(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係る案内装置の一例について概要を説明する。ここでは、案内装置の一例として、駅で切符の販売等を行う券売機100について説明する。
【0022】
本実施形態に係る案内装置としての券売機100は、案内入力部1と、センサ入力部2と、制御部3と、案内出力部4とを備える。
【0023】
案内入力部1は、例えば券売機100を利用しようとする利用者によるタッチ入力を可能にするためのタッチパネルTPや、利用者が発生することに基づく音声入力を受け付け可能にするためのマイクMC等を有し、利用者の操作等による各種入力を受け付けて利用者の情報を取得可能とするためのインターフェース部を構成する。
【0024】
センサ入力部2は、例えばCMOSや赤外線等の人物の有無やその形状等を画像情報として取得可能なカメラCAを有して構成され、利用者の情報を装置自らが自発的・自動的に取得可能とするための感知機能部を構成する。本実施形態では、利用者の顔に関する画像データについて取得可能なものとする。
【0025】
制御部3は、券売機100を利用者に対する切符の販売等の案内を行う案内装置として機能させるための各種制御を行う。制御部3は、情報受付処理部10と、習熟度推定部20と、案内状態選択部30と、案内状態データ更新部40と、案内状態データベースDBとを備える。
【0026】
案内出力部4は、制御部3の案内状態選択部30において選択された状態に基づき利用者に案内を行うものであり、例えばスピーカーや液晶モニター等で構成され、これらによって音声出力や画像表示といった利用者に対する種々の出力動作を行う。
【0027】
以下、券売機100主要動作である切符販売の制御を行うための制御部3の各部について説明する。
【0028】
制御部3のうち、情報受付処理部10は、案内入力部1及びセンサ入力部2から取得した利用者に関する各種情報を受け付けるとともに受け付けた情報の処理を行う。このため、情報受付処理部10は、案内入力部1からの情報を受け付けるとともにこれらの信号処理を行う入力情報受付処理部11と、センサ入力部2からの情報を受け付けるとともにこれらの信号処理を行うセンサ情報受付処理部12とを有する。
【0029】
入力情報受付処理部11は、案内入力部1のタッチパネルTP等を介して利用者が切符を購入するために選択した事項に関する入力情報を処理する。また、例えば1つのタッチの動作から次のタッチの動作までにかかった時間の間隔等についても、利用者の情報として取得する。すなわち、入力情報受付処理部11は、利用者の操作による案内入力を受け付けた際の利用者の操作状況を取得する操作状況取得部としても機能する。
【0030】
センサ情報受付処理部12は、センサ入力部2のカメラCAで取得された画像の情報から利用者の有無に関する情報を処理する。また、例えばカメラCAで取得された利用者の顔の画像について顔認識機能等の画像解析手法を利用して、年齢や性別、国籍(日本人であるか否か)について解析(推測)して解析結果を利用者の情報として取得する。あるいは、利用者の表情やその変化についても捉え、利用者の情報として取得する。すなわち、センサ情報受付処理部12は、利用者の外観に関する情報を取得する外観情報取得部としても機能する。
【0031】
以上のように、情報受付処理部10は、案内入力部1やセンサ入力部2と協働して、利用者の動きを受動的に受け付けて利用者の情報として取得したり、積極的に利用者について感知して自動的に情報を取得したりする構成となっている。言い換えると、券売機100は、利用者の動きを受動的に受け付けて利用者の操作の素早さに関する情報を取得したり、積極的に利用者について感知して利用者の表情に関する情報を取得したりすることで、多種多様な利用者の情報取得を可能としている。
【0032】
習熟度推定部20は、利用者の利用状態に関する情報を取得し、当該情報に基づき習熟度を推定する。具体的には、習熟度推定部20は、例えば
図2に示すような利用者の習熟度を推定する一例としてのデータベースを有しており、情報受付処理部10のセンサ情報受付処理部12において取得された年齢や性別、国籍の情報について、当該データベースを参照することで、解析対象である利用者の習熟度を推定(判定)する。なお、本実施形態では、説明を簡略化するために、一例として、利用者の習熟度を「低」、「中」、「高」の三段階のいずれかに属するものとして分類する。すなわち、情報受付処理部10の利用者が、券売機100の操作にあまり慣れていない者(習熟度「低」)と推定されるか、標準的な操作能力を有する者(習熟度「中」)と推定されるか、操作に慣れている者(習熟度「高」)と推定されるか、のいずれかに定めるものとし、券売機100は、定められた習熟度毎に異なる態様で案内を行うものとなっている。なお、
図2に示す一例では、年齢が若いほど、また、女性より男性のほうが、外国人より日本人のほうが、一般的に習熟度が高いという設定としているが、あくまで説明を簡明にするためのものに過ぎず、案内内容や用途等によって、かかる場合に限らず、種々の場合(例えば低中高の関係が全く異なる場合)が生じ得ることは言うまでもない。
【0033】
案内状態選択部30は、習熟度推定部20において推定された習熟度に応じて利用者に対して案内する状態を選択する。また、案内状態選択部30は、1つの案内する状態から次の状態へ移るための状態の選択をするに際して、案内する状態についての一連のデータを有する案内状態データベースDBを参照する。なお、案内状態データベースDBは、案内に関するデータとして、案内するための状態に関する一覧のデータを格納している(
図5参照)。案内状態選択部30での選択によって、例えば
図3(A)〜3(C)に例示するような具体的案内表示が、案内出力部4を構成するパネル表示面PP上に示されるとともに、これらが操作に応じて変化していく。このような各段階での表示を行うに際して、案内に関する各項目の状態を管理するため、
図4に例示されるような案内に関する状態が逐一定められている。案内状態データベースDBは、このような案内に関して定められた各状態についてのデータを集約的に格納している。
【0034】
図1に戻って、案内状態データ更新部40は、案内状態データベースDBに格納されたデータの一部について更新を行う。案内状態データ更新部40によるデータ更新によって案内に関する状態のうち、変化のさせ方・手順等が変更され得るものとなっている。
【0035】
以下、
図3等を参照して、上記した案内する状態の変遷に基づく案内表示の変化の様子について概要を説明する。ここでは一例として、
図3(A)に示すように、券売機100は、「きっぷの購入」の表示画像BT1と「ICカードのチャージ」の表示画像BT2とをタッチパネルTPの機構が表面に付されたパネル表示面PP上に初期画面として表示する。ここで、例えば、利用者が「きっぷの購入」の表示画像BT1をタッチすると、例えば
図3(B)のような表示態様へと変化したり、
図3(C)のような表示態様へと変化したりする。ここでは、習熟度推定部20において、習熟度が「低」と推定された利用者に対しては、より丁寧な説明となるように、例えば
図3(B)のような表示態様へと変化する。一方、習熟度が「中」と推定された利用者に対しては、より効率的に操作ができるように、例えば
図3(C)のような表示態様へと変化する。このように、本実施形態では、習熟度に応じて状態変化(あるいは状態遷移)の順番や態様等が変動することで、習熟度が異なる多様な利用者に対してより操作しやすい案内を行うことができるものとなっている。なお、習熟度別の具体的動作例については、後述する。また、上記の動作において、案内を利用者に対して行う側である券売機100では、案内する状態が変化することになる。例えば券売機100の動作開始時に
図3(A)の表示がなされた場合において、「きっぷの購入」の表示画像BT1が利用者にタッチされると、
図4の左側に例示した一の状態へと遷移する。すなわち、何も決定事項が無かった状態から、図中左欄の項目のうち「目的」についての入力内容が「切符の購入」となっている状態へと移行する。すなわち、案内の目的は「切符の購入」であるが、具体的な駅名等については未確定な状態になる。なお、この場合、併せて図中左欄の項目が「目的」のほか「出発駅」等であることも併せて決定されたことになる。また、そのほかの案内する状態についての一例として、
図3(A)の表示がなされた場合において、「ICカードのチャージ」の表示画像BT2が利用者にタッチされると、
図4の右側に例示した他の一の状態へと遷移する。以上のように、券売機100は、利用者の入力動作等に応じて、案内する状態を一の状態から他の状態へと変化させていきつつ、案内する内容の管理を行っている。ただし、以上のような状態の変化において、表示態様については、
図3を参照して例示したように、習熟度に応じて異なるものとなる可能性もある。
【0036】
案内状態データベースDBは、以上のような案内状態選択部30による案内についての状態の変遷を可能にすべく、
図5に示すような一の状態から次の状態への状態変化を行う上での基準となる評価値に関するデータを案内する状態のデータとともにした一覧表を格納している。すなわち、
図5に示すように、案内状態データベースDBにおいて、評価値は、習熟度推定部20で推定された習熟度ごと(低中高の三段階)に格納されており、特に、案内する各状態、各状態において利用者の操作によってなされ得る入力内容及び操作を行う利用者の習熟度の組み合わせごとに格納されている。
【0037】
案内状態選択部30は、各状態とそれ応じた入力内容さらに利用者の習熟度ごとに選択可能な複数の状態の候補についての評価値を参照し、当該複数の状態の中から、次の状態として最も評価値の高い状態を最適なものとして選択する。
【0038】
案内状態データ更新部40は、案内状態データベースDBに格納されたデータの一部である上記評価値について更新を行う。案内状態データ更新部40は、例えば利用者の表情に関する情報や利用者の操作の素早さに関する情報を情報受付処理部10から取得して、案内状態データベースDB中の評価値を更新する際の情報として利用する。評価値の更新により、案内状態選択部30での選択基準が変化することで、複数の状態の候補すなわち複数ある表示態様の選択肢のうちから、利用者にもっとも好まれているものを選び出し、より快適な案内を利用者に受けさせることができる。
【0039】
以下、
図6に例示するフローチャートを参照して、券売機100における装置全体の処理の一例について説明する。
【0040】
まず、制御部3は、情報受付処理部10において、利用者の入力検出がなされたか否かを確認する(ステップS101)。ステップS101において、利用者の入力検出がなされない場合であっても(ステップS101:No)、センサ入力部2のカメラCAからの画像取得を行い(ステップS102a)、取得した画像において券売機100の利用者が検出されたか否かを確認する(ステップS103a)。ステップS103aにおいて利用者が検出されない場合(ステップS103a:No)、制御部3は、再び利用者の入力検出がなされたか否かを確認する(ステップS101)。一方、ステップS103aにおいて、利用者が検出された場合(ステップS103a:Yes)、制御部3は、習熟度推定部20において、利用者の習熟度推定を行う(ステップS104a)。なお、ステップS104aについて定義されている具体的処理動作の一例については、
図7を参照して後述する。さらに、制御部3は、利用者に対して、案内入力部1の操作等による入力を促すための案内出力を案内出力部4により行わせ(ステップS105a)、利用者によって入力操作がなされるのを待つ(ステップS106)。ステップS106において、利用者による入力動作がなされると、制御部3は、ステップS107以下の利用者との対話となる一連の動作SAを開始する。
【0041】
一方、ステップS101において、利用者の入力検出がなされた場合(ステップS101:Yes)、ステップS102aの場合と同様に、センサ入力部2のカメラCAからの画像取得を行い(ステップS102b)、取得した画像において券売機100の利用者の情報を取得し(ステップS103b)、ステップS104aの場合と同様に、利用者の習熟度推定を行い(ステップS104b)、ステップS107以下の利用者との対話となる一連の動作SAを開始する。なお、ステップS104bについて定義されている具体的処理動作の一例については、ステップS104aの場合と同様であり、同じく
図7を参照して後述する。また、この場合、ステップS101において利用者による入力動作がなされているので、ステップS105aのような入力を促す動作はなされない。
【0042】
次に、ステップS106における入力動作またはステップS104bでの習熟度の推定の動作を終えた制御部3は、一連の動作SAのうち最初の動作として、案内状態データ更新部40によって案内状態データベースDBのデータ更新の処理を行い(ステップS107)、さらに、案内に関して、案内状態選択部30によって現在の状態から次の状態へ変化させるための状態の決定の処理を行う(ステップS108)。なお、ステップS107,S108の動作の一例については、
図8〜10を参照してそれぞれ後述する。制御部3は、ステップS108において決定された状態に対応する案内を案内出力部4に行わせ(ステップS109)、案内終了となったかを確認し(ステップS110)、終了していなければ(ステップS110:No)、再び利用者による次の入力を待ち(ステップS106)、案内が終了する(ステップS110:Yes)まで、上記した一連の動作SAを繰り返すことで、利用者との対話を続け、案内する状態を順次変遷させていく。
【0043】
以下、
図7を参照して、上記の各処理のうち、ステップS104aまたはステップS104bの処理について一例を説明する。上述のように、ここでは、利用者の習熟度を推定する処理がなされる。このため、制御部3は、まず、利用者の顔を検出する(ステップS201)。すなわち、制御部3は、情報受付処理部10の入力情報受付処理部11において、カメラCAから取得した画像情報から利用者の顔の画像データを抽出する。さらに、制御部3は、抽出した画像データから利用者の属性を認識する(ステップS202)。ここでは、利用者の属性として、利用者の年齢、性別及び国籍(日本人であるか否か)について特定(推定)する。具体的には、入力情報受付処理部11において、顔認識に関する画像解析手法を用いて、抽出した利用者の顔の画像データから、利用者の上記属性を割り出す。例えば、髪形や、髪、皮膚、眼等の色、しわの数や目鼻口の配置等種々の関係から上記属性について特定し、利用者の情報として取得する。次に、上記属性に基づいて、利用者の習熟度を推定する(ステップS203)。すなわち、既述のように、習熟度推定部20が、上記属性について、例えば
図2に例示したデータベースとの照合によって利用者の習熟度が三段階のどこに属するかを推定(決定)する。
【0044】
以上が、ステップS104aまたはステップS104bにおける利用者の習熟度の推定処理の一例となる。
【0045】
次に、
図8及び
図9を参照して、
図6を参照して示した各処理のうち、ステップS107の処理について一例を説明する。上述のように、ここでは、案内状態データ更新部40による案内状態データベースDBのデータ更新の処理がなされる。案内状態データ更新部40は、案内状態データベースDBに格納されるデータのうち、評価値を変更する。このため、まず、案内状態データ更新部40は、
図8に示すように、習熟度推定部20から利用者の習熟度の情報を取得し(ステップS301)、さらに、案内状態選択部30から現在の状態の情報を取得して(ステップS302)、前提となる状況を把握する。次に、案内状態データ更新部40は、現在の状態となる直前の利用者の動作、すなわち現在の状態となる1つ前の状態から現在の状態になるまでの動作に基づいて当該直前動作に関するわかりやすさの度合いを算定する(ステップS303)。なお、このステップS303におけるわかりやすさの算定処理の一例については、
図9を参照して後述する。次に、案内状態データ更新部40は、ステップS303におけるわかりやすさについて、あらかじめ定めた閾値よりも高い値(大きい値)であるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304において、閾値よりも高い値であると判定された場合(ステップS304:Yes)、
図5に例示した案内状態データベースDBの評価値が入った各セルのうち、現在の状態となる1つ前の状態から現在の状態に至る際に選択された箇所に該当するセルの評価値を1つ上げる(+1)ように変更する(ステップS305)。一方、ステップS304において、閾値よりも高い値ではないと判定された場合(ステップS304:No)、該当するセルの評価値を1つ下げる(−1)ように変更する(ステップS306)。
【0046】
以下、
図9を参照して、上述した案内状態データベースDBのデータ更新の処理のうち、ステップS303に示すわかりやすさの度合いを算定するための処理の一例について説明する。まず、案内状態データ更新部40は、情報受付処理部10の入力情報受付処理部11から利用者の直前の入力動作の時刻t
1の情報を取得する(ステップS401)とともに、2つ前の入力動作の時刻t
2の情報を取得し(ステップS402)、さらに、これらの差Δt=t
1−t
2を求める(ステップS403)。すなわち、直前の入力動作に要した時間Δtを求める。この場合、時間Δtの値が小さいほど利用者が素早く動作した(入力選択した)ことを示しており、利用者にとってわかりやすいより好ましい状態であったことが推量される。ここでは、時間Δtの逆数1/Δtをとり、1/Δtの値が大きいほど好ましい状態であったと推量するものとする。なお、ステップS402において、2つ前の入力動作が存在しない最初の入力動作時においては、t
2=0とすればよい。
【0047】
一方、ステップS401〜ステップS403とは別に、案内状態データ更新部40は、情報受付処理部10のセンサ情報受付処理部12から入力動作時の利用者の顔の画像データを解析した結果としての利用者の表情あるいは表情の変化について認識する(ステップS404)。利用者の表情あるいは表情の変化については、予め点数が設定されており、例えば笑顔であった(あるいは笑顔に変わった)と判定された場合には+1、無表情であった(あるいは表情に変化がなかった)場合には±0、怒りや不満な顔あるいは困惑した顔であった(あるいは怒りや不満な顔等に変わった)と判定された場合には−1とし、ステップS404において認識された表情の情報について点数化を行う(ステップS405)。ここでは、点数化された値を表情点Seとする(ステップS405)。この場合、表情点Seの値が大きいほど好ましい状態であったと推量される。
【0048】
以上のようにして、算出された時間Δtと表情点Seとからわかりやすさの度合いを示す指数Cを定める(ステップS406)。すなわち、
図8のステップS303におけるわかりやすさが算定される。ここでは一例として、予め定めた固定値である重み付け係数a,bを用いて、線形結合の式C=a×1/Δt+b×Seで指数Cが定義されるものとする。この場合、指数Cの値が大きい(値が高い)ほど、好ましい状態であったと推量されることになる。したがって、
図8のステップS304において、指数Cが予め定めた閾値よりも大きければ、より好ましい選択であったとして評価値が上がり、逆に、指数Cが予め定めた閾値よりも大きくなければ、あまり好ましくない選択であったとして評価値が下がる。
【0049】
以上が、
図6のステップS107におけるデータ更新の処理の一例となる。なお、上記の例以外にも指数Cの定め方や指数Cを定めるためのパラメータは、種々のものが考えられ、上記のような利用者の表情に関する情報である表情点Seや利用者の操作の素早さに関する情報である時間Δtのほか、例えば同じ入力操作が何度もなされるといった操作回数等も変更すべき指針を定める要素となりうる。
【0050】
次に、
図10を参照して、
図6を参照して示した各処理のうち、ステップS108の処理について一例を説明する。上述のように、ここでは、案内状態選択部30によって現在の状態から次の状態へ変化させるための状態の決定の処理がなされる。このため、まず、案内状態選択部30は、習熟度推定部20から利用者の習熟度の情報を取得し(ステップS501)、さらに、現在の状態の情報を確認して(ステップS502)、前提となる状況を把握する。次に、案内状態選択部30は、現在の状態の情報及び利用者の習熟度、さらには、ステップS101またはステップS106における利用者の入力に基づいて、
図5に例示した案内状態データベースDBに格納される案内に関するデータを読み出し、該当する行を抽出し(ステップS503)、当該行にある次の状態の候補の中から最も評価値の高い状態を選出し(ステップS504)、対応するものを次の状態とする(ステップS505)。
【0051】
以上が、ステップS108における状態変化の決定の処理の一例となる。
【0052】
券売機100において、制御部3によって上記のような動作を行うことで、利用者に対する切符の販売等の各種案内がなされることになる。特に、本実施形態では、同じ目的(例えば目的地までの切符を買う等)に対する案内を行う場合であっても、利用者の習熟度に応じて、案内の手順等を利用者ごとに変化させることができる。
【0053】
以下、
図11〜
図13を参照して、本実施形態に係る券売機100による習熟度ごとに異なる切符の販売過程の様子の違い、すなわち利用者の習熟度に対応して案内の手順が変化することについて、具体的実施例を参照して説明する。
【0054】
まず、
図11の例では、券売機100において推定動作がなされた場合において、習熟度が「低」であると推定された利用者に対する案内の様子を示している。ここで、
図11(A)に示す一連の動作例の流れ(フロー)では、四角で囲まれたステップが券売機100による動作を示し、トラック形状で囲まれたステップが利用者による入力動作を示しているものとする。この場合、四角で囲まれたステップが生じるごとに、
図6に示す一連の動作SAに相当する動作が行われている、すなわち、案内状態選択部30での選択による一の状態から次の状態への変化とともに、案内状態データ更新部40による案内状態データベースDBのデータ更新による学習が行われていることになる。この動作が、トラック形状で囲まれたステップに示す利用者による入力のたびに繰り返され、案内が終了するまで続くことになる。
【0055】
図11(A)に例示する状態変化・入力のフローの場合、まず、券売機100は、
図11(B)に示す券売機100の利用用途を選択させるための案内を行う(ステップS1a)。これに対して、利用者は「きっぷの購入」を選択する(ステップS1b)。すると、券売機100は、
図11(C)に示す目的地の指定方法を選択させるための案内を行う(ステップS2a)。これに対して、利用者は例えば「駅名から指定」を選択する(ステップS2b)。すると、券売機100は、
図11(D)に示す駅名入力を行わせるための入力画面を表示した案内を行う(ステップS3a)。これに対して、利用者は目的地の駅名を適宜入力する(ステップS3b)。すると、券売機100は、
図11(E)に示す経路選択を行わせるための案内を行う(ステップS4a)。なお、この場合、券売機100は、図示のように、併せて運賃や所要時間を経路ごとに表示する。これに対して、利用者は適宜経路を選択する(ステップS4b)。すると、券売機100は、
図11(F)に示す運賃表示や金銭の投入等を促す指示を行う(ステップS5a)。これにしたがって、利用者が金銭の投入等を行うと(ステップS5b)、券売機100は、切符やお釣りを送出して(ステップS6)、切符の販売の動作を終了する。
【0056】
図12は、習熟度が「中」であると推定された利用者に対する案内の様子を示している。
図12(A)のフローにおいて、ステップS1a及びステップS1bについては、
図12(B)に示すように、先と同様である。これに対して、次のステップS2aでは、
図12(C)に示すように、画面の表示態様が異なっている。すなわち、目的地の指定については、路線や駅名等について表示されたタブから選択可能なものとなっている。これに対して、利用者は例えば「駅名」のタブを選択し、駅名を入力する、あるいは駅名が一覧表になっていてその中から選択することで駅名の指定ができるものとしてもよい。この場合、目的地の指定の方法の選択と選択した指定の方法に基づく駅名等の特定の2つの動作を1つの画面で行うことができる分、
図11の場合よりも動作を短縮できる。駅名の指定がなされると、券売機100は、
図11の場合と同様に、
図12(D)に示す経路選択を行わせるための案内や、
図12(E)に示す運賃表示や金銭の投入等を促す指示を行い、切符やお釣りを送出する(ステップS3a,S4a,S5)。これらに対して、利用者も経路の選択や金銭の投入等、相応の入力や動作を行うことになる(ステップS3b,S4b)。以上を経て、券売機100は、切符の販売の動作を終了する。
【0057】
図13は、習熟度が「高」であると推定された利用者に対する案内の様子を示している。
図13(A)のフローにおいて、ステップS1a及びステップS1bについては、
図13(B)に示すように、先と同様である。これに対して、次のステップS2aでは、
図13(C)及び13(D)に示すように、画面の表示態様が異なっている。すなわち、図示の場合、目的地の指定とともにさらに経路の選択までを一気に入力可能な表示態様となっている。
図13(C)に示す状態から目的地及び経路の入力を行い、入力が完了すると、
図13(D)に示すような運賃及び所要時間までを示した表示がなされ、表示中の確定ボタンをタッチすると(ステップS2b)、
図11や
図12の場合と同様に、
図13(E)に示す運賃表示や金銭の投入等を促す指示を行い、切符やお釣りを送出する(ステップS3a,S4)。これらに対して、利用者も金銭の投入等、相応の動作を行うことになる(ステップS3b)。以上を経て、券売機100は、切符の販売の動作を終了する。
【0058】
以上のように、本実施形態では、利用者の利用状態に関する情報に基づき、習熟度推定部20において利用者の習熟度を推定するとともに、案内状態選択部30において案内状態データベースDBを参照しつつ、習熟度に応じて案内する状態を選択し、案内出力部4で選択された状態に基づき利用者に対して案内を行っている。これにより、
図11〜
図13に例示したように、利用者の習熟度に対応して案内の手順等についての出力内容を変化させることを可能にし、習熟度が異なる多様な利用者に対してより操作しやすい案内を行うことができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、案内する状態を変化させていく上で、案内状態データベースDBにおいて案内する状態とともに格納された状態の変化の選択基準となる評価値について、更新可能となっている。これにより、利用者にとってより好ましい順序の状態変化すなわち利用者への案内となるように評価値を更新していく、という券売機100による学習が行える。例えば上記の実施例のうちであれば、例えば
図12(C)における「路線」、「駅名」及び「周辺施設」の3つの選択可能なタブのうち、デフォルトでは、「路線」が最も手前に来て選択されやすい状況となっている。しかし、利用者が「駅名」や「周辺施設」のタブを選択することが多いことが入力動作の状況から、これを反映するように案内状態データ更新部40による評価値の更新がなされ、「駅名」や「周辺施設」のタブが「路線」のタブよりも手前に来るように券売機100における案内の手順が変更され、利用者にとってより使い勝手がよくなるようにする、といったことも可能になる。
【0060】
以下、
図14(A)及び14(B)を参照して、習熟度推定についての変形例を説明する。上記では、一例として
図2に示すようなデータベースを利用して習熟度推定を行うものとしているが、これに限らず、例えば
図14(A)に示すような予め定められた決定木を利用するものとしてもよい。すなわち、取得された利用者の情報について決定木にしたがって、習熟度を推定してもよい。さらには、予め定められたモデル式を利用するものとしてもよい。例えば
図14(B)に示すような表及び下記数式に記したルールにしたがって、習熟度を推定してもよい。すなわち、表に示されるように、変数x
1として年齢の値をそのまま使用し、変数x
2として性別が男性なら+1、女性なら−1とし、変数x
3として国籍が日本人なら+1、外国人なら−1として、各変数について下記の数式1に代入して求めた値yについての、予め定めた閾値(下記の例では0と40)に対する大小関係によって、習熟度を推定してもよい。
【数1】
なお、ここでは、線形結合の式となっているが、これ以外の態様の数式を利用するものとなっていてもよい。
【0061】
〔第2実施形態〕
以下、
図15等を参照して、第2実施形態に係る案内装置としての券売機及びこれを含むシステムである切符販売の管理システムについて説明する。
【0062】
図15は、本実施形態に係る案内装置としての券売機200の一構成例について説明するためのブロック図であり、第1実施形態の
図1に対応する図である。本実施形態に係る案内装置としての券売機200は、利用者の操作による既存入力情報を呼び出す既存情報呼出部ICをさらに備えることを除いて、第1実施形態の券売機100と同様の構成であるので、各部の詳細な説明については省略する。
【0063】
図16に示すように、本実施形態では、各駅間の切符販売を統括管理する管理システム500に、複数の券売機200,200…が組み込まれている。
【0064】
管理システム500は、各駅に配置される複数の券売機200,200…を管理する駅データサーバSDと、ネットワークを介して各駅の駅データサーバSDをネットワークNTを介して通信可能となって統括管理を行う中央サーバCSとを備える。
【0065】
各駅に配置される個々の券売機200には、
図15に示すように、既存情報呼出部ICが設けられており、券売機200は、既存情報呼出部ICを介して各駅の駅データサーバSD、さらには中央サーバCSと通信可能になっている。券売機200は、既存情報呼出部ICを有することで、利用者の操作による既存入力情報を呼び出して、当該既存入力情報に基づく案内を行うことができる。
【0066】
既存情報呼出部ICは、入力情報受付処理部11を介して案内入力部1からの情報を受け付け可能となっている。ここでは、利用者のID情報を受け付け可能としている。これにより、既存情報呼出部ICは、受け付けたID情報に基づいて当該ID情報に紐付けされて保存されている利用者の操作による既存入力情報を呼び出すことができる。この場合、例えばある券売機200において利用者が途中まで操作を行った内容に関して保存しておき、別の券売機200において途中まで行った操作を再度呼び出して続きの部分から案内を受ける、といったことが可能になる。例えば、切符の予約において、行き先や日時が決まっているものの人数が未確定である等、一部の事項が決定している場合においてこのような保存機能を利用する、といったことが考えられる。
【0067】
以下、
図17に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る券売機200における操作途中で状態を保存する処理の一例を説明する。
【0068】
まず、券売機200において、利用者による入力操作がなされる(ステップS601)。券売機200の制御部3は、ステップS601においてなされる入力として、券売機200に設けた保存機能についての入力操作がなされたかを確認する(ステップS602)。保存機能についての入力操作がなされなければ(ステップS602:No)、通常の処理を続ける(ステップS603)。典型的には、動作終了等が無ければ、利用者による入力操作(ステップS601)が引き続き行われる。一方、ステップS601において保存機能についての入力操作がなされたと判断されると(ステップS602:Yes)、制御部3の既存情報呼出部ICは、利用者のID情報が取得済みであるかを判断する(ステップS604)。なお、ここでのID情報については、例えばクレジットカードナンバー等の利用者を特定できる種々の情報が想定される。ステップS604において、利用者のID情報が取得されていないと判断されると(ステップS604:No)、既存情報呼出部ICは、ID情報の入力を行わせ、利用者のID情報の取得に必要な動作を行う。すなわち、入力情報受付処理部11を介して案内入力部1からの入力情報を受け付けることで、利用者のID情報を取得する(ステップS605)。ステップS605において新たなID情報を取得する、あるいは、ステップS604において、利用者のID情報が既に取得されていると判断した(ステップS604:Yes)場合、既存情報呼出部ICは、保存すべき現在の状態を、案内状態データベースDBを介してあるいは案内状態選択部30から直接に取得するとともに、利用者のID情報に紐付けして、操作途中データを作成し(ステップS606)、当該データを駅データサーバSD、あるいは中央サーバCSに送信する(ステップS607)。なお、駅データサーバSDや中央サーバCSは、受け付けた利用者のID情報を格納するとともに管理を行う。
【0069】
以下、
図18に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る券売機200における保存した状態を復元する処理の一例を説明する。ここでは、以前にある券売機200を利用して作成された操作途中データを、別の券売機200で復元するものとして説明する。
【0070】
まず、当該別の券売機200において、利用者による入力操作がなされる(ステップS701)。券売機200の制御部3は、ステップS701においてなされる入力として、券売機200に設けた操作途中データの復元のための読込機能についての入力操作がなされたかを確認する(ステップS702)。読込機能についての入力操作がなされなければ(ステップS702:No)、通常の処理を続ける(ステップS703)。典型的には、動作終了等が無ければ、利用者による入力操作(ステップS701)が引き続き行われる。一方、ステップS701において読込機能についての入力操作がなされたと判断されると(ステップS702:Yes)、制御部3の既存情報呼出部ICは、利用者のID情報が取得済みであるかを判断する(ステップS704)。すなわち、以前に行われた操作途中データの作成において紐付けされた利用者のID情報が、操作途中データの復元を行おうとしている券売機200に入力されたかを判断する。ステップS704において、利用者のID情報が取得されていないと判断されると(ステップS704:No)、既存情報呼出部ICは、利用者にID情報の入力を行わせる(ステップS705)。ステップS705において利用者による自己のID情報の入力がなされた場合、あるいは、ステップS704において、利用者のID情報が既に取得されていると判断した(ステップS704:Yes)場合、既存情報呼出部ICは、駅データサーバSDや中央サーバCSとの通信を行い、当該ID情報に対応する操作途中データを呼び出して、当該データの読み込み動作を開始させ(ステップS706)、当該操作途中データに応じた案内の表示を行う(ステップS707)。すなわち、既存情報呼出部ICは、呼び出した操作途中データを案内状態データベースDBに送信して読み込ませ、制御部3の案内状態選択部30は、案内状態データベースDBに格納された操作途中データに応じて案内する状態を選択する。
【0071】
以上のように、本実施形態においても、利用者の利用状態に関する情報に基づき、習熟度推定部20において利用者の習熟度を推定するとともに、案内状態選択部30において案内状態データベースDBを参照しつつ、習熟度に応じて案内する状態を選択し、案内出力部4で選択された状態に基づき利用者に対して案内を行っている。これにより、利用者の習熟度に対応して案内の手順等についての出力内容を変化させることを可能にし、習熟度が異なる多様な利用者に対してより操作しやすい案内を行うことができる。さらに、本実施形態では、案内に関するさらなる一態様として、利用者が保存した操作途中データに基づく案内も可能である。
【0072】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0073】
まず、上記各実施形態では、案内装置として券売機による切符の販売の案内について説明したが、これに限らず、種々の案内を行う際に適用が可能である。すなわち、複数の説明の仕方や手順があり得る案内においては、その選択の幅があるため、本発明を適用することで、利用者にとってより好ましい案内が可能となる。
【0074】
また、上記では習熟度に関して、「低」、「中」、「高」の三段階のいずれかに属するものとして分類するものとしているが、これに限らず種々の態様が考えらえる。すなわち、3つ以上の段階分けをしてもよいし、また、一元的な段階別とするのではなく、より個性あるいはタイプに応じた多元的な分類とすることも考えられる。また、より少なく2種類に分けるものとすることも考えらえる。また、習熟度の設定の方法として、上記では、データベース、決定木及びモデル式のいずれかを利用するものとしているが、上記のような種々考えられる習熟度の設定に応じてより適したものを選択できる。
【0075】
また、上記では、案内状態データ更新部40において、評価値の更新を行うにあたって、利用者の表情に関する情報や利用者の操作の素早さに関する情報を利用するものとしているが、利用する情報については、これに限らず種々のものが適用でき、かつ、利用の仕方についても上記のような数式を定めて閾値で判定するものに限らず、種々の態様が考えられる。また、案内状態選択部30における評価値に基づく選択においても、最も評価値の高いものを選択するという態様に限らず、例えば評価値に比例した確率で選択可能な複数の状態のうちからいずれかの状態を採用する、といった態様とすることも考えられる。