(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864963
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】キャップ用ライナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 53/04 20060101AFI20210419BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
B65D53/04
B65D41/04 200
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-96933(P2017-96933)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-193082(P2018-193082A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 英泰
(72)【発明者】
【氏名】大森 順治
【審査官】
武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−206097(JP,A)
【文献】
特開2006−232314(JP,A)
【文献】
特開2006−76575(JP,A)
【文献】
特開平11−301724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/00−53/10
B65D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部を封じ天板部と前記天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなると共に前記口部に被せた状態で絞り加工が施されるキャップ本体内に設けられるキャップ用ライナーを製造する方法であって、
前記天板部の内面側に配される摺動層を形成する摺動層形成工程と、
前記摺動層に前記摺動層よりも柔軟な密封層を積層する密封層形成工程とを有し、
前記摺動層形成工程と前記密封層形成工程とにおいて、2色成形により、前記摺動層となる摺動層用溶融樹脂を射出成形して前記摺動層を形成すると共に、前記密封層となる密封層用溶融樹脂を前記摺動層に射出成形して前記密封層を形成し、
前記摺動層を、円環状の凹部又は貫通孔を有した円板状に成形し、
前記密封層を、前記摺動層から突出しない状態で、前記凹部内又は前記貫通孔内に前記密封層用溶融樹脂を埋め込んで成形することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記摺動層形成工程で、前記摺動層の前記天板部側の面に溝部を同時に成形することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記摺動層形成工程で、前記摺動層の前記天板部側とは反対面に中心に向けて漸次深く形成された中央凹部を成形することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記摺動層形成工程で、前記摺動層の前記天板部側とは反対面に文字、記号、模様及び図形の少なくとも一つを凹凸で表した表示部を成形することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の材料を用いたキャップ用ライナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料用等のキャップ付きボトルのキャップには、ボトルの口部をシールするライナーが設置されている。
従来、例えばアルミニウムPP(プリファープルーフ)キャップでは、2種の材料を用いたライナーが開発されている。このライナーの製造方法としては、摺動層かつ硬質層となるポリプロピレン(PP)等の硬質シートを円板状(ディスク状)に打ち抜き、これを成形後のキャップ本体(キャップシェル)に挿入し、その上に後工程として比較的柔らかい密封層かつ軟質層となるエラストマー等の溶融樹脂をドロップし、モールド成形する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この従来のライナーの製造方法は、
図10の(a)に示すように、まず例えばポリプロピレン(PP)等の摺動層用樹脂2bを単層押出成形機120及びTダイ121により単層シート122(原反)に成形した後、
図10の(b)に示すように、適度な幅の硬質シート123に切断し、
図10の(c)に示すように、この硬質シート123から円板状の摺動層シート124を打ち抜いて作製する。一方、アルミニウム塗装シートをシェルプレスにてキャップシェルに成形し、さらにナーラー機によってキャップシェルにスリット、フック等を加工して、
図10の(d)に示すように、キャップ本体104を作製しておく。
【0004】
次に、
図10の(d)に示すように、キャップ本体104内に円板状の摺動層シート124を挿入し、さらに
図10の(e)に示すように、密封層125となるエラストマー等の溶融樹脂をドロップし、モールド成形することで、摺動層シート124上に密封層125が形成されたライナー126をキャップ本体104内に作製する。
また、他の製法として、摺動層シート124挿入の代わりに上記後工程と同様に、摺動層と密封層との両方をキャップ本体内にモールド成形(インシェルモールド成形)する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5414616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、2種の材料を用いた上記従来のライナーの製造方法では、一連の工程が煩雑になってしまい、一部の機械が滞ると全体が停まってしまう等、生産性が良くないという問題があった。また、ポリプロピレン(PP)等の硬質シートを用いる場合、あらかじめシート成形し、円板状に摺動層シートを打ち抜く工程が必要であると共に、打ち抜き屑(スケルトン)も生じてしまい、材料の歩留まりが悪いという不都合があった。さらに、従来のインシェルモールド成形では、密封層が摺動層から剥がれ易くなる等、接着強度の問題があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、工程が煩雑でなく材料の歩留まりに優れていると共に、高い接着強度が得られるキャップ用ライナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法は、容器本体の口部を封じ天板部と前記天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体内に設けられるキャップ用ライナーを製造する方法であって、前記天板部の内面側に配される摺動層を形成する摺動層形成工程と、前記摺動層に前記摺動層よりも柔軟な密封層を積層する密封層形成工程とを有し、前記摺動層形成工程と前記密封層形成工程とにおいて、2色成形により、前記摺動層となる摺動層用溶融樹脂を射出成形して前記摺動層を形成すると共に、前記密封層となる密封層用溶融樹脂を前記摺動層に射出成形して前記密封層を形成することを特徴とする。
【0009】
このキャップ用ライナーの製造方法では、摺動層形成工程と密封層形成工程とにおいて、2色成形により、摺動層となる摺動層用溶融樹脂を射出成形して摺動層を形成すると共に、密封層となる密封層用溶融樹脂を摺動層に射出成形して密封層を形成するので、シートスケルトンが無くなり樹脂使用量を必要最小限に留めることができると共に、摺動層と密封層との強固な接着強度が得られる。また、キャップ製造工程でのライニングは、キャップ本体とは別成形のライナーを整列及び挿入するだけとなり、簡易な工程でキャップの作製が可能になる。さらに、キャップ本体とは別にライナーを作製できるため、ライナーの成形品をストックしておくことができる。
【0010】
第2の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、第1の発明において、前記摺動層を、円板状に成形し、前記密封層を、前記摺動層と中心を同じくして円環状に成形することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、2色成形により、摺動層を、円板状に成形し、密封層を、摺動層と中心を同じくして円環状に成形するので、高い接着強度を有して円環状の密封層を円板状の摺動層に形成することができる。また、密封層を円環状に成形するので、樹脂使用量をさらに削減することができる。
【0011】
第3の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、第1の発明において、前記摺動層を、円環状の凹部を有した円板状に成形し、前記密封層を、前記凹部内に前記密封層用溶融樹脂を埋め込んで成形することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、2色成形により、摺動層を、円環状の凹部を有した円板状に成形し、密封層を、凹部内に密封層用溶融樹脂を埋め込んで成形するので、摺動層内に密封層を埋め込んだライナーを容易に作製することができる。このように製作したライナーは、密封層が摺動層から突出していないため、全体として薄くなり、絞り加工部を弱化させ、低荷重でのキャッピングにも対応可能になる。また、密封層が周囲の摺動層に拘束され、流動や変形がし難くなることで、シール性を増すことができる。さらに、凹部を設けた分だけ摺動層の樹脂を削減するが可能になる。
【0012】
第4の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記摺動層に貫通孔を形成し、前記貫通孔内に前記密封層を埋め込むことを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、2色成形により、摺動層に貫通孔を形成し、貫通孔内に密封層を埋め込むので、摺動層の裏面(天板部側)まで密封層が一部貫通して、貫通した密封層の天板部側の面積に応じてキャップ本体との摺動抵抗を増し、開栓トルクを向上させる調整が可能になる。
【0013】
第5の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記摺動層形成工程で、前記摺動層の前記天板部側の面に溝部を同時に成形することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、摺動層形成工程で、摺動層の天板部側の面に溝部を同時に成形するので、摺動層と天板部との接触面積を減らして、キャップ本体との摺動抵抗を減らすことで開栓トルクを下げる調整が可能になる。
【0014】
第6の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記摺動層形成工程で、前記摺動層の前記天板部側とは反対面に中心に向けて漸次深く形成された中央凹部を成形することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、摺動層形成工程で、摺動層の天板部側とは反対面に中心に向けて漸次深く形成された中央凹部を成形するので、中央凹部を摺動層成形時に同時に形成することができると共に、中央凹部によって液溜まりを無くし、開栓時の液垂れを防止することができる。また、中央凹部を形成した分だけ摺動層の樹脂量を削減することができる。
【0015】
第7の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、第1から第6の発明のいずれかにおいて、前記摺動層形成工程で、前記摺動層の前記天板部側とは反対面に文字、記号、模様及び図形の少なくとも一つを凹凸で表した表示部を成形することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、摺動層形成工程で、摺動層の天板部側とは反対面に文字、記号、模様及び図形の少なくとも一つを凹凸で表した表示部を同時に成形するので、成形金型により多様な表示部を摺動層の形成と同時に形成することができ、セールスプロモーションに用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法によれば、摺動層形成工程と密封層形成工程とにおいて、2色成形により、摺動層となる摺動層用溶融樹脂を射出成形して摺動層を形成すると共に、密封層となる密封層用溶融樹脂を摺動層に射出成形して密封層を形成するので、樹脂使用量を必要最小限に留めることができると共に、摺動層と密封層との強固な接着強度が得られる。また、キャップ製造工程でのライニングは、キャップ本体とは別成形のキャップを整列及び挿入するだけとなり、簡易な工程でキャップの作製が可能になる。さらに、キャップ本体とは別にライナーを作製でき、ライナーの成形品をストックしておくことができる。
したがって、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法では、材料コストの低減及び信頼性の向上が得られると共に、生産に対してフレキシブルな対応も可能になり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第1実施形態において、キャップ用ライナーを示す断面図(a)及び平面図(b)である。
【
図2】第1実施形態において、キャップ用ライナーを挿入したキャップを容器本体に被せた状態を示す要部の断面図である。
【
図3】第1実施形態において、2色成形機を示す簡易的な斜視図である。
【
図4】第1実施形態において、2色成形機を示す要部の簡易的な断面図である。
【
図5】第1実施形態において、キャップの製造工程を工程順に示す簡易的な断面図である。
【
図6】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第2実施形態において、キャップ用ライナーを示す断面図である。
【
図7】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第3実施形態において、キャップ用ライナーを示す断面図(a)及び裏面図(b)である。
【
図8】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第4実施形態において、キャップ用ライナーを示す断面図(a)及び裏面図(b)である。
【
図9】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第5実施形態において、キャップ用ライナーを示す断面図(a)及び表面図(b)である。
【
図10】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の従来例において、製造工程を工程順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第1実施形態を、
図1から
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために一部について縮尺を適宜変更している。
【0019】
本実施形態のキャップ用ライナー1の製造方法は、例えばアルミニウム製ボトル缶(いわゆるアルミ缶)用のライナーの製法であって、
図1及び
図2に示すように、容器本体99の口部101を封じ天板部102と天板部102の周縁から垂下した筒状周壁部103とからなるキャップ本体104内に設けられるキャップ用ライナー1を製造する方法である。
【0020】
このキャップ用ライナー1の製造方法は、
図3及び
図4に示すように、天板部102の内面側に配される摺動層2を形成する摺動層形成工程と、摺動層2上に摺動層2よりも柔軟な密封層3を積層する密封層形成工程とを有し、摺動層形成工程と密封層形成工程とにおいて、2色成形により、摺動層2となる摺動層用溶融樹脂2aを射出成形して摺動層2を形成すると共に、密封層3となる密封層用溶融樹脂3aを摺動層2上に射出成形して密封層3を形成する。なお、本実施形態では、摺動層2の天板部102側とは反対面を平面側又は表面側とし、天板部102側の面を裏面側としている。
【0021】
本実施形態では、
図1に示すように、摺動層2を、円板状に成形し、密封層3を、摺動層2上に摺動層2と中心を同じくして円環状に成形する。このように製作されたキャップ用ライナー1は、一定の厚さで円板状に形成された摺動層2と、摺動層2上に摺動層2よりも軟質な樹脂で円環状に形成された密封層3とで構成されている。この密封層3は、キャッピング時にキャップ本体104の口部101に接触、密着する位置に形成されている。
【0022】
上記摺動層2は、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、各種ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等の硬質の合成樹脂で形成される。
上記密封層3としては、エラストマー又は樹脂とエラストマーとのブレンド等が採用され、エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、塩ビ系エラストマー等が採用可能である。
【0023】
このキャップ用ライナー1及びこれを用いたキャップの製造方法について、説明すると、まず
図3に示すように、摺動層2となるポリプロピレン等の摺動層用樹脂2bと、密封層3となるエラストマー等の密封層用樹脂3bとを、2色成形機110によって2色射出成形してキャップ用ライナー1を作製する。
【0024】
2色成形機110としては、例えば
図4に示すように、摺動層用樹脂2bを溶融させた摺動層用溶融樹脂2aを一次金型111a内に射出して摺動層2を形成するAポート111bと、一次金型111aの摺動層2上に配した二次金型111c内に密封層用樹脂3bを溶融させた密封層用溶融樹脂3aを射出するBポート111dと、一次金型111aをAポート111b側とBポート111d側との間で移動可能なモータ等の移動機構111eとを備えている。
【0025】
すなわち、Aポート111b側に配置された一次金型111a内にAポート111bから摺動層用溶融樹脂2aを射出して一次成形を行い、円板状の摺動層2を形成した後、移動機構111eにより一次金型111aを二次金型111cのBポート111d側に移動させ、二次金型111c内の円環状キャビティにBポート111dから密封層用溶融樹脂3aを射出して二次成形を行い、円環状の密封層3を形成すると共に摺動層2に熱融着させる。このように異なる2種の樹脂による2色射出成形で、摺動層2と密封層3とが密着したライナー1が作製される。
【0026】
一方、別途、キャップ本体104を作製しておく。すなわち、アルミニウム塗装シートをシェルプレスにより加工してキャップシェルとした後、ナーラー機によってスリット103a、ライナー係止突起であるフック103b等のパネル加工を施してキャップ本体104を作製する。
次に、
図4の(b)(a)に示すように、作製したキャップ本体104内に挿入機によりライナー1を挿入することで、ライナー付きキャップ100が作製される。
【0027】
このように作製されたキャップ100は、
図2に示すように、容器本体99の口部101に装着される。すなわち、上記キャップ100を口金部である口部101にキャッピング加工して巻き締めた状態とされる。
上記口部101の上端部には、外側に折り返したカール部101aが形成されている。このカール部101aは、口部101の上端部をカールさせるカール加工と、カールした部分をかしめるスロットル加工とで形成される。
【0028】
上記キャッピング加工工程は、プレッシャーブロック、ネジローラー、スカートローラー等からなるキャッピング装置を用いて行われる。
すなわち、口部101に被せたキャップの天板部102を、プレッシャーブロックでボトル底部の方向に押圧し、この状態でプレッシャーブロックによる絞り加工により、キャップ100の肩部にキャップ傾斜部を形成する。さらに、この状態でネジローラーによりネジ部を形成し、スカートローラーで口部101のカブラ部にスカート部103cを巻きつけることで、キャッピング加工が行われる。
【0029】
このようにキャップ100が口部101に巻きつけられることにより、キャップ100は天板部102の内面側のライナー1が口部101に圧接される状態になる。これにより容器の内容物が密封された状態になる。なお、内容物の充填は、当然にキャップ100をキャッピングする直前に行われる。
一方、開栓するときは、キャップ100を回してミシン目から切断し、キャップ100を口部101から外すことにより、口部101が開栓され内容物が取り出されることになる。そして、取り外したキャップ100を口部101に再び取り付けることにより、再閉栓することが可能になっている。
【0030】
このように本実施形態のキャップ用ライナー1の製造方法では、摺動層形成工程と密封層形成工程とにおいて、2色成形により、摺動層2となる摺動層用溶融樹脂2aを射出成形して摺動層2を形成すると共に、密封層3となる密封層用溶融樹脂3aを摺動層2上に射出成形して摺動層2を形成するので、シートスケルトンが無くなり樹脂使用量を必要最小限に留めることができると共に、摺動層2と密封層3との強固な接着強度が得られる。また、キャップ製造工程でのライニングは、キャップ本体104と別成形のライナー1を整列及び挿入するだけとなり、簡易な工程でキャップ100の作製が可能になる。さらに、キャップ本体104とは別にライナー1を作製できるため、ライナー1の成形品をストックしておくことができる。
【0031】
また、2色成形により、摺動層2を、円板状に成形し、密封層3を、摺動層2と中心を同じくして円環状に成形するので、高い接着強度を有して円環状の密封層3を円板状の摺動層2上に形成することができる。また、密封層3を円環状に成形するので、樹脂使用量をさらに削減することができる。
【0032】
次に、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法の第2から第5実施形態について、
図6から
図9を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、厚さが一定な円板状の摺動層2上に円環状の密封層3を2色成形で作製するのに対し、第2実施形態のキャップ用ライナー21の製造方法では、
図6に示すように、2色成形により、摺動層22を、円環状の凹部22aを有した円板状に成形し、密封層23を、凹部22a内に密封層用溶融樹脂を埋め込んで成形する点である。
【0034】
すなわち、第2実施形態の製造方法で作製されたライナー21は、密封層23側の表面が平坦面となっている。
このように第2実施形態では、2色成形により、摺動層22を、円環状の凹部22aを有した円板状に成形し、密封層23を、凹部22a内に密封層用溶融樹脂を埋め込んで成形するので、摺動層22内に密封層23を埋め込んだライナー21を容易に作製することができる。このように製作したライナー21は、密封層23が摺動層22から突出していないため、全体として薄くなり、絞り加工部を弱化させ、低荷重でのキャッピングにも対応可能になる。また、密封層23が周囲の摺動層22に拘束され、流動や変形がし難くなることで、シール性を増すことができる。さらに、凹部22aを設けた分だけ摺動層22の樹脂を削減するが可能になる。
【0035】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、有底の凹部22aが摺動層22に形成され密封層23が埋め込まれるのに対し、第3実施形態のキャップ用ライナー31の製造方法では、
図7に示すように、摺動層32に複数の貫通孔32bを形成し、各貫通孔32b内に密封層33を埋め込む点である。なお、
図7の(a)は、貫通孔32bを通る破断面における断面図である。
すなわち、第3実施形態では、
図7の(b)に示すように、周方向に均等な間隔で6カ所に凹部32aが形成され、その底部の一部に貫通孔32bが形成されている。さらに、各貫通孔32bで密封層33が天板部102側の裏面にまで露出している。なお、貫通孔32bの数や面積は、必要とする開栓トルク等に応じて適宜設定される。
【0036】
このように、第3実施形態のキャップ用ライナー31の製造方法では、2色成形により、摺動層32に複数の貫通孔32bを形成し、各貫通孔32b内に密封層33を埋め込むので、摺動層32の裏面(天板部102側)まで密封層3が一部貫通して、貫通した密封層33の天板部102側の面積に応じてキャップ本体104との摺動抵抗を増し、開栓トルクを向上させる調整が可能になる。
【0037】
次に、第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、天板部102側の裏面を平坦面としたのに対し、第4実施形態のキャップ用ライナー41の製造方法では、
図8に示すように、摺動層形成工程で、摺動層42の天板部102側の面に溝部42aを同時に成形する点である。すなわち、第4実施形態では、天板部102側の裏面に摺動層42と中心を同じくした円環状の複数の溝部42aを形成する。
【0038】
このように第4実施形態のキャップ用ライナー41の製造方法では、摺動層形成工程で、摺動層42の天板部102側の面に溝部42aを同時に成形するので、摺動層42と天板部102との接触面積を減らして、キャップ本体104との摺動抵抗を減らすことで開栓トルクを下げる調整が可能になる。
【0039】
次に、第5実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、摺動層2の密封層3より内側の面が平坦面であるのに対し、第5実施形態のキャップ用ライナー51では、摺動層形成工程で、摺動層52の天板部102側とは反対面に中心に向けて漸次深く形成された中央凹部52aを成形する点である。
すなわち、第5実施形態では、2色成形時に、
図9の(a)に示すように、摺動層52の中心に向けて漸次深くなる中央凹部52aが、円環状の密封層3の内側に平面視円形状に形成される。
【0040】
また、第5実施形態では、摺動層形成工程で、摺動層52の天板部102側とは反対面に文字、記号、模様及び図形の少なくとも一つを凹凸で表した表示部52bを成形する点でも第1実施形態と異なっている。
すなわち、第5実施形態では、2色成形時に、
図9の(b)に示すように、中央凹部22aの中心付近に、例えば星印及び「あたり」の文字等が凹凸で示された表示部52bが成形される。
【0041】
したがって、第5実施形態のキャップ用ライナー51では、摺動層形成工程で、摺動層52の天板部102側とは反対面に中心に向けて漸次深く形成された中央凹部52aを成形するので、中央凹部52aを摺動層52成形時に同時に形成することができると共に、中央凹部52aによって液溜まりを無くし、開栓時の液垂れを防止することができる。また、中央凹部52aを形成した分だけ摺動層52の樹脂量を削減することができる。
【0042】
また、摺動層形成工程で、摺動層52の天板部102側とは反対面に文字、記号、模様及び図形の少なくとも一つを凹凸で表した表示部52bを同時に成形するので、成形金型により多様な表示部52bを摺動層52の形成と同時に形成することができ、セールスプロモーションに用いることができる。なお、成形金型のキャビティの数相応のデザインを表示部52bとして成形することが可能である。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,21,31,41,51…キャップ用ライナー、2,22,32,42,52…摺動層、2a…摺動層用溶融樹脂、3,23,33…密封層、3a…密封層用溶融樹脂、22a…凹部、32b…貫通孔、42a…溝部、52a…中央凹部、52b…表示部、99…容器本体、100…キャップ、101…口部、102…天板部、103…筒状周壁部、104…キャップ本体