特許第6865049号(P6865049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6865049連続鋳造用モールドパウダー及び鋼の連続鋳造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865049
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】連続鋳造用モールドパウダー及び鋼の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/108 20060101AFI20210419BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20210419BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20210419BHJP
   C21C 7/076 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   B22D11/108 F
   B22D11/00 A
   C22C38/00 301Z
   C21C7/076 P
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-15477(P2017-15477)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-122326(P2018-122326A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼平 信幸
(72)【発明者】
【氏名】西川 晃平
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕樹
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−186813(JP,A)
【文献】 特開昭63−010052(JP,A)
【文献】 特開2009−039745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00〜11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含有する鋼を連続鋳造する際に用いられる連続鋳造用モールドパウダーであって、
LiOの含有量が0.5mass%以上5.0mass%以下の範囲内とされ、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなる組成とされており、鋳造中に前記鋼中のAlと前記連続鋳造用モールドパウダー中のSiOの反応が進行してもCa12Al1432の生成が促進されることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。
【請求項2】
Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含有する鋼を連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、
請求項1に記載の連続鋳造用モールドパウダーを使用し、鋳型内において生成されるパウダーフィルムの結晶層をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなるように組成を構成し、鋳造中に前記鋼中のAlと前記連続鋳造用モールドパウダー中のSiOの反応が進行しても、Ca12Al1432の生成を促進させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含む鋼を連続鋳造する際に用いられる連続鋳造用モールドパウダー、及びこの連続鋳造用モールドパウダーを用いた鋼の連続鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造を行う際には、鋳型内の溶鋼湯面上に連続鋳造用モールドパウダー(以下、「モールドパウダー」と記載する場合がある)が添加される。このモールドパウダーは、鋳型内の溶鋼表面において溶融して鋳型壁と凝固殻との間に流入する。そして、モールドパウダーは、鋳型壁と凝固殻との間でパウダーフィルムを形成し、鋳型と凝固殻の間で潤滑作用を奏する。
【0003】
ここで、モールドパウダーの鋳型と凝固殻間への流入が阻害され、潤滑作用が損なわれた場合には、鋳型と凝固殻が焼き付き、鋳造後に鋳片表面の手入れが必要となる品質不良や最悪の場合にはブレークアウトの発生を招くおそれがあった。このため、鋳型内において鋳片の凝固均一性を高めて、鋳型内での抜熱を安定的に制御することは非常に重要である。
【0004】
また、Alを含む鋼を連続鋳造する場合には、溶鋼中のAlによってモールドパウダーの主成分であるSiOが還元され、モールドパウダー中のAlの比率が増加するとともにSiOの比率が減少し、鋳造中にモールドパウダーの粘度等の特性が変化してしまい、安定して鋳造を行うことができないといった問題があった。また、モールドパウダー中のAlの比率が増加するとともにSiOの比率が減少することにより、溶融したモールドパウダーが鋳型と凝固殻間へ流入してパウダーフィルムを形成した際に、パウダーフィルムの結晶層に高融点のゲーレナイト相(CaAlSiO)が生成し、モールドパウダーの鋳型と凝固殻間への流入および潤滑性が阻害され、抜熱が不安定となり、鋳片の割れが発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、特許文献1においては、予め高融点のゲーレナイト相が生成する組成とし、鋳造中のモールドパウダーの特性の変化を抑制したものが提案されている。
また、特許文献2には、溶融後に凝固した際に、析出量が最大である結晶組成がメリライトとなる連続鋳造用モールドフラックスが提案されている。メリライトは、ゲーレナイトとアケルマナイトとの全率固溶体であることから、Alの含有量が変化しても、ゲーレナイトとアケルマナイトとの比率が変化するのみであって全体としてメリライトのままであり、鋳造中におけるモールドパウダーの特性の変化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−076049号公報
【特許文献2】特開2004−223599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたモールドパウダーにおいては、鋳造中におけるモールドパウダーの特性の変化は小さいものの、高融点のゲーレナイト相が生成することから、モールドパウダーの流入性や潤滑性が阻害され、鋳型内における抜熱が安定しないおそれがあった。
また、特許文献2に記載されたモールドパウダーにおいては、メリライトを積極的に生成させているが、上述のようにメリライトは、ゲーレナイトとアケルマナイトとの全率固溶体であることから、組成によっては高融点のゲーレナイトが生成してしまい、やはり、モールドパウダーの流入性や潤滑性が阻害され、鋳型内における抜熱が安定しないおそれがあった。
【0008】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、Alを含有する鋼を連続鋳造する際に、パウダーの流入性や潤滑性が阻害されず、安定して連続鋳造を行うことが可能な連続鋳造用モールドパウダー、及び、Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含む鋼を安定して連続鋳造することができる鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る連続鋳造用モールドパウダーは、Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含有する鋼を連続鋳造する際に用いられる連続鋳造用モールドパウダーであって、LiOの含有量が0.5mass%以上5.0mass%以下の範囲内とされ、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなる組成とされており、鋳造中に前記鋼中のAlと前記連続鋳造用モールドパウダー中のSiOの反応が進行してもCa12Al1432の生成が促進されること特徴としている。
【0010】
この構成の連続鋳造用モールドパウダーによれば、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなる構成とされていることから、鋳造中に鋼中のAlとモールドフラックス中のSiOの反応が進行しても、Ca12Al1432の生成が促進されることになり、これによりCa、Alが消費され、高融点のCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成が抑制される。
【0011】
本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含有する鋼を連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、上述の連続鋳造用モールドパウダーを使用し、鋳型内において生成されるパウダーフィルムの結晶層をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなるように組成を構成し、鋳造中に前記鋼中のAlと前記連続鋳造用モールドパウダー中のSiOの反応が進行しても、Ca12Al1432の生成を促進させることを特徴としている。
【0012】
この構成の鋼の連続鋳造方法においては、鋳型内において生成されるパウダーフィルムの結晶層をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなるように構成されているので、鋳造中に鋼中のAlとモールドフラックス中のSiOの反応が進行しても、パウダーフィルムの結晶層においてCa12Al1432の生成が促進されることになり、これにより、Ca、Alが消費され、高融点のCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成が抑制される。これにより、モールドパウダーの流入性や潤滑性が阻害されず、安定して鋳造を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明によれば、Alを含有する鋼を連続鋳造する際に、パウダーの流入性や潤滑性が阻害されず、安定して連続鋳造を行うことが可能な連続鋳造用モールドパウダー、及び、Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含む鋼を安定して連続鋳造することができる鋼の連続鋳造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明例パウダーおよび従来例パウダーにおけるX線回折分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態である連続鋳造用モールドパウダー及び鋼の連続鋳造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーは、SiO及びCaOを主成分とし、さらにAl、NaOを含んでいる。なお、MgOの含有量は 5mass%以下に制限されている。また、SrOを10mass%以下の範囲で含有していてもよい。
そして、本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーは、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなる構成とされている。
【0017】
ここで、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させるのは、鋳造中において、鋼中のAlがモールドパウダー中のSiOを還元してモールドパウダーの組成が変化した際に、鋳型内に形成されるパウダーフィルムの結晶層を模擬して評価するためである。
鋼中のAlとモールドパウダー中のSiOは、以下の式で反応が進行する。
SiO+4/3Al=Si+2/3Al
【0018】
上述の式から、SiOが1mol消費されると、Alが2/3mol生成することになる。よって、連続鋳造用モールドパウダーの組成を考慮することにより、溶融する前の組成から質量比で20%分増加させたAlに相当するSiOの質量比を算出することができる。
【0019】
上述のようにして、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕する。
【0020】
そして、X線回折分析装置により、測定試料の結晶相の種類および強度を測定する。なお、X線回折分析を行う際には、Cuターゲットを用い、50kV、200mAの条件で、測定範囲(2θ)は10〜100°、測定速度は1°/分とした。
このとき、本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーにおいては、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiO(ゲーレナイト)の第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなるように構成されている。
【0021】
次に、本実施形態である鋼の連続鋳造方法について説明する。本実施形態で対象となる鋼は、Alを質量比で0.1%以上0.8%以下の範囲で含有するとともに、Cを質量比で0.01%以上0.08%以下の範囲で含有するものである。C量が0.08%を超えると、凝固モードが包晶反応に変わるためである。これに対して、本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーにおいては、結晶層の生成を抑制して流動性を確保するものであり、包晶反応域の炭素鋼に用いることは困難である。よって、本実施形態において対象とする鋼のC量を0.08%以下に制限している。
【0022】
本実施形態である鋼の連続鋳造方法においては、上述した本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーを用いる。
このとき、鋳型内の溶鋼の上に形成されるモールドパウダーの溶融層厚さが5mm以上20mm以下の範囲内となるように、モールドパウダーを添加する。
【0023】
ここで、上述のように、溶鋼中のAlがモールドパウダー中のSiOを還元してモールドパウダーの組成が変化する。本実施形態では、モールドパウダーの組成が変化した場合でも、溶融したモールドパウダーの粘度は、1300℃で0.5poise以上3.0poise以下の範囲内であることが好ましい。0.5poiseより低いと過流入や膜切れを、3.0poiseより高いと潤滑不良をそれぞれ引き起こす。
さらに、モールドパウダーの塩基度T.CaO/SiOが1.0以上1.3以下の範囲内とされていることが好ましい。塩基度が1.0より低いと溶鋼中へのパウダー巻き込みが増加し、また、塩基度が1.3より高いとゲーレナイトが容易に形成されやすくなる。なお、T.CaOは、モールドパウダー中のCaがすべてCaOであるとして算出したものである。
【0024】
Alは5mass%以下が好ましい。5mass%より高いとゲーレナイトが容易に形成されやすくなる。
MgOは5mass%以下が好ましい。5mass%より高いと、Alと共に高融点側のメリライトを生成しやすくなる。
NaOは12mass%以下が好ましい。12mass%より高いと、FがNaFを形成しやすくなり、Ca12Al1432が十分に形成されず、ゲーレナイトの晶出を抑制できない。
Fは8mass%以上が好ましい。 8mass%より低いとCa12Al1432が十分に形成されず、ゲーレナイトの晶出を抑制できない。
LiOは含有しなくても良いが、より好ましくは0.5mass%以上である。融解したモールドフラックスに冷却中に晶出する結晶の種類やピーク強度は、冷却速度やフラックスフィルムの中の温度のばらつきなどにより変化しやすいが、LiOが0.5mass%以上あるとそのばらつきを抑制し、安定した結晶化挙動を確保できる。
また、SrOは含有しなくても良いが、より好ましくは1mass%以上10mass%以下の範囲内である。
【0025】
そして、本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーを使用することにより、鋳型と凝固殻との間には、ガラス層と結晶層を有するパウダーフィルムが形成される。このパウダーフィルムを破砕して測定試料とし、X線回折分析装置により、測定試料の結晶相の種類および強度を測定する。なお、X線回折分析を行う際には、Cuターゲットを用い、50kV、200mAの条件で、測定範囲(2θ)は10〜100°、測定速度は1°/分とした。
このパウダーフィルムにおいては、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiO(ゲーレナイト)の第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなっている。すなわち、本実施形態では、パウダーフィルムの結晶層において、Ca12Al1432の生成が促進され、高融点であるCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成が抑制されている。
【0026】
以上のような構成とされた本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーによれば、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した結果、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなる構成とされていることから、鋳造中に鋼中のAlとモールドフラックス中のSiOの反応が進行しても、高融点のCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態である連続鋳造用モールドパウダーにおいては、MgOの含有量が5mass%以下に制限されているので、Ca12Al1432の生成をさらに促進することができ、高融点のCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成をさらに抑制することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態である鋼の連続鋳造方法によれば、上述の連続鋳造用モールドパウダーを用いており、パウダーフィルムにおいては、回折X線強度の第1ピーク高さの比較において、CaAlSiOの第1ピーク高さが、Ca12Al1432の第1ピーク高さよりも低くなっているので、鋳型内において生成されるパウダーフィルムの結晶層において、Ca12Al1432の生成が促進され、高融点であるCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成が抑制されており、モールドパウダーの流入性および潤滑性が確保され、抜熱が安定することになる。
【0028】
以上、本発明の実施形態である連続鋳造用モールドパウダー及び鋼の連続鋳造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。
連続鋳造設備を用いて、表1に示す組成の鋼の連続鋳造を行った。なお、鋳造条件としては、鋳片厚さ240mm、鋳片幅1200mm、定常鋳造速度を1.2m/minとした。このとき、鋳型内に添加する連続鋳造用モールドフラックスとして、本発明例パウダー及び従来例パウダーを用いた。
【0030】
【表1】
【0031】
ここで、従来例パウダー及び本発明例パウダーについて、上述の実施形態で記載した方法で、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した結果を図1に示す。
【0032】
従来例パウダーは、図1(b)に示すように、CaAlSiO(ゲーレナイト)の第1ピーク高さが、Ca12Al1432やCaSi(カスピダイン)等の他の結晶相よりも高くなっていることが確認される。
一方、本発明例パウダーは、図1(a)に示すように、CaAlSiO(ゲーレナイト)の第1ピーク高さが、Ca12Al1432やCaSi(カスピダイン)よりも低くなっていることが確認される。
【0033】
ここで、鋳型に埋め込んだ熱電対で温度変化を確認した。なお、熱電対は、鋳片の長辺側の一方の面(F面)と他方の面(L面)の幅中央位置において、それぞれ深さ150mm位置及び深さ400mm位置に配置した。
湯面高さに相当する深さ150mmの位置では、温度変化が少なかった。一方、凝固殻が形成されている深さ400mm位置では、鋳造時間が経過するにつれて温度が低下しており、パウダーフィルムの結晶化によって抜熱が低下したことが確認された。
【0034】
そして、深さ400mm位置の温度変化においては、従来例パウダーを用いた場合、鋳型温度が大きく変動し、F面とL面での温度差も大きくなった。パウダーフィルムに高融点のCaAlSiO(ゲーレナイト)が多く存在し、パウダーの流入性および潤滑性が損なわれたためと推測される。
これに対して、本発明例パウダーを用いた場合、深さ400mm位置においても、鋳型温度の変動が比較的安定していた。パウダーフィルムにおいて高融点のCaAlSiO(ゲーレナイト)の生成が抑制され、パウダーの流入性および潤滑性が確保されたためと推測される。
【0035】
また、本発明例パウダー及び従来例パウダーを用いた際に形成されたパウダーフィルムを観察した。
従来例パウダーを用いた場合には、パウダーフィルムの結晶層にCaAlSiO(ゲーレナイト)が比較的多く存在していることが確認された。
一方、本発明例パウダーを用いた場合には、パウダーフィルムの結晶層にCa12Al1432が観察されており、CaAlSiO(ゲーレナイト)が少ないことが確認された。
これらの観察結果は、従来例パウダーおよび本発明例パウダーのX線回折分析結果と良く一致している。
【0036】
(実施例2)
次に、表2に示す組成のパウダーを準備し、このパウダーに対して、上述の実施形態で記載した方法で、溶融する前の組成からAlを質量比で20%分増加させるとともに、増加したAlに相当するSiOを減少させた後、1400℃で溶融して10℃/分で850℃まで冷却した後に室温まで空冷し、粉砕した試料をX線回折分析した。その結果を表2の「結晶」の欄に示す。X線回折分析の結果、Ca12Al1432のピーク高さとCaAlSiO(ゲーレナイト)のピーク高さを比較し、Ca12Al1432のピーク高さが高いものを「C」、CaAlSiO(ゲーレナイト)のピーク高さが高いものを「G」と表記した。
【0037】
本発明例1、2、参考例3及び比較例1−3については、表2に示す組成のパウダーに溶解速度調整用の骨材カーボンを、表2に示す組成に対して質量比で3%添加し、実施例1と同様の条件で鋳造実験を行った。
そして、深さ400mm位置における鋳型温度の変動を、鋳造開始から20〜60分間の1秒毎に測定した温度の分散値で評価した。最も変動が小さかった本発明例1の温度分散値を1として、本発明例2,参考例3及び比較例1−3については、本発明例1の何倍であったかを指標とした。
【0038】
【表2】
【0039】
溶解実験の結果、CaAlSiO(ゲーレナイト)のピーク高さが高いパウダーについては、鋳造実験の結果、鋳型温度の変動が大きくなった。
これに対して、溶解実験の結果、Ca12Al1432のピーク高さが高いパウダーについては、鋳造実験の結果も良好であった。
さらに、LiOを添加した本発明例1,2は、LiOを添加していない参考例3に比べて、鋳型温度の変動が抑えられていることが確認された。
【0040】
以上のことから、本発明例によれば、Alを含有する鋼を連続鋳造する際に用いられても、流入性や潤滑性が阻害されず、安定して連続鋳造を行うことが可能であることが確認された。
特に、LiOを添加したパウダーにおいては、鋳型温度の変動をさらに抑制することが可能であることが確認された。
図1