(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリフェニレンサルファイドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の最外端に位置する前記オリフィスの長さLoが、前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置する前記オリフィスの長さLcの0.5〜0.8倍である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の最外端に位置する前記オリフィスの内径Doが、前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置する前記オリフィスの内径Dcの1.05〜1.3倍である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
前記押出機の下流側に、冷却装置、ペレタイザー、脱水装置、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置及び脱水装置からなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0017】
なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断りのない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面中、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。本実施形態の寸法比率は、図示の寸法比率に限られるものではない。
【0018】
(熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法は、少なくとも、ポリフェニレンエーテル樹脂の圧縮及び粉砕を行って、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂を得る工程(PPE圧縮粉砕工程)、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂と熱可塑性樹脂(A)とを溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得る工程(溶融混練工程)、所定の複数個のオリフィスを有するダイプレートが装着された押出機を用い、熱可塑性樹脂組成物から熱可塑性樹脂組成物ストランドを得る工程(押出工程)、及び、熱可塑性樹脂組成物ストランドをペレタイズして、熱可塑性樹脂組成物ペレットを得る工程(ペレタイズ工程)を有する。
また、本実施形態の製造方法においては、任意に、押出工程とペレタイズ工程との間に、押出工程で得られた熱可塑性樹脂組成物ストランドを冷却装置を用いて冷却する工程(冷却工程)を実施してもよく、任意に、ペレタイズ工程の後に、熱可塑性樹脂組成物ペレットを後処理する工程(後処理工程)を適宜選択して実施してもよい。
【0019】
一方、使用する装置の観点から、本実施形態の製造方法においては、上記押出機の下流側に、冷却装置、ペレタイザー、脱水装置、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置及び脱水装置から選ばれる少なくとも1つをさらに用いてもよい。
【0020】
以下では、「熱可塑性樹脂組成物ストランド」を単に「ストランド」と称することがあり、「熱可塑性樹脂組成物ペレット」を単に「ペレット」と称することがある。
【0021】
<PPE圧縮粉砕工程>
PPE圧縮粉砕工程は、ポリフェニレンエーテル樹脂の圧縮及び粉砕を行って、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂を得る工程である。
【0022】
<<ポリフェニレンエーテル樹脂>>
本実施形態において用いるポリフェニレンエーテル樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、ポリフェニレンエーテル樹脂としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
【0023】
本実施形態において用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、所望の単量体成分を準備し、これらを重合槽内で常法に従って重合して、調製することができる。なお、重合は、芳香族炭化水素等の良溶媒の存在下で行ってもよい。或いは、本実施形態において用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、市販のものであってもよい。
【0024】
そして、純度の観点から、本実施形態において用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、バインダー成分として、残留している芳香族炭化水素系等の良溶媒を含むことが好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂における良溶媒の含有量としては、0.005〜0.3質量%であることが好ましく、0.005〜0.25質量%であることがより好ましく、0.01〜0.1質量%であることがさらに好ましい。圧縮時の温度や線圧にもよるが、ポリフェニレンエーテル樹脂に残留している良溶媒が0.005質量%以上であれば、圧縮成型効果が十分に得られ、また、0.3質量%以下であれば、ポリフェニレンエーテル樹脂の溶融による変色を十分に抑制することができる。
【0025】
本実施形態において用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、還元粘度(単位g/dl、30℃のクロロホルム中で測定)が、0.10〜0.70であることが好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度が0.10以上であることにより、得られる熱可塑性樹脂組成物ペレットの機械的強度を良好に保持することができ、また、0.70以下であることにより、溶融混練時の流動性を保持することができる。同様の観点から、本実施形態において用いるポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度は、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましく、また、0.65以下であることがより好ましく、0.60以下であることがさらに好ましい。
なお、還元粘度は、ウベローデ粘度計を用いて、クロロホルム溶媒、30℃、0.5g/dl溶液で測定するものとする。
【0026】
PPE圧縮粉砕工程で用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、平均粒径が700μm未満のものであるか、又は、粒径が700μm未満の微粒子を集めたものであることが好ましい。
なお、平均粒径とは、累積50%の粒子径を指すものとする。
【0027】
<<ポリフェニレンエーテル樹脂の圧縮>>
PPE圧縮粉砕工程では、例えば、準備したポリフェニレンエーテル樹脂を、そのガラス転移温度(Tg)以下の温度で圧縮する。圧縮する際には、ポリフェニレンエーテル樹脂がTgを超える温度にならないようにする。圧縮時の温度としては、圧縮時にポリフェニレンエーテル樹脂がTgを超えることなく加圧が可能であれば特に制限されず、20℃〜Tg以下であることが好ましく、20〜170℃程度であることがより好ましい。なお、圧縮時の温度がTgを超えると、ポリフェニレンエーテル樹脂中に含まれ得る残存アミンが離脱し、加工時に品質の低下をもたらす虞がある。
【0028】
ポリフェニレンエーテル樹脂の圧縮操作に使用することができる成型装置としては、例えば、圧縮ロールタイプ、打錠成型タイプ等の圧縮成型機が挙げられる。特に、対向して設けられた一対の加圧ロール間に見かけ比重の低いポリフェニレンエーテル樹脂を通過させ、後述の粉砕操作において、圧縮により得られた板状のポリフェニレンエーテル樹脂を粉砕して、所望の粒径に整粒することができるロールタイプの圧縮成型機を用いることが好ましい。
【0029】
ロールタイプの圧縮成型機により板状のポリフェニレンエーテル樹脂を得る際、ロールタイプの圧縮成型機による線圧(ロール圧/ロール幅)は、0.7〜11kN/cmであることが好ましく、1.0〜8.0kN/cmであることがより好ましく、1.5〜7.0kN/cmであることがさらに好ましい。線圧が0.7kN/cm未満であると、圧縮効果が小さいため、ポリフェニレンエーテル樹脂の内部の空隙割合の低減が不十分であり、見かけ比重の向上が不十分となる上、圧縮物は脆く、粉砕時に微粉が生じやすい。また、線圧が11kN/cm超であると、圧縮物が固くなり過ぎて、粉砕が容易でないため、逆に微粉の量が増加する。
なお、ロール間の隙間(ロールクリアランス)は、1〜3mm程度であることが好ましく、また、ロールの回転数は、2〜20rpmであることが好ましい。
【0030】
圧縮操作では、圧縮後のポリフェニレンエーテル樹脂のかさ密度が好ましくは0.70〜1.0g/cm
3、より好ましくは0.72〜0.85g/cm
3となるように、ポリフェニレンエーテル樹脂を圧縮することができる。この点に関し、圧縮操作に供するポリフェニレンエーテル樹脂は、加熱したもの(例えば、所望の単量体成分を重合し、次いで乾燥した直後のポリフェニレンエーテル樹脂など)であってもよく、非加熱のもの(例えば、所望の単量体成分を重合し、次いで乾燥した後、一定程度時間が経過したポリフェニレンエーテル樹脂、又は、市販のポリフェニレンエーテル樹脂など)であってもよい。
なお、ポリフェニレンエーテル樹脂のかさ密度は、(ポリフェニレンエーテル樹脂の重さ)/(ポリフェニレンエーテル樹脂の体積)で表すことができる。
【0031】
圧縮操作では、必要に応じ、バインダーとなる添加剤を用いてもよい。例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂と添加剤とを事前にブレンダーで混合し、その後、それを圧縮成型機に供給してもよい。添加剤としては、例えば、リン系難燃剤等の難燃剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0032】
圧縮操作で使用する成型装置は、その内部を酸素濃度10体積%以下の雰囲気下に保持することが好ましい。酸素濃度を10体積%以下とすることにより、粉じん爆発を防止するとともに、圧縮時にポリフェニレンエーテル樹脂の表面に付着した酸素を効果的に除去することができる。同様の観点から、成型装置内部の酸素濃度は、3体積%以下とすることがより好ましく、1体積%以下とすることがさらに好ましい。
なお、成型装置内部の酸素濃度を下げる方法としては、不活性ガス(窒素、二酸化炭素等)を供給する方法が一般的に、挙げられる。
【0033】
<<ポリフェニレンエーテル樹脂の粉砕>>
続いて、圧縮後のポリフェニレンエーテル樹脂を粉砕し、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂を得る。この粉砕操作では、整粒機を用いてもよく、これにより、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂の粒径を調整することができる。
【0034】
ポリフェニレンエーテル樹脂の粉砕操作に使用することができる粉砕装置としては、例えば、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、フレーククラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル、ボールミル、高速回転ミル、及びジェットミル等が挙げられる。
【0035】
粉砕操作では、粉砕後のポリフェニレンエーテル樹脂(圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂)のかさ密度が0.35〜0.70g/ccとなり、且つ、粒径が106μm以下の割合が好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満となるように、粉砕装置のロータ回転数やスクリーン目開きを調整してもよい。
【0036】
また、PPE圧縮粉砕工程で得られる圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂は、平均粒径が1000〜3000μmであることが好ましい。圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂の平均粒径が1000μm以上であることにより、溶融混練工程での搬送能力を十分に確保して、樹脂組成物の温度の上昇を効果的に抑制することができ、また、3000μm以下であることにより、後述する熱可塑性樹脂(A)との溶融混練の際に、ミクロ混合性を高め、より良質な熱可塑性樹脂組成物ペレットを得ることができる。同様の観点から、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂の平均粒径は、1100μm以上であることがより好ましく、1200μm以上であることがさらに好ましく、また、2000μm以下であることがより好ましく、1500μm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
さらに、PPE圧縮粉砕工程で得られる圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂は、粒径が106μm以下の割合が20質量%以下であることも好ましい。圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂において粒径が106μm以下の割合が20質量%以下であることにより、溶融混練工程での搬送能力を十分に確保して、樹脂組成物の温度の上昇を効果的に抑制することができる。同様の観点から、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂は、粒径が106μm以下の割合が、15質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
【0038】
<溶融混練工程>
溶融混練工程は、PPE圧縮粉砕工程で得られた圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂と、熱可塑性樹脂(A)とを溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得る工程である。また、溶融混練工程では、必要に応じて、溶融混練の材料として、リン系難燃剤、粉体フィラー、繊維状フィラー、各種添加剤などをさらに用いることができる。
なお、溶融混練工程は、上述したPPE圧縮粉砕工程と、連続的に実施してもよく、非連続的に実施してもよい。ただし、溶融混練工程は、PPE圧縮粉砕工程で得られた圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂を一定期間保管した後に実施するなどのように、上述したPPE圧縮粉砕工程とは非連続的に実施するのが通常である。
【0039】
<<熱可塑性樹脂(A)>>
本実施形態の溶融混練工程において用いる熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ゼネラルパーパスポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン・ブタジエン共重合体(スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体)等のポリスチレン系樹脂;スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチレン・アクリロニトリル系共重合体;6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン等のポリアミド系樹脂;直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモ、コポリマー)等のポリオレフィン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド;などが挙げられる。熱可塑性樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂(A)としては、より良質なペレットを得る観点から、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリフェニレンサルファイドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
なお、本実施形態において、「熱可塑性樹脂(A)」は、ポリフェニレンエーテル樹脂を含まないものとする。
【0040】
熱可塑性樹脂(A)として用いることができる上記のスチレン・ブタジエン共重合体は、一部がランダム状であっても、テーパー状であってもよい。また、当該スチレン・ブタジエン共重合体は、重量平均分子量が3万〜50万であることが好ましく、スチレン含有率が25〜70質量%であることが好ましく、また、ブタジエン含有率が75〜30質量%であることが好ましい。
【0041】
<<リン系難燃剤>>
本実施形態の溶融混練工程においては、難燃性をより向上させる観点から、溶融混練の材料として、リン系難燃剤をさらに用いることができる。リン系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(tert−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(tert−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート、ビフェニルビス−ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;フォスファーゼン化合物等が挙げられる。リン系難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態の溶融混練工程において、リン系難燃剤を用いる割合は、30質量%未満であることが好ましい。
【0042】
<<粉体フィラー>>
本実施形態の溶融混練工程においては、溶融混練の材料として、粉体フィラーをさらに用いてもよい。粉体フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウイスカー、硫酸マグネシウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、炭酸カルシウムウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられ、特に、ケイ酸カルシウム、マイカ、タルク、ガラスフレーク、ガラス粉砕品、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、シリカが好ましい。粉体フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粉体フィラーのサイズとしては、平均粒径が、0.01〜500μm未満であってもよく、0.01〜300μmであることが好ましく、0.1μm以上106μm未満であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の溶融混練工程において、粉体フィラーを用いる割合は、60質量%未満であることが好ましい。
【0043】
<<繊維状フィラー>>
本実施形態の溶融混練工程においては、溶融混練の材料として、繊維状フィラーをさらに用いてもよい。繊維状フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などが挙げられる。繊維状フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。繊維状フィラーのサイズとしては、繊維径が5〜50μm、繊維長さが1〜5mmであることが好ましい。
また、本実施形態の溶融混練工程において、繊維状フィラーを用いる割合は、60質量%未満であることが好ましい。
【0044】
<<カルボキシル基変性重合体>>
なお、本実施形態の溶融混練工程においては、上述したポリスチレン系樹脂として、カルボキシル基を含有するモノマー(例えば、クエン酸、無水マレイン酸等)とスチレンモノマーとを共重合してなる樹脂や、カルボキシル基を含有するモノマーを押出機でグラフト付加した樹脂を用いることができ、また、上記ポリフェニレンエーテル樹脂として、カルボキシル基を含有するモノマーを押出機でグラフト付加した樹脂を用いることができる(以下、これらの樹脂を総称して、「カルボキシル基変性重合体」という)。ただし、本実施形態の溶融混練工程において、上記カルボキシル基変性重合体を用いる割合は、5質量%未満であることが好ましい。
【0045】
<<各種添加剤>>
本実施形態の溶融混練工程においては、溶融混練の材料として、各種添加剤をさらに用いることができる。添加剤としては、例えば、液体添加剤(シリコンオイル、炭化水素系オイル、水等)、粉体フィラー分散剤(エチレンビスアマイド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸等)、オレフィン系エラストマー(エチレン・プロプレンエラストマー、エチレン・オクテンエラストマー)、官能基付与剤(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸等)、各種着色剤、着色補剤(酸化チタン等)、紫外線吸収剤、耐電防止剤、安定剤(酸化亜鉛、硫化亜鉛、燐系、イオウ系、ヒンダードフェノール系等)等が挙げられる。
【0046】
<<溶融混練>>
そして、本実施形態の溶融混練工程においては、上述した材料を用いて溶融混練することにより、熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。溶融混練の条件は、目的や用途に応じて、適宜定めてよい。なお、溶融混練は、押出機を用いて実施することができ、かかる押出機としては、押出工程に関して後述するような押出機が挙げられる。即ち、後述するような押出機を用いれば、少なくとも溶融混練工程と押出工程とを、連続的に実施することができる。
【0047】
<押出工程>
押出工程は、所定の押出機を用い、溶融混練工程で得られた熱可塑性樹脂組成物からストランドを得る工程である。本実施形態の押出工程では、内径Dが3〜8mm、長さLが内径Dの0.3〜2.0倍である複数個のオリフィスを有するダイプレートが装着された押出機を用いることを肝要とする。更に、本実施形態の押出工程では、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物のオリフィスでの平均滞留時間Tを1〜20ミリ秒として、ストランドを得ることを肝要とする。これらにより、ダイプレートのオリフィスの開口部における樹脂組成物の温度を低減するができ、オリフィスの開口部でのメヤニの発生を抑制することができるとともに、熱可塑性樹脂組成物ストランドを安定して調製し、熱可塑性樹脂組成物ペレットを高い良品率で得ることも可能となる。
【0048】
上記押出機としては、
図1に示すように、ダイ部2を有し、溶融混練工程と押出工程とを一括で連続的に実施することができる押出機1が挙げられる。
押出機1としては、特に限定されることなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の多軸押出機等が挙げられる。単軸押出機としては、例えば、スクリュー軸が前後に駆動しながら回転する、ブッス社製の単軸押出機(コニーダシリーズ)、異方向回転二軸押出機、同方向回転二軸押出機(例えば、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械社製のTEMシリーズ、日本製鋼所社製のTEXシリーズ)等が挙げられる。押出機1としては、高トルクの押出機、例えば、コペリオン社製のMcシリーズ、McPlusシリーズ、Mc18シリーズ、東芝機械社製のSSシリーズ、SXシリーズ、日本製鋼所社製のα2シリーズ、α3シリーズが好ましい。
押出機1の規格や大きさは、特に限定されないが、バレル内径(直径)40〜300mmであることが好ましく、バレル有効長はバレル内径の10〜60倍であることが好ましい。
押出機1のバレル構成としては、特に限定されることなく、複数のバレルを含み、所望のバレルにおいて、固体搬送ゾーン、溶融体搬送ゾーン、混練ゾーン等を形成するものとしてよく、所望のバレルに、真空ベントや大気ベント等のベントを設けてもよく、トップフィーダー、サイドフィーダー、液状添加装置を設けてもよい。各ゾーンの長さとしては、押出機長さ(バレル有効長)を100%とした場合、固体搬送ゾーンの長さは、10〜30%であり、溶融体搬送ゾーンの長さは、30〜85%であり、混練ゾーンの長さは、5〜40%としてよい。
バレルに使用するスクリューエレメントとしては、例えば、2条又は3条のニーディングブロック(右廻り、左廻り、ニュートラル、逆送り)、2条又は3条のフライトスクリュー(右廻り、左廻り)、1条、2条又は3条の切り欠きスクリューやカットスクリュー、バリスターリング等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて用いてよい。
押出量としては、特に限定されないが、例えば、58mmΦ二軸押出機では、300〜1500kg/hrとしてよく、スクリューの回転数としては、300〜1500rpmとしてよい。
【0049】
本実施形態の押出工程の一例では、次いで、押出機1の先端部に設けられているダイ部2で、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランドにする。
【0050】
図2に、押出機に装着されるダイ部の一例について示す。
図2(A)は、ダイ部をその底面に垂直な面で切断したときの断面図、具体的には、
図2(B)に示す線I−Iに沿う面によるダイ部の断面図であり、
図2(B)は、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図、具体的には、
図2(A)に示す線II−IIに沿う面によるダイプレートの断面図である。
【0051】
図2に示すダイ部2とは、オリフィスの延在方向と押出機の軸方向とのなす傾斜角度(図示せず)が異なること以外は、同様の構成を有するものとしてよい。
具体的には、
図2に示すダイ部2では、
図2(A)の断面において、オリフィスの延在方向と押出機の軸方向とのなす傾斜角度(図示せず)は0〜60°としてよい。
【0052】
ダイ部2は、ダイ接続部21、溶融した熱可塑性樹脂組成物に含まれる異物をろ過により除去するためのスクリーンチェンジャー部22、マニホールド部23、ダイプレート部24からなる。
【0053】
スクリーンチェンジャー部22は、目開きが#20〜#300の金属メッシュを1種単独で又は2種以上組み合わせて取り付けることが可能なブレーカープレートが装着されていてもよい。ブレーカープレートには、ろ過面積を1.5〜2.0倍に増やすことが可能なスーパープレートが装着されていてもよい。また、熱可塑性樹脂組成物が粉体フィラーや繊維状フィラーなどの強化材を含む場合には、ブレーカープレートが取り外されていてもよい。
【0054】
マニホールド部23は、内部に樹脂組成物の流路を備えるものであり、ここで、樹脂組成物の流路の幅(ダイ部2の幅方向の長さ)は、ダイ部2の先端に向かって(押出機の軸方向の上流側から下流側に向かって)漸増している。具体的には、
図2(B)において、流路を画成する線は、ダイ部2の幅方向について両側について対称に、流路の幅が漸増を開始する位置からダイ部2の先端に向かって、直線状に延びている。
なお、本実施形態のマニホールド部23は、
図2(B)に示すものに限定されることなく、流路を画成する線は、ダイ部2の幅方向について両側について非対称であってもよく、曲線状に延びていてもよいが、生産性等の観点から、対称であることが好ましく、直線状であることが好ましい。
【0055】
ここで、
図2(B)に示すように、ダイ部2をその底面に平行な面で切断したときの断面図における、流路の幅が一定である部分において流路を画成する線と、流路の幅が漸増する部分において流路を画成する線とのなす角度θ1としては、20〜70°であることが好ましく、さらに好ましくは25〜65°である。
なお、角度θ1とは、流路の幅が一定である部分において流路を画成する線と、流路の幅が漸増する部分において流路を画成する線とのなす角度のうち小さい方の角度をいう。
上記角度θ1を20°以上とすれば、ダイプレート部24に設けるオリフィスの数を増やす(生産量が上げる)ことが可能となり、上記角度θ1が70°を超えると、ダイ部2の幅方向の両端において、溶融状態の樹脂組成物の流動性が低下して、ダイプレート部24の中心部のストランドと両端のストランドとの間で流速に差が生じ、両端のストランドの調製が不安定になりやすい。
なお、角度θ1は、流路の中心を通る断面において定めてよい。また、流路を画成する線の全部又は一部が曲線状である場合には、その線を平均的な直線状の線として捉えたうえで、角度θ1を定めてもよい。
【0056】
ダイプレート部24は、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランドにするためのものであり、円柱形状の貫通孔であるオリフィス24oを複数個有している。
オリフィスの数としては、10個以上であることが好ましく、さらに好ましくは12個以上であり、より好ましくは15個以上である。
オリフィスの内径Dとしては、3.0〜8.0mmであり、好ましくは3.5〜8.0mmであり、さらに好ましくは4.0〜7.0mmである。内径Dが3.0mmより小さいとダイ圧が上がりやすく、樹脂組成物の温度が高くなり、また、8.0mmより大きいとダイ圧が下がり過ぎて、ストランドの安定性が低下する。
オリフィスの長さLとしては、オリフィスの内径Dの、0.3〜2.0倍であり、好ましくは0.4〜1.5倍であり、さらに好ましくは0.5〜1.0倍である。オリフィスの長さLのオリフィスの内径Dに対する割合(L/D)が0.3より小さいとダイ圧が下がり過ぎて、ストランドが不安定になるおそれがある。L/Dが2.0より大きいとダイ圧が上がり過ぎて、樹脂組成物の温度が上がりメヤニが増えるとともに、溶融状態の樹脂組成物とオリフィス24oの内壁との摩擦が大きくなりメヤニがさらに増えるおそれがある。
【0057】
特に、スケールの小さい押出機で押出量を上げて運転する場合、オリフィスの数を増やして、ダイ圧を下げる必要がある。そして、オリフィスの数を増やすと、マニホールド部23の流路の幅を広げる必要がある。さらに、マニホールド部23の流路の幅を広げると、マニホールド部23の両端を流れる樹脂の流速が極端に遅くなり、両端のストランドの安定性が悪くなる傾向がある。
【0058】
本実施形態の押出工程では、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物のオリフィスでの平均滞留時間Tを、1〜20ミリ秒とすることを肝要とする。平均滞留時間Tは、好ましくは2〜15ミリ秒であり、さらに好ましくは3〜15ミリ秒である。
なお、平均滞留時間Tは、下記式により算出することができる。
平均滞留時間T=全オリフィスの内容積V/容積流量Q
上記Tが1ミリ秒より短いと、ダイ圧が下がり、ストランドが不安定になり、また、上記Tが20ミリ秒を超えると、ダイ圧が上がり、樹脂温度が上がり、メヤニが増える。
【0059】
本実施形態の押出工程では、1つのオリフィス24o当たりの樹脂組成物の流量としては、20〜120kg/hrであることが好ましく、さらに好ましくは25〜100kg/hrであり、より好ましくは30〜100kg/hrである。上記流量が20kg/hr未満では、滞留時間が長くなり過ぎるおそれがあり、120kg/hr超では、滞留時間が短くなり過ぎるおそれがある。
【0060】
本実施形態では、複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の最外端に位置するオリフィスの長さLo(
図2(B)参照)が、複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置するオリフィスの長さLc(
図2(B)参照)の0.5〜0.8倍であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜0.7倍である。
熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、又は、オリフィスの数が10個を超える場合には、マニホールドの幅方向の両端部に位置する樹脂組成物の流速が遅くなる傾向がある。ここで、Lo/Lcが0.5倍より小さいと、両端のダイ圧が下がり過ぎてストランドが不安定になるおそれがあり、Lo/Lcが0.8倍より大きいと、両端の流速が遅くなる。
このとき、幅方向の最外端に位置する2つのオリフィスの長さのみを、幅方向の中心に最近接して位置するオリフィスの長さよりも短くしてもよく、また、オリフィスの長さを、幅方向の中心に最近接する位置から幅方向の最外端の位置に向かって、テーパー状に漸減させたり、段階的に短くしたりしてもよい。
【0061】
複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の最外端に位置するオリフィスの内径Do(
図2(B)参照)が、複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置するオリフィスの内径Dc(
図2(B)参照)の1.05〜1.3倍であることが好ましく、さらに好ましくは1.1〜1.3倍である。
Do/Dcを1.05〜1.3倍の範囲としても、Lo/Lcの範囲を定めた場合と同様の作用効果により、ストランドを安定化しつつ両端の流速を早くする効果がある。
【0062】
ここで、ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面の少なくとも一部の表面硬度が800〜5000であることが好ましく、さらに好ましくは800〜4000である。
なお、表面硬度とはHV硬度をいい、HV硬度は、JIS Z 2244に準拠して測定することができる。
ダイプレートの材料としては、通常、SUSやSKDが使用され、これらに焼き入れを行った場合でも、ダイプレートの表面の表面硬度は、50程度に留まることが多い。この程度の硬度では、ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面に傷がつきやすく、例えば、ストランドを金属製の刃を用いて切断する際に、真鍮や銅等の柔らかい材料でできた刃を用いた場合であっても、オリフィスの開口部等に傷がつきやすく、メヤニ発生の原因となる。また、上記硬度では、長時間の使用により、オリフィスの内面に摩耗が生じやすくなり、かかる摩耗がメヤニ発生の原因となる。
【0063】
上記事情に鑑みて、ダイプレートの表面の硬度を高めるため、ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面を含むダイプレートの表面の全部又は一部には、表面処理を行うことが好ましく、表面処理としては、窒化処理、金属蒸着処理等が挙げられる。表面処理を行うことで、オリフィス内部表面やオリフィス出口表面の構造に凹凸が出来て、溶融した樹脂組成物とオリフィス内部表面の接触が点接触になり、接触面積が減ることでメヤニ発生の低減が図れ、及び/あるいは、表面処理を行うことで、溶融した樹脂組成物との親和性が低下して、メヤニ発生の低減が図れる。
窒化処理としては、公知の窒化処理や、カナック社(日本国)のニューカナック処理が好ましく、特に好ましくはニューカナック処理である。ニューカナック処理を行った場合、ダイプレートの表面の表面硬度が1000程度になり、メヤニの発生を抑制することができる。
金属蒸着処理としては、Chemical Vapor Deposition成膜方式、Pysical Vapor Deposition成膜方式が挙げられる。ここで、コーティング材料としては、チタンカーバイド、炭窒化チタン、炭化クロム、窒化チタン、窒化チタンアルミ等が挙げられ、窒化チタンアルミが好ましい。
Pysical Vapor Deposition成膜方式で、窒化チタンアルミを蒸着させた場合、ダイプレートの表面の表面硬度が3500程度にまで高まり、表面に傷が付きにくくなる。
【0064】
<冷却工程>
冷却工程は、押出工程で得られた熱可塑性樹脂組成物ストランドを、冷却装置3を用いて冷却する任意の工程である。冷却装置3としては、冷却水が貯められた槽(
図1のストランド冷却槽3a)、その延在方向と水平面とのなす傾斜角度θ2を30〜85°とし、その一端から他端に向かって冷却水が流された流路(ストランドガイド、図示せず)等が挙げられる。
なお、傾斜角度θ2とは、流路の延在方向と水平面とのなす角度のうち小さい方の角度をいう。
【0065】
冷却装置3に用いられる冷却水には、純水、イオン交換水、工業用水、冷却塔で循環している冷却水等が使用されてよい。
【0066】
ストランド冷却槽3aは、冷却水を所定時間滞留させられるものであれば特に限定されることなく、断続的に又は連続的に冷却水を交換してよい。
通常、冷却水は、ストランド冷却槽3aの下流側で供給し上流側で排出して、排出されるストランドに対して向流で冷却する。
ストランド冷却槽3aには、ストランドを安定させるために、ストランドガイドローラーを複数個使用することが好ましい。ストランドガイドローラーは、ストランドが内側に寄るときは回転を固定して運転する。
また、ストランド冷却槽3aには、ストランドの表面に付着した水を除去するため、空気を吹き付ける機能を備えるエアワイパーや、プラスチック繊維のブラシを用いてもよい。
【0067】
オリフィスの開口部から冷却装置までの距離L1(
図1参照)、すなわち、ストランドがダイプレート外部に排出された位置からストランドが冷却装置の水に着水する位置までの間隔としては、小さいほどストランドが安定するが、通常100〜400mmとしてよい。
【0068】
<ペレタイズ工程>
ペレタイズ工程は、押出工程又は任意の冷却工程の後の熱可塑性樹脂組成物ストランドをペレタイズ(カッティング)して、熱可塑性樹脂組成物ペレットを得る工程である。ペレタイズ工程では、例えば、冷却工程で適度に冷却された熱可塑性樹脂組成物ストランドをペレタイザーで適当な長さにカッティングする等して、円柱形状の熱可塑性樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0069】
ペレタイズ工程で使用することができるペレタイザー4としては、回転刃幅が200〜500mm、引取速度60〜300m/分のペレタイザーが挙げられる。ここで、ペレタイザー4には、乾式のペレタイザーと湿式ペレタイザーとがある。冷却工程においてストランド冷却槽3aを用いる場合には、乾式のペレタイザーを使用し、回転刃や固定刃に空気を吹き付けて、切粉の発生を防止してもよい。また、湿式のペレタイザーは、ストランドガイドを通って、ストランドと冷却水とを同時にペレタイズすることができる。
【0070】
ペレタイザー4により得られるペレットは、好ましくは少なくとも95%が、さらに好ましくは少なくとも96%が、より好ましくは少なくとも97%が、好ましくは、外径2〜4mm、長さ2〜4mmとなるものであり、さらに好ましくは、外径2.2〜3.8mm、長さ2.2〜3.8mmとなるものであり、より好ましくは、外径2.5〜3.5mm、長さ2.5〜3.5mmとなるものである。
ペレタイザー4として湿式ペレタイザーを用いる場合には、ペレットの表面に水が付着しているので、着水を取るための脱水装置を用いてもよい。脱水装置は、遠心分離方式であってもよく、乾燥方式であってもよい。
【0071】
<後処理工程>
後処理工程は、例えば、以下に示すような種々の操作を適宜選択して実施することができる任意の工程である。
以下、
図1を用いて、ペレタイザーの下流に、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置、脱水装置をこの順に備えて実施可能な、本実施形態の製造方法の一例について詳述する。
【0072】
本実施形態では、ペレタイズ工程に次いで、ペレタイズ工程で得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットをペレット冷却機5を用いて冷却する(
図1参照)。
ペレタイザー4では、切粉発生防止、ペレットの吸湿防止のためにストランドを120〜150℃でカッティングし、ペレットにするが、ペレットの内部はさらに高温であるために、ペレットを冷やさないと、熱劣化のためにペレットが変色する虞がある。また、ペレットの原料として吸湿性の樹脂を使用している場合には、包装袋としてポリエチレン樹脂を内部コーティングしたアルミニウム袋を使用することがあるが、温度が高いままペレットを包装すると、アルミニウム袋が収縮し、袋が硬くなる。そのため、当該袋をパレットに積んだ場合、輸送中に落ちるトラブルが発生する虞がある。さらに、ペレットが高温であると、ペレットがニューマー配管内壁に衝突する際、フロスと呼ばれる薄い皮が生じる虞がある。このような理由から、ペレット冷却機5を用いて、ペレットの温度を40〜70℃くらいに冷却することが好ましい。ここで、ペレット冷却機5としては、流動床タイプのものや、パンチングプレートにペレットを移動させて、底側から冷却ガスで冷却するタイプのものがあるが、例えば、株式会社タナカ製の空冷式ペレットクーラーASCシリーズを用いることが好ましい。
【0073】
その後、本実施形態では、冷却された熱可塑性樹脂組成物ペレットを、ペレット選別機6に通す(
図1参照)。
ペレット選別機6では、前記ペレタイザー4でペレタイズしたペレットのうち、4mmを超える長いペレット、ストランド同士が融着して出来た双子ペレット、ペレットの切カスの切粉などを除去する。
【0074】
本実施形態では、さらに、選別された熱可塑性樹脂組成物ペレットに、外潤剤添加装置7を用いて、外潤剤を与える(
図1参照)。
外潤剤添加装置7は、ペレット表面に外潤剤を付ける装置であり、外潤剤添加供給装置、及び/または、外潤剤とペレットとを均一に混合するミキサーからなる。外潤剤は、粉系の添加剤であるため、添加量が0.05質量部を超えるとペレットと分離しやすいので、オイル添加装置を使って、先ず、オイルとペレットを混合し、その後、外潤剤を混ぜてもよい。
【0075】
本実施形態では、さらに、外潤剤を与えられた熱可塑性樹脂組成物ペレットを、ペレット搬送装置8を用いて、搬送する(
図1参照)。
ペレット搬送装置8は、ペレットを搬送する配管とペレットを送るガスブロアーとからなる。ガスブロアーは、上流側から送風する加圧式ブロアーまたは下流側から吸い込む吸引式ブロアーのどちらであってもよい。配管、特に配管の曲り部は、ペレットが衝突し、摩耗するので、内部に対してセラミック処理や窒化処理(カナック社のニューカナック処理)の耐摩耗処理をするのが好ましい。
【0076】
次いで、本実施形態では、搬送された熱可塑性樹脂組成物ペレットを、金属選別機9に通す(
図1参照)。
金属選別機9は、ペレット中に入っている径又は長さが0.1mm以上の金属破片を除去する場合に使用する装置である。ペレットには、原料に含まれる小さな金属片等が入っている場合があるので、ペレットを電子部品に用いる場合には、当該ペレットを金属選別機9に通すことが好ましい。
【0077】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットを、異物選別機10に通す(
図1)。
異物選別機10は、押出機内で発生し、スクリーンチェンジャー部22のブレ−カープレートに取り付けられた金属メッシュではろ過できないような異物が混入しているペレットや、メヤニ破片が付いたペレットを除去する場合に使用する装置である。異物選別機10としては、異物を感知するセンサーがペレットの流れに対して表面及び裏面に付いているものがあるが、これだけを用いた場合には、異物の除去率が比較的低い。そのため、センサーが前後2個と左右2個の計4個付いている異物選別機を用いたり、上述のようなセンサーが2個しか付いていない異物選別機を2台用いたりすることで、異物の除去率をより向上させることができる。
【0078】
そして、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットを、切粉分離機11に通す(
図1参照)。
切粉分離機11は、ペレタイザー4から製品タンク13の間に設けることができる。切粉とは、1mm以下のペレットの破片や、ペレット搬送する配管で発生するフロスである。切粉分離器11は、サイクロン式の粒径の小さいものを分離する方式であってもよく、切粉をイオン化する装置であってもよい。特に、切粉分離器11は、サイクロン式であり、且つ、製品タンク13の上に設けることが好ましい。
【0079】
ここで、得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットは、任意選択的に設けられる中間タンク12(図示せず)に一端貯めておいてもよいが、本実施形態では、ペレットを製品タンク13(後述)に貯める。
中間タンク12は、各装置を稼働して製造をスタートさせた初期のペレットについて、サイズや物性の確認をしてから製品にする際に使うことがある。
製品タンク13は、ペレットを貯めて置く装置である。製品タンク13は、1〜72時間程度貯蔵できる容積が必要である。また、中間タンク12及び/又は製品タンク13は、ペレットの均一化させるために、機械的なミキサーやガス循環式ミキサーなどのペレット混合装置を備えてもよい。
【0080】
そして、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットに、金属探知機14を当てる。
金属探知機14は、例えば、5000〜15000ガウスのマグネット棒を一列に数本並べ、3〜5列で構成される。そして、金属探知機14を製品タンク13の出口に取り付けることで、金属片が入ったペレットを検出することができる。
【0081】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットに、乾燥空気発生装置15を用いて、乾燥空気を与えてもよい。
例えば、熱可塑性樹脂組成物ペレットがポリアミド系樹脂などの吸湿性樹脂を含み、ペレット周囲の雰囲気が40℃以下になると、当該ペレットは雰囲気中の水分を吸収することがあり、乾燥空気発生装置15は、そのような事態に対処する場合に用いることができる。乾燥空気発生装置15は、例えば、露点−40℃、絶対湿度0.119g/m
3の乾燥空気を発生させる装置である。
【0082】
<製造した熱可塑性樹脂組成物ペレットの用途>
本実施形態の製造方法により製造される熱可塑性樹脂組成物ペレットは、電気・電子部品、OA部品、自動車部品等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
(PPE1(圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂)の調製)
後述するPPE3を、ホソカワミクロン製造粒装置(装置名:CS−75、直径400mm、幅120mm)を用いて、酸素濃度1体積%の条件下で、ロールクリアランス1.5mm、ロール回転数7rpm、線圧6kN/cmの条件で圧縮し、板状のポリフェニレンエーテル樹脂を得た。次いで、この板状のポリフェニレンエーテル樹脂を、ホソカワミクロン製フレーククラッシャー(装置名:FC−200)、φ3mmのスクリーンを用いて粉砕(整粒)し、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂であるPPE1を得た。
【0085】
(PPE2(圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂)の調製)
PPE1の調製において、線圧を3kN/cmとしたこと以外は、PPE1の調製と同条件とし、圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂であるPPE2を得た。
【0086】
(PPE3(非圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂)の準備)
ポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成プラスチックスシンガポール社製、S201A)を用意し、これをPPE3(非圧縮粉砕ポリフェニレンエーテル樹脂)とした。
【0087】
PPE1〜3の以下の諸特性を、以下の方法に従って求めた。
【0088】
<平均粒径>
JIS Z 8815のふるい分け試験法に準じて、篩い網の目開きが2360、1700、1180、850、600、425、300、212、150、106及び75μmの篩いを縦に並べ、一番下に受皿を配置して篩いを固定させ、サンプルを100g投入後、振とう機で振動させて、各篩いに残った粒子の重さを測定した。目開き2360μmの篩いに残ったサンプルの粒径は3000μmと2360μmの単純平均値とし、1700μmに残ったサンプルの粒径は、2360と1700の単純平均値とし、一番下の受皿のサンプル粒径は75μmの半分の37.5μmとして、篩いの目開き径と粒子量(質量%)との関係を図示し、累積50%の値を平均粒径とした。結果を表1に示す。
【0089】
<粒径が106μm以下の割合>
上記の振とう機による各篩いの振動により、目開きが106μmの篩いを通過した粒子の割合を重量比で求めた。結果を表1に示す。
【0090】
<かさ密度>
JIS K5101に準拠して、かさ密度(ゆるめ)を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
<還元粘度>
ウベローデ粘度計を用いて、クロロホルム溶媒、30℃、0.5g/dl溶液で還元粘度(g/dl)を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
(押出機及びその下流側の装置の構成)
図1に示すような装置構成を採用し、押出機としては、同方向回転二軸押出機(東芝機械社製のTEM58SX 12バレル)を使用した。
そして、実施例1〜11及び比較例1〜5のバレル構成、並びに各装置の条件は、下記の通りとした。
バレル1 :第一供給口(トップフィードバレル、重量式フィーダーA、重量式フィーダーB、第一供給口の酸素濃度3.0体積%)
バレル2 :クロ−ズドバレル
バレル3 :クロ−ズドバレル
バレル4 :クロ−ズドバレル
バレル5 :第二供給口(サイドフィード(液添)バレル)
バレル6 :クロ−ズドバレル
バレル7 :クローズドバレル(第一混練ゾーン)
バレル8 :第三供給口(サイドフィードバレル)
バレル9 :クローズドバレル(第二混練ゾーン)
バレル10:真空ベント
バレル11:クローズドバレル
バレル12:クローズドバレル
バレルの設定温度:280℃、ダイ部の設定温度:280℃。
【0094】
スクリーンチェンジャー:金属メッシュを取り付け可能なブレーカープレートを装着
マニホールド:マニホールド角度θ1:60°
ダイプレート:各実施例・比較例により条件を変更した。
【0095】
ストランド冷却槽:幅:600mm×長さ:6000mmの槽を用いた。冷却水の水温:40℃±3℃、水深:100mmとし、ストランドガイドローラーを4つ設置した。ストランドガイドローラーは、少なくともストランドが入水した地点に設置し、両端のストランドが中心に寄ってくることのないように、軸周りの回転しない固定型のものとした。オリフィスの開口部から冷却装置までの距離L1(オリフィス出口と液面との鉛直距離)を120mmとした。ストランドの冷却水に浸漬している部分の長さを2000mmとし、浸漬後のストランドの表面に付着した水は、エアワイパーを用いて除くこととした。
【0096】
ペレタイザー:幅300mmの回転刃を用いた。長さ3mm×径3mmの円柱状ペレットを目標とした。ペレタイザー入口におけるストランドの表面温度を140℃とした。引取速度を100m/分とした。
ペレット冷却機:出口温度50℃
ペレット選別機:振動篩いを用いた。長いペレット、連粒(双子)ペレット、切粉(小粒径ペレット)を排除した。
外潤剤添加装置:ペレット表面に、エチレンビスアマイドを0.03質量部添加
ペレット搬送装置:押し込み式のニューマー、送風量:30m
3/hr
金属選別機:ダイカ株式会社製の高感度選別機 ダイアレスター
異物選別機:株式会社クボタ製の異物選別機 PLATON II
切粉分離機:株式会社カワタ製のゼノフィルター
中間タンク:使用せず
製品タンク:容量:3m
3
金属探知器:製品タンクの出口に、13000ガウスのマグネットを、1列3個で計3列とした。
そして、袋詰めは、25kg袋を用いて行った。
【0097】
(測定・評価方法)
各実施例・比較例での熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造に関しては、以下の測定・評価を行った。
【0098】
(0)平均滞留時間T
樹脂組成物の密度を、実施例1〜8、比較例1〜5では1.1g/cm
3、実施例9では1.3g/cm
3、実施例10では1.36g/cm
3、実施例11では1.51g/cm
3、実施例12、比較例6では1.1g/cm
3、実施例13、比較例7では0.95g/cm
3とし、全オリフィスの内容積Vを容積流量Qで割った値を平均滞留時間T(ミリ秒)とした。
【0099】
(1)樹脂組成物の温度測定
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ダイプレートからバレル1に向かう方向に見て、右から10番目のオリフィスの開口部から排出されたストランドに、温度計(安立計器株式会社製のハンディタイプ温度計HD−1100)のセンサーの先端を差して、樹脂組成物の温度(℃)を測定した。
【0100】
(2)ダイ部における圧力測定
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、マニホールド部の上部に設置したダイ圧計(理化工業株式会社製のCZ−200P)を用いて、ダイ部における圧力(MPa)を測定した。
【0101】
(3)酸化劣化物数レベルの評価
酸化劣化物数の評価は、プレス金型を用いて、熱可塑性樹脂組成物ペレットを250℃で圧縮成型することで、直径180mm、厚み1mmの平板を5枚作製した。平板の表面にできた黒点を酸化劣化物として、その数を数えることで、酸化劣化物数の評価を行った。具体的には、5枚の平板の表裏面を10倍のルーペを用いて目視で観察し、最大径が200μm未満の黒点を1点、及び200μm以上の黒点を3点とし、点数化した。
【0102】
(4)メヤニ発生量レベルの評価
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ストランドが排出され始めてから10分間にダイプレートのオリフィスの開口部(ストランドの排出口)で発生したメヤニのサイズを、ノギスを用いて測定した。判定は下記判定基準に従って行った。
1:メヤニ長さ1mm以下。
2:メヤニ長さ3mm以下。
3:メヤニ長さ5mm以下。
4:メヤニ長さ7mm以下。
5:メヤニ長さ10mm以下。
6:メヤニ長さ15mm以下。
7:メヤニ長さ15mm超。
【0103】
(5)ストランドの安定性の評価
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ストランドが排出され始めてから20分後のストランドの状態を観察して、下記判定基準に従って評価した。この判定基準の数字が小さいほど、ストランドが安定し、最終的に得られるペレットが良質となることを示す。
<判定基準(判定点:ストランドの安定性の様子)>
1:ストランド全数がストランドカールとストランド切れとも無。
2:ストランドの両端だけか一方のストランドがカールするが切れない状態。
3:ストランドの両端方向のストランドの数本がカールするが切れない状態。
4:ストランドの両端方向のストランドの1〜数本がカールし、切れる状態。
5:ストランドが頻繁に切れる状態。
なお、ストランドカールとは、ストランドが捻じれることである。ストランド切れとは、ストランドが切れてストランドが引けなくなることである。
【0104】
(実施例1)
バレル1とバレル2には、粉体原料を高搬送する一条スクリューを使い、バレル3〜5には2条スクリューを使い、バレル7に第一混練ゾーンを設け、バレル8に第三供給口を設け、バレル9に第二混練ゾーンを設け、また、バレル10に設けた真空ベントにより、−0.09MPaで脱気をすることとした。
第一混練ゾーンのスクリュー構成は、右回りニーディングブロック、中立ニーディングブロック、右回り切欠き2条スクリューの圧縮効果の少ないスクリューを適宜組み合わせた。また、第二混練ゾーンのスクリュー構成は、第一混練ゾーンのスクリューに、左回りニーディングブロック、左回りスクリュー、左回り一条切欠きスクリュー等の圧縮効果の高いスクリューを少なくとも1個使用し、適宜組み合わせた。
【0105】
また、ダイプレートとしては、
図2に示す構成のダイプレートを用いるとともに、オリフィスの内径D=4.0mm、オリフィスの長さL=6.0mm、オリフィス列の数:1、オリフィス1列当たりのオリフィスの数:25個とした。スクリーンチェンジャーのブレーカープレートには、(上流側)#20/#40/#80/#20(下流側)(#20:20番金属メッシュ)の構成で、金属メッシュを取り付けた。
そして、押出機の押出量を1000kg/hrに、スクリュー回転数を840rpmに設定した。
【0106】
65質量部のPPE1を、押出機の重量式フィーダーAに投入し、バレル1の第一供給口に供給した。また、熱可塑性樹脂(A)としての4質量部のハイインパクトポリスチレン(HIPS)(ペトロケミカル社製、製品名:CT60)、3質量部のゼネラルパーパスポリスチレン(GPPS)(PSジャパン製、製品名:685)、1質量部のポリエチレン(旭化成ケミカルズ社製、製品名:M1804)、及び4質量部の水素添加スチレン・エチレンブロック共重合体(SEBS)(Kraton Polymers社(米国)製、製品名:G1651)と、0.6質量部の安定剤(イルガノックス1010/アデカスタブPEP36=1:2)とをタンブラーで混合して得られた混合物12.6質量部を、押出機の重量式フィーダーBに投入し、バレル1の第一供給口に供給した。
12質量部の難燃剤(大八化学社製、製品名:CR731)を、バレル5に取り付けた液添注入ノズルを介して、液添重量式フィーダーで第二供給口に供給した。
13質量部のハイインパクトポリスチレン(HIPS)(ペトロケミカル社製、製品名:CT60)を、バレル8の第三供給口に供給した。
そして、バレル7に設けた第一混練ゾーンにおいて、第一供給口から供給した原材料と第二供給口から供給した難燃剤とを軽く混ぜた後、バレル8の第三供給口からHIPSを供給し、バレル9に設けた第二混練ゾーンで完全溶融させ、熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、押出機の先端部に設けられたダイプレートで、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランドにし、ペレタイザーでカッティングする等の工程を経て、熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造した。
【0107】
その結果、実施例1では、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
なお、実施例1及び後述する各例における詳細な条件及び評価結果を、表2にまとめた。
【0108】
(比較例1)
PPE1をPPE3に変えたこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、実施例1に比べ、酸化劣化物の数とメヤニ発生量が増えた。
【0109】
(実施例2)
PPE1をPPE2に変えたこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、実施例1と同様に、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0110】
(比較例2)
押出機の押出量を250kg/hrに設定するとともに、スクリュー回転数を、押出量/回転数の比を実施例1と同一にするべく210rpmに設定したこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、平均滞留時間Tが長くなり(30ミリ秒)、酸化劣化物の数及びメヤニ発生量が増えて、ストランド切れが多くなった。
【0111】
(比較例3)
オリフィスの長さLを10.0mm(L/D=2.5)にしたこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、酸化劣化物の数及びメヤニ発生量が増えて、ストランド切れが多くなった。
【0112】
(比較例4)
オリフィスの長さLを1.0mm(L/D=0.25)にしたこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、オリフィスでの整流効果がなくなり、ストランド切れが至るところで発生した。
【0113】
(比較例5)
オリフィスの内径Dを2.5mm、オリフィスの長さLを3.8mmにしたこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、ダイ部における圧力が上昇するとともに樹脂組成物の温度も上がり、酸化劣化物の数とメヤニ発生量も多くなり、ストランド切れも多かった。
【0114】
(実施例3)
オリフィスの長さLを4.0mm(L/D=1.0)にしたこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果、実施例1と同様に、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0115】
(実施例4)
PPE1の供給量を50質量部に変え、第三供給口からのHIPSの供給量を28質量部に変えたこと以外は、実施例3と同様に実施した。その結果、実施例3と同様に、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0116】
(実施例5)
ダイプレートの表面(ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面)にニューカナック処理を施し、表面硬度(HV硬度)を1000としたこと以外は、実施例3と同様に実施した。その結果、実施例3よりもメヤニ発生量が減り、また、酸化劣化物の数も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0117】
(実施例6)
ダイプレートの表面(ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面)に窒化チタンアルミ(TiAlN)蒸着処理を施し、表面硬度(HV硬度)を3500としたこと以外は、実施例3と同様に実施した。その結果、実施例3よりもメヤニ発生量が減り、また、酸化劣化物の数も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0118】
(実施例7)
ダイプレートの25個のオリフィスのうち、中心部の15個のオリフィスの長さL(Lc)を4.0mmとし、この15個よりもダイプレートの幅方向について外側に位置する、両外側5個ずつのオリフィスの長さLを段階的に0.3mmずつ小さくしていき、最外端のオリフィスの長さLoを2.5mm(Lo/Lc=2.5/4.0=0.625)にしたこと以外は、実施例3と同様に実施した。その結果、実施例3と比較して、ストランド安定性が向上した。
【0119】
(実施例8)
ダイプレートの25個のオリフィスのうち、中心部の15個のオリフィスの内径D(Dc)を4.0mmとし、この15個よりもダイプレートの幅方向について外側に位置する、両外側5個ずつのオリフィスの内径Dを段階的に0.1mmずつ大きくしていき、最外端のオリフィスの内径Doを4.5mm(Do/Dc=4.5/4.0=1.125)にしたこと以外は、実施例3と同様に実施した。その結果、実施例3と比較して、ストランド安定性が向上した。
【0120】
(実施例9)
スクリーンチェンジャーのブレーカープレートから金属メッシュを取り外すとともに、PPE1の供給量を50質量部に変え、第三供給口からのHIPSの供給量を8質量部に変え、20質量部のガラス繊維(日東紡社製、製品名:CSF−3PE−293)を第三供給口から更に供給したこと以外は、実施例3と同様に実施した。その結果、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0121】
(実施例10)
ガラス繊維をマイカ(北京厚信貿易有限公司製、製品名:BHTマイカ200−D)に変えたこと以外は、実施例9と同様に実施した。その結果、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0122】
(実施例11)
PPE1の供給量を40質量部に変え、第三供給口からのガラス繊維の供給量を15質量部に変え、15質量部のマイカ(実施例10と同様)を第三供給口から更に供給したこと以外は、実施例9と同様に実施した。その結果、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0123】
(実施例12)
バレル3,4に第一混練ゾーンを設置し、バレル5に真空ベントを設置し、バレル6に第二供給口(重量式フィーダーC)を設置し、バレル7に第二混練ゾーンを設置し、バレル9に第三混練ゾーンを設置したこと以外は、実施例3と同様である押出機を用いた。
30質量部のPPE1を、押出機の重量式フィーダーAに投入し、バレル1の第一供給口に供給した。また、熱可塑性樹脂(A)としての10質量部の水素添加スチレン・エチレンブロック共重合体(SEBS)(Kraton Polymers社(米国)製、製品名:G1651)と、0.5質量部の無水マレイン酸と、0.6質量部の安定剤(イルガノックス1010/アデカスタブ=1:2)とをブレンドしたものを、重量式フィーダーBに投入し、バレル1の第一供給口に供給した。さらに、熱可塑性樹脂(A)としての60質量部のポリアミド系樹脂(66ナイロン)(旭化成株式会社製、製品名:1300S)を、重量式フィーダーCに投入し、バレル6の第二供給口に供給した。
そして、製品タンクにおいては、ポリアミド系樹脂の吸湿防止のため、乾燥空気発生装置を用い、露点:−40℃、絶対湿度:0.119g/m
3の乾燥空気を供給した。
そして、スクリュー回転数を500rpmに変えたこと以外は、実施例3と同様の運転条件として、バレル3,4に設けた第一混練ゾーンにおいて、第一供給口から供給した原材料を軽く混ぜた後、バレル6の第二供給口から供給した原材料を供給し、バレル7に設けた第二混練ゾーン及びバレル9に設けた第三混練ゾーンで完全溶融させ、熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、実施例3と同様に、押出機の先端部に設けられたダイプレートで、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランドにし、ペレタイザーでカッティングする等の工程を経て、熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造した。その結果、実施例3と同様に、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0124】
(比較例6)
PPE1をPPE3に変更したこと以外は、実施例12と同様に実施した。その結果、実施例12に比べ、酸化劣化物の数が増え、その分、ダイ部における圧力も上昇した。
【0125】
(実施例13)
無水マレイン酸を添加せず、また、ポリアミド系樹脂を、同量のポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP EA9FT)に変更したこと以外は、実施例12と同様に実施した。その結果、ダイ部における圧力、樹脂組成物の温度が良好であり、酸化劣化物及びメヤニ発生量も少なく、ストランド安定性も良好であった。
【0126】
(比較例7)
PPE1をPPE3に変更したこと以外は、実施例13と同様に実施した。その結果、実施例13に比べ、酸化劣化物の数が増え、その分、ダイ部における圧力も上昇した。
【0127】
【表2】