特許第6864914号(P6864914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864914
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】プルキンエ計測器及び自動評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/107 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   A61B3/107ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-565843(P2017-565843)
(86)(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公表番号】特表2018-527962(P2018-527962A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016065054
(87)【国際公開番号】WO2017001426
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年6月28日
(31)【優先権主張番号】102015110456.3
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517436556
【氏名又は名称】ヤヌンツ ホールディング ユージー(ハフトゥングスベシュレンクト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌンツ,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】プトゥツ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ベレン,ヤニーネ
(72)【発明者】
【氏名】メラー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ランゲンブッハー,アヒム
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0268042(US,A1)
【文献】 特開昭56−066235(JP,A)
【文献】 特開2012−152454(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0105943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像シーケンスにおいて眼を撮像する装置(100)であって:
‐ 撮像手段(112)、カメラレンズ(114)およびカメラ軸(111)を備えるカメラ(110);
‐ 固定された所定の位置で撮像される眼に対して前記カメラ(110)を移動するように構成された位置決め手段(120);
‐ 各々が前記カメラ軸(111)に対してそれぞれ所定の角度で、撮像する眼の方向に光ビーム(132)を放射できるように配置されている複数の光源(130);及び
‐ 前記カメラ(110)及び前記複数の光源(130)を定位置にして前記カメラ(110)を用いて、撮像する眼の画像シーケンス(102)を捕捉し、前記シーケンスを記憶媒体(150)に確保するように構成された制御手段(140);を備え
前記制御手段(140)は更に、前記複数の光源(130)を点灯又は消灯に切り替えるように構成されており、それにより画像の捕捉中に複数の光源を所定の順序で点灯し、各画像の捕捉中には前記複数の光源(130)の内の所定の1つのみを点灯する、装置
【請求項2】
前記光源は円の少なくとも1つの弧に沿って前記カメラレンズの周囲に配置することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光源は、前記カメラ軸に対して斜めに配向した環状面又は部分的環状面に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記光源は赤外線発光ダイオードであり、前記撮像手段は赤外線感受性撮像手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記光源は支持プレート上に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記支持プレートには更に、単一の視認可能な基準点を設けることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記支持プレートには、可視光を放射することが可能で、各画像の検出中に点灯するように配置された追加的な光源を備えられることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置には、前記画像シーケンスの画像上で、前記画像シーケンスに沿って、撮像した個々の光反射光及びそれらの変位を認識するように構成した処理手段が更に備えられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
眼を撮像する請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置により取得した画像シーケンスに基づいて、眼における眼内レンズ又は天然水晶体の位置を自動的に検出する方法であって:
‐ 前記画像シーケンスに沿って、撮像した個々の光反射光及びそれらの変位を認識する工程;
‐ それぞれの画像の捕捉中に点灯したそれぞれ対応する前記複数の光源(130)の、認識した形状、対応する光反射光の変位、及び所定の角度により、光反射光の少なくとも1つをプルキンエ反射に割り当てる工程;
‐ 前記割り当てられたプルキンエ反射に基づいてレンズの偏心及び/又は傾斜を計算する工程
を含む方法。
【請求項10】
更に、前記画像シーケンスにおいて、撮像した眼の瞳孔及び/又は虹彩の輪郭を自動的に認識する工程が含まれることを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科診断の分野における画像捕捉及び画像認識の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は眼水晶体の曇りである。天然の曇った眼水晶体は外科的に取り除き、眼内レンズIOLとしても知られているレンズインプラントと置換することが可能である。治療した眼の視覚は移植したレンズの質及び形状によるが、眼におけるその位置又は位置にもよる。
【0003】
レンズの偏心又は傾斜は、手術後に著しい視力障害を引き起こす可能性がある。これは、移植したレンズが眼に個別に適合した形状を有する場合にはより関連性が高い。非球面レンズインプラントの場合、例えば臨界的な傾斜値は+/−7°であり、偏心値は+/−0.4mmであることが知られている。
【0004】
従って、そのような障害の原因を正確に推定するためには、眼内レンズの位置を可能な限り簡単かつ正確に検出できることが重要である。眼の位置を決定するための公知の方法には、光干渉断層撮影(OCT)、シャインプルーフ法、超音波生体顕微鏡法、及びプルキンエ測定法が挙げられる。
【0005】
プルキンエ測定法は、眼に入射する複数の光線が異なる角度で異なる界面において反射するという認識に基づいている。これによりプルキンエ像が見えるようになる。プルキンエ像は、角膜及び水晶体又はレンズの様々な屈折面に光線を反射させることにより形成された画像である。図1を参照し、プルキンエ反射をより詳細に説明する。第1の画像P1は、角膜1の前方角膜表面上に発生する反射光である。P2は角膜の後方面上に形成され、通常はP1と重複することから、P2は通常、その後の計算には関与しない。レンズ2の前方レンズ面には第3画像P3が形成され、最終的に後方レンズ面にはP4が形成される。
【0006】
プルキンエ画像の相対的な位置により、例えばレンズと虹彩との間の距離又はレンズの曲率などの規模を計算できることが知られている。
【0007】
出願人の知る限りでは、現在、2つのプルキンエ計測器、すなわちプルキンエ反射光を検出及び評価するための装置が知られている。最初のプルキンエ計測器はTabarnero及びArtal(非特許文献1)により開示された。ここでは、眼を照射するために複数の半円の光源が設けられ、異なる位置で使用することが知られている。対応するプルキンエ反射P1、P3及びP4は一般的に、個々の角膜及びレンズ形状により変形されることから、投影される半円パターンの形状に一致しない。従って、事前に定義された形態を予測することによるパターン認識は系統誤差の影響を受ける。
【0008】
第2のプルキンエ計測器はF.Schaeffelにより開発された(非特許文献2)。プルキンエ反射を検出する処置は通常、約10分かかる。当該処置には眼を照射するために単一の光源を使用する。被検者は、手動でカメラを発動させることにより反射光P1、P3、P4の対応する異なる位置を検出するために、様々な所定の基準点を凝視するよう求められる。その後、検出された反射は、検査者の分かる限りでプルキンエ反射P1、P3及びP4に手動で割り当てる。処置中に被験者又は調査者に誤りがあった場合、処置を再開しなければならない。従って、このプルキンエ計測器は、少なくとも非協力的な患者では使用が困難である。
【0009】
既知の装置及び基礎となる方法の両方は、個々の各測定(検査は一連の個別の手動による測定から成る)のために検査する患者が異なる点を異なる方向に焦点合わせをする必要があるという事実に基づいている。従って測定の質は、患者が協力する意思と、患者の焦点合わせの正確さ/安定性に大幅に依存する。誤差に対する脆弱性は検査が数分間になり得るほど長引くにつれ高まる。また画像分析は手動で行い、プルキンエ反射光への反射光のマッピングは画像分析者の経験に依存する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】タベルネーロ(Tabernero et al.)ら著、「眼表面のミスアライメントを測定するための装置(Instrument for measuring the misalignment of ocular surfaces)」、Opt Express、2006年、14号、p. 10945-10956
【非特許文献2】シェフェール(Schaeffel)著、「有水晶体眼を有する健康な被験者における両眼レンズの傾斜および偏心測定(Binocular lens tilt and decentation measurements in healthy subjects with phakic eyes)」、Invest Ophtalmol Vis Sci 2008年、49号、p. 2216-2222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明は、本出願で述べられた欠点の少なくとも1つを克服するプルキンエ計測器及び対応する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
定式化した技術的問題は本発明の装置及び本発明の方法の特徴により解決される。本発明は、画像シーケンス内の眼を撮像するための装置に関する。当該装置は以下を備える:
‐ 撮像手段及びカメラレンズを備え、カメラ軸を画定するカメラ;
‐ 固定された所定の位置で撮像する眼に対してカメラを移動するように構成した位置決め手段;
‐ 光源の各々が前記カメラ軸に対してそれぞれ所定の角度で、撮像する眼の方向に各光ビームを放射できるように配置した複数の個別の光源;
‐ 撮像する眼の画像シーケンスを捕捉し、それを記憶媒体に確保するために、カメラ及び光源を定位置にしてカメラを用いて構成した制御手段。
【0013】
制御手段は、光源を点灯又は消灯に切り替えるように構成しており、それにより画像の捕捉中に複数の光源を所定の順序で点灯し、各画像の検出中に所定の1つの光源のみを点灯する。
【0014】
好ましくは、光源は円の少なくとも1つの弧に沿ってカメラレンズの周囲に配置することが可能である。好都合にも光源は、カメラレンズの中心を通ってカメラ軸に垂直に延びる軸に対して対称な2つの同中心の円弧形態で配置できる。
【0015】
光源は、好ましくは、カメラ軸に対して斜めに配向した環状面又は部分的環状面に配置できる。
【0016】
放射された光ビームが直角で衝突し、眼の角膜が高い確率で撮像されるように光源を配置することが好ましい。
【0017】
複数の光源には、例えば15個の光源を備えてもよい。
【0018】
好ましくは、光源は赤外線発光ダイオードであってもよい。撮像手段は赤外線感受性撮像手段であることが好ましい。
【0019】
光源は支持プレート上に配置できることが好ましい。
【0020】
支持プレートには更に、単一の視認可能な基準点を設けてもよい。
【0021】
好ましくは、支持プレートには、可視光を放射することが可能で、各画像の検出中に点灯するようになっている追加的な光源が備えられてもよい。
【0022】
あるいは、装置には、所定の位置で支持プレートの外側に単一の視覚的に検出可能な基準点を備えてもよい。基準点は、可視光を放射することが可能で、各画像の検出中に点灯するように配置された追加的な光源であってもよい。この基準光源により放射される可視光は、撮像する眼の視野に光学手段を介して導入できることが好ましい。光学手段は例えば少なくとも1つのミラーを備える。
【0023】
装置には、画像シーケンスの画像上の撮像した個々の光反射、及び画像シーケンスに沿ったそれらの変位を認識するように構成した処理手段が更に備えられてもよい。
【0024】
対応する光反射の認識された形状及び変位に基づいて、処理手段は、形状及び変位を少なくとも1つの特定のプルキンエ反射と関連付けるように設定することが好ましい。
【0025】
更に、処理手段は、関連するプルキンエ反射により、撮像された眼内の眼内レンズ又は天然水晶体の位置を決定するように構成してもよい。
【0026】
本発明はまた、眼を撮像する本発明の装置を用いて捕捉された画像シーケンスに基づいて、眼における眼内レンズ又は天然水晶体の位置を自動的に検出する方法に関する。
【0027】
当該方法は以下の工程を含む:
‐ 画像シーケンスに沿って、撮像した個々の光反射及びそれらの変位を認識する工程;
‐ それぞれの画像の捕捉中に点灯したそれぞれ対応する光源の、認識した形状、それぞれの光反射の変位、ならびに所定の角度により、光反射の少なくとも1つをプルキンエ反射に割り当てる工程;
‐ 割り当てられたプルキンエ反射に基づいてレンズの偏心及び/又は傾斜を計算する工程。
【0028】
更に、画像シーケンスにおいて、撮像した眼の瞳孔及び/又は虹彩の輪郭を自動的に認識することが好ましい。
【0029】
好ましくは、画像捕捉中に画像シーケンスで撮像された被験者は、好ましくは装置の一部である単一の基準点を凝視する。
【0030】
上述した実施形態の特徴全ては互いに組み合わせるか、又は置き換えることが可能である。
【0031】
以下、例示的な実施形態の図面を簡単に説明する。更なる詳細は実施形態の詳細な説明において見出すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】眼の模式図を示し、プルキンエ反射P1、P2、P3及びP4の既知の発生を示す。
図2】好ましい実施形態における本発明の装置の概略側面図を示す。
図3】本発明の装置の好ましい実施形態の詳細を示す。
図4A】好適な実施形態において本発明の装置で検出した眼を描写する画像(上部)の概略図である;下部は対応する照明を示す。
図4B】好適な実施形態において本発明の装置で検出した眼を描写する画像(上部)の概略図である;下部は対応する照明を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、先行技術において既に記載されている。
【0034】
明瞭化のため、単独で、又は特定の実施形態内で他の特徴と組み合わせて、様々な特徴を開示している。しかし、組み合わせの中から取り上げた特長だけでなく、取り上げて示した特長の組み合せも、否定していることが明確に述べられていない限り、開示されているとみなすべきである。
【0035】
本記載は本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の理解に寄与する特徴に限定される。光源の電力供給源、又は装置の様々な電子部品間のデータ接続などの既知の手段についてはこれ以上説明しないものとする。
【0036】
図2は、本発明に従った装置100の好ましい実施形態を示す。当該装置を使用して画像シーケンス中で眼を撮像する。この目的のために、撮像手段112及びカメラレンズ114を備えるカメラ110を使用する。カメラレンズは視野を画定し、視野は撮像手段112を使用して撮像できる。撮像手段は、入射光をデジタル信号に変換することが可能なCMOSセンサのマトリックスを備えることが好ましい。
【0037】
当該装置は位置決め手段120を備え、これは固定された所定の位置において撮像される眼に対してカメラ110を移動させるように設計している。図2では、位置決め手段120は、水平面、例えばテーブルに対してカメラの高さを変えて、また/あるいは撮像する眼からの距離を変えて眼をカメラの焦点面内に移動することを可能にするスタンドとして示している。
【0038】
当該装置は、顎及び/又は額で支持する形態で被検者の位置を決定する手段(図示せず)を有することが好ましい。図示の手段120にの代わりとして、同様に被験者がカメラに対して移動できるようにすることが可能である。
【0039】
当該方法を有意義なものとするためには、瞳孔軸又は視線がカメラ軸111とほぼ一致することが好ましい。
【0040】
カメラ軸111、瞳孔軸又は視線に対してそれぞれ所定の角度で、撮像する眼の方向に各光源が光ビームを放射できるように複数の個別の光源130を配置する。当該装置には、各光源の固有の識別番号と、カメラ軸111、瞳孔軸又は視線に対する所定の角度とを関連付ける記憶素子(図示せず)が備えられることが好ましい。このデータは、例えば表又はデータベースに記憶することが可能である。光源は好ましくは発光ダイオード、LEDであり、好ましくは赤外線範囲、すなわち光スペクトルの不可視部分の光線を放射する。このことは、瞳孔に当たる光ビームが瞳孔を収縮させないという利点を有する。当然ながら、撮像手段112はその感光性において光源のスペクトルに適合している。
【0041】
好ましくは、放出角が小さい個別の複数のLEDを使用する。その結果、プルキンエ反射の位置が明確に定義されるので、光反射光の焦点が認識されやすくなり、異なる反射光が重なる可能性が低減される。このことはプルキンエ反射の自動位置検出を簡単にする。また、ビーム角度の小さい個々のLEDを使用することにより、LEDの強度を低くく保つことが可能になり、それにより眼に入射するエネルギーを低減することが可能になる。
【0042】
光源は、カメラ軸に対向する任意の所定の態様で、例えばカメラ軸に垂直に配向した平面内にあり、好ましくは円形状にカメラレンズの周囲を同心円状に走る線に沿って固定する。この場合に対応する領域は、眼に入射する光線から生じるプルキンエ反射が高確率で瞳孔面内に現れるように制限することが好ましい。より大きい角度で光を入射させる場合、3つのプルキンエ反射のすべてが虹彩の視野に入るわけではないという危険性があり、位置決め又は評価がより困難になる。
【0043】
装置100は制御手段140を備え、例えばカメラ110により設計され、カメラ110及び光源130の位置を維持し、撮像する眼の画像シーケンス102を捕捉し、それを記憶媒体150上に確保するプログラムされたコンピュータプロセッサを備える。このような手段はそれ自体公知であり、対応するコンピュータプログラムは、この説明に基づいて進歩性もなく当業者が書き込める。制御手段140は光源130を点灯及び消灯するようにプログラムしており、そうすることで画像の捕捉中に光源が所定の順序で点灯され、各画像の検出中に1つの所定の光源130のみが点灯する。好ましくは、捕捉した各画像上の眼は単一の異なる光源に選択的に照射される。従って、撮像された眼、及びその中に見える反射光は確実に光の入射角に割当てられる。記憶された画像の各々について、撮像中に点灯された光源に関する関連情報を追加的に記憶することが好ましい。
【0044】
好ましくは、光源は少なくとも1つの円弧に沿ってカメラレンズの周囲に配置する。例えば、光源は、カメラ軸に対する角度で配向された支持プレートの環状表面又は部分的環状表面上に配置してもよい。その配置は、結果として生じるプルキンエ反射の一定の輝度が保証されるように選択すべきである。なお、角膜表面に垂直なそれぞれの方向から光を眼に入射させることに留意されたい。この目的のために、支持プレートは対応する凸型湾曲を有することが好ましい。画像シーケンス内の異なる画像の輝度が一定であることにより、プルキンエ反射の自動認識が容易になり、最大の効果では画像の後処理を行う必要がなくなる。
【0045】
好ましい実施形態では、赤外線LEDを配置する支持プレートは更に、視認可能な単一の基準点を備える。この基準点は撮像する眼による画像捕捉中に連続的に焦点合わせを行い、その間、異なる角度から赤外線LEDの光が所定の順序で眼に入射する。基準点は、可視光を放射することが可能で、各画像の検出中に点灯するように配置した追加的な光源であることが好ましい。
【0046】
あるいは、所定の位置にある支持プレート外側の本発明の装置は、この単一の視認可能な基準点を備えていてもよい。基準点は、可視光を放射可能で各画像の検出中に点灯するように構成された追加的な光源であってもよい。この基準光源により放射される可視光は撮像する眼の視野に光学手段を介して導入できることが好ましい。光学手段は、例えば少なくとも1つのミラーを備える。基準点の提供は本発明の他の特徴には依存せず、本発明の実施形態全てにおいて提供することが可能である。
【0047】
図3は、止めねじ133によりカメラレンズ114の周囲に設置可能な環状支持プレート131の一例を示す。当該プレートには、光源130、特に15個の赤外線LED(1〜4及び6〜16)、及び斜線で塗りつぶした基準点の役割を担う緑色LEDが備えられる。
【0048】
瞳孔認識(瞳孔の中心が全てのパラメータの基準となる)が自動的に行われるように、十分なSNR(「信号対ノイズ比」)が保証されなければならない。このため、眼の照射は十分に均一になる必要がある。このことは赤外線LED130から切り離し、好ましくは追加的な赤外線LEDを用いて眼の間接照射により実行する。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明の装置には更に、画像シーケンスの画像上の撮像した個々の光反射光、及び画像シーケンスに沿ったそれらの変位を認識するように構成した画像処理手段が備えられる。画像処理手段は好ましくは、適切にプログラムされたコンピュータプロセッサにより制御手段140と共に実装する。
【0050】
眼内レンズ又は天然水晶体の位置に関する本発明の自動認識方法は、従来技術と比較した以下の知見に基づいている。単一の画像では、異なる複数の反射を複数のプルキンエ反射に割当てるのに十分のものとならない。異なる所定の照明方向からの複数の反射光を示す一連の画像の中で異なる画像を比較することのみが割り当てを信頼できるものにする。また、プルキンエ反射の「偽の」反射光(散乱光)は、照射方向を変えることにより当該偽反射光がシフトする場合にのみ確実に区別できる。その間、特定されない散乱光の反射は静止したままである。
【0051】
本発明の方法は、固定基準点に焦点を合わせて眼を撮像する本発明の装置を用いて取得した画像シーケンスに基づいている。第1工程では、画像シーケンスに沿った個々の撮像された光反射光及びそれらの変位を検出又は識別する。
【0052】
認識された形態及び対応する光反射のシフトにより、また、画像シーケンスの各画像において眼がどの角度から照射されたかを知ることにより、異なる複数の光反射光は複数のプルキンエ反射に割り当てられる。
【0053】
その後、既知の計算方法を利用し、関連するプルキンエ反射に基づいて、天然水晶体又は眼内レンズの偏心及び/又は傾斜を計算する。
【0054】
撮像された瞳孔表面が例えば部分的に瞼に覆われているかを自動的に認識することを利用し、撮像された反射光を評価できる可能性は高いままになるように眼の照明用光源130の選択を適合させることが可能になる。
【0055】
本発明の測定によれば、測定は数秒以内に完了することが可能であり、この時間内に患者はわずか1秒間、1点に焦点を合わせるだけでよい。従って、当該方法のエラー率は最小である。
【0056】
以下、本発明のプルキンエ反射検出方法の好適な実施形態を説明する。
【0057】
画像取得
本発明の装置の好ましい実施形態に基づいて、画像シーケンスの取得中に、図示したLEDリング131により眼を照明する。カメラレンズと検出される眼との間の距離は約35cmである。捕捉手順全体では、15個の赤外線LEDに対応している640×480ピクセル画像を持つ16個のグレースケール8ビット画像が形成され、ここでは、各画像は点灯している赤外線LEDを1つのみ有し、その他の暗画像は消灯している全赤外線LEDを有する。
【0058】
画像分析
プルキンエ反射の自動検出のためのアルゴリズムは3つの連続工程:瞳孔検出、粒子検出(反射検出)及び粒子分析(反射分析)から成る。第1に、瞳孔は各画像の中心座標と共に認識及び抽出する必要がある。この情報は画像を瞳孔領域に縮小するために利用できる。次の工程では、プルキンエ反射を調べるために瞳孔領域のみを考える。プルキンエ反射に加えて、画像には輝点の形態のアーチファクトが含まれる場合がある。放射されたドットは全て、粒子の雲のように扱う。粒子検出の後、それらの座標を分析する。次いでプルキンエ反射P1、P3及びP4を認識する。次の工程には、プルキンエ反射の座標を使用して天然水晶体又は眼内レンズの位置及び配向を計算する計算プロセスが含まれる。
【0059】
瞳孔検出
瞳孔検出アルゴリズムは、各グレーレベルの画素数を示す画像ヒストグラムに基づく単純な閾値設定技術を利用する。画像は割合及び大きさが異なるが、適切に照明された眼を描写する捕捉画像シーケンスの全画像において、いくつかの画像特性を見出すことが可能である。虹彩及び瞼を含むグレースケール画素部分は通常100まである。これらの画素は画像から抽出し、瞳孔の縁はキャニーフィルタを用いて検出する。当然ながら実際の値は得られた画像の輝度に依存する。
【0060】
この情報に基づいて、回転楕円を利用して瞳孔を最もよく説明できる。その中心及び縁などの楕円のパラメータは既知の方法で数学的に表すことが可能である。
【0061】
反射認識
画像処理の第2段階には、本発明の装置により捕捉した各画像におけるプルキンエ反射の検出が含まれる。プルキンエ反射P1、P3及びP4は通常、それらの検出に役立つ特性を有する。多くの場合、P1はその星形の外観により容易に認識することが可能であり、P3はP1より大きく、より拡散することが分かる。ほとんどの場合、P4はほぼ円形で、他の2つの反射よりかなり小さい。偽水晶体眼、すなわち眼内レンズが移植された眼の画像では、3つの反射が同様の輝度で観察されることが多い。
【0062】
多くの場合、画像シーケンス中に他の粒子又は反射光が検出されるので、瞳孔領域内の全粒子を最初に検出する必要がある。この主な理由は反射であり、反射は検査室における理想的でない光条件、ならびに虹彩領域が明るいこと、及び眼の他の領域が楕円の縁にあることに引き起こされる。
【0063】
プルキンエ反射光は瞳孔領域内の最も明るい画素を含むと推測される。場合により次の工程では、分離した明るい画素を除去する必要があるかもしれない。この工程の最終段階では、全ての画像を通して各反射の座標を決定するための自体公知の方法を適用する必要がある。
【0064】
対応するプルキンエ反射への反射光の割り当て
既に説明したように、プルキンエ反射の位置は個々の赤外線LED照明の各々によりシフトする。画像を通るプルキンエ反射の動きは、LEDリング上の2つの半円LEDに対応する。
【0065】
図4A及び4Bの瞳孔領域の概略図では、LED1及び2が図示のように連続的に点灯しているとき、P4は左瞳孔の縁の方向に移動することが示されている。LEDリングの下半円からの照明に形成されたP4反射は、上半円に起因する反射光位置の下に現れる。
【0066】
P1及びP3の位置については逆のことが観察される。それらは右の瞳孔縁の方向に移動する。LEDの下部列の光源を照明して生じる反射は、上部列からの照明に起因する対応する反射の上に現れる。この模式図で見られる反射の正確な位置及び順序は、測定する眼の特長に大きく依存していることに留意することが重要である。
【0067】
反射の追跡は最初の画像から始める。後続の画像各々については、前の画像におけるP1、P3及びP4のそれぞれの位置に対して基準を設ける。特に、前の画像内の3つの点の位置の直近を分析する。
【0068】
初めに、LED1に関する画像の最初に検出された反射を元の粒子として考える。次の画像では、元の粒子位置の周囲にある類似のサイズを調査して同じ大きさの粒子を探す。そのような粒子の1つ以上が調査範囲内で見つかった場合、それらは次の反復処理で元の粒子として使用する。粒子が見つからない場合、次の画像全体の元の粒子サイズに近いサイズの粒子を次の元の粒子として選択する。このプロセスはLED#16の画像に達するまで繰り返す。第1画像内の第1粒子についてこのサイクルが完了した後、LED1に関連する画像内の残りの粒子全てについて全プロセスを繰り返す。最後に、LEDに関連する画像内の各粒子について、対応する粒子のセット又は群を以降の画像において識別する。
【0069】
図3に示すように、LEDリング上のLEDの配置においてLED#4とLED#6との間に隙間が観察される。この場合、それに伴いそれぞれの画像の粒子の調査量を増加させる可能性がある。
【0070】
次の工程では、どの粒子がプルキンエ反射に対応するかを決定する。当該方法ではP1、P3及びP4の区別は、サイズ、方向、及びそれらが1つの画像から次の画像へ移動する距離などの特定の特性を考慮して行う。
【0071】
例えば、P4は反時計回りに移動し、通常、サイズは画像シーケンスに沿って同じである。従って、1つの画像から別の画像へのP4反射を認識するためには、サイズの変化が最小である粒子を使用する。事前に特定した粒子群の各々についてこの手順を繰り返し、P4を高確率で同定する。
【0072】
P4反射を特定する前の工程と同様に、プルキンエ反射P1及びP3の特徴的な特性を利用してそれらを検出する。P1及びP3の反射光が右瞳孔縁の方向に移動するにつれ、シフト距離は1つの画像から次の画像に変わる。通常、P3反射はP1より長い距離にわたる。各画像の適切な距離を計算することにより、最終工程で反射を決定する方法が確実になる。
【符号の説明】
【0073】
1 角膜
2 レンズ
100 装置
102 画像シーケンス
110 カメラ
111 カメラ軸
112 撮像手段
114 カメラレンズ
120 位置決め手段
130 光源
131 支持プレート
140 制御手段
150 記憶媒体
図1
図2
図3
図4A
図4B