特許第6864911号(P6864911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864911
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】面形状歪測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   G01B11/24 K
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-102041(P2017-102041)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-197683(P2018-197683A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】593179808
【氏名又は名称】八光オートメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】白谷 優典
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−200396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定面にy軸方向に伸びたスリット状の拡散光を照射する照明光源と、該照明光源に対する相対位置を固定して設置され前記拡散光の被測定面による反射像を撮影するカメラと、該撮影された反射像により該反射像を生ずる前記被測定面の各反射点の相対的な傾きを検出する画像処理手段と、前記照明光源および前記カメラまたは前記被測定面を有する被測定物を搭載して前記被測定面に照射された前記拡散光のスリットの幅方向(x軸方向とする)に移動する移動機構と、該移動機構の移動量に応じた電気信号を出力するエンコーダとを備え、
前記画像処理手段は、前記被測定面がy軸に平行な軸を中心にして基準となる基準面より傾いていることにより前記拡散光による前記被測定面の各点の正反射像がx軸方向に変移して撮像されたものとして前記反射像内の各点において前記基準面よりの傾きの角度である傾斜角度を算出し、前記被測定面上に定めた座標に対して前記傾斜角度をその座標の前記反射像の輝度と対応させた傾斜角度対輝度データを作成し、
前記照明光源および前記カメラまたは前記被測定面を前記移動機構により所定の間隔でx軸方向に移動させながら前記撮影を順次行うことにより前記被測定面の測定領域内の各座標における前記傾斜角度対輝度データを取得し、該傾斜角度対輝度データに基づいて、前記各座標において最大の輝度を有する傾斜角度を該座標において正反射を生じさせた正反射傾斜角度として決定し、
前記被測定面の測定領域内の各座標の前記正反射傾斜角度の変化から前記各座標における曲率を算出する手段と、該算出された被測定面の測定領域内における曲率の分布を表示する手段とを備えることを特徴とする面形状歪測定装置。
【請求項2】
前記各座標における正反射傾斜角度と輝度のデータに基づいて、前記被測定面の測定領域内の各点の任意の正反射傾斜角度に対する輝度分布を表示する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の面形状歪測定装置。
【請求項3】
y軸に垂直で前記カメラの光軸と前記被測定面とが交わる被測定点を含む面内における前記拡散光の発光点と前記被測定点とを結ぶ直線と前記カメラの光軸との成す角度が30度以内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の面形状歪測定装置。
【請求項4】
前記算出された被測定面の曲率より該被測定面のx軸方向の相対変位を算出する手段と、該算出された相対変位を表示する手段とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の面形状歪測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面形状の歪みを測定する面形状歪測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品などの検査において物体表面の面形状の歪を測定する場合、例えば特許文献1に記載された方法などにより物体の表面形状を測定し、周囲の面形状からの変位を歪として計測する方法が一般的である。しかし、その面が緩やかな形状変化や傾きを持つ場合には、微小な歪は周囲形状に埋もれてしまい正確な測定できない。また、三角測量の原理を応用した三次元計測が知られているが、測定精度がカメラの画素分解能と撮影角度に依存するため、測定範囲と計測精度がトレードオフの関係となり、広い範囲内での微小な面形状の歪は測定できない。
【0003】
従来の微小な面形状の歪の測定方法としては、特許文献2および3に記載のように複数のストライプを面内に平行に並べた格子状パターンを被測定物に照射してその正反射像をカメラにより撮像し、その格子像のライン間のピッチの変化から面形状の歪みを求める方法が知られている。
【0004】
図9は従来の格子パターンの正反射像から歪を検出する方法の測定系の模式的な配置図と格子パターンの一例を示す図である。照明装置91により、y方向に伸びた複数のストライプを平面内に等間隔で平行に並べて構成される格子状パターン90を被測定物92に照射して、被測定物92の表面による格子パターン90の正反射による反射像93をカメラ94により撮像して歪みを測定するものである。平面形状に歪みがある場合、反射像93の格子パターンが歪み、ライン間隔dが変化するのでその間隔の変化を読み取って面の歪を算出する。しかし、この従来の測定装置では、ディスプレイに表示される格子パターンの歪みを測定するため、ディスプレイの表示画面の大きさによって被測定面の計測範囲が限られてしまう。また、被測定物92の設置位置が図のようにz方向にずれた場合、反射像93は反射像95のようにその位置が変化し、これをカメラで撮影すると格子パターン96のようになり、そのライン間隔dが変化してしまう。このため算出される歪の大きさに大きな誤差が生じていた。
【0005】
このように、従来の格子パターンの正反射像から歪を検出する方法では、微小な歪を広範囲にわたって測定を行う場合には大型のディスプレイが必要となり、その大きさの制限から計測範囲が限られていた。また、カメラに対する被測定物の設置距離が変動すると正反射像のライン間のピッチが変化し、算出される傾きに大きな誤差が生じていた。
【0006】
そこで、この問題を解決するため、被測定物の設置距離の変動にも影響を受けにくい面形状歪測定装置が特許文献4に記載されている。その測定装置では、被測定面に一定の長さで一定の幅を有する直線状の拡散光を照射し、その被測定面による正反射像をカメラにより撮影して、その撮影画像から画像処理手段により被測定面上の反射点の相対的な傾きを検出している。照明光源とカメラを上記拡散光の幅方向に移動させながら撮影を順次行うことにより被測定面の測定領域内の各反射点の傾きを順次検出し、その傾きの変化から各反射点における曲率を算出し、測定領域内における曲率の分布を表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−4425号公報
【特許文献2】特開2011−89981号公報
【特許文献3】特開2012−215486号公報
【特許文献4】特開2016−200396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、様々な製品における表面の微小な傷による凹凸や、塗装時の異物付着等による点状の突起、いわゆる塗装ブツなどの検査は目視により行われることが多く、このような検査を効率的に行うことが可能な測定器が必要とされている。
【0009】
上記の従来の特許文献4に記載の面形状歪測定装置では、拡散光の正反射像を幅方向に分割してその分割された各ピクセルの輝度を求め、その輝度により幅方向の重心を求め、その重心を直線状の拡散光の被測定面による正反射像の座標としていた。このため、従来は、被測定面の検査における上記の幅方向の測定分解能を拡散光の幅の大きさより小さくすることは困難であり、検出可能な表面形状の凹凸の幅は拡散光の幅により制限されていた。そのため、塗装ブツのような微小な凹凸の検出は困難であった。
【0010】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、微小な凹凸による面形状の歪みの測定が可能で、被測定物の設置距離の変動にも影響を受けにくい面形状歪測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点では、本発明の面形状歪測定装置は、被測定面にy軸方向に伸びたスリット状の拡散光を照射する照明光源と、該照明光源に対する相対位置を固定して設置され前記拡散光の被測定面による反射像を撮影するカメラと、該撮影された反射像により該反射像を生ずる前記被測定面の各反射点の相対的な傾きを検出する画像処理手段と、前記照明光源および前記カメラまたは前記被測定面を有する被測定物を搭載して前記被測定面に照射された前記拡散光のスリットの幅方向(x軸方向とする)に移動する移動機構と、該移動機構の移動量に応じた電気信号を出力するエンコーダとを備え、前記画像処理手段は、前記被測定面がy軸に平行な軸を中心にして基準となる基準面より傾いていることにより前記拡散光による前記被測定面の各点の正反射像がx軸方向に変移して撮像されたものとして前記反射像内の各点において前記基準面よりの傾きの角度である傾斜角度を算出し、前記被測定面上に定めた座標に対して前記傾斜角度をその座標の前記反射像の輝度と対応させた傾斜角度対輝度データを作成し、前記照明光源および前記カメラまたは前記被測定面を前記移動機構により所定の間隔でx軸方向に移動させながら前記撮影を順次行うことにより前記被測定面の測定領域内の各座標における前記傾斜角度対輝度データを取得し、該傾斜角度対輝度データに基づいて、前記各座標において最大の輝度を有する傾斜角度を該座標において正反射を生じさせた正反射傾斜角度として決定し、前記被測定面の測定領域内の各座標の前記正反射傾斜角度の変化から前記各座標における曲率を算出する手段と、該算出された被測定面の測定領域内における曲率の分布を表示する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、スリット状の拡散光を移動機構により移動させて測定を行うので、移動機構の移動方向はその駆動範囲まで測定が可能であり、広い範囲にわたって微小な面形状の測定が可能であること、スリット状の拡散光を移動させて撮影し、測定を行うので、被測定物の設置距離が変動しても算出される曲率の値への影響は他の方式の装置に比べると非常に小さいことなどの利点を有することは従来の特許文献4に記載の測定装置と同様である。
【0013】
但し、本発明の画像処理においては、スリット状の拡散光の反射像の画像中の画素ごとにその座標に対応した基準面からの傾斜角度を求めてその画素の輝度と対応させた傾斜角度対輝度データを作成し、照明光源とカメラまたは被測定面をx軸方向に移動機構により移動させながら撮影を順次行うことにより被測定面の測定領域内の各座標について上記の傾斜角度対輝度データを追加しながら保存する。このとき、各座標について、保存された傾斜角度対輝度データの中から最大の輝度を有する傾斜角度をその座標において正反射を生じさせた正反射傾斜角度として決定し、それを被測定面のその座標における傾きとするものである。すなわち、被測定面の傾きの分布の分解能は撮影画像の画素の分解能で決定される。一方、特許文献4に記載の画像処理においては、スリット状の拡散光の座標を幅方向すなわちx方向の重心の1点に代表させてその被測定面の反射点の傾きを求めている。すなわち、被測定面の傾きの分布の分解能は拡散光のスリット幅となる。この結果、本発明では、特許文献4に記載の方法に比べて、より微小な凹凸による面形状の歪みの測定が可能となる。
【0014】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の面形状歪測定装置において、前記各座標における正反射傾斜角度と輝度のデータに基づいて、前記被測定面の測定領域内の各点の任意の正反射傾斜角度に対する輝度分布を表示する手段を有することを特徴とする。本観点の発明では、被測定面の測定領域内において、基準面に対して同一の傾斜角度を有する点が輝度分布として表示されるので、様々な傾斜角度における分布を表示することにより、曲率の分布の表示と同様に測定領域内において特異的な傾斜を有する歪を有する点の視覚的な把握が容易となる。また、測定領域内において基準面に対して傾いた領域が存在する場合にも把握が容易となる。
【0015】
第3の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点の面形状歪測定装置において、y軸に垂直で前記カメラの光軸と前記被測定面とが交わる被測定点を含む面内における前記拡散光の発光点と前記被測定点とを結ぶ直線と前記カメラの光軸との成す角度が30度以内であることを特徴とする。
【0016】
本発明の測定装置においては、スリット状の拡散光の反射像のずれによりその反射点での被測定面の傾きを算出するが、そのずれは被測定面の傾き以外に被測定面の奥行き方向の位置ずれによっても生ずるので、その影響を軽減するためには、照明光源とカメラを被測定面に対してできるだけ垂直に向き合うように設定する必要がある。例えば、多くの従来の測定装置では照明光源とカメラを離して設置し、照明光源からの拡散光が被測定面に45度以上の入射角で入射し同じ角度で反射してカメラに入射し反射像を撮影するように設定しているが、このような場合は被測定面の奥行き方向の位置ずれが生ずるとその影響が大きくなり、正確な面の傾きの算出は困難となる。
一方、本観点の発明は、照明光源とカメラおよび被測定面の配置を上記のように設定することにより、照明光源の拡散光の被測定面への入射角および反射角が15度程度以内の反射像がカメラで撮影されることとなるので、被測定面の奥行き方向の位置ずれの影響を小さく抑えることができる。さらにその影響を小さくするためには、本観点の発明における上記の拡散光の発光点と被測定点とを結ぶ直線と前記カメラの光軸との成す角度が30度以内とする角度は、14度以内とし、入射角および反射角が7度程度以内の反射像をカメラで撮影することが望ましい。
【0017】
第4の観点では、本発明は、前記第1乃至第3の観点の面形状歪測定装置において、前記算出された被測定面の曲率または傾きより該被測定面のx軸方向の相対変位を算出する手段と、該算出された相対変位を表示する手段とを有することを特徴とする。本発明の面形状歪測定装置では被測定面の各反射点における曲率および傾きが算出されるので、それを拡散光の移動方向、すなわち、x軸方向に2重積分または積分することによりそれらの方向の連続的な変位を算出することができる。さらに、その相対的な変位の変化をディスプレイなどに表示することにより被測定物の表面形状を視覚的に観察することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、微小な凹凸による面形状の歪みの測定が可能で、被測定物の設置距離の変動にも影響を受けにくい面形状歪測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る面形状歪測定装置の模式的な構成図。
図2】実施例1における照明光源とカメラおよび移動機構の斜視図。
図3】本発明の面形状歪測定装置の測定原理を説明する図。
図4】実施例1の面形状歪測定装置の測定手順を示すフローチャート。
図5】所定の間隔で照明光源とカメラをx軸方向に移動させ反射像を撮影したときの反射像の座標を示す図。
図6】実施例1の面形状歪測定装置による測定結果の一例を示す図であり、ディスプレイ上に表示された曲率分布を示す図。
図7図6の表示画面の一部を拡大して表示された曲率分布を示す図。
図8】実施例2の測定結果の一例を示す図であり、ディスプレイ上に表示された正反射傾斜角度の分布を示す図。
図9】従来の格子パターンの正反射像から歪を検出する方法の測定系の模式的な配置図と格子パターンの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の面形状歪測定装置を実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係る面形状歪測定装置の模式的な構成図である。図1において、本実施例の面形状歪測定装置10では、照明光源3により被測定物1の被測定面2にy軸方向に伸びたスリット状の拡散光を照射し、照明光源3に対する相対位置を固定して設置されたカメラ4により拡散光の被測定面2による反射像を撮影する。カメラ4により撮影された反射像のデータは画像処理手段を内蔵したパーソナルコンピュータ5に入力され、被測定面2の各反射点の相対的な傾きを検出する。照明光源3とカメラ4はx軸方向に平行な軸上を移動する移動機構6に搭載され固定されている。移動機構6はコントローラ7により駆動制御される。コントローラ7は移動機構6の移動量に応じた電気信号を出力するエンコーダを備え、そのエンコーダの出力は撮影トリガーをかけるためカメラ4に入力される。照明光源3およびカメラ4を移動機構6により移動させながらカメラ4により反射像の撮影を順次行うことにより被測定面2の測定領域内の各反射点の傾きを画像処理手段により順次検出する。パーソナルコンピュータ5はそれらの反射点の傾きの変化から各反射点における曲率を算出する曲率算出手段を備え、算出された被測定面2の測定領域内における曲率の分布がパーソナルコンピュータ5のディスプレイ画面上に表示される。なお、照明光源3は照明コントローラ8により制御される。
【0022】
図2は本実施例における照明光源とカメラおよび移動機構の斜視図であり、図3は本発明の面形状歪測定装置の測定原理を説明する図である。図2に示すように、本実施例においては被測定面の奥行き方向の位置ずれの影響を小さく抑えるため、被測定面2に対して照明光源3とカメラ4ができるだけ垂直な方向に配置されるようにしている。図3はy軸に垂直でカメラ4の光軸13と被測定面2が交わる被測定点14とを含む面内における位置関係を模式的に示しており、照明光源3の拡散光の発光点15と被測定点14とを結ぶ直線16とカメラ4の光軸13との成す角度αは被測定面の奥行き方向の位置ずれの影響を抑えるためにはできるだけ小さい方が望ましい。αの値としては30度以下が望ましく、高精度の測定では14度以下となるように設定する。なお、図3においてはカメラ4の光軸13は図3が示す面内、すなわちy軸に垂直な面内にあるが、カメラの光軸と直線16との成す角度がαの値の条件を満たす範囲内であればカメラの光軸はこの面内になくてもよい。
【0023】
図4は本実施例の面形状歪測定装置の測定手順を示すフローチャートである。図5は所定の間隔で照明光源とカメラをx軸方向に移動させ反射像を撮影したときの反射像の座標を示す図である。以下に、図3図4および図5を参照して本実施例の測定手順について説明する。基本的には以下の各ステップはパーソナルコンピュータ5からの指令により行う。
【0024】
先ず移動させて撮像を行う前に、最初に、反射画像中の各画素の座標と基準面からの傾斜角度との関係を算出し座標対角度対応表を作成する。この際、被測定面の傾きが生じたことによる各画素の座標を補正する。具体的には、図3において、被測定面2がx軸に平行な場合の被測定点14の正反射による反射像は反射像9となるが、被測定面が角度θ傾き、被測定面2aとなった場合は正反射による反射像は反射像9aとなる。この際、被測定面の傾きθが生じたことによる被測定点の位置を補正してもよい。すなわち、被測定面がθ傾いたことにより反射像9aの位置にある被測定点は被測定点17となる。このように、撮影されたスリットの反射像内の画素の座標に傾斜角度が対応することになる。例えば、図5において、i回目に撮影されたスリットの反射像においてx方向の画素の幅をΔx、基準面と平行な被測定点14の反射像9に対応する座標をx、傾斜角度θ傾いた被測定点17に対応する反射像9aの座標をx−nΔx(ここでnは1以上の整数)とすると、座標xには傾斜角0、座標x−nΔxには傾斜角θが対応する。スリット反射像内の各±nの値に対応する座標にはその座標に対応する傾斜角度が算出されて座標対角度対応表が作成される。x軸方向に所定の間隔dで移動しながら撮影を繰り返すことにより、被測定領域内の各座標にその撮影されたスリット内の画素の座標に対応する傾斜角度が入力される。なお、実際に撮影されるスリットの反射像には、被測定面からの正反射だけでなく、散乱反射された像も含まれている。
【0025】
図4において、最初のステップS1として、コントローラ7により移動機構6の移動を開始し最初の位置に設定する。次にステップS2として撮影トリガーをカメラ4に入力し、被測定面2の反射像を撮影する。次にステップS3として、カメラ4のレンズの歪みを多項式近似で補正し、画面上の反射像の位置座標を補正する。
【0026】
次にステップS4として、レンズ歪補正された反射像をx方向に撮影画像の画素の幅、または設定された単位画像の幅、y方向に設定された単位画像サイズの幅の矩形状のピクセルに分割し、各ピクセル内の輝度を抽出する。さらに、ステップS5としてその抽出された輝度と座標対角度対応表により、反射画像中の上記の各ピクセルの座標に対する傾斜角度対輝度データを作成し、メモリ上の二次元配列に保存する。
【0027】
ステップS6で移動機構6の移動距離が測定範囲の端まで達したか否かを判定し、達していない場合は上記のステップS1からS5を繰り返し、達した場合にステップS7として移動を終了する。
【0028】
次に、ステップS8として、メモリの二次元配列上に保存された各座標に対する傾斜角度対輝度データに基づき、最大輝度を有する傾斜角度をその座標の正反射傾斜角度として抽出する。
【0029】
ステップS9として、被測定領域内の各座標の正反射傾斜角度を用い、被測定領域の各点の曲率を算出する。
【0030】
最後にステップS10として、算出された被測定面の曲率の分布を曲率の大きさに応じて色分けして示すように処理し、パーソナルコンピュータ5のディスプレイ画面上に表示する。
【0031】
図6は本実施例の面形状歪測定装置による測定結果の一例を示す図であり、ディスプレイ上に表示された曲率分布を示す。図7は、図6の表示画面の一部を拡大して表示された曲率分布を示す。本実施例においては、製品の塗装面を被測定面として測定し、その表面の曲率分布を測定したものである。図6において、実際の画面では曲率の大きさによって、赤色(R)、黄色(Y)、緑色(G)、青色(B)の順に色分けして示している。赤色(R)が曲率9.0/m〜10.0/m付近、黄色(Y)が曲率5.0/m付近であり凸部を、緑色(G)が曲率0/m付近であり平面部を、青色(B)が曲率−0.7/m〜−0.8/m付近であり凹部をそれぞれ示す。この表示により、測定者は視覚的に被測定面の面形状の歪みの様子を明確に認識することができる。この色分けの範囲はパーソナルコンピュータ5の操作により変更可能としている。
【0032】
図6の曲率分布の表示画面において、全体的には平面を示す緑色(G)であるが、一部に中心が赤色(R)で周囲が青色(B)の点状の歪が見られ、これが塗装ブツと言われる小さな点状の突起である。図6の表示画面上では、このような小さな塗装ブツの存在を視覚的に明確に把握することができる。なお、本実施例においては、突起部が正の曲率として表示されるように、曲率の計算結果に対して極性を反転させて表示している。
【0033】
図7は、図6の座標x=18.5mm。y=100mm付近にある1つの塗装ブツの周囲を拡大して表示している。これにより、1つの塗装ブツが凸状の中心部と凹状の周囲部分から形成された1〜2mm程度の形状の歪であることがわかる。さらに、本実施例においては、算出された各反射点における曲率のx軸方向、y軸方向のそれぞれの変化を拡大して表示画面上に表示している。y=100mmの直線上のx軸方向の曲率の変化がx軸の下側に表示され、x=18.5mmの直線上のy軸方向の曲率の変化がy軸の左側に表示されている。これにより被測定物の表面形状や塗装ブツの形状を視覚的に観察することができる。なお、算出された各反射点における曲率をx軸方向に2重積分することによりその方向の連続的な変位を算出し、その相対的な変位の変化を表示画面上に表示してもよい。この場合、被測定面の傾きを積分して相対的な変位を算出してもよい。
【0034】
測定においては、図2に示す照明光源3、カメラ4、移動機構6を一体にした装置を三脚やラックなどに搭載し、被測定物に対して最適な位置に設置している。
【実施例2】
【0035】
次に本発明の面形状歪測定装置の実施例2について説明する。実施例2に用いた面形状歪測定装置の基本的な構成や機能は図1に示す実施例1と同じである。図8は本実施例の測定結果の一例を示す図であり、ディスプレイ上に表示された正反射傾斜角度の分布を示す図である。本実施例においては、わずかに曲面形状を有する被測定物の表面形状を測定した結果を示す。図8に示すとおり、各座標の正反射傾斜角度をその大きさに応じて色分けして示すように処理し、表示した。赤色(R)が傾斜角1.4〜1.5度付近、黄色(Y)が傾斜角1.1〜1.2度付近、緑色(G)が傾斜角0.8度付近、青色(B)が傾斜角2.0〜3.0度付近をそれぞれ示す。これから、表面形状の傾きを視覚的に把握することができる。
【0036】
以上のように、本発明により微小な凹凸による面形状の歪みの測定が可能で、被測定物の設置距離の変動にも影響を受けにくい面形状歪測定装置が得られることが確認できた。
【0037】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、パーソナルコンピュータには上記の実施例に示した以外の機能を付加してもよい。または、上記の実施例に示した機能の一部またはすべてをパーソナルコンピュータ以外の電子機器で実現してもよい。照明光源やカメラの種類、形状、機能も目的に合わせて選択可能である。また、移動機構は2軸以上の移動が可能であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1、92 被測定物
2、2a 被測定面
3 照明光源
4、94 カメラ
5 パーソナルコンピュータ
6 移動機構
7 コントローラ
8 照明コントローラ
9、9a、93、95 反射像
10 面形状歪測定装置
13 光軸
14、17 被測定点
15 発光点
16 直線
90、96 格子状パターン
91 照明装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9