特許第6864918号(P6864918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6864918アメーバ様移動性細胞の移動能を特定するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864918
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】アメーバ様移動性細胞の移動能を特定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20210419BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20210419BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12M1/34 B
   C12Q1/02
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-526968(P2018-526968)
(86)(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公表番号】特表2018-522596(P2018-522596A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】AT2016050252
(87)【国際公開番号】WO2017024328
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】15180818.5
(32)【優先日】2015年8月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518049876
【氏名又は名称】メオン・メディカル・ソリューションズ・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】MEON MEDICAL SOLUTIONS GMBH & CO KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヒューマー,ヘアフリート
(72)【発明者】
【氏名】ツァール,ドリス
(72)【発明者】
【氏名】リューター,ホルスト
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/032889(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0040334(US,A1)
【文献】 特表2011−528232(JP,A)
【文献】 特表2002−525604(JP,A)
【文献】 特表2007−525667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメーバ様移動性細胞の移動能を特定するための移動装置(100、520)であって、
ハウジング(101、501、502)内に配置され、且つ該アメーバ様移動性細胞を含有する試料液を受け入れるための入口開口部を有する試料チャンバー(102、512)と;
前記ハウジング(101、501、502)によって形成される該試料チャンバーの底面(202)上に置され、且つアメーバ様移動性細胞が中に浸透する薄い層として形成された少なくとも1つの移動マトリックス(105、503)であって、平均孔径がアメーバ様移動性細胞の平均直径より小さい移動マトリックスと;
少なくとも1つの流体出口(103、401、402、506)と;
前記ハウジング(101、501、502)内に形成され、且つ該移動マトリックス(105、503)から流体を放出するように適合され、且つ前記底面(202)に配置される流出構造を有する第一放出構造(104、201、43、518、524)と、を含み、
前記第一放出構造は、前記少なくとも一つの流体出口(103、401、402、506)に開口する、移動装置(100、520)。
【請求項2】
前記ハウジング内に形成され、且つ前記試料チャンバーから流体を放出するように適合された第二放出構造(301、404、519)と、前記試料チャンバー(102、512)の側壁における少なくとも1つの開口部(301a、404a、513、517)とによって特徴付けられ、前記第二放出構造は、前記少なくとも一つの流体出口(103、401、402、506)に開口し、前記第一放出構造(104、201、403、518、524)及び前記第二放出構造(301、404、519)は、該ハウジングの外側への流体の放出を可能にするように設計される、請求項1に記載の移動装置(100、520)。
【請求項3】
前記移動マトリックス(105、503)が、デポジットマトリックス(504)を介して前記底面(202)上に位置されることによって特徴付けられる、請求項1又は2に記載の移動装置(100、520)。
【請求項4】
前記底面に形成された前記流出構造が、溝(201a、301a、505)または溝システムを有し、前記溝(201a、301a、505)または溝システムが、該底面の20%未満を占めることによって特徴付けられる、請求項1からのいずれか一項に記載の移動装置(100、520)。
【請求項5】
前記第二放出構造が、前記移動装置に配置され且つ前記試料チャンバー(102、512)から前記流体出口(103、402、506)まで延在する第一流体チャネル(301、404、518)を有することによって特徴付けられる、請求項2、及び、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜4のいずれか一項に記載の移動装置(100、520)。
【請求項6】
前記第二放出構造が、環状流体チャネル(519)を有し、該環状流体チャネル(519)が、該試料チャンバー(102、512)の周りにおいて前記移動装置に配置され、該第二放出構造が、該環状流体チャネル(519)と前記流体出口との間に流体接続を有し、該第二放出構造が、該側壁に配置された該開口部(301a、404a、513、517)と該環状流体チャネル(519)との間に流体接続を有することによって特徴付けられる、請求項2、及び、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜5のいずれか一項に記載の移動装置(100、520)。
【請求項7】
前記底面に形成された前記第一放出構造の一部および前記側壁に配置された前記開口部(301a、404a、513、517)が、同じ流体出口に接続され、該底面に形成された該第一放出構造の該一部および該側壁に配置された該開口部が、それらの流体接続に関して直列または並列において接続されることによって特徴付けられる、請求項2、及び、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜6のいずれか一項に記載の移動装置(100、520)。
【請求項8】
前記移動装置が、少なくとも二つの別々の流体出口(401、402)を有し、前記底面に形成された前記第一放出構造の一部および前記側壁に配置された前記開口部が、二つの別々の該流体出口に接続されることによって特徴付けられる、請求項2、及び、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜6のいずれか一項に記載の移動装置(100、520)。
【請求項9】
上側部分(501)が、
側壁から空間的に区切られた貫通開口部と;
第一受け入れ領域(509)と;を含み、
下側部分(502)が、第二受け入れ領域(523)を有し、
該上側部分(501)および該下側部分(502)が、前記移動装置の組み立てられた状態において、一緒に接合され;
該移動装置の組み立てられた該状態において、前記移動マトリックス(503)が、該第一受け入れ領域および該第二受け入れ領域に配置され;
該貫通開口部が、前記側壁と共に、前記試料チャンバー(512)を形成し、該下側部分が、該試料チャンバー(512)の部を形成し、前記移動マトリックス(503)が、デポジットマトリックス(504)が介在した状態において、該底部上に配置され、ならびに、
該下側部分が、前記第一放出構造(505)の一部を含む、ことによって特徴付けられる、請求項2、及び、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜8のいずれか一項に記載の移動装置(520)。
【請求項10】
前記第一放出構造が、前記下側部分(502)に配置された溝(505)を含み、該溝が、少なくとも部分的に、前記第二受け入れ領域(523)に配置され、それにより、前記移動装置の組み立てられた前記状態において、該溝が、前記デポジットマトリックス(504)が介在した状態において、前記移動マトリックス(503)によって覆われることによって特徴付けられる、請求項9に記載の移動装置(520)。
【請求項11】
アメーバ様移動性細胞の前記移動能を特定するために、請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動装置(100、520)の使用。
【請求項12】
以下の工程:
前記移動装置を提供する工程(S1);および
前記移動マトリックスから前記第一放出構造を通っておよび/または前記試料チャンバーから前記第二放出構造を通って前記流体出口へと流体を放出する工程(S2)、によって特徴付けられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動装置を操作する方法。
【請求項13】
試料または処理液を放出するための方法であって、以下の工程:
該試料または該処理液を前記試料チャンバー内に導入する工程(S3)、によって特徴付けられ、
流体を放出する前記工程が、前記第一および/または第二放出構造を介しての該試料の少なくとも一部または該処理液の少なくとも一部の放出を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
移動分析のための方法であって、
以下の工程:
試料液を前記試料チャンバー内に導入する工程(S8);
固定液を導入することによって前記試料液の細胞を固定する工程(S9);
染色液を前記試料チャンバーに導入することによって該細胞を染色する工程(S10);
前記移動マトリックスの屈折率に一致する屈折率を有する液体を導入する工程(S6);
該移動マトリックスの該細胞の移動プロファイルを光学的に測定する工程(S11)、によってさらに特徴付けられ、
該方法の全ての工程が、前記移動装置において実施される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記移動マトリックスの屈折率に一致する屈折率を有する液体を導入する前記工程(S6)が、前記移動装置の入口開口部を通して該移動マトリックス中へと針を挿入し、それにより該針が該移動マトリックスを貫通し、流体を放出するために前記第一放出構造中へ少なくとも部分的に進入する工程(S7)によって実施される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能の特定に関する。特に、本発明は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するための移動装置(migration device)、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するための移動装置の当該使用、および当該移動装置を操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アメーバ様移動性細胞の当該移動能は、当該体外において、すなわちインビトロにおいて、標準化された条件下で当該体内の当該自然条件をシミュレートすることによって特定することができる。ここで、特定の細孔幅および厚さの多孔質膜フィルターまたは移動マトリックスを当該体組織の代わりに使用して、例えば好中球などが浸透することができるような人工障害物を構成する。この方法では、当該フィルターに浸透する当該好中球の速さは、標準化された条件下(フィルター品質、媒質、時間、刺激物)において評価することができる。当該フィルターに浸透した当該好中球の当該数および当該分布を測定し評価することができる。
【0003】
細胞移動を測定するための膜フィルターシステムは、オーストリア特許第394455(B)号に記載されている。当該文献は、膜フィルターからなるシステムであって、試験物質のための担体マトリックスが膜フィルターの片面に取り付けられ、担体マトリックスが当該膜フィルターの当該反対側において不透水境界層によって封鎖されるシステムを提示している。当該固体試験物質は、検査される細胞を膜フィルター側から当該システムへと移動させるための当該水媒体に溶解し、遊離安定化剤によって当該溶解挙動に影響を及ぼすことが可能である。当該不透水境界層は、当該溶存する試験物質を当該膜フィルターの当該方向に拡散させ、それにより、当該細胞の移動に影響を及ぼす。当該移動能は、当該膜フィルター中の細胞の当該数および分布に基づいて評価され、これらは、顕微鏡によって特定される。
【0004】
インビトロでの移動測定を実施するために、容器リングも、当該システムの当該膜フィルター側に固定される。試験される当該細胞の懸濁液が、当該容器リング内に満たされる。当該移動能を評価するためには、当該容器リングを当該膜フィルターシステムから除去して、当該膜フィルターシステムを、当該検査用の物体担持体に固定する必要がある。
【0005】
アメーバ様移動性細胞の当該移動能を測定するための同様の装置が、オーストリア国特許第406310(B)号明細書および米国特許出願公開第2001/0004530(A1)号明細書に記載されている。当該装置は、当該膜フィルターの当該面積が当該容器リングの当該基部開口の当該面積の少なくとも1.6倍となるように構成される。したがって、当該組み立てられた状態において、当該容器リングの当該下側端面と当該基部表面との間に横たわる当該膜フィルターの当該領域において十分な多孔性が維持され、それにより、当該容器リング内に一度満たされた当該非細胞性液相の一部が、当該容器の当該基部表面の外側に配置された当該膜フィルターの当該領域中へと流入する。その結果、当該細胞が当該膜フィルターに迅速に接触させられる。
【0006】
国際公開第2015/032889(A1)号には、生きた組織および器官のインビトロモデリングのための装置が記載されており、当該文献において、細胞は、基本的に培養膜に適用され、そこで培養されて(例えば、肺細胞)、それにより、試験および研究を実施している。当該「培養膜」は、流入チャネルおよび流出チャネルによって、当該検査に必要な当該物質を装入することができるチャンバー(アクセスチャンバーまたは培養チャンバー)の間に配置されている。国際公開第2015/032889(A1)号による装置では、多孔質膜中への細胞の当該移動を調べることはできない。
【0007】
D.J.BARRYら:「Nitrocellulose as a General Tool for Fungal Slide Mounts」,Journal of Clinical Microbiology,vol.45,no.3,2007年3月1日から、インサイチューにおいて顕微鏡下で真菌培養の当該増殖を調べるために、フレームに固定されたニトロセルロースで形成された膜を使用することは公知である。増殖期の後、当該膜に浸漬油を染み込ませて透明にして、顕微鏡下において調べる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】オーストリア国特許第406310(B)号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0004530(A1)号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/032889(A1)号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D.J.BARRYら:「Nitrocellulose as a General Tool for Fungal Slide Mounts」,Journal of Clinical Microbiology,vol.45,no.3,2007年3月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能の当該特定を簡素化するものとみなすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、当該独立請求項の当該主題によって達成される。発展および実施形態は、当該従属請求項、当該説明、および当該図面において見出すことができる。
【0012】
発明の概要
定義:
・移動:移動または細胞移動(ラテン語:migrare、「移動する」)は、細胞または細胞構造の位置における当該活発な変化(移動運動)を意味すると理解される。包括的用語「移動」は、方向性を持たない自発的運動(遊走)、方向性を持った化学走性運動、および移動速度の変化(化学動態(chemokinetics))を包含する。
・移動マトリックス:本出願との関連において、移動マトリックスは、アメーバ様移動性細胞がその中に浸透(移動)することができる、薄い、好ましくは開孔層を意味すると理解され、その場合、好ましくは、当該移動マトリックスの当該平均孔径は、当該アメーバ様移動性細胞の当該平均直径より小さい。
・アメーバ様移動性細胞:アメーバ様運動は、例えば、アメーバ、ある特定の白血球、アメーバ状藻類、およびいくつかの癌細胞のような細胞のほふく運動を説明するものである。
【0013】
本発明の第一態様は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するための移動装置に関する。当該移動装置は、試料チャンバー、当該試料チャンバーに配置された少なくとも一つの移動マトリックス、少なくとも一つの流体出口、および少なくとも一つの放出構造を有する。当該放出構造は、当該試料チャンバーからおよび/または当該移動マトリックスから、流体を放出するように設計される。
【0014】
本発明の中心概念は、当該移動装置が、流体を当該試料チャンバーから外へと導くように設計された構造(放出構造)を有すること、と見なすことができる。この方法では、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定する当該移動装置の当該使用または操作を簡素化することができる。例えば、当該放出構造により、様々な液体および/または気体(例えば、流体)を当該試料チャンバーから離れるように導くことができ、その結果、ピペットなどによる、当該試料チャンバーからのこれらの流体の当該除去が不要である。これにより、より自動化された方法において当該移動装置によって当該移動能を特定することが可能となる。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバーが満たされたときに気泡の当該形成を防ぐように設計することができる。さらに、当該放出構造は、乾燥プロセスを行うために、当該試料チャンバーを通して空気を吸い込むためにも使用することができる。当該放出構造によって実施されるこれら全てのプロセスは、当該移動装置によるアメーバ様移動性細胞の当該移動能の当該特定を簡素化する。換言すると、当該放出構造によって、当該移動装置を操作するときに手動プロセスを必要としないで済ますことが可能であり、または当該移動装置の当該操作を、手によって実施されるいくつかの単純で重要でない動作に限定することができる。本発明による当該移動装置のさらなる利点および用途は、より詳細な例示的実施形態との当該関連において説明されるであろう。
【0015】
多くの真核生物細胞、例えば、線維芽細胞、角化細胞、ニューロン、免疫細胞、およびアメーバなど、は、アメーバ様運動または活発な移動運動により、移動することが可能である。当該用語「移動」または「細胞移動」は、本発明との当該関連において、アメーバ様運動が可能な生物細胞または生物細胞構造の位置における当該活発な変化を意味すると理解することができる。当該包括的用語「移動」は、任意の活発なアメーバ細胞運動、例えば、方向性を持たない活発な自発的運動(遊走)、方向性を持った化学走性運動(走化性)、および活発な運動速度における変化(化学動態)を包含し得る。当該用語「移動性能」または「移動能」または「移動活性」は、本発明との当該関連において、活発な運動、または活発な運動を実施するためのアメーバ様移動性細胞の当該能力を意味すると理解することができる。
【0016】
移動装置は、本発明との当該関連において、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するために使用することができる装置を意味すると理解することができる。当該移動装置は、細胞生物学にとって、および/または自動化可能な操作工程、例えば、温度制御、洗浄工程、および染色工程など、にとって好適な標準的倒立顕微鏡による顕微鏡法向けに構成されるように形成することができる。
【0017】
原則として、アメーバ様運動することができる任意の生体細胞または生体細胞構造の当該移動能は、本発明による当該装置を使用して特定することができる。本発明による当該移動装置は、好ましくは、白色血液細胞(白血球)、例えば、単核細胞/マクロファージなど、の移動能、または好中性顆粒球(好中球)の移動能を特定するために使用することができる。本発明による当該移動装置は、特に好ましくは、インビトロにおいて、試料としての全血液または希釈された全血液からの多形核の好中性顆粒球(PMN)の当該移動能を特定するために使用することができる。
【0018】
本発明との当該関連において、当該移動能を特定するということは、当該インビトロでの移動を特定すること、アメーバ様移動性細胞の当該移動または非移動を測定および/または評価することを意味すると理解することができる。この場合、当該移動は、好ましくは、多孔質膜フィルター中へまたは移動マトリックス中への移動によって実施することができ、当該移動した細胞を一度固定し染色してしまえば、当該膜フィルター中または当該膜フィルター上の当該細胞の当該分布、または当該移動プロファイルを、顕微鏡で測定し評価することができる。
【0019】
当該移動装置は、ハウジングを有することができ、当該ハウジングは、少なくとも部分的に、プラスチックで作製することができる。このハウジングは、当該試料チャンバー、当該流体出口、および当該放出構造を含むことができる。換言すると、当該試料チャンバー、当該流体出口、および当該放出構造は、当該移動装置内または当該移動装置の当該ハウジング内に形成することができる。
【0020】
当該移動装置の当該ハウジングは、この場合、一体的に、またはいくつかの部分、例えば、二つの部分など、において形成することができる。例えば、当該移動装置の当該ハウジングは、上側部分および下側部分を有していてもよく、これらは、一緒に接合することができるか、または一緒に嵌合することができる。当該ハウジングまたは当該上側部分および当該下側部分は、射出成形法によって製造することができる。当該上側部分および当該下側部分は、それぞれ、一体的に形成することができる。
【0021】
当該試料チャンバーは、本発明との当該関連において、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジングに形成された凹みまたは窪みを意味すると理解することができる。例えば、当該試料チャンバーは、当該移動装置または当該ハウジングに形成された、円形の断面を有する凹みまたは窪みであり得る。しかしながら、当該試料チャンバーの当該断面は、様々な形状、例えば、楕円形または四角形など、を有することもできる。さらに、当該試料チャンバーは、側壁および底面を有することができ、これらについては、以下においてより詳細に説明されるであろう。当該試料チャンバーは、その中で、アメーバ様移動性細胞の当該移動能の当該特定を実施するように設計することができる。例えば、試料流体を当該試料チャンバー内に導入して、当該試料流体に含まれる当該アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定することができる。
【0022】
当該試料チャンバーは、入口開口部を有していてもよく、そこを通って流体を当該試料チャンバー内に導入することができる。この入口開口部は、閉鎖可能であり得る。例えば、当該移動装置は、当該試料チャンバーの当該入口開口部を閉じるために、閉鎖機構、例えば、カバーなど、を有することができる。
【0023】
当該マトリックスは、本発明との関連において、膜フィルターであると理解することもできる。この種類のマトリックスまたはこの種類の膜フィルターは、本発明による移動装置において使用することができ、ならびに、当該移動装置の一部であり得、例えば、オーストリア特許第394455(B)号に記載されている。当該膜フィルターは、当該移動性細胞を受け入れることができる。当該膜フィルターは、好ましくは、炭水化物化合物、例えば、セルロース誘導体(アセテート、ニトレート)、ポリカーボネート、またはプラスチックで作製されたもの、例えば、ポリアミドまたはポリ塩化ビニルなど、を含むことができる。当該フィルターは、さらなる調製を行うことなく使用することができ、またはそれらの細孔の当該内壁は、当該移動性細胞がある特定の親和性を有するような物質、例えば、コラーゲン、フィブリン、ヘテログリカン、または炭水化物ポリマー、例えば、寒天など、でコーティングすることができる。当該膜フィルターの当該細孔幅は、当該検査される細胞のタイプおよび当該検査の当該目的に基づく。白血球の場合、1μmから8μmの間の細孔幅が有利であることが判明している。当該細胞のタイプによっては他の細孔幅がより好ましい場合もあるため、この仕様は、本発明の特徴に対する限定として理解されるべきではない。
【0024】
さらに、当該マトリックスは、複数のマトリックスを含むこともできる。例えば、当該マトリックスは、一方の層の上に他方の層が配置された、第一および第二マトリックスによる二つの層を有することができる。当該第一マトリックスは、例えば、移動マトリックスであり得、ならびに当該第二マトリックスは、例えば、デポジットマトリックス(deposit matrix)であり得る。
【0025】
当該第二マトリックスまたはデポジットマトリックスは、本発明との当該関連において、1種または複数種の活性物質を含有する多孔質膜フィルターでもあり得る。当該デポジットマトリックスは、その中に活性物質を当該固体状態において中に組み込むことができる多孔質材料であり得、その場合、当該活性物質は試料液体との接触において溶解する。
【0026】
当該マトリックスは、当該試料チャンバーの底面上に位置することができる。当該マトリックスがデポジットマトリックスおよび移動マトリックスを含む場合、当該デポジットマトリックスは、当該試料チャンバーの当該底面上に配置することができ、ならびに当該移動マトリックスは、当該デポジットマトリックス上に配置することができる。換言すると、上から下へと見たとき、当該移動マトリックスは、当該デポジットマトリックス上に位置し得、当該デポジットマトリックスは、当該試料チャンバーの当該底面上に位置し得る。当該デポジットマトリックスは、活性物質を含むことができ、その場合、アメーバ様移動性細胞の当該移動に対して促進効果または抑制効果を及ぼすことができる全ての物質は活性物質であると理解することができる。他の活性物質も含有することができる。当該目的に応じて、当該デポジットマトリックスは、非活性物質も含有することができ、または完全に省くこともできる。
【0027】
デポジットマトリックスに対して、ニトロセルロースで作製された多孔質膜フィルターを使用することが可能であり、ならびに当該活性物質に対して、当該走化性のトリペプチドN−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(FMLP)を使用することが可能であり、それらは、例えば、当該デポジットマトリックス中に寒天によって導入される。完全に同様の構造だが活性物質を含まないデポジットマトリックスを、空の対照として使用することができる。
【0028】
例えば、当該流体出口は、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジングに形成された開口部であって流体を当該試料チャンバーから外に出すことができる開口部を意味すると理解することができる。この場合、当該移動装置は、お互いに別々の一つまたは複数の(例えば、二つの)流体出口を有することができる。当該流体出口は、吸引ポンプまたは真空ポンプを当該流体出口に接続することができ、それにより、流体を当該試料チャンバーから外にポンプ流送することができるように、および/または当該放出構造に負圧を生じさせることができるように設計することができる。例えば、当該流体出口は、吸引ニップルの一種、例えば、ルアーフィッティングなど、を有することができ、それに当該吸引ポンプまたは当該真空ポンプを取り付けることができる。気体、例えば、空気など、および液体、例えば、水、血液など、の両方ならびに気体および液体の混合物も、本発明との当該関連において流体として理解することができる。
【0029】
当該放出構造は、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジングに備わる構造であって、当該試料チャンバーからおよび/または当該移動マトリックスから、または当該移動マトリックスを通って、流体を当該流体出口へと放出するように設計された構造を意味すると理解することができる。この放出構造は、例えば、一つまたは複数の窪みを当該移動装置または当該ハウジングに形成することによって、当該移動装置にまたは当該ハウジングに直接形成することもできる。当該放出構造は、一つまたは複数の機械的補助的構造を有することができる。例えば、当該放出構造は、当該移動装置または当該ハウジングに取り付けるかおよび/または固定される追加の構成部品または要素、例えば、追加の管またはチャネルなど、を含むことができる。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバー上に配置された流出構造、例えば、開口部、溝、分岐した溝システム、格子構造、または別の機械的構造など、を含むことができる。本発明との当該関連において、当該用語「放出構造」は、当該試料チャンバーと当該流体出口との間の当該流体力学的接続の様々な実施形態に対する総称として使用される。したがって、放出構造は、当該試料チャンバーと当該流体出口との間に流体力学的接続を提供する。換言すると、当該放出構造は、当該試料チャンバーから当該流体出口へと流体を放出するように設計することができる。このために、当該移動装置は、当該放出構造と当該流体出口との間に流体接続を形成することができる。当該放出構造による流体の当該放出は、例えば、当該放出構造を吸引装置、例えば、ポンプなど、に流体力学的に接続することによって達成することができる。
【0030】
特に明記されない限り、本発明との当該関連において定義される接続は、流体接続に関する。二つの要素の間の流体接続または流体力学的接続は、当該二つの要素の間に接続が存在し(例えば、ラインおよび/またはチャネルの当該形態)、それにより流体がこれらの要素の一方から他方へと流れることができるということを意味すると理解することができる。
【0031】
当該放出構造は、お互いに分離された一つまたは複数の個別の構造を含むことができ、それらは、それぞれ、流体を当該試料チャンバーを越えておよび当該移動マトリックスを越えて当該液体出口へと放出するように設計される。例えば、当該放出構造は、第一放出構造および第二放出構造を有することができる。換言すると、当該放出構造は、流体を当該試料チャンバーを越えておよび当該移動マトリックスを越えて当該流体出口へと放出するように設計された全ての放出構造の当該全体を意味すると理解することができる。この種類の放出構造は、例えば、少なくとも部分的に、当該試料チャンバーの当該底面および/または当該側壁に形成することができ、この場合、当該放出構造は、当該底面のみまたは当該側壁のみに配置することもできる。このことは、当該放出構造が、当該底面および/または当該側壁に形成された補助的構造、例えば、流出構造など、を有することができることを意味する。
【0032】
顕微鏡のスタックパターン画像を記録するために、x/yスライド上または円形路の上において、このために使用された当該カメラを当該移動装置に対して動かすかまたは当該移動装置を当該カメラに対して移動させることができる。それを行う場合、当該カメラは、光路を画定する、当該倍率によって決定された幅を有するストリップ(円形路)の上を通過させることができる。当該記録される画像の光学的品質が乱されないように、当該移動装置は、当該放出構造がこれらの光路を通って誘導されないように、すなわち、当該光路が当該放出構造の当該幾何学的構築に束縛されないように、構築することができる。当該スタックパターン画像は、好ましくは、当該測定放射線に対して透過性の領域を有する、当該移動装置の当該基部を通して記録される。
【0033】
本発明の例示的一実施形態により、当該移動装置は、当該試料チャンバーを収容するかまたはその中に当該試料チャンバーが形成されるハウジングを有する。当該放出構造も当該ハウジング内に形成され、ならびに当該放出構造は、流体が当該ハウジングを越えて放出されるのを可能にするように設計される。
【0034】
ここで、当該ハウジングは、一体的にまたは複数の部分において形成することができる。例えば、当該ハウジングは、上側部分および下側部分を有することができ、これらは、当該移動装置の組み立て状態において、一緒に接合するかまたは一緒に嵌合することができる。例えば、当該ハウジングは、例えば、射出成形法などによって、少なくとも部分的にプラスチックで作製することができる。当該プラスチックは、例えば、Eastman Tritan社のCOPOLYESTER MX731であり得る。このプラスチックの利点は、とりわけ:その高い透明性;条痕の防止;非晶質性;高い靭性;血液、インビトロ化学物質、および液浸油との接触における良好な化学親和性;その殺菌性(ガンマまたはエチレンオキシド(ETO)殺菌における良好な色堅牢性);およびそのFDA/ISO 10993およびUSPクラスVIの生体適合性である。当該ハウジングの当該プラスチックは、例えば、当該移動インデックスの当該屈折率の当該適合との組み合わせにおいて、高い顕微鏡品質の光透過性を達成することができるように選択することができる。
【0035】
当該ハウジングは、例えば、射出成形された部品および/または購入することができる標準的部品のみからなり得る。このようにして、当該移動装置は、非常に経済的に製造することができる。
【0036】
本発明のさらなる例示的実施形態により、試料チャンバーは、底面または部分基部を有し、この場合、当該移動マトリックスまたは当該デポジットマトリックスは、当該底部上に位置され、ならびに当該放出構造は、少なくとも部分的に当該底面上に形成される。このことは、当該放出構造が、当該底面に形成された機械的補助的構造、例えば、流出構造(例えば、溝、分岐した溝システム、開口部、格子などの当該形態)を有することができるということを意味している。
【0037】
当該試料チャンバーの当該底面は、例えば、当該試料チャンバーの側壁によって区切られ得る。さらに、当該底面は、実質的に平坦または平面的であり得る。当該用語「実質的に」は、この文脈において、当該平坦または平面的な底面が、開口部、凹みおよび/または窪み(例えば、本発明との当該関連において言及された当該溝)を有し得るということを意味すると理解することができる。しかしながら、例えば、当該底面は、製造公差は別にして平坦または平面的であるかなりの部分、例えば、底面の80%を超える部分、好ましくは底面の90%を超える部分、を有し得る。すなわち、底面における溝または溝システムは、該底面の20%未満、好ましくは10%未満を占め得る。あるいは、当該底面は、湾曲していてもよい。さらに、当該底面は、湾曲した領域と平面的な領域とを有することもできる。
【0038】
試料チャンバーの当該底面に形成されたこの種類の放出構造は、本発明との当該関連において、第一放出構造と呼ばれ得る。例えば、当該底面に形成された当該放出構造は、少なくとも部分的に、当該底面に配置された溝を含むことができる。当該底面に形成された当該放出構造は、当該移動マトリックスと当該底面との間に配置されたスペーサー格子も含むことができる。さらに、当該底面に形成された当該放出構造は、穴または複数の穴、例えば、連続するチャネル状の穴、を有していてもよく、これらは、当該放出構造の当該底面に形成され、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジング内においてチャネルに結合される。
【0039】
当該放出構造は、当該マトリックス(移動マトリックスまたはデポジットマトリックス)が当該底面上と、少なくとも部分的に当該放出構造上に位置されるように形成することができる。このことは、当該放出構造が当該移動装置の当該マトリックスの下に配置され得、および/またはそれらによって覆われることを意味する。当該試料チャンバーの当該底面に配置されたこの種類の放出構造により、当該マトリックスと当該底面との間に形成された気泡を効率よく除去することができる。さらに、この方法では、流体も当該移動マトリックスを通って当該試料チャンバーから放出させることができる。例えば、この方法では、空気が、当該底面に配置された当該放出構造によって当該マトリックスを通して当該試料チャンバーから吸引され、それにより当該マトリックスを効果的に乾燥することにより、効果的な乾燥プロセスが実現され得る。
【0040】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該底面に形成された当該放出構造は、当該底面に配置された溝を有する。
【0041】
本発明との当該関連において、当該溝は、(上方に開放された)放出チャネルとも呼ばれ得る。この溝は、例えば、当該移動装置に形成されたチャネル中へと開口し得、それにより、チャネルは当該溝を当該流体出口に接続する。したがって、液密接続が、当該溝と当該流体出口との間に提供され得る。例えば、当該溝は、当該試料チャンバーの当該底面の当該中央から、当該試料チャンバーの当該底面の当該端部まで延在し得る。例えば、当該溝は、およそ4mmから15mmの長さ、およそ0.5mmから1mmの幅、およびおよそ0.5mmから1mmの深さを有し得る。当該溝のこれらの寸法は、当該移動エリア(基部)の当該寸法および/または当該構造設計によって定義されるそれらの当該有効断面積に基づき得る。当該移動エリアの当該直径は、およそ3mmから10mmであり得、締め付け領域と合わせた当該移動エリアの直径は、およそ5mmから20mmであり得る。
【0042】
このようにして、気泡の当該形成を防ぎ、流体の放出を可能にするような構造を提供することができる。
【0043】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該放出構造は、当該移動装置に配置され当該試料チャンバーから当該流体出口まで延在する第一流体チャネルを有する。
【0044】
例えば、当該流体チャネルは、当該流体出口と当該試料チャンバーの底面および/または当該試料チャンバーの側壁における開口部との間の液密接続を可能にすることができる。
【0045】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該試料チャンバーは、側壁を含む。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバーからの流体の吸引のための、当該試料チャンバーの当該側壁に配置された開口部を含む。さらに、当該放出構造は、環状流体チャネルを有し、これは、当該試料チャンバーの周りにおいて当該移動装置内に配置される。当該放出構造は、当該環状流体チャネルと当該流体出口との間の流体接続を有する。この流体接続は、例えば、当該第一流体チャネルによって提供することができる。当該放出構造も、当該側壁に配置された当該開口部と環状流体チャネルとの間の流体接続を有する。
【0046】
換言すると、当該放出構造は、当該試料チャンバーを、例えば、環状に囲む流体チャネルを有し得る。この環状流体チャネルは、例えば、当該試料チャンバーの当該底面に配置された開口部、例えば、溝など、に流体力学的に接続され得る。さらに、当該流体チャネルは、当該開口部、または当該試料チャンバーの側壁に配置された開口部にも接続され得る。例えば、当該環状チャネルは、当該試料チャンバーの当該側壁および当該底面の両方に形成され得る複数の開口部を接続することにより、単一の流体チャネル、例えば、前に定義した当該第一流体チャネルなど、を形成することができ、それにより、流体が、当該試料チャンバーの当該側壁と当該底面の両方の当該開口部から当該流体出口へと導かれるかまたは放出され得る。
【0047】
当該試料チャンバーの当該側壁に形成されたこの開口部またはこれらの開口部は、第二放出構造とも呼ばれ得る。流体は、当該側壁に形成されたこの開口部によって、上記の当該移動マトリックスから放出され得る。この放出は、当該移動能の当該特定のために、例えば、当該固定工程、洗浄工程、染色工程、および/または乾燥工程のために使用することができる。当該側壁に形成されたこれらの開口部は、以下において、締め付け固定リング穴とも呼ばれ得る。
【0048】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該試料チャンバーは、底面および側壁を有し、この場合、当該マトリックス(移動マトリックスまたはデポジットマトリックス)は、当該底面上に位置される。当該放出構造は、例えば、溝の当該形態において、少なくとも部分的に当該底面に形成される。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバーの当該側壁に配置された開口部を有する。この場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、当該同じ流体出口へと接続される。当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に形成された当該開口部は、流体接続に関して直列または並列のいずれかにおいて接続される。当該移動装置は、当該試料チャンバーの当該側壁に単一の開口部または複数の開口部を有することができる。
【0049】
換言すると、第一放出構造および第二放出構造は、当該流体出口への流体接続に関して、直列または並列に接続または配置することができる。当該第一放出構造および当該第二放出構造を互いに直列に接続する当該利点は、とりわけ、直列接続の前側に配置された当該放出構造を通って放出される流体が、当該直列接続の後側に配置された当該放出構造も通され、それにより、流体が当該後の放出構造を通って勢いよく流されるときに、当該後の放出構造が洗浄されるという点に存する。
【0050】
直列配置の場合、より密接に連結することにより、当該流速によって、当該マトリックスの当該上側と当該下側との間の当該差圧に違いが生じるように設定することができ、それにより、当該マトリックスによる再現可能な流体輸送が発生される。試薬の消費を減らしつつ、洗浄工程、染色工程、および乾燥工程を、より迅速に、およびより均一に実施することができる。
【0051】
当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部の直列接続又は直列における接続の場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、その流体接続に関して、連続するように配置することができる。このことは、当該流体出口は、例えば、当該底面の当該放出構造に直接的に接続され得、ならびに、当該底面に形成された当該放出構造は、当該側壁に配置された当該開口部に直接的に接続され得ることを意味する。あるいは、当該流体出口は、当該側壁に配置された当該開口部に直接的に接続され得、ならびに当該側壁に配置された当該開口部は、当該底面に形成された当該放出構造に直接的に接続され得る。当該流体出口への、当該底面に形成された当該放出構造および当該側面に配置された当該開口部の並列接続の場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、それぞれ、別々に当該流体出口に直接的に接続され得る。しかしながら、これは、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部が、別々に、当該同じ流体チャネル(例えば、本発明との当該関連において、当該第一流体チャネルと呼ばれる)に接続され、それが、当該流体出口を当該二つの開口部に接続するということを除外するものではない。
【0052】
当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部による当該直列接続および当該並列接続の両方において、当該二つの開口部は、当該同じ流体出口に接続され得る。これは、当該底面に配置された当該開口部および当該側壁に配置された当該開口部によって当該試料チャンバーから流体を放出するのに単一の吸引ポンプまたは真空ポンプで十分であるという利点を有する。
【0053】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該試料チャンバーは、底面および側壁を含む。さらに、当該放出構造は、当該底面に形成された放出構造および当該側壁に配置された開口部を有する。さらに、当該移動装置は、少なくとも二つの別々の流体出口またはお互いから分離された二つの流体出口を有し、この場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、二つの別々の流体出口に接続される。
【0054】
換言すると、当該底面に形成された当該放出構造は、第一流体出口に接続され得、当該側壁に配置された当該開口部は、第二流体出口に接続され得る。
【0055】
底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部が別々の流体出口に接続されるという事実から生じる当該利点は、当該底面に形成された当該放出構造を通る当該流出および当該側壁に配置された当該開口部を通る当該流出を別々に管理または制御することができるという点である。
【0056】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該移動装置は、側壁から空間的に区切られた貫通開口部と、第一受け入れ領域または受け入れエリアとを有する上側部分を有する。さらに、当該移動装置は、第二受け入れ領域または受け入れエリアを有する下側部分を有する。当該上側部分および当該下側部分は、当該移動装置の組み立てられた状態において、一緒に接合され得る。当該移動装置の組み立てられた当該状態において、当該移動マトリックスは、当該第一受け入れ領域および当該第二受け入れ領域に配置される。当該貫通開口部は当該側壁と共に、当該試料チャンバーを形成し、当該下側部分は、当該試料チャンバーの基部を形成し、この場合、当該マトリックスは当該基部上に位置される。さらに、少なくとも当該下側部分は、当該放出構造を有する。
【0057】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該放出構造は、当該下側部分に配置された溝を含み、この場合、当該溝は、少なくとも部分的に、当該第二受け入れ領域に配置され、それにより、当該移動装置の組み立てられた当該状態において、当該溝は、当該マトリックス(移動マトリックスまたはデポジットマトリックス)によって覆われる。
【0058】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該上側部分および当該下側部分は、当該マトリックスを当該上側部分の当該第一受け入れ領域と当該下側部分の当該第二受け入れ領域との間の当該マトリックスの特定の領域に固定するように設計される。
【0059】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該第一受け入れ領域は、当該貫通開口部の開口部を囲む締め付け固定リングとして具現される。さらに、当該第一受け入れ領域は、当該マトリックスを受け入れるようにも設計され、この場合、当該マトリックスは、当該貫通開口部の当該開口部を覆い、当該試料チャンバーの当該基部を形成する。
【0060】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該上側部分は、環状流体チャネルを有し、これは、当該締め付け固定リングを囲む。当該上側部分は、真空ポンプを当該流体出口に接続するための接続部品を伴う流体出口も有する。当該上側部分は、さらなる流体チャネルも有し、これは、当該流体出口と当該環状流体チャネルとの間に液密接続を提供する。
【0061】
換言すると、当該移動装置の当該ハウジングは、二つの部分において、すなわち、当該上側部分と当該下側部分から構築され得る。当該第一および当該第二受け入れ領域は、それぞれ、当該上側部分の領域および当該下側部分の領域を示し得、組み立てられた当該状態において、それらの間に当該移動マトリックスが固定される。
【0062】
当該下側部分に形成される当該第二受け入れ領域は、平坦なまたは平面的な表面であり得、これは、当該移動装置の組み立てられた当該状態において、当該試料チャンバーの当該底面を形成する。当該上側部分に形成される当該第一受け入れ領域は、当該試料チャンバーを囲む締め付け固定リングであり得、それにより、当該移動マトリックスと、該当する場合には当該デポジットマトリックスとは、当該底面(すなわち、当該第二受け入れ領域)と当該締め付け固定リング(すなわち、当該第一受け入れ領域)との間に固定される。
【0063】
この種類の2パート設計の当該利点は、とりわけ、当該マトリックスを当該上側部分と当該下側部分との間に容易に固定することができるという当該事実に存する。
【0064】
本発明のさらなる態様は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するために、先行の請求項のいずれか一項に記載の移動装置の使用に関する。
【0065】
本発明のさらなる態様は、試料チャンバーと、移動マトリックスと、当該移動装置から当該移動装置の流体出口へと流体を放出するための放出構造とを有する移動装置を提供する当該工程を含む、移動装置を操作する方法に関する。さらに、当該方法は、当該放出構造を通って、当該試料チャンバーを越えておよび当該移動マトリックスを越えて流体を当該流体出口へと放出する当該工程を含む。
【0066】
当該方法はさらに、本発明との当該関連において説明されるような移動装置を提供する当該工程も含み得る。この場合、当該提供される移動装置は、本発明との関連において説明される当該特徴の一部または全てを有し得る。
【0067】
本発明の例示的実施形態に従って、試料または処理液を除去する方法について説明する。当該方法は、試料または処理液を試料チャンバー内へと導入する工程を含む。流体を放出する工程は、放出構造を介しての試料の少なくとも一部または処理液の少なくとも一部の放出を含む。
【0068】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、洗浄液を当該試料チャンバー内に導入する当該工程をさらに含む、当該移動装置を洗浄する方法について説明する。流体を放出する当該工程は、当該放出構造を介した当該洗浄液の少なくとも一部の放出を含む。
【0069】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、当該放出構造を介した吸引によって当該移動装置の入口開口部を通って空気を当該試料チャンバー内に導入する当該工程をさらに含む、当該移動装置を乾燥する方法について説明する。流体を当該流体出口へと放出する当該工程は、当該放出構造を介した当該吸引された空気の放出を含む。
【0070】
当該試料チャンバーは、入口開口部を有していてもよく、そこを通って流体を当該試料チャンバー内に導入することができる。換言すると、当該入口開口部は、当該試料チャンバーの上側開口部を意味すると理解することができる。この入口開口部は、例えば、閉鎖可能であり得る。このことは、当該移動装置が、当該入口開口部を閉鎖するためのカバーを有し得ることを意味する。
【0071】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、当該移動マトリックスの光学的検査のために移動装置を調製する方法について説明し、この場合、方法は、追加的に、液体をマトリックス中に導入する当該工程を含み、この場合、当該導入される液体、例えば、液浸油などは、当該マトリックス材料と実質的に当該同じ屈折率を有しており、それにより、当該マトリックスは透明である。当該液体は、当該移動装置の入口開口部を通って針を当該移動マトリックス中に挿入することによって導入することができ、この場合、当該針は、少なくとも部分的に、当該マトリックスを通って当該放出構造内へと進入する。
【0072】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、試料液を当該試料チャンバー内へ導入する当該工程と、固定液を導入することによって当該試料液の細胞を固定させる工程と、当該試料チャンバー内に染色液を導入することによって当該細胞を染色する工程と、ならびに当該細胞の移動能を光学的に測定する工程とを含む、移動分析のための方法について説明し、この場合、この方法の全ての工程は、当該移動装置を使用して実施される。この場合、当該方法の全ての工程は、当該移動装置内においてまたは当該移動装置によって実施されることは理解することができる。
【0073】
本発明との当該関連において説明される当該方法工程は、特に明記されない限り、当該説明される順序および他の順序の両方において実施することができる。さらに、本発明による当該方法またはそれらの工程は、本発明との当該関連において説明した当該移動装置を使用して実施することができる。当該説明される実施形態は、等しく、移動装置、移動装置の当該使用、および当該移動装置を操作するための方法に関する。当該実施形態の様々な組み合わせから相乗効果が生じ得るが、これらは、本明細書の以下において明確に説明されない場合もある。当該装置を特徴付ける特徴は、当該装置を操作するための当該方法も特徴付けることができる。その反面、当該装置をどのように操作すべきかということを定義する特徴は、それ自体、当該装置の特徴でもあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本発明の例示的実施形態による移動装置の平面図を示す。
図2】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の側面図を示す。
図3】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の側面図を示す。
図4】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の側面図を示す。
図5A】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の様々な構図を示す。
図5B】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の様々な構図を示す。
図5C】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の様々な構図を示す。
図5D】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の様々な構図を示す。
図5E】移動装置の操作の際の、本発明の例示的実施形態による当該移動装置を示す。
図5F】移動装置の操作の際の、本発明の例示的実施形態による当該移動装置を示す。
図6】本発明のさらなる例示的実施形態による、異なる流体出口に接続された二つの放出構造を有する移動装置を示す。
図7】本発明のさらなる例示的実施形態による、当該同じ流体出口に並列に接続された二つの放出構造を有する移動装置を示す。
図8】本発明のさらなる例示的実施形態による、当該同じ流体出口に直列に接続された二つの放出構造を有する移動装置を示す。
図9】本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置を示す。
図10】本発明の例示的実施形態による、移動装置を操作する方法のフローダイアグラムを示す。
図11】本発明の例示的実施形態による方法の複数のフローダイアグラムを示す。
図12】本発明の例示的実施形態による、当該移動分析のための方法のフローダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明のさらなる特徴、利点、および可能な用途は、当該例示的実施形態および図面についての以下の説明から明らかとなるであろう。ここで、当該図面において説明および/または示される全ての特徴も、当該個々の請求項におけるそれらの記述および当該請求項の当該従属参照にかかわらず、個別に、および任意の組み合わせにおいて、本発明の当該主題を形成する。
【0076】
図面は、図式的に示されており、必ずしも原寸に比例しているわけではない。要素は、異なる図面において同様の参照番号符号で表されるべきあり、したがって、これらは、お互いに対応する同様または同じ要素を表す。しかしながら、お互いに対応する同様のまたは同じ要素を、異なる図において異なるように示すこともできる。
【0077】
例示的実施形態の詳細な説明:
図1は、ハウジング101を有する、簡略化された形態の移動装置100を示している。当該移動装置100は、当該移動装置100の当該ハウジング101に形成された、試料チャンバーまたは移動チャンバー102も含む。本発明のこの例示的実施形態により、当該試料チャンバー102は、当該ハウジング101における円形の凹みまたは窪みとして形成されている。ただし、当該試料チャンバー102は、異なる断面形状を有することもできる。さらに、当該移動装置100は、当該試料チャンバー102に配置された移動マトリックス105を含む。加えて、当該移動装置100は、流体出口103を有する。当該移動装置100は、放出構造104も有しており、これは、当該試料チャンバー102を越えておよび当該移動マトリックス105を越えて流体を当該流体出口103へと放出するように設計される。換言すると、当該放出構造104は、当該試料チャンバー102と当該流体出口103との間に流体接続を作り出し、それにより、流体を、当該試料チャンバー102から当該流体出口103へと放出することができる。
【0078】
図2は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置100を示しており、この場合、移動装置は、試料チャンバー102と流体出口103とを有するハウジング101を含む。この例示的実施形態において、当該試料チャンバー102の当該上側開口部は、本発明との当該関連において説明される当該試料チャンバー102の当該入口開口部である。当該移動マトリックス105は、当該試料チャンバーの当該基部202上に位置されるように当該試料チャンバーの当該基部202上に配置される。さらに、当該放出構造201が、少なくとも部分的に、当該試料チャンバー102の当該基部202に形成されており、それにより、当該基部202に形成された当該放出構造は、少なくとも部分的に、当該移動マトリックス105によって覆われる。例えば、当該放出構造201は、当該基部に形成された流出構造201a、例えば、当該基部に形成された、開口部、溝、または溝システムなど、を含む。当該放出構造201は、出口開口部201bも含む。さらに、当該放出構造201は、当該基部に形成された当該流出構造201aから当該出口開口部201bまたは当該流体出口103へと通じる第一流体チャネルを有する。このようにして、当該試料チャンバー102から当該放出構造201を通って当該流体出口103へと放出される流体は、当該移動マトリックス105を通って移送される。図2において一例として示される当該放出構造201は、本発明との当該関連において、第一放出構造とも呼ばれ得る。
【0079】
図3は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置100を示している。当該移動装置100は、試料チャンバー102、移動マトリックス105、および流体出口103を伴うハウジング101を有する。図3による当該移動装置100の当該放出構造301は、当該試料チャンバーの当該側壁302から当該流体出口103へと通じるように形成される。このことは、当該放出構造301が、当該試料チャンバー102の当該側壁302中へと開口していることを意味する。換言すると、当該放出構造301は、当該試料チャンバー102の当該側壁に形成された一つまたは複数の開口部301aを有する。さらに、当該放出構造301は、流体チャネルを有しており、これは、当該側壁に形成された当該開口部301aから当該出口開口部301bへと通じる。このように、当該試料チャンバー102から当該流体出口103へと放出される流体は、当該移動マトリックス105を通って移送される必要がない。図3において一例として示される当該放出構造301は、本発明との当該関連において、第二放出構造とも呼ばれ得る。
【0080】
図4は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置100を示している。当該移動装置100は、試料チャンバー102、移動マトリックス105、第一流体出口401、および第二流体出口402を伴うハウジング101を有する。当該放出構造は、第一放出構造403および第二放出構造404を含む。当該第一放出構造403は、流体が、当該試料チャンバー102の当該底面202から当該第一放出構造403を通って当該第一流体出口401へと放出されるように形成される。当該第一放出構造403は、当該基部に形成された流出構造403a、第一流体チャネル、および第一出口開口部403bを含む。このようにして、当該放出構造403を通って放出される流体は、当該移動マトリックス105を通って移送される。当該第二放出構造404は、流体が、当該側壁302から当該第二放出構造404を通って当該第二流体出口402へと、当該試料チャンバー102から放出されるように形成される。当該第二放出構造404は、当該側壁に形成された一つまたは複数の開口部404a、第二流体チャネル、および第二出口開口部404bを含む。この例示的実施形態では、当該第一放出構造403および当該第二放出構造404は、別々の流体出口401および402に接続されていることが示されている。しかしながら、当該第一放出構造403および当該第二放出構造404は当該、同じ流体出口に接続することもできるし、直列または並列に接続することもできる。
【0081】
図5A図5B図5C、および図5Dは、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置の様々な構図を示している。この場合、当該移動装置の当該ハウジングは、上側部分501および下側部分502を有する。図5Aにおいて、当該上側部分501が、3D表示において示されている。図5Bは、当該上側部分および当該下側部分を平面図において示している。図5Cは、当該スタンピングプロセスの後の当該下側部分およびその上に配置された当該マトリックスを示している。図5Dは、当該移動装置250の断面図を示している。
【0082】
図5Dに示されるように、当該移動装置520は、上側部分501および下側部分502を有し、それらの間に、当該マトリックス503、504が配置または固定されている。この例示的実施形態において、当該マトリックスは、一方が他方の上に配置された二つの層状のマトリックス503および504を含み、この場合、当該上側マトリックスは、移動マトリックス503であり、当該下側マトリックスは、デポジットマトリックス504である。当該上側部分501は、中央吸引コネクタまたは吸引ニップル、例えば、ルアーフィッティング、を有する当該流体出口506も含む。さらに、当該上側部分501は、当該試料チャンバー512を形成する貫通開口部を有する。この例示的実施形態において、当該試料チャンバー512の当該上側開口部は、当該試料チャンバー512の当該入口開口部を形成する。当該上側部分501は、締め付け固定リング509または環状締め付け固定領域として形成される第一受け入れエリアまたは領域も有する。当該下側部分502は、第二受け入れエリアまたは領域523を含み、それにより、当該マトリックス503、504は、当該第一受け入れ領域509(すなわち、締め付け固定リング)と当該第二受け入れ領域523との間の締め付け固定領域516に固定される。締め付け固定領域516は、吸引経路を形成し、これは本明細書の以下において説明されるであろう。以下においてより詳細に説明されるであろう当該下側部分502は、溝505または溝システムを有するため、当該第二受け入れ領域523は、当該溝505によって遮られ得る。
【0083】
当該移動装置520は、複数の個別の補助的構造を含む放出構造も有する。とりわけ、当該放出構造は、当該下側部分502の当該底面に形成された溝505と、当該試料チャンバー512を環状に囲む、当該上側部分に形成された環状流体チャネル519と、第一流体チャネル518と、当該試料チャンバー512の当該側壁に配置され、当該環状流体チャネル519に流体力学的に接続される複数の開口部517とを有する。本明細書の以下において、当該溝505は、吸引チャネルまたは放出チャネルとも呼ばれ得る。当該環状流体チャネル519は、環状チャネルとも呼ばれ得、当該側壁に配置された当該開口部517は、締め付け固定リング穴とも呼ばれ得る。当該環状流体チャネル519および当該溝505は、当該接続点514においてお互いに接続される。当該下側部分502の当該底面に形成された当該溝505は、当該環状流体チャネル519に流体的に接続され、当該環状流体チャネル519は次に、当該第一流体チャネル518に流体的に接続され、当該第一流体チャネル518は次に、当該流体出口506に流体的に接続される。
【0084】
当該移動装置は、当該移動にとって好適な細孔幅を有する移動マトリックス503と、活性物質を受け入れるためのデポジットマトリックス504とを含む。当該二つのマトリックス503、504は、当該上側部分501の当該締め付け固定領域または締め付け固定リング509によって、当該締め付け固定領域の当該周囲全体にわたって十分な気密性が達成されるような大きさの圧力において当該下側部分502の当該受け入れ領域523に押圧されるが、同時に、当該締め付け固定リング509の下の当該マトリックス部分503、504において依然として十分な多孔性が存在することで、当該試料チャンバー512と当該環状チャネル519との間の当該締め付け固定領域516において当該試料に対して毛細管クリープ経路または吸引経路を形成する。
【0085】
当該放出構造は、当該基部における当該マトリックスの下に配置された第一放出構造、例えば、狭い吸引チャネルまたは溝505または分岐した溝システムなど、を有し、それらは、当該リングチャネル519および当該第一流体チャネル518に接続されており、それにより、当該二つのマトリックス503、504を通しての流体(例えば、当該試料液体、空気、試薬、液浸油など)の輸送が可能となり、結果として、迅速で効果的な材料交換を可能にするか、または第一湿潤工程の当該時点において空気の蓄積及び気泡(522を参照のこと)の形成を防ぐ。空気ポンプ(例えば、吸引ポンプ、真空ポンプ)を当該流体出口506の当該吸引ニップルに接続する場合、例えば試薬または洗浄液などで満たされた当該試料チャンバー512の当該主要部分が、十分な負圧の当該存在下において、当該締め付け固定リング穴517、環状チャネル519、および第一流体チャネル518を介して空にされる。
【0086】
図5Eは、本発明の例示的実施形態による、図5Aから図5Dに示された当該移動装置での当該移動マトリックスの当該第一湿潤工程を示している。当該試料、例えば、全血など、は当該移動マトリックス503に適用される前に、バッファーで希釈される。当該試料の当該水性成分の一部は、当該移動マトリックス503およびデポジットマトリックス504を素早く通過し、当該デポジットマトリックス504に当該活性物質を溶解する。これは、結果として、分析される当該試料中の当該細胞に対して活性物質の勾配を生じさせる。担体材料についての好適な選択により、当該活性物質の当該放出動態を制御することによって、結果として特定の時間にわたって当該勾配を維持することができる。
【0087】
バッファーによる当該マトリックス503、504の予備湿潤を実施することが有利であることが分かっている。次いで、当該希釈した試料が、当該移動マトリックス503に適用される。所定のインキュベーション時間により(典型的には、15分から30分)、例えば、ホルムアルデヒドなどによって当該細胞を固定することによって、当該移動プロセスを止める。次いで、当該細胞または細胞成分を染色する一段階プロセスまたは多段階プロセスが実施される。光透過性を実現するために、適切な屈折率を有する液体515(例えば、液浸油)の使用によって当該空気が当該マトリックスの当該細孔から追い出され、当該細胞の当該移動経路が、光学分析(例えば、顕微鏡画像)によって特定される。好ましくは、当該光学分析は、少なくともある領域において光透過性であるかまたは透明である、当該装置の当該基部において実施される。
【0088】
当該下側部分502における当該デポジットマトリックスの下に形成された当該第一放出構造は、例えば、吸引チャネル(例えば、溝505、溝システム、または格子構造など)の当該形態において、気体および空気の泡を迅速に排除することを可能にし、ならびに当該マトリックス503、504を迅速にかつ効率的に乾燥させることを可能にする。
【0089】
再現可能なプロセスを確保するため、ならびに完全に乾燥するのを防ぐために、当該インキュベーションの間、一定の温度、例えば、37℃など、および高い湿度が必要であり得る。これは、有利には、当該移動装置520の当該試料チャンバー512を比較的小さくして、閉鎖して、当該インキュベーションの間、上側及び下側から温度管理することで実現される。
【0090】
固定プロセスおよび染色プロセスは、追加の穴、チャネル、バルブなどを用いずに、単に十分な流れの適用と当該結果として生じる負圧によって、例えば、当該溝505などの当該形態における当該マトリックスの下での流出によって、促進され、加速され、および品質が向上され、したがって、拡散によって排他的に当該流体交換(試薬)および当該乾燥プロセス(空気)を提供することはできないが、その代わりに、対流によって時間節約およびより完全な方法を提供することができるので、補助的工程を反復する場合に、かなりの時間を節約することができる。
【0091】
さらに、洗浄工程の効率は、負圧下での空気と水の交互の吸引によって増加され得るため、一滴ずつ計量供給される中間洗浄プロセスが有利であることが分かった。
【0092】
図5Fは、移動マトリックス中への液体、例えば、液浸油など、の導入を示している。当該液浸油515の当該導入は、当該液浸油の粘度の増加と、当該前の流動プロセスまたはさらに当該製造プロセスに起因して当該表面の当該エリアが一様ではなく局所的に湿潤され得ることにより、当該移動マトリックス503に適用された当該液浸油515が遅延的に当該マトリックスに浸透する当該リスク、ならびに当該流体面によって当該マトリックス503、504から排出された当該空気が上方または外向きに逃げることができず、それにより、結果として生じるより大きなまたはより小さなサイズの気泡が、当該デポジットマトリックス504の下および/または当該二つのマトリックス503、504の間に蓄積される当該リスク、を伴い得る。この影響は、当該デポジットマトリックス504の当該細孔幅が、当該移動マトリックス503の細孔幅より小さい場合に、顕著になり得る。当該誘引物質の当該送達のために可能な当該最大表面を提供するために、通常、当該デポジットマトリックスの当該細孔幅はより小さい。したがって、先細り針507、例えば、注射針など、を使用して当該液浸油515を導入することは有利であり、その場合、当該針の先端の当該先細り部分が、当該下側基部の当該溝505の当該領域において両方のマトリックスを貫通し、同時に、両方のマトリックス中において側方へおよびその下へと当該試薬を浸透させることができる。このプロセスは、導入する際に当該針を回転させることによって、および/または同時に当該溝505に負圧を適用することによって、さらに改善することができる。
【0093】
図6は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置520を示している。当該移動装置は、上側部分501および下側部分502を有する。当該試料チャンバー512は、当該上側部分に形成され、その場合、当該移動マトリックス503および当該デポジットマトリックス504は、当該試料チャンバーの当該基部上に配置され、ならびに当該上側部分501および当該下側部分502の当該締め付け固定リング509の間に固定される。概して、当該移動装置は、当該下側部分に形成された溝505と当該試料チャンバーの側壁に形成された開口部513とを含む放出構造を有する。当該側壁に形成された当該開口部513は、当該環状チャネル519によって当該第一流体チャネル518に接続され、結果として、第一吸引ポンプまたは真空ポンプ525に接続される。当該下側部分に形成される当該溝505は、第二流体チャネル524によって第二流体出口および第二真空ポンプ526に接続される。このことは、当該移動マトリックス503およびデポジットマトリックス504の下に配置された当該溝505は、当該側壁に形成された当該開口部513とは異なる流体出口に接続され、結果として、当該溝505と当該側壁に形成された当該開口部513とを通る流れを別々に制御することができるということを意味する。
【0094】
図7は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置520を示しており、この場合、当該移動装置は、同様に、上側部分501および下側部分502を有する。当該試料チャンバー512は、当該上側部分501に形成される。当該移動マトリックス503および当該デポジットマトリックス504は、当該上側部分および当該下側部分502の当該締め付け固定リング509の間に固定され、当該試料チャンバーの当該基部を形成する。当該放出構造は、当該下側部分に形成された溝505、当該試料チャンバー512の当該側壁に形成された開口部513、環状チャネル519、および流体チャネル518を有する。この場合、当該側壁に配置された当該開口部513および当該下側部分502に形成された当該溝505は、当該同じ流体チャネル518に接続され、結果として、当該同じ吸引ポンプまたは真空ポンプ525に接続される。この場合、当該溝505は、当該接続点514によって当該流体チャネル518に接続される。この例示的実施形態により、当該溝505および当該側壁に形成された当該開口部513は、並列において、流体的に接続される。このことは、当該溝505および当該側壁に形成された当該開口部513が、別々に当該流体チャネル518に接続されることを意味する。
【0095】
上側部分501と下側部分502を有する移動装置520が図8に示されており、この場合、当該上側部分は、当該試料チャンバー512を含む。当該移動マトリックス503および当該デポジットマトリックス504は、当該上側部分501および当該下側部分502の当該締め付け固定リング509の間に固定される。当該放出構造は、当該下側部分に形成される溝505、環状チャネル519、当該側壁に形成された開口部513、および流体チャネル518を有し、それらは、流体接続に関して、直列に接続されており、当該吸引ポンプまたは真空ポンプ525を備える。当該流体チャネル518は、当該溝505に流体力学的に接続され、当該溝505は、当該環状チャネル519に流体力学的に接続され、ならびに当該環状チャネルは、当該側壁に形成された当該開口部513によって、当該試料チャンバー512に流体力学的に接続される。このことは、当該側壁に形成された当該開口部513を通して放出される流体が、当該溝505を通って移送されることを意味する。これは、当該液体が、当該側壁に形成された当該開口部513を通って吸引されるときに、当該溝505が、当該溝505を通って勢いよく流れる当該液体によって洗浄されるという利点を有する。
【0096】
図9は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動装置520を示している。当該下側部分502に溝が形成され、溝が第一放出構造を形成することが示されている。当該上側部分には、当該試料チャンバー512の当該側壁に含まれる開口部(明確には示されていない)が存在し、開口部は、第二放出構造を形成する。当該溝505および当該側壁の当該開口部は、当該流体チャネルに流体力学的に接続され、当該流体チャネルは、本発明との当該関連において定義される当該第一流体チャネルを構成する。当該溝505は、当該接続点514によって当該流体チャネルに接続される。さらに、吸引されるときの当該流体の当該流れを示す矢印530および531が示されている。当該矢印530は、当該側壁に形成された当該開口部を通って吸引される当該流体の当該流れを示しており、矢印531は、当該溝505を通って吸引される当該流体の当該流れを示している。
【0097】
図10は、本発明の例示的実施形態による移動装置を操作する方法のためのフローダイアグラムを示している。当該方法は、試料チャンバー、移動マトリックス、および移動装置から流体を当該移動装置の流体出口へと放出するための放出構造を有する当該移動装置を提供する当該工程S1を含む。さらに、当該方法は、流体を当該試料チャンバーからおよび/または当該移動マトリックスから当該放出構造を通って流体出口へと放出する当該工程S2を含む。
【0098】
図11は、本発明の例示的実施形態による様々な方法のための様々なフローダイアグラムを示している。
【0099】
本発明の例示的一実施形態は、試料または処理液を除去する方法であって、当該移動装置を提供する当該工程S1と、当該試料または当該処理液を当該試料チャンバー内に導入する当該工程S3と、当該試料の少なくとも一部または当該処理液の少なくとも一部を当該放出構造を通って放出するために、流体を当該試料チャンバーからおよび/または当該移動マトリックスから当該放出構造を通って当該流体出口へと放出する当該工程S2とを含む方法に関する。
【0100】
本発明のさらなる例示的実施形態は、当該移動装置を洗浄する方法であって、当該移動装置を提供する当該工程S1と、洗浄液を当該試料チャンバーに導入する当該工程S4と、当該放出構造を通って当該洗浄液の少なくとも一部を放出する当該工程S2とを含む方法に関する。
【0101】
本発明のさらなる例示的実施形態は、当該移動装置を乾燥する方法であって、当該移動装置を提供する当該工程S1と、当該放出構造を通って空気を吸引することによって当該移動装置の貫通開口部を通って当該試料チャンバーへと当該空気を導入する当該工程S5と、当該吸引された空気を当該放出構造を通って放出する当該工程S2とを含む方法に関する。
【0102】
本発明のさらなる例示的実施形態は、上記においてより詳細に説明される当該工程S1およびS2を含む、当該移動マトリックスの光学的検査のための移動装置を調製する方法に関する。さらに、当該方法は、当該移動装置の入口開口部を通して当該移動マトリックス中へと針を導入する当該工程S7であって、それにより当該針が、当該マトリックスを貫通して流体を放出するために当該放出構造中へ少なくとも部分的に進入する、当該工程S7によって、当該移動マトリックスの屈折率に一致する屈折率を有する液体を導入する当該工程S6を含む。
【0103】
本発明のさらなる例示的実施形態は、上記において説明される当該工程S1およびS2を含む、移動分析のための方法に関する。さらに、当該方法は、試料液を当該試料チャンバーに導入する当該工程S8と、固定液を導入することによって当該試料液の細胞を固定する当該工程S9と、当該試料チャンバー中に染色液を導入することによって当該細胞を染色する当該工程S10と、当該細胞の移動能を光学的に測定する当該工程S11とを含み、この場合、この方法の全ての工程は、当該同じ移動装置を使用して実施される。
【0104】
図12は、本発明のさらなる例示的実施形態による移動分析のための方法を示している。当該方法は、当該移動準備工程S20と、当該移動工程S21と、当該固定工程S22と、当該溶解工程S23と、当該染色工程S24と、当該背景をクリアリングする当該工程S25と、当該中和工程S26と、当該乾燥工程S27と、当該光学的測定工程S28とを含み、これらは、以下においてより詳細に説明されるであろう。
【0105】
さらなる詳細を提供するために、例えば図5Aから図5Fにおいて示される当該移動装置による当該移動分析の場合、当該以下のアプローチを採用することができる。
【0106】
当該移動準備工程S20は、当該以下の補助的工程:
a)当該上側部分501と、下側部分502と、当該マトリックス503、504とを含む当該移動装置520を無菌包装から取り出す工程、
b)加熱キャビネットまたはインキュベーターにおいて、好ましくは37℃に、当該移動装置520を予備加熱する工程または移動装置520の温度を制御する工程、
を含み得る。
【0107】
当該移動工程S21は、当該以下の補助的工程:
a)定義された部分量の当該希当該釈された試料521を当該試料チャンバー512に送達する工程;任意選択により、当該マトリックス503、504は、当該希釈された試料を適用する前に、定義された部分量の当該バッファー溶液によって予備湿潤させてもよい;
b)当該試料チャンバー容積における当該蒸発量または当該相対湿度の飽和を最小限に抑えるために当該試料チャンバー512を覆う工程、
c)希釈された試料520で満たされた当該移動装置520を、最大60分までに、好ましくは30分までに、加熱キャビネットまたはインキュベーターに戻す工程、
を含み得る。
【0108】
当該固定工程S22は、当該以下の補助的工程:
a)当該インキュベーション(S21、補助的工程c))の後、当該試料チャンバー512の当該残りの容積を例えばホルムアルデヒドで満たすことによって、当該移動細胞をホルムアルデヒドによって固定する工程;任意選択により、このプロセスはさらに、短い反応時間の後に当該試料チャンバー512を空にして、ホルムアルデヒドで再び満たすことによって、時間経過と共に加速させることもできる;
b)中央吸引ニップル506における、好ましくは、当該締め付け固定リング穴517、当該環状チャネル519、および当該流体チャネル518によって、当該試料チャンバー512を空にする工程、
を含み得る。
【0109】
当該溶解工程S23は、以下の補助的工程:
a)当該試料チャンバー512を、例えば、脱イオン水または代替試薬によって満たして数分間反応時間を継続させることにより、当該移動マトリックス503の当該表面上における、吸引されていない、またはまだ溶解されていない、当該残っている残留赤血球を溶解させる工程、
b)排出工程、
c)液滴洗浄:試薬で満たされた当該マトリックス503、504を洗浄する工程および設計上の理由から移動マトリックス503の表面上において脱イオン水での当該流体フィルムを洗浄する工程、および/または締め付け固定リング穴517および同時に当該溝505により、空気と水の交互の吸引によって、一滴ずつ計量供給される中間洗浄プロセスを実施する工程、
d)中間乾燥工程:好ましくは加熱された空気の吸引により短時間において当該放出構造517、519、518または当該溝505ならびに当該マトリックス503、504を乾燥させる工程、
を含み得る。
【0110】
当該染色工程S24は、以下の補助的工程:
a)当該試料チャンバー512を例えばヘマトキシリンで満たして数分間反応時間を継続させる工程;任意選択により、補助的工程a)も二度実施することができる;
b)排出工程
c)液滴洗浄工程(S23と同様に、補助的工程c));
d)中間乾燥工程(S23と同様に、補助的工程d))
を含み得る。
【0111】
当該背景をクリアリング工程S25は、以下の補助的工程:
a)当該試料チャンバー512を例えば希釈したHCl溶液で満たして数分間反応時間を継続させる工程;
b)排出工程;
c)液滴洗浄工程(S23と同様に、補助的工程c));
を含み得る。
【0112】
当該中和工程S26(ブルーイング)は、当該以下の補助的工程:
a)当該試料チャンバー512を中和バッファー(pH9)で満たして数分間反応時間を継続させる工程;
b)排出工程;
c)液滴洗浄工程(S23と同様に、補助的工程c));
d)任意選択により:これらのプロセス(溶解工程、染色工程、クリアリング工程、中和とその後の排出工程、液滴洗浄工程、および中間乾燥工程)のそれぞれも、当該プロセスの成功に応じて、何度か連続して実施してもよい、
を含み得る。
【0113】
当該乾燥工程S27は、以下の補助的工程:
a)好ましくは加熱された空気の吸引により長時間において当該放出構造517、519、518、および当該溝505ならびに当該マトリックス503、504を乾燥させる工程;
b)加熱キャビネットまたはインキュベーターから当該乾燥させた移動装置520を取り出す工程;
c)当該測定まで(最大1年)、当該乾燥させた移動装置520を貯蔵する工程、
を含み得る。
【0114】
当該光学測定工程S28は、以下の補助的工程:
透明性の作製
a)先細りした針507、例えば、注射針など、を使用して液浸油515を導入することにより、当該光学測定のために当該マトリックス503、504を調製する工程であって、当該針の先端の当該先細り部分が、当該下側基部の当該溝505の当該領域において、両方のマトリックスを貫通し、同時に当該試薬を両マトリックス中において側方および両マトリックスの下に浸透させることができる、工程(図5Fを参照のこと)。このプロセスは、当該針を導入する際に回転させることにより、および/または、同時に当該溝505に負圧を適用することにより、さらに改良することができる。
測定:
b)当該移動装置を3D透過光/反射光顕微鏡に設置する工程;
c)当該移動装置に配置された当該移動マトリックス503を光学的に測定する工程、
を含み得る。
【0115】
当該用語「含む(comprising)」および「有する(having)」は、任意の他の要素を排除しないこと、および当該用語「一つ(one)」および「ある一つの(a)」は、複数を除外しないことも言及すべきである。当該上記の例示的実施形態または変形例の一つを参照しながら説明した特徴は、上記において説明した他の例示的実施形態または変形例の他の特徴と組み合わせて使用することもできることも留意されるべきである。当該装置または当該方法に関連する当該特許請求の範囲における参照記号は、どちらも限定として見なされない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12