(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864968
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20210419BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20210419BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20210419BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K9/70 401
A61K47/12
A61K47/32
A61P25/28
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-535645(P2018-535645)
(86)(22)【出願日】2017年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2017029697
(87)【国際公開番号】WO2018038022
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-161730(P2016-161730)
(32)【優先日】2016年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000161714
【氏名又は名称】救急薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二谷 章大
【審査官】
藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−508728(JP,A)
【文献】
特開昭59−216818(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/087926(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/099966(WO,A1)
【文献】
特開2011−020997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A61K 31/27
A61K 9/70
A61K 47/12
A61K 47/32
A61P 25/28
・DB
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、薬物含有粘着剤層及び剥離ライナーを有する非水系貼付剤であって、薬物含有粘着剤層が、リバスチグミン、炭素数20〜24の飽和脂肪酸0.3質量%以上、並びにスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンを含むゴム系粘着剤を含有する非水系貼付剤。
【請求項2】
リバスチグミンを薬物含有粘着剤層中に10〜25質量%含有する請求項1記載の非水系貼付剤。
【請求項3】
炭素数20〜24の飽和脂肪酸の含有量が、薬物含有粘着剤層中に0.3〜1質量%である請求項1又は2記載の非水系貼付剤。
【請求項4】
炭素数20〜24の飽和脂肪酸が、ベヘニン酸である請求項1〜3のいずれか1項記載の非水系貼付剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の非水系貼付剤の製造法であって、
薬物含有粘着剤層の製造工程が、酢酸エチルにリバスチグミン、炭素数20〜24の飽和脂肪酸0.3質量%以上及びゴム系粘着剤を溶解/混和して塗工液を得、塗工後に酢酸エチルを留去して得る工程であり、
ゴム系粘着剤として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とポリブテンに溶解したポリイソブチレンとを併用することを特徴とする製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リバスチグミンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であり、アルツハイマー型認知症治療薬として用いられている。その投与形態は、貼付剤である。
リバスチグミン含有貼付剤としては、(裏打ち層)/(薬物貯蔵層)/(シリコンポリマーを含む接着層)からなる経皮吸収治療システム(特許文献1)、(被覆層)/(有効成分層)/(薬物放出制御膜)/(接着層)/(剥離層)からなる経皮治療システム(特許文献2)が報告されている。しかし、これらの製剤は、製剤構成が複雑であり、製造工程も複雑となるため、製造コストが高くなったり、製剤が厚くなるため貼付性が悪くなる問題を有している。
【0003】
一方、(支持体)/(薬物含有粘着層)/(ライナー)からなる、いわゆるマトリックス型のリバスチグミン貼付剤としては、次のものが知られている。(1)有機酸を薬物含有層に配合することによって、抗酸化剤を使用しなくても、リバスチグミンの酸化分解が抑制された、リバスチグミンのアクリル系粘着剤を用いた貼付剤(特許文献3)、(2)不揮発性炭化水素油を大量に添加し、粘着付与剤を添加しないことで皮膚刺激性を抑えた、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)系基剤のリバスチグミンの貼付剤(特許文献4)、(3)SIS、粘着付与樹脂及び可塑剤からなり、有機酸または有機酸塩を含まない粘着剤にリバスチグミンを添加した貼付剤(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−517468号公報
【特許文献2】特表2014−503523号公報
【特許文献3】特開2016−069287号公報
【特許文献4】再表2013−187451号公報
【特許文献5】特表2014−508728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5の実施例の結果から製剤中の薬物濃度、薬物層の厚さ、粘着付与樹脂の種類によりリバスチグミンの皮膚透過性が大きく変わることが分かる。特に、薬物層の厚さを変更することは、製剤重量や製剤の剛性が変化し、貼付感に影響することが考えられる。
従って、本発明の課題は、貼付剤の粘着性に悪影響を与えることなく、リバスチグミンの皮膚透過性を向上できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、マトリックス型の貼付剤の粘着性を低下させることなく、リバスチグミンの皮膚透過性を向上させる成分について種々検討した結果、ゴム系基剤に0.3質量%以上という少量の長鎖脂肪酸の添加により、粘着性に優れ、かつリバスチグミンの皮膚透過速度が高い非水系貼付剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕支持体、薬物含有粘着剤層及び剥離ライナーを有する非水系貼付剤であって、薬物含有粘着剤層がリバスチグミン、炭素数20〜24の飽和脂肪酸0.3質量%以上及びゴム系粘着剤を含有する非水系貼付剤。
〔2〕ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンを含有する粘着剤である〔1〕記載の非水系貼付剤。
〔3〕リバスチグミンを薬物含有粘着剤層中に10〜25質量%含有する〔1〕又は〔2〕記載の非水系貼付剤。
〔4〕炭素数20〜24の飽和脂肪酸の含有量が、薬物含有粘着剤層中に0.3〜1質量%である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非水系貼付剤。
〔5〕炭素数20〜24の飽和脂肪酸が、ベヘニン酸である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非水系貼付剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリバスチグミン含有非水系貼付剤は、リバスチグミンの皮膚透過速度が高く、かつ粘着力が改善しており、長時間薬効が維持できる貼付剤である。また、炭素数20〜24の飽和脂肪酸の添加量が少ないため、薬物層の厚さが薄く、製剤重量や製剤剛性も変化せず貼付感も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】各実施例、比較例のリバスチグミンの皮膚透過速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の貼付剤は、薬物含有粘着剤層が、リバスチグミン、炭素数20〜24の飽和脂肪酸0.3質量%以上、及びゴム系粘着剤を含有する。
【0012】
薬物含有粘着剤層には、有効成分としてのリバスチグミンを含有する。リバスチグミンの含有量は、有効血中濃度を得る点及び皮膚刺激性を防止する点から、薬物含有粘着剤層中に10〜25質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
【0013】
本発明貼付剤の薬物含有粘着剤層には、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を0.3質量%以上含有する。当該脂肪酸としては、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸が挙げられるが、ベヘニン酸が特に好ましい。当該脂肪酸を0.3質量%以上含有することにより、リバスチグミンの皮膚浸透速度は向上し、かつ粘着力は改善する。当該脂肪酸の含有量が0.3質量%未満では、粘着力が低下し、また十分なリバスチグミンの皮膚透過度の向上は得られない。皮膚透過速度の向上及び粘着力の改善の点、並びに粘着剤の軟化を防止する点から、好ましい当該脂肪酸の含有量は0.3〜1質量%であり、より好ましくは0.3〜0.9質量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.8質量%であり、よりさらに好ましくは0.3〜0.7質量%である。
【0014】
薬物含有粘着剤層の基剤は、ゴム系粘着剤が好ましい。ゴム系粘着剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、生ゴム等が挙げられる。
中でも、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)が好ましく、ポリイソブチレン(PIB)を併用するのが良好な貼付感を得る上で好ましい。
【0015】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としてはクレイトン社製のD1111、D1113、D1119、D1161、D1165等、JSR社製のSIS5002、SIS5250、SIS5505等、日本ゼオン社製のクインタック3620、クインタック3433、クインタック3520、クインタック3450、クインタック3280等が挙げられる。
【0016】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有量は粘着剤層の保形性、剥れ防止の点から、薬物含有粘着剤層中に25〜60質量%が好ましく、30〜45質量%がより好ましい。
また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体はスチレンとイソプレンの重合比が異なるグレードを併用することにより、粘着剤の硬さを調整することができる。
ポリイソブチレンの含有量は、良好な貼付感を得る点、保存中の粘着剤はみ出し防止の点から、薬剤含有粘着剤層中には0.5〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
尚、ポリイソブチレンを用いる場合は、ポリイソブチレン1質量部に対して、1質量部以上、より好ましくは2質量部以上のポリブテンを添加することが好ましい。
後述するように、ポリイソブチレンをポリブテンに溶解することで、溶媒に酢酸エチルを用いた溶剤法においても塗工液の溶解時間を短くすることができ、薬物への熱負荷を低減できる。
【0017】
本発明貼付剤の薬物粘着剤層には、さらに粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、経皮吸収促進剤、酸化防止剤、賦形剤等を含有させることができる。
【0018】
粘着付与剤としては、水素添加ロジングリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、エステルガム、ロジン、フェノール樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂が挙げられる。中でも、水素添加ロジングリセリンエステルが好ましい。粘着付与剤の薬物含有粘着剤層中の含有量は30〜50質量%が好ましく、35〜45質量%がより好ましい。
【0019】
可塑剤、軟化剤としては、ポリブテン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、スクワラン、スクワレン、ヒマシ油等が挙げられる。可塑剤、軟化剤の薬物含有粘着剤層中の含有量は、1〜10質量%が好ましく、1〜6質量%がより好ましい。
【0020】
経皮吸収促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチル等の脂肪酸エステル;モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール等の多価アルコール脂肪酸エステル;ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0021】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、エデト酸ナトリウム、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等が挙げられる。中でも、リバスチグミンの安定化に加え、製剤の変色抑制効果の点でベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾールが好ましい。賦形剤としては、カオリン、タルク、ベントナイト、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
本発明貼付剤の支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、エチレンビニルアルコール等のプラスチックフィルム単体;粘着剤を装着しやすいように、これらプラスチックフィルムの表面に放電コロナ処理を行ったもの;粘着剤を装着しやすいように、これらプラスチックフィルムにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の不織布を貼り合せたものが挙げられる。
中でも、薬物が吸着しにくくバリア性が高いこと、粘着剤の装着性と視認性が良いことなどから、ポリエチレンテレフタレートフィルムにポリエチレンテレフタレート不織布を貼り合せたものが好ましい。
【0023】
本発明貼付剤の剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムにシリコーン処理又はフッ素処理を施したものが挙げられる。
【0024】
本発明貼付剤の製造方法としては、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の有機溶媒に処方成分を溶解/混和し、塗工後に有機溶媒を留去する溶剤法;基剤成分を熱溶融させた後、有効成分等を添加し、それを塗工するホットメルト法が挙げられる。
この内、薬物への熱負荷を低減できる点から溶剤法が好ましい。
更に、溶剤法に用いる有機溶媒は医薬品の残留溶媒ガイドライン(医薬審第307号)等に示されているように、溶媒の毒性の点から酢酸エチルが好ましい。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0026】
(1)貼付剤の作成
表1に示した処方の製剤を下記の方法で作成した。
(塗工液の調製)
実施例1〜3及び比較例1〜2
ポリイソブチレン(PIB、粘度平均分子量50000)をポリブテン(数平均分子量720)に加え、撹拌混合(80℃)しPIB溶解物とした。
酢酸エチルにリバスチグミン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加ロジングリセリンエステル(Hydrogenated Rosin Glycerol Ester:HRGE)、ベヘニン酸及びPIB溶解物を加え、撹拌溶解(60℃)し塗工液を得た。尚、溶解に要した時間は2時間以内であった。
【0027】
実施例4
酢酸エチルにリバスチグミン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加ロジングリセリンエステル(Hydrogenated Rosin Glycerol Ester:HRGE)、ベヘニン酸、PIB及びポリブテンを加え、撹拌溶解(60℃)し塗工液を得た。尚、撹拌時間2時間ではPIBの溶け残りがあり、溶解に要した時間は4時間であった。
【0028】
尚、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)はスチレン比率22%のもの(SIS(1))を単独又は、スチレン比率16%のもの(SIS(2))と併用した。
【0029】
(塗工乾燥及び裁断)
塗工液をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレートのシリコーン処理面に、塗工液を塗工し、65℃の温風を当てて乾燥し粘着剤層を得た。粘着剤層に支持体をラミネート後22.6mm×22.6mm、R=3.5mmに裁断し貼付剤を得た。別に、幅10mm、長さ22.6mmの大きさに裁断し、粘着力試験試料とした。
支持体にはポリエチレンテレフタレートのフィルムに、ポリエチレンテレフタレートの不織布貼り合せたものを用いた。尚、不織布面に粘着層が適用されるようにした。
塗工量は貼付剤1枚中のリバスチグミンの量が9mgとなるように調整した。
【0030】
(2)皮膚透過試験
雄性ヘアレスマウス7週齢の腹部摘出皮膚を、横型拡散セル(Chem. Pharm. Bull. 37(5), 1404-1406, 1989)に装着し、角質層側には所定の製剤試料を適用した。
一方、レシーバー側(真皮層側)には受容液として等張リン酸緩衝液(pH7.4)2.5mLを適用した。
試験中受容液は、32℃に保ち、マグネティックスターラーを用いて撹拌を行った。
所定の時間に受容液1mLを採取し、試料溶液とした。試料溶液採取後、直ちに新しい等張リン酸緩衝液1mLを補液した。
試料溶液中のリバスチグミンは高速液体クロマトグラフ法により定量し、リバスチグミンの累積透過量(μg/cm
2)を求めた。
更に、試験開始後4、6及び8時間目の累積透過量と時間の関係から、最小二乗法によりリバスチグミンの透過速度(μg/cm
2/h)を求めた。
【0031】
(3)粘着力試験
引張り試験機(テクスチャー アナライザーTA.XT plus、英弘精機株式会社)を用いて、下記の手順で測定を行った。
37℃の恒温器中で保管しておいたフェノール樹脂製の試験板に、粘着力試験試料(幅10mm、長さ22.6mm)を一端を合わせて貼付した。貼付した粘着力試験試料の上を、質量850gのゴムローラーを2回通過させた後、これを37℃の恒温器に入れ30分間静置した。次に、室温で15分間静置した後粘着力を測定した(
図1参照)。
測定は粘着力試験試料の幅10mmの一辺を180°に折り返して引張り試験機にセットし、300mm/分の速さで連続的に引き剥がしたときの荷重の平均値を求め、粘着力(g/10mm)とした。
【0032】
(4)試験結果
表2には皮膚透過試験及び粘着力試験の結果を示した。また、
図2及び
図3には結果を図示した。
比較例1にベヘニン酸を0.1質量%添加した比較例2では皮膚透過速度及び粘着力の向上はわずかであったが、0.3質量%以上添加した場合、明らかな向上が認められた。
また、塗工液の調製の部分で示したように、PIBをポリブテンに溶解した後、酢酸エチルに加えることで、塗工液の溶解時間を半分以下にすることができた。
これは、PIBは酢酸エチルに対して不溶性であり、一方SISを溶解した酢酸エチルには溶解するためである。酢酸エチルにSISが溶解することで、液の極性が低下しPIBが溶解したと考えられる。
即ち、SISが酢酸エチルに溶解するまでの時間分だけ、溶解時間が短縮できたと考えられる。
このようにすることで、塗工液の調製工程における、時間を短縮、即ち薬物への熱負荷を低減できる。このことは、リバスチグミンのように熱安定性の悪いことが知られている薬物には、特に有用である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
製剤例1〜2
表3に示した処方の製剤を、実施例1〜3と同様の方法で作成した。尚、メルカプトベンズイミダゾール又はベンゾトリアゾールは酢酸エチルに溶解した。
【0036】
【表3】