの沈降時間の平均値を示す。
【0069】
図4及び
図5に示すように、試験前評価用鉱石10aと試験後評価用鉱石10bとでは明らかに沈降時間に差があり、鉱石10の摩耗度と沈降時間との間には強い相関が有ることが分かる。
ここで、流体30を水とした場合(
図4)には、グループAの平均沈降時間は3.1秒、グループBの平均沈降時間は2.4秒であり、平均沈降時間の比は、グループA:グループB=100:77であった。
また、流体30をシリコーンオイルとした場合(
図5)には、グループAの平均沈降時間は86.0秒、グループBの平均沈降時間は75.5秒であり、平均沈降時間の比は、グループA:グループB=100:88であった。
このように、鉱石10は摩耗度(主に角部の鋭さ)によって流体抵抗が変化するため、グループAとグループBとの平均沈降時間の比較、又はグループAに対するグループBの平均沈降時間比を算出することで、鉱石10の摩耗度を定量的かつ簡便に評価することができる。
なお、流体30に水を用いた場合には、流体30に水よりも粘度の高いシリコーンオイルを用いた場合に比較して試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの沈降時間が短いため、鉱石10の摩耗度を評価する時間を短縮できる。一方、流体30にシリコーンオイルなどの水よりも粘度の高い流体を用いた場合には、流体30に水を用いた場合に比較して試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの沈降時間が長いため、沈降時間または沈降速度の測定が容易になる。
【0070】
図6は、本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の他の実施形態を示す概略図である。
図6に示す鉱石の摩耗度測定装置120は、沈降時間を計測する計時手段122を有する。計時手段122を有することにより、沈降時間を自動計測して省力化できる。
計時手段122は、流体30に自由沈降させる試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが、高位置点Y1から低位置点Y2に沈降するまでの沈降時間を計測する。
高位置点Y1は、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの沈降開始点(上面30A)に設定されている。低位置点Y2は、鉱石10の沈降終了点(底面30B)に設定されている。なお、高位置点Y1又は低位置点Y2は、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの沈降途中となる位置に設定しても良い。
計時手段122は、上部レーザー変位計122Aと、上部レーザー変位計122Aよりも下方に配置される下部レーザー変位計122Bとからなる。
上部レーザー変位計122Aは、高位置点Y1の位置に設けられている。下部レーザー変位計122Bは、低位置点Y2に設けられている。上部レーザー変位計122A及び下部レーザー変位計122Bは、それぞれ、レーザー光が鉛直カラム21を水平に横切る向きとなるように設けられている。上部レーザー変位計122A及び下部レーザー変位計122Bの出力の変化により、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが高位置点Y1及び低位置点Y2を通過した時刻を計測することができる。ニ地点の通過時刻に基づいて高位置点Y1から低位置点Y2までの沈降時間を算出する。この沈降時間を、試験前評価用鉱石10aの摩耗試験前のデータ又は試験後評価用鉱石10bの摩耗試験後のデータとして記録する。
なお、
図6のように試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの沈降終了点(底面30B)を低位置点Y2に設定する場合には、下部レーザー変位計122Bの代わりに圧力センサーを用い、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが低位置点Y2に達したことを圧力により検知してもよい。また、圧力センサーだけを用いて、上面30A(Y1)に試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを投入したときの圧力変化と、底面30B(Y2)に達したときの圧力変化から、上面30Aから底面30Bに到達するまでの沈降時間を求めてもよい。
また、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの沈降速度を計測し、その沈降速度を、鉱石10の摩耗試験前のデータ又は鉱石10の摩耗試験後のデータとする場合には、計時手段122に代えて、速度センサー等の速度検出手段を設ければよい。
【0071】
また、計時手段122に撮像手段を用いてもよい。この場合は、高速度ビデオカメラ等を用いて、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが高位置点Y1から低位置点Y2に沈降する鉛直カラム21内の様子を収めた動画を撮影する。動画には0.1秒、0.01秒など、1秒未満の位まで表示する時刻表示を含めておくことで、撮影後に画像を解析して高位置点Y1から低位置点Y2までの沈降時間を算出できる。
なお、画像解析においてPIV(Particle Image Velocimetry=粒子イメージ流速計測法)を用いた場合には、沈降時間又は沈降速度の定量的評価や、複数の試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの同時評価も可能となる。
【0072】
次に、本発明の他の実施形態による鉱石の摩耗度評価方法及び鉱石の摩耗度測定装置について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
図7は本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の第一実施形態を示す概略図である。
鉱石の摩耗度測定装置220は、水やオイル等の流体30を収納するビーカー等の流体収納容器221と、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの流体抵抗を計測する回転式流体抵抗計222を備える。円筒形の流体収納容器221には流体30が満たされている。
回転式流体抵抗計222は回転式粘度計であり、スピンドル223と、スピンドル223を駆動するモーター224と、スピンドル223にかかるトルクを測定するトルクセンサー等のトルク測定手段225とを備える。
スピンドル223は、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが載置される円盤223Aと、円盤223Aに接続された軸部223Bを有する。
円盤223Aは流体30中に水平に配置されており、軸部223Bとの接続部分を中心として回転する。
鉛直に立設した軸部223Bは、円盤223Aの中心を貫通しており、下端が円盤223Aの下面と流体収納容器221の底面30Bとの間に配置され、上端が流体30外に配置されている。軸部223Bの上端側には上から順にモーター224、トルク測定手段225、ジョイント226が設けられている。
【0074】
本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法を
図2を用いて説明する。
本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法は、まず、鉱石スラリー循環式摩耗試験に用いる前の複数の鉱石10の中から、無作為に試験前評価用鉱石10aを抽出する(ステップ1)。抽出した試験前評価用鉱石10aの集合をグループAとする。
【0075】
ステップ1で抽出した試験前評価用鉱石10aのそれぞれを、流体30中に配置された円盤223Aに一つずつ載せ、モーター224を制御してスピンドル223の回転数を段階的に変化させながら、トルク測定手段225の出力を用いて指示粘度値を計測する。この指示粘度値を、鉱石10の摩耗試験前のデータとして記録する(ステップ2)。
なお、円盤223Aには、試験前評価用鉱石10aの抗力係数がなるべく小さくなるように、
図7に示す試験前評価用鉱石10aの円盤223A周方向の投影面積が最も小さくなる向きに、試験前評価用鉱石10aを載せることが好ましい。
また、試験前評価用鉱石10aの重量と粒度の少なくとも一方を計測し、その計測結果を鉱石10の摩耗試験前のデータに含めることが好ましい。
【0076】
次に、鉱石10を用いて配管類の摩耗試験を行う(ステップ3)。
配管類は、例えば、ホース、配管、継手、又はポンプである。
摩耗試験は、水を満たしたタンクに鉱石10を一定量投入してスラリーとし、スラリーを所定時間循環させて配管類の内壁の摩耗率を計測し、配管類の摩耗特性を把握するものであり、例えば、
図18に示すスラリー循環式摩耗試験装置800によって行う。
【0077】
次に、摩耗試験に用いた後の複数の鉱石10の中から、無作為に試験後評価用鉱石10bを抽出する(ステップ4)。抽出した試験後評価用鉱石10bの集合をグループBとする。
【0078】
ステップ4で抽出した試験後評価用鉱石10bのそれぞれを、流体30中に配置された円盤223Aに一つずつ載せ、モーター224を制御してスピンドル223の回転数を段階的に変化させながら、トルク測定手段225の出力を用いて指示粘度値を計測する。この指示粘度値を、鉱石10の摩耗試験後のデータとして記録する(ステップ5)。
なお、円盤223Aには、試験後評価用鉱石10bの抗力係数がなるべく小さくなるように、
図7に示す試験後評価用鉱石10bの円盤223A周方向の投影面積が最も小さくなる向きに、試験後評価用鉱石10bを載せることが好ましい。
また、試験後評価用鉱石10bの重量と粒度の少なくとも一方を計測し、その計測結果を鉱石10の摩耗試験後のデータに含めることが好ましい。
【0079】
次に、ステップ2で得られた摩耗試験前のデータとステップ5で得られた摩耗試験後のデータとを比較し、摩耗試験の前後における鉱石10についての比較結果を得る(ステップ6)。
比較結果は、例えば、試験前評価用鉱石10a(グループA)の指示粘度値と試験後評価用鉱石10b(グループB)の指示粘度値との比もしくは差、又はスピンドル223のみの場合の指示粘度値に対する試験前評価用鉱石10a(グループA)又は試験後評価用鉱石10b(グループB)の指示粘度値の比である。
鉱石10は摩耗度(主に角部の鋭さ)によって流体抵抗が変化するため、本実施形態のように試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを流体30中で回転させて両者の流体的特性を測定し、その比較結果を得ることで、鉱石10の摩耗度を簡便かつ定量的に評価できる。
【0080】
次に、ステップ6で得られた比較結果を、予め定めた閾値と比較し、摩耗試験に使用した鉱石10を次の摩耗試験に用いるか否かを判定する(ステップ7)。
閾値は、次の摩耗試験に鉱石10を引き続き使用できるか否かの判定基準となる摩耗度である。比較結果(鉱石10の摩耗度)が基準となる摩耗度に適合しないと判定した場合には、鉱石10を新品に交換し、ステップ1に戻る。比較結果(鉱石10の摩耗度)が基準となる摩耗度に適合すると判定した場合には、ステップ3に戻る。これにより、角が取れて丸くなった鉱石10を除外して、摩耗試験に用いる鉱石10と揚鉱現場等で採掘される実際の鉱石との乖離を極力少なくできる。従って、実際の使用状況に近い条件下で配管類の摩耗試験を実施できる。
なお、摩耗試験前のデータ及び摩耗試験後のデータに、試験前評価用鉱石10a及び試験後評価用鉱石10bの重量と粒度の少なくとも一方が含まれている場合には、摩耗試験の前後における鉱石10の重量又は粒度の変化を判定の材料に用いて役立てることができる。これにより、摩耗試験に使用した鉱石10を次の摩耗試験に用いるか否かの判定の精度が向上する。
【0081】
また、ステップ6で得られた比較結果を、予め定めた配管類の摩耗率と鉱石10の摩耗度の関係に適用し、配管類の摩耗率を推定する(ステップ8)。
例えば、スピンドル223のみの場合の指示粘度値に対する試験前評価用鉱石10a(グループA)又は試験後評価用鉱石10b(グループB)の指示粘度値の比と、
図19に示される配管摩耗率との相関図を作成し、作成した相関図の傾向に基づいて配管類の摩耗率を推定する。
これにより、摩耗試験に用いる鉱石10の摩耗度を考慮したうえで配管類の摩耗特性を把握できる。従って、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0082】
図8から
図11は、ステップ6の比較結果の例を示す図である。
図8はスピンドル223の回転数を10rpmとした場合の比較結果であり、
図9はスピンドル223の回転数を12rpmとした場合の比較結果であり、
図10はスピンドル223の回転数を20rpmとした場合の比較結果であり、
図11はスピンドル223の回転数を30rpmとした場合の比較結果である。
いずれの場合においても、
図7に示す鉱石の摩耗度測定装置220を用いて計測した。なお、鉱石の摩耗度測定装置220を構成するにあたっては、B型回転式粘度計(Fungilab社製Viscolead one)にスピンドル(スピンドルタイプR2)を装着した。また、流体30には水を用いた。また、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの重量を一つずつ測定した。なお、試験後評価用鉱石10bは、摩耗試験を90分間行った後の複数の鉱石10の中から抽出した。
図8から
図11では、試験前評価用鉱石10a及び試験後評価用鉱石10bの双方について、スピンドル223のみ(試験前評価用鉱石10a及び試験後評価用鉱石10b無し)の場合の指示粘度に対する指示粘度比と、重量の測定結果をプロットしている。横軸は重量(g)、縦軸は指示粘度比であり、四角(□)は、グループAの測定結果、丸(●)は、グループBの測定結果を示す。また、点線Aは、グループAの指示粘度比の平均値を示し、点線Bは、グループBの指示粘度比の平均値を示す。
【0083】
図8から
図11に示すように、スピンドル223の回転数がいずれの場合においても、試験前評価用鉱石10aと試験後評価用鉱石10bとでは明らかに指示粘度比に差があり、鉱石10の摩耗度と指示粘度比との間には強い相関が有ることが分かる。
ここで、各回転数におけるグループAとグループBの指示粘度比の平均値を下表1に示す。
【0085】
また、
図12は、グループA及びグループBの指示粘度比と
図19に示したスラリー循環式摩耗試験における配管摩耗率との関係を示したものである。
図12に示すように、指示粘度比と配管摩耗率との間には明らかな正の相関が認められ、指示粘度比から配管摩耗率を推定することが可能なことが分かる。
【0086】
図13は、本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の第ニ実施形態を示す概略図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
第二実施形態による鉱石の摩耗度測定装置320の基本構造は、
図7に示す第一実施形態による鉱石の摩耗度測定装置220と同じであるが、第二実施形態による鉱石の摩耗度測定装置320は、スピンドル223を支持する軸部支持手段321を備える。
軸部支持手段321は、軸部223Bのうち、円盤223Aよりも上部側を支持する上軸部支持手段321Aと、円盤223Aよりも下部側を支持する下軸部支持手段321Bとからなる。上軸部支持手段321Aは、円盤223Aとジョイント226との間の軸部223Bの外周部分に、軸部223Bを側方から支持するように配置される。また、下軸部支持手段321Bは、軸部223Bの下端に、軸部223Bを下方から支持するように配置される。
円盤223Aに試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを載せると、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの重量によってスピンドル223が偏心して、スピンドル223の支持機構やトルク測定手段225が破損してしまう可能性がある。そこで、スピンドル223を支える軸部支持手段321を設けることで、スピンドル223の偏心を防止できる。なお、上軸部支持手段321A及び下軸部支持手段321Bは、スピンドル223の回転を妨げてトルク計測値に有意な影響を及ぼすことのないようにスピンドル223を回転自由に支持する構造としている。
また、流体30に水よりも粘度の高いオイルなどを用いる場合にも対応できるように、モーター224のトルクと、トルク測定手段225の容量を、通常のB形回転式粘度計よりも大きくしている。
【0087】
また、第二実施形態による鉱石の摩耗度測定装置320は、円盤223A上に軸部223Bを中心とする同心円状のマーク322を有する。測定時には試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを入れ替えて測定するが、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの(軸部223B方向に投影した場合の)重心が、常に同じ円上に概ね位置するように試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを載せることで、スピンドル223の一定の回転数に対して、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが回転して流体30中を移動する速度を一定とすることができる。
なお、円盤223A上には、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの抗力係数がなるべく小さくなるように、同心円状マークの322の周方向の投影面積が最も小さくなる向きに、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを載せる。
【0088】
また、第二実施形態による鉱石の摩耗度測定装置320は、トルク表示部323を備える。トルク測定手段225で計測したトルクの測定値は粘度に換算されず、そのままトルク表示部323に表示される。これにより、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの流体抵抗値が計算しやすくなる。
【0089】
図14及び
図15は、本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の第三実施形態及び第四実施形態に係るスピンドル部分を示す概略図であり、
図14(a)は第三実施形態のスピンドル部分の正面図、
図14(b)は同上面図、
図15(a)は第四実施形態のスピンドル部分の正面図、
図15(b)は同上面図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
第三実施形態による鉱石の摩耗度測定装置420及び第四実施形態による鉱石の摩耗度測定装置520は、カウンターウェイト421を備える。
カウンターウェイト421の重量は、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの重量とほぼ等しい。カウンターウェイト421は、円盤223Aに、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが載置される位置と軸部223Bに関して軸対称となる位置に設けられている。すなわち、カウンターウェイト421と試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bとは180°位置がずれており、円盤223Aの中心から等距離にある。これにより、軸部223Bに関する重量や慣性モーメントのバランスを取り、スピンドル223の偏心や回転ムラを防止できる。また、
図13に示した軸部支持手段321を省略し、軸部支持手段321を設けることによるスピンドル223の回転抵抗を無くすことができる。
【0090】
なお、カウンターウェイト421は、測定する試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの重量に基づいて適切な重さに設定することが望ましい。具体的には、カウンターウェイト421を
図14のように埋め込み式として、カウンターウェイト421の比重又は大きさの異なるスピンドル223を複数用意するか、カウンターウェイト421を
図15のように着脱式として、同形状で重さの異なるカウンターウェイト421を複数用意する。
また、カウンターウェイト421は、円盤223A周りの流れ場を円滑にするためには、
図14のように埋め込み式とすることが望ましいが、
図15のように着脱式とする場合であっても円盤223A表面の凹凸を最小限に抑えればよい。
また、着脱式とする場合のカウンターウェイト421の位置は、円盤223Aの上面側であっても下面側であってもよい。また、カウンターウェイト421が円盤223Aの上下面を貫通していてもよい。更に、カウンターウェイト421を着脱式とする場合は、単純な嵌め込み構造としてもよいし、着脱が容易なようにカウンターウェイト421を円盤状としてその側面にねじを切ったねじ込み構造としてもよい。
【0091】
また、第三実施形態による鉱石の摩耗度測定装置420及び第四実施形態による鉱石の摩耗度測定装置520は、円盤223Aの試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが載置される位置にターンテーブル422が設けられている。ターンテーブル422は、回転軸423を中心として回転する。これにより、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bは、周囲の流体30から受ける流体力によって、抗力係数がなるべく小さくなるような向き(円盤223A周方向の投影面積が最も小さくなる向き)に自ずと回転するため、流体30中を自由沈降する場合に近い条件で流体抵抗を測定することができる。
なお、円盤223Aとターンテーブル422との間には可能な限り摩擦抵抗の小さい転がり軸受424を設け、ターンテーブル422が滑らかに回転できるようにすることが望ましい。また、円盤223Aの上下面とターンテーブル422との隙間、段差、又は凹凸は可能な限り小さくして、近傍の流れ場に乱れが生じないようにすることが望ましい。
【0092】
図16は、本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の第五実施形態に係るスピンドル部分を示す概略図であり、
図16(a)はスピンドル部分の正面図、
図16(b)は同上面図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
第五実施形態による鉱石の摩耗度測定装置620は、円盤223Aに試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが載置されるターンテーブル521が設けられている。ターンテーブル521は、第一ターンテーブル521Aと第二ターンテーブル521Bとからなる。第一ターンテーブル521Aと第二ターンテーブル521Bとは、軸部223Bに関して軸対称となる位置に設けられている。すなわち、第一ターンテーブル521Aと第二ターンテーブル521Bとは180°位置がずれており、円盤223Aの中心から等距離にある。これにより、軸部223Bに関する重量や慣性モーメントのバランスを取り、スピンドル223の偏心や回転ムラを防止できる。また、
図13に示した軸部支持手段321を省略し、軸部支持手段321を設けることによるスピンドル223の回転抵抗を無くすことができる。1個の試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを測定する場合には、
図14又は
図15に示すように軸対称の位置にカウンターウェイト421を設けることが望ましいが、本実施形態のように、重さがほぼ同じ2個(又は4個、6個などの偶数個)の試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを載せるターンテーブル521を軸部223Bに関して軸対称の位置に配することでバランスを取り、2個(又は4個、6個などの偶数個)の試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bについて平均的な流体抵抗を同時に測定することができる。
また、ターンテーブル521に載置された試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bは、周囲の流体30から受ける流体力により回転軸522を中心として回転できる。これにより、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bは、その抗力係数がなるべく小さくなるような向き(円盤223A周方向の投影面積が最も小さくなる向き)に自ずと回転するため、流体30中を自由沈降する場合に近い条件で流体抵抗を測定することができる。
なお、円盤223Aとターンテーブル521との間には可能な限り摩擦抵抗の小さい転がり軸受424を設け、ターンテーブル521が滑らかに回転できるようにすることが望ましい。また、円盤223Aの上下面とターンテーブル521との隙間、段差、又は凹凸は可能な限り小さくして、近傍の流れ場に乱れが生じないようにすることが望ましい。
【0093】
図17は、本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の第六実施形態を示す概略図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
第六実施形態による鉱石の摩耗度測定装置720は、
図13に示す第ニ実施形態による鉱石の摩耗度測定装置320の構造を上下反転したような構造とし、円盤723Aの上面を平坦にしたものである。
容器721を支持する容器支持構造724は、容器721の外面に配置されている。円筒形の容器721には流体30が満たされている。
スピンドル723は、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bが載置される円盤723Aと、円盤723Aに接続された軸部723Bを有する。
円盤723Aは流体30中に水平に配置されており、軸部723Bとの接続部分を中心として回転する。
鉛直に立設した軸部723Bは、容器721の底面30Bを貫通して上端が円盤723Aの下面に接続されており、下端が流体30外に配置されている。軸部723Bの下端側には下から順にモーター224、トルク測定手段225、ジョイント226が設けられている。
軸部723Bが容器721の底面30Bを貫通する部分には、軸部723Bを軸支するとともに流体30の流出を防止する防水軸受構造725が配置されている。
軸部723Bは円盤723Aを貫通していないので、軸部723Bの直上(円盤723Aの中央)に試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを載せることができる。従って、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bについて、並進運動による流体抵抗を除き、回転運動による流体抵抗のみを測定することができる。
【0094】
なお、本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の第一実施形態から第六実施形態において、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの流体抵抗を測定する回転式流体抵抗計(回転式粘度計)222・722を用い、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの載置によって変化する軸部223B・723Bのトルクをトルク測定手段225により計測するものであったが、回転式流体抵抗計222・722において計測する物理量(流体抵抗)は軸部223B・723Bのトルクに限定されるものではなく、軸部223B・723Bのトルクを一定にしてスピンドル223・723を回転させ、スピンドル223・723の回転速度又は単位時間当たりの回転数を計測する方法であってもよい。また、例えば、スピンドル223・723の回転によって試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bと円盤223A・723A面との間に発生する力を、円盤223A・723A上の試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを載置する箇所に設けた高感度の歪センサー等により計測する方法によっても、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの流体抵抗を定量的に計測することが可能である。
【0095】
次に、本発明のさらに他の実施形態による鉱石の摩耗度評価方法及び鉱石の摩耗度測定装置について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0096】
図20は本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる鉱石の摩耗度測定装置の概略図であり、
図20(a)は正面図、
図20(b)は斜視図である。なお、太矢印は水の循環方向を示す。
本実施形態による鉱石の摩耗度測定装置920は、水平に設置した透明撮影配管921と、透明撮影配管921を撮影する高速度カメラ922と、流体30である水を満たしたバッファタンク923を備え、スラリー循環式摩耗試験装置900に適用されている。スラリー循環式摩耗試験装置900は、環状に配置された配管901と、配管901に接続されたスラリーポンプ902と、ホースの摩耗量計測部903を備える。
透明撮影配管921は、配管901の水平部分の一部を置き換えた形で接続されており、配管901の一部を成している。透明撮影配管921は、例えば、内径80mmの透明塩化ビニル管である。透明撮影配管921の下流側に摩耗量計測部903が設置されている。
高速度カメラ922は、透明撮影配管921に正対して設けられている。高速度カメラ922は、第1高速度カメラ922Aと第2高速度カメラ922Bの2台からなる。第1高速度カメラ922A及び第2高速度カメラ922Bのシャッタースピードは1/4000sec、フレームレートは150fpsである。
バッファタンク923は、透明撮影配管921の上流側に設置されている。水を満たしたバッファタンク923の上部から試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを投入してスラリーとし、このスラリーをスラリーポンプ902で送出することで配管901内及び透明撮影配管921内を循環させることができる。バッファタンク923を備えることで、試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bを円滑に配管901に投入することができる。
また、透明撮影配管921を用いることで、配管内部を流れる試験前評価用鉱石10a又は試験後評価用鉱石10bの挙動を外部から視認・撮影することができる。
【0097】
図21は
図20に示す鉱石の摩耗度測定装置の一部を上から見た図であり、透明撮影配管及び高速度カメラの配置を示している。なお、太矢印は水の循環方向を示している。また、
図22は鉱石が透明撮影配管内を移動する様子を高速度カメラにより撮影した図であり、
図22(a)は第1高速度カメラにより撮影した図、
図22(b)は第2高速度カメラにより撮影した図である。
図21に示すように、第1高速度カメラ922Aを透明撮影配管921の上流端部921a側に設け、第2高速度カメラ922Bを透明撮影配管921の下流端部921b側に設けている。第1高速度カメラ922Aの撮影レンズ中心と第2高速度カメラ922Bの撮影レンズ中心との間隔Lは435mmとしている。このように高速度カメラ922を所定の距離を隔てて2台並設することで、鉱石10が第1高速度カメラ922Aに対応する位置から第2高速度カメラ922Bに対応する位置に至る全移動行程に基づいて鉱石10の速度を算出することができる。また、第1高速度カメラ922A又は第2高速度カメラ922Bの画角内における鉱石10の移動行程に基づいて鉱石10の速度を算出することができる。
透明撮影配管921には、例えばmm単位の目盛りが刻まれたスケール924が貼り付けられている。スケール924は、上流端部921a側から下流端部921b側にかけて高速度カメラ922の撮影範囲に位置するように貼り付けられている。これによって、
図22に示すように鉱石10とスケール924を同一写真内に収めることができ、鉱石10の移動距離の把握が容易となる。なお、
図22の鉱石10は、試験前評価用鉱石10aである。
【0098】
本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法を
図2を用いて説明する。
本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法は、まず、鉱石スラリー循環式摩耗試験に用いる前の初期状態の複数の鉱石10の中から、無作為に試験前評価用鉱石10aを抽出する(ステップ1)。抽出した試験前評価用鉱石10aの集合をグループCとする。なお、グループC内には粒径範囲の異なる3種類(粒径大・粒径中・粒径小)が混在している。
図23は本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法に用いる(模擬)鉱石10の外観写真である。上記した実施形態で用いたものと同様に、鉱石10の大きさは、砕石5号(兵庫県姫路市家島町西島産)、粒径約10〜20mmであり、岩種は、流紋岩である。
図23(a)〜(c)は、試験前評価用鉱石10a(グループC)を撮影したものである。
図23(a)は粒径大(約19〜22mm)の試験前評価用鉱石10aを示し、
図23(b)は粒径中(約13〜16mm)の試験前評価用鉱石10aを示し、
図23(c)は粒径小(約8〜11mm)の試験前評価用鉱石10aを示している。試験前評価用鉱石10aは、いずれの粒径においても、鋭い角部を有していることが分かる。
なお、試験前評価用鉱石10aの表面に表示されているアルファベットは、グループ名とは無関係である。
【0099】
ステップ1で抽出した試験前評価用鉱石10aを、バッファタンク923に一度に投入し、試験前評価用鉱石10aが透明撮影配管921内を移動する様子を高速度カメラ922により撮影する。
第1高速度カメラ922Aと第2高速度カメラ922Bによる撮影は同期をとり、撮影完了後にスケール924を利用して試験前評価用鉱石10aの配管軸方向移動距離と撮影コマ数から試験前評価用鉱石10aの配管軸方向移動速度を算出し、この配管軸方向移動速度を鉱石10の摩耗試験前のデータとして記録する(ステップ2)。第1高速度カメラ922Aと第2高速度カメラ922Bの同期をとって撮影することで、2台の高速度カメラ922の撮影タイミングを合わせることができる。なお、同期をとる方法は、第1高速度カメラ922Aから同期信号を出し、第2高速度カメラ922Bがこの同期信号に合わせて撮影を行うことにより実行される。
またステップ2では、試験前評価用鉱石10aの重量を計測し、その計測結果を鉱石10の摩耗試験前のデータに含める。
【0100】
次に、鉱石10を用いて配管類の摩耗試験を行う(ステップ3)。
配管類は、例えば、ホース、配管、継手、又はポンプを採用できるが、本実施形態では、摩耗量計測部903にホースを用いている。
摩耗試験は、水を満たしたタンクに鉱石10を一定量投入してスラリーとし、スラリーを所定時間循環させて摩耗量計測部903のホース内壁の摩耗率を計測し、ホースの摩耗特性を把握する。
【0101】
次に、摩耗試験を90分間行った後の複数の鉱石10の中から、無作為に試験後評価用鉱石10bを抽出する(ステップ4)。抽出した試験後評価用鉱石10bの集合をグループDとする。なお、グループD内には粒径範囲の異なる3種類(粒径大・粒径中・粒径小)が混在している。
図23(d)〜(f)は、試験後評価用鉱石10b(グループD)を撮影したものである。
図23(d)は粒径大(約19〜22mm)の試験後評価用鉱石10bを示し、
図23(e)は粒径中(約13〜16mm)の試験後評価用鉱石10bを示し、
図23(f)は粒径小(約8〜11mm)の試験後評価用鉱石10bを示している。試験後評価用鉱石10bは、いずれの粒径においても、摩耗試験中の衝突により角部が取れて丸みを帯びている(円磨度が増している)ことが分かる。
なお、試験後評価用鉱石10bの表面に表示されているアルファベットは、グループ名とは無関係である。
【0102】
ステップ4で抽出した試験後評価用鉱石10bを、バッファタンク923に一度に投入し、試験後評価用鉱石10bが透明撮影配管921内を移動する様子を高速度カメラ922により撮影する。
第1高速度カメラ922A及び第2高速度カメラ922Bによる撮影は同期をとり、撮影完了後にスケール924を利用して試験後評価用鉱石10bの配管軸方向移動距離と撮影コマ数から試験後評価用鉱石10bの配管軸方向移動速度を算出し、この配管軸方向移動速度を鉱石10の摩耗試験後のデータとして記録する(ステップ5)。
またステップ2では、試験後評価用鉱石10bの重量を計測し、その計測結果を鉱石10の摩耗試験後のデータに含める。
【0103】
次に、ステップ2で得られた摩耗試験前のデータとステップ5で得られた摩耗試験後のデータとを比較し、摩耗試験の前後における鉱石10についての比較結果を得る(ステップ6)。
比較結果は、例えば、試験前評価用鉱石10a(グループC)の移動速度と試験後評価用鉱石10b(グループD)の移動速度との比もしくは差とすることもできるが、試験前評価用鉱石10aのスラリー流速に対する相対速度と試験後評価用鉱石10bのスラリー流速に対する相対速度との比もしくは差とすることが好ましい。
鉱石10は摩耗度(主に角部の鋭さ)によって流体抵抗が変化するため、本実施形態のように試験前評価用鉱石10a及び試験後評価用鉱石10bが流体30中を移動する速度を計測して両者の流体的特性を測定し、その比較結果を得ることで、鉱石10の摩耗度を簡便かつ定量的に評価できる。
【0104】
次に、ステップ6で得られた比較結果を、予め定めた閾値と比較し、摩耗試験に使用した鉱石10を次の摩耗試験に用いるか否かを判定する(ステップ7)。
閾値は、次の摩耗試験に鉱石10を引き続き使用できるか否かの判定基準となる摩耗度である。比較結果(鉱石10の摩耗度)が基準となる摩耗度に適合しないと判定した場合には、鉱石10を初期状態の新品に交換し、ステップ1に戻る。比較結果(鉱石10の摩耗度)が基準となる摩耗度に適合すると判定した場合には、ステップ3に戻る。これにより、角が取れて丸くなった鉱石10を除外して、摩耗試験に用いる鉱石10と揚鉱現場等で採掘される実際の鉱石との乖離を極力少なくできる。従って、実際の使用状況に近い条件下で摩耗試験を実施できる。
【0105】
また、ステップ6で得られた比較結果を、予め定めた配管類の摩耗率と鉱石10の摩耗度との関係に適用し、配管類の摩耗率を推定する(ステップ8)。
例えば、試験前評価用鉱石10a(グループC)の移動速度と試験後評価用鉱石10b(グループD)の移動速度の比と、
図19に示される配管摩耗率との相関図を作成し、作成した相関図の傾向に基づいて配管類の摩耗率を推定する。
これにより、摩耗試験に用いる鉱石10の摩耗度を考慮したうえで配管類の摩耗特性を把握できる。従って、鉱石スラリー循環式摩耗試験による実際の配管類の摩耗特性評価の精度が向上する。
【0106】
図24及び
図25は、ステップ6の比較結果の例を示す図であり、鉱石10のスラリー流速に対する相対速度を鉱石10の重量で整理している。横軸は鉱石重量(g)、縦軸は鉱石の相対速度(m/sec)であり、白菱形(◇)は、粒径小の試験前評価用鉱石10a(グループC)の測定結果、白丸(○)は、粒径中の試験前評価用鉱石10a(グループC)の測定結果、白四角(□)は、粒径大の試験前評価用鉱石10a(グループC)の測定結果、黒菱形(◆)は、粒径小の試験後評価用鉱石10b(グループD)の測定結果、黒丸(●)は、粒径中の試験後評価用鉱石10b(グループD)の測定結果、黒四角(■)は、粒径大の試験後評価用鉱石10b(グループD)の測定結果を示す。なお、撮影時のスラリー流速は平均3.09m/secであった。また、配管901内に投入した試験前評価用鉱石10a(グループC)又は試験後評価用鉱石10b(グループD)は、それぞれの撮影完了後に全て回収した。
図24は、鉱石10の相対速度を、第1高速度カメラ922Aから第2高速度カメラ922Bに至る全移動行程から算出した場合であり、この行程中には鉱石10が透明撮影配管921の内壁に衝突してバウンドしたり、内壁の底を擦るようにして移動する場合が含まれている。
一方、
図25は、第1高速度カメラ922A又は第2高速度カメラ922Bの画角内において、鉱石10が透明撮影配管921の内壁に衝突してバウンドしたり内壁の底を擦るようにして移動することのなかった行程、すなわち鉱石10が流体30中に浮遊して移動する行程のみから鉱石10の移動速度を算出した場合を示している。
図24を見ると、粒径の小さい(軽い)鉱石10の場合を除き、鉱石10の相対速度と鉱石10の摩耗度(グループCとDの違い)との間には有意な相関は認められず、鉱石10の速度算出に用いる移動行程に、鉱石10が透明撮影配管921の内壁に衝突してバウンドしたり内壁の底を擦るようにして移動する場合が含まれていると、鉱石10の摩耗度をうまく評価できない場合があることがわかる。
一方、
図25を見ると、粒径の小さい(軽い)鉱石10の結果に一点例外があるのを除き、いずれの粒径(重量)においてもグループC(新品)の相対速度がグループD(摩耗試験後)の相対速度を上回っており、鉱石10が流体30中に浮遊して移動する行程のみから鉱石10の移動速度を算出した場合には、鉱石10のスラリー流速に対する相対速度から鉱石10の摩耗度をより良好に評価・分類できることがわかる。
【0107】
本実施形態による鉱石の摩耗度評価方法によれば、摩耗試験に用いる鉱石10の摩耗度を、摩耗試験を停止することなく定量的に評価することができる。
なお、本実施形態では、鉱石の摩耗度測定装置920をスラリー循環式摩耗試験装置900に適用したが、鉱石の摩耗度測定装置920を、
図18に示すスラリー循環式摩耗試験装置800など他のスラリー循環式摩耗試験装置に適用してもよい。