【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、当該独立請求項の当該主題によって達成される。発展および実施形態は、当該従属請求項、当該説明、および当該図面において見出すことができる。
【0012】
発明の概要
定義:
・移動:移動または細胞移動(ラテン語:migrare、「移動する」)は、細胞または細胞構造の位置における当該活発な変化(移動運動)を意味すると理解される。包括的用語「移動」は、方向性を持たない自発的運動(遊走)、方向性を持った化学走性運動、および移動速度の変化(化学動態(chemokinetics))を包含する。
・移動マトリックス:本出願との関連において、移動マトリックスは、アメーバ様移動性細胞がその中に浸透(移動)することができる、薄い、好ましくは開孔層を意味すると理解され、その場合、好ましくは、当該移動マトリックスの当該平均孔径は、当該アメーバ様移動性細胞の当該平均直径より小さい。
・アメーバ様移動性細胞:アメーバ様運動は、例えば、アメーバ、ある特定の白血球、アメーバ状藻類、およびいくつかの癌細胞のような細胞のほふく運動を説明するものである。
【0013】
本発明の第一態様は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するための移動装置に関する。当該移動装置は、試料チャンバー、当該試料チャンバーに配置された少なくとも一つの移動マトリックス、少なくとも一つの流体出口、および少なくとも一つの放出構造を有する。当該放出構造は、当該試料チャンバーからおよび/または当該移動マトリックスから、流体を放出するように設計される。
【0014】
本発明の中心概念は、当該移動装置が、流体を当該試料チャンバーから外へと導くように設計された構造(放出構造)を有すること、と見なすことができる。この方法では、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定する当該移動装置の当該使用または操作を簡素化することができる。例えば、当該放出構造により、様々な液体および/または気体(例えば、流体)を当該試料チャンバーから離れるように導くことができ、その結果、ピペットなどによる、当該試料チャンバーからのこれらの流体の当該除去が不要である。これにより、より自動化された方法において当該移動装置によって当該移動能を特定することが可能となる。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバーが満たされたときに気泡の当該形成を防ぐように設計することができる。さらに、当該放出構造は、乾燥プロセスを行うために、当該試料チャンバーを通して空気を吸い込むためにも使用することができる。当該放出構造によって実施されるこれら全てのプロセスは、当該移動装置によるアメーバ様移動性細胞の当該移動能の当該特定を簡素化する。換言すると、当該放出構造によって、当該移動装置を操作するときに手動プロセスを必要としないで済ますことが可能であり、または当該移動装置の当該操作を、手によって実施されるいくつかの単純で重要でない動作に限定することができる。本発明による当該移動装置のさらなる利点および用途は、より詳細な例示的実施形態との当該関連において説明されるであろう。
【0015】
多くの真核生物細胞、例えば、線維芽細胞、角化細胞、ニューロン、免疫細胞、およびアメーバなど、は、アメーバ様運動または活発な移動運動により、移動することが可能である。当該用語「移動」または「細胞移動」は、本発明との当該関連において、アメーバ様運動が可能な生物細胞または生物細胞構造の位置における当該活発な変化を意味すると理解することができる。当該包括的用語「移動」は、任意の活発なアメーバ細胞運動、例えば、方向性を持たない活発な自発的運動(遊走)、方向性を持った化学走性運動(走化性)、および活発な運動速度における変化(化学動態)を包含し得る。当該用語「移動性能」または「移動能」または「移動活性」は、本発明との当該関連において、活発な運動、または活発な運動を実施するためのアメーバ様移動性細胞の当該能力を意味すると理解することができる。
【0016】
移動装置は、本発明との当該関連において、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するために使用することができる装置を意味すると理解することができる。当該移動装置は、細胞生物学にとって、および/または自動化可能な操作工程、例えば、温度制御、洗浄工程、および染色工程など、にとって好適な標準的倒立顕微鏡による顕微鏡法向けに構成されるように形成することができる。
【0017】
原則として、アメーバ様運動することができる任意の生体細胞または生体細胞構造の当該移動能は、本発明による当該装置を使用して特定することができる。本発明による当該移動装置は、好ましくは、白色血液細胞(白血球)、例えば、単核細胞/マクロファージなど、の移動能、または好中性顆粒球(好中球)の移動能を特定するために使用することができる。本発明による当該移動装置は、特に好ましくは、インビトロにおいて、試料としての全血液または希釈された全血液からの多形核の好中性顆粒球(PMN)の当該移動能を特定するために使用することができる。
【0018】
本発明との当該関連において、当該移動能を特定するということは、当該インビトロでの移動を特定すること、アメーバ様移動性細胞の当該移動または非移動を測定および/または評価することを意味すると理解することができる。この場合、当該移動は、好ましくは、多孔質膜フィルター中へまたは移動マトリックス中への移動によって実施することができ、当該移動した細胞を一度固定し染色してしまえば、当該膜フィルター中または当該膜フィルター上の当該細胞の当該分布、または当該移動プロファイルを、顕微鏡で測定し評価することができる。
【0019】
当該移動装置は、ハウジングを有することができ、当該ハウジングは、少なくとも部分的に、プラスチックで作製することができる。このハウジングは、当該試料チャンバー、当該流体出口、および当該放出構造を含むことができる。換言すると、当該試料チャンバー、当該流体出口、および当該放出構造は、当該移動装置内または当該移動装置の当該ハウジング内に形成することができる。
【0020】
当該移動装置の当該ハウジングは、この場合、一体的に、またはいくつかの部分、例えば、二つの部分など、において形成することができる。例えば、当該移動装置の当該ハウジングは、上側部分および下側部分を有していてもよく、これらは、一緒に接合することができるか、または一緒に嵌合することができる。当該ハウジングまたは当該上側部分および当該下側部分は、射出成形法によって製造することができる。当該上側部分および当該下側部分は、それぞれ、一体的に形成することができる。
【0021】
当該試料チャンバーは、本発明との当該関連において、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジングに形成された凹みまたは窪みを意味すると理解することができる。例えば、当該試料チャンバーは、当該移動装置または当該ハウジングに形成された、円形の断面を有する凹みまたは窪みであり得る。しかしながら、当該試料チャンバーの当該断面は、様々な形状、例えば、楕円形または四角形など、を有することもできる。さらに、当該試料チャンバーは、側壁および底面を有することができ、これらについては、以下においてより詳細に説明されるであろう。当該試料チャンバーは、その中で、アメーバ様移動性細胞の当該移動能の当該特定を実施するように設計することができる。例えば、試料流体を当該試料チャンバー内に導入して、当該試料流体に含まれる当該アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定することができる。
【0022】
当該試料チャンバーは、入口開口部を有していてもよく、そこを通って流体を当該試料チャンバー内に導入することができる。この入口開口部は、閉鎖可能であり得る。例えば、当該移動装置は、当該試料チャンバーの当該入口開口部を閉じるために、閉鎖機構、例えば、カバーなど、を有することができる。
【0023】
当該マトリックスは、本発明との関連において、膜フィルターであると理解することもできる。この種類のマトリックスまたはこの種類の膜フィルターは、本発明による移動装置において使用することができ、ならびに、当該移動装置の一部であり得、例えば、オーストリア特許第394455(B)号に記載されている。当該膜フィルターは、当該移動性細胞を受け入れることができる。当該膜フィルターは、好ましくは、炭水化物化合物、例えば、セルロース誘導体(アセテート、ニトレート)、ポリカーボネート、またはプラスチックで作製されたもの、例えば、ポリアミドまたはポリ塩化ビニルなど、を含むことができる。当該フィルターは、さらなる調製を行うことなく使用することができ、またはそれらの細孔の当該内壁は、当該移動性細胞がある特定の親和性を有するような物質、例えば、コラーゲン、フィブリン、ヘテログリカン、または炭水化物ポリマー、例えば、寒天など、でコーティングすることができる。当該膜フィルターの当該細孔幅は、当該検査される細胞のタイプおよび当該検査の当該目的に基づく。白血球の場合、1μmから8μmの間の細孔幅が有利であることが判明している。当該細胞のタイプによっては他の細孔幅がより好ましい場合もあるため、この仕様は、本発明の特徴に対する限定として理解されるべきではない。
【0024】
さらに、当該マトリックスは、複数のマトリックスを含むこともできる。例えば、当該マトリックスは、一方の層の上に他方の層が配置された、第一および第二マトリックスによる二つの層を有することができる。当該第一マトリックスは、例えば、移動マトリックスであり得、ならびに当該第二マトリックスは、例えば、デポジットマトリックス(deposit matrix)であり得る。
【0025】
当該第二マトリックスまたはデポジットマトリックスは、本発明との当該関連において、1種または複数種の活性物質を含有する多孔質膜フィルターでもあり得る。当該デポジットマトリックスは、その中に活性物質を当該固体状態において中に組み込むことができる多孔質材料であり得、その場合、当該活性物質は試料液体との接触において溶解する。
【0026】
当該マトリックスは、当該試料チャンバーの底面上に位置することができる。当該マトリックスがデポジットマトリックスおよび移動マトリックスを含む場合、当該デポジットマトリックスは、当該試料チャンバーの当該底面上に配置することができ、ならびに当該移動マトリックスは、当該デポジットマトリックス上に配置することができる。換言すると、上から下へと見たとき、当該移動マトリックスは、当該デポジットマトリックス上に位置し得、当該デポジットマトリックスは、当該試料チャンバーの当該底面上に位置し得る。当該デポジットマトリックスは、活性物質を含むことができ、その場合、アメーバ様移動性細胞の当該移動に対して促進効果または抑制効果を及ぼすことができる全ての物質は活性物質であると理解することができる。他の活性物質も含有することができる。当該目的に応じて、当該デポジットマトリックスは、非活性物質も含有することができ、または完全に省くこともできる。
【0027】
デポジットマトリックスに対して、ニトロセルロースで作製された多孔質膜フィルターを使用することが可能であり、ならびに当該活性物質に対して、当該走化性のトリペプチドN−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(FMLP)を使用することが可能であり、それらは、例えば、当該デポジットマトリックス中に寒天によって導入される。完全に同様の構造だが活性物質を含まないデポジットマトリックスを、空の対照として使用することができる。
【0028】
例えば、当該流体出口は、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジングに形成された開口部であって流体を当該試料チャンバーから外に出すことができる開口部を意味すると理解することができる。この場合、当該移動装置は、お互いに別々の一つまたは複数の(例えば、二つの)流体出口を有することができる。当該流体出口は、吸引ポンプまたは真空ポンプを当該流体出口に接続することができ、それにより、流体を当該試料チャンバーから外にポンプ流送することができるように、および/または当該放出構造に負圧を生じさせることができるように設計することができる。例えば、当該流体出口は、吸引ニップルの一種、例えば、ルアーフィッティングなど、を有することができ、それに当該吸引ポンプまたは当該真空ポンプを取り付けることができる。気体、例えば、空気など、および液体、例えば、水、血液など、の両方ならびに気体および液体の混合物も、本発明との当該関連において流体として理解することができる。
【0029】
当該放出構造は、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジングに備わる構造であって、当該試料チャンバーからおよび/または当該移動マトリックスから、または当該移動マトリックスを通って、流体を当該流体出口へと放出するように設計された構造を意味すると理解することができる。この放出構造は、例えば、一つまたは複数の窪みを当該移動装置または当該ハウジングに形成することによって、当該移動装置にまたは当該ハウジングに直接形成することもできる。当該放出構造は、一つまたは複数の機械的補助的構造を有することができる。例えば、当該放出構造は、当該移動装置または当該ハウジングに取り付けるかおよび/または固定される追加の構成部品または要素、例えば、追加の管またはチャネルなど、を含むことができる。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバー上に配置された流出構造、例えば、開口部、溝、分岐した溝システム、格子構造、または別の機械的構造など、を含むことができる。本発明との当該関連において、当該用語「放出構造」は、当該試料チャンバーと当該流体出口との間の当該流体力学的接続の様々な実施形態に対する総称として使用される。したがって、放出構造は、当該試料チャンバーと当該流体出口との間に流体力学的接続を提供する。換言すると、当該放出構造は、当該試料チャンバーから当該流体出口へと流体を放出するように設計することができる。このために、当該移動装置は、当該放出構造と当該流体出口との間に流体接続を形成することができる。当該放出構造による流体の当該放出は、例えば、当該放出構造を吸引装置、例えば、ポンプなど、に流体力学的に接続することによって達成することができる。
【0030】
特に明記されない限り、本発明との当該関連において定義される接続は、流体接続に関する。二つの要素の間の流体接続または流体力学的接続は、当該二つの要素の間に接続が存在し(例えば、ラインおよび/またはチャネルの当該形態)、それにより流体がこれらの要素の一方から他方へと流れることができるということを意味すると理解することができる。
【0031】
当該放出構造は、お互いに分離された一つまたは複数の個別の構造を含むことができ、それらは、それぞれ、流体を当該試料チャンバーを越えておよび当該移動マトリックスを越えて当該液体出口へと放出するように設計される。例えば、当該放出構造は、第一放出構造および第二放出構造を有することができる。換言すると、当該放出構造は、流体を当該試料チャンバーを越えておよび当該移動マトリックスを越えて当該流体出口へと放出するように設計された全ての放出構造の当該全体を意味すると理解することができる。この種類の放出構造は、例えば、少なくとも部分的に、当該試料チャンバーの当該底面および/または当該側壁に形成することができ、この場合、当該放出構造は、当該底面のみまたは当該側壁のみに配置することもできる。このことは、当該放出構造が、当該底面および/または当該側壁に形成された補助的構造、例えば、流出構造など、を有することができることを意味する。
【0032】
顕微鏡のスタックパターン画像を記録するために、x/yスライド上または円形路の上において、このために使用された当該カメラを当該移動装置に対して動かすかまたは当該移動装置を当該カメラに対して移動させることができる。それを行う場合、当該カメラは、光路を画定する、当該倍率によって決定された幅を有するストリップ(円形路)の上を通過させることができる。当該記録される画像の光学的品質が乱されないように、当該移動装置は、当該放出構造がこれらの光路を通って誘導されないように、すなわち、当該光路が当該放出構造の当該幾何学的構築に束縛されないように、構築することができる。当該スタックパターン画像は、好ましくは、当該測定放射線に対して透過性の領域を有する、当該移動装置の当該基部を通して記録される。
【0033】
本発明の例示的一実施形態により、当該移動装置は、当該試料チャンバーを収容するかまたはその中に当該試料チャンバーが形成されるハウジングを有する。当該放出構造も当該ハウジング内に形成され、ならびに当該放出構造は、流体が当該ハウジングを越えて放出されるのを可能にするように設計される。
【0034】
ここで、当該ハウジングは、一体的にまたは複数の部分において形成することができる。例えば、当該ハウジングは、上側部分および下側部分を有することができ、これらは、当該移動装置の組み立て状態において、一緒に接合するかまたは一緒に嵌合することができる。例えば、当該ハウジングは、例えば、射出成形法などによって、少なくとも部分的にプラスチックで作製することができる。当該プラスチックは、例えば、Eastman Tritan社のCOPOLYESTER MX731であり得る。このプラスチックの利点は、とりわけ:その高い透明性;条痕の防止;非晶質性;高い靭性;血液、インビトロ化学物質、および液浸油との接触における良好な化学親和性;その殺菌性(ガンマまたはエチレンオキシド(ETO)殺菌における良好な色堅牢性);およびそのFDA/ISO 10993およびUSPクラスVIの生体適合性である。当該ハウジングの当該プラスチックは、例えば、当該移動インデックスの当該屈折率の当該適合との組み合わせにおいて、高い顕微鏡品質の光透過性を達成することができるように選択することができる。
【0035】
当該ハウジングは、例えば、射出成形された部品および/または購入することができる標準的部品のみからなり得る。このようにして、当該移動装置は、非常に経済的に製造することができる。
【0036】
本発明のさらなる例示的実施形態により、試料チャンバーは、底面または部分基部を有し、この場合、当該移動マトリックスまたは当該デポジットマトリックスは、当該底部上に位置され、ならびに当該放出構造は、少なくとも部分的に当該底面上に形成される。このことは、当該放出構造が、当該底面に形成された機械的補助的構造、例えば、流出構造(例えば、溝、分岐した溝システム、開口部、格子などの当該形態)を有することができるということを意味している。
【0037】
当該試料チャンバーの当該底面は、例えば、当該試料チャンバーの側壁によって区切られ得る。さらに、当該底面は、実質的に平坦または平面的であり得る。当該用語「実質的に」は、この文脈において、当該平坦または平面的な底面が、開口部、凹みおよび/または窪み(例えば、本発明との当該関連において言及された当該溝)を有し得るということを意味すると理解することができる。しかしながら、例えば、当該底面は、製造公差は別にして平坦または平面的であるかなりの部分、例えば、底面の80%を超える部分、好ましくは底面の90%を超える部分、を有し得る。
すなわち、底面における溝または溝システムは、該底面の20%未満、好ましくは10%未満を占め得る。あるいは、当該底面は、湾曲していてもよい。さらに、当該底面は、湾曲した領域と平面的な領域とを有することもできる。
【0038】
試料チャンバーの当該底面に形成されたこの種類の放出構造は、本発明との当該関連において、第一放出構造と呼ばれ得る。例えば、当該底面に形成された当該放出構造は、少なくとも部分的に、当該底面に配置された溝を含むことができる。当該底面に形成された当該放出構造は、当該移動マトリックスと当該底面との間に配置されたスペーサー格子も含むことができる。さらに、当該底面に形成された当該放出構造は、穴または複数の穴、例えば、連続するチャネル状の穴、を有していてもよく、これらは、当該放出構造の当該底面に形成され、当該移動装置または当該移動装置の当該ハウジング内においてチャネルに結合される。
【0039】
当該放出構造は、当該マトリックス(移動マトリックスまたはデポジットマトリックス)が当該底面上と、少なくとも部分的に当該放出構造上に位置されるように形成することができる。このことは、当該放出構造が当該移動装置の当該マトリックスの下に配置され得、および/またはそれらによって覆われることを意味する。当該試料チャンバーの当該底面に配置されたこの種類の放出構造により、当該マトリックスと当該底面との間に形成された気泡を効率よく除去することができる。さらに、この方法では、流体も当該移動マトリックスを通って当該試料チャンバーから放出させることができる。例えば、この方法では、空気が、当該底面に配置された当該放出構造によって当該マトリックスを通して当該試料チャンバーから吸引され、それにより当該マトリックスを効果的に乾燥することにより、効果的な乾燥プロセスが実現され得る。
【0040】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該底面に形成された当該放出構造は、当該底面に配置された溝を有する。
【0041】
本発明との当該関連において、当該溝は、(上方に開放された)放出チャネルとも呼ばれ得る。この溝は、例えば、当該移動装置に形成されたチャネル中へと開口し得、それにより、チャネルは当該溝を当該流体出口に接続する。したがって、液密接続が、当該溝と当該流体出口との間に提供され得る。例えば、当該溝は、当該試料チャンバーの当該底面の当該中央から、当該試料チャンバーの当該底面の当該端部まで延在し得る。例えば、当該溝は、およそ4mmから15mmの長さ、およそ0.5mmから1mmの幅、およびおよそ0.5mmから1mmの深さを有し得る。当該溝のこれらの寸法は、当該移動エリア(基部)の当該寸法および/または当該構造設計によって定義されるそれらの当該有効断面積に基づき得る。当該移動エリアの当該直径は、およそ3mmから10mmであり得、締め付け領域と合わせた当該移動エリアの直径は、およそ5mmから20mmであり得る。
【0042】
このようにして、気泡の当該形成を防ぎ、流体の放出を可能にするような構造を提供することができる。
【0043】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該放出構造は、当該移動装置に配置され当該試料チャンバーから当該流体出口まで延在する第一流体チャネルを有する。
【0044】
例えば、当該流体チャネルは、当該流体出口と当該試料チャンバーの底面および/または当該試料チャンバーの側壁における開口部との間の液密接続を可能にすることができる。
【0045】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該試料チャンバーは、側壁を含む。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバーからの流体の吸引のための、当該試料チャンバーの当該側壁に配置された開口部を含む。さらに、当該放出構造は、環状流体チャネルを有し、これは、当該試料チャンバーの周りにおいて当該移動装置内に配置される。当該放出構造は、当該環状流体チャネルと当該流体出口との間の流体接続を有する。この流体接続は、例えば、当該第一流体チャネルによって提供することができる。当該放出構造も、当該側壁に配置された当該開口部と環状流体チャネルとの間の流体接続を有する。
【0046】
換言すると、当該放出構造は、当該試料チャンバーを、例えば、環状に囲む流体チャネルを有し得る。この環状流体チャネルは、例えば、当該試料チャンバーの当該底面に配置された開口部、例えば、溝など、に流体力学的に接続され得る。さらに、当該流体チャネルは、当該開口部、または当該試料チャンバーの側壁に配置された開口部にも接続され得る。例えば、当該環状チャネルは、当該試料チャンバーの当該側壁および当該底面の両方に形成され得る複数の開口部を接続することにより、単一の流体チャネル、例えば、前に定義した当該第一流体チャネルなど、を形成することができ、それにより、流体が、当該試料チャンバーの当該側壁と当該底面の両方の当該開口部から当該流体出口へと導かれるかまたは放出され得る。
【0047】
当該試料チャンバーの当該側壁に形成されたこの開口部またはこれらの開口部は、第二放出構造とも呼ばれ得る。流体は、当該側壁に形成されたこの開口部によって、上記の当該移動マトリックスから放出され得る。この放出は、当該移動能の当該特定のために、例えば、当該固定工程、洗浄工程、染色工程、および/または乾燥工程のために使用することができる。当該側壁に形成されたこれらの開口部は、以下において、締め付け固定リング穴とも呼ばれ得る。
【0048】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該試料チャンバーは、底面および側壁を有し、この場合、当該マトリックス(移動マトリックスまたはデポジットマトリックス)は、当該底面上に位置される。当該放出構造は、例えば、溝の当該形態において、少なくとも部分的に当該底面に形成される。さらに、当該放出構造は、当該試料チャンバーの当該側壁に配置された開口部を有する。この場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、当該同じ流体出口へと接続される。当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に形成された当該開口部は、流体接続に関して直列または並列のいずれかにおいて接続される。当該移動装置は、当該試料チャンバーの当該側壁に単一の開口部または複数の開口部を有することができる。
【0049】
換言すると、第一放出構造および第二放出構造は、当該流体出口への流体接続に関して、直列または並列に接続または配置することができる。当該第一放出構造および当該第二放出構造を互いに直列に接続する当該利点は、とりわけ、直列接続の前側に配置された当該放出構造を通って放出される流体が、当該直列接続の後側に配置された当該放出構造も通され、それにより、流体が当該後の放出構造を通って勢いよく流されるときに、当該後の放出構造が洗浄されるという点に存する。
【0050】
直列配置の場合、より密接に連結することにより、当該流速によって、当該マトリックスの当該上側と当該下側との間の当該差圧に違いが生じるように設定することができ、それにより、当該マトリックスによる再現可能な流体輸送が発生される。試薬の消費を減らしつつ、洗浄工程、染色工程、および乾燥工程を、より迅速に、およびより均一に実施することができる。
【0051】
当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部の直列接続又は直列における接続の場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、その流体接続に関して、連続するように配置することができる。このことは、当該流体出口は、例えば、当該底面の当該放出構造に直接的に接続され得、ならびに、当該底面に形成された当該放出構造は、当該側壁に配置された当該開口部に直接的に接続され得ることを意味する。あるいは、当該流体出口は、当該側壁に配置された当該開口部に直接的に接続され得、ならびに当該側壁に配置された当該開口部は、当該底面に形成された当該放出構造に直接的に接続され得る。当該流体出口への、当該底面に形成された当該放出構造および当該側面に配置された当該開口部の並列接続の場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、それぞれ、別々に当該流体出口に直接的に接続され得る。しかしながら、これは、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部が、別々に、当該同じ流体チャネル(例えば、本発明との当該関連において、当該第一流体チャネルと呼ばれる)に接続され、それが、当該流体出口を当該二つの開口部に接続するということを除外するものではない。
【0052】
当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部による当該直列接続および当該並列接続の両方において、当該二つの開口部は、当該同じ流体出口に接続され得る。これは、当該底面に配置された当該開口部および当該側壁に配置された当該開口部によって当該試料チャンバーから流体を放出するのに単一の吸引ポンプまたは真空ポンプで十分であるという利点を有する。
【0053】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該試料チャンバーは、底面および側壁を含む。さらに、当該放出構造は、当該底面に形成された放出構造および当該側壁に配置された開口部を有する。さらに、当該移動装置は、少なくとも二つの別々の流体出口またはお互いから分離された二つの流体出口を有し、この場合、当該底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部は、二つの別々の流体出口に接続される。
【0054】
換言すると、当該底面に形成された当該放出構造は、第一流体出口に接続され得、当該側壁に配置された当該開口部は、第二流体出口に接続され得る。
【0055】
底面に形成された当該放出構造および当該側壁に配置された当該開口部が別々の流体出口に接続されるという事実から生じる当該利点は、当該底面に形成された当該放出構造を通る当該流出および当該側壁に配置された当該開口部を通る当該流出を別々に管理または制御することができるという点である。
【0056】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該移動装置は、側壁から空間的に区切られた貫通開口部と、第一受け入れ領域または受け入れエリアとを有する上側部分を有する。さらに、当該移動装置は、第二受け入れ領域または受け入れエリアを有する下側部分を有する。当該上側部分および当該下側部分は、当該移動装置の組み立てられた状態において、一緒に接合され得る。当該移動装置の組み立てられた当該状態において、当該移動マトリックスは、当該第一受け入れ領域および当該第二受け入れ領域に配置される。当該貫通開口部は当該側壁と共に、当該試料チャンバーを形成し、当該下側部分は、当該試料チャンバーの基部を形成し、この場合、当該マトリックスは当該基部上に位置される。さらに、少なくとも当該下側部分は、当該放出構造を有する。
【0057】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該放出構造は、当該下側部分に配置された溝を含み、この場合、当該溝は、少なくとも部分的に、当該第二受け入れ領域に配置され、それにより、当該移動装置の組み立てられた当該状態において、当該溝は、当該マトリックス(移動マトリックスまたはデポジットマトリックス)によって覆われる。
【0058】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該上側部分および当該下側部分は、当該マトリックスを当該上側部分の当該第一受け入れ領域と当該下側部分の当該第二受け入れ領域との間の当該マトリックスの特定の領域に固定するように設計される。
【0059】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該第一受け入れ領域は、当該貫通開口部の開口部を囲む締め付け固定リングとして具現される。さらに、当該第一受け入れ領域は、当該マトリックスを受け入れるようにも設計され、この場合、当該マトリックスは、当該貫通開口部の当該開口部を覆い、当該試料チャンバーの当該基部を形成する。
【0060】
本発明のさらなる例示的実施形態により、当該上側部分は、環状流体チャネルを有し、これは、当該締め付け固定リングを囲む。当該上側部分は、真空ポンプを当該流体出口に接続するための接続部品を伴う流体出口も有する。当該上側部分は、さらなる流体チャネルも有し、これは、当該流体出口と当該環状流体チャネルとの間に液密接続を提供する。
【0061】
換言すると、当該移動装置の当該ハウジングは、二つの部分において、すなわち、当該上側部分と当該下側部分から構築され得る。当該第一および当該第二受け入れ領域は、それぞれ、当該上側部分の領域および当該下側部分の領域を示し得、組み立てられた当該状態において、それらの間に当該移動マトリックスが固定される。
【0062】
当該下側部分に形成される当該第二受け入れ領域は、平坦なまたは平面的な表面であり得、これは、当該移動装置の組み立てられた当該状態において、当該試料チャンバーの当該底面を形成する。当該上側部分に形成される当該第一受け入れ領域は、当該試料チャンバーを囲む締め付け固定リングであり得、それにより、当該移動マトリックスと、該当する場合には当該デポジットマトリックスとは、当該底面(すなわち、当該第二受け入れ領域)と当該締め付け固定リング(すなわち、当該第一受け入れ領域)との間に固定される。
【0063】
この種類の2パート設計の当該利点は、とりわけ、当該マトリックスを当該上側部分と当該下側部分との間に容易に固定することができるという当該事実に存する。
【0064】
本発明のさらなる態様は、アメーバ様移動性細胞の当該移動能を特定するために、先行の請求項のいずれか一項に記載の移動装置の使用に関する。
【0065】
本発明のさらなる態様は、試料チャンバーと、移動マトリックスと、当該移動装置から当該移動装置の流体出口へと流体を放出するための放出構造とを有する移動装置を提供する当該工程を含む、移動装置を操作する方法に関する。さらに、当該方法は、当該放出構造を通って、当該試料チャンバーを越えておよび当該移動マトリックスを越えて流体を当該流体出口へと放出する当該工程を含む。
【0066】
当該方法はさらに、本発明との当該関連において説明されるような移動装置を提供する当該工程も含み得る。この場合、当該提供される移動装置は、本発明との関連において説明される当該特徴の一部または全てを有し得る。
【0067】
本発明の例示的実施形態に従って、試料または処理液を除去する方法について説明する。当該方法は、試料または処理液を試料チャンバー内へと導入する工程を含む。流体を放出する工程は、放出構造を介しての試料の少なくとも一部または処理液の少なくとも一部の放出を含む。
【0068】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、洗浄液を当該試料チャンバー内に導入する当該工程をさらに含む、当該移動装置を洗浄する方法について説明する。流体を放出する当該工程は、当該放出構造を介した当該洗浄液の少なくとも一部の放出を含む。
【0069】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、当該放出構造を介した吸引によって当該移動装置の入口開口部を通って空気を当該試料チャンバー内に導入する当該工程をさらに含む、当該移動装置を乾燥する方法について説明する。流体を当該流体出口へと放出する当該工程は、当該放出構造を介した当該吸引された空気の放出を含む。
【0070】
当該試料チャンバーは、入口開口部を有していてもよく、そこを通って流体を当該試料チャンバー内に導入することができる。換言すると、当該入口開口部は、当該試料チャンバーの上側開口部を意味すると理解することができる。この入口開口部は、例えば、閉鎖可能であり得る。このことは、当該移動装置が、当該入口開口部を閉鎖するためのカバーを有し得ることを意味する。
【0071】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、当該移動マトリックスの光学的検査のために移動装置を調製する方法について説明し、この場合、方法は、追加的に、液体をマトリックス中に導入する当該工程を含み、この場合、当該導入される液体、例えば、液浸油などは、当該マトリックス材料と実質的に当該同じ屈折率を有しており、それにより、当該マトリックスは透明である。当該液体は、当該移動装置の入口開口部を通って針を当該移動マトリックス中に挿入することによって導入することができ、この場合、当該針は、少なくとも部分的に、当該マトリックスを通って当該放出構造内へと進入する。
【0072】
本発明のさらなる例示的実施形態に従って、試料液を当該試料チャンバー内へ導入する当該工程と、固定液を導入することによって当該試料液の細胞を固定させる工程と、当該試料チャンバー内に染色液を導入することによって当該細胞を染色する工程と、ならびに当該細胞の移動能を光学的に測定する工程とを含む、移動分析のための方法について説明し、この場合、この方法の全ての工程は、当該移動装置を使用して実施される。この場合、当該方法の全ての工程は、当該移動装置内においてまたは当該移動装置によって実施されることは理解することができる。
【0073】
本発明との当該関連において説明される当該方法工程は、特に明記されない限り、当該説明される順序および他の順序の両方において実施することができる。さらに、本発明による当該方法またはそれらの工程は、本発明との当該関連において説明した当該移動装置を使用して実施することができる。当該説明される実施形態は、等しく、移動装置、移動装置の当該使用、および当該移動装置を操作するための方法に関する。当該実施形態の様々な組み合わせから相乗効果が生じ得るが、これらは、本明細書の以下において明確に説明されない場合もある。当該装置を特徴付ける特徴は、当該装置を操作するための当該方法も特徴付けることができる。その反面、当該装置をどのように操作すべきかということを定義する特徴は、それ自体、当該装置の特徴でもあり得る。