【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係る面形状歪測定装置の模式的な構成図である。
図1において、本実施例の面形状歪測定装置10では、照明光源3により被測定物1の被測定面2にy軸方向に伸びたスリット状の拡散光を照射し、照明光源3に対する相対位置を固定して設置されたカメラ4により拡散光の被測定面2による反射像を撮影する。カメラ4により撮影された反射像のデータは画像処理手段を内蔵したパーソナルコンピュータ5に入力され、被測定面2の各反射点の相対的な傾きを検出する。照明光源3とカメラ4はx軸方向に平行な軸上を移動する移動機構6に搭載され固定されている。移動機構6はコントローラ7により駆動制御される。コントローラ7は移動機構6の移動量に応じた電気信号を出力するエンコーダを備え、そのエンコーダの出力は撮影トリガーをかけるためカメラ4に入力される。照明光源3およびカメラ4を移動機構6により移動させながらカメラ4により反射像の撮影を順次行うことにより被測定面2の測定領域内の各反射点の傾きを画像処理手段により順次検出する。パーソナルコンピュータ5はそれらの反射点の傾きの変化から各反射点における曲率を算出する曲率算出手段を備え、算出された被測定面2の測定領域内における曲率の分布がパーソナルコンピュータ5のディスプレイ画面上に表示される。なお、照明光源3は照明コントローラ8により制御される。
【0022】
図2は本実施例における照明光源とカメラおよび移動機構の斜視図であり、
図3は本発明の面形状歪測定装置の測定原理を説明する図である。
図2に示すように、本実施例においては被測定面の奥行き方向の位置ずれの影響を小さく抑えるため、被測定面2に対して照明光源3とカメラ4ができるだけ垂直な方向に配置されるようにしている。
図3はy軸に垂直でカメラ4の光軸13と被測定面2が交わる被測定点14とを含む面内における位置関係を模式的に示しており、照明光源3の拡散光の発光点15と被測定点14とを結ぶ直線16とカメラ4の光軸13との成す角度αは被測定面の奥行き方向の位置ずれの影響を抑えるためにはできるだけ小さい方が望ましい。αの値としては30度以下が望ましく、高精度の測定では14度以下となるように設定する。なお、
図3においてはカメラ4の光軸13は
図3が示す面内、すなわちy軸に垂直な面内にあるが、カメラの光軸と直線16との成す角度がαの値の条件を満たす範囲内であればカメラの光軸はこの面内になくてもよい。
【0023】
図4は本実施例の面形状歪測定装置の測定手順を示すフローチャートである。
図5は所定の間隔で照明光源とカメラをx軸方向に移動させ反射像を撮影したときの反射像の座標を示す図である。以下に、
図3、
図4および
図5を参照して本実施例の測定手順について説明する。基本的には以下の各ステップはパーソナルコンピュータ5からの指令により行う。
【0024】
先ず移動させて撮像を行う前に、最初に、反射画像中の各画素の座標と基準面からの傾斜角度との関係を算出し座標対角度対応表を作成する。この際、被測定面の傾きが生じたことによる各画素の座標を補正する。具体的には、
図3において、被測定面2がx軸に平行な場合の被測定点14の正反射による反射像は反射像9となるが、被測定面が角度θ傾き、被測定面2aとなった場合は正反射による反射像は反射像9aとなる。この際、被測定面の傾きθが生じたことによる被測定点の位置を補正してもよい。すなわち、被測定面がθ傾いたことにより反射像9aの位置にある被測定点は被測定点17となる。このように、撮影されたスリットの反射像内の画素の座標に傾斜角度が対応することになる。例えば、
図5において、i回目に撮影されたスリットの反射像においてx方向の画素の幅をΔx、基準面と平行な被測定点14の反射像9に対応する座標をx
i、傾斜角度θ傾いた被測定点17に対応する反射像9aの座標をx
i−nΔx(ここでnは1以上の整数)とすると、座標x
iには傾斜角0、座標x
i−nΔxには傾斜角θが対応する。スリット反射像内の各±nの値に対応する座標にはその座標に対応する傾斜角度が算出されて座標対角度対応表が作成される。x軸方向に所定の間隔dで移動しながら撮影を繰り返すことにより、被測定領域内の各座標にその撮影されたスリット内の画素の座標に対応する傾斜角度が入力される。なお、実際に撮影されるスリットの反射像には、被測定面からの正反射だけでなく、散乱反射された像も含まれている。
【0025】
図4において、最初のステップS1として、コントローラ7により移動機構6の移動を開始し最初の位置に設定する。次にステップS2として撮影トリガーをカメラ4に入力し、被測定面2の反射像を撮影する。次にステップS3として、カメラ4のレンズの歪みを多項式近似で補正し、画面上の反射像の位置座標を補正する。
【0026】
次にステップS4として、レンズ歪補正された反射像をx方向に撮影画像の画素の幅、または設定された単位画像の幅、y方向に設定された単位画像サイズの幅の矩形状のピクセルに分割し、各ピクセル内の輝度を抽出する。さらに、ステップS5としてその抽出された輝度と座標対角度対応表により、反射画像中の上記の各ピクセルの座標に対する傾斜角度対輝度データを作成し、メモリ上の二次元配列に保存する。
【0027】
ステップS6で移動機構6の移動距離が測定範囲の端まで達したか否かを判定し、達していない場合は上記のステップS1からS5を繰り返し、達した場合にステップS7として移動を終了する。
【0028】
次に、ステップS8として、メモリの二次元配列上に保存された各座標に対する傾斜角度対輝度データに基づき、最大輝度を有する傾斜角度をその座標の正反射傾斜角度として抽出する。
【0029】
ステップS9として、被測定領域内の各座標の正反射傾斜角度を用い、被測定領域の各点の曲率を算出する。
【0030】
最後にステップS10として、算出された被測定面の曲率の分布を曲率の大きさに応じて色分けして示すように処理し、パーソナルコンピュータ5のディスプレイ画面上に表示する。
【0031】
図6は本実施例の面形状歪測定装置による測定結果の一例を示す図であり、ディスプレイ上に表示された曲率分布を示す。
図7は、
図6の表示画面の一部を拡大して表示された曲率分布を示す。本実施例においては、製品の塗装面を被測定面として測定し、その表面の曲率分布を測定したものである。
図6において、実際の画面では曲率の大きさによって、赤色(R)、黄色(Y)、緑色(G)、青色(B)の順に色分けして示している。赤色(R)が曲率9.0/m〜10.0/m付近、黄色(Y)が曲率5.0/m付近であり凸部を、緑色(G)が曲率0/m付近であり平面部を、青色(B)が曲率−0.7/m〜−0.8/m付近であり凹部をそれぞれ示す。この表示により、測定者は視覚的に被測定面の面形状の歪みの様子を明確に認識することができる。この色分けの範囲はパーソナルコンピュータ5の操作により変更可能としている。
【0032】
図6の曲率分布の表示画面において、全体的には平面を示す緑色(G)であるが、一部に中心が赤色(R)で周囲が青色(B)の点状の歪が見られ、これが塗装ブツと言われる小さな点状の突起である。
図6の表示画面上では、このような小さな塗装ブツの存在を視覚的に明確に把握することができる。なお、本実施例においては、突起部が正の曲率として表示されるように、曲率の計算結果に対して極性を反転させて表示している。
【0033】
図7は、
図6の座標x=18.5mm。y=100mm付近にある1つの塗装ブツの周囲を拡大して表示している。これにより、1つの塗装ブツが凸状の中心部と凹状の周囲部分から形成された1〜2mm程度の形状の歪であることがわかる。さらに、本実施例においては、算出された各反射点における曲率のx軸方向、y軸方向のそれぞれの変化を拡大して表示画面上に表示している。y=100mmの直線上のx軸方向の曲率の変化がx軸の下側に表示され、x=18.5mmの直線上のy軸方向の曲率の変化がy軸の左側に表示されている。これにより被測定物の表面形状や塗装ブツの形状を視覚的に観察することができる。なお、算出された各反射点における曲率をx軸方向に2重積分することによりその方向の連続的な変位を算出し、その相対的な変位の変化を表示画面上に表示してもよい。この場合、被測定面の傾きを積分して相対的な変位を算出してもよい。
【0034】
測定においては、
図2に示す照明光源3、カメラ4、移動機構6を一体にした装置を三脚やラックなどに搭載し、被測定物に対して最適な位置に設置している。
【実施例2】
【0035】
次に本発明の面形状歪測定装置の実施例2について説明する。実施例2に用いた面形状歪測定装置の基本的な構成や機能は
図1に示す実施例1と同じである。
図8は本実施例の測定結果の一例を示す図であり、ディスプレイ上に表示された正反射傾斜角度の分布を示す図である。本実施例においては、わずかに曲面形状を有する被測定物の表面形状を測定した結果を示す。
図8に示すとおり、各座標の正反射傾斜角度をその大きさに応じて色分けして示すように処理し、表示した。赤色(R)が傾斜角1.4〜1.5度付近、黄色(Y)が傾斜角1.1〜1.2度付近、緑色(G)が傾斜角0.8度付近、青色(B)が傾斜角2.0〜3.0度付近をそれぞれ示す。これから、表面形状の傾きを視覚的に把握することができる。
【0036】
以上のように、本発明により微小な凹凸による面形状の歪みの測定が可能で、被測定物の設置距離の変動にも影響を受けにくい面形状歪測定装置が得られることが確認できた。
【0037】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、パーソナルコンピュータには上記の実施例に示した以外の機能を付加してもよい。または、上記の実施例に示した機能の一部またはすべてをパーソナルコンピュータ以外の電子機器で実現してもよい。照明光源やカメラの種類、形状、機能も目的に合わせて選択可能である。また、移動機構は2軸以上の移動が可能であってもよい。