(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864910
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】卵管狭窄部改善具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/42 20060101AFI20210419BHJP
A61M 29/00 20060101ALI20210419BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
A61B17/42
A61M29/00
A61M25/00 530
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-89884(P2017-89884)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-186900(P2018-186900A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】509038108
【氏名又は名称】株式会社北里コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】井上 太
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 千恵
【審査官】
北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第203468706(CN,U)
【文献】
特開平8−243169(JP,A)
【文献】
特開2003−52831(JP,A)
【文献】
特開2015−280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/42
A61M 25/00
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性外管と、前記可撓性外管内を挿通する内部挿通体とからなる卵管狭窄部改善具であって、
前記可撓性外管は、先端部に卵管内挿入用小径部を備える中空のチューブ本体と、前記チューブ本体の基端部に固定された外管ハブとを備え、
前記内部挿通体は、管状体と、前記管状体の先端部内に基端側が進入しかつ固定され、先端側が前記管状体の先端部より所定長突出したコイル状管状部材と、前記コイル状管状部材の先端と当接した先端膨出部と、前記先端膨出部より前記コイル状管状部材内を挿通し、基端部が前記管状体もしくは前記コイル状管状部材に内部にて固定された線状部とを有する線状部材とを備え、
前記卵管狭窄部改善具は、前記内部挿通体の前記コイル状管状部材の先端側部分が、前記可撓性外管の先端より突出する状態から、少なくとも前記コイル状管状部材の全体が前記可撓性外管内に収納された状態まで、摺動可能となっていることを特徴とする卵管狭窄部改善具。
【請求項2】
前記コイル状管状部材は、前記管状体より小径であり、全体がほぼ同一外径であり、前記線状部の外径は、前記コイル状管状部材の内径より小さく、前記線状部材は、前記コイル状管状部材の柔軟性を阻害しないものとなっている請求項1に記載の卵管狭窄部改善具。
【請求項3】
前記線状部材の前記線状部は、前記コイル状管状部材の後端より後方に突出する基端突出部を備え、前記基端突出部にて、前記管状体および前記コイル状管状部材に固定されている請求項1または2に記載の卵管狭窄部改善具。
【請求項4】
前記外管ハブは、側部に設けられた液体注入ポートを備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
【請求項5】
前記卵管狭窄部改善具は、前記内部挿通体の前記管状体が、前記可撓性外管の先端より突出しないように規制する内部挿通体先端方向移動規制部を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
【請求項6】
前記卵管狭窄部改善具は、前記内部挿通体の前記管状体の先端部が若干突出する状態を越えて、前記内部挿通体が、前記可撓性外管の先端より突出しないように規制する内部挿通体先端方向移動規制部を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
【請求項7】
前記チューブ本体は、外層と、前記外層の先端より先端部が突出した内層とからなり、前記卵管内挿入用小径部は、前記内層の先端部により形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵管の体腔内に生じた閉塞部、狭窄部を改善するための卵管狭窄部改善具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、卵管に生じた閉塞部・狭窄部を治療するために、外管と、外管内を軸方向に移動可能な内管と、一端が外管の先端部に取り付けられ、他端が内管の先端部に取り付けられたバルーンとを備えたバルーンカテーテルが使用されている。
このバルーンカテーテルは、以下のような使い方をする。
まず、内管のルーメンに内視鏡を挿入して、内視鏡の先端を外管の先端に到達させる。そして、バルーンを外管のルーメン内に完全に収納した状態にして、バルーンカテーテルを子宮顎より子宮に挿入する。そして、内視鏡により卵管口を確認した後、内管を先端側に押し込んで、バルーンを外管の先端より突出させて、バルーンを卵管内に挿入する。そして、内視鏡で閉塞部・狭窄部等の病変部の観察を行いながら、バルーンによって病変部の拡張(治療)を行う。
これらの操作を安全に行うためには、バルーンの先端側端部に対する内視鏡の先端側端部の位置を常に知る必要がある。つまり、バルーンの先端側端部より内視鏡が突出することによる、子宮、卵管等の生体内の器官の損傷を防ぐ必要がある。
このような要求を満たすために、特許第2813463号公報(特許文献1)には、バルーンカテーテルの内管および内視鏡の手元側にそれぞれ等間隔にマークが設けられており、これらのマークを数えることによって、バルーンの先端側端部に対する内視鏡の長手方向の位置を判断するカテーテル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2813463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、バルーンカテーテルのバルーン部を卵管内に挿入する必要があり、バルーンカテーテルのバルーン部の卵管口への挿入操作が容易でない。また、狭窄が進んだ卵管では、卵管口に到達したバルーンカテーテルのバルーン部を卵管内に進行させることが困難な場合があった。
そこで、本発明は、卵管口への到達および挿入操作が容易であり、かつ、狭窄部を有する卵管を良好に改善することができる卵管狭窄部改善具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下の卵管狭窄部改善具である。
(1) 可撓性外管と、前記可撓性外管内を挿通する内部挿通体とからなる卵管狭窄部改善具であって、前記可撓性外管は、先端部に卵管内挿入用小径部を備える中空のチューブ本体と、前記チューブ本体の基端部に固定された外管ハブとを備え、前記内部挿通体は、管状体と、前記管状体の先端部内に基端側が進入しかつ固定され、先端側が前記管状体の先端部より所定長突出したコイル状管状部材と、前記コイル状管状部材の先端と当接した先端膨出部と、前記先端膨出部より前記コイル状管状部材内を挿通し、基端部が前記管状体もしくは前記コイル状管状部材に内部にて固定された線状部とを有する線状部材とを備え、前記卵管狭窄部改善具は、前記内部挿通体の前記コイル状管状部材の先端側部分が、前記可撓性外管の先端より突出する状態から、少なくとも前記コイル状管状部材の全体が前記可撓性外管内に収納された状態まで、摺動可能となっている卵管狭窄部改善具。
【0006】
(2) 前記コイル状管状部材は、前記管状体より小径であり、全体がほぼ同一外径であり、前記線状部の外径は、前記コイル状管状部材の内径より小さく、前記線状部材は、前記コイル状管状部材の柔軟性を阻害しないものとなっている上記(1)に記載の卵管狭窄部改善具。
(3) 前記線状部材の前記線状部は、前記コイル状管状部材の後端より後方に突出する基端突出部を備え、前記基端突出部にて、前記管状体および前記コイル状管状部材に固定されている上記(1)または(2)に記載の卵管狭窄部改善具。
(4) 前記外管ハブは、側部に設けられた液体注入ポートを備えている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
(5) 前記卵管狭窄部改善具は、前記内部挿通体の前記管状体が、前記可撓性外管の先端より突出しないように規制する内部挿通体先端方向移動規制部を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
(6) 前記卵管狭窄部改善具は、前記内部挿通体の前記管状体の先端部が若干突出する状態を越えて、前記内部挿通体が、前記可撓性外管の先端より突出しないように規制する内部挿通体先端方向移動規制部を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
(7) 前記チューブ本体は、外層と、前記外層の先端より先端部が突出した内層とからなり、前記卵管内挿入用小径部は、前記内層の先端部により形成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の卵管狭窄部改善具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の卵管狭窄部改善具は、可撓性外管と、可撓性外管内を挿通する内部挿通体とからなる。可撓性外管は、先端部に卵管内挿入用小径部を備える中空のチューブ本体と、チューブ本体の基端部に固定された外管ハブとを備える。内部挿通体は、管状体と、管状体の先端部内に基端側が進入しかつ固定され、先端側が管状体の先端部より所定長突出したコイル状管状部材と、コイル状管状部材の先端と当接した先端膨出部と、先端膨出部よりコイル状管状部材内を挿通し、基端部が管状体もしくはコイル状管状部材に内部にて固定された線状部とを有する線状部材とを備える。卵管狭窄部改善具は、内部挿通体のコイル状管状部材の先端側部分が、可撓性外管の先端より突出する状態から、少なくともコイル状管状部材の全体が可撓性外管内に収納された状態まで、摺動可能となっている。
【0008】
この卵管狭窄部改善具では、内部挿通体がコイル状管状部材を備え、このコイル状管状部材が誘導部として機能し、このコイル状管状部材を卵管内に先に挿入することにより、可撓性外管の卵管内挿入用小径部を卵管口に容易に誘導することができる。そして、可撓性外管の卵管内挿入用小径部を卵管口に進入させ、さらに、内部挿通体を後端側に移動させた後、外管ハブより、液体を注入することにより、卵管に損傷を与えることなく、卵管を容易かつ確実に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の卵管狭窄部改善具の一実施例の部分省略正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の卵管狭窄部改善具に使用される可撓性外管の一例の部分省略正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の卵管狭窄部改善具に使用される内部挿通体の一例の部分省略正面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した卵管狭窄部改善具の先端部の拡大正面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した卵管狭窄部改善具の先端部の拡大断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示した内部挿通体の先端部の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した卵管狭窄部改善具の外管ハブ付近の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示した内部挿通体の基端部の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の卵管狭窄部改善具の作用を説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施例の卵管狭窄部改善具の先端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の卵管狭窄部改善具を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の卵管狭窄部改善具1は、可撓性外管2と、可撓性外管2内を挿通する内部挿通体3とからなる。可撓性外管2は、先端部に卵管内挿入用小径部22を備える中空のチューブ本体20と、チューブ本体20の基端部に固定された外管ハブ40とを備える。内部挿通体3は、管状体31と、管状体31の先端部内に基端側が進入しかつ固定され、先端側が管状体31の先端部より所定長突出したコイル状管状部材34と、コイル状管状部材34の先端と当接した先端膨出部38と、先端膨出部38よりコイル状管状部材34内を挿通し、基端部が管状体31もしくはコイル状管状部材34に内部にて固定された線状部37とを有する線状部材35とを備える。
卵管狭窄部改善具1は、内部挿通体3のコイル状管状部材34の先端側部分が、可撓性外管2の先端53より突出する状態から、少なくとも内部挿通体3のコイル状管状部材34の全体が可撓性外管2内に収納された状態まで、摺動可能となっている。
【0011】
卵管狭窄部改善具1は、
図1に示すように、可撓性外管2と、可撓性外管2内を挿通する内部挿通体3とからなる。
内部挿通体3は、
図1、
図3ないし
図6に示すように、管状体31と、管状体31の先端部に固定されたコイル状管状部材34と、コイル状管状部材34の先端と当接した先端膨出部38と線状部37とを有する線状部材35と、管状体31の基端部に固定された挿通体ハブ32とを備える。
管状体31としては、先端から基端までほぼ同一外径にて延びるものが使用される。また、管状体31としては、金属製もしくは半硬質樹脂製の管状部材が使用される。管状体の全長は、300〜1000mm程度が好適であり、特に、500〜800mmが好適である。管状体31の外径としては、0.5mm〜2.0mm程度であることが好ましい。また、管状体31の外径は、可撓性外管2のチューブ本体20の内径より、0.3〜1.0mm程度小さいことが好ましい。管状体31の内径としては、0.3mm〜1.5mm程度であることが好ましい。金属製もしくは半硬質樹脂製の管状部材としては、ステンレス鋼パイプ、フッ素樹脂チューブ(例えば、PTFEチューブ、ETFEチューブ)などが好適に使用できる。
【0012】
そして、
図6に示すように、管状体31の先端部に、コイル状管状部材34が固定されている。具体的には、コイル状管状部材34は、管状体31より小径であり、その基端部が、管状体31の先端部内に進入し、その他の部分(先端側部分)が、管状体31の先端より突出した状態となっている。コイル状管状部材34は、先端から基端までほぼ同一外径にて延びるものが使用される。また、コイル状管状部材34は、金属製コイルが使用でき、特に、隣り合う線材が接触するように巻かれた密巻きコイルが好適である。
【0013】
金属製コイルの形成材料としては、ステンレス鋼線が好適である。コイル状管状部材34の外径は、管状体31の内径とほぼ同じもしくは若干小さいものとなっている。また、コイル状管状部材34としては、全長が20mm〜200mm、好ましくは30mm〜150mmであり、コイル状管状部材34の外径としては、直径0.2〜1.8mm、好ましくは、0.3〜1.6mmである。
【0014】
さらに、内部挿通体3は、コイル状管状部材34内を挿通する線状部材35を備えている。線状部材35は、線状部37と、線状部37の先端に形成された膨出部38と、コイル状管状部材34の後端より後方に突出する基端突出部39を備えている。
【0015】
そして、線状部材35は、膨出部38が、コイル状管状部材34の先端に当接した状態にて、基端突出部39が、管状体31の内面に接着材55により固着されている。この線状部材35を設けることにより、コイル状管状部材34の軸方向の伸張が抑制される。また、膨出部38は、略半球状に形成されており、生体部位(例えば、子宮内壁、卵管内面)に当接しても損傷を与えにくいものとなっている。なお、この実施例では、コイル状管状部材34は、管状体31内に進入した基端部において、接着材55により、管状体31の内面に固定されている。また、管状体31の先端部では、コイル状管状部材34は固定されておらず、コイル状管状部材34と管状体31間には、円筒状の空隙57を有するものとなっている。このような空隙を有することにより、コイル状管状部材34の基端部は、管状体31の先端部内にて若干変形可能である。このため、コイル状管状部材34の管状体31の先端でのキンクが抑制される。
【0016】
線状部37の外径は、コイル状管状部材34の内径より小さく、また、線状部37は、柔軟であり、線状部材35は、コイル状管状部材34の柔軟性を阻害しないものとなっている。線状部材35の形成材料としては、ポリアミド(例えば、6ナイロン、66ナイロン)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)などが好適である。
【0017】
そして、
図8に示すように、管状体31の基端部には、挿通体ハブ32が固定されている。挿通体ハブ32は、把持部を形成する本体部33と、本体部33より先端方向に突出する小径突出部56を備えている。
可撓性外管2は、
図1および
図2に示すように、先端部に卵管内挿入用小径部22を備える中空のチューブ本体20と、チューブ本体20の基端部に固定された外管ハブ40とを備える。
【0018】
チューブ本体20は、
図1、
図2および
図5に示すように、ほぼ同一外径にて所定長延びる本体部21と、この本体部より小径である卵管内挿入用小径部22を備える。卵管内挿入用小径部22が、チューブ本体20の先端部を形成している。また、この実施例の可撓性外管2では、チューブ本体20は、合成樹脂製内層24と、この合成樹脂製内層24の外面を被覆する合成樹脂製外層23とにより構成されており、内部にルーメン52を備える。また、この実施例の可撓性外管2では、内層24の先端部が外層23の先端より突出しており、内層24のこの突出部により、卵管内挿入用小径部22が形成されている。
【0019】
チューブ本体20の全長は、300〜1000mm程度が好適であり、特に、500〜800mmが好適である。チューブ本体20の本体部21の外径としては、1.0mm〜3.0mm程度であることが好ましい。また、チューブ本体20の内径としては、0.5mm〜2.0mm程度であることが好ましい。チューブ本体20の卵管内挿入用小径部22の外径は、0.5mm〜2.5mm程度であることが好ましく、また、チューブ本体20の本体部21の外径より、0.3〜0.6mm程度小さいことが好ましい。
【0020】
外層23は、
図5に示すように、内層24を被覆し、卵管狭窄部改善具1の外表面を形成する。外層23の形成材料としては、内層形成材料と接着性を有するものが好ましく、内層の形成に用いた樹脂と同質または近似したものが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体などを用いたポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0021】
内層24の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体などを用いたポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。また、内層形成材料は、外層形成材料より硬質なものを用いてもよい。なお、チューブ本体20は、単層であってもよい。
【0022】
また、チューブ本体20の基端部には、
図1、
図2及び
図7に示すように、外管ハブ40が固定されている。外管ハブ40は、
図7に示すように、外管ハブ本体41と、外管ハブ本体41内に収納され、内部挿通体3を摺動可能、かつ液密に保持するシール部材46を備えている。また、外管ハブ40は、外管ハブ本体41の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート42を備えている。また、外管ハブ40は、内部に、チューブ本体20内のルーメン52と連通する連通路44を備えている。
【0023】
さらに、外管ハブ40は、内部挿通体3の移動を規制する内管ロック機構を備えている。この実施例では、ロック機構は、圧縮により内部挿通体3の基端部を液密状態に挟持するシール部材46とシール部材46を圧縮する操作部材43および外管ハブ本体41により構成されている。このロック機構を備えることにより、内部挿通体3は可撓性外管2に対して任意の位置で固定可能である。
【0024】
シール部材46は、外管ハブ本体41の基端部に設けられた収納部内に設置されており、シール部材46の内部には、ルーメン52と連通する挿通路が形成されている。シール部材46の内部形状は、軸方向中央部が、環状に膨らんだ状態となっており、シール部材46が、操作部材43により、圧縮された際、中央膨出部が小径化し、内部挿通体3(具体的には、管状体31)の外面と液密に接触するものとなっている。
【0025】
具体的には、操作部材43は、中央部に先端側に突出した筒状の押圧部47と、この押圧部47を被包するように形成され、かつ、外管ハブ本体41の後端外面に形成された螺合部48と螺合可能な螺合部を備える外筒部43aを備えている。操作部43の基端部は、拡径部43bとなっており、操作部材43を回転させる際に把持することが容易なものとなっている。
【0026】
また、押圧部47の内部には、ルーメン52と連通する内部通路を備えている。また、押圧部47の先端側部分は、
図7に示すように、収納部内に侵入しており、操作体の先端への移動によりシール部材46を圧縮可能となっている。
【0027】
この実施例のロック機構では、操作部材43を回転させて、外管ハブ40の先端側に移動するように螺合を進行させると、押圧部47の先端はシール部材46の後端に接触して、さらに、操作部材43を回転させて螺合を進行させるとシール部材46は軸方向に圧縮される。そして、シール部材46は圧縮が進行するに従い内部通路の内径は小さくなり最終的にシール部材46により内部挿通体3が把持され固定される。なお、ロック機構の解除は、上記と逆の回転操作により行われる。
【0028】
外管ハブ本体41および操作部材43の構成材料としては、硬質もしくは半硬質材料が使用される。硬質もしくは半硬質材料としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミもしくはアルミ合金などの金属が使用できる。
【0029】
また、シール部材46の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用される。
【0030】
本発明の卵管狭窄部改善具1は、内部挿通体3のコイル状管状部材34の先端側部分が、可撓性外管2の先端53より突出する状態から、少なくとも内部挿通体3のコイル状管状部材34の全体が可撓性外管2内に収納された状態まで、摺動可能となっている。このため、卵管内への液体注入時に内部挿通体3が障害とならないため、良好に液体注入により、卵管を拡張することができる。
【0031】
この実施例の卵管狭窄部改善具1では、内部挿通体3は、可撓性外管2より抜去可能なものとなっている。さらに、この実施例の卵管狭窄部改善具1では、内部挿通体3の管状体31が、可撓性外管2の先端53(具体的には、卵管内挿入用小径部22の先端)より突出しないように規制する内部挿通体先端方向移動規制部を備えている。
【0032】
具体的には、
図9に示すように、挿通体ハブ32に設けられた小径突出部56は、外管ハブ40の後端部内に進入可能となっている。また、挿通体ハブ32は、外管ハブ40に当接可能なものとなっている。
図9に示すものでは、挿通体ハブ32の本体部33の先端面は、外管ハブ40の後端面(具体的には、押圧部47の後端面)に当接可能なものとなっている。
【0033】
そして、挿通体ハブ32と外管ハブ40が当接した状態において、
図5に示すように、内部挿通体3の管状体31の先端は、可撓性外管2の先端53より、若干基端側に位置するものとなっている。このため、可撓性外管2の先端53(具体的には、卵管内挿入用小径部22の先端)より突出するのは、内部挿通体3のコイル状管状部材のみとなっている。
【0034】
なお、本発明の卵管狭窄部改善具は、上記のものに限定されるものではない。
卵管狭窄部改善具としては、
図10に示す実施例の卵管狭窄部改善具1aのように、内部挿通体3の管状体31の先端部が、可撓性外管2の先端53より若干突出する状態を越えて、可撓性外管2の先端より突出しないように規制する内部挿通体先端方向移動規制部を備えるものであってもよい。
【0035】
この実施例のものでは、挿通体ハブ32と外管ハブ40が当接した状態において、
図10に示すように、内部挿通体3の管状体31の先端は、可撓性外管2の先端より、若干突出するものとなっている。このように、内部挿通体3の管状体31の先端を若干突出させることにより、内部挿通体3の管状体31の先端部を、可撓性外管2の卵管内挿入用小径部22の卵管口内への誘導部として機能させることが可能となる。
【0036】
本発明の卵管狭窄部改善具の作用を図面を用いて説明する。
図5もしくは
図10に示すように、可撓性外管2の先端より、内部挿通体3のコイル状管状部材34が突出する状態とし、必要であれば、弾性部材46を押圧し、その状態を固定する。そして、コイル状管状部材34が突出した卵管狭窄部改善具1を経膣的もしくは経皮的にて、子宮内に挿入し、さらに進行させて、コイル状管状部材34を卵管口より卵管内に進入させる。そして、可撓性外管の卵管内挿入用小径部を卵管口に到達させた後、さらに、押し込むことにより、卵管内挿入用小径部を卵管口内に進入させる。そして、内部挿通体を後端側に移動させた後、外管ハブより、液体(例えば、生理食塩水)を注入することにより、卵管を液体にて拡張する。これにより、卵管内の狭窄部が押し広げられ、狭窄部が改善する。
【符号の説明】
【0037】
1、1a 卵管狭窄部改善具
2 可撓性外管
3 内部挿通体
20 チューブ本体
31 管状体
34 コイル状管状部材
35 線状部材
22 卵管内挿入用小径部
40 外管ハブ