(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の工程での判定の結果、前記第3の工程において測定された水圧の大きさが前記第1の閾値を超える場合、前記ボーリング孔を通じて前記地下空洞部内にセメントペーストを注入する第7の工程をさらに含み、
前記第4の工程において前記地下空洞部内に注入されるセメントペーストの量は、前記第7の工程において前記地下空洞部内に注入されるセメントペーストの量よりも少ない、請求項1に記載の方法。
前記第7の工程において所定量のセメントペーストが注入されたときの圧力を測定し、当該圧力の大きさが所定の第3の閾値以下であるか否かを判定する第8の工程をさらに含み、
前記第8の工程での判定の結果、前記第8の工程において測定された圧力の大きさが前記第3の閾値以下である場合、前記第6の工程を実行し、
前記第8の工程での判定の結果、前記第8の工程において測定された圧力の大きさが前記第3の閾値を超える場合、前記ボーリング孔を通じて前記地下空洞部内にセメントペーストを注入した後に、硬化待ちを行う、請求項2又は3に記載の方法。
前記第6の工程において所定量のモルタルスラリーが注入されたときの圧力を測定し、当該圧力の大きさが所定の第4の閾値以下であるか否かを判定する第9の工程をさらに含み、
前記第9の工程での判定の結果、前記第9の工程において測定された圧力の大きさが前記第4の閾値以下である場合、前記ボーリング孔を通じて前記地下空洞部内にセメントペーストを注入した後に、硬化待ちを行い、
前記第9の工程での判定の結果、前記第9の工程において測定された圧力の大きさが前記第4の閾値を超える場合、前記第7の工程を実行する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地中に存在する地下空洞部の様子を地上から把握することは困難であり、地下空洞部内に適切に充填材料が充填されているかどうかを確認することはできなかった。そのため、充填作業の良否は、作業者の技量及び経験に因るところが大きかった。
【0006】
そこで、本開示は、地下空洞部の状態を把握して地下空洞部内を適切に充填することが可能な地下空洞部の充填方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本開示の一つの観点に係る地下空洞部の充填方法は、地下空洞部に通ずるボーリング孔を地表から形成する第1の工程と、ボーリング孔を通じて地下空洞部内に注水する第2の工程と、第2の工程において所定量の水が注水されたときの水圧を測定し、当該水圧の大きさが所定の第1の閾値以下であるか否かを判定する第3の工程と、第3の工程での判定の結果、第3の工程において測定された水圧の大きさが第1の閾値以下である場合、ボーリング孔を通じて地下空洞部内にセメントペーストを注入する第4の工程と、第4の工程において所定量のセメントペーストが注入されたときの圧力を測定し、当該圧力の大きさが所定の第2の閾値以下であるか否かを判定する第5の工程と、第5の工程での判定の結果、第5の工程において測定された圧力の大きさが第2の閾値以下である場合、ボーリング孔を通じて地下空洞部内にモルタルスラリーを注入する第6の工程とを含む。
【0008】
本開示の一つの観点に係る地下空洞部の充填方法では、第2の工程において地下空洞部内に注水している。本開示の一つの観点に係る地下空洞部の充填方法では、第4の工程において、水圧の大きさが第1の閾値以下である場合に、地下空洞部内にセメントペーストを注入している。セメントペーストは、比較的高価であるものの流動性も高いので、比較的小さな空隙(例えば、細孔、亀裂等であり、以下では「小空隙」という。)を充填するのに適している。本開示の一つの観点に係る地下空洞部の充填方法では、第6の工程において、セメントペーストの注入圧力の大きさが第2の閾値以下である場合、地下空洞部内にモルタルスラリーを注入している。モルタルスラリーは、流動性に劣るものの比較的安価であるので、地下空洞部内の比較的大きな空間を充填するのに適している。
【0009】
ここで、第3の工程で測定された水圧の大きさが第1の閾値以下であるということは、第2の工程で注水された水の体積に比して地下空洞部の容積が十分に大きいと推定される。同様に、第5の工程で測定されたセメントペーストの注入圧力の大きさが第2の閾値以下であるということは、第4の工程で注入されたセメントペーストの体積に比して地下空洞部の容積が十分に大きいと推定される。従って、本開示の一つの観点に係る地下空洞部の充填方法では、注水圧力及び注入圧力の測定により地下空洞部の容積が十分に大きいと推定された場合には、地下空洞部に向けてセメントペーストを注入して小空隙をセメントペーストで充填した後、地下空洞部内にモルタルスラリーを注入しても地下空洞部内になお残存する大きな空間をモルタルスラリーで充填している。このように、本開示の一つの観点に係る地下空洞部の充填方法によれば、注水圧力及び注入圧力に応じて地下空洞部の状態を把握することができる。そのため、把握された地下空洞部の状態に応じて充填材料(セメントペースト及びモルタルスラリー)を使い分けることにより、地下空洞部内を適切に且つ低コストで充填することが可能となる。以上より、地下空洞部の状態に応じた適切な施工が実現される。
【0010】
[2]上記第1項に記載の方法は、第3の工程での判定の結果、第3の工程において測定された水圧の大きさが第1の閾値を超える場合、ボーリング孔を通じて地下空洞部内にセメントペーストを注入する第7の工程をさらに含み、第4の工程において地下空洞部内に注入されるセメントペーストの量は、第7の工程において地下空洞部内に注入されるセメントペーストの量よりも少なくてもよい。ここで、第3の工程で測定された水圧の大きさが第1の閾値を超えるということは、第2の工程で注水された水の体積に比して地下空洞部の容積がやや大きい程度であると推定される。そのため、この場合には、地下空洞部内に注入するセメントペーストの量を相対的に多くすることにより、相対的に小さな地下空洞部をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。一方、上述のとおり、第3の工程で測定された水圧の大きさが第1の閾値以下であるということは、第2の工程で注水された水の体積に比して地下空洞部の容積が十分に大きいと推定される。そのため、この場合には、地下空洞部内に注入するセメントペーストの量を相対的に少なくし、その後の第6の工程において地下空洞部内にモルタルスラリーを別途注入することにより、セメントペーストの使用量を削減しつつ、比較的大きな地下空洞部をセメントペースト及びモルタルスラリーによって適切に充填することが可能となる。
【0011】
[3]上記第2項に記載の方法において、第5の工程での判定の結果、第5の工程において測定された圧力の大きさが第2の閾値を超える場合、第7の工程以下を繰り返してもよい。ここで、第5の工程において測定された圧力の大きさが第2の閾値を超えるということは、第4の工程で注入されたセメントペーストによって地下空洞部内がある程度充填されたと推定される。そのため、この場合には、モルタルスラリーではなく、第7の工程においてセメントペーストを地下空洞部内に再度注入することにより、地下空洞部に残存しうる小さな空間をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。
【0012】
[4]上記第2項及び第3項に記載の方法は、第7の工程において所定量のセメントペーストが注入されたときの圧力を測定し、当該圧力の大きさが所定の第3の閾値以下であるか否かを判定する第8の工程をさらに含み、第8の工程での判定の結果、第8の工程において測定された圧力の大きさが第3の閾値以下である場合、第6の工程以下を繰り返し、第8の工程での判定の結果、第8の工程において測定された圧力の大きさが第3の閾値を超える場合、ボーリング孔を通じて地下空洞部内にセメントペーストを注入した後に、第2の工程以下を繰り返してもよい。ここで、第8の工程において測定された圧力の大きさが第3の閾値以下となる場合は、それまでに注入された充填材料により地下空洞部中の残土が押し広げられ、容積が十分に大きくなり、地下空洞部が想定以上の大きさになったと推定される。そのため、この場合には、地下空洞部内にモルタルスラリーを注入することにより、想定以上に大きかった地下空洞部をモルタルスラリーによって低コストで適切に充填することが可能となる。一方、第8の工程において測定された圧力の大きさが第3の閾値を超えるということは、それまでに注入された充填材料によって地下空洞部内がある程度充填されたと推定される。そのため、この場合には、モルタルスラリーではなく、セメントペーストを地下空洞部内に継続注入することにより、地下空洞部に残存しうる小さな空間をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。その後、さらに第2の工程以下を繰り返すことにより、地下空洞部内を完全に充填することが可能となる。
【0013】
[5]上記第2項〜第4項のいずれか一項に記載の方法は、第6の工程において所定量のモルタルスラリーが注入されたときの圧力を測定し、当該圧力の大きさが所定の第4の閾値以下であるか否かを判定する第9の工程をさらに含み、第9の工程での判定の結果、第9の工程において測定された圧力の大きさが第4の閾値以下である場合、ボーリング孔を通じて地下空洞部内にセメントペーストを注入した後に硬化待ちを行いその後、第2の工程以下を繰り返し、第9の工程での判定の結果、第9の工程において測定された圧力の大きさが第4の閾値を超える場合、第7の工程以下を繰り返してもよい。ここで、第9の工程において測定された圧力の大きさが第4の閾値以下であるということは、それまでに注入された充填材料の体積に比して地下空洞部の容積が十分に大きく、地下空洞部の大きさが想定以上であったと推定される。そのため、この場合には、地下空洞部内にセメントペーストを再度注入して、地下空洞部内の小空隙をセメントペーストによって充填した後に硬化待ちを行いその後、さらに第2の工程以下を繰り返すことにより、想定以上に大きかった地下空洞部内を完全に充填することが可能となる。一方、第9の工程において測定された圧力の大きさが第4の閾値を超えるということは、それまでに注入された充填材料によって地下空洞部内がある程度充填されたと推定される。そのため、この場合には、モルタルスラリーではなく、第7の工程においてセメントペーストを地下空洞部内に再度注入することにより、地下空洞部に残存しうる小さな空間をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る地下空洞部の充填方法によれば、地下空洞部の状態を把握して地下空洞部内を適切に充填することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
[地下空洞部の充填方法]
図1〜
図6を参照して、本実施形態に係る地下空洞部10の充填方法について説明する。本実施形態では、地下空洞部10は、例えば、地表12から数m〜数十mの深さの地盤14内に存在する炭鉱の廃坑跡である。そのため、地下空洞部10は、石炭の採掘のために人が通過可能な高さ(例えば、数十cm〜数m程度)を有している。なお、地盤14内には、地下空洞部10のみならず、小空隙16(例えば、地盤の緩み、亀裂等)も存在していることがある。
【0018】
まず、
図1に示されるように、ボーリング機(図示せず)を用いて、地下空洞部10に至らない仮孔18を、地表12から地下空洞部10に向けて地盤14に形成する。仮孔18の下端部は、第三紀層に到達している。
【0019】
次に、仮孔18にセメントペーストを充填し、第四紀層の崩落を防止する保護パイプ(図示せず)を仮孔18内に挿入する。その後、セメントペーストが硬化すると、
図2に示されるように、仮孔18の内周面にセメント硬化体20が形成される。これにより、仮孔18の崩落が防止される。こうして、崩落防止処理が完了する(
図6のステップS10参照)。なお、セメントペーストは、例えば、セメント組成物と水とが1:1の割合で混合されたものであってもよい。
【0020】
次に、
図3に示されるように、ボーリング機(図示せず)を用いて、セメント硬化体20が設けられた仮孔18を通じて、地下空洞部10に至るボーリング孔22を地盤14に形成する(第1の工程;
図6のステップS11参照)。なお、本実施形態では、ボーリング孔22の形成時に、ボーリング孔22が小空隙16と連通される。
【0021】
次に、
図4に示されるように、地表12のうちボーリング孔22(仮孔18)の入口近傍に送液装置24を設置する。送液装置24は、ポンプ24aと、配管24bと、圧力計24cとを備える。ポンプ24aは、例えば定圧ポンプであり、所定の設定圧力で液体を送出する機能を有する。配管24bは、ポンプ24aとボーリング孔22(仮孔18)とを接続しており、ポンプ24aが送り出す液体をボーリング孔22(仮孔18)に導く機能を有する。圧力計24cは、配管24b内を流通する液体の圧力を測定する機能を有する。
【0022】
次に、
図4に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内に注水する(第2の工程;
図6のステップS12参照)。ここでの注水量の設定値(設定水量T1)は、例えば、0.1m
3〜0.5m
3程度であってもよい。ポンプ24aにおける水の送出圧力(設定圧力Ps1)は、例えば、0.05MPa〜0.5MPa程度であってもよい。
【0023】
ステップS12における注水作業に際して、ポンプ24aによる注水量が設定水量T1に達する前に、圧力計24cでの測定値Pmが設定圧力Ps1に到達(Pm≧Ps1)した場合(
図6のステップS13でYESを参照)、処理を終了する。この場合、地下空洞部10への注水量が設定水量T1に達する前に、地下空洞部10及びボーリング孔22が水で充填された(ボーリング孔22の入口から水が溢れた)のであるから、地下空洞部10の容積が極めて小さいと推定される。そのため、当該地下空洞部10をあえて充填材料26(セメントペースト又は後述するモルタルスラリー)によって充填する必要性が低いと判断される。
【0024】
一方、ステップS12における注水作業に際して、圧力計24cでの測定値Pmが設定圧力Ps1に到達することなく、ポンプ24aによる注水量が設定水量T1に達した場合(Pm<Ps1の場合)、ステップS14に進む(
図6のステップS13でNOを参照)。この場合、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が少なくとも注水量(設定水量T1)よりも大きいと推定される。ステップS14では、ステップS12における注水量が設定水量T1に達したときの測定値Pmが設定圧力Ps1の20%以下(Pm≦0.2×Ps1)であるかが判定される(第3の工程)。なお、ここでは、設定圧力Ps1の20%を閾値(第1の閾値)としていたが、充填作業の条件に応じて、種々の閾値(例えば、0.1×Ps1〜0.9×Ps1の間の値)を採用してもよい。
【0025】
測定値Pmが設定圧力Ps1の20%以下である場合(
図6のステップS14でYESを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にセメントペースト(充填材料26の一種)を注入する(第4の工程;
図6のステップS15参照)。この場合、ステップS12における注水量(設定水量T1)に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が十分に大きいと推定される。ただし、地下空洞部10及びボーリング孔22と連通する小空隙16が存在している可能性を考慮して、まずは小空隙16を充填するために、比較的流動性に優れるセメントペーストを地下空洞部10に向けて注入するのが好ましいと判断される。
【0026】
ステップS15でのセメントペーストの注入量の設定値(設定液量T2)は、例えば、1m
3〜2m
3程度であってもよい。ポンプ24aにおけるセメントペーストの送出圧力(設定圧力Ps2)は、例えば、0.05MPa〜0.5MPa程度であってもよい。
【0027】
ステップS15における注入作業に際して、セメントペーストの注入量が設定液量T2に達したときの測定値Pmが設定圧力Ps2の20%以下(Pm≦0.2×Ps2)であるかが判定される(第5の工程;
図6のステップS16参照)。なお、ここでは、設定圧力Ps2の20%を閾値(第2の閾値)としていたが、充填作業の条件に応じて、種々の閾値(例えば、0.1×Ps2〜0.9×Ps2の間の値)を採用してもよい。
【0028】
測定値Pmが設定圧力Ps2の20%以下である場合(
図6のステップS16でYESを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にモルタルスラリー(充填材料26の一種)を注入する(第6の工程;
図6のステップS17参照)。この場合、ステップS15におけるセメントペーストの注入後でもなお、注入されたセメントペーストの体積に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が十分に大きいと推定される。そこで、地下空洞部10内になお残存する大きな空間に向けて、比較的流動性に劣るが安価なモルタルスラリーを注入するのが好ましいと判断される。
【0029】
ステップS17でのモルタルスラリーの注入量の設定値(設定液量T3)は、例えば、1m
3〜15m
3程度であってもよい。ポンプ24aにおけるモルタルスラリーの送出圧力(設定圧力Ps3)は、例えば、0.05MPa〜0.5MPa程度であってもよい。なお、モルタルスラリーは、例えば、セメント組成物と砂と水とが1:3:0.75の割合で混合されたものであってもよい。
【0030】
ステップS17における注入作業に際して、ポンプ24aによる注入量が設定液量T3に達する前に、圧力計24cでの測定値Pmが設定圧力Ps3に到達(Pm≧Ps3)した場合(
図6のステップS18でYESを参照)、処理を終了する。この場合、地下空洞部10への注入量が設定液量T3に達する前に、ボーリング孔22の入口からモルタルスラリーが溢れたのであるから、地下空洞部10がセメントペースト及びモルタルスラリーによって完全に充填されたと判断される。その後、モルタルスラリー及びセメントペーストが硬化することにより、地下空洞部10の充填処理が完了する。
【0031】
一方、ステップS17における注入作業に際して、圧力計24cでの測定値Pmが設定圧力Ps3に到達することなく、ポンプ24aによる注入量が設定液量T3に達した場合(Pm<Ps3の場合)、ステップS19に進む(
図6のステップS18でNOを参照)。この場合、注入されたセメントペースト及びモルタルスラリーの体積に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が大きいと推定される。ステップS19では、ステップS17におけるモルタルスラリーの注入量が設定液量T3に達したときの測定値Pmが設定圧力Ps3の20%以下(Pm≦0.2×Ps3)であるかが判定される(第9の工程)。なお、ここでは、設定圧力Ps3の20%を閾値(第4の閾値)としていたが、充填作業の条件に応じて、種々の閾値(例えば、0.1×Ps3〜0.5×Ps3の間の値)を採用してもよい。
【0032】
測定値Pmが設定圧力Ps3の20%以下である場合(
図6のステップS19でYESを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にセメントペースト(充填材料26の一種)を注入する(
図6のステップS20参照)。この場合、セメントペースト及びモルタルスラリーの注入後でもなお、注入されたこれらの体積に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が十分に大きいと推定される。そこで、地下空洞部10内になお残存する大きな空間を充填する必要があると判断される。ただし、地下空洞部10及びボーリング孔22と連通する小空隙16が存在している可能性を考慮して、ステップS20では、小空隙16を充填するために、比較的流動性に優れるセメントペーストを地下空洞部10に向けて注入している。その後、セメントペースト及びモルタルスラリーが硬化するまで(例えば、半日〜1日程度)作業を中断し、再びステップS12以下の処理を実行する。
【0033】
ステップS20でのセメントペーストの注入量の設定値は、例えば、1m
3程度であってもよい。ポンプ24aにおけるセメントペーストの送出圧力は、例えば、0.05MPa〜0.5MPa程度であってもよい。
【0034】
一方、測定値Pmが設定圧力Ps1の20%を超える場合(
図6のステップS14でNOを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にセメントペースト(充填材料26の一種)を注入する(第7の工程;
図6のステップS21参照)。この場合、ステップS12における注水量(設定水量T1)に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積がやや大きい程度であると推定される。そこで、このような相対的に小さな地下空洞部10及びボーリング孔22を充填するには、セメントペーストを用いるのが好ましいと判断される。
【0035】
また、測定値Pmが設定圧力Ps2の20%を超える場合(
図6のステップS16でNOを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にセメントペースト(充填材料26の一種)を注入する(第7の工程;
図6のステップS21参照)。この場合、ステップS15におけるセメントペーストの注入の結果、地下空洞部10及びボーリング孔22がある程度充填され、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が比較的小さくなったと推定される。そこで、地下空洞部10及びボーリング孔22に残存しうる小さな空間を、セメントペーストを用いて充填するのが好ましいと判断される。
【0036】
さらに、測定値Pmが設定圧力Ps3の20%を超える場合(
図6のステップS19でNOを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にセメントペースト(充填材料26の一種)を注入する(第7の工程;
図6のステップS21参照)。この場合、ステップS15,S17におけるセメントペースト及びモルタルスラリーの注入の結果、地下空洞部10及びボーリング孔22がある程度充填され、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が比較的小さくなったと推定される。そこで、地下空洞部10及びボーリング孔22に残存しうる小さな空間を、セメントペーストを用いて充填するのが好ましいと判断される。
【0037】
ステップS21でのセメントペーストの注入量の設定値(設定液量T4)は、設定液量T3よりも大きくてもよく、例えば、5m
3程度であってもよい。ポンプ24aにおけるセメントペーストの送出圧力(設定圧力Ps4)は、例えば、0.05MPa〜0.5MPa程度であってもよい。
【0038】
ステップS21における注水作業に際して、ポンプ24aによるセメントペーストの注入量が設定液量T4に達する前に、圧力計24cでの測定値Pmが設定圧力Ps4に到達(Pm≧Ps4)した場合(
図6のステップS22でYESを参照)、処理を終了する。この場合、地下空洞部10への注入量が設定液量T4に達する前に、ボーリング孔22の入口からセメントペーストが溢れたのであるから、地下空洞部10がセメントペーストによって完全に充填されたと判断される。その後、セメントペーストが硬化することにより、地下空洞部10の充填処理が完了する。
【0039】
一方、ステップS21における注入作業に際して、圧力計24cでの測定値Pmが設定圧力Ps4に到達することなく、ポンプ24aによる注水量が設定液量T4に達した場合(Pm<Ps4の場合)、ステップS23に進む(
図6のステップS22でNOを参照)。この場合、注入されたセメントペーストの体積に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が大きいと推定される。ステップS23では、ステップS21におけるセメントペーストの注入量が設定液量T4に達したときの測定値Pmが設定圧力Ps4の20%以下(Pm≦0.2×Ps4)であるかが判定される(第8の工程)。なお、ここでは、設定圧力Ps4の20%を閾値(第3の閾値)としていたが、充填作業の条件に応じて、種々の閾値(例えば、0.1×Ps4〜0.9×Ps4の間の値)を採用してもよい。
【0040】
測定値Pmが設定圧力Ps4の20%以下である場合(
図6のステップS23でYESを参照)、再びステップS17以下の処理を実行する。この場合、セメントペーストの注入後でもなお、注入されたセメントペーストの体積に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が十分に大きいと推定される。そこで、地下空洞部10内になお残存する大きな空間に向けて、比較的流動性に劣るが安価なモルタルスラリーを注入するのが好ましいと判断される。
【0041】
測定値Pmが設定圧力Ps3の20%を超える場合(
図6のステップS23でNOを参照)、
図5に示されるように、送液装置24により、ボーリング孔22を通じて地下空洞部10内にセメントペースト(充填材料26の一種)を注入する(
図6のステップS24参照)。この場合、セメントペーストの注入後でもなお地下空洞部10及びボーリング孔22が完全には充填されていないが、地下空洞部10及びボーリング孔22内になお残存する空間はそれほど大きくないと推定される。そこで、比較的流動性に優れるセメントペーストを地下空洞部10に向けて注入している。その後、セメントペーストが硬化するまで(例えば、半日〜1日程度)作業を中断し、再びステップS12以下の処理を実行する。
【0042】
[作用]
以上のような本実施形態では、測定値Pmと設定圧力Ps1〜Ps4との比較結果に基づいて、地下空洞部10の状態を把握することができる。そのため、把握された地下空洞部10の状態に応じて充填材料26(セメントペースト及びモルタルスラリー)を使い分けることにより、地下空洞部10内を適切に且つ低コストで充填することが可能となる。以上より、地下空洞部10の状態に応じた適切な施工が実現される。
【0043】
本実施形態では、ステップS21でのセメントペーストの注入量の設定値(設定液量T4)は、ステップS15でのセメントペーストの注入量の設定値(設定液量T3)よりも大きく設定されていてもよい。測定値Pmが設定圧力Ps1の20%以下である場合(
図6のステップS14でYESを参照)、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が十分に大きいと推定される。そのため、この場合には、地下空洞部10内に注入するセメントペーストの量を相対的に少なくし、その後の工程(ステップS17)において地下空洞部10内にモルタルスラリーを別途注入することにより、セメントペーストの使用量を削減しつつ、比較的大きな地下空洞部10をセメントペースト及びモルタルスラリーによって適切に充填することが可能となる。一方、測定値Pmが設定圧力Ps1の20%を超える場合(
図6のステップS14でNOを参照)、ステップS12における注水量(設定水量T1)に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積がやや大きい程度であると推定される。そのため、この場合には、地下空洞部10内に注入するセメントペーストの量を相対的に多くすることにより、比較的小さな地下空洞部10をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。
【0044】
本実施形態では、測定値Pmが設定圧力Ps2の20%を超える場合(
図6のステップS16でNOを参照)、地下空洞部10内にセメントペーストを注入している(第7の工程;
図6のステップS21参照)。この場合、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が比較的小さくなったと推定される。そのため、モルタルスラリーではなく、セメントペーストを地下空洞部10内に再度注入することにより、地下空洞部10に残存しうる小さな空間をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。
【0045】
本実施形態では、測定値Pmが設定圧力Ps3の20%以下である場合(
図6のステップS19でYESを参照)、セメントペーストを地下空洞部10に向けて注入し、セメントペースト及びモルタルスラリーが硬化するまで(例えば、半日〜1日程度)作業を中断し、その後に再びステップS12以下の処理を実行している。この場合、セメントペースト及びモルタルスラリーの注入後でもなお、注入されたこれらの体積に比して、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が十分に大きいと推定される。そこで、地下空洞部10内になお残存する大きな空間を充填するために、ステップS12以下の処理を繰り返すことにより、想定以上に大きかった地下空洞部10内を完全に充填することが可能となる。一方、測定値Pmが設定圧力Ps3の20%を超える場合(
図6のステップS19でNOを参照)、ステップS15,S17におけるセメントペースト及びモルタルスラリーの注入の結果、地下空洞部10及びボーリング孔22がある程度充填され、地下空洞部10及びボーリング孔22の容積が比較的小さくなったと推定される。そこで、モルタルスラリーではなく、セメントペーストを地下空洞部10内に再度注入することにより、地下空洞部10に残存しうる小さな空間をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。
【0046】
本実施形態では、測定値Pmが設定圧力Ps4の20%以下である場合(
図6のステップS23でYESを参照)、それまでに注入されたセメントペーストにより地下空洞部10及びボーリング孔22中の残土が押し広げられ、容積が十分に大きくなり、地下空洞部10が想定以上の大きさになったと推定される。そこで、比較的流動性に劣るが安価なモルタルスラリーを地下空洞部10内に注入することにより、想定以上に大きかった地下空洞部10をモルタルスラリーによって低コストで適切に充填することが可能となる。一方、測定値Pmが設定圧力Ps3の20%を超える場合(
図6のステップS23でNOを参照)、セメントペーストの注入後でもなお地下空洞部10及びボーリング孔22が完全には充填されていないが、地下空洞部10及びボーリング孔22内になお残存する空間はそれほど大きくないと推定される。そこで、モルタルスラリーではなく、比較的流動性に優れるセメントペーストを地下空洞部10内に継続注入することにより、地下空洞部10に残存しうる小さな空間をセメントペーストによって適切に充填することが可能となる。その後、さらにステップS12以下を繰り返すことにより、地下空洞部10内を完全に充填することが可能となる。
【0047】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、
図7に示されるように、地盤14内において地下空洞部10よりも深い位置に別の地下空洞部10Aが存在する場合にも、本発明を適用することができる。
【0048】
具体的には、まず、上記の実施形態の手順にて地下空洞部10を充填材料26で充填した後に、ボーリング機(図示せず)を用いて、既に地盤14に設けられているボーリング孔22を通じて、地下空洞部10Aに至るボーリング孔22Aを地盤14に形成する(
図7参照)。このとき、ボーリング孔22内を充填している充填材料26がボーリング機によって掘削される。なお、地表12において、地盤14に既に設けられているボーリング孔22とは異なる箇所から、地下空洞部10Aに至るボーリング孔22Aを地盤14に形成してもよい。この場合、上記の実施形態と同様に、崩落防止処理が行われてもよい。
【0049】
次に、上記の実施形態の手順と同様に、送液装置24により、ボーリング孔22Aを通じて地下空洞部10A内に注水し(
図8参照)、さらにボーリング孔22Aを通じて地下空洞部10A内に充填材料26A(セメントペースト又はモルタルスラリー)を充填する(
図9参照)。
【0050】
一つの地下空洞部10及びボーリング孔22に対して、1日の間に注入可能な充填材料26の最大量は、例えば、15m
3程度に設定されていてもよい。